説明

情報処理装置、ディスプレイの表示方法、およびコンピュータが実行可能なプログラム

【課題】マルチウィンドウの利点を没却することなく、ディスプレイの消費電力の低減、焼き付きの低減、および/または高寿命化することが可能な情報処理装置を提供することを目的とする。
【解決手段】マルチウィンドウOS31を搭載したノート型PC1において、表示デバイス16の消費電力の低減、焼き付きの低減、および/または高寿命化するための全画面の半透明ウィンドウを生成する半透明ウィンドウ生成手段と、表示デバイス16の表示画面のアクティウィンドウのすぐ背後に半透明ウィンドウ生成手段で生成した全画面の半透明ウィンドウを表示する表示制御手段と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、ディスプレイの表示方法、およびコンピュータが実行可能なプログラムに関し、詳細には、マルチウィンドウOSを搭載した情報処理装置、ディスプレイの表示方法、およびコンピュータが実行可能なプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンピュータは、パワーマネージメント機能を備えている。パワーマネージメント機能とは、コンピュータが一定時間使用されていない場合に、所定の処理を行うことでその消費電力を低減させるための機能である。ディスプレイの消費電力を低減させる場合であれば、ディスプレイの電源を切る等の処理を行うことが考えられる。ここで、ディスプレイとしては、例えば、液晶ディスプレイ、CRT、および有機ELディスプレイ等の種々のタイプが普及している。液晶には、電圧がかかっていない時に透過率あるいは反射率が最大となり白い画面になるノーマリーホワイトと、電圧がかかっていない時に最も光を遮り、黒い画面になるノーマリーブラックがある。ノーマリーホワイトの場合は、白色表示の方が黒色表示に比してディスプレイの消費電力が小さくなる。ノーマリーブラックの場合は、黒色表示の方が白色表示に比してディスプレイの消費電力が小さくなる。
【0003】
他方、一般に、自発光素子型ディスプレイ(例えば、CRT,プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等のノーマリーブラック)の発光素子は、発光時間が長いほど、発光輝度が高いほど、その能力が低下するという性質がある。発光素子の集合体であるディスプレイでは、画面上の表示内容は全面均一では無いため、各々の発光素子の輝度は異なり、前述により各々の発光素子の能力に差が発生する。このディスプレイの各々の発光素子に能力差が発生することを、焼き付きが発生すると呼ぶ。各々の発光素子の輝度差が常時大きいほど焼き付きは発生し易く、各々の発光素子の輝度差が常時小さいほど焼き付きは発生しづらい。
【0004】
他方、近時、オペレーティングシステム(以下、「OS」という)として、マルチウィンドウOSが広く用いられている。マルチウィンドウOSとは、複数のウィンドウを同時に開き、各ウィンドウで異なるプログラムを実行できるようにしたOSのことである。ユーザは、マウス等のポインティングデバイスを用いて画面上でウィンドウを移動させたり、ウィンドウのサイズを変えたりしながら、複数のプログラムの同時実行を効率的に行うことができる。
【0005】
ところで、マルチウィンドウOSの制御下でプログラムを実行し作業を行う場合、画面上に複数のウィンドウを表示していても、実際は、現在作業中でフォーカスが当たっているウィンドウ(以下、「アクティブウィンドウ」という)だけしか必要としていない場合も多い。このようなことが想定される場合、従来から、アクティブウィンドウ以外の部分についてのみパワーマネージメントを実行するという試みがなされている。
【0006】
例えば、特許文献1では、モニタの消費電力を低減すると共に、パワーマネージメント実行後のウィンドウの切替を簡単に行えるようにするために、所定の条件が満たされた場合にパワーセーブモードへの移行を決定するモード移行決定モジュールと、パワーセーブモードへの移行が決定された場合に、ディスプレイの消費電力を低減するための全画面ウィンドウの開設をマルチウィンドウOSに指示する全画面ウィンドウ開設モジュールと、開いているウィンドウの情報をマルチウィンドウOSから取得するウィンドウ情報取得モジュールと、アクティブウィンドウが全画面ウィンドウの前面に表示されるようにウィンドウを配列するようマルチウィンドウOSに指示するウィンドウ配列モジュールと、パワーセーブモードの終了指示に応じて全画面ウィンドウを閉じるようマルチウィンドウOSに指示する全画面ウィンドウ閉鎖モジュールとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−202750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1では、消費電力を低減するために、アクティブウィンドウ以外のウィンドウを全黒表示とするため、複数ウィンドウ間の切り替えが難しく、マルチウィンドウの利点が没却されているという問題がある。