微粒子分散液の製造方法
【課題】微粒子の平均粒径が1000nm未満である結晶性固体脂の微粒子分散液の製造。
【解決手段】結晶性固体脂の微粒子分散液の製造方法は、各々、炭素数が16〜22の範囲にある直鎖飽和アルコールのモノエーテル及びジエーテル、並びに、各々、脂肪族アルコールと炭素数が16〜22の範囲にある直鎖飽和脂肪酸とのモノエステル及びジエステルのうちから選ばれる少なくとも1種を有する結晶性固体脂及び親水性非イオン性界面活性剤を含む融解した油性混合物の第1液と、水性成分の第2液とを、それぞれ流動させて、それらが混在状態になるように接触させ、その混在状態になった第1液及び第2液を混合用細孔に流通させることにより、第1液が第2液に分散して乳化した乳化液を作製し、その乳化液を冷却して結晶性固体脂を平均粒径1000nm未満の微粒子に固化させる。
【解決手段】結晶性固体脂の微粒子分散液の製造方法は、各々、炭素数が16〜22の範囲にある直鎖飽和アルコールのモノエーテル及びジエーテル、並びに、各々、脂肪族アルコールと炭素数が16〜22の範囲にある直鎖飽和脂肪酸とのモノエステル及びジエステルのうちから選ばれる少なくとも1種を有する結晶性固体脂及び親水性非イオン性界面活性剤を含む融解した油性混合物の第1液と、水性成分の第2液とを、それぞれ流動させて、それらが混在状態になるように接触させ、その混在状態になった第1液及び第2液を混合用細孔に流通させることにより、第1液が第2液に分散して乳化した乳化液を作製し、その乳化液を冷却して結晶性固体脂を平均粒径1000nm未満の微粒子に固化させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレタリーを含む衛生用途、医薬品用途、食品用途等において有用な結晶性固体脂の微粒子分散液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
結晶性固体脂の微粒子分散液は、保湿効果や好感触が求められる皮膚や毛髪用の化粧品などに有用である。そして、かかる微粒子分散液の製造方法としては、回転機器を用い、固体脂を含む溶融液と水性溶媒とを固体脂の融点以上の温度下で液液混合して乳化液を調整した後、それを冷却する方法が一般的である。
【0003】
しかしながら、固体脂の結晶性が高いと、液液混合時の均一性が十分でなければ、得られる微粒子分散液中で不均一な結晶化が生じてしまい、品質の安定性を保てないという問題がある。そして、この均一混合性の課題解決の手段としてマイクロミキサーを用いることが考えられる(例えば、特許文献1及び2)。
【0004】
一方、保湿効果や好感触に対する更なる高い要求に応えるためには、微粒子のサイズをより微細化することが求められる。この粒子の微細化の課題解決手段として、一般的には高圧乳化法や超音波乳化法を用いることが考えられる(例えば、特許文献3)。また、固体脂などの有機化合物を例えば有機溶媒に溶解した溶液と水性溶媒とをマイクロミキサーを用いて液液混合することにより有機化合物の微粒子分散液を得る方法もある(例えば、特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2003−500202号公報
【特許文献2】特開2003−321325号公報
【特許文献3】特表平8−507515号公報
【特許文献4】特開2007−8924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、高圧乳化法や超音波乳化法の場合、装置コストが高く生産性が低いという問題がある。また、有機化合物を有機溶媒に溶解した溶液と水性溶媒とをマイクロミキサーを用いて液液混合する方法の場合、有機溶媒を用いるために最終製品の適用範囲が限定されたり、有機溶媒除去のための煩雑な工程が必要となるという問題がある。
【0007】
本出願の課題は、微粒子の平均粒径が1000nm未満である結晶性固体脂の微粒子分散液を効率よく製造できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の結晶性固体脂の微粒子分散液の製造方法は、
各々、炭素数が16〜22の範囲にある直鎖飽和アルコールのモノエーテル及びジエーテル、並びに、各々、脂肪族アルコールと炭素数が16〜22の範囲にある直鎖飽和脂肪酸とのモノエステル及びジエステルのうちから選ばれる少なくとも1種を有する結晶性固体脂及び親水性非イオン性界面活性剤を含む融解した油性混合物の第1液と、水性成分の第2液とを、それぞれ流動させて、それらが混在状態になるように接触させる液接触ステップと、
上記液接触ステップで混在状態になった上記第1液及び上記第2液を混合用細孔に流通させることにより、該第1液が該第2液に分散して乳化した乳化液を作製する液混合ステップと、
上記液混合ステップで作製した上記乳化液を冷却して結晶性固体脂を平均粒径1000nm未満の微粒子に固化させる冷却ステップと、
を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、混在状態になった油性混合物の第1液及び水性成分の第2液を混合用細孔に流通させた後に冷却するという簡単な方法により、微粒子の平均粒径が1000nm未満である結晶性固体脂の微粒子分散液を効率よく製造することができる。そして、製造される結晶性固体脂の微粒子分散液は、粒子が非常に微細であるため、皮膚や毛髪等へ適用する際の付着性や被覆性が大幅に向上し、結果として、保湿効果や感触の点で優れることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】流体混合システムの構成を示す図である。
【図2】液接触部及び混合用細孔を示す説明図である。
【図3】第1の構成のマイクロミキサーを示す断面図である。
【図4】第1の構成のマイクロミキサーの変形例を示す断面図である。
【図5】第1の構成のマイクロミキサーの他の変形例を示す断面図である。
【図6】第2の構成のマイクロミキサーを示す図である。
【図7】第2の構成のマイクロミキサーの変形例を示す図である。
【図8】第3の構成のマイクロミキサーを示す(a)縦断面図、(b)図8(a)におけるVIIIB-VIIIB横断面図及び(c)図8(a)におけるVIIIC-VIIIC横断面図である。
【図9】第3の構成のマイクロミキサーの変形例を示す(a)縦断面図及び(b)図9(a)におけるIXB-IXB横断面図である。
【図10】第4の構成のマイクロミキサーを示す斜視図である。
【図11】第1部材の(a)平面図及び(b)図11(a)におけるXIB-XIB縦断面図である。
【図12】第2部材の平面図である。
【図13】第2部材の要部の拡大平面図である。
【図14】第3部材の(a)平面図及び(b)図14(a)におけるXIVB-XIVB縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態に係る結晶性固体脂の微粒子分散液の製造方法について説明する。
【0012】
(液混合システムA)
まず、微粒子分散液の製造に用いる液混合システムAについて説明する。
【0013】
図1は、その液混合システムAを示す。
【0014】
この液混合システムAは、2種の液の混合に用いられるものであり、一対の液流入部101及び単一の液流出部102を有するマイクロミキサー100と液供給系等の付帯部とで構成されている。
【0015】
マイクロミキサー100の一方の液流入部101には、第1液を貯蔵する第1貯槽31aから延びた第1供給管32aが接続されている。第1供給管32aには、第1液を流通させる第1ポンプ33a、第1液の流量を検知する第1流量計34a及び第1液の夾雑物を除去する第1フィルタ35aが上流側から順に介設されており、第1流量計34aと第1フィルタ35aとの間の部分に第1液の圧力を検知する第1圧力計36aが取り付けられている。第1ポンプ33a、第1流量計34a及び第1圧力計36aのそれぞれは、流量コントローラ37に電気的に接続されている。
【0016】
マイクロミキサー100の他方の液流入部101には、第2液を貯蔵する第2貯槽31bから延びた第2供給管32bが接続されている。第2供給管32bには、第2液を流通させる第2ポンプ33b、第2液の流量を検知する第2流量計34b及び第2液の夾雑物を除去する第2フィルタ35bが上流側から順に介設されており、第2流量計34bと第2フィルタ35bとの間の部分に第2液の圧力を検知する第2圧力計36bが取り付けられている。第2ポンプ33b、第2流量計34b及び第2圧力計36bのそれぞれは、流量コントローラ37に電気的に接続されている。
【0017】
流量コントローラ37は、第1液の設定流量及び設定圧力の入力が可能に構成されていると共に演算素子が組み込まれており、第1液の設定流量情報、第1流量計34aで検知された流量情報及び第1圧力計36aで検知された圧力情報に基づいて第1ポンプ33aを運転制御する。同様に、流量コントローラ37は、第2液の設定流量及び設定圧力の入力も可能に構成されており、第2液の設定流量情報、第2流量計34bで検知された流量情報及び第2圧力計36bで検知された圧力情報に基づいて第2ポンプ33bを運転制御する。
【0018】
マイクロミキサー100の液流出部102からは混合液回収管38が延びて回収槽39に接続されている。
【0019】
混合液回収管38及び回収槽39には、冷却手段が設けられている。かかる冷却手段としては、例えば、混合液回収管38に設けられた熱交換器や回収槽39の外周に設けられた冷却水が循環するジャケット等が挙げられる。これらのうち、微粒子の再合一を抑制する観点から、連続的に冷却することが可能である、混合液回収管38に設けられる管型熱交換器が好ましい。
【0020】
マイクロミキサー100は、図2に示すように、液接触部21とそれに連続して設けられた混合用細孔22とを有する。液接触部21は、液流入部101から供給された第1液及び第2液を、それぞれ流動させた状態で且つそれらが混在状態になるように接触させる。混合用細孔22は、混在状態になった第1液及び第2液を流通させて混合させる。混合用細孔22は、空間のマイクロ化効果により第1液及び第2液を混合させるものであるので非常に小さく、混合性を考慮すると、孔径Dが0.1〜1.0mm、或いは、孔面積Sが0.01〜1.0mm2であるのが好ましい。ここで、孔径Dが0.1mm以上、或いは、孔面積Sが0.01mm2以上であると、圧力損失を小さくできる。かかる観点から、孔径Dについては、0.2mm以上、孔面積Sについては0.04mm2以上であるのがより好ましい。一方、孔径Dが1.0mm以下、或いは、孔面積Sが1.0mm2以下で、混合性が優れている。かかる観点から、孔径Dについては、0.8mm以下、孔面積Sについては0.64mm2以下であるのがより好ましく、0.6mm以下、孔面積Sについては0.36mm2以下であるのがさらに好ましい。なお、孔径Dは、混合用細孔22の横断面外郭を内包する最小円の直径である。
【0021】
上記のように小さい混合用細孔22では、その孔長さLの孔径Dに対する比が40以下であることが好ましい。孔長さLの孔径Dに対する比が40以下であれば、混合用細孔22内での乱流の発達が抑えられ、そのため均一な混合を行うことができる。L/Dが小さい方が圧力損失が小さく、送液系の負担も小さくなることを考慮すると、L/D≦40であることが好ましく、L/D≦20であることがより好ましく、L/D≦10であることがさらに好ましい。一方、耐圧強度の観点から、孔長さLは孔径Dの1/2以上、つまり、L/D≧0.5であることがより好ましく、L/D≧1とするのがさらに好ましい。
【0022】
混合用細孔22は、その横断面外郭形状が特に限定されるものでなく、例えば、円形、半円形、楕円形、半楕円形、正方形、長方形、台形、平行四辺形、星形、不定形等である。また、混合用細孔22は、長さ方向に沿って均一に形成されていても、長さ方向に沿って不均一に形成されていてもいずれでもよい。
【0023】
マイクロミキサー100は、第1液及び第2液の合流形態として、対向型、直角型、Y字型、並行型、二重管型等、特に限定されるものではなく、また、管によって構成されたものであっても、溝が形成された基板の積層構造により内部に液流路が構成されたものであってもいずれでもよい。
【0024】
なお、一般の空間マイクロ化による混合促進効果については、非特許文献(V.Hessel, et al. Chemical Engineering Science 60 (2005) 2479-2501)に記載されている。
【0025】
以下に、4種類のマイクロミキサー100の具体的構成について説明する。
【0026】
<第1の構成>
図3は、第1の構成のマイクロミキサー100を示す。
【0027】
このマイクロミキサー100は、両端部がそれぞれ液流入部101とされた直線管部分110と、その直線管部分110の中央部分から分岐して直交方向に延び管端が液流出部102とされた分岐管部分120とからなるT字管により構成されている。T字管によるこのようなマイクロミキサー100は、装置構成が簡易であり、分解洗浄によるメンテナンスも容易である。
【0028】
直線管部分110は、中央部分の流路が狭くなっており、その中央部分のうち、一方の液流入部101側が第1液流路11aに、また、他方の液流入部101側が第2液流路11bにそれぞれ構成されている。分岐管部分120には、管軸に沿って延びて直線管部分110内に連通した混合用細孔22が形成されている。そして、直線管部分110の中央部、つまり、分岐管部分120への分岐部の管内が混合用細孔22に連続する液接触部21に構成されている。第1液流路11a及び第2液流路11bのそれぞれは、流路断面積、つまり、孔面積が混合用細孔22と同一乃至同程度であり、また、圧損を小さく抑えることができるように流路長さ、つまり、孔長さも混合用細孔22と同一乃至同程度であることが好ましい。
【0029】
