説明

微粒子の製造方法及びその製造装置

【課題】本発明では、平均一次粒子径、組成等の制御をして、金属、半金属、金属化合物及び半金属化合物の少なくとも1種を含む微粒子を製造する方法及び装置を提供する。
【解決手段】減圧容器内で、少なくとも1種の金属及び/又は半金属を含有する原料を加熱して蒸発させ、蒸発させた原料を、プラズマ雰囲気を介して、微粒子として液体媒体の表面に付着させ、得られた付着物を回収することを含む、微粒子の製造方法とする。また、減圧容器17、原料を加熱して蒸発させる原料加熱部11、液体媒体15を流動させる液体媒体流動部17、雰囲気ガスを導入する雰囲気ガス導入部18、並びにプラズマ発生部12を有する、微粒子製造装置100とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
金属、半金属、金属化合物及び半金属化合物の少なくとも1種を含む微粒子の製造方法及び製造装置、並びにこの方法により得られる微粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
微粒子、特にナノ粒子と呼ばれる非常に微細な粒子の分野においては、粒子の組成のみならず、粒子の粒子径が非常に重要であると考えられており、したがって粒子の組成及び粒子径を制御して製造するための研究が行われている。
【0003】
これに関して、金属等の無機材料の微粒子を製造するための方法としては、金属原料を加熱して蒸発させ、蒸発させた金属原料を、流動する液体媒体に付着させて回収する方法が知られている(特許文献1〜4)。
【0004】
また、特許文献3では、この方法によれば、膜状液体媒体の移動速度を調節することにより、回収する微粒子の形状や大きさを所望の程度に調節できるとしている。具体的には、特許文献3では、金微粒子を含有するコロイド溶液、及び銅微粒子を含有するコロイド溶液を得ている。しかしながら、このような方法によっても、得られる微粒子の組成を制御することは困難である。
【0005】
また更に、特許文献4及び5では、真空反応容器内に金属カルボニル化合物等の原料ガスを導入してプラズマ気相反応を行わせることによって微粒子を製造する方法が提案されている。このような方法で作製される微粒子の組成は、原料ガスの純度、原料ガスの種類、副生成物等に依存しており、したがってこのような方法で微粒子の組成を制御することは難しい。
【0006】
なお、磁性粉末、例えば高密度記録媒体、磁性塗料、磁性トナー、磁性キャリアー等に適した磁性粉末として、窒化鉄微粒子が知られている。これに関して、特許文献6及び7では、液相合成による窒化鉄製造方法が提案されている。液相合成では、窒化鉄微粒子を直接合成するものではなく、鉄微粒子を作製後に、窒化工程を行うことが必要であり、したがって窒化鉄微粒子を得るための工程が複雑であり、また粒径及び組成の制御が難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭60−161490号公報
【特許文献2】特開昭60−162704号公報
【特許文献3】特開2008−150630号公報
【特許文献4】特開昭63−31536号公報
【特許文献5】特開平2−164443号公報
【特許文献6】特開2008−103510号公報
【特許文献7】特開平5−286705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
金属原料を加熱して蒸発させ、蒸発させた金属原料を、流動する液体媒体に付着させて回収する従来の方法によれば、金属等の無機材料の微粒子を製造することが可能となっている。しかしながら、このような方法によっても、得られる微粒子の組成等の制御が充分でない場合があり、また、所望の特性を得られなかった。
【0009】
これに関して、本発明では、平均一次粒子径、組成等の制御をして、金属、半金属、金属化合物及び半金属化合物の少なくとも1種を含む微粒子を製造する方法及び装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は下記のようなものである:
〈1〉減圧容器内で、少なくとも1種の金属及び/又は半金属を含有する原料を加熱して蒸発させ、蒸発させた上記原料を、雰囲気ガスをプラズマ化させたプラズマ雰囲気を介して、金属、半金属、金属化合物及び半金属化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む微粒子として、液体媒体の表面に付着させ、得られた付着物を回収することを含む、微粒子の製造方法。
〈2〉蒸発させた上記原料を、上記プラズマ雰囲気と反応させて、金属化合物及び/又は半金属化合物を含む微粒子として液体媒体の表面に付着させ、得られた付着物を回収する、上記〈1〉項に記載の方法。
〈3〉上記減圧容器内の圧力が100Pa以下である、上記〈1〉又は〈2〉項に記載の方法。
〈4〉上記液体媒体が流動している、上記〈1〉〜〈3〉項のいずれかに記載の方法。
〈5〉上記液体媒体は、上記減圧容器の内壁の表面の少なくとも一部を覆っている、上記〈1〉〜〈4〉項のいずれかに記載の方法。
〈6〉上記液体媒体を冷却または加熱する、上記〈1〉〜〈5〉項のいずれかに記載の方法。
〈7〉上記プラズマ雰囲気は、高周波又は直流プラズマ発生装置によって発生される、上記〈1〉〜〈6〉項のいずれかに記載の方法。
〈8〉上記減圧容器内に、上記雰囲気ガスを連続的に導入する、上記〈1〉〜〈7〉項のいずれかに記載の方法。
〈9〉上記プラズマ雰囲気が窒素含有プラズマ雰囲気であり、且つ上記微粒子が、金属窒化物及び/又は半金属窒化物の微粒子である、上記〈1〉〜〈8〉項のいずれかに記載の方法。
