説明

情報システムおよび半導体装置とその制御方法

【課題】周期の小さいジッタに対する低減効果を向上する。
【解決手段】入力クロック信号CLKiを電圧制御遅延回路14を介して出力クロック信号CLKoとして出力すると共に、入力クロック信号CLKiと出力クロック信号CLKoとの位相比較結果に基づいて電圧制御遅延回路14における遅延量を制御する。位相補正回路21は、入力クロック信号CLKiおよび出力クロック信号CLKoを入力とし、DLL回路がロック状態に入った後に、入力クロック信号CLKiおよび出力クロック信号CLKoの位相がずれた場合に、出力クロック信号CLKoの位相に基づいて入力クロック信号CLKiの位相に補正を加え、電圧制御遅延回路14に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、システムクロックに同期してアドレス・コマンド情報やデータ情報の授受を行うインタフェースを有する情報システムに係り、特に、システムクロックで動作するDLL(Delay Locked Loop)回路を含む半導体装置とその制御方法に係る。
【背景技術】
【0002】
DLL回路は、入力されるクロック信号CLKi(基準クロック)と、可変遅延回路(電圧制御遅延線など)が出力するクロック信号CLKoをフィードバックした信号との位相が位相比較回路(PD)により比較され、比較結果を可変遅延回路の遅延時間に反映させる。そして、クロック信号CLKoの位相を進ませ、又は遅らせる制御を行い、最終的にクロック信号CLKoとクロック信号CLKiの位相が一致(ロック)するように動作する。
【0003】
通常、このようなDLL回路では、ロック完了後に消費電力低減のために動作を停止する。したがって、クロック信号CLKiにジッタが含まれる場合、ロック後においてクロック信号CLKoは、クロック信号CLKiのジッタを反映したまま出力されてしまう。
【0004】
そこで、クロック信号CLKiにジッタが含まれる場合であっても、クロック信号CLKoにおけるジッタを少なくするようなDLL回路が、特許文献1に記載されている。このDLL回路は、ラフ用の遅延単位とより小さいファイン用の遅延単位で位相調整可能なファイン用DLL回路とを有する階層型のDLL回路を有し、先ずラフ用のDLL回路だけを作動し、ロックオンしたらラフ用のDLL回路の位相調整を停止し、該回路の遅延量を固定し、更に、ロックオン時、ファイン用DLL回路を作動する。
【0005】
このようなDLL回路によれば、電源ノイズ等の原因で位相が大きくずれてもタイミングクロックの位相はファイン用の遅延単位で位相調整が実施される。従って一時的なジッタ量をファイン用の遅延単位分を小量に抑制可能である。
【0006】
【特許文献1】特開2000−122750号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以下の分析は本発明において与えられる。
【0008】
特許文献1に記載のDLL回路によれば、クロック信号CLKiにジッタが含まれる場合、ファイン用DLL回路により、クロック信号CLKoにおけるジッタを低減することができる。しかしながら、ファイン用DLL回路においても位相のずれを検出して可変遅延回路の遅延時間に反映させるまでに遅れ時間が存在するため周期の小さいジッタに対しては全く低減効果がないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つのアスペクト(側面)に係る半導体装置は、入力クロック信号を可変遅延回路を介して出力クロック信号として出力すると共に、入力クロック信号と出力クロック信号との位相比較結果に基づいて可変遅延回路における遅延量を制御するDLL回路を備える半導体装置であって、前記入力クロック信号および前記出力クロック信号を入力とし、前記DLL回路がロック状態に入った後に、前記入力クロック信号および前記出力クロック信号の位相がずれた場合に、前記出力クロック信号の位相に基づいて前記入力クロック信号の位相に補正を加え、前記可変遅延回路に出力する位相補正回路を備える。
【0010】
本発明の他のアスペクト(側面)に係る情報処理システムは、システムクロック信号を送信する第1の半導体装置と前記システムクロック信号を受信する第2の半導体装置を含み、前記第2の半導体装置は、前記システムクロック信号を可変遅延回路を介して出力クロック信号として出力すると共に、前記システムクロック信号と前記出力クロック信号との位相比較結果に基づいて可変遅延回路における遅延量を制御するDLL回路を有し、前記システムクロック信号および前記出力クロック信号を入力とし、前記DLL回路がロック状態に入った後に、前記システムクロック信号および前記出力クロック信号の位相がずれた場合に、前記出力クロック信号の位相に基づいて前記システムクロック信号の位相に補正を加え、前記可変遅延回路に出力する位相補正回路を備える。
