説明

心不全を治療するための組成物および方法

本発明は、水性緩衝液、および血圧にも心拍数にも影響を及ぼすことなく左心室拡張末期圧を減少させ、同時に左心室駆出を増加させることにより、疾患のある心臓の機能を改善する治療薬を含む治療用組成物を提供する。一部の実施形態において、治療薬は、血圧にも心拍数にも実質的に影響を及ぼすことなく左心室拡張末期圧を減少させることにより、疾患のある心臓の機能を改善する。別の実施形態において、心不全を治療または改善するために使用される治療用組成物は、治療用組成物の各投与の後に少なくとも24時間(例えば、少なくとも48時間、少なくとも7日、または少なくとも1カ月)にわたって持続的に、疾患のある心臓の機能を改善する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(相互参照)
本願は、2007年4月5日に出願された米国仮特許出願第60/922,047号の優先権を主張し、この米国仮特許出願の全体の内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は、一般的に、心不全を治療するための組成物および方法に関する。より具体的には、本発明は、間欠的に投与することができて持続的治療効果を有する、心不全を治療するための医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
心不全(HF)は、心臓が、正常な代謝および身体活動にとって必要とされる速度で血液を送り出すことができない病的状態である。しばしば、HF(特に、慢性HF)の正確な原因は不明であるが、高血圧症、心筋傷害、虚血性心疾患、心臓弁異常、冠状動脈疾患、および心臓内の異常な電気伝導のうちの1つまたは複数である可能性がある。単独または組合せで、これらの状態は、3つの主要な代償機構であるアドレナリン作動系、レニン−アンジオテンシン−アルドステロン系、および心室肥大を誘発する心臓に対する慢性負荷の増加を引き起こす。これらの機構によって、心臓は、適切な心拍出量に適応し維持することができるが、時間とともに、これらの機構は、心臓および心臓血管系に対する有害な作用ももたらす。これらの有害な作用は、壁肥厚および収縮性低下につながる心筋細胞肥大、心筋弛緩障害を引き起こす細胞質カルシウムの上昇、血管収縮ならびにアルドステロン誘発性の、そのどちらも、高血圧症および心臓に対する追加負荷を引き起こすことがある塩類および水の貯留を包含する。
【0004】
現行の医療実践において、患者は、心臓に対するストレスを軽減する1種または複数の薬物で治療される。これらの薬物は、血管拡張薬、利尿薬、アンジオテンシン受容体遮断薬、およびβ遮断薬を包含する。健康的な生活様式との組合せで、これらの薬物レジメンは、患者の症状および生活の質を改善する。しかしながら、心臓の病態生理学的変化は、時間とともに進行し、心臓の衰弱を引き起こし、運動性を減少させ、患者の生活の質を低下させる。
【0005】
ポロキサマー188(「P−188」または「P188」)は、心拍出量を改善し、筋ジストロフィーに伴う心不全を正常に戻すことが明らかにされている。心筋細胞は、持続性の高レベルな細胞質カルシウムに起因する収縮欠陥を示した。P−188は、in vitroの心筋調製物に添加された場合、筋細胞膜の裂け目を塞ぎ、それによって、カルシウムの流入を防ぎ、細胞がそれらのカルシウムレベルを正常化できるようにするように見えた。心筋細胞に対するP−188のこれらの効果はすべて、かなり高濃度のP−188を含有する溶液に細胞を入れることにより、in vitroで観察された。P−188処理への暴露の後に、心筋は、弛緩能力の改善(拡張機能の改善)および心拍出量の増加を示した。さらに、これらの結果が、筋ジストロフィーに伴う心不全以外の心不全に適用可能であるかどうかは不明である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
心筋組織の病態生理学的変化を遅らせるかまたは正常に戻し、間欠的に投与することができるが持続的治療効果を有する、心不全のための治療を提供することが望ましいであろう。そのような治療は、上記に記載されている現在利用できる治療に内在する制限および不都合の多くを克服するであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
一態様において、本発明は、水性緩衝液、および血圧にも心拍数にも実質的に影響を及ぼすことなく左心室拡張末期圧を減少させるかまたは左心室駆出を増加させることにより、疾患のある心臓の機能を改善する治療薬を包含する治療用組成物に関する。
【0008】
本明細書で使用する「血圧または心拍数に有意に影響を及ぼす」という用語は、本発明の組成物が投与される前の血圧または心拍数からの統計的に有意な逸脱を指す。一般に、統計的に有意ではない変化は十分に小さいので無視することができる。
【0009】
一部の実施形態において、治療薬は、血圧にも心拍数にも実質的に影響を及ぼすことなく左心室拡張末期圧を減少させることにより、疾患のある心臓の機能を改善する。
【0010】
一部の実施形態において、治療薬は、血圧にも心拍数にも実質的に影響を及ぼすことなく左心室駆出を増加させることにより、疾患のある心臓の機能を改善する。
【0011】
一部の実施形態において、治療薬は、血圧にも心拍数にも実質的に影響を及ぼすことなく左心室拡張末期圧を減少させ、同時に左心室駆出を増加させることにより、疾患のある心臓の機能を改善する。
【0012】
一部の実施形態において、治療用組成物は、治療用組成物の各投与の後に少なくとも24時間(例えば、少なくとも48時間、少なくとも7日、または少なくとも1カ月)にわたって持続的に、疾患のある心臓の機能を改善する。
【0013】