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、マルチウィンドウの利点を没却することなく、ディスプレイの消費電力の低減、焼き付きの低減、および/または高寿命化することが可能な情報処理装置、ディスプレイの表示方法、およびコンピュータが実行可能なプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、マルチウィンドウOSを搭載した情報処理装置において、表示デバイスの消費電力の低減、焼き付きの低減、および/または高寿命化するための全画面の半透明ウィンドウを生成する半透明ウィンドウ生成手段と、前記表示デバイスの表示画面のアクティウィンドウのすぐ背後に前記半透明ウィンドウ生成手段で生成した全画面の半透明ウィンドウを表示する表示制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の好ましい態様によれば、表示ディスプレイは、ノーマリーホワイトの液晶ディスプレイであり、前記半透明ウィンドウ生成手段は、白色の前記半透明ウィンドウを生成することが望ましい。
【0012】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記表示ディスプレイは、ノーマリーブラックの液晶ディスプレイ、自発光素子型ディスプレイ(例えば、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、またはCRT)であり、前記半透明ウィンドウ生成手段は、黒色の前記半透明ウィンドウを生成することが望ましい。
【0013】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記表示デバイスは、その消費電力を最小にするRGB値、その焼き付きを最小にするRGB値、またはその寿命を最大にするRGB値を、特性情報としてメモリに格納することが望ましい。
【0014】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記半透明ウィンドウ生成手段は、前記表示デバイスのメモリに格納された特性情報に基づいて、前記半透明ウィンドウの透明度およびそのRGB値を計算して、当該半透明ウィンドウを生成することが望ましい。
【0015】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記表示制御手段は、前記表示画面に前記ウィンドウとは独立してカーソルを表示することが望ましい。
【0016】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記半透明ウィンドウは、ポインティングデバイスの操作に対して透過であることが望ましい。
【0017】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、マルチウィンドウOSを搭載した情報処理装置のディスプレイ表示方法において、表示デバイスの消費電力の低減、焼き付きの低減、および/または高寿命化するための全画面の半透明ウィンドウを生成する工程と、前記表示デバイスの表示画面のアクティウィンドウのすぐ背後に前記生成された全画面の半透明ウィンドウを表示する工程と、を含むことを特徴とする。
【0018】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、マルチウィンドウOSを備えた情報処理装置に搭載されるプログラムにおいて、表示デバイスの消費電力の低減、焼き付きの低減、および/または高寿命化するための全画面の半透明ウィンドウを生成する機能と、前記表示デバイスの表示画面のアクティウィンドウのすぐ背後に前記生成された全画面の半透明ウィンドウを表示する機能と、をコンピュータに実現させることを特徴とする。
【0019】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、マルチウィンドウOSを備えた情報処理装置に搭載されるプログラムにおいて、表示デバイスの消費電力の低減、焼き付きの低減、および/または高寿命化するための全画面の半透明ウィンドウを生成する機能と、前記マルチウィンドウOSに対して、計算した透明度およびそのRGB値を出力して全画面の半透明ウィンドウを作成させる機能と、アクティブウィンドウの情報を前記マルチウィンドウOSから取得する機能と、前記アクティブウィンドウの情報を取得して、前記全画面の半透明ウィンドウが、前記表示デバイスの表示画面のアクティブウィンドウのすぐ背後に表示されるように前記マルチウィンドウOSに指示する機能