【0011】
本発明のさらに他のアスペクト(側面)に係る半導体装置の制御方法は、入力クロック信号を可変遅延回路を介して出力クロック信号として出力すると共に、入力クロック信号と出力クロック信号との位相比較結果に基づいて可変遅延回路における遅延量を制御するDLL回路を含む半導体装置の制御方法であって、前記DLL回路がロック状態にない場合に、前記入力クロック信号を前記可変遅延回路に与えるステップと、前記DLL回路がロック状態にあって、前記入力クロック信号および前記出力クロック信号の位相がずれた場合に、前記出力クロック信号の位相に基づいて前記入力クロック信号の位相に補正を加え、前記可変遅延回路に与えるステップと、を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ジッタを少なくするために入力されるクロック信号のエッジの時間的位置をずらして可変遅延回路に与えるので、周期の小さいジッタに対する低減効果が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施形態に係るDLL回路は、入力クロック信号(図1のCLKi)を可変遅延回路(図1の14)を介して出力クロック信号(図1のCLKo)として出力すると共に、入力クロック信号と出力クロック信号との位相比較結果に基づいて可変遅延回路における遅延量を制御するDLL回路であって、入力クロック信号および出力クロック信号を入力とし、DLL回路がロック状態に入った後に、入力クロック信号および出力クロック信号の位相がずれた場合に、出力クロック信号の位相に基づいて入力クロック信号の位相に補正を加え、可変遅延回路に出力する位相補正回路(図1の21)を備える。
【0014】
DLL回路において、位相補正回路は、入力クロック信号の位相と出力クロック信号の位相がずれた場合に、入力クロック信号の位相と出力クロック信号の位相との間の位相を有する信号を出力するようにしてもよい。
【0015】
DLL回路において、位相補正回路は、入力クロック信号の位相と出力クロック信号の位相がずれた場合に、入力クロック信号の位相と出力クロック信号の位相との間の中央より出力クロック信号寄りの位相を有する信号を出力するようにしてもよい。
【0016】
DLL回路において、位相補正回路は、入力クロック信号が入力された第1のインバータと出力クロック信号が入力された第2のインバータを含み、第1のインバータと第2のインバータの出力は共通接続されてもよい。
【0017】
DLL回路において、位相補正回路は、第1の電源と共通ノードとの間に設けられた負荷素子と共通ノードと第2の電源との間に並列に接続された第1および第2のMOS型トランジスタとを含み、第1のMOS型トランジスタは入力クロック信号で駆動され、第2のMOS型トランジスタは出力クロック信号で駆動されてもよい。
【0018】
以上のようなDLL回路は、半導体装置として構成してもよい。また、このような半導体装置は、情報処理システムを構成するようにしてもよい。
【0019】
以上のようなDLL回路によれば、入力クロック信号に短い周期のジッタが含まれている場合でも位相補正回路により所定の比率でジッタを低減した後に可変遅延回路に入力されるので、出力クロック信号のジッタを低減することができる。
【0020】
以下、実施例に即し、図面を参照して詳しく説明する。
【実施例1】
【0021】
図1は、本発明の実施例に係るDLL回路の構成を示すブロック図である。図1において、DLL回路は、入力バッファ11、位相補正回路21、電圧制御遅延回路14、出力バッファ15、レプリカ出力バッファ16、位相比較回路(PD)17、カウンタ18、D/A変換回路19を備える。また、位相補正回路21は、インバータ12、13、クロックドインバータ20を備える。
【0022】
入力バッファ11は、外部からクロック信号CLKiを入力し、位相補正回路21および位相比較回路17の一方の入力端子に出力する。位相補正回路21は、入力バッファ11の出力信号(信号A)とレプリカ出力バッファ16の出力信号(信号C)とを入力し、DLL回路がロック状態の場合にはロック判定信号Slが例えばHレベル状態で、クロックドインバータ20が活性となり、入力バッファ11の出力信号(信号A)の位相を、レプリカ出力バッファ16の出力信号(信号C)の位相に基づき、所定の比率で補正をかけて電圧制御遅延回路14に出力する。また、DLL回路が非ロック状態の場合にはロック判定信号Slが例えばLレベル状態で、クロックドインバータ20が不活性となり、入力バッファ11の出力信号(信号A)の位相を補正をかけずに電圧制御遅延回路14に出力する。
【0023】