一部の実施形態において、治療用組成物中に含有される治療薬は、治療用組成物の各単回投与の後に少なくとも24時間(例えば、少なくとも48時間、少なくとも7日、または少なくとも1カ月)にわたって血液中の治療薬の濃度とは無関係に、疾患のある心臓の機能を改善する。
【0014】
一部の実施形態において、治療薬は、ポリオキシアルキレンブロックコポリマーである。一部の他の実施形態において、治療薬は、3,000〜18,000の範囲の分子量を有する。一部の実施形態において、治療薬は、ポロキサマーまたはポロキサミン(例えば、ポロキサマー188、ポロキサマー407、ポロキサマー338、またはポロキサミン1107)である。
【0015】
一部の実施形態において、治療用組成物は、注射可能または注入可能である。
【0016】
一部の実施形態において、心臓の疾患は、心不全、例えば、慢性心不全(虚血性心不全など)または急性心不全である。
【0017】
本発明の別の態様は、患者において心不全を治療または改善するための方法に関する。方法は、水性緩衝液、および血圧にも心拍数にも影響を及ぼすことなく左心室拡張末期圧を減少させるかまたは左心室駆出を増加させることにより、疾患のある心臓の機能を改善する治療薬を含む治療用組成物を患者に投与することを包含する。
【0018】
一部の実施形態において、心不全を治療または改善するために使用される治療用組成物は、治療用組成物の各投与の後に少なくとも24時間(例えば、少なくとも48時間、少なくとも7日、または少なくとも1カ月)にわたって持続的に、疾患のある心臓の機能を改善する。
【0019】
一部の実施形態において、心不全を予防するための治療用組成物中に含有される治療薬は、治療用組成物の各単回投与の後に少なくとも24時間(例えば、少なくとも48時間、少なくとも7日、または少なくとも1カ月)にわたって血液中の治療薬の濃度とは無関係に、疾患のある心臓の機能を改善する。
【0020】
一部の実施形態において、治療用組成物中に含有される治療薬は、ポリオキシアルキレンブロックコポリマーである。一部の他の実施形態において、治療薬は、3,000〜18,000の範囲の分子量を有する。一部の実施形態において、治療薬は、ポロキサマーまたはポロキサミン(例えば、ポロキサマー188、ポロキサマー407、ポロキサマー338、またはポロキサミン1107)である。
【0021】
本発明の治療用組成物は、心(cardio)すなわち心臓疾患、例えば、高血圧症またはうっ血性心不全を治療するのに有用な治療用組成物と一緒に投与することができる。したがって、本発明の治療用組成物は、そのような心すなわち心臓疾患を治療するのに有用な化合物も包含することができる。
【0022】
したがって、一部の実施形態において、本発明の組成物は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシンII受容体遮断薬(ARB)、β遮断薬、利尿薬、ジゴキシン、および抗不整脈薬からなる群から選択される薬剤をさらに包含することができる。本発明の組成物に適しているACE阻害薬の例は、カプトプリル、ベナゼプリル、エナラプリル、リシノプリル、フォシノプリル、ラミプリル、ペリンドプリル、キナプリル、モエキシプリル、およびトランドラプリルを包含するが、これらに限定されるものではない。本発明に適しているARBの例は、ロサルタン、カンデサルタン、イルベサルタン、およびバルサルタンを包含する。本発明の組成物に適しているβ遮断薬の例は、アルプレノロール、カルテオロール、レボブノロール、メピンドロール、メチプラノロール、ナドロール、オクスプレノロール、ペンブトロール、ピンドロール、プロプラノロール、ソタロール、チモロール、アセブトロール、アテノロール、ベタキソロール、ビソプロロール、エスモロール、メトプロロール、ネビボロール、カルベジロール、セリプロロール、ラベタロール、およびブタキサミンを包含するが、これらに限定されるものではない。本発明に適している利尿薬の例は、塩化カルシウム、塩化アンモニウム、アンホテリシンB、クエン酸リチウム、ゴールデンロッド(Goldenrod)、ジュニパー(Juniper)、ドーパミン、アセタゾラミド、ドルゾラミド、ブメタニド、エタクリン酸、フロセミド、トルセミド、グルコース、マンニトール、アミロリド、スピロノラクトン、トリアムテレン、ベンドロフルメチアジド、ヒドロクロロチアジド、カフェイン、およびテオフィリンを包含するが、これらに限定されるものではない。本発明に適している抗不整脈薬の例は、ジソピラミド、プロカインアミド、キニジン、リドカイン、フェニトイン、フレカイニド、プロパフェノン、プロプラノロール、チモロール、メトプロロール、ソタロール、アテノロール、アミオダロン、ソタロール、ブレチリウム、ベラパミル、およびジルチアゼムを包含するが、これらに限定されるものではない。
【0023】
一部の実施形態において、治療用組成物は、心不全を治療または改善するために注射可能または注入可能である。
【0024】
一部の実施形態において、治療または改善される心臓の疾患は、心不全、例えば、慢性心不全(虚血性心不全など)または急性心不全である。
【0025】
対象において心不全を治療、改善、または予防するための方法も、本発明の範囲内にある。方法は、水性緩衝液、および血圧にも心拍数にも実質的に影響を及ぼすことなく、左心室拡張末期圧を減少させるかまたは左心室駆出を増加させることにより、疾患のある心臓の機能を改善する治療薬を含む治療用組成物を患者に投与することを包含する。
【0026】
一部の実施形態において、本発明の方法は、血圧にも心拍数にも実質的に影響を及ぼすことなく左心室拡張末期圧を減少させることにより、疾患のある心臓の機能を改善する。
【0027】
一部の実施形態において、本発明の方法は、血圧にも心拍数にも実質的に影響を及ぼすことなく左心室駆出を増加させることにより、疾患のある心臓の機能を改善する。