と、をコンピュータに実現させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、マルチウィンドウOSを搭載した情報処理装置において、表示デバイスの消費電力の低減、焼き付きの低減、および/または高寿命化するための全画面の半透明ウィンドウを生成する半透明ウィンドウ生成手段と、前記表示デバイスの表示画面のアクティウィンドウのすぐ背後に前記半透明ウィンドウ生成手段で生成した全画面の半透明ウィンドウを表示する表示制御手段と、を備えているので、マルチウィンドウの利点を没却することなく、ディスプレイの消費電力の低減、焼き付きの低減、および/または高寿命化することが可能な情報処理装置を提供することが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明に係る情報処理装置を適用したノート型PCの概略のハードウェア構成例を示す図である。
【図2】図2は、ノート型PCで動作する半透明ウィンドウ処理プログラムの構成を示した機能構成を説明するための図である。
【図3】図3は、本実施例の表示デバイスの消費電力低減方法の原理を説明するための説明図である。
【図4】図4は、表示デバイスの消費電力低減処理を説明するためのフローチャートである。
【図5】図5は、表示ディスプレイの画面表示例を示す図である。
【図6】図6は、本実施例の表示デバイスの高寿命化及び焼き付き低減の原理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、この発明にかかる情報処理装置、ディスプレイの表示方法、およびコンピュータが実行可能なプログラムの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるものまたは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例】
【0023】
図1は、本発明に係る情報処理装置を適用したノート型PCの概略のハードウェア構成例を示す図である。ノート型PC1は、同図に示すように、CPU11、ROM12、メモリ13、HDD(ハードディスク)14、グラフィックスアダプタ15と、表示デバイス16と、エンベデッドコントローラ17と、キーボード18と、マウス19と、USBポート20と、バッテリ21、DC−DCコンバータ22、およびACアダプタ23等を備えており、各部はバスを介して接続されている。
【0024】
CPU11は、バスを介して接続されたHDD14に格納されたマルチウィンドウOS14aによりノート型PC2全体の制御を行うとともに、HDD14に格納された各種のプログラムに基づいて処理を実行する機能を司る。ROM12は、BIOS(Basic Input/Output System:基本入出力システム)12aやデータ等を格納している。
【0025】
メモリ13は、キャッシュメモリやRAMで構成されており、CPU11の実行プログラムの読み込み領域や、実行プログラムの処理データを書き込む作業領域として利用される書き込み可能メモリである。
【0026】
HDD(ハードディスク)14は、ノート型PC1の全体の制御を行うためのマルチウィンドウOS31、表示デバイス16に半透明ウィンドウを表示して表示デバイス16の消費電力を低減させるための半透明ウィンドウ処理プログラム(ユーティリティプログラム)32、周辺機器類をハードウェア操作するための各種ドライバ33と、特定業務に向けられたアプリケーションプログラム34等を記憶する機能を有する。
【0027】
マルチウィンドウOS31は、ノート型PC1の基本的な動作を制御しているものであり、各種資源を管理し、例えば、アプリケーションプログラムが発生した命令を、ドライバ33やBIOS12aに伝える。また、マルチウィンドウOS31は、マルチタスク機能およびマルチウィンドウ機能を有し、アプリケーションプログラム34の実行コンテキスト(あるアプリケーションプログラム34が利用しているレジスタセットやメインメモリイメージ、ファイルハンドルなど)やGUIの部品などのソフトウェア資源の管理も行う。マルチウィンドウOS31としては、例えば、Windows(登録商標) XPを使用することができる。
【0028】
ドライバ33は、ハードウェアを動作させるための専用ソフトウェアであり、ドライバ33には、例えば、マウス19を動作させるためのマウスドライバ、および表示デバイス16に画像を表示させるための表示ドライバ33a等がある。
【0029】
グラフィックスアダプタ15は、CPU11の制御に従って、描画情報をビデオ信号に変換し、変換したビデオ信号を表示デバイス16に出力するためのものであり、描画情報が書き込まれるVRAM15aやVRAM15aに書き込まれた描画情報をビデオ信号に変換して、表示デバイス16に出力するグラフィックスチップ15b等を備えている。
【0030】