電圧制御遅延回路14は、D/A変換回路19の出力信号に基づいて遅延量を制御する電圧制御遅延線(VCDL)などの可変遅延回路であって、位相補正回路21の出力信号(信号B)を遅延し、出力バッファ15、レプリカ出力バッファ16にそれぞれ出力する。出力バッファ15は、電圧制御遅延回路14の出力信号をバッファリングし、クロック信号CLKoとして外部に出力する。
【0024】
レプリカ出力バッファ16は、電圧制御遅延回路14の出力信号をバッファリングし、クロック信号FbCLKとして位相補正回路21および、位相比較回路17の他方の入力端子に出力する。
【0025】
位相比較回路17は、入力バッファ11の出力信号とレプリカ出力バッファ16の出力信号(クロック信号FbCLK)との位相を比較し、比較結果をカウンタ18に出力する。カウンタ18は、比較結果をカウントし、D/A変換回路19は、カウント結果をD/A変換して電圧制御遅延回路14における遅延量を制御するように電圧制御遅延回路14に与える。
【0026】
次に、位相補正回路21について詳細に説明する。位相補正回路21は、2つの入力信号である信号Aおよび信号Cから出力信号である信号Bを生成する回路である。ロック判定信号SlがHレベルの場合には、信号Aおよび信号Cのそれぞれの位相の中間の所定の比率の時間にシフトして補正した位相の信号Bを生成する。一方、ロック判定信号SlがLレベルの場合には、位相の補正は行わず、信号Aをそのまま信号Bへ伝達する。
【0027】
図2は、位相補正回路の一例を示す回路図である。図2において、位相補正回路21は、ゲートに信号Aが入力されたインバータ22、およびクロックドインバータ23、ゲートに信号Cが入力されたクロックドインバータ24、およびインバータ13からなる。インバータ22、クロックドインバータ23、およびクロックドインバータ24の出力ノードN1は、共通接続され、インバータ13に入力される。インバータ13の出力は、位相補正回路21の出力信号である信号Bとなる。
【0028】
クロック判定信号SlがLレベルの場合には、クロックドインバータ23が活性化され、クロックドインバータ24は不活性となる。したがって、ノードN1は信号Aのみに応答して並列接続されたインバータ22、クロックドインバータ23によって駆動される。一方、ロック判定信号SlがHレベルの場合には、クロックドインバータ23が不活性とされ、クロックドインバータ24は活性化される。したがって、ノードN1は、信号Aに応答してインバータ22により駆動されると共に、信号Cに応答してクロックドインバータ24により駆動される。ここで、クロックドインバータ23、クロックドインバータ24は、負荷駆動能力等を同一特性であるようにしておくと、信号Aと信号Cとの位相が一致している場合には信号Bの位相のシフト(補正)はない。
【0029】
クロック信号CLKiにジッタがあると信号Aの位相がずれるため、信号Aと信号Cとの位相がずれる。その結果、ノードN1における波形がなまるが、インバータ13で波形成形され、信号Aおよび信号Cのそれぞれの位相の中間の所定の比率の時間にシフトし、補正した位相の信号Bが得られる。ノードN1の波形のなまり具合で位相の補正量が決まるので、たとえば、インバータ22とクロックドインバータ24との負荷駆動能力を1:1とすると、信号Bの位相は、信号Aおよび信号Cそれぞれの位相のちょうど中間の位相となる。このようにインバータ22とクロックドインバータ24との負荷駆動能力の比率を与えることで出力信号の位相補正量を設定することができる。
【0030】
図3は、位相補正回路の他の例を示す回路図である。図3において、位相補正回路21aは、信号Aおよび信号Cの立ち上がりの位相補正を担う、負荷MOSトランジスタQp1、スイッチ用N型MOSトランジスタQn2、Qn3、負荷駆動用定電流源Ifn、Ien、オアゲート27、波形成形用インバータ29、ワンショット信号生成回路31、フリップフロップ駆動MOSトランジスタQp4を備える。また、信号Aおよび信号Cの立ち下がりの位相補正を担う、負荷MOSトランジスタQn1、スイッチ用P型MOSトランジスタQp2、Qp3、負荷駆動用定電流源Ifp、Iep、ANDゲート28、波形成形用インバータ30、ワンショット信号生成回路32、フリップフロップ駆動MOSトランジスタQn4を備える。さらに、信号Aおよび信号Cを分配するマルチプレクサ25、26、信号Bを出力するためのフリップフロップ33および出力バッファ34を備える。
【0031】
位相補正回路21aは、信号Aおよび信号Cの立ち上がりの位相補正と立下りの位相補正とを独立な回路で制御しているため、それぞれ独立に制御できるという特徴を有している。以下、信号Aおよび信号Cの立ち上がりの位相補正について説明する。なお、立ち下がりの位相補正に関しては、各回路の信号レベルが立ち上がりの位相補正に対して反転していることを除けば同じであるので説明を省略する。