【0028】
一部の実施形態において、本発明の方法は、血圧にも心拍数にも実質的に影響を及ぼすことなく左心室拡張末期圧を減少させ、同時に左心室駆出を増加させることにより、疾患のある心臓の機能を改善する。
【0029】
一部の実施形態において、本発明の方法は、治療用組成物の各投与の後に少なくとも24時間(例えば、少なくとも48時間、少なくとも7日、または少なくとも1カ月)にわたって持続的に、心臓の機能を改善する。
【0030】
一部の実施形態において、本発明の組成物中に含有されるかまたは本発明の方法のために使用される治療薬は、治療用組成物の各単回投与の後に少なくとも24時間(例えば、少なくとも48時間、少なくとも7日、または少なくとも1カ月)にわたって血液中の治療薬の濃度とは無関係に、疾患のある心臓の機能を改善する。
【0031】
一部の実施形態において、本発明の方法のために使用される治療薬は、ポリオキシアルキレンブロックコポリマーである。一部の他の実施形態において、治療薬は、3,000〜18,000の範囲の分子量を有する。一部の実施形態において、治療薬は、ポロキサマーまたはポロキサミン(例えば、ポロキサマー188、ポロキサマー407、ポロキサマー338、またはポロキサミン1107)である。
【0032】
一部の実施形態において、本発明の方法のために使用される治療薬は、心不全を治療、改善または予防するために注射可能または注入可能である。
【0033】
一部の実施形態において、本発明の方法により治療、改善、または予防される心臓の疾患は、心不全、例えば、慢性心不全(虚血性心不全など)または急性心不全である。
【0034】
本発明の方法は、心すなわち心臓疾患、例えば、高血圧症またはうっ血性心不全を治療するのに有用な他の方法と一緒に使用することができる。したがって、本発明の方法は、そのような心すなわち心臓疾患を治療するのに有用な化合物を投与することも包含することができる。
【0035】
したがって、一部の実施形態において、本発明の方法は、0.15mg/kg〜約480mg/kg、例えば、約460mg/kg、約250mg/kg、約150mg/kg、約15.3mg/kg、約4.6mg/kg、約1.5mg/kg、または約0.46mg/kgの量で患者に治療薬を投与することを包含する。
【0036】
一部のそれ以外の実施形態において、本発明の方法は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシンII受容体遮断薬(ARB)、β遮断薬、利尿薬、ジゴキシン、および抗不整脈薬からなる群から選択される薬剤を投与することをさらに包含する。本発明の組成物に適しているACE阻害薬の例は、カプトプリル、ベナゼプリル、エナラプリル、リシノプリル、フォシノプリル、ラミプリル、ペリンドプリル、キナプリル、モエキシプリル、およびトランドラプリルを包含するが、これらに限定されるものではない。本発明に適しているARBの例は、ロサルタン、カンデサルタン、イルベサルタン、およびバルサルタンを包含するが、これらに限定されるものではない。本発明の組成物に適しているβ遮断薬の例は、アルプレノロール、カルテオロール、レボブノロール、メピンドロール、メチプラノロール、ナドロール、オクスプレノロール、ペンブトロール、ピンドロール、プロプラノロール、ソタロール、チモロール、アセブトロール、アテノロール、ベタキソロール、ビソプロロール、エスモロール、メトプロロール、ネビボロール、カルベジロール、セリプロロール、ラベタロール、およびブタキサミンを包含するが、これらに限定されるものではない。本発明に適している利尿薬の例は、塩化カルシウム、塩化アンモニウム、アンホテリシンB、クエン酸リチウム、ゴールデンロッド、ジュニパー、ドーパミン、アセタゾラミド、ドルゾラミド、ブメタニド、エタクリン酸、フロセミド、トルセミド、グルコース、マンニトール、アミロリド、スピロノラクトン、トリアムテレン、ベンドロフルメチアジド、ヒドロクロロチアジド、カフェイン、およびテオフィリンを包含するが、これらに限定されるものではない。本発明に適している抗不整脈薬の例は、ジソピラミド、プロカインアミド、キニジン、リドカイン、フェニトイン、フレカイニド、プロパフェノン、プロプラノロール、チモロール、メトプロロール、ソタロール、アテノロール、アミオダロン、ソタロール、ブレチリウム、ベラパミル、およびジルチアゼムを包含するが、これらに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】重度心不全動物における左心室駆出率に対するP−188の効果を示す図である。
【図2】重度心不全動物における左心室短縮率に対するP−188の効果を示す図である。
【図3】様々な用量での心不全動物における左心室拡張末期径に対するP−188の効果を示す図である。
【図4】様々な用量での心不全動物における左心室拡張末期圧に対するP−188の効果を示す図である。
【図5】様々な用量での心不全動物における左心室収縮末期径に対するP−188の効果を示す図である。
【図6】様々な用量での心不全動物における左心室駆出率に対するP−188の効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
(発明の詳細な説明)
本発明の組成物
一態様において、本発明は、それらの各々が、水性緩衝液、および血圧にも心拍数にも影響を及ぼすことなく左心室拡張末期圧を減少させ、同時に左心室駆出を増加させることにより、疾患のある心臓の機能を改善する治療薬を包含する治療用組成物を提供する。これらの組成物は、例えば、4.5〜7.5の範囲の生理学的に許容できるpHを有する。
【0039】