表示デバイス16は、RGB表示が可能な液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、およびCRT等であり、CPU11により制御され、グラフィックスアダプタ15から入力されるビデオ信号に応じた各種情報を表示する。また、表示デバイス16は、当該表示デバイス16の消費電力を最小にするRGB値、その焼き付きを最小にするRGB値、またはその寿命を最大にするRGB値が特性情報として予め書き込まれているEEPROM16aを備えている。このEEPROM16aに格納された特性情報は、半透明ウィンドウを生成する際に参照される。なお、表示デバイス16の消費電力を最小にするRGB値、その焼き付きを最小にするRGB値、またはその寿命を最大にするRGB値は、ほぼ同じ値であるので、何れの値を特性情報として使用しても、表示デバイス16の消費電力の低減、その焼き付きの防止、およびその高寿命化が可能となる。
【0031】
エンベデッドコントローラ17は、文字、コマンド等を入力する各種キーより構成されるキーボード18や、画面上のカーソルを移動させたり、各種メニューを選択するマウス19の動作を制御する。
【0032】
ACアダプタ23は、商用電源に接続して、AC電圧をDC電圧に変換してDC−DCコンバータ22に出力する。DC−DCコンバータ22は、ACアダプタ23から供給されるDC電圧を所定の電圧に変換して各部に電力を供給し、また、バッテリ20の充電を行う。バッテリ20は、DC−DCコンバータ22により充電され、ACアダプタ23が装着されていない場合に、充電した電圧を各部に供給する。
【0033】
図2は、ノート型PC1で動作する半透明ウィンドウ処理プログラム32の機能構成を説明するための図である。図3は、本実施例の表示デバイス16の消費電力低減方法の原理を説明するための説明図、図4は、ノート型PC1における表示デバイス16の消費電力低減処理を説明するためのフローチャートである。
【0034】
図2において、半透明ウィンドウ処理プログラム32は、半透明ウィンドウの生成指示や半透明ウィンドウの配列指示をマルチウィンドウOS31に出力する。マルチウィンドウOS31は、アプリケーション34等の指示によりウィンドウを生成し、表示ドライバ33aを介して、表示デバイス16の表示画面の表示制御を行う。
【0035】
表示ドライバ33aは、マルチウィンドウOS31が生成したウィンドウをグラフィックアダプタ15のVRAM15aに描画情報として描画する。グラフィクスチップ15aは、VRAM15aに描画された描画情報をビデオ信号に変換した後、表示デバイス16に出力してその表示画面に表示させる。
【0036】
図3を参照して、上記図2の如く構成されるノート型PC1の表示デバイス16の消費電力低減方法の原理を説明する。同図において、Aはアクティブウィンドウ(最前面ウィンドウ)、Bを半透明ウィンドウ、Cをスクリーン上の他のオブジェクト(背景、ウィンドウ等)、Dをスクリーン上の他のオブジェクトC(背景、ウィンドウ等)に半透明ウィンドウBを重ねた状態を示している。同図では、同図(1)のようなウィンドウが形成されている場合に、半透明ウィンドウBを生成し、アクティブウィンドウAのすぐ背後に配置することで、消費電力を低減させる場合について説明する。
【0037】
半透明ウィンドウ処理プログラム32は、マルチウィンドウOS31に対して、表示デバイス16の消費電力を低減するための全画面の半透明ウィンドウBを作成させる。この半透明ウィンドウBは、後側のウィンドウや背景の文字をユーザが視認可能な透明度としている。また、この半透明ウィンドウBは、例えば、表示ディスプレイ16がノーマリーホワイトの液晶ディスプレイの場合は、白色の半透明ウィンドウであり、表示ディスプレイ16が、ノーマリーブラックの液晶ディスプレイ、自発光素子型ディスプレイ(例えば、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、またはCRT)の場合は、黒色の半透明ウィンドウである。
【0038】
これは、表示ディスプレイ16がノーマリーホワイトの液晶ディスプレイの場合は、黒色表示に比して白色表示の方がディスプレイの消費電力を低減でき、また、ノーマリーブラックの液晶ディスプレイ、自発光素子型ディスプレイの場合は、白色表示に比して黒色表示の方がディスプレイの消費電力を低減できるという着想に基づいている。
【0039】
更にこれは、表示ディスプレイ16のEEPROM16aに特性情報として書き込む、消費電力を最小にするRGB値として、ノーマリーホワイトの液晶ディスプレイの場合は白、ノーマリーブラックの液晶ディスプレイ、自発光素子型ディスプレイの場合は黒が適当であることを示している。
【0040】
また、表示ディスプレイ16が自発光素子型ディスプレイの場合は、白色表示に比して黒色表示の方が発光素子の能力低下を低減でき、表示ディスプレイ16を高寿命化できるという着想に基づいている。