このマイクロミキサー100は、第1液及び第2液の液接触部21に向かうそれぞれの流動方向と混合用細孔22の延びる方向とが相互に異なる構成となっている。このように、第1液及び第2液の液接触部21に向かうそれぞれの流動方向と混合用細孔22の延びる方向とが相互に異なると、図4に示すように、第1液及び第2液の液接触部21に向かうそれぞれの流動方向のいずれか一方が混合用細孔22の延びる方向と同じである構成に比べて、高い混合性能を得ることができる。
【0030】
なお、図3に示したものは、直線管部分110の中央部分の流路が狭くなった構成であるが、特にこれに限定されるものではなく、図5に示すように、そのような部分がなく、一方の液流入部101から他方の液流入部101まで一様な流路を有する構成であってもよい。
【0031】
また、図3に示したものは、分岐管部分120に混合用細孔22が形成された構成であるが、特にこれに限定されるものではなく、分岐管部分に連続して混合用細孔が形成された部材を別途接続した構成であってもよい。
【0032】
<第2の構成>
図6は、第2の構成のマイクロミキサー100を示す。なお、第1の構成と同一名称の部分は第1の構成と同一符号で示す。
【0033】
このマイクロミキサー100は、基板積層型のものであって、各々、基板面内を延びる第1液流路11a及び第2液流路11b、並びに、基板面に対して角度を有する方向に延びる混合用細孔22がそれぞれ内部に形成されている。第1液流路11a及び第2液流路11bは、一端同士が結合して開くように延びて略V字状の軌跡を形成しており、前者の他端が一方の液流入部101に、また、後者の他端が他方の液流入部101にそれぞれ構成されている。混合用細孔22は、一端が第1液流路11a及び第2液流路11bの結合部に繋がっており、他端が液流出部102に構成されている。そして、この第1液流路11a及び第2液流路11b、並びに、混合用細孔22の結合部が液接触部21に構成されている。
【0034】
このマイクロミキサー100もまた、第1の構成のものと同様に、第1液及び第2液の液接触部21に向かうそれぞれの流動方向と混合用細孔22の延びる方向とが相互に異なる構成となっている。
【0035】
なお、図6に示したものは、第1液流路11a及び第2液流路11bがそれぞれ単一のものであるが、特にこれに限定されるものではなく、図7に示すように、第1液流路11a及び第2液流路11bがそれぞれ複数ある構成であってもよい。
【0036】
また、このように液流路が3以上ある構成の場合、第1液及び第2液とは異なる第3液をいずれかの液流路に流通させることも可能である。
【0037】
<第3の構成>
図8(a)〜(c)は、第3の構成のマイクロミキサー100を示す。なお、第1の構成と同一名称の部分は第1の構成と同一符号で示す。
【0038】
このマイクロミキサー100は、配管経路に設けられた液流通管10とその液流出側に連続して設けられた液混合部20とを備えている。
【0039】
液流通管10は、大径管12とそれに導入されて挿通された1本の小径管13とにより二重管構造に構成されている。これにより、液流通管10は、小径管13の内側の第1液流路11aと大径管12の内側で且つ小径管13の外側の部分の第2液流路11bとの2つの液流路が管内部に相互に並行に延びて長さ方向に沿って構成されている。そして、小径管の管端が一方の液流入部101に構成され、液流通管10の外部に露出した大径管12の管端が他方の液流入部101に構成されている。二重管構造の液流通管10を有するこのようなマイクロミキサー100は、装置構成が簡易であり、分解洗浄によるメンテナンスも容易である。
【0040】
液混合部20は、液流通管10の液流出端に連続して内部領域を形成している。この内部領域は、液流通管10から流出した第1液及び第2液が接触する液接触部21に構成されている。液混合部20には、液接触部21に連続して設けられた混合用細孔22が穿孔されている。混合用細孔22は、第1液流路11a及び第2液流路11bの延びる方向と同一方向に延びるように形成されている。そして、混合用細孔22に連続して設けられた回収管接続部が液流出部102に構成されている。
【0041】
このマイクロミキサー100は、第1の構成のものや第2の構成のものとは異なり、第1液及び第2液の液接触部21に向かうそれぞれの流動方向、並びに、混合用細孔22の延びる方向がいずれも同じ構成となっている。
【0042】
ところで、流体流通管10から流出して液接触部21で接触した第1液及び第2液は、最終的には混合用細孔22により混合される。このとき、より高速な混合性能を得るためには、液接触部21でのそれらの混在状態が、各液の微小なセグメントで構成されていればよい。従って、第1液流路11aの数がより多いことが好ましく、図8(a)及び(b)に示すように、小径管13が1本である場合よりも、図9(a)及び(b)に示すように小径管13が複数本である場合の方が、より高速な混合特性を得ることができる。
【0043】
また、このように液流路が3以上ある構成の場合、第1液及び第2液とは異なる第3液をいずれかの液流路に流通させることも可能である。
【0044】
なお、この第3の構成において、小径管13の内側を第2液流路及び大径管12の内側で且つ小径管13の外側の部分を第1液流路として使用することもできる。
【0045】
<第4の構成>
図10は、第4の構成のマイクロミキサー100を示す。なお、第1の構成と同一名称の部分は第1の構成と同一符号で示す。
【0046】
このマイクロミキサー100は、各々が同径円盤状に形成された第1〜第3部材140,150,160が積層されて固定された基板積層型のものである。
【0047】
図11(a)及び(b)は第1部材、図12及び13は第2部材、並びに図14(a)及び(b)は第3部材をそれぞれ示す。
【0048】
第1部材140には、第2部材150側の面に、同心状に形成された大円周溝141及び小円周溝142が設けられており、また、小円周溝142の内側は浅底部143に構成されている。さらに、第1部材140には、各々、厚さ方向に貫通して形成された、大円周溝141に連通した一方の液流入部101及び中心部に連通した他方の液流入部101がそれぞれ設けられている。
【0049】
第2部材150には、第3部材160側の面に、各々、中心部から半径方向に延びるように形成された複数の長尺溝151が設けられ(図12では18本)、また、各長尺溝151の外周側端に連続して交差する2方向に分岐して延びるように形成された一対の短尺溝152が設けられ、さらに、各短尺溝152の先端に連続して交差する2方向に分岐して延びるように形成された外周側の第1液供給溝153及び内周側の第2液供給溝154が設けられている。第1液供給溝153及び第2液供給溝154の先端には、厚さ方向に貫通して形成された第1液供給孔155及び第2液供給孔156がそれぞれ設けられている。これにより、第1部材140と第2部材150とを積層した際に、第1液供給孔155が大円周溝141に、及び第2液供給孔156が小円周溝142にそれぞれ連通するように構成されている。
【0050】
第3部材160には、中央部に厚さ方向に貫通するように形成された液流出部102が設けられている。
【0051】
このマイクロミキサー100は、第1〜第3部材140,150,160が積層されると、各溝や浅底部143が対向する部材によって開口が閉じられて孔や閉空間が構成される。そして、このマイクロミキサー100では、一方の液硫入部101から流入した第1液が大円周溝141及び各第1液供給孔155を介して対応する第1液供給溝153に流入し、他方の液流入部101から流入した第2液が浅底部143及び小円周溝142並びに各第2液供給孔155を介して対応する第2液供給溝154に流入し、第1液供給溝153を流動する第1液と第2液供給溝154を流動する第2液とが衝突して接触し、それらが混在状態となって短尺溝152を流動し、第1液が第2液に分散した微粒子分散液化することとなる。従って、短尺溝152が混合用細孔22に相当し、その短尺溝152、並びに第1液供給溝153及び第2液供給溝154の結合部が液接触部21に構成されている。また、このマイクロミキサー100は、第1液及び第2液の液接触部21に向かうそれぞれの流動方向と混合用細孔22の延びる方向とが相互に異なる構成である。
【0052】
短尺溝152を流動する微粒子分散液は他方の短尺溝152からの微粒子分散液と合流して長尺溝151を流動し、中央部で他の長尺溝151からの微粒子分散液とさらに合流して液流出部102から流出することとなる。
【0053】
(結晶性固体脂の微粒子分散液の製造方法)
次に、この液混合システムAを用いた結晶性固体脂の微粒子分散液の製造方法について説明する。この結晶性固体脂の微粒子分散液の製造方法は、結晶性固体脂及び非イオン性界面活性剤を含む融解した油性混合物の第1液と水性成分の第2液とをそれぞれ流動させて、それらが混在状態になるように接触させ、それらを混合用細孔22に流通させることにより第1液が第2液に分散して乳化した乳化液を作製し、それを冷却して結晶性固体脂を固化させるものである。
【0054】
<第1液及び第2液>
第1液は、結晶性固体脂及び非イオン性界面活性剤を含む融解した油性混合物の融解液である。
【0055】
ここで、結晶性固体脂は、炭素数が16〜22の範囲にある直鎖飽和アルコールのモノエーテル、炭素数が16〜22の範囲にある直鎖飽和アルコールのジエーテル、脂肪族アルコールと炭素数が16〜22の範囲にある直鎖飽和脂肪酸とのモノエステル、及び脂肪族アルコールと炭素数が16〜22の範囲にある直鎖飽和脂肪酸とのジエステルから選ばれる少なくとも1種を用いる。結晶性固体脂は、化粧品用途に適するという観点から、融点が35℃以上で結晶性を有し、保存安定性の高い有機化合物であることが好ましい。
【0056】
結晶性固体脂としては、具体的には、例えば、ジアルキルエーテル、アルキルグリセリルエーテル、炭素数8〜22の範囲にある直鎖飽和アルコールと炭素数が16〜22の範囲にある直鎖飽和脂肪酸とのエステル、モノ、ジ、或いはトリエチレングリコールと炭素数が16〜22の範囲にある直鎖飽和脂肪酸とのエステル、モノ或いはジプロピレングリコールと炭素数が16〜22の範囲にある直鎖飽和脂肪酸とのエステル、キミルアルコール或いはバチルアルコールと炭素数が16〜22の範囲にある直鎖飽和脂肪酸とのエステル等が挙げられる。
【0057】
これらのうち、ジアルキルエーテル、アルキルグリセリルエーテル、並びに、炭素数8〜22の範囲にある直鎖飽和アルコール、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、モノプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、キミルアルコール、及びバチルアルコールから選ばれる少なくとも1種と炭素数が16〜22の範囲にある直鎖飽和脂肪酸とのモノエステル、及びそのジエステルが好ましい。
【0058】
より具体的には、結晶性固体脂として、例えば、ジセチルエーテル、ジステアリルエーテル、ジベヘニルエーテル、キミルアルコール、バチルアルコール、パルミチン酸セチル、ステアリン酸ミリスチル、ステアリン酸ステアリル、モノステアリン酸エチレングリコール、モノステアリン酸ジエチレングリコール、ステアリン酸バチル、ジパルミチン酸エチレングリコール、ジステアリン酸エチレングリコール、ジベヘン酸エチレングリコール、パルミチン酸ステアリン酸エチレングリコール、ステアリン酸ベヘン酸エチレングリコール、ジステアリン酸ジエチレングリコール、ジステアリン酸トリエチレングリコール、ジステアリン酸プロピレングリコールなどが上げられる。この中で、特に好ましいものとして、ジステアリルエーテル、ジステアリン酸エチレングリコール等が挙げられる。
【0059】
親水性非イオン性界面活性剤は、公知のものを用いることができるが、比較的親水性の高いものを用いることが好ましい。これにより得られる微粒子の粒径が小さくなり、且つ微粒子分散液の経時変化を抑制することができる。
【0060】
本出願において「親水性」とはHLB値が7以上であることをいう。
【0061】
HLBは、「乳化・可溶化の技術」工学図書(株)(昭59−5−20)p.8−12に記載の計算式に基づいて求められる。より具体的には、多価アルコール脂肪酸エステルの場合、
式:〔HLB〕=20(1−S/A)
(式中、Sはエステルのケン化価、Aは脂肪酸の酸価を示す)に基づいて求められる。多価アルコール脂肪酸エステルのオキシエチレン付加物の場合、
式:〔HLB〕=(E+P)/5
〔式中、Eはオキシエチレン含量(質量%)、Pは多価アルコール含量(質量%)を示す〕に基づいて求められる。高級アルコールのオキシエチレン付加物の場合、
式:〔HLB〕=E/5
(式中、Eは前記と同じ)に基づいて求められる。前記以外の非イオン性界面活性剤の場合、
式:〔HLB〕=7+1.171log(Mw/Mo)
(式中、Mwは界面活性剤の親水性基の分子量、Moは界面活性剤の疎水性基の分子量、logは底が10の対数を示す)に基づいて求められる。
【0062】
非イオン性界面活性剤として、界面活性剤Aと界面活性剤Bの2種類を併用する場合、それぞれのHLBをHLBA及びHLBBとすると、両者を混合した非イオン性界面活性剤のHLBは、それぞれの質量分率をWA、WBとすると、
式:〔HLB〕=〔(WA×HLBA)+(WB×HLBB)〕÷(WA+WB)
に基づいて求められる。また、非イオン性界面活性剤として3種類以上の界面活性剤を併用する場合、前記と同様にしてそれらを混合した非イオン性界面活性剤のHLBを求めることができる。
【0063】
親水性非イオン性界面活性剤としては、具体的には、例えば、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリグリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸モノアルキロールアミド等が挙げられる。これらのうち、結晶性固体脂微粒子の粒径を小さくする観点から、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、脂肪酸モノアルキロールアミドが好ましい。