適当な治療薬は、ポリオキシアルキレンブロックコポリマー(例えば、分子量が3,000〜18,000の範囲であるもの)を包含する。ポリオキシアルキレンブロックコポリマーの例は、ポロキサマーおよびポロキサミンを包含する。
【0040】
ポロキサマーは、一般構造:
HO(CO)(CO)(CO)
を有する一連のポリオキシアルキレンブロックコポリマーであり、
bは、少なくとも15である。ポロキサマーの平均分子量は、約1,000〜16,000ダルトン超の範囲である。例えば、ポロキサマー188は、ポリオキシエチレンセグメント(各々は、約75個の繰り返し単位を有する)が両端に隣接するポリオキシプロピレン中心ブロック(約30個の繰り返し単位を有する)を含み、約8,300の平均分子量を有する。ポロキサマー407は、ポリオキシエチレンセグメント(各々は、約98個の繰り返し単位を有する)が両端に隣接するポリオキシプロピレン中心ブロック(約67個の繰り返し単位を有する)を含み、約11,500の平均分子量を有する。ポロキサマー338は、ポリオキシエチレンセグメント(各々は、約128個の繰り返し単位を有する)が両端に隣接するポリオキシプロピレン中心ブロック(約54個の繰り返し単位を有する)を含み、約14,000の平均分子量を有する。
【0041】
ポロキサマーは、ブロックコポリマーを合成するための当技術分野において知られている方法により調製することができる。例えば、ポロキサマーの調製は、中心ブロックを合成し、次いで、2個のポリマーブロックで中心ブロックの末端をキャッピングすることを含む。具体的には、疎水性中心ブロックを、例えば、開始剤としてプロピレングリコールを使用し、続いて、高温および高圧にて、不活性な無水環境下でプロピレンオキシドを加える塩基触媒エーテル縮合反応で合成することができる。中心ブロックの望ましい分子量に達したら、プロピレンオキシド反応剤をエチレンオキシドに置き換える。次いで、ポリマーを、エチレンオキシドの添加により伸長させ、ポリオキシプロピレンブロックの各末端にポリオキシエチレンの親水性セグメントを形成させる。最後に、反応を、酸による触媒の中和により終了させる。分子量が1,000〜15,000の範囲の30種を超える様々なポロキサマーが合成されている。分子のポリオキシエチレン含量は、分子の重量の10%から90%まで変わることがある。例えば、Handbook of Biodegradable Polymers、編集者 Domb、KostおよびWiseman、Harwood Academic Publishers(1997年)中のReeve,L.E.、「The Poloxamers:Their Chemistry and Medical Applications」、231〜249頁を参照されたい。理解できるように、重合の条件および時間、または方法さえも変更することにより、繰り返しプロピレンオキシドまたはエチレンオキシド単位の数を、したがって、ポリ(エチレンオキシド)およびポリ(プロピレンオキシド)ブロックの各々の長さおよび重量を制御することができる。ポロキサマーの合成および特徴付けの具体例は、公的文献および特許データベース中に見いだすことができる。例えば、米国特許第6,977,045号、第6,761.824号、第5,811,080号、第5,990,241号、第6,359,014号、第6,448,371号、第6,747,064号、第6,933,286号、第5,567,859号、RE37,285、RE36,665、RE38,558などを参照されたい。
【0042】
ポロキサミンは、一般構造
【0043】
【化1】

を有するポリ(エチレンオキシド)およびポリ(プロピレンオキシド)の4分岐ブロックポリオキシアルキレンブロックコポリマーである。ポロキサミン1107は、例えば、15,400の平均分子量、および非イオン性界面活性特性を有する。ポロキサミン1107は、例えば、放射線透過性になった赤血球膜を修復するための細胞膜シーラントとして使用されている。
【0044】
ポロキサマーおよびポロキサミンは、水に溶けやすく、極性溶媒にやや溶けやすい。ポロキサマーは、主として、それらのポリオキシエチレン対ポリオキシプロピレン比、二次的には、それらの総分子量に応じて、液体、ペーストまたは固体である。一般に、3,000以下の平均分子量を有するポロキサマーは、それらのポリオキシエチレン含量が50%以下である場合に液体である。分子量が3,000と5,000の間であるポロキサマーは、それらのポリオキシエチレン含量が20%以下である場合に液体である。ペーストは、ポリオキシエチレン含量が30%と50%の間で分子量は3,300〜6,600の範囲である。固体ポロキサマーは、最も大きく、5,000〜15,000の分子量および70%超のポリオキシエチレン含量を有する。
【0045】
したがって、ポロキサマーおよびポロキサミン(例えば、ポロキサマー188、ポロキサマー338、ポロキサマー407、またはポロキサミン1107)を、望ましい濃度、例えば、5〜300g/Lまで水または水性緩衝液中に溶かし、本発明の組成物を調製するかまたは本発明の方法を実施するために後で使用することができるポリマー溶液を得ることができる。
【0046】
本発明の組成物は、水性緩衝液も包含する。本明細書で使用する「水性緩衝液」という用語は、少量の酸または塩基を添加したときに、または希釈したときに、ヒドロニウムイオンおよび水酸化イオン濃度(および、結果としてのpH)の変化に抵抗する水溶液を指す。緩衝液は、弱酸およびその共役塩基(より一般的)または弱塩基およびその共役酸(あまり一般的でない)からなる。緩衝液は、望ましいpH値を得るための適切な緩衝剤で、当技術分野においてよく知られている方法により調製することができる。適当な緩衝剤の例は、塩酸、乳酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、マレイン酸、ピルビン酸、コハク酸、トリス−ヒドロキシメチルアミノメタン、水酸化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、リン酸、リン酸ナトリウム、および他の生物学的に許容できる緩衝剤を包含する。言うまでもなく、水性緩衝液は、商業的に容易に入手可能であり、それらを、さらに処理することなく本発明の組成物の調製において使用することができる。