〈10〉上記プラズマ雰囲気が硫黄含有プラズマ雰囲気であり、且つ上記微粒子が、金属硫化物及び/又は半金属硫化物の微粒子である、上記〈1〉〜〈8〉項のいずれかに記載の方法。
〈11〉上記プラズマ雰囲気が酸素含有プラズマ雰囲気であり、且つ上記微粒子が、金属酸化物及び/又は半金属酸化物の微粒子である、上記〈1〉〜〈8〉項のいずれかに記載の方法。
〈12〉減圧可能な減圧容器、
上記減圧容器内に収容されており、且つ少なくとも1種の金属及び/又は半金属を含有する原料を加熱して蒸発させる、原料加熱部、
上記減圧容器内に収容された液体媒体を流動させる、液体媒体流動部、
上記減圧容器内部に雰囲気ガスを導入する、雰囲気ガス導入部、並びに
少なくとも上記原料加熱部と上記液体媒体との間でプラズマを発生させる、プラズマ発生部、
を有する、微粒子製造装置。
〈13〉上記減圧容器が、上記液体媒体流動部としても機能する、上記〈12〉項に記載の装置。
〈14〉上記液体媒体の温度を調整する温度調節部を更に有する、上記〈12〉又は〈13〉項に記載の装置。
〈15〉上記〈1〉〜〈11〉項のいずれかに記載の微粒子の製造方法により得られる、微粒子。
〈16〉上記〈15〉項に記載の微粒子を含有している、コロイド溶液。
【発明の効果】
【0011】
本発明の方法及び装置によれば、平均一次粒子径、組成等を制御して、金属、半金属、金属化合物及び半金属化合物の少なくとも1種を含む微粒子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】微粒子を製造する本発明の装置の1つの態様を示す図である。
【図2】実施例1で得られた微粒子の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
《微粒子の製造方法及び装置》
微粒子を製造する本発明の方法は、減圧容器内で、少なくとも1種の金属及び/又は半金属を含有する原料を加熱して蒸発させ、蒸発させたこの原料を、雰囲気ガスをプラズマ化させたプラズマ雰囲気を介して、金属、半金属、金属化合物及び半金属化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む微粒子として、液体媒体の表面に付着させ、得られた付着物を回収することを含む。この方法では、得られる微粒子は、この方法において用いられる液体媒体に分散したコロイド溶液として得ることができ、随意にこの液体媒体を除去、置換等することができる。
【0014】
本発明の方法では、減圧雰囲気下での加熱によって原料が蒸発することによって、気体状になった原料が拡散及び対流によって移動して、最終的には、液体媒体に付着して、付着物が微粒子として回収される。これに関して、プラズマ雰囲気を用いない場合、すなわち単に原料を加熱して蒸発させ、蒸発させた原料を、液体媒体に付着させて、微粒子として回収する場合、蒸発した原料は主として対流によって同様な経路で移動して、液体媒体の同様な箇所に付着して凝縮することになる。すなわち、プラズマ雰囲気を用いない場合には、得られる微粒子の平均粒子径、組成等の制御は、使用する装置の大きさ、形状等によって支配される部分が多かった。
【0015】
これに対して、プラズマ雰囲気を用いる本発明の方法では、減圧雰囲気下、加熱によって蒸発した原料は、液体媒体に付着する前に、プラズマ雰囲気を通過する。したがって、この方法では、雰囲気ガス導入量、雰囲気圧力、原料の組成及び量等と併せて、プラズマの強度及び種類を調節することによって、得られる微粒子の平均一次粒子径、組成等を高度に制御することができる。
【0016】
具体的には、プラズマ雰囲気を用いる方法では、蒸発した原料の拡散をプラズマによって促進して、得られる微粒子の平均一次粒子径を小さくすること、蒸発した原料とプラズマ雰囲気の成分との反応をプラズマによって促進して、蒸発した原料とプラズマ雰囲気の成分とを含有する所望の微粒子を生成すること等ができる。したがって、プラズマを用いるこの方法では、原料とプラズマ雰囲気の成分との反応の程度、及び得られる粒子の粒径を制御して、粒子を得ることができる。
【0017】
ここで、プラズマ雰囲気は雰囲気ガスをプラズマ化させて得られている。したがって、蒸発した原料とプラズマ雰囲気の成分との反応は、蒸発した原料と雰囲気ガスの成分との反応を意味している。すなわち、雰囲気ガスとして窒素ガスを用いる場合、プラズマ雰囲気は窒素含有プラズマ雰囲気となり、得られる微粒子は、金属窒化物及び/又は半金属窒化物の微粒子となる傾向がある。また、雰囲気ガスとして酸素ガスを用いる場合、プラズマ雰囲気は酸素含有プラズマ雰囲気となり、得られる微粒子は、金属酸化物及び/又は半金属酸化物の微粒子となる傾向がある。また更に、雰囲気ガスとして硫化水素ガスを用いる場合、得られるプラズマ雰囲気は硫黄含有プラズマ雰囲気となり、また得られる微粒子は、金属硫化物及び/又は半金属硫化物の微粒子となる傾向がある。
【0018】
本発明の製造方法は、例えば、微粒子を製造する本発明の装置を用いて実施することができる。
【0019】
本発明の装置は、減圧可能な減圧容器;減圧容器内に収容されており、且つ少なくとも1種の金属及び/又は半金属を含有する原料を加熱して蒸発させる、原料加熱部;上記減圧容器内に収容された液体媒体を流動させる、液体媒体流動部;上記減圧容器内部に雰囲気ガスを導入する、雰囲気ガス導入部;並びに、少なくとも上記原料加熱部と上記液体媒体との間でプラズマを発生させる、プラズマ発生部を有する。
【0020】