【0032】
マルチプレクサ25は、遅延時間を整合させるためのダミー回路でマルチプレクサ26と同一回路同一特性を有する回路であり、常に信号Aを選択するように構成されている。マルチプレクサ25、26は、信号Aと信号Cの位相がずれている場合、それぞれの立ち上がりエッジでスイッチ用N型MOSトランジスタQn2、Qn3を駆動する。したがって、位相ずれ量にしたがってノードN2の立下りスピードが変化し、波形成形用インバータ29の出力信号の立ち上がりの位相補正が行われる。この時、位相補正量は、負荷駆動用定電流源Ifn、Ienの電流比率を設定することで自由に設定可能である。また、負荷駆動用定電流源Ifn、Ienの電流値を信号で制御するように設定することで補正量を調整可能である。
【0033】
ワンショット信号生成回路31は、波形成形用インバータ29の出力信号の立ち上がりに対応してLレベルとなるワンショットパルス信号でフリップフロップ駆動MOSトランジスタQp4を駆動する。フリップフロップ駆動MOSトランジスタQp4によって、フリップフロップ33の出力は、Lレベルとなり、出力バッファ34の出力である信号Bは、Hレベルとなる。
【0034】
同様に、ワンショット信号生成回路32は、波形成形用インバータ30の出力信号の立ち下がりに対応してHレベルとなるワンショットパルス信号でフリップフロップ駆動MOSトランジスタQn4を駆動する。フリップフロップ駆動MOSトランジスタQn4によって、フリップフロップ33の出力は、Hレベルとなり、出力バッファ34の出力である信号Bは、Lレベルとなる。
【0035】
以上のような位相補正回路によれば、ワンショット信号生成回路31、32、フリップフロップ駆動MOSトランジスタQp4、Qn4、フリップフロップ33、出力バッファ34により、独立に制御した信号Aおよび信号Cの立ち上がりの位相補正と立下りの位相補正とを信号Bに統合するように反映することができる。
【0036】
次に、DLL回路の動作について説明する。図4は、本発明の実施例に係るDLL回路の動作を表すタイミングチャートである。図4において、ロック判定信号Slがハイレベル、すなわちDLL回路がロックした後におけるクロック信号CLKiのライズエッジのジッタに注目した動作波形を示す。なお、DLL回路が動作を開始してから位相ロックが完了するまでは、ロック判定信号Slによってクロックドインバータ20の動作を停止させて誤動作を防止する。
【0037】
クロック信号CLKiにおいて、理想エッジからΔTn(n=1〜9)の時間ずれ(ジッタ)が発生したとする。この時間ずれΔTnは、サイクルごとに変動することもあるため、クロック信号CLKiの波形のようになり、各ライズエッジにおいてΔTnのジッタを有する。入力バッファ11の出力である節点Aには、入力バッファ11の遅延分だけ遅れたクロック信号CLKiが現れる。
【0038】
今、位相補正回路21が機能しないとした場合、位相補正回路21の出力信号、信号B’(仮想波形)は信号Aに対して位相補正回路21の遅延分だけ遅れた信号が現れる。また、レプリカ出力バッファ16の出力には、信号B’が電圧制御遅延回路14およびレプリカ出力バッファ16によって遅延させられたクロック信号FbClk’が現れる。
【0039】
位相補正回路21が機能する場合、位相補正回路21は、クロック信号CLKiを受けた信号Aの位相と過去のクロック信号CLKiであるクロック信号FbClkの位相との中間の位相を有する信号Bを出力する。このとき、位相補正分と信号Aに対して位相補正回路21の遅延分だけ遅れた信号として出力されている。
【0040】
信号Bは、電圧制御遅延回路14に入力され、出力バッファ15を経てクロック信号CLKoとなるとともにレプリカ出力バッファ16を経てフィードバックCLKであるクロック信号FbClkとなる。
【0041】
信号Bは、位相補正回路21によって過去のクロック信号CLKiであるクロック信号FbClkの位相と現在のクロック信号CLKiの位相の中間の位相を有する。このため、現在のクロック信号CLKiのジッタをΔTn、クロック信号FbClkのジッタをΔTn−n’とすると、節点Bにおける信号の理想エッジからのずれΔTnは、(ΔTn+ΔTn−n’)/2となり、過去のクロック信号CLKiのジッタと平均化されてΔTnよりも小さくなる。したがって、クロック信号CLKoおよびクロック信号FbClkのジッタは小さくなり、クロック信号CLKoのピークジッタは、クロック信号CLKiのピークジッタよりも小さくすることができる。
【0042】
上記の説明では、クロック信号CLKiの位相とクロック信号FbClkの位相に基づいて信号Bの位相をそれらのちょうど中央に補正した場合について述べた。しかし、これに限定されることなく、信号Bをクロック信号CLKiの位相とクロック信号FbClkの位相に対して、X:1−X(ただし、0<X<1)で可変とするように補正してもよい。このように、位相補正回路21は、補正量の調整機能を具備することで、クロック信号CLKoのジッタ量を最適化することができる。