【0047】
本発明の組成物の用途
本明細書で使用する「心不全」という用語は、身体全体を十分な量の血液で満たすかまたは身体全体に十分な量の血液を送り出す心臓の能力を損なうあらゆる構造的または機能的心臓障害から生じることがある状態を指す。本明細書で使用する「慢性心不全」という用語は、心臓が、代謝要求を満たすのに十分な速度で血液を送り出すことが持続的にできないことを指す。慢性心不全の例は、収縮機能障害、拡張機能障害、右心不全、および虚血性心不全を包含する。本明細書で使用する「急性心不全」という用語は、慢性心不全患者における急性代償不全エピソードを指す。
【0048】
本発明の組成物は、対象において疾患のある心臓を治療もしくは改善するため、または対象(例えば、ヒト患者または動物)において特定の心臓疾患を予防するために使用することができる。疾患は、心不全、例えば、慢性心不全(虚血性心不全など)または急性心不全であってよい。
【0049】
例えば、本発明の組成物を、心臓に疾患があり治療を必要としている患者(または、対象)の血管内に注射または注入することができる。次いで、組成物中の治療薬(例えば、ポロキサマーまたはポロキサミン)は、心臓内を循環する。この理論により束縛されることを望むものではないが、本発明の組成物中に含有される治療薬は、心筋の収縮ストレスを減少させることがあり、低い膜ジストロフィンレベルの条件において、心臓がそれ自身を修復することができるほどに膜損傷を減少させることさえある。言い換えれば、治療用組成物は、心臓負荷を軽減するための外科手術を必要とせずに、疾患のある心臓における膜損傷の修復を助けることがある。
【0050】
心臓疾患を治療、改善、または予防さえする際の本発明の組成物の有効性は、当技術分野において知られている方法により、例えば、in vitroもしくは動物モデルにおける血流速度もしくは血流量または組成物中の治療薬の薬物動態を測定することにより決定することができる。例えば、Grindel J. M.ら、Biopharm. Drugs Dispos.、2002年、23巻:87〜103頁を参照されたい。
【0051】
本発明の組成物または方法の有効性を決定するための手段の1つの具体例は、駆出率、具体的には、左心室駆出率(LVEF)を測定することである。駆出率は、各心拍動で心室から送り出される血液の比率を指す。定義により、収縮直前の心室内の血液量は、拡張末期容積として知られている。同様に、収縮終了時に心室内に残っている血液量は、収縮末期容積である。拡張末期容積と収縮末期容積の差が、1回拍出量、各拍動で駆出される血液量である。駆出率は、各拍動で駆出される拡張末期容積の比率であり、すなわち、駆出率は、拡張末期容積(EDV)で除した1回拍出量(SV)である。
【0052】
駆出率は、一般に、心腔の容積を心周期の間に測定する心エコー図法により測定される。次いで、駆出率を、上記に記載されているように、拡張末期容積で1回拍出量を除することにより得ることができる。
【0053】
駆出率を測定する他の方法は、心臓MRI、高速スキャン心臓コンピューター体軸断層撮影(CT)画像、および心室造影法を包含する。駆出率を測定するための歴史的ゴールドスタンダードは、心室造影法である。
【0054】
短縮率(shortening fraction)(または「短縮率(fractional shortening)」)は、左心室パフォーマンスを測定するわずかに異なる手段である。血液量を測定して比を取る代わりに、短縮率は、収縮状態と弛緩状態の間の左心室径の変化、すなわち
【0055】
【化2】

を測定し、比を取る。
【0056】
本発明の組成物または方法の有効性を決定するための他の方法は、実際の心室径(diameter)(または、径(dimension))を測定し、左心室のパフォーマンスと相関する左心室拡張末期径(または、径)または左心室収縮末期径(または、径)を包含する。さらに、有効性は、例えば、左心室内に直接挿入された圧または圧/容積カテーテルで、左心室拡張末期圧(LVEDP)または左心室収縮末期容積(LVEDV)を測定することにより決定することができる。
【0057】
本発明の組成物の使用を例示する一部の実施例を以下に記載する。これらの実施例は、本発明を例示するに過ぎず、決して本発明を限定することは意図されてない。
【0058】
本明細書に引用されているすべての刊行物は、それらの全体として参照により組み込まれるものとする。
【実施例】
【0059】
(実施例1)
心不全に対する効果
ラット心筋梗塞(MI)心不全モデルにおいて、左冠動脈前下行枝(LAD)を結紮し、40%を超える梗塞を生じさせる。ラットは、1〜3週後に安定し、3週間で、有意な左心室(LV)機能障害を示す。8週齢のMI後ラットを、ジストロフィンの喪失のために使用する。対照群は、未治療心不全ラット、LADを露出させたが結紮しなかった偽手術動物ならびに手術を受けなかったラット(正常)を包含する。
【0060】
治療日に、ラットへ、30分間にわたって460mg/kgにてP−188を注入し、心臓にカテーテル挿入し、血行動態を4時間にわたってモニターした。
【0061】