【0064】
ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテルとしては、例えば、下記式(I)で表されるものが挙げられる。
【0065】
R1−O−(R2O)p−H (I)
(式中、R1は炭素数8〜20の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し、R2はエチレン基又はプロピレン基を示す。pは1〜12、好ましくは1〜6の数で、平均付加モル数を意味する。)
脂肪酸モノアルキロールアミドとしては、例えば、下記(II)で表されるものが挙げられる。
【0066】
R3CO−NH−R4OH (II)
(式中、R3は炭素数7〜20の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し、R4はエチレン基又はプロピレン基を示す。)
これらのうち、結晶性固体脂の融点以上での結晶性固体脂との相溶性及び結晶性固体脂微粒子の粒径を小さくする観点から、HLBが8〜15である親水性非イオン性界面活性剤が好ましく、9〜14であるものがより好ましい。特に好ましいのは、HLBが9〜14で且つ曇点が90℃未満のポリオキシエチレンアルキルエーテルである。
【0067】
結晶性固体脂及び親水性非イオン性界面活性剤のそれぞれについては、1種のみを用いても、また、2種以上を混合して用いてもいずれでもよい。
【0068】
また、結晶性固体脂及び親水性非イオン性界面活性剤については、後で述べる冷却時に結晶性固体脂の微粒子を安定に析出させる観点から、第1液における合計の含有量を70質量%以上とすることが好ましく、75質量%以上とすることがより好ましく、80質量%以上とすることがさらに好ましい。
【0069】
さらに、結晶性固体脂及び親水性非イオン性界面活性剤については、得られる結晶性固体脂の微粒子の粒径を小さくする観点及び結晶性固体脂の微粒子の保存安定性の観点から、結晶性固体脂に対する親水性非イオン性界面活性剤のモル比を、親水性非イオン性界面活性剤/結晶性固体脂=0.1〜0.8とすることが好ましく、0.15〜0.7とすることがより好ましく、0.2〜0.6とすることがさらに好ましい。
【0070】
第1液は融解液の状態で各成分が均一に混合されていることが好ましいが、第1液には、均一に混合された融解液の状態が維持されれば、結晶性固体脂及び親水性非イオン性界面活性剤以外に、融点35℃以上の固体油、液体油、水等を含めてもよい。但し、後で述べる冷却時に結晶性固体脂の微粒子を安定に析出させる観点から、第1液には液体油を含めないことが好ましい。ここで、液体油とは、融点35℃未満の油性成分のことであり、上記親水性非イオン性界面活性剤には該当しない。
【0071】
一方、第2液は、水性成分であり、主として水、つまり、50質量%以上が水である。
【0072】
第2液には、その他にエタノールなどの水混和性の有機溶媒やグリセリンなどの多価アルコール類を含めてもよい。また、第2液には、製造後の結晶性固体脂の微粒子の分散安定化のため、予め、界面活性剤及び/又は高分子分散剤を含有させておいてもよい。界面活性剤は、公知のものが適用可能であり、陰イオン系のものが好ましく、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸ナトリウム等が挙げられる。高分子分散剤も、公知のものが適用可能であり、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール、アルキル変性多糖類、カルボマー類等が挙げられる。
【0073】
<結晶性固体脂の微粒子分散液の製造>
液混合システムAを稼働させると、第1ポンプ33aは、第1液を、第1貯槽31aから第1供給管32aを介し、第1流量計34a及び第1フィルタ35aを順に経由させてマイクロミキサー100の一方の液流入部101に継続的に供給する。第1流量計34aは、検知した第1液の流量情報を流量コントローラ37に送る。また、第1圧力計36aは、検知した第1圧力計36aの圧力情報を流量コントローラ37に送る。
【0074】
第2ポンプ33bは、第2液を、第2貯槽31bから第2供給管32bを介し、第2流量計34b及び第2フィルタ35bを順に経由させてマイクロミキサー100の一方の液
流入部101に継続的に供給する。第2流量計34bは、検知した第2液の流量情報を流量コントローラ37に送る。また、第2圧力計36bは、検知した第2圧力計36bの圧力情報を流量コントローラ37に送る。
【0075】
続いて、流量コントローラ37は、第1液の設定流量情報及び設定圧力情報、並びに、第1流量計34aで検知された流量情報及び第1圧力計36aで検知された圧力情報に基づいて、第1液の設定流量及び設定圧力がそれぞれ維持されるように第1ポンプ33aを運転制御する。それと共に、流量コントローラ37は、第2液の設定流量情報及び設定圧力情報、並びに、第2流量計34bで検知された流量情報及び第2圧力計36bで検知された圧力情報に基づいて、第2液の設定流量及び設定圧力がそれぞれ維持されるように第2ポンプ33bを運転制御する。
【0076】
マイクロミキサー100では、第1液及び第2液が混在状態、つまり、各液の小さいセグメントが混在した状態になるように接触され(液接触ステップ)、それが混合用細孔22に流通され、混合用細孔22において、それが混合用細孔22への縮流及び混合用細孔22内での剪断により引き延ばされて微細なセグメントとなる。このようにマイクロミキサー100を用いることにより、この一連の過程が非常に短時間(0.1秒以内)で進行し、しかも、セグメントサイズのばらつきがほとんど生じず、そのため、第1液と第2液とが微細且つ均一に入り組んだ混在状態が瞬時に得られる。第1液及び第2液がこのような混在状態を経るため、直後に生成する乳化物(O/Wエマルション)は粒子が非常に微細で且つ均一になるものと考えられる(液混合ステップ)。具体的には、平衡状態では水相である水性成分に多く分配するはずの親水性界面活性剤が油相である油性混合物に多く分配されたままの状態で油性混合物の微細化が瞬時に進行し、親水性界面活性剤の水性成分への拡散がそれに引き続いて瞬時に完結することになると予想され、このような特殊な現象が従来の混合方法では成し得なかった微粒子のサイズがナノオーダーである微粒子分散液の生成に関与しているものと考えられる。
【0077】
ここで、混合前の第1液の温度については、少なくとも結晶性固体脂の融点以上であって、第1液が流動化する温度以上に加温して調温する。具体的には、第1液の温度を40〜95℃に調温するのが好ましく、50〜80℃に調温するのがより好ましい。
【0078】
混合前の第2液の温度については、第1液と同様に加温して調温することが好ましいが、第1液の温度と同一であっても、また、異なっていてもいずれでもよい。
【0079】
第1液及び第2液のそれぞれの圧力設定については、送液の圧力が0.01〜3MPaとなるようにすればよい。
【0080】
第1液及び第2液のそれぞれの流量設定については、マイクロミキサー100で十分な混合を行えるという観点及び冷却後も微粒子の粒径が安定であるという観点から、第1液と第2液との混合体積比を、第1液/第2液=1/99〜50/50とするのが好ましく、3/97〜30/70とするのがより好ましい。また、第1液及び第2液を混合して得られる微粒子分散液における結晶性固体脂の濃度は、濃い方が生産性が高く、一方、薄い方が得られる微粒子が安定である。かかる観点から、第1液及び第2液の混合流体における結晶性固体脂の濃度が0.5〜20質量%となるようにするのが好ましく、1〜15質量%となるようにするのがより好ましい。
【0081】
第1液及び第2液の流量設定については、微粒子の生成に好適であるという観点及び過大な圧損が生じるのを防止することができるという観点から、第1液及び第2液を合わせた混合用細孔22への流量を1〜100L/hとすることが好ましく、2〜60L/hとすることがより好ましい。
【0082】
また、この結晶性固体脂の微粒子分散液の製造方法においては、混合用細孔22を流通させる液の線流速を混合用細孔22の孔径Dで除した剪断速度を、混合用細孔22における混合の強さの指標として用いることができる。つまり、混合用細孔22を流通する第1液及び第2液合計の線流速を混合用細孔22の孔径Dで除した値が剪断速度となる。保存安定性に優れる結晶性固体脂の微粒子分散液を得ることができるという観点からは、この剪断速度を5000(1/s)以上となるように設定することが好ましく、また、さらに微細な結晶性固体脂の微粒子分散液を製造することができるという観点からは、剪断速度を10000(1/s)以上となるように設定することが好ましく、30000(1/s)以上となるように設定することがより好ましく、50000(1/s)以上となるように設定することが特に好ましい。
【0083】
そして、マイクロミキサー100の液流出部102からは第1液及び第2液を混合して得られた結晶性固体脂の微粒子分散液が流出し、それが回収管38を介して回収槽39に回収されると共に、このとき、微粒子分散液が冷却されて結晶性固体脂が平均粒径1000nm未満の微粒子に固化して微粒子分散液となる(冷却ステップ)。
【0084】
冷却温度は、冷却後の微粒子分散液の温度であり、結晶性固体脂の融点未満の温度であるが、典型的には、5〜50℃である。微粒子の保存安定性の観点からは5〜40℃とすることが好ましく、10〜25℃とすることがより好ましい。なお、微粒子分散液の冷却については、混合液回収管38における冷却部40による熱交換により行ってもよく、また、回収槽39内で行ってもよく、さらに、それらの両方で行ってもよい。
【0085】
以上のような結晶性固体脂の微粒子分散液の製造方法によれば、混在状態になった油性混合物の第1液及び水性成分の第2液を混合用細孔22に流通させた後に冷却するという簡単な方法により、微粒子の平均粒径が1000nm未満である結晶性固体脂の微粒子分散液を効率よく製造することができる。具体的には、平均粒径(レーザー回折/散乱法又は動的光散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置により測定可能な微粒子の体積基準メジアン粒径又は平均粒径)が1000nm以下(条件によっては、500nm以下、350nm以下、300nm以下、250nm以下、或いは、200nm以下)である結晶性固体脂の微粒子分散液を容易に製造することができる。そして、製造される結晶性固体脂の微粒子分散液は、粒子が非常に微細であるため、皮膚や毛髪等へ適用する際の付着性や被覆性が大幅に向上し、結果として、保湿効果や感触の点で優れることが期待される。
【実施例】
【0086】
以下に、各種構成の微粒子分散液を製造して行った試験評価について説明する。なお、その概要を表1〜3にも示す。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
【表3】
【0090】
(微粒子分散液の製造)
<実施例1>
図3に示す第1の構成のマイクロミキサー100(混合用細孔22:孔径0.3mm及び孔長さ0.9mmの円筒孔)を備えた液混合システムAを用いた。
【0091】
第1貯槽31aに、結晶性固体脂としてのジステアリルエーテルと親水性非イオン性界面活性剤としてのポリオキシエチレン(4.9)ラウリルエーテル(花王社製 商品名:エマルゲン106P、HLB:10.5、曇点:なし)とを、前者に対する後者のモル比(親水性非イオン性界面活性剤/結晶性固体脂)が0.5となるように混合した融解液を第1液として調製した。また、第2貯槽31bに、ポリオキシエチレン(4.5)ラウリルエーテル酢酸ナトリウム(花王社製 商品名:カオーアキポRLM−45NV)2.3質量%を含む水溶液を第2液として調製した。このとき、第1液及び第2液をそれぞれ75℃に調温した。
【0092】
そして、75℃に調温したマイクロミキサー100に対し、上記第1液及び第2液を、体積混合割合(第1液/第2液)=10/90及び総流量4.8L/hとなるように供給した。このときの混合用細孔22における剪断速度は63000(1/s)である。
【0093】
混合液回収管38に設けられた管型熱交換器(冷却水として水道水を冷却したものを使用)により39℃に冷却されて、回収槽39に回収された微粒子分散液を実施例1とした。
【0094】
<実施例2>
親水性非イオン性界面活性剤として、ポリオキシエチレン(9)オレイルエーテル(花王社製 商品名:エマルゲン409P、HLB:12.0、曇点:55℃)を用いたことを除いて実施例1と同様にして得た微粒子分散液を実施例2とした。
【0095】
<実施例3>
管型熱交換器を流通する冷却水の水温を下げて冷却温度を16℃としたことを除いて実施例2と同様にして得た微粒子分散液を実施例3とした。
【0096】
<実施例4>
親水性非イオン性界面活性剤として、ポリオキシエチレン(13)ステアリルエーテル(花王社製 商品名:エマルゲン320P、HLB:13.9、曇点:91℃)を用いたことを除いて実施例1と同様にして得た微粒子分散液を実施例4とした。
【0097】
<実施例5>
親水性非イオン性界面活性剤として、ポリオキシエチレン(6)ソルビタンモノステアレート(花王社製 商品名:レオドールTW−S106、HLB:9.6、曇点:なし)を用いたことを除いて実施例1と同様にして得た微粒子分散液を実施例5とした。
【0098】
<実施例6>
第1貯槽31aに調製した第1液として、結晶性固体脂としてのジステアリルエーテルに対する親水性非イオン性界面活性剤としてのポリオキシエチレン(4.9)ラウリルエーテルのモル比(親水性非イオン性界面活性剤/結晶性固体脂)が1.0となるように混合した融解液を用いたことを除いて実施例1と同様にして得た微粒子分散液を実施例6とした。
【0099】
<実施例7>