【0041】
さらに、表示ディスプレイ16が自発光素子型ディスプレイの場合は、白色表示に比して黒色表示の方が各々の発光素子の能力低下の程度差が減少し、焼き付きの発生を低減できるという着想に基づいている。
【0042】
これは、表示ディスプレイ16が自発光素子型ディスプレイの場合は、そのEEPROM16aに特性情報として書き込む、高寿命化するRGB値として、黒が適当であることを示している。
【0043】
また、表示ディスプレイ16が自発光素子型ディスプレイの場合は、そのEEPROM16aに特性情報として書き込む、焼き付きを低減するRGB値として、黒が適当であることを示している。
【0044】
以下の説明では、表示デバイス16がノーマリーホワイトの液晶ディスプレイであるとして、白色の半透明ウィンドウを作成する場合について説明する。
【0045】
半透明ウィンドウ処理プログラム32は、マルチウィンドウOS31に対して、全画面の半透明ウィンドウが、アクティブウィンドウAのすぐ背後に表示されるように指示し、マルチウィンドウOS31は、同図(2)に示すように、半透明ウィンドウBをアクティブウィンドウAのすぐ背後に配置する。ここで、半透明ウィンドウBは、白色の半透明ウィンドウであり、スクリーン上の他のオブジェクト(背景、ウィンドウ等)をCとする。
【0046】
同図(3)に示すように、表示ドライバ33aは、マルチウィンドウOS31の指示にしたがって、アクティブウィンドウAのエリアを除くスクリーン全体のRGB値を画素毎に計算して、描画情報としてVRAM15bに描画する。すなわち、アクティブウィンドウAのエリア外では、他のオブジェクトC上に半透明ウィンドウB(白の半透明)が重ねられた描画情報となり、DはCに比べ白みを帯びる。
【0047】
同図(4)に示すように、グラフィックスチップ15aは、VRAM15bの描画情報をビデオ信号に変換して、表示デバイス16に出力して、VRAM15b上の描画情報を表示させる。また、グラフィックスチップ15aは、VRAM15bの描画情報をビデオ信号に変換する際に、マルチウィンドウOS31から表示ドライバ33aを介して、カーソル挿入の指示がある場合には、ビデオ信号にカーソル表示信号を挿入する。カーソルは、VRAM15b上に描画されないため、表示デバイス16上で半透明ウィンドウBや他のウィンドウの影響を受けないで、独立して表示される。
【0048】
上記図2の半透明ウィンドウ処理プログラム32を詳細に説明する。半透明ウィンドウ処理プログラム32は、図2に示すように、半透明ウィンドウ計算モジュール41と、半透明ウィンドウ開設モジュール42、ウィンドウ情報取得モジュール43と、ウィンドウ配列モジュール44とを備えている。
【0049】
半透明ウィンドウ計算モジュール41は、表示デバイス16のEEPROM16aに書き込まれている特性情報を読み出し、読み出した特性情報に基づいて、表示ディスプレイ16の消費電力を低減させるための半透明ウィンドウの透明度X%およびそのRGB値を計算するためのモジュールである。ここでは、表示デバイス16がノーマリーホワイトの液晶ディスプレイであると仮定しているので、そのRGB値は白色である。
【0050】
半透明ウィンドウ開設モジュール42は、マルチウィンドウOS31に対して、半透明ウィンドウ計算モジュール41で計算した透明度X%およびそのRGB値をパラメータとして、さらに、マウス19等のポインティングデバイスに対して透過とするフラグをパラメータとして、全画面の半透明ウィンドウを作成させ、全画面の半透明ウィンドウを表示させるためのモジュールである。
【0051】
ウィンドウ情報取得モジュール43は、アクティブウィンドウの情報をマルチウィンドウOS31から取得するためのモジュールである。
【0052】
ウィンドウ配列モジュール44は、全画面の半透明ウィンドウが、アクティブウィンドウのすぐ背後に表示されるように、ウィンドウの配列をマルチウィンドウOS31に指示するモジュールである。
【0053】
図4を参照して、上記図2の如く構成されるノート型PC1における表示デバイス16の消費電力低減処理を説明する。このノート型PC1における表示デバイス16の消費電力低減処理は、常時実行してもよく、また、例えば、一定時間操作がされない場合、バッテリ駆動の場合、ユーザの指示がある場合等の所定条件を満たす場合に実行することにしてもよい。表示デバイス16の消費電力低減処理は、半透明ウィンドウの作成処理と、イベント処理とで構成されている。
【0054】
図4において、半透明ウィンドウの作成処理では、半透明ウィンドウ処理プログラム32の半透明ウィンドウ計算モジュール41は、表示ディスプレイ16のEEPROM16aに書き込まれた特性情報(例えば、表示デバイス16の消費電力を最小にするRGB値)を取得し(ステップS1)、取得した特性情報に基づいて、表示ディスプレイ16の消費電力を低減させるための半透明ウィンドウの透明度X%およびそのRGB値を計算する(ステップS2)。