未治療MIラットと比較すると、P−188治療は、図4に示すように、左心室拡張末期圧(LVEDP)の有意な減少を引き起こした。図1に示すように、460mg/kgの用量にて、P−188の投与は、心臓が収縮期の間にその内容物を空にする能力を示す測定値である左心室駆出率(LVEF)の有意な増加も引き起こした。さらに、図2に示すように、重度心不全ラットにおいて左心室短縮率の有意な増加も引き起こした。心拍数(HR)、左心室収縮期圧(LVSP)、左心室等容性収縮(LV+dP/dt)、および左心室収縮末期容積は、有意に変化しなかった。
【0062】
結果は、P−188が、心血行動態に対する効果を有していたことを示している。駆出率の約25%の増加は、臨床的に有意であった。駆出率は、1回拍出量として駆出される拡張末期容積の割合であり、ポンプ機能の測定値である。駆出率は、血圧(後負荷)、心臓に戻る血液量(前負荷)、心腔の容積、および心拍数により影響を受けることがある。さらに、P−188治療は、心拍数(HR)に影響を及ぼさなかったし、LVSPが上昇しなかったために後負荷を増加させなかった。したがって、P−188は、心臓への血液の静脈還流ならびに心臓の弛緩能力により影響されることがある前負荷に対する効果を有していたように見える。これらのパラメーターによっても影響を受けるLVEDPは、減少した。静脈還流の有意な低下は、P−188では見られなかった血圧の変化を伴うはずであることから、結果は、P−188が、働いている心臓の弛緩特性を増加させたことを示していると思われる。
【0063】
(実施例2)
作用の持続時間
HFラットへP−188の単回投与量を注入し、注入後2、24、および48時間目に心エコー図法によりモニターした。血液サンプルも採取し、P−188の血清濃度を決定した。
【0064】
実施例1に指示されているようにかつ図1に示すように、460mg/kgのP−188による重度HFラットの治療は、2時間目に左心室駆出率の有意な増加をもたらし、治療の48時間後まで維持された。図2に示すように、LVED径で除した拡張末期から収縮末期までのLV腔の径の変化である左心室収縮率は、すべての時点でP−188後に有意に増加し、特に、2および24時間目に50%の増加で、48時間目にほぼ100%の増加であった。拡張期と収縮期の双方における左心室径は、最初の24時間の間に変化しなかった。これらの結果は、試験の48時間にわたって維持または改善されたP−188治療心臓における収縮性の増加を示している。
【0065】
この試験で得られた結果は、左心室の弛緩特性に対する効果を有するP−188と一致している。筋原繊維の伸展をもたらす前負荷の同時増加を伴うLVコンプライアンスの増加は、460mg/kgにおいて短縮率、収縮性、および駆出率を増加させることが予想されるであろう。このことは、実施例1に見られるLV拡張末期圧の減少と一致している。ラットにおける血漿クリアランスの半減期は、4.9〜8.0時間の範囲であることが報告されている。
【0066】
(実施例3)
様々な投与量における治療
中等度または重度心不全ラットを、30分間にわたって0.46mg/kg、1.5mg/kg、4.6mg/kg、15.3mg/kg、および460mg/kg(P−188の量/ラットの体重)にて本発明の組成物で治療した。対照群(CHF)および擬飼群も同じ試験で使用した。これらの群のどちらも治療を受けなかったが、双方とも、測定されているパラメーターの上限(CHF)および下限(擬飼)に相当した。
【0067】
図3に示すように、0.46〜15.3の用量におけるP−188の治療は、中等度または重度心不全ラットにおいて左心室拡張末期圧の有意な減少を引き起こした。図4に示すように、P−188のすべての投与量は、未治療CHFラットと比較してLVEDPを低下させた。しかしながら、P−188の1.5mg/kgの用量だけは、左心室拡張期圧のさらにより有意な減少を引き起こしたが、他の用量の効果は、それほど顕著ではなかった。
【0068】
対照的に、図5および図6に示すように、460mg/kgのP−188用量は、治療ラットの左心室収縮期径の有意な減少および左心室駆出率の有意な増加を引き起こしたが、他の用量は、それほどの効果を有していなかった。
【0069】
他の実施形態
本発明について、その詳細な説明と併せて説明してきたが、上記の説明は、添付される特許請求の範囲により定義される本発明の範囲を例示するものであって限定することは意図されていないことが理解されるべきである。他の態様、利点、および変更形態は、以下の特許請求の範囲内にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性緩衝液、および
血圧にも心拍数にも有意に影響を及ぼすことなく左心室拡張末期圧を減少させるかまたは左心室駆出を増加させることにより、疾患のある心臓の機能を改善する治療薬
を含む治療用組成物。
【請求項2】
前記治療薬が、血圧にも心拍数にも有意に影響を及ぼすことなく左心室拡張末期圧を減少させ、同時に左心室駆出を増加させることにより、疾患のある心臓の機能を改善する、請求項1に記載の治療用組成物。
【請求項3】
前記治療用組成物が、該治療用組成物の各投与の後に少なくとも24時間にわたって持続的に、疾患のある心臓の機能を改善する、請求項1に記載の治療用組成物。
【請求項4】
前記治療用組成物が、該治療用組成物の各投与の後に少なくとも48時間にわたって持続的に、疾患のある心臓の機能を改善する、請求項1に記載の治療用組成物。
【請求項5】
前記治療用組成物が、該治療用組成物の各投与の後に少なくとも7日にわたって持続的に、疾患のある心臓の機能を改善する、請求項1に記載の治療用組成物。
【請求項6】
前記治療用組成物が、該治療用組成物の各投与の後に少なくとも1カ月にわたって持続的に、疾患のある心臓の機能を改善する、請求項1に記載の治療用組成物。
【請求項7】
前記治療薬が、前記治療用組成物の各単回投与の後に少なくとも24時間にわたって血中の該治療薬の濃度とは無関係に、疾患のある心臓の機能を改善する、請求項1に記載の治療用組成物。