図10に示す第4の構成のマイクロミキサー100(チャネル数36個(長尺溝本数:18本)、短尺溝152:0.4mm正方断面及び溝長さ0.8mm、長尺溝151:0.4mm正方断面及び溝長さ9.0mm、液流出部:孔径0.8mm及び孔長さ3.6mmの円筒孔)を備えた液混合システムAを用い、75℃に調温したマイクロミキサー100に対し、第1液及び第2液を、総流量13.2L/hとなるように供給すると共に、管型熱交換器を流通する冷却水の水温を下げて冷却温度を27℃としたことを除いて実施例2と同様にして得た微粒子分散液を実施例7とした。このときの短尺溝152(混合用細孔)における剪断速度は1600(1/s)である。なお、長尺溝151における剪断速度は3200(1/s)であり、液流出部102における剪断速度は9100(1/s)である。
【0100】
<実施例8>
図3に示す第1の構成のマイクロミキサー100(混合用細孔22:孔径0.3mm及び孔長さ0.9mmの円筒孔)を備えた液混合システムAを用いた。
【0101】
第1貯槽31aに、結晶性固体脂としてのジステアリン酸エチレングリコール(東邦化学工業社製 商品名:ペグノールEDS(S))と親水性非イオン性界面活性剤としてのポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル(花王社製 商品名:エマルゲン104P、HLB:9.6、曇点:なし)とを、前者に対する後者のモル比(親水性非イオン性界面活性剤/結晶性固体脂)が0.33となるように混合した融解液を第1液として調製した。また、第2貯槽31bに、ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(花王社製 商品名:エマール227PH11)5.6質量%を含む水溶液を第2液として調製した。このとき、第1液及び第2液をそれぞれ90℃に調温した。
【0102】
そして、90℃に調温したマイクロミキサー100に対し、上記第1液及び第2液を、体積混合割合(第1液/第2液)=15/85及び総流量4.8L/hとなるように供給した。このときの混合用細孔22における剪断速度は63000(1/s)である。
【0103】
混合液回収管38に設けられた管型熱交換器(冷却水として水道水を冷やしたものを使用)により32℃に冷却されて、回収槽39に回収された微粒子分散液を実施例8とした。
【0104】
<実施例9>
図3に示す第1の構成のマイクロミキサー100(混合用細孔22:孔径0.3mm及び孔長さ0.9mmの円筒孔)を備えた液混合システムAを用いた。
【0105】
第1貯槽31aに、結晶性固体脂としてのジステアリン酸エチレングリコール(東邦化学工業社製 商品名:ペグノールEDS(S))と親水性非イオン性界面活性剤としてのポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル(花王社製 商品名:エマルゲン104P、HLB:9.6、曇点:なし)とを、前者に対する後者のモル比(親水性非イオン性界面活性剤/結晶性固体脂)が0.33となるように混合し、そこにさらにイソステアリルグリセリルエーテル(花王社製 商品名:ペネトールGE−IS)を含有量が14質量%となるように混合した融解液を第1液として調製した。また、第2貯槽31bに、ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(花王社製 商品名:エマール227PH11)5.6質量%を含む水溶液を第2液として調製した。このとき、第1液及び第2液をそれぞれ90℃に調温した。
【0106】
そして、90℃に調温したマイクロミキサー100に対し、上記第1液及び第2液を、体積混合割合(第1液/第2液)=18/82及び総流量4.8L/hとなるように供給した。このときの混合用細孔22における剪断速度は63000(1/s)である。
【0107】
混合液回収管38に設けられた管型熱交換器(冷却水として水道水を冷やしたものを使用)により35℃に冷却されて、回収槽39に回収された微粒子分散液を実施例9した。
【0108】
<実施例10>
図3に示す第1の構成のマイクロミキサー100(混合用細孔22:孔径0.3mm及び孔長さ0.9mmの円筒孔)を備えた液混合システムAを用いた。
【0109】
第1貯槽31aに、結晶性固体脂としてのジステアリン酸エチレングリコール(花王社製 商品名:エマノーン3201M)と親水性非イオン性界面活性剤としてのヤシ油モノエタノールアミド(花王社製 商品名:アミゾールC−01、HLB:10.7、曇点:なし)とを、前者に対する後者のモル比(親水性非イオン性界面活性剤/結晶性固体脂)が0.75となるように混合した融解液を第1液として調製した。また、第2貯槽31bに、ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(花王社製 商品名:エマール227PH11)16質量%、クエン酸1水和物0.24質量%、及び安息香酸ナトリウム1.0%を含む水溶液を第2液として調製した。このとき、第1液及び第2液をそれぞれ70℃に調温した。
【0110】
そして、70℃に調温したマイクロミキサー100に対し、上記第1液及び第2液を、体積混合割合(第1液/第2液)=22/78及び総流量5.4L/hとなるように供給した。このときの混合用細孔22における剪断速度は70900(1/s)である。
【0111】
混合液回収管38に設けられた管型熱交換器(冷却水として水道水を冷やしたものを使用)により16℃に冷却されて、回収槽39に回収された微粒子分散液を実施例10とした。
【0112】
<実施例11>
管型熱交換器を流通する冷却水の水温を上げて微粒子分散液の冷却温度を30℃としたことを除いて実施例10と同様にして得た微粒子分散液を実施例11とした。
【0113】
<実施例12>
親水性非イオン性界面活性剤として、ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル(花王社製 商品名:エマルゲン504K、HLB:9.7、曇点:なし)及びヤシ油モノエタノールアミド(花王社製 商品名:アミゾールC−01、HLB:10.7、曇点:なし)を、結晶性固体脂に対する親水性非イオン性界面活性剤のモル比がそれぞれ0.43及び0.37となるように混合した融解液(親水性非イオン性界面活性剤の総量/結晶性固体脂のモル比として0.80)を第1液として用いたことを除いて実施例10と同様にして得た微粒子分散液を実施例12とした。
【0114】
<実施例13>
図8に示す第3の構成のマイクロミキサー100(混合用細孔22:孔径0.3mm及び孔長さ1.0mmの円筒孔)を備えた液混合システムAを用いると共に、親水性非イオン性界面活性剤として、ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル(花王社製 商品名:エマルゲン504K、HLB:9.7、曇点:なし)を、結晶性固体脂に対する親水性非イオン性界面活性剤のモル比が0.43となるように混合した融解液を第1液として用いたことを除いて実施例10と同様にして得た微粒子分散液を実施例13とした。
【0115】
<実施例14>
実施例10で用いたのと同一の融解液を第1液として用いたことを除いて実施例13と同様にして得た微粒子分散液を実施例14とした。
【0116】
<実施例15>
管型熱交換器を流通する冷却水の水温を上げて微粒子分散液の冷却温度を25℃としたことを除いて実施例14と同様にして得た微粒子分散液を実施例15とした。
【0117】
<比較例1>
図8に示す第1の構成のマイクロミキサー100(混合用細孔22:孔径0.3mm及び孔長さ1.0mmの円筒孔)を備えた液混合システムAを用いた。
【0118】
第1貯槽31aに、結晶性固体脂としてのジステアリン酸エチレングリコール(花王社製 商品名:エマノーン3201M)の融解液を第1液として調製した。また、第2貯槽31bに、ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(花王社製 商品名:エマール227PH11)16質量%、クエン酸1水和物0.24質量%、安息香酸ナトリウム1.0%、及び親水性非イオン性界面活性剤としてのポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル(花王社製 商品名:エマルゲン504K、HLB:9.7、曇点:なし)4.4質量%を含む水溶液を第2液として調製した。このとき、第1液及び第2液をそれぞれ70℃に調温した。
【0119】
そして、70℃に調温したマイクロミキサー100に対し、上記第1液及び第2液を、体積混合割合(第1液/第2液)=18/82及び総流量5.4L/hとなるように供給した。このときの混合用細孔22における剪断速度は70900(1/s)である。またこのとき、第2液中の親水性非イオン性界面活性剤と第1液中の結晶性固体脂のモル比は0.43となった。
【0120】
混合液回収管38に設けられた管型熱交換器(冷却水として水道水を冷やしたものを使用)により16℃に冷却されて、回収槽39に回収された微粒子分散液を比較例1とした。
【0121】
(試験評価方法)
<製造直後の外観>
実施例1〜15及び比較例1のそれぞれについて、製造直後の外観の白濁度合を目視観察により評価した。
【0122】
<微粒子の平均粒径>
実施例1〜5及び7のそれぞれについて、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所社製 LA−910)を用いて、製造直後の微粒子の体積基準メジアン粒径を求めた。また、実施例6及び8〜15並びに比較例1のそれぞれについて、動的光散乱法による粒径分布測定装置(大塚電子(株)社製 ELS−Z2)を用いて、製造直後の微粒子の平均粒径を求めた。さらに、実施例3については製造から1.5ヶ月後、並びに実施例8及び9については製造から1週間後のそれぞれの微粒子の平均粒径を、動的光散乱法による粒径分布測定装置(大塚電子(株)社製 ELS−Z2)を用いて求めた。
【0123】
<保存安定性>
実施例1〜15及び比較例1のそれぞれについて、製造直後からの外観の経時変化を下記の基準で評価した。
評価5:室温で1ヶ月以上保管しても外観変化なし。
評価4:室温で1週間以上保管しても外観変化なし。
評価3:室温で1週間保管している間に白濁度合が増した。
評価2:室温で1週間保管している間に増粘を伴って白濁度合が増した。
評価1:製造直後から1時間以内に白濁度合が増し、室温保管しても数日のうちに分離した。
【0124】
(試験評価結果)
<製造直後の外観>
製造直後の外観は、実施例2〜4が「半透明」、実施例1、6及び8が「薄く白濁」、並びに実施例5、7及び9〜15並びに比較例1が「白濁」であった。
【0125】
<微粒子の平均粒径>
実施例1〜5及び7について、製造直後の微粒子の体積基準メジアン粒径は、実施例1が110nm、実施例2が100nm、実施例3が102nm、実施例4が103nm、実施例5が879nm、及び実施例7が748nmであった。
【0126】
実施例6及び8〜15並びに比較例1について、製造直後の微粒子の平均粒径は、実施例6が124nm、実施例8が398nm、実施例9が334nm、実施例10が163nm、実施例11が300nm、実施例12が169nm、実施例13が176nm、実施例14が169nm、実施例15が196nmであった。また、比較例1では目視で確認されるほどの大粒子が多く存在し、平均粒径の正確な測定が不可能であった(測定可能範囲は2000nm以下)。
【0127】
実施例3について、製造から1.5ヶ月後の平均粒径は85nmであった。
【0128】
実施例8及び9について、製造から1週間後の平均粒径は、実施例8が432nm、及び実施例9が314nmであった。
【0129】
<保存安定性>
保存安定性は、実施例3及び10〜15並びに比較例1が評価5、実施例9が評価4、実施例1、2、4、及び8が評価3、実施例5及び6が評価2、並びに実施例7が評価1であった。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明は、トイレタリーを含む衛生用途、医薬品用途、食品用途等に用いられる結晶性固体脂の微粒子分散液の製造方法について有用である。
【符号の説明】
【0131】
22 混合用細孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレタリーを含む衛生用途、医薬品用途、食品用途等において有用な結晶性固体脂の微粒子分散液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
結晶性固体脂の微粒子分散液は、保湿効果や好感触が求められる皮膚や毛髪用の化粧品などに有用である。そして、かかる微粒子分散液の製造方法としては、回転機器を用い、固体脂を含む溶融液と水性溶媒とを固体脂の融点以上の温度下で液液混合して乳化液を調整した後、それを冷却する方法が一般的である。
【0003】
しかしながら、固体脂の結晶性が高いと、液液混合時の均一性が十分でなければ、得られる微粒子分散液中で不均一な結晶化が生じてしまい、品質の安定性を保てないという問題がある。そして、この均一混合性の課題解決の手段としてマイクロミキサーを用いることが考えられる(例えば、特許文献1及び2)。
【0004】
一方、保湿効果や好感触に対する更なる高い要求に応えるためには、微粒子のサイズをより微細化することが求められる。この粒子の微細化の課題解決手段として、一般的には高圧乳化法や超音波乳化法を用いることが考えられる(例えば、特許文献3)。また、固体脂などの有機化合物を例えば有機溶媒に溶解した溶液と水性溶媒とをマイクロミキサーを用いて液液混合することにより有機化合物の微粒子分散液を得る方法もある(例えば、特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2003−500202号公報
【特許文献2】特開2003−321325号公報