この本発明の装置は例えば、図1に示すようなものである。ここで、図1に示す装置100は、減圧可能な減圧容器17;減圧容器17内に収容されて原料20を加熱して蒸発させる、原料加熱部11;減圧容器17内に収容された液体媒体15を流動させる、減圧容器を兼ねている液体媒体流動部17;減圧容器17内部に雰囲気ガス(例えば窒素(N))を導入する、雰囲気ガス導入部18;並びに、少なくとも原料加熱部11と液体媒体15との間でプラズマを発生させる、プラズマ発生部12を有する。
【0021】
この図1に示す装置100の使用においては、ルツボ11a及び加熱用ヒータ11bを有する原料加熱部11によって、原料20を加熱して蒸発させ、雰囲気ガス導入部18から減圧容器内に雰囲気ガスを連続的に導入し、コイル状のプラズマ発生部12でプラズマ雰囲気12aを発生させ、蒸発した原料21を、このプラズマ雰囲気12aを介して、流動する液体媒体15aに付着させて、微粒子として回収する。ここで、この図1に示す例では、原料加熱部11を収容している減圧容器17は、中心軸を水平にした筒状の形状を有して、液体媒体15を保持しており、矢印17rで示すように中心軸又はそれに平行な中心線の周りに回転させることによって、液体媒体流動部として機能して、液体媒体15を、矢印15rで示すように流動している膜状の液体媒体15aとするものである。
【0022】
なお、本発明の装置は、図1で示される態様に限定されず、特に特許文献1〜3で示される装置に、更にプラズマ発生部を具備させることによっても得ることができる。以下では、本発明の製造方法及び装置の詳細について説明するが、本発明の製造方法及び製造装置の詳細はこれらに限定されるものではなく、特に特許文献1〜3を参照することができる。
【0023】
〈液体媒体流動部〉
液体媒体流動部としては、液体媒体を流動させる任意の構造を有することができる。減圧容器が液体媒体流動部を兼ねている場合、例えば図1に示すように、減圧容器が中心軸を水平にした筒状であって、減圧容器を中心軸又はそれに平行な中心線周りに回転させる可変速回転機構をさらに有することができる。これによれば、減圧容器を回転させ、液体媒体を減圧容器の内壁の表面で膜状にすることができる。
【0024】
減圧容器が液体媒体流動部を兼ねていない場合、減圧容器内に、減圧容器とは別個の液体媒体流動部を配置し、液体媒体流動部の一部を液体媒体に浸漬させ、その後でこの一部を液体媒体から出すという動作を連続的に行うことによって、膜状の液体媒体の表面を連続的に形成することができる。また、液体媒体流動部については、特許文献1〜3を参照することができる。
【0025】
液体媒体流動部は、流動している液体媒体の表面を減圧容器の内壁に連続的に形成すること、特に液体媒体を循環させて常に新しい表面が形成されるようにすることができる。また、液体媒体流動部は、流動している液体媒体を膜状の形態にすること、すなわち液状媒体が拡がった状態で流動するようにすることもできる。
【0026】
図1でのように、減圧容器が液体媒体流動部を兼ねている場合、液体媒体流動部は、液体媒体が減圧容器の内壁の少なくとも一部を覆っていることが好ましく、完全に覆っていることがより好ましい。液体媒体が減圧容器内壁の表面を覆っていることにより、微粒子が直接減圧容器内壁へ付着することによる微粒子の回収率低下を抑制できる。
【0027】
〈温度調節部〉
本発明の装置では、減圧容器の外側に温度調節部を備え、それによって減圧容器を介して、液体媒体を冷却又は加熱できるようにすることが好ましい。温度調節部は、冷却手段及び/又は加熱手段を有することができる。冷却手段としては、例えば、水冷式、空冷式等の熱交換機が挙げられる。加熱手段としては、例えば、ヒータ等が挙げられる。具体的には例えば図1に示す態様では、減圧容器17の外周に冷却液を供給することや、ヒーターバンドを取り付けることによって温度を制御することが可能となる。ここでは、温度調節部によって、液体媒体を実質的に液体として存在させること、及び/又は液体媒体の動粘度を調整することができる。
【0028】
〈加熱〉
本発明では、原料を蒸発させることができる任意の様式で加熱を行うことができ、特に制限はないが、例えばエキシマレーザー、電子ビーム、電磁誘導、電気抵抗等による加熱を挙げることができる。特に、誘導加熱、電気抵抗による加熱等の電力を用いた加熱は、制御が容易な点で好ましい。特に原料加熱部として、電子ビームを用いる場合、原料を高温にすることができ、ケイ素等の高沸点材料を原料として用いることが可能になる点で好ましい。
【0029】
必要に応じて、原料加熱部とプラズマ発生部の間に、蒸発した原料を遮断するシャッターを設けることも可能である。原料加熱部とプラズマ発生部の間にシャッターを設けることにより、例えば、所定の温度までに加熱されていない原料の蒸発物が液体媒体に付着することを抑制することが可能となり、意図した微粒子が生成し易くなる。
【0030】
〈原料〉
本発明では、少なくとも1種の金属及び/又は半金属を含有する材料を原料として用いることができる。したがって本発明の方法においては、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト、銅、銀、金、白金、パラジウム、ロジウム、インジウム、スズのような遷移金属;マグネシウム、カリウム、カルシウム、アルミニウム、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウムのような典型金属;ホウ素、ケイ素、ゲルマニウムのような半金属;それらの合金、及びそれらの組み合わせ;並びに酸化物、窒化物等のそれらの化合物を用いることができる。
【0031】