【請求項8】
前記治療薬が、前記治療用組成物の各単回投与の後に少なくとも48時間にわたって血中の該治療薬の濃度とは無関係に、疾患のある心臓の機能を改善する、請求項7に記載の治療用組成物。
【請求項9】
前記治療薬が、ポリオキシアルキレンブロックコポリマーである、請求項1に記載の治療用組成物。
【請求項10】
前記治療薬が、3,000〜18,000の範囲の分子量を有する、請求項9に記載の治療用組成物。
【請求項11】
前記治療薬が、ポロキサマーまたはポロキサミンである、請求項10に記載の治療用組成物。
【請求項12】
前記治療薬が、ポロキサマー188、ポロキサマー407、ポロキサマー338、およびポロキサミン1107からなる群から選択される1種または複数の化合物である、請求項11に記載の治療用組成物。
【請求項13】
前記治療薬が、ポロキサマー188である、請求項12に記載の治療用組成物。
【請求項14】
前記治療薬が、ポロキサマー407である、請求項12に記載の治療用組成物。
【請求項15】
前記治療薬が、ポロキサマー338である、請求項12に記載の治療用組成物。
【請求項16】
前記治療薬が、ポロキサミン1107である、請求項12に記載の治療用組成物。
【請求項17】
前記治療用組成物が、注射可能または注入可能である、請求項1に記載の治療用組成物。
【請求項18】
前記心臓の疾患が、心不全である、請求項1に記載の治療用組成物。
【請求項19】
前記心臓の疾患が、慢性心不全または急性心不全である、請求項18に記載の治療用組成物。
【請求項20】
前記心臓の疾患が、慢性心不全である、請求項18に記載の治療用組成物。
【請求項21】
前記心臓の疾患が、虚血性心不全である、請求項18に記載の治療用組成物。
【請求項22】
アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシンII受容体遮断薬(ARB)、β遮断薬、利尿薬、ジゴキシン、および抗不整脈薬からなる群から選択される薬剤をさらに含む、請求項1に記載の治療用組成物。
【請求項23】
前記ACE阻害薬が、カプトプリル、ベナゼプリル、エナラプリル、リシノプリル、フォシノプリル、ラミプリル、ペリンドプリル、キナプリル、モエキシプリル、およびトランドラプリルからなり、ARBが、ロサルタン、カンデサルタン、イルベサルタン、およびバルサルタンからなり、β遮断薬が、アルプレノロール、カルテオロール、レボブノロール、メピンドロール、メチプラノロール、ナドロール、オクスプレノロール、ペンブトロール、ピンドロール、プロプラノロール、ソタロール、チモロール、アセブトロール、アテノロール、ベタキソロール、ビソプロロール、エスモロール、メトプロロール、ネビボロール、カルベジロール、セリプロロール、ラベタロール、およびブタキサミンからなり、利尿薬が、塩化カルシウム、塩化アンモニウム、アンホテリシンB、クエン酸リチウム、ゴールデンロッド、ジュニパー、ドーパミン、アセタゾラミド、ドルゾラミド、ブメタニド、エタクリン酸、フロセミド、トルセミド、グルコース、マンニトール、アミロリド、スピロノラクトン、トリアムテレン、ベンドロフルメチアジド、ヒドロクロロチアジド、カフェイン、およびテオフィリンからなり、抗不整脈薬が、ジソピラミド、プロカインアミド、キニジン、リドカイン、フェニトイン、フレカイニド、プロパフェノン、プロプラノロール、チモロール、メトプロロール、ソタロール、アテノロール、アミオダロン、ソタロール、ブレチリウム、ベラパミル、およびジルチアゼムからなる、請求項22に記載の治療用組成物。
【請求項24】
対象において心不全を治療、改善、または予防する方法であって、
水性緩衝液、および
血圧にも心拍数にも実質的に影響を及ぼすことなく左心室拡張末期圧を減少させるかまたは左心室駆出を増加させることにより、疾患のある心臓の機能を改善する治療薬
を含む治療用組成物を、該治療、改善、または予防を必要としている対象に投与することを含む方法。
【請求項25】
前記治療薬が、血圧にも心拍数にも実質的に影響を及ぼすことなく左心室拡張末期圧を減少させ、同時に左心室駆出を増加させることにより、疾患のある心臓の機能を改善する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記治療用組成物が、該治療用組成物の各投与の後に少なくとも24時間にわたって持続的に、疾患のある心臓の機能を改善する、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記治療用組成物が、該治療用組成物の各投与の後に少なくとも48時間にわたって持続的に、疾患のある心臓の機能を改善する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記治療用組成物が、該治療用組成物の各投与の後に少なくとも7日にわたって持続的に、疾患のある心臓の機能を改善する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記治療用組成物が、該治療用組成物の各投与の後に少なくとも1カ月にわたって持続的に、疾患のある心臓の機能を改善する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記治療薬が、前記治療用組成物の各単回投与の後に少なくとも24時間にわたって血中の該治療薬の濃度とは無関係に、疾患のある心臓の機能を改善する、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
前記治療薬が、前記治療用組成物の各単回投与の後に少なくとも48時間にわたって血中の該治療薬の濃度とは無関係に、疾患のある心臓の機能を改善する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記治療薬が、ポリオキシアルキレンブロックコポリマーである、請求項24に記載の方法。