【特許文献3】特表平8−507515号公報
【特許文献4】特開2007−8924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、高圧乳化法や超音波乳化法の場合、装置コストが高く生産性が低いという問題がある。また、有機化合物を有機溶媒に溶解した溶液と水性溶媒とをマイクロミキサーを用いて液液混合する方法の場合、有機溶媒を用いるために最終製品の適用範囲が限定されたり、有機溶媒除去のための煩雑な工程が必要となるという問題がある。
【0007】
本出願の課題は、微粒子の平均粒径が1000nm未満である結晶性固体脂の微粒子分散液を効率よく製造できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の結晶性固体脂の微粒子分散液の製造方法は、
各々、炭素数が16〜22の範囲にある直鎖飽和アルコールのモノエーテル及びジエーテル、並びに、各々、脂肪族アルコールと炭素数が16〜22の範囲にある直鎖飽和脂肪酸とのモノエステル及びジエステルのうちから選ばれる少なくとも1種を有する結晶性固体脂及び親水性非イオン性界面活性剤を含む融解した油性混合物の第1液と、水性成分の第2液とを、それぞれ流動させて、それらが混在状態になるように接触させる液接触ステップと、
上記液接触ステップで混在状態になった上記第1液及び上記第2液を混合用細孔に流通させることにより、該第1液が該第2液に分散して乳化した乳化液を作製する液混合ステップと、
上記液混合ステップで作製した上記乳化液を冷却して結晶性固体脂を平均粒径1000nm未満の微粒子に固化させる冷却ステップと、
を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、混在状態になった油性混合物の第1液及び水性成分の第2液を混合用細孔に流通させた後に冷却するという簡単な方法により、微粒子の平均粒径が1000nm未満である結晶性固体脂の微粒子分散液を効率よく製造することができる。そして、製造される結晶性固体脂の微粒子分散液は、粒子が非常に微細であるため、皮膚や毛髪等へ適用する際の付着性や被覆性が大幅に向上し、結果として、保湿効果や感触の点で優れることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】流体混合システムの構成を示す図である。
【図2】液接触部及び混合用細孔を示す説明図である。
【図3】第1の構成のマイクロミキサーを示す断面図である。
【図4】第1の構成のマイクロミキサーの変形例を示す断面図である。
【図5】第1の構成のマイクロミキサーの他の変形例を示す断面図である。
【図6】第2の構成のマイクロミキサーを示す図である。
【図7】第2の構成のマイクロミキサーの変形例を示す図である。
【図8】第3の構成のマイクロミキサーを示す(a)縦断面図、(b)図8(a)におけるVIIIB-VIIIB横断面図及び(c)図8(a)におけるVIIIC-VIIIC横断面図である。
【図9】第3の構成のマイクロミキサーの変形例を示す(a)縦断面図及び(b)図9(a)におけるIXB-IXB横断面図である。
【図10】第4の構成のマイクロミキサーを示す斜視図である。
【図11】第1部材の(a)平面図及び(b)図11(a)におけるXIB-XIB縦断面図である。
【図12】第2部材の平面図である。
【図13】第2部材の要部の拡大平面図である。
【図14】第3部材の(a)平面図及び(b)図14(a)におけるXIVB-XIVB縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態に係る結晶性固体脂の微粒子分散液の製造方法について説明する。
【0012】
(液混合システムA)
まず、微粒子分散液の製造に用いる液混合システムAについて説明する。
【0013】
図1は、その液混合システムAを示す。
【0014】
この液混合システムAは、2種の液の混合に用いられるものであり、一対の液流入部101及び単一の液流出部102を有するマイクロミキサー100と液供給系等の付帯部とで構成されている。
【0015】
マイクロミキサー100の一方の液流入部101には、第1液を貯蔵する第1貯槽31aから延びた第1供給管32aが接続されている。第1供給管32aには、第1液を流通させる第1ポンプ33a、第1液の流量を検知する第1流量計34a及び第1液の夾雑物を除去する第1フィルタ35aが上流側から順に介設されており、第1流量計34aと第1フィルタ35aとの間の部分に第1液の圧力を検知する第1圧力計36aが取り付けられている。第1ポンプ33a、第1流量計34a及び第1圧力計36aのそれぞれは、流量コントローラ37に電気的に接続されている。
【0016】
マイクロミキサー100の他方の液流入部101には、第2液を貯蔵する第2貯槽31bから延びた第2供給管32bが接続されている。第2供給管32bには、第2液を流通させる第2ポンプ33b、第2液の流量を検知する第2流量計34b及び第2液の夾雑物を除去する第2フィルタ35bが上流側から順に介設されており、第2流量計34bと第2フィルタ35bとの間の部分に第2液の圧力を検知する第2圧力計36bが取り付けられている。第2ポンプ33b、第2流量計34b及び第2圧力計36bのそれぞれは、流量コントローラ37に電気的に接続されている。
【0017】
流量コントローラ37は、第1液の設定流量及び設定圧力の入力が可能に構成されていると共に演算素子が組み込まれており、第1液の設定流量情報、第1流量計34aで検知された流量情報及び第1圧力計36aで検知された圧力情報に基づいて第1ポンプ33aを運転制御する。同様に、流量コントローラ37は、第2液の設定流量及び設定圧力の入力も可能に構成されており、第2液の設定流量情報、第2流量計34bで検知された流量情報及び第2圧力計36bで検知された圧力情報に基づいて第2ポンプ33bを運転制御する。
【0018】
マイクロミキサー100の液流出部102からは混合液回収管38が延びて回収槽39に接続されている。
【0019】
混合液回収管38及び回収槽39には、冷却手段が設けられている。かかる冷却手段としては、例えば、混合液回収管38に設けられた熱交換器や回収槽39の外周に設けられた冷却水が循環するジャケット等が挙げられる。これらのうち、微粒子の再合一を抑制する観点から、連続的に冷却することが可能である、混合液回収管38に設けられる管型熱交換器が好ましい。
【0020】
マイクロミキサー100は、図2に示すように、液接触部21とそれに連続して設けられた混合用細孔22とを有する。液接触部21は、液流入部101から供給された第1液及び第2液を、それぞれ流動させた状態で且つそれらが混在状態になるように接触させる。混合用細孔22は、混在状態になった第1液及び第2液を流通させて混合させる。混合用細孔22は、空間のマイクロ化効果により第1液及び第2液を混合させるものであるので非常に小さく、混合性を考慮すると、孔径Dが0.1〜1.0mm、或いは、孔面積Sが0.01〜1.0mm2であるのが好ましい。ここで、孔径Dが0.1mm以上、或いは、孔面積Sが0.01mm2以上であると、圧力損失を小さくできる。かかる観点から、孔径Dについては、0.2mm以上、孔面積Sについては0.04mm2以上であるのがより好ましい。一方、孔径Dが1.0mm以下、或いは、孔面積Sが1.0mm2以下で、混合性が優れている。かかる観点から、孔径Dについては、0.8mm以下、孔面積Sについては0.64mm2以下であるのがより好ましく、0.6mm以下、孔面積Sについては0.36mm2以下であるのがさらに好ましい。なお、孔径Dは、混合用細孔22の横断面外郭を内包する最小円の直径である。
【0021】
上記のように小さい混合用細孔22では、その孔長さLの孔径Dに対する比が40以下であることが好ましい。孔長さLの孔径Dに対する比が40以下であれば、混合用細孔22内での乱流の発達が抑えられ、そのため均一な混合を行うことができる。L/Dが小さい方が圧力損失が小さく、送液系の負担も小さくなることを考慮すると、L/D≦40であることが好ましく、L/D≦20であることがより好ましく、L/D≦10であることがさらに好ましい。一方、耐圧強度の観点から、孔長さLは孔径Dの1/2以上、つまり、L/D≧0.5であることがより好ましく、L/D≧1とするのがさらに好ましい。
【0022】
混合用細孔22は、その横断面外郭形状が特に限定されるものでなく、例えば、円形、半円形、楕円形、半楕円形、正方形、長方形、台形、平行四辺形、星形、不定形等である。また、混合用細孔22は、長さ方向に沿って均一に形成されていても、長さ方向に沿って不均一に形成されていてもいずれでもよい。
【0023】
マイクロミキサー100は、第1液及び第2液の合流形態として、対向型、直角型、Y字型、並行型、二重管型等、特に限定されるものではなく、また、管によって構成されたものであっても、溝が形成された基板の積層構造により内部に液流路が構成されたものであってもいずれでもよい。
【0024】
なお、一般の空間マイクロ化による混合促進効果については、非特許文献(V.Hessel, et al. Chemical Engineering Science 60 (2005) 2479-2501)に記載されている。
【0025】
以下に、4種類のマイクロミキサー100の具体的構成について説明する。
【0026】
<第1の構成>
図3は、第1の構成のマイクロミキサー100を示す。
【0027】
このマイクロミキサー100は、両端部がそれぞれ液流入部101とされた直線管部分110と、その直線管部分110の中央部分から分岐して直交方向に延び管端が液流出部102とされた分岐管部分120とからなるT字管により構成されている。T字管によるこのようなマイクロミキサー100は、装置構成が簡易であり、分解洗浄によるメンテナンスも容易である。
【0028】
直線管部分110は、中央部分の流路が狭くなっており、その中央部分のうち、一方の液流入部101側が第1液流路11aに、また、他方の液流入部101側が第2液流路11bにそれぞれ構成されている。分岐管部分120には、管軸に沿って延びて直線管部分110内に連通した混合用細孔22が形成されている。そして、直線管部分110の中央部、つまり、分岐管部分120への分岐部の管内が混合用細孔22に連続する液接触部21に構成されている。第1液流路11a及び第2液流路11bのそれぞれは、流路断面積、つまり、孔面積が混合用細孔22と同一乃至同程度であり、また、圧損を小さく抑えることができるように流路長さ、つまり、孔長さも混合用細孔22と同一乃至同程度であることが好ましい。
【0029】
このマイクロミキサー100は、第1液及び第2液の液接触部21に向かうそれぞれの流動方向と混合用細孔22の延びる方向とが相互に異なる構成となっている。このように、第1液及び第2液の液接触部21に向かうそれぞれの流動方向と混合用細孔22の延びる方向とが相互に異なると、図4に示すように、第1液及び第2液の液接触部21に向かうそれぞれの流動方向のいずれか一方が混合用細孔22の延びる方向と同じである構成に比べて、高い混合性能を得ることができる。
【0030】
なお、図3に示したものは、直線管部分110の中央部分の流路が狭くなった構成であるが、特にこれに限定されるものではなく、図5に示すように、そのような部分がなく、一方の液流入部101から他方の液流入部101まで一様な流路を有する構成であってもよい。
【0031】
また、図3に示したものは、分岐管部分120に混合用細孔22が形成された構成であるが、特にこれに限定されるものではなく、分岐管部分に連続して混合用細孔が形成された部材を別途接続した構成であってもよい。
【0032】
<第2の構成>
図6は、第2の構成のマイクロミキサー100を示す。なお、第1の構成と同一名称の部分は第1の構成と同一符号で示す。
【0033】
このマイクロミキサー100は、基板積層型のものであって、各々、基板面内を延びる第1液流路11a及び第2液流路11b、並びに、基板面に対して角度を有する方向に延びる混合用細孔22がそれぞれ内部に形成されている。第1液流路11a及び第2液流路11bは、一端同士が結合して開くように延びて略V字状の軌跡を形成しており、前者の他端が一方の液流入部101に、また、後者の他端が他方の液流入部101にそれぞれ構成されている。混合用細孔22は、一端が第1液流路11a及び第2液流路11bの結合部に繋がっており、他端が液流出部102に構成されている。そして、この第1液流路11a及び第2液流路11b、並びに、混合用細孔22の結合部が液接触部21に構成されている。
【0034】
このマイクロミキサー100もまた、第1の構成のものと同様に、第1液及び第2液の液接触部21に向かうそれぞれの流動方向と混合用細孔22の延びる方向とが相互に異なる構成となっている。
【0035】
なお、図6に示したものは、第1液流路11a及び第2液流路11bがそれぞれ単一のものであるが、特にこれに限定されるものではなく、図7に示すように、第1液流路11a及び第2液流路11bがそれぞれ複数ある構成であってもよい。
【0036】
また、このように液流路が3以上ある構成の場合、第1液及び第2液とは異なる第3液をいずれかの液流路に流通させることも可能である。
【0037】
<第3の構成>
図8(a)〜(c)は、第3の構成のマイクロミキサー100を示す。なお、第1の構成と同一名称の部分は第1の構成と同一符号で示す。
【0038】
このマイクロミキサー100は、配管経路に設けられた液流通管10とその液流出側に連続して設けられた液混合部20とを備えている。
【0039】
液流通管10は、大径管12とそれに導入されて挿通された1本の小径管13とにより二重管構造に構成されている。これにより、液流通管10は、小径管13の内側の第1液流路11aと大径管12の内側で且つ小径管13の外側の部分の第2液流路11bとの2つの液流路が管内部に相互に並行に延びて長さ方向に沿って構成されている。そして、小径管の管端が一方の液流入部101に構成され、液流通管10の外部に露出した大径管12の管端が他方の液流入部101に構成されている。二重管構造の液流通管10を有するこのようなマイクロミキサー100は、装置構成が簡易であり、分解洗浄によるメンテナンスも容易である。