【0043】
例えば、図3で説明したように位相補正回路21aにライズエッジ、フォールエッジ、それぞれに対して独立に位相補正機能を有する構成とした場合、それぞれに対応するジッタ量低減が可能となり、最適化することができる。
【0044】
次に、以上で説明したDLL回路をシステムに適用した場合の例について説明する。図5は、携帯電話やコンピュータシステムなど情報処理システム35の構成例を示す図である。情報処理システム35は、ディジタルシグナルプロセッサ43、シンクロナスDRAM41、キーボードや表示装置などの入出力装置(I/Oデバイス)42、システムクロックジェネレータ36を備える。ディジタルシグナルプロセッサ43、シンクロナスDRAM41、入出力装置42は、システムクロックジェネレータ36で生成されてシステムクロック信号線37により配信されるシステムクロックを基準クロックとして動作する。ディジタルシグナルプロセッサ43と入出力装置42との間はデータバス44を介して、また、ディジタルシグナルプロセッサ43とシンクロナスDRAM41との間はデータバス45を介して情報の授受が行われる。
【0045】
このような構成の情報処理システム35において、大量の情報の授受を高速、かつ確実に行うため、情報の授受はシステムクロックに同期して制御される。システムクロックは、多くのデバイスに配信されており、配線間のノイズや、電源電位変動等が原因で、位相ずれやジッタが生じるために性能低下や誤動作を招きやすい。この位相ずれやジッタを除去もしくは軽減するために、システムを構成する半導体装置のおのおのにクロック同期遅延制御回路を搭載することがある。クロック同期遅延制御回路には、SAD方式とDLL方式がある。ここでは、DLL回路を搭載した例としてシンクロナスDRAM41の場合について例示する。
【0046】
シンクロナスDRAM41は、システムクロックであるクロック信号CLKiからクロック信号CLKoを生成する前述のDLL回路38と、DLL回路38の出力するクロック信号CLKoを受けて、データバス45を介してクロック信号CLKiに同期して送信されるアドレス・コマンド情報やデータを送受信する入出力回路40と、を備える。
【0047】
図6は、情報処理システム35aの他の構成例を示す図である。図6において、図5と同一の符号は、同一物を表す。システムクロックジェネレータ36で生成されたシステムクロックは、信号線46を介して一旦、ディジタルシグナルプロセッサ43aに供給される。ディジタルシグナルプロセッサ43aは、システムクロックとなるクロック信号CLKiをシステムクロック信号線37aから他のデバイス、入出力装置42やシンクロナスDRAM41に配信する。
【0048】
このような構成によれば、システムクロックにおける位相ずれやジッタが低減され、半導体装置間の情報の授受が高速、かつ安定して行うことができ、高性能な半導体装置を提供できるとともに、高性能な情報処理システムを提供することができる。
【0049】
なお、前述の特許文献等の各開示を、本書に引用をもって繰り込むものとする。本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素の多様な組み合わせないし選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施例に係るDLL回路の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例に係る位相補正回路の一例を示す回路図である。
【図3】本発明の実施例に係る位相補正回路の他の例を示す回路図である。
【図4】本発明の実施例に係るDLL回路の動作を表すタイミングチャートである。
【図5】本発明の実施例に係る情報処理システムの構成例を示す図である。
【図6】本発明の実施例に係る情報処理システムの他の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
11 入力バッファ
12、13、22 インバータ
14 電圧制御遅延回路
15、34 出力バッファ
16 レプリカ出力バッファ
17 位相比較回路(PD)
18 カウンタ
19 D/A変換回路
20、23、24 クロックドインバータ
21、21a 位相補正回路
25、26 マルチプレクサ
27 オアゲート
28 ANDゲート
29、30 波形成形用インバータ
31、32 ワンショット信号生成回路
33 フリップフロップ
35 情報処理システム
36 システムクロックジェネレータ
37、37a システムクロック信号線