【請求項33】
前記治療薬が、3,000〜18,000の範囲の分子量を有する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記治療薬が、ポロキサマーまたはポロキサミンである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記治療薬が、ポロキサマー188、ポロキサマー407、ポロキサマー338、およびポロキサミン1107からなる群から選択される1種または複数の化合物である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記治療薬が、ポロキサマー188である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記治療薬が、ポロキサマー407である、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記治療薬が、ポロキサマー338である、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記治療薬が、ポロキサミン1107である、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
前記心不全が、急性心不全である、請求項24に記載の方法。
【請求項41】
前記心不全が、慢性心不全である、請求項24に記載の方法。
【請求項42】
前記心不全が、虚血性心不全である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記治療用組成物が、注射または注入により投与される、請求項24に記載の方法。
【請求項44】
前記組成物中の前記治療薬が、0.15mg/kg〜約480mg/kgの量で患者に投与される、請求項24に記載の方法。
【請求項45】
前記組成物中の前記治療薬が、約460mg/kgの量で患者に投与される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記組成物中の前記治療薬が、約250mg/kgの量で患者に投与される、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記組成物中の前記治療薬が、約15.3mg/kgの量で患者に投与される、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
前記組成物中の前記治療薬が、約4.6mg/kgの量で患者に投与される、請求項44に記載の方法。
【請求項49】
前記組成物中の前記治療薬が、約1.5mg/kgの量で患者に投与される、請求項44に記載の方法。
【請求項50】
前記組成物中の前記治療薬が、約0.46mg/kgの量で患者に投与される、請求項44に記載の方法。
【請求項51】
アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシンII受容体遮断薬(ARB)、β遮断薬、利尿薬、ジゴキシン、および抗不整脈薬からなる群から選択される薬剤を患者に投与することをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項52】
前記ACE阻害薬が、カプトプリル、ベナゼプリル、エナラプリル、リシノプリル、フォシノプリル、ラミプリル、ペリンドプリル、キナプリル、モエキシプリル、およびトランドラプリルからなり、ARBが、ロサルタン、カンデサルタン、イルベサルタン、およびバルサルタンからなり、β遮断薬が、アルプレノロール、カルテオロール、レボブノロール、メピンドロール、メチプラノロール、ナドロール、オクスプレノロール、ペンブトロール、ピンドロール、プロプラノロール、ソタロール、チモロール、アセブトロール、アテノロール、ベタキソロール、ビソプロロール、エスモロール、メトプロロール、ネビボロール、カルベジロール、セリプロロール、ラベタロール、およびブタキサミンからなり、利尿薬が、塩化カルシウム、塩化アンモニウム、アンホテリシンB、クエン酸リチウム、ゴールデンロッド、ジュニパー、ドーパミン、アセタゾラミド、ドルゾラミド、ブメタニド、エタクリン酸、フロセミド、トルセミド、グルコース、マンニトール、アミロリド、スピロノラクトン、トリアムテレン、ベンドロフルメチアジド、ヒドロクロロチアジド、カフェイン、およびテオフィリンからなり、抗不整脈薬が、ジソピラミド、プロカインアミド、キニジン、リドカイン、フェニトイン、フレカイニド、プロパフェノン、プロプラノロール、チモロール、メトプロロール、ソタロール、アテノロール、アミオダロン、ソタロール、ブレチリウム、ベラパミル、およびジルチアゼムからなる、請求項51に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−523569(P2010−523569A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−502146(P2010−502146)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【国際出願番号】PCT/US2008/004437
【国際公開番号】WO2008/124088
【国際公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(509029391)フリクサス ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】