原料の形状は、粉末状、ペレット状、ワイヤー状等であってよく、特にペレット状であることが好ましい。また、高純度の原料を用いることは、最終的な微粒子の組成を制御するために一般に好ましい。したがって例えば、原料の純度は95%以上、好ましくは98%以上、更に好ましくは99%以上、より好ましくは99.5%以上である。
【0032】
〈雰囲気ガス〉
本発明の製造方法及び装置において用いられる雰囲気ガスは、反応性又は非反応性の任意の雰囲気ガスであってよく、雰囲気ガス導入量やガス種によって得ることを意図する微粒子の粒子径、組成等に基づいて決定することができる。すなわち、本発明の製造方法及び装置において用いられる雰囲気ガスは、反応性の雰囲気ガス、すなわち蒸発した原料と雰囲気ガスの成分とが反応して、金属化合物又は半金属化合物の微粒子を生成するものであっても、非反応性の雰囲気ガス、すなわち蒸発した原料と雰囲気ガスの成分とが反応せずに、金属又は半金属微粒子を生成するものであってもよい。
【0033】
具体的には、反応性の雰囲気ガスとしては、窒素ガス、酸素ガス、水素ガス、硫化水素ガス、メタンガス等が挙げられる。また、これらの2種以上を組み合わせて用いることもできる。非反応性の雰囲気ガスとしては、アルゴン、ヘリウム等の希ガスが挙げられる。また、これらの2種以上を組み合わせて用いることもできる。ただし、雰囲気ガスが反応性であるか非反応性であるかは、使用する金属原料、雰囲気の圧力、雰囲気ガスの導入量・ガス種、プラズマの強度等にも依存している。したがって例えば、窒素ガスを用いた場合であっても、蒸発した原料が窒素ガスで反応せずに金属又は半金属微粒子が得られる場合には、窒素ガスも非反応性の雰囲気ガスである。
【0034】
また、少なくとも1種類の反応性の雰囲気ガスと非反応性の雰囲気ガスとを組み合わせて用いることも可能である。したがって例えば、雰囲気ガスは、反応性の雰囲気ガスとしての窒素に加えて、他のガス、特に非反応性のガスを含有していてもよい。
【0035】
雰囲気ガスは、減圧容器内に少なくとも1つ設けられている雰囲気ガス導入部から減圧容器内に導入される。ここで、減圧容器内に雰囲気ガスを連続的に導入することは、蒸発した原料の拡散の促進、微粒子の粒径及び/又は組成の制御、減圧容器内の圧力の維持等に関して好ましい。また、1つの雰囲気ガス導入部から、1種又は複数種の雰囲気ガスを導入することが可能である。また、複数のガス導入部を設けることも可能である。一般に、雰囲気ガスの導入量を制御するために、マスフローメータ等のガス流量計を設けるのが好ましい。
【0036】
〈圧力〉
減圧容器内の圧力は、プラズマ形成の促進、原料の蒸発の促進等のために、例えば100Pa以下、50Pa以下、30Pa以下、10Pa以下にすることができる。減圧容器内の圧力が比較的低いことは、原料の蒸発の促進、プラズマの形成の促進及びそれによる微粒子の特性の制御等に関して好ましい。
【0037】
なお、減圧容器内の圧力の下限は、特に制限されず、使用する原料、目的とする微粒子の特性、使用する真空ポンプの種類や排気能力に応じて適宜設定すればよいが、プラズマの安定性等の観点から、例えば、好ましくは1×10−2Pa以上、より好ましくは5×10−2Pa以上とすることができる。
【0038】
減圧雰囲気の圧力は、雰囲気ガスを連続的に導入する前の到達真空度(圧力)にも依存する。到達真空度(圧力)は、低いことが好ましく、具体的には到達真空度(圧力)が1.0×10−2Pa以下、更に好ましくは1.0×10−3Pa以下、より好ましくは1.0×10−4Pa以下である。到達真空度(圧力)が1.0×10−2Pa以下である場合、減圧容器内に残留する不純物が生成された微粒子内に取り込まれることを抑制でき、更に微粒子の諸特性を確保することができる。
【0039】
なお、減圧雰囲気の圧力や到達真空度を測定するために、減圧容器内に真空計を設けることが好ましい。また、真空及び減圧雰囲気を得るための真空ポンプを1つ又は複数種組み合わせて用いることが可能である。真空ポンプとしては、特に限定されないが、例えば、油回転式ポンプ、メカニカルブースターポンプ、油拡散ポンプ、ターボポンプ、クライオポンプ等が挙げられる。
【0040】
〈プラズマ〉
プラズマ雰囲気は、雰囲気ガスをプラズマ化することによって得ることができる。プラズマ雰囲気は任意の方式で発生させることができ、例えばプラズマ雰囲気は、高周波又は直流プラズマ発生装置によって発生できる。
【0041】
〈液状媒体〉
液状媒体としては、蒸発させた原料をプラズマ雰囲気を介して、金属、半金属、金属化合物及び半金属化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む微粒子として、その表面に付着させ、得られた付着物を回収できる任意の液状媒体を用いることができる。したがって、この液状媒体としては、回収される微粒子を溶解させず、且つ/又は微粒子を製造する雰囲気において実質的に液体として存在するために充分に小さい蒸気圧を有する液状媒体を用いることができる。また蒸気圧が異なる2種類以上の液体媒体を組合せ使用することも可能である。
【0042】
具体的には25℃における蒸気圧が、1×10−3Pa以下であるのが好ましく、より好ましくは1×10−5Pa以下、更に好ましくは1×10−7Pa以下である。液状媒体の蒸気圧が大きすぎる場合は、減圧雰囲気下で液体媒体が蒸発し微粒子の組成や微粒子の諸特性に悪影響を与えるおそれがある。
【0043】
上記液状媒体としては、低蒸気圧の油、例えばアルキルナフタリン等の低蒸気圧の炭化水素、またはアルキルジフェニルエーテル、ポリフェニルエーテル、ジエステル、シリコーン油等を挙げることができる。ただし、低蒸気圧の液体であればこれらに限定されるものではない。