【0055】
半透明ウィンドウ開設モジュール42は、マルチウィンドウOS31に対して、半透明ウィンドウ計算モジュール41で計算した透明度X%およびそのRGB値をパラメータとし、さらに、マウス等のポインティングデバイスに対して透過とするフラグをパラメータとし、全画面の半透明ウィンドウの作成および作成した全画面の半透明ウィンドウの表示を指示する(ステップS3)。これに応じて、マルチウィンドウOS31は、全画面の半透明ウィンドウの作成し、作成した全画面の半透明ウィンドウを表示デバイス16に表示させる(ステップT1)。これにより、半透明ウィンドウ自身は、マウス19等のポインティングデバイスの操作に対して透過であり、ポインティングデバイスの操作は、半透明ウィンドウの背後にあるウィンドウなどへの操作となる。
【0056】
ウィンドウ配列モジュール44は、全画面の半透明ウィンドウが、アクティブウィンドウのすぐ裏側に表示されるように、マルチウィンドウOS31に対して、半透明ウィンドウのZ軸位置をアクティウィンドウのZ軸位置のすぐ裏側に移動するように指示する(ステップS4)。これに応じて、マルチウィンドウOS31は、全画面の半透明ウィンドウをアクティブウィンドウのすぐ裏側に配置して、表示画面のアクティブウィンドウのすぐ裏側に半透明ウィンドウを表示させる。
【0057】
ウィンドウ情報取得モジュール43は、マルチウィンドウOS31に対して、アクティブウィンドウが変更された場合に、通知するように依頼する(ステップS5)。
【0058】
半透明ウィンドウのイベント処理では、マルチウィンドウOS31は、ユーザ操作やアプリケーションの指示により、アクティブウィンドウを変更した場合は(ステップT11の「Yes」)、半透明ウィンドウ処理プログラム32のウィンドウ情報取得モジュール43に、アクティブウィンドウが変更された旨を通知する(ステップT12)。ウィンドウ配列モジュール44は、ウィンドウ情報取得モジュール43でアクティブウィンドウが変更された旨の通知を受け取った場合に、全画面の半透明ウィンドウが、アクティブウィンドウのすぐ裏側に表示されるように、マルチウィンドウOS31に対して、半透明ウィンドウのZ軸位置をアクティブウィンドウのZ軸位置のすぐ裏側に移動するように指示する(ステップS11)。これに応じて、マルチウィンドウOS31は、半透明ウィンドウをアクティブウィンドウのすぐ裏側に配置して、表示画面のアクティブウィンドウのすぐ裏側に半透明ウィンドウを表示させる。
【0059】
ここで、実際の表示ディスプレイ16の表示について、図5を参照して具体的に説明する。図5は、表示ディスプレイ16の画面表示例を示す図である。例えば、図5(A)において、背景SにウィンドウW1,W2が順に重畳的に表示されていると共に、カーソルが表示されている。ウィンドウW1がアクティブウィンドウに設定されており、また、ウィンドウW1には「ABC」が、ウィンドウW2には「CDE」が表示されている。
【0060】
ここで、表示デバイス16の消費電力低減処理が実行されると、アクティブウィンドウW1のすぐ背後に白色の半透明ウィンドウが表示され、図5(B)に示すように、アクティブウィンドウW1のエリアを除く画面全体が白の半透明のマスクがされたように表示される。ウィンドウW1の「ABC」やカーソル表示は、この半透明ウィンドウの影響を受けない。一方、ウィンドウW2の「CDE」は、この半透明ウィンドウの影響を受けるが視認可能である。これにより、ユーザは、他のウィンドウや背景の表示情報を視認でき、ウィンドウの切替えが容易となる。
【0061】
ここで、ユーザが、マウスカーソルを視認可能なウィンドウW2の「CDE」上へ移動しクリック操作を行なう(ウィンドウW2や「CDE」は視認可能であるので)こと等により、アクティブウィンドウが、ウィンドウW1からウィンドウW2に変更されると、白色の半透明ウィンドウはアクティブウィンドウW2のすぐ背後に移動され、図5(C)に示すように、アクティブウィンドウW2のエリアを除く画面全体が白の半透明のマスクがされたように表示される。ウィンドウW2の「CDE」やカーソル表示は、この半透明の影響を受けない。一方、ウィンドウW1の「ABC」は、この半透明の影響を受けるが視認可能である。
【0062】
上記実施例では、ノーマリーホワイトの表示ディスプレイ16に白色の半透明ウィンドウを表示して、表示ディスプレイ16の消費電力を低減する場合について説明したが、上述したように、ノーマリーブラックの表示ディスプレイ16の場合には、黒色の半透明ウィンドウを表示することで、表示ディスプレイ16の消費電力を低減することができる。
【0063】