【0040】
液混合部20は、液流通管10の液流出端に連続して内部領域を形成している。この内部領域は、液流通管10から流出した第1液及び第2液が接触する液接触部21に構成されている。液混合部20には、液接触部21に連続して設けられた混合用細孔22が穿孔されている。混合用細孔22は、第1液流路11a及び第2液流路11bの延びる方向と同一方向に延びるように形成されている。そして、混合用細孔22に連続して設けられた回収管接続部が液流出部102に構成されている。
【0041】
このマイクロミキサー100は、第1の構成のものや第2の構成のものとは異なり、第1液及び第2液の液接触部21に向かうそれぞれの流動方向、並びに、混合用細孔22の延びる方向がいずれも同じ構成となっている。
【0042】
ところで、流体流通管10から流出して液接触部21で接触した第1液及び第2液は、最終的には混合用細孔22により混合される。このとき、より高速な混合性能を得るためには、液接触部21でのそれらの混在状態が、各液の微小なセグメントで構成されていればよい。従って、第1液流路11aの数がより多いことが好ましく、図8(a)及び(b)に示すように、小径管13が1本である場合よりも、図9(a)及び(b)に示すように小径管13が複数本である場合の方が、より高速な混合特性を得ることができる。
【0043】
また、このように液流路が3以上ある構成の場合、第1液及び第2液とは異なる第3液をいずれかの液流路に流通させることも可能である。
【0044】
なお、この第3の構成において、小径管13の内側を第2液流路及び大径管12の内側で且つ小径管13の外側の部分を第1液流路として使用することもできる。
【0045】
<第4の構成>
図10は、第4の構成のマイクロミキサー100を示す。なお、第1の構成と同一名称の部分は第1の構成と同一符号で示す。
【0046】
このマイクロミキサー100は、各々が同径円盤状に形成された第1〜第3部材140,150,160が積層されて固定された基板積層型のものである。
【0047】
図11(a)及び(b)は第1部材、図12及び13は第2部材、並びに図14(a)及び(b)は第3部材をそれぞれ示す。
【0048】
第1部材140には、第2部材150側の面に、同心状に形成された大円周溝141及び小円周溝142が設けられており、また、小円周溝142の内側は浅底部143に構成されている。さらに、第1部材140には、各々、厚さ方向に貫通して形成された、大円周溝141に連通した一方の液流入部101及び中心部に連通した他方の液流入部101がそれぞれ設けられている。
【0049】
第2部材150には、第3部材160側の面に、各々、中心部から半径方向に延びるように形成された複数の長尺溝151が設けられ(図12では18本)、また、各長尺溝151の外周側端に連続して交差する2方向に分岐して延びるように形成された一対の短尺溝152が設けられ、さらに、各短尺溝152の先端に連続して交差する2方向に分岐して延びるように形成された外周側の第1液供給溝153及び内周側の第2液供給溝154が設けられている。第1液供給溝153及び第2液供給溝154の先端には、厚さ方向に貫通して形成された第1液供給孔155及び第2液供給孔156がそれぞれ設けられている。これにより、第1部材140と第2部材150とを積層した際に、第1液供給孔155が大円周溝141に、及び第2液供給孔156が小円周溝142にそれぞれ連通するように構成されている。
【0050】
第3部材160には、中央部に厚さ方向に貫通するように形成された液流出部102が設けられている。
【0051】
このマイクロミキサー100は、第1〜第3部材140,150,160が積層されると、各溝や浅底部143が対向する部材によって開口が閉じられて孔や閉空間が構成される。そして、このマイクロミキサー100では、一方の液硫入部101から流入した第1液が大円周溝141及び各第1液供給孔155を介して対応する第1液供給溝153に流入し、他方の液流入部101から流入した第2液が浅底部143及び小円周溝142並びに各第2液供給孔155を介して対応する第2液供給溝154に流入し、第1液供給溝153を流動する第1液と第2液供給溝154を流動する第2液とが衝突して接触し、それらが混在状態となって短尺溝152を流動し、第1液が第2液に分散した微粒子分散液化することとなる。従って、短尺溝152が混合用細孔22に相当し、その短尺溝152、並びに第1液供給溝153及び第2液供給溝154の結合部が液接触部21に構成されている。また、このマイクロミキサー100は、第1液及び第2液の液接触部21に向かうそれぞれの流動方向と混合用細孔22の延びる方向とが相互に異なる構成である。
【0052】
短尺溝152を流動する微粒子分散液は他方の短尺溝152からの微粒子分散液と合流して長尺溝151を流動し、中央部で他の長尺溝151からの微粒子分散液とさらに合流して液流出部102から流出することとなる。
【0053】
(結晶性固体脂の微粒子分散液の製造方法)
次に、この液混合システムAを用いた結晶性固体脂の微粒子分散液の製造方法について説明する。この結晶性固体脂の微粒子分散液の製造方法は、結晶性固体脂及び非イオン性界面活性剤を含む融解した油性混合物の第1液と水性成分の第2液とをそれぞれ流動させて、それらが混在状態になるように接触させ、それらを混合用細孔22に流通させることにより第1液が第2液に分散して乳化した乳化液を作製し、それを冷却して結晶性固体脂を固化させるものである。
【0054】
<第1液及び第2液>
第1液は、結晶性固体脂及び非イオン性界面活性剤を含む融解した油性混合物の融解液である。
【0055】
ここで、結晶性固体脂は、炭素数が16〜22の範囲にある直鎖飽和アルコールのモノエーテル、炭素数が16〜22の範囲にある直鎖飽和アルコールのジエーテル、脂肪族アルコールと炭素数が16〜22の範囲にある直鎖飽和脂肪酸とのモノエステル、及び脂肪族アルコールと炭素数が16〜22の範囲にある直鎖飽和脂肪酸とのジエステルから選ばれる少なくとも1種を用いる。結晶性固体脂は、化粧品用途に適するという観点から、融点が35℃以上で結晶性を有し、保存安定性の高い有機化合物であることが好ましい。
【0056】
結晶性固体脂としては、具体的には、例えば、ジアルキルエーテル、アルキルグリセリルエーテル、炭素数8〜22の範囲にある直鎖飽和アルコールと炭素数が16〜22の範囲にある直鎖飽和脂肪酸とのエステル、モノ、ジ、或いはトリエチレングリコールと炭素数が16〜22の範囲にある直鎖飽和脂肪酸とのエステル、モノ或いはジプロピレングリコールと炭素数が16〜22の範囲にある直鎖飽和脂肪酸とのエステル、キミルアルコール或いはバチルアルコールと炭素数が16〜22の範囲にある直鎖飽和脂肪酸とのエステル等が挙げられる。
【0057】
これらのうち、ジアルキルエーテル、アルキルグリセリルエーテル、並びに、炭素数8〜22の範囲にある直鎖飽和アルコール、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、モノプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、キミルアルコール、及びバチルアルコールから選ばれる少なくとも1種と炭素数が16〜22の範囲にある直鎖飽和脂肪酸とのモノエステル、及びそのジエステルが好ましい。
【0058】
より具体的には、結晶性固体脂として、例えば、ジセチルエーテル、ジステアリルエーテル、ジベヘニルエーテル、キミルアルコール、バチルアルコール、パルミチン酸セチル、ステアリン酸ミリスチル、ステアリン酸ステアリル、モノステアリン酸エチレングリコール、モノステアリン酸ジエチレングリコール、ステアリン酸バチル、ジパルミチン酸エチレングリコール、ジステアリン酸エチレングリコール、ジベヘン酸エチレングリコール、パルミチン酸ステアリン酸エチレングリコール、ステアリン酸ベヘン酸エチレングリコール、ジステアリン酸ジエチレングリコール、ジステアリン酸トリエチレングリコール、ジステアリン酸プロピレングリコールなどが上げられる。この中で、特に好ましいものとして、ジステアリルエーテル、ジステアリン酸エチレングリコール等が挙げられる。
【0059】
親水性非イオン性界面活性剤は、公知のものを用いることができるが、比較的親水性の高いものを用いることが好ましい。これにより得られる微粒子の粒径が小さくなり、且つ微粒子分散液の経時変化を抑制することができる。
【0060】
本出願において「親水性」とはHLB値が7以上であることをいう。
【0061】
HLBは、「乳化・可溶化の技術」工学図書(株)(昭59−5−20)p.8−12に記載の計算式に基づいて求められる。より具体的には、多価アルコール脂肪酸エステルの場合、
式:〔HLB〕=20(1−S/A)
(式中、Sはエステルのケン化価、Aは脂肪酸の酸価を示す)に基づいて求められる。多価アルコール脂肪酸エステルのオキシエチレン付加物の場合、
式:〔HLB〕=(E+P)/5
〔式中、Eはオキシエチレン含量(質量%)、Pは多価アルコール含量(質量%)を示す〕に基づいて求められる。高級アルコールのオキシエチレン付加物の場合、
式:〔HLB〕=E/5
(式中、Eは前記と同じ)に基づいて求められる。前記以外の非イオン性界面活性剤の場合、
式:〔HLB〕=7+1.171log(Mw/Mo)
(式中、Mwは界面活性剤の親水性基の分子量、Moは界面活性剤の疎水性基の分子量、logは底が10の対数を示す)に基づいて求められる。
【0062】
非イオン性界面活性剤として、界面活性剤Aと界面活性剤Bの2種類を併用する場合、それぞれのHLBをHLBA及びHLBBとすると、両者を混合した非イオン性界面活性剤のHLBは、それぞれの質量分率をWA、WBとすると、
式:〔HLB〕=〔(WA×HLBA)+(WB×HLBB)〕÷(WA+WB)
に基づいて求められる。また、非イオン性界面活性剤として3種類以上の界面活性剤を併用する場合、前記と同様にしてそれらを混合した非イオン性界面活性剤のHLBを求めることができる。
【0063】
親水性非イオン性界面活性剤としては、具体的には、例えば、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリグリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸モノアルキロールアミド等が挙げられる。これらのうち、結晶性固体脂微粒子の粒径を小さくする観点から、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、脂肪酸モノアルキロールアミドが好ましい。
【0064】
ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテルとしては、例えば、下記式(I)で表されるものが挙げられる。
【0065】
R1−O−(R2O)p−H (I)
(式中、R1は炭素数8〜20の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し、R2はエチレン基又はプロピレン基を示す。pは1〜12、好ましくは1〜6の数で、平均付加モル数を意味する。)
脂肪酸モノアルキロールアミドとしては、例えば、下記(II)で表されるものが挙げられる。
【0066】
R3CO−NH−R4OH (II)
(式中、R3は炭素数7〜20の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し、R4はエチレン基又はプロピレン基を示す。)
これらのうち、結晶性固体脂の融点以上での結晶性固体脂との相溶性及び結晶性固体脂微粒子の粒径を小さくする観点から、HLBが8〜15である親水性非イオン性界面活性剤が好ましく、9〜14であるものがより好ましい。特に好ましいのは、HLBが9〜14で且つ曇点が90℃未満のポリオキシエチレンアルキルエーテルである。
【0067】
結晶性固体脂及び親水性非イオン性界面活性剤のそれぞれについては、1種のみを用いても、また、2種以上を混合して用いてもいずれでもよい。
【0068】
また、結晶性固体脂及び親水性非イオン性界面活性剤については、後で述べる冷却時に結晶性固体脂の微粒子を安定に析出させる観点から、第1液における合計の含有量を70質量%以上とすることが好ましく、75質量%以上とすることがより好ましく、80質量%以上とすることがさらに好ましい。
【0069】
さらに、結晶性固体脂及び親水性非イオン性界面活性剤については、得られる結晶性固体脂の微粒子の粒径を小さくする観点及び結晶性固体脂の微粒子の保存安定性の観点から、結晶性固体脂に対する親水性非イオン性界面活性剤のモル比を、親水性非イオン性界面活性剤/結晶性固体脂=0.1〜0.8とすることが好ましく、0.15〜0.7とすることがより好ましく、0.2〜0.6とすることがさらに好ましい。
【0070】
第1液は融解液の状態で各成分が均一に混合されていることが好ましいが、第1液には、均一に混合された融解液の状態が維持されれば、結晶性固体脂及び親水性非イオン性界面活性剤以外に、融点35℃以上の固体油、液体油、水等を含めてもよい。但し、後で述べる冷却時に結晶性固体脂の微粒子を安定に析出させる観点から、第1液には液体油を含めないことが好ましい。ここで、液体油とは、融点35℃未満の油性成分のことであり、上記親水性非イオン性界面活性剤には該当しない。
【0071】
一方、第2液は、水性成分であり、主として水、つまり、50質量%以上が水である。
【0072】