【0044】
上記液状媒体は、回収する微粒子の凝集を抑制するための界面活性剤を含有していてもよい。界面活性剤としては、上記液体媒体に可溶で、且つ微粒子に対して強い吸着性を示す官能基を持つ界面活性剤が好ましい。例えば、アミン系、スルホン酸エステル系、カルボン酸エステル系、リン酸エステル系等を挙げることができる。
【0045】
また、必要に応じて、液状媒体の動粘度を制御することにより、粒径や組成等が制御された微粒子を得ることができる。例えば、液状媒体の動粘度を高くした場合、微粒子の平均一次粒子径を大きくし、更に平均一次粒子径を制御できる。
【0046】
《微粒子》
本発明では、金属、半金属、金属化合物及び半金属化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む微粒子を得ることができる。具体的には例えば、プラズマ雰囲気として窒素含有プラズマ雰囲気を用いることによって、金属窒化物及び/又は半金属窒化物の微粒子を得ることができ、プラズマ雰囲気として酸素含有プラズマ雰囲気を用いることによって、金属酸化物及び/又は半金属酸化物の微粒子を得ることができ、またプラズマ雰囲気として硫黄含有プラズマ雰囲気を用いることによって、金属硫化物及び/又は半金属硫化物の微粒子を得ることができる。
【0047】
本発明で得られる微粒子の平均一次粒子径は、意図する用途、所望の特性等に応じて選択することができる。したがって、微粒子の平均一次粒子径は、100nm以下、80nm以下、50nm以下、又は30nm以下であってよい。
【0048】
〈窒化鉄微粒子〉
特に、本発明では、プラズマ雰囲気として窒素含有プラズマ雰囲気を用い、且つ原料として鉄を用いることによって、窒化鉄の微粒子を得ることができる。このようにして得られる窒化鉄微粒子は例えば、平均一次粒子径が100nm以下であり、5Kにおける飽和磁化が160emu/g以上であり、且つ300Kにおける飽和磁化が100emu/g以上である。
【0049】
窒化鉄微粒子の平均一次粒子径は意図する用途、所望の特性等に応じて選択することができる。したがって、窒化鉄微粒子の平均一次粒子径は、100nm以下、80nm以下、50nm以下、又は30nm以下であってよい。また窒化鉄微粒子の平均一次粒子径は、1nm以上、又は5nm以上であってよい。
【0050】
窒化鉄微粒子の5Kにおける飽和磁化は、160emu/g以上、170emu/g以上、180emu/g以上、190emu/g以上、200emu/g以上、210emu/g以上、又は220emu/g以上であってよい。
【0051】
また窒化鉄微粒子の300Kにおける飽和磁化は、100emu/g以上、110emu/g以上、120emu/g以上、130emu/g以上、140emu/g以上、又は150emu/g以上であってよい。
【0052】
窒化鉄微粒子における炭素の含有率は、5%以下、2%以下、1.5%以下、1%以下、0.5%以下、又は0.1%以下であってよい。炭素の含有率がこの範囲である場合、より優れた飽和磁化が得られる。
【0053】
窒化鉄微粒子は非常に大きい飽和磁化を有し、したがって磁石の用途で非常に有用である。このような非常に大きい飽和磁化は、窒化鉄微粒子の窒化の程度、一次粒子径等が高度に制御されていることによって達成されている。すなわち、窒化鉄微粒子は、窒化の程度、一次粒子径等が高度に制御されていることによって、理想的なFe16の5Kにおける飽和磁化である約240emu/g(バルク、換算値)に近い飽和磁化を有することができる。窒化鉄微粒子は、窒化鉄成分がFe16であってよい。例えば窒化鉄微粒子は、Fe16を50質量%以上、70質量%以上、90質量%以上又は95質量%以上含むことができる。
【0054】
なお、理想的なFeNの5Kにおける飽和磁化は、約150emu/g(バルク、換算値)であり、Feの5Kにおける飽和磁化は、約200emu/g(バルク、換算値)である。また、酸化鉄(Fe)の5Kにおける飽和磁化は、約120emu/gである。FeNは、反磁性であるため、磁性を示さない。
【0055】
〈平均一次粒子径の測定〉
本発明に関して、平均一次粒子径は、透過型顕微鏡による観察によって求めた。より具体的には、窒化鉄微粒子のヘキサン分散液を、グローブボックス内で銅製マイクログッリド膜貼りメッシュに滴下し、乾燥した後に、透過電子顕微鏡(TEM)(TECNAI G2、FEI社製)によって、加速電圧120kVで、観察及び撮影を実施した。その後、得られたTEM画像(75万倍又は150万倍)において、100個の粒子をマークし、そして画像解析ソフト(NEXUS NEW QUBE、ネクサス社製)を用いて画像解析して平均一次粒子径を求めた。
【0056】
〈飽和磁化の測定〉
本発明に関して、飽和磁化は、単位質量あたりの磁化の値(emu/g)として表されている。ここで、この飽和磁化の大きさは、窒化鉄微粒子について、SQUID(超伝導量子干渉素子)を用いて5K又は300Kにおいて測定した。また、窒化鉄微粒子の質量は、蛍光X線分析(XRF)の結果から算出した。得られた飽和磁化値を、得られた質量の値で割って、その窒化鉄超微粒子の単位質量あたりの飽和磁化(emu/g)を算出した。
【0057】
具体的には、窒化鉄微粒子の飽和磁化の大きさは下記のようにして測定した。すなわち、アルゴン雰囲気のグローブボックス内で、作製した窒化鉄微粒子のコロイド溶液をアセトンで洗浄後、ケロシンに再分散させ(30mg)、これを石英管(直径:5mm、内径:3mm)に入れ、エポキシ樹脂で蓋をして、測定サンプルとした。この測定サンプルを超伝導量子干渉素子(SQUID)磁束計(QUANTOM DESIGN社製MPMS−5)にセットし、磁化の測定を行った。測定温度(5K又は300K)において、測定磁界範囲を50kOe〜−50kOeとした。