図6は、表示ディスプレイ16が自発光素子型ディスプレイの場合に、黒色の半透明ウィンドウを適用することで、表示ディスプレイ16の高寿命化および焼き付きの低減が可能となる原理を説明するための図である。
【0064】
同図(A)は、太陽の輝度をA、空の輝度をBとして表示ディスプレイに表示した状態を示している。同図(B)は、黒色の半透明ウィンドウを適用した結果、太陽が輝度A´、空が輝度B´で表示ディスプレイに表示されている状態を示している。同図(C)は、黒色の半透明ウィンドウの場合には、透明度が不透明に近づくにつれて輝度が低下するという透明度の定義と、不透明の場合には輝度がゼロの黒になるという透明度の定義に基づいた結果、輝度A´は輝度Aより低く、輝度B´は輝度Bより低く、さらに輝度A´と輝度B´の差は、輝度Aと輝度Bの差より小さくことを示している。
【0065】
このように、表示ディスプレイ16が自発光素子型ディスプレイの場合に、黒色の半透明ウィンドウを適用することで、各々の発光素子の輝度が低くなるため、発光素子の能力低下が抑えられ、ディスプレイを高寿命化することが可能となる。
【0066】
また、表示ディスプレイ16が自発光素子型ディスプレイの場合に、黒色の半透明ウィンドウを適用することで、各々の発光素子の輝度差が小さくなるため、発光素子の能力低下の程度差が減少し、焼き付きの発生を低減することが可能となる。
【0067】
以上説明したように、本実施例によれば、マルチウィンドウOS31を搭載したノート型PC1において、表示デバイス16の消費電力を低減するための全画面の半透明ウィンドウを生成し、アクティウィンドウのすぐ背後に全画面の半透明ウィンドウを表示することとしたので、表示デバイスの消費電力を低減できると共に、ユーザは、アクティブウィンドウの背後のウィンドウや背景を視認することが可能であるのでウィンドウの切替えを容易に行うことができ、マルチウィンドウの利点を没却することなく、ディスプレイの消費電力の低減、焼き付きの低減、および高寿命化することが可能となる。
【0068】
また、表示デバイス16の消費電力を最小にする特性情報に基づいて、半透明ウィンドウの透明度およびそのRGB値を計算して、当該半透明ウィンドウを生成することとしたので、簡単に論理的な方法で半透明ウィンドウを生成することが可能となる。
【0069】
また、上記特性情報を予め表示デバイス16のEEPROM16aに格納しておくこととしたので、異なる表示デバイスを使用する場合でも当該表示デバイスの消費電力等を低減するための半透明ウィンドウを生成することが可能となる。
【0070】
また、本発明の好ましい態様によれば、半透明ウィンドウとは独立してカーソルを表示画面に表示することとしたので、半透明ウィンドウの影響を受けない状態でカーソルを表示することができ、ユーザの使い勝手を向上させることが可能となる。
【0071】
なお、上記実施例では、情報処理装置として、ノート型PCについて説明したが、これに限定されるものではなく、ミニノート型PC、デスクトップ型PC,PDA、携帯電話等の情報処理装置に適用することができる。
【0072】
また、上記実施例では、特性情報を予め表示デバイス16のEEPROM16aに格納しておき、EEPROM16aから特性情報を取得することとしたが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、表示デバイス16の特性情報をウェブサーバに登録しておき、そこからダウンロードして特性情報を取得する方法を使用することにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明に係る情報処理装置、ディスプレイの表示方法、およびコンピュータが実行可能なプログラムは、マルチウィンドウOSを搭載した情報処理装置で表示デバイスの消費電力を低減させる場合に有用であり、特に自発光素子型ディスプレイの場合は焼き付きを低減させる場合や寿命を延ばす場合にも有用であり、ノート型PC、ミニノート型PC、デスクトップ型PC,PDA、携帯電話等の情報処理装置に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 ノート型PC
11 CPU
12 ROM
12a BIOS
13 メモリ
14 HDD(ハードディスク)
15 グラフィックスアダプタ
15a VRAM
15b グラフィックスチップ
16 表示デバイス
16a EEPROM
17 エンベデッドコントローラ
18 キーボード
19 マウス
20 USBポート
21 バッテリ
22 DC−DCコンバータ
23 ACアダプタ
31 マルチウィンドウOS
32 半透明ウィンドウ処理プログラム(ユーティリティプログラム)
33 ドライバ
33a 表示ドライバ
34 アプリケーションプログラム
41 半透明ウィンドウ計算モジュール
42 半透明ウィンドウ開設モジュール
43 ウィンドウ情報取得モジュール