第2液には、その他にエタノールなどの水混和性の有機溶媒やグリセリンなどの多価アルコール類を含めてもよい。また、第2液には、製造後の結晶性固体脂の微粒子の分散安定化のため、予め、界面活性剤及び/又は高分子分散剤を含有させておいてもよい。界面活性剤は、公知のものが適用可能であり、陰イオン系のものが好ましく、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸ナトリウム等が挙げられる。高分子分散剤も、公知のものが適用可能であり、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール、アルキル変性多糖類、カルボマー類等が挙げられる。
【0073】
<結晶性固体脂の微粒子分散液の製造>
液混合システムAを稼働させると、第1ポンプ33aは、第1液を、第1貯槽31aから第1供給管32aを介し、第1流量計34a及び第1フィルタ35aを順に経由させてマイクロミキサー100の一方の液流入部101に継続的に供給する。第1流量計34aは、検知した第1液の流量情報を流量コントローラ37に送る。また、第1圧力計36aは、検知した第1圧力計36aの圧力情報を流量コントローラ37に送る。
【0074】
第2ポンプ33bは、第2液を、第2貯槽31bから第2供給管32bを介し、第2流量計34b及び第2フィルタ35bを順に経由させてマイクロミキサー100の一方の液
流入部101に継続的に供給する。第2流量計34bは、検知した第2液の流量情報を流量コントローラ37に送る。また、第2圧力計36bは、検知した第2圧力計36bの圧力情報を流量コントローラ37に送る。
【0075】
続いて、流量コントローラ37は、第1液の設定流量情報及び設定圧力情報、並びに、第1流量計34aで検知された流量情報及び第1圧力計36aで検知された圧力情報に基づいて、第1液の設定流量及び設定圧力がそれぞれ維持されるように第1ポンプ33aを運転制御する。それと共に、流量コントローラ37は、第2液の設定流量情報及び設定圧力情報、並びに、第2流量計34bで検知された流量情報及び第2圧力計36bで検知された圧力情報に基づいて、第2液の設定流量及び設定圧力がそれぞれ維持されるように第2ポンプ33bを運転制御する。
【0076】
マイクロミキサー100では、第1液及び第2液が混在状態、つまり、各液の小さいセグメントが混在した状態になるように接触され(液接触ステップ)、それが混合用細孔22に流通され、混合用細孔22において、それが混合用細孔22への縮流及び混合用細孔22内での剪断により引き延ばされて微細なセグメントとなる。このようにマイクロミキサー100を用いることにより、この一連の過程が非常に短時間(0.1秒以内)で進行し、しかも、セグメントサイズのばらつきがほとんど生じず、そのため、第1液と第2液とが微細且つ均一に入り組んだ混在状態が瞬時に得られる。第1液及び第2液がこのような混在状態を経るため、直後に生成する乳化物(O/Wエマルション)は粒子が非常に微細で且つ均一になるものと考えられる(液混合ステップ)。具体的には、平衡状態では水相である水性成分に多く分配するはずの親水性界面活性剤が油相である油性混合物に多く分配されたままの状態で油性混合物の微細化が瞬時に進行し、親水性界面活性剤の水性成分への拡散がそれに引き続いて瞬時に完結することになると予想され、このような特殊な現象が従来の混合方法では成し得なかった微粒子のサイズがナノオーダーである微粒子分散液の生成に関与しているものと考えられる。
【0077】
ここで、混合前の第1液の温度については、少なくとも結晶性固体脂の融点以上であって、第1液が流動化する温度以上に加温して調温する。具体的には、第1液の温度を40〜95℃に調温するのが好ましく、50〜80℃に調温するのがより好ましい。
【0078】
混合前の第2液の温度については、第1液と同様に加温して調温することが好ましいが、第1液の温度と同一であっても、また、異なっていてもいずれでもよい。
【0079】
第1液及び第2液のそれぞれの圧力設定については、送液の圧力が0.01〜3MPaとなるようにすればよい。
【0080】
第1液及び第2液のそれぞれの流量設定については、マイクロミキサー100で十分な混合を行えるという観点及び冷却後も微粒子の粒径が安定であるという観点から、第1液と第2液との混合体積比を、第1液/第2液=1/99〜50/50とするのが好ましく、3/97〜30/70とするのがより好ましい。また、第1液及び第2液を混合して得られる微粒子分散液における結晶性固体脂の濃度は、濃い方が生産性が高く、一方、薄い方が得られる微粒子が安定である。かかる観点から、第1液及び第2液の混合流体における結晶性固体脂の濃度が0.5〜20質量%となるようにするのが好ましく、1〜15質量%となるようにするのがより好ましい。
【0081】
第1液及び第2液の流量設定については、微粒子の生成に好適であるという観点及び過大な圧損が生じるのを防止することができるという観点から、第1液及び第2液を合わせた混合用細孔22への流量を1〜100L/hとすることが好ましく、2〜60L/hとすることがより好ましい。
【0082】
また、この結晶性固体脂の微粒子分散液の製造方法においては、混合用細孔22を流通させる液の線流速を混合用細孔22の孔径Dで除した剪断速度を、混合用細孔22における混合の強さの指標として用いることができる。つまり、混合用細孔22を流通する第1液及び第2液合計の線流速を混合用細孔22の孔径Dで除した値が剪断速度となる。保存安定性に優れる結晶性固体脂の微粒子分散液を得ることができるという観点からは、この剪断速度を5000(1/s)以上となるように設定することが好ましく、また、さらに微細な結晶性固体脂の微粒子分散液を製造することができるという観点からは、剪断速度を10000(1/s)以上となるように設定することが好ましく、30000(1/s)以上となるように設定することがより好ましく、50000(1/s)以上となるように設定することが特に好ましい。
【0083】
そして、マイクロミキサー100の液流出部102からは第1液及び第2液を混合して得られた結晶性固体脂の微粒子分散液が流出し、それが回収管38を介して回収槽39に回収されると共に、このとき、微粒子分散液が冷却されて結晶性固体脂が平均粒径1000nm未満の微粒子に固化して微粒子分散液となる(冷却ステップ)。
【0084】
冷却温度は、冷却後の微粒子分散液の温度であり、結晶性固体脂の融点未満の温度であるが、典型的には、5〜50℃である。微粒子の保存安定性の観点からは5〜40℃とすることが好ましく、10〜25℃とすることがより好ましい。なお、微粒子分散液の冷却については、混合液回収管38における冷却部40による熱交換により行ってもよく、また、回収槽39内で行ってもよく、さらに、それらの両方で行ってもよい。
【0085】
以上のような結晶性固体脂の微粒子分散液の製造方法によれば、混在状態になった油性混合物の第1液及び水性成分の第2液を混合用細孔22に流通させた後に冷却するという簡単な方法により、微粒子の平均粒径が1000nm未満である結晶性固体脂の微粒子分散液を効率よく製造することができる。具体的には、平均粒径(レーザー回折/散乱法又は動的光散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置により測定可能な微粒子の体積基準メジアン粒径又は平均粒径)が1000nm以下(条件によっては、500nm以下、350nm以下、300nm以下、250nm以下、或いは、200nm以下)である結晶性固体脂の微粒子分散液を容易に製造することができる。そして、製造される結晶性固体脂の微粒子分散液は、粒子が非常に微細であるため、皮膚や毛髪等へ適用する際の付着性や被覆性が大幅に向上し、結果として、保湿効果や感触の点で優れることが期待される。
【実施例】
【0086】
以下に、各種構成の微粒子分散液を製造して行った試験評価について説明する。なお、その概要を表1〜3にも示す。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
【表3】
【0090】
(微粒子分散液の製造)
<実施例1>
図3に示す第1の構成のマイクロミキサー100(混合用細孔22:孔径0.3mm及び孔長さ0.9mmの円筒孔)を備えた液混合システムAを用いた。
【0091】
第1貯槽31aに、結晶性固体脂としてのジステアリルエーテルと親水性非イオン性界面活性剤としてのポリオキシエチレン(4.9)ラウリルエーテル(花王社製 商品名:エマルゲン106P、HLB:10.5、曇点:なし)とを、前者に対する後者のモル比(親水性非イオン性界面活性剤/結晶性固体脂)が0.5となるように混合した融解液を第1液として調製した。また、第2貯槽31bに、ポリオキシエチレン(4.5)ラウリルエーテル酢酸ナトリウム(花王社製 商品名:カオーアキポRLM−45NV)2.3質量%を含む水溶液を第2液として調製した。このとき、第1液及び第2液をそれぞれ75℃に調温した。
【0092】
そして、75℃に調温したマイクロミキサー100に対し、上記第1液及び第2液を、体積混合割合(第1液/第2液)=10/90及び総流量4.8L/hとなるように供給した。このときの混合用細孔22における剪断速度は63000(1/s)である。
【0093】
混合液回収管38に設けられた管型熱交換器(冷却水として水道水を冷却したものを使用)により39℃に冷却されて、回収槽39に回収された微粒子分散液を実施例1とした。
【0094】
<実施例2>
親水性非イオン性界面活性剤として、ポリオキシエチレン(9)オレイルエーテル(花王社製 商品名:エマルゲン409P、HLB:12.0、曇点:55℃)を用いたことを除いて実施例1と同様にして得た微粒子分散液を実施例2とした。
【0095】
<実施例3>
管型熱交換器を流通する冷却水の水温を下げて冷却温度を16℃としたことを除いて実施例2と同様にして得た微粒子分散液を実施例3とした。
【0096】
<実施例4>
親水性非イオン性界面活性剤として、ポリオキシエチレン(13)ステアリルエーテル(花王社製 商品名:エマルゲン320P、HLB:13.9、曇点:91℃)を用いたことを除いて実施例1と同様にして得た微粒子分散液を実施例4とした。
【0097】
<実施例5>
親水性非イオン性界面活性剤として、ポリオキシエチレン(6)ソルビタンモノステアレート(花王社製 商品名:レオドールTW−S106、HLB:9.6、曇点:なし)を用いたことを除いて実施例1と同様にして得た微粒子分散液を実施例5とした。
【0098】
<実施例6>
第1貯槽31aに調製した第1液として、結晶性固体脂としてのジステアリルエーテルに対する親水性非イオン性界面活性剤としてのポリオキシエチレン(4.9)ラウリルエーテルのモル比(親水性非イオン性界面活性剤/結晶性固体脂)が1.0となるように混合した融解液を用いたことを除いて実施例1と同様にして得た微粒子分散液を実施例6とした。
【0099】
<実施例7>
図10に示す第4の構成のマイクロミキサー100(チャネル数36個(長尺溝本数:18本)、短尺溝152:0.4mm正方断面及び溝長さ0.8mm、長尺溝151:0.4mm正方断面及び溝長さ9.0mm、液流出部:孔径0.8mm及び孔長さ3.6mmの円筒孔)を備えた液混合システムAを用い、75℃に調温したマイクロミキサー100に対し、第1液及び第2液を、総流量13.2L/hとなるように供給すると共に、管型熱交換器を流通する冷却水の水温を下げて冷却温度を27℃としたことを除いて実施例2と同様にして得た微粒子分散液を実施例7とした。このときの短尺溝152(混合用細孔)における剪断速度は1600(1/s)である。なお、長尺溝151における剪断速度は3200(1/s)であり、液流出部102における剪断速度は9100(1/s)である。
【0100】
<実施例8>
図3に示す第1の構成のマイクロミキサー100(混合用細孔22:孔径0.3mm及び孔長さ0.9mmの円筒孔)を備えた液混合システムAを用いた。
【0101】
第1貯槽31aに、結晶性固体脂としてのジステアリン酸エチレングリコール(東邦化学工業社製 商品名:ペグノールEDS(S))と親水性非イオン性界面活性剤としてのポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル(花王社製 商品名:エマルゲン104P、HLB:9.6、曇点:なし)とを、前者に対する後者のモル比(親水性非イオン性界面活性剤/結晶性固体脂)が0.33となるように混合した融解液を第1液として調製した。また、第2貯槽31bに、ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(花王社製 商品名:エマール227PH11)5.6質量%を含む水溶液を第2液として調製した。このとき、第1液及び第2液をそれぞれ90℃に調温した。
【0102】
そして、90℃に調温したマイクロミキサー100に対し、上記第1液及び第2液を、体積混合割合(第1液/第2液)=15/85及び総流量4.8L/hとなるように供給した。このときの混合用細孔22における剪断速度は63000(1/s)である。
【0103】
混合液回収管38に設けられた管型熱交換器(冷却水として水道水を冷やしたものを使用)により32℃に冷却されて、回収槽39に回収された微粒子分散液を実施例8とした。
【0104】
<実施例9>
図3に示す第1の構成のマイクロミキサー100(混合用細孔22:孔径0.3mm及び孔長さ0.9mmの円筒孔)を備えた液混合システムAを用いた。
【0105】
第1貯槽31aに、結晶性固体脂としてのジステアリン酸エチレングリコール(東邦化学工業社製 商品名:ペグノールEDS(S))と親水性非イオン性界面活性剤としてのポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル(花王社製 商品名:エマルゲン104P、HLB:9.6、曇点:なし)とを、前者に対する後者のモル比(親水性非イオン性界面活性剤/結晶性固体脂)が0.33となるように混合し、そこにさらにイソステアリルグリセリルエーテル(花王社製 商品名:ペネトールGE−IS)を含有量が14質量%となるように混合した融解液を第1液として調製した。また、第2貯槽31bに、ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(花王社製 商品名:エマール227PH11)5.6質量%を含む水溶液を第2液として調製した。このとき、第1液及び第2液をそれぞれ90℃に調温した。