【0058】
〈組成の測定〉
本発明に関して、窒化鉄微粒子の組成は、高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)(JEM2010、日本電子製)による観察、及びX線回折分析(XRD)(RIGAKU RINT III、リガク(株)製)の結果から求めた。炭素含有率は、元素分析装置(2400II、パーキンエルマー社製)を用い、測定した。
【0059】
以下では、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【実施例】
【0060】
図1で示すような装置を用いて、下記の条件で窒化鉄微粒子を生成した。また、各実施例の実験条件は、表1及び2にも示す。
【0061】
《実施例1》
〈生成条件〉
金属原料:鉄(ニラコ(株)製、品番:FE−221527、純度:99.5%、13.0g、直径1.5mm及び長さ5mmのペレット状)
液体媒体:アルキルナフタレン(100ml(75g)、商品名:ライオンS、ライオン社製、25℃における蒸気圧6.7×10−7Pa、減圧容器の外側に室温(18℃))の水を流すことによって冷却)
液体媒体中の界面活性剤:ポリブテニルコハク酸ポリアミン(2.25g、商品名:Lubrizol6406、ルブリゾール社製)。
金属原料加熱の加熱装置:1800Wのヒータ
プラズマ発生のための高周波電力(RF):13.56Mz、200W(株式会社ノダRFテクノロジーズ、高周波電源NR03N−02)
雰囲気ガス(N)流量:30sccmで連続的に導入
容器内圧力:2Pa
減圧容器の回転速度:毎分5回転
生成時間:20分
【0062】
なお、真空ポンプとしては、拡散ポンプ(U−250型、株式会社アルバック製)、及び油回転真空ポンプ(D−240DK−100型、株式会社アルバック製)の組み合わせを用いた。また、真空計としては、到達真空計(PKR251、株式会社アネルバ製)、プロセス真空計(901P Transducer NW16KF 901P−11、株式会社日本エム・ケー・エス製)、及び背圧真空計(TPR280、株式会社伯東製)の組み合わせを用いた。
【0063】
実験条件及び得られた微粒子の特性を下記の表1及び2に挙げる。また、得られた微粒子の電子顕微鏡写真を図2に示す。なお、ここで得られた微粒子の平均1次粒子径は7nm、主成分は窒化鉄(Fe16)であった。また、組成分析及び得られた飽和磁化の値から、窒化鉄成分はFe16であると理解される。
【0064】
《実施例2》
導入ガスを窒素から酸素に変更した以外は、実施例1と同条件で粒子を作成した。ここで得られた微粒子は、平均一次粒子径5nmで、主成分は酸化鉄(Fe)であった。
【0065】
《実施例3》
原料を鉄からインジウム(ニラコ(株)製、品番:IN−201487、純度:99.99%、13.0g、直径1.0mm及び長さ5mmのペレット状)、導入ガスを窒素から酸素に変更した以外は、実施例1と同条件で粒子を作成した。ここで得られた微粒子は、平均一次粒子径8nmのインジウム酸化物(In)であった。
【0066】
《実施例4》
原料を鉄からスズ(ニラコ(株)製、品番:SN−441486、純度:99.9%、1.2g、直径1.0mm及び長さ5mmのペレット状)、導入ガスを窒素から酸素に変更した以外は、実施例1と同条件で粒子を作成した。ここで得られた微粒子は、平均一次粒子径7nmのスズ酸化物(SnO)であった。
【0067】
《実施例5》
原料を鉄から、インジウム(ニラコ(株)製、品番:IN−201487、純度:99.99%、12.0g、直径1.0mm及び長さ5mmのペレット状)とスズ(ニラコ(株)製、品番:SN−441486、純度:99.9%、1.2g、直径1.0mm及び長さ5mmのペレット状)、導入ガスを窒素から酸素に変更した以外は、実施例1と同条件で粒子を作成した。ここで得られた微粒子は、平均一次粒子径8nmのインジウム・スズ酸化物(In・SnO)であった。
【0068】
《実施例6》
原料を鉄からチタン(ニラコ(株)製、品番:TI−451485、純度:99.5%、13.0g、直径1.0mm及び長さ5mmのペレット状)、ヒータ出力を2,000Wへ変更した以外は、実施例1と同条件で粒子を作成した。ここで得られた微粒子は、平均一次粒子径5nmの酸化チタン(TiN)であった。
【0069】
《実施例7》
導入ガスを窒素から酸素に変更した以外は、実施例6と同条件で粒子を作成した。ここで得られた微粒子は、平均一次粒子径9nmの酸化チタン(TiO)であった。
【0070】
《実施例8》
原料を鉄からガリウム(ニラコ(株)製、品番:GA−150025、純度:99.9999%、12.5g、粒状)、導入ガスを窒素から酸素に変更した以外は、実施例1と同条件で粒子を作成した。ここで得られた微粒子は、平均一次粒子径5nmの酸化ガリウム(Ga)であった。
【0071】
【表1】

【0072】
《実施例9》
窒素流量を15sccmにし、それによって容器内圧力を0.8Paにしたことを除いて実施例1と同様にして、実施例9の窒化鉄微粒子を製造した。実験条件及び得られた微粒子の特性を下記の表2に挙げる。なお、ここで得られた微粒子の主成分は窒化鉄であった。また、組成分析及び得られた飽和磁化の値から、窒化鉄成分はFe16であると理解される。
【0073】
《実施例10》