44 ウィンドウ配列モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチウィンドウOSを搭載した情報処理装置において、
表示デバイスの消費電力の低減、焼き付きの低減、および/または高寿命化するための全画面の半透明ウィンドウを生成する半透明ウィンドウ生成手段と、
前記表示デバイスの表示画面のアクティウィンドウのすぐ背後に前記半透明ウィンドウ生成手段で生成した全画面の半透明ウィンドウを表示する表示制御手段と、
を備えたことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記表示ディスプレイは、ノーマリーホワイトの液晶ディスプレイであり、
前記半透明ウィンドウ生成手段は、白色の前記半透明ウィンドウを生成することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記表示ディスプレイは、ノーマリーブラックの液晶ディスプレイ、自発光素子型ディスプレイであり、前記半透明ウィンドウ生成手段は、黒色の前記半透明ウィンドウを生成することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記表示デバイスは、その消費電力を最小にするRGB値、その焼き付きを最小にするRGB値、またはその寿命を最大にするRGB値を、特性情報としてメモリに格納することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1つに記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記半透明ウィンドウ生成手段は、前記表示デバイスのメモリに格納された特性情報に基づいて、前記半透明ウィンドウの透明度およびそのRGB値を計算して、当該半透明ウィンドウを生成することを特徴とする請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記表示制御装置は、前記表示画面に前記ウィンドウとは独立してカーソルを表示することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記半透明ウィンドウは、ポインティングデバイスの操作に対して透過であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載の情報処理装置。
【請求項8】
マルチウィンドウOSを搭載した情報処理装置のディスプレイ表示方法において、
表示デバイスの消費電力の低減、焼き付きの低減、および/または高寿命化するための全画面の半透明ウィンドウを生成する工程と、
前記表示デバイスの表示画面のアクティウィンドウのすぐ背後に前記生成された全画面の半透明ウィンドウを表示する工程と、
を含むことを特徴とする情報処理装置のディスプレイ表示方法。
【請求項9】
マルチウィンドウOSを備えた情報処理装置に搭載されるプログラムにおいて、
表示デバイスの消費電力の低減、焼き付きの低減、および/または高寿命化するための全画面の半透明ウィンドウを生成する機能と、
前記表示デバイスの表示画面のアクティウィンドウのすぐ背後に前記生成された全画面の半透明ウィンドウを表示する機能と、
をコンピュータに実現させることを特徴とするコンピュータが実行可能なプログラム。
【請求項10】
マルチウィンドウOSを備えた情報処理装置に搭載されるプログラムにおいて、
表示デバイスの消費電力の低減、焼き付きの低減、および/または高寿命化するための全画面の半透明ウィンドウを生成する機能と、
前記マルチウィンドウOSに対して、計算した透明度およびそのRGB値を出力して全画面の半透明ウィンドウを作成させる機能と、
アクティブウィンドウの情報を前記マルチウィンドウOSから取得する機能と、
前記アクティブウィンドウの情報を取得して、前記全画面の半透明ウィンドウが、前記表示デバイスの表示画面のアクティブウィンドウのすぐ背後に表示されるように前記マルチウィンドウOSに指示する機能と、
をコンピュータに実現させることを特徴とするコンピュータが実行可能なプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−181458(P2010−181458A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22599(P2009−22599)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.EEPROM
【出願人】(505205731)レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド (292)
【復代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
【Fターム(参考)】