【0106】
そして、90℃に調温したマイクロミキサー100に対し、上記第1液及び第2液を、体積混合割合(第1液/第2液)=18/82及び総流量4.8L/hとなるように供給した。このときの混合用細孔22における剪断速度は63000(1/s)である。
【0107】
混合液回収管38に設けられた管型熱交換器(冷却水として水道水を冷やしたものを使用)により35℃に冷却されて、回収槽39に回収された微粒子分散液を実施例9した。
【0108】
<実施例10>
図3に示す第1の構成のマイクロミキサー100(混合用細孔22:孔径0.3mm及び孔長さ0.9mmの円筒孔)を備えた液混合システムAを用いた。
【0109】
第1貯槽31aに、結晶性固体脂としてのジステアリン酸エチレングリコール(花王社製 商品名:エマノーン3201M)と親水性非イオン性界面活性剤としてのヤシ油モノエタノールアミド(花王社製 商品名:アミゾールC−01、HLB:10.7、曇点:なし)とを、前者に対する後者のモル比(親水性非イオン性界面活性剤/結晶性固体脂)が0.75となるように混合した融解液を第1液として調製した。また、第2貯槽31bに、ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(花王社製 商品名:エマール227PH11)16質量%、クエン酸1水和物0.24質量%、及び安息香酸ナトリウム1.0%を含む水溶液を第2液として調製した。このとき、第1液及び第2液をそれぞれ70℃に調温した。
【0110】
そして、70℃に調温したマイクロミキサー100に対し、上記第1液及び第2液を、体積混合割合(第1液/第2液)=22/78及び総流量5.4L/hとなるように供給した。このときの混合用細孔22における剪断速度は70900(1/s)である。
【0111】
混合液回収管38に設けられた管型熱交換器(冷却水として水道水を冷やしたものを使用)により16℃に冷却されて、回収槽39に回収された微粒子分散液を実施例10とした。
【0112】
<実施例11>
管型熱交換器を流通する冷却水の水温を上げて微粒子分散液の冷却温度を30℃としたことを除いて実施例10と同様にして得た微粒子分散液を実施例11とした。
【0113】
<実施例12>
親水性非イオン性界面活性剤として、ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル(花王社製 商品名:エマルゲン504K、HLB:9.7、曇点:なし)及びヤシ油モノエタノールアミド(花王社製 商品名:アミゾールC−01、HLB:10.7、曇点:なし)を、結晶性固体脂に対する親水性非イオン性界面活性剤のモル比がそれぞれ0.43及び0.37となるように混合した融解液(親水性非イオン性界面活性剤の総量/結晶性固体脂のモル比として0.80)を第1液として用いたことを除いて実施例10と同様にして得た微粒子分散液を実施例12とした。
【0114】
<実施例13>
図8に示す第3の構成のマイクロミキサー100(混合用細孔22:孔径0.3mm及び孔長さ1.0mmの円筒孔)を備えた液混合システムAを用いると共に、親水性非イオン性界面活性剤として、ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル(花王社製 商品名:エマルゲン504K、HLB:9.7、曇点:なし)を、結晶性固体脂に対する親水性非イオン性界面活性剤のモル比が0.43となるように混合した融解液を第1液として用いたことを除いて実施例10と同様にして得た微粒子分散液を実施例13とした。
【0115】
<実施例14>
実施例10で用いたのと同一の融解液を第1液として用いたことを除いて実施例13と同様にして得た微粒子分散液を実施例14とした。
【0116】
<実施例15>
管型熱交換器を流通する冷却水の水温を上げて微粒子分散液の冷却温度を25℃としたことを除いて実施例14と同様にして得た微粒子分散液を実施例15とした。
【0117】
<比較例1>
図8に示す第1の構成のマイクロミキサー100(混合用細孔22:孔径0.3mm及び孔長さ1.0mmの円筒孔)を備えた液混合システムAを用いた。
【0118】
第1貯槽31aに、結晶性固体脂としてのジステアリン酸エチレングリコール(花王社製 商品名:エマノーン3201M)の融解液を第1液として調製した。また、第2貯槽31bに、ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(花王社製 商品名:エマール227PH11)16質量%、クエン酸1水和物0.24質量%、安息香酸ナトリウム1.0%、及び親水性非イオン性界面活性剤としてのポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル(花王社製 商品名:エマルゲン504K、HLB:9.7、曇点:なし)4.4質量%を含む水溶液を第2液として調製した。このとき、第1液及び第2液をそれぞれ70℃に調温した。
【0119】
そして、70℃に調温したマイクロミキサー100に対し、上記第1液及び第2液を、体積混合割合(第1液/第2液)=18/82及び総流量5.4L/hとなるように供給した。このときの混合用細孔22における剪断速度は70900(1/s)である。またこのとき、第2液中の親水性非イオン性界面活性剤と第1液中の結晶性固体脂のモル比は0.43となった。
【0120】
混合液回収管38に設けられた管型熱交換器(冷却水として水道水を冷やしたものを使用)により16℃に冷却されて、回収槽39に回収された微粒子分散液を比較例1とした。
【0121】
(試験評価方法)
<製造直後の外観>
実施例1〜15及び比較例1のそれぞれについて、製造直後の外観の白濁度合を目視観察により評価した。
【0122】
<微粒子の平均粒径>
実施例1〜5及び7のそれぞれについて、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所社製 LA−910)を用いて、製造直後の微粒子の体積基準メジアン粒径を求めた。また、実施例6及び8〜15並びに比較例1のそれぞれについて、動的光散乱法による粒径分布測定装置(大塚電子(株)社製 ELS−Z2)を用いて、製造直後の微粒子の平均粒径を求めた。さらに、実施例3については製造から1.5ヶ月後、並びに実施例8及び9については製造から1週間後のそれぞれの微粒子の平均粒径を、動的光散乱法による粒径分布測定装置(大塚電子(株)社製 ELS−Z2)を用いて求めた。
【0123】
<保存安定性>
実施例1〜15及び比較例1のそれぞれについて、製造直後からの外観の経時変化を下記の基準で評価した。
評価5:室温で1ヶ月以上保管しても外観変化なし。
評価4:室温で1週間以上保管しても外観変化なし。
評価3:室温で1週間保管している間に白濁度合が増した。
評価2:室温で1週間保管している間に増粘を伴って白濁度合が増した。
評価1:製造直後から1時間以内に白濁度合が増し、室温保管しても数日のうちに分離した。
【0124】
(試験評価結果)
<製造直後の外観>
製造直後の外観は、実施例2〜4が「半透明」、実施例1、6及び8が「薄く白濁」、並びに実施例5、7及び9〜15並びに比較例1が「白濁」であった。
【0125】
<微粒子の平均粒径>
実施例1〜5及び7について、製造直後の微粒子の体積基準メジアン粒径は、実施例1が110nm、実施例2が100nm、実施例3が102nm、実施例4が103nm、実施例5が879nm、及び実施例7が748nmであった。
【0126】
実施例6及び8〜15並びに比較例1について、製造直後の微粒子の平均粒径は、実施例6が124nm、実施例8が398nm、実施例9が334nm、実施例10が163nm、実施例11が300nm、実施例12が169nm、実施例13が176nm、実施例14が169nm、実施例15が196nmであった。また、比較例1では目視で確認されるほどの大粒子が多く存在し、平均粒径の正確な測定が不可能であった(測定可能範囲は2000nm以下)。
【0127】
実施例3について、製造から1.5ヶ月後の平均粒径は85nmであった。
【0128】
実施例8及び9について、製造から1週間後の平均粒径は、実施例8が432nm、及び実施例9が314nmであった。
【0129】
<保存安定性>
保存安定性は、実施例3及び10〜15並びに比較例1が評価5、実施例9が評価4、実施例1、2、4、及び8が評価3、実施例5及び6が評価2、並びに実施例7が評価1であった。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明は、トイレタリーを含む衛生用途、医薬品用途、食品用途等に用いられる結晶性固体脂の微粒子分散液の製造方法について有用である。
【符号の説明】
【0131】
22 混合用細孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々、炭素数が16〜22の範囲にある直鎖飽和アルコールのモノエーテル及びジエーテル、並びに、各々、脂肪族アルコールと炭素数が16〜22の範囲にある直鎖飽和脂肪酸とのモノエステル及びジエステルのうちから選ばれる少なくとも1種を有する結晶性固体脂及び親水性非イオン性界面活性剤を含む融解した油性混合物の第1液と、水性成分の第2液とを、それぞれ流動させて、それらが混在状態になるように接触させる液接触ステップと、
上記液接触ステップで混在状態になった上記第1液及び上記第2液を混合用細孔に流通させることにより、該第1液が該第2液に分散して乳化した乳化液を作製する液混合ステップと、
上記液混合ステップで作製した上記乳化液を冷却して結晶性固体脂を平均粒径1000nm未満の微粒子に固化させる冷却ステップと、
を備えた結晶性固体脂の微粒子分散液の製造方法。
【請求項2】
上記第1液の結晶性固体脂が、ジアルキルエーテル又はアルキルグリセリルエーテルを有する請求項1に記載の結晶性固体脂の微粒子分散液の製造方法。
【請求項3】
上記第1液の結晶性固体脂が、炭素数8〜22の範囲にある直鎖飽和アルコール、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、モノプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、キミルアルコール、及びバチルアルコールのうちから選ばれる少なくとも1種と炭素数が16〜22の範囲にある直鎖飽和脂肪酸とのモノエステル又はジエステルを有する請求項1に記載された微粒子分散液の製造方法。
【請求項4】
上記第1液における結晶性固体脂に対する親水性非イオン性界面活性剤のモル比を0.1〜0.8とする請求項1乃至3のいずれかに記載された微粒子分散液の製造方法。
【請求項5】
上記第1液における結晶性固体脂及び親水性非イオン性界面活性剤の合計の含有量が70質量%以上である請求項1乃至4のいずれかに記載された微粒子分散液の製造方法。
【請求項6】
上記混合用細孔は、その孔面積が0.01〜1.0mm2である請求項1乃至5のいずれかに記載された微粒子分散液の製造方法。
【請求項1】
各々、炭素数が16〜22の範囲にある直鎖飽和アルコールのモノエーテル及びジエーテル、並びに、各々、脂肪族アルコールと炭素数が16〜22の範囲にある直鎖飽和脂肪酸とのモノエステル及びジエステルのうちから選ばれる少なくとも1種を有する結晶性固体脂及び親水性非イオン性界面活性剤を含む融解した油性混合物の第1液と、水性成分の第2液とを、それぞれ流動させて、それらが混在状態になるように接触させる液接触ステップと、
上記液接触ステップで混在状態になった上記第1液及び上記第2液を混合用細孔に流通させることにより、該第1液が該第2液に分散して乳化した乳化液を作製する液混合ステップと、
上記液混合ステップで作製した上記乳化液を冷却して結晶性固体脂を平均粒径1000nm未満の微粒子に固化させる冷却ステップと、
を備えた結晶性固体脂の微粒子分散液の製造方法。
【請求項2】
上記第1液の結晶性固体脂が、ジアルキルエーテル又はアルキルグリセリルエーテルを有する請求項1に記載の結晶性固体脂の微粒子分散液の製造方法。
【請求項3】
上記第1液の結晶性固体脂が、炭素数8〜22の範囲にある直鎖飽和アルコール、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、モノプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、キミルアルコール、及びバチルアルコールのうちから選ばれる少なくとも1種と炭素数が16〜22の範囲にある直鎖飽和脂肪酸とのモノエステル又はジエステルを有する請求項1に記載された微粒子分散液の製造方法。
【請求項4】
上記第1液における結晶性固体脂に対する親水性非イオン性界面活性剤のモル比を0.1〜0.8とする請求項1乃至3のいずれかに記載された微粒子分散液の製造方法。
【請求項5】
上記第1液における結晶性固体脂及び親水性非イオン性界面活性剤の合計の含有量が70質量%以上である請求項1乃至4のいずれかに記載された微粒子分散液の製造方法。
【請求項6】
上記混合用細孔は、その孔面積が0.01〜1.0mm2である請求項1乃至5のいずれかに記載された微粒子分散液の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−208074(P2009−208074A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−26472(P2009−26472)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】
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