38 DLL回路
40 入出力回路
41 シンクロナスDRAM
42 入出力装置(I/Oデバイス)
43、43a ディジタルシグナルプロセッサ(DSP)
44、45 データバス
46 信号線
Ifn、Ien、Ifp、Iep 負荷駆動用定電流源
Qn2、Qn3 スイッチ用N型MOSトランジスタ
Qp1、Qn1 負荷MOSトランジスタ
Qp2、Qp3 スイッチ用P型MOSトランジスタ
Qp4、Qn4 フリップフロップ駆動MOSトランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力クロック信号を可変遅延回路を介して出力クロック信号として出力すると共に、入力クロック信号と出力クロック信号との位相比較結果に基づいて可変遅延回路における遅延量を制御するDLL回路を備える半導体装置であって、
前記入力クロック信号および前記出力クロック信号を入力とし、前記DLL回路がロック状態に入った後に、前記入力クロック信号および前記出力クロック信号の位相がずれた場合に、前記出力クロック信号の位相に基づいて前記入力クロック信号の位相に補正を加え、前記可変遅延回路に出力する位相補正回路を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記位相補正回路は、前記入力クロック信号の位相と前記出力クロック信号の位相がずれた場合に、前記入力クロック信号の位相と前記出力クロック信号の位相との間の位相を有する信号を出力することを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記位相補正回路は、前記入力クロック信号の位相と前記出力クロック信号の位相がずれた場合に、前記入力クロック信号の位相と前記出力クロック信号の位相との間の中央より前記出力クロック信号寄りの位相を有する信号を出力することを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
前記位相補正回路は、前記入力クロック信号が入力された第1のインバータと前記出力クロック信号が入力された第2のインバータを含み、前記第1のインバータと前記第2のインバータの出力は共通接続されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記位相補正回路は、第1の電源と共通ノードとの間に設けられた負荷素子と前記共通ノードと第2の電源との間に並列に接続された第1および第2のMOS型トランジスタとを含み、前記第1のMOS型トランジスタは前記入力クロック信号で駆動され、前記第2のMOS型トランジスタは前記出力クロック信号で駆動されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載の半導体装置。
【請求項6】
システムクロック信号を送信する第1の半導体装置と前記システムクロック信号を受信する第2の半導体装置を含み、
前記第2の半導体装置は、前記システムクロック信号を可変遅延回路を介して出力クロック信号として出力すると共に、前記システムクロック信号と前記出力クロック信号との位相比較結果に基づいて可変遅延回路における遅延量を制御するDLL回路を有し、
前記システムクロック信号および前記出力クロック信号を入力とし、前記DLL回路がロック状態に入った後に、前記システムクロック信号および前記出力クロック信号の位相がずれた場合に、前記出力クロック信号の位相に基づいて前記システムクロック信号の位相に補正を加え、前記可変遅延回路に出力する位相補正回路を備えることを特徴とする情報処理システム。
【請求項7】
入力クロック信号を可変遅延回路を介して出力クロック信号として出力すると共に、入力クロック信号と出力クロック信号との位相比較結果に基づいて可変遅延回路における遅延量を制御するDLL回路を含む半導体装置の制御方法であって、
前記DLL回路がロック状態にない場合に、前記入力クロック信号を前記可変遅延回路に与えるステップと、
前記DLL回路がロック状態にあって、前記入力クロック信号および前記出力クロック信号の位相がずれた場合に、前記出力クロック信号の位相に基づいて前記入力クロック信号の位相に補正を加え、前記可変遅延回路に与えるステップと、
を含むことを特徴とする半導体装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−119056(P2010−119056A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−292583(P2008−292583)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(500174247)エルピーダメモリ株式会社 (2,599)
【Fターム(参考)】