窒素流量45sccmにし、それによって容器内圧力を10.0Paにしたことを除いて実施例1と同様にして、実施例10の窒化鉄微粒子を製造した。なお、この実施例では、油拡散式ポンプに代えてメカニカルポンプ(DMB−300、株式会社大亜真空製)を用いた。実験条件及び得られた微粒子の特性を下記の表2に挙げる。なお、ここで得られた微粒子の主成分は窒化鉄であった。また、組成分析及び得られた飽和磁化の値から、窒化鉄成分はFe16であると理解される。
【0074】
《実施例11》
ヒータの出力を2000Wに変えたことを除いて実施例1と同様にして、実施例11の窒化鉄微粒子を製造した。実験条件及び得られた微粒子の特性を下記の表2に挙げる。なお、ここで得られた微粒子の主成分は窒化鉄であった。また、組成分析及び得られた飽和磁化の値から、窒化鉄成分はFe16であると理解される。
【0075】
《実施例12》
減圧容器を加温して液体媒体温度を150℃にし、それによって容器内圧力を5.0Paにしたことを除いて実施例1と同様にして、実施例12の窒化鉄微粒子を製造した。なお、この実施例では、液体媒体温度を挙げることによって、液体媒体の動粘度が低下している。実験条件及び得られた微粒子の特性を下記の表2に挙げる。なお、ここで得られた微粒子の主成分は窒化鉄であった。また、組成分析及び得られた飽和磁化の値から、窒化鉄成分はFe16であると理解される。
【0076】
表2からは、得られた窒化鉄微粒子の平均一次粒子径が大きくなったことにより5Kにおける飽和磁化値と300Kにおける飽和磁化値との差が小さくなったことが理解される。
【0077】
《実施例13》
プラズマ発生電力を50Wに変えたことを除いて実施例1と同様にして、実施例13の窒化鉄微粒子を製造した。実験条件及び得られた微粒子の特性を下記の表2に挙げる。なお、ここで得られた微粒子の主成分は窒化鉄であった。また、組成分析及び得られた飽和磁化の値から、窒化鉄成分はFe16であると理解される。
【0078】
《実施例14》
プラズマ発生電力を100Wに変えたことを除いて実施例1と同様にして、実施例14の窒化鉄微粒子を製造した。実験条件及び得られた微粒子の特性を下記の表2に挙げる。なお、ここで得られた微粒子の主成分は窒化鉄であった。また、組成分析及び得られた飽和磁化の値から、窒化鉄成分はFe16であると理解される。
【0079】
《実施例15》
プラズマ発生電力を300Wに変えたことを除いて実施例1と同様にして、実施例15の窒化鉄微粒子を製造した。実験条件及び得られた微粒子の特性を下記の表2に挙げる。なお、ここで得られた微粒子の主成分は窒化鉄であった。また、組成分析及び得られた飽和磁化の値から、窒化鉄成分はFe16であると理解される。
【0080】
《実施例16》
液体媒体を蒸気圧が比較的大きく且つ動粘度が比較的小さいアルキルナフタレン(ライオンA、100ml(75g))に変更したことを除いて実施例1と同様にして、実施例16の窒化鉄微粒子を製造した。実験条件及び得られた微粒子の特性を下記の表2に挙げる。なお、ここで得られた微粒子の主成分は窒化鉄であった。また、組成分析及び得られた飽和磁化の値から、窒化鉄成分はFe16であると理解される。
【0081】
表2からは、液体媒体の動粘度が小さくなったことによって得られる窒化鉄微粒子の平均一次粒子径が小さくなっており、またそれによって5Kにおける飽和磁化値と300Kにおける飽和磁化値との差が大きくなったことが理解される。
【0082】
《実施例17》
減圧容器の回転速度を毎分1回転に低下させ、且つ液体媒体の量を200mlに増加させたことを除いて実施例1と同様にして、実施例17の窒化鉄微粒子を製造した。実験条件及び得られた微粒子の特性を下記の表2に挙げる。なお、ここで得られた微粒子の主成分は窒化鉄であった。また、組成分析及び得られた飽和磁化の値から、窒化鉄成分はFe16であると理解される。なお、この実施例では、減圧容器の回転速度の低下にもかかわらず、減圧容器の内側に液体媒体の膜が存在するようにするために、液体媒体の量を増加させている。
【0083】
表2からは、液体媒体の量の増加によって得られた窒化鉄微粒子の平均一次粒子径が大きくなったことにより5Kにおける飽和磁化値と300Kにおける飽和磁化値との差が小さくなったことが理解される。
【0084】
《実施例18》
界面活性剤を入れないことを除いて実施例1と同様にして、実施例18の窒化鉄微粒子を製造した。実験条件及び得られた微粒子の特性を下記の表2に挙げる。なお、ここで得られた微粒子の主成分は窒化鉄であった。また、組成分析及び得られた飽和磁化の値から、窒化鉄成分はFe16であると理解される。
【0085】
《比較例1》
プラズマを発生させるための高周波を供給しなかったこと、すなわちプラズマを発生させなかったことを除いて実施例1と同様にして、微粒子のコロイド溶液100mlを得た。実験条件及び得られた微粒子の特性を下記の表2に挙げる。なお、ここで得られた微粒子の主成分は鉄であった。
【0086】
《比較例2》
プラズマを発生させるための高周波を供給しなかったこと、すなわちプラズマを発生させなかったこと、及び窒素を導入させず、それによって容器内圧力を0.05Paにしたことを除いて実施例1と同様にして、微粒子のコロイド溶液100mlを得た。実験条件及び得られた微粒子の特性を下記の表2に挙げる。なお、ここで得られた微粒子の主成分は鉄であった。
【0087】
《比較例3》
プラズマを発生させるための高周波を供給しなかったこと、すなわちプラズマを発生させなかったことを除いて実施例11と同様にして、微粒子のコロイド溶液100mlを得た。実験条件及び得られた微粒子の特性を下記の表2に挙げる。なお、ここで得られた微粒子の主成分は鉄であった。
【0088】
《比較例4》
原料としてガス化された鉄ペンタカルボニル(Fe(CO))を用いたこと、及びヒータ電源を供給しなかったことを除いて実施例1と同様にして、微粒子のコロイド溶液100mlを得た。実験条件及び得られた微粒子の特性を下記の表2に挙げる。なお、ここで得られた微粒子の主成分は窒化鉄であった。また、組成分析及び得られた飽和磁化の値から、窒化鉄成分はFeNであると理解される。
【0089】
《比較例5》
液相法で窒化鉄微粒子を製造した。具体的には、5gのケロシン中に、界面活性剤として3gのポリブテニルコハク酸ポリアミン(商品名:Lubrizol6406、ルブリゾール社製)と混合し、その後17gのFe(CO)(関東化学社製)を入れ、アンモニア(NH)ガスを100cc/minで反応溶液に導入しながら、まず、90℃で3時間加熱し、その後、180℃まで昇温し180℃で1時間反応させた。この反応により、平均一次粒子径9nmのFeNを得られた。得られた微粒子の特性を下記の表2に挙げる。なお、ここで得られた微粒子の主成分は窒化鉄であった。また、組成分析及び得られた飽和磁化の値から、窒化鉄成分はFeNであると理解される。
【0090】
【表2】

【符号の説明】
【0091】
11 原料加熱部
11a 原料保持部
11b 加熱用コイル
12 プラズマ発生部
12a プラズマ雰囲気
15 液体媒体
15a 流動している液体媒体
15r 流動する液体媒体の回転方向を示す矢印
17 減圧容器(液体媒体流動部)
17r 容器の回転方向を示す矢印
18 雰囲気ガス導入部
20 原料
21 蒸発させた原料
100 本発明の装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
減圧容器内で、少なくとも1種の金属及び/又は半金属を含有する原料を加熱して蒸発させ、蒸発させた前記原料を、雰囲気ガスをプラズマ化させたプラズマ雰囲気を介して、金属、半金属、金属化合物及び半金属化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む微粒子として、液体媒体の表面に付着させ、得られた付着物を回収することを含む、微粒子の製造方法。
【請求項2】
蒸発させた前記原料を、前記プラズマ雰囲気と反応させて、金属化合物及び/又は半金属化合物を含む微粒子として液体媒体の表面に付着させ、得られた付着物を回収する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記減圧容器内の圧力が100Pa以下である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記液体媒体が流動している、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記液体媒体は、前記減圧容器の内壁の表面の少なくとも一部を覆っている、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記液体媒体を冷却または加熱する、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記プラズマ雰囲気は、高周波又は直流プラズマ発生装置によって発生される、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記減圧容器内に、前記雰囲気ガスを連続的に導入する、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記プラズマ雰囲気が窒素含有プラズマ雰囲気であり、且つ前記微粒子が、金属窒化物及び/又は半金属窒化物の微粒子である、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記プラズマ雰囲気が硫黄含有プラズマ雰囲気であり、且つ前記微粒子が、金属硫化物及び/又は半金属硫化物の微粒子である、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記プラズマ雰囲気が酸素含有プラズマ雰囲気であり、且つ前記微粒子が、金属酸化物及び/又は半金属酸化物の微粒子である、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
減圧可能な減圧容器、
前記減圧容器内に収容されており、且つ少なくとも1種の金属及び/又は半金属を含有する原料を加熱して蒸発させる、原料加熱部、
前記減圧容器内に収容された液体媒体を流動させる、液体媒体流動部、
前記減圧容器内部に雰囲気ガスを導入する、雰囲気ガス導入部、並びに
少なくとも前記原料加熱部と前記液体媒体との間でプラズマを発生させる、プラズマ発生部、
を有する、微粒子製造装置。
【請求項13】
前記減圧容器が、前記液体媒体流動部としても機能する、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記液体媒体の温度を調整する温度調節部を更に有する、請求項12又は13に記載の装置。
【請求項15】
請求項1〜11のいずれかに記載の微粒子の製造方法により得られる、微粒子。
【請求項16】
請求項15に記載の微粒子を含有している、コロイド溶液。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−50829(P2011−50829A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−200896(P2009−200896)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】