説明

情報取得装置

【課題】ケース内部に電子回路とアンテナとを収容してもアンテナの送信利得の低下を低減した情報取得装置を提供する。
【解決手段】コイル状アンテナ450のコイル軸x方向端部の開口面周縁位置からコイル軸xに対して外側方向に所定角度θをなす仮想面によって囲まれる空間E以外のケース内部空間に検出・送受信回路を形成する電子部品や導電体などを配置する。角度θは5度以上の角度であり、好ましくは90度である。アンテナ450の磁流を大きく変化させなければ、上記空間E内に微小な電子部品や微小導電体を配置しても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケース内部に電子回路部本体とコイル状のアンテナとを備えた情報取得装置に関するものであり、特に、アンテナからの送信利得を向上させた情報取得装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両においてはタイヤの空気圧の点検管理が重要であり、タイヤ空気圧が異常値になると事故を引き起こす原因となることが多々ある。このため、車輪のタイヤ内の空気圧を検出してその情報を送信するタイヤ情報取得装置を各車輪に設けるとともに、各タイヤ情報取得装置から送信されたタイヤ空気圧の情報を取得して各タイヤの空気圧を監視するとともに空気圧に異常が生じたときに警報を発する監視装置とを備えたタイヤ状態監視システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このタイヤ状態監視システムのタイヤ情報取得装置はタイヤとホイールとの間に形成された内部空間に配置される。このタイヤ情報取得装置は、タイヤ内の空気圧を検出する圧力検出素子からなる空気圧センサや、空気圧センサの検出結果を電気信号に変換して無線で監視装置へ送信する送信機等をケースに収容して構成される。ケースには、タイヤとホイール間に形成された上記内部空間の空気を内部の空気圧センサに導入するための通気孔が設けられている。監視装置は運転席近傍に配置されており、タイヤ情報取得装置から送信されたタイヤの空気圧情報を受信し、タイヤの空気圧が予め設定された基準圧力よりも低い場合に、運転者に対して所定の警報を発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3962073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の情報取得装置では、必要最小限の内部空間を有するケース内に送信回路などの電子回路とアンテナとを収容するため、ケース内部へのこれらの収容によってアンテナからの送信利得が低下してしまうことがあった。
【0006】
本発明は、ケース内部に電子回路とアンテナとを収容してもアンテナの送信利得の低下を低減した情報取得装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の目的を達成するために、所定の物理情報を検出するセンサと該センサによって検出された物理情報を送信する送信回路とを有する電子回路と、前記送信回路に接続され前記物理情報を含む信号を所定周波数の電波として輻射するコイル状のアンテナとを備えた送信部を、電波を透過可能なケース内部に納めてなる情報取得装置において、前記アンテナのコイル軸方向に存在する空間以外の空間に前記電子回路の本体が配置されている情報取得装置を提案する。
【0008】
本発明によれば、アンテナのコイル軸方向に存在する空間以外の空間に電子回路の本体が配置されている。このため、磁界型アンテナであるコイル状アンテナにおける磁界を形成する磁流を妨げることがなくなるので、アンテナからの電波の輻射を効率よく行うことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、磁界型アンテナであるコイル状アンテナにおける磁界を形成する磁流を妨げることがなくなるので、アンテナからの電波の輻射を効率よく行うことができるため、ケース内部に電子回路とアンテナとを収容してもアンテナの送信利得の低下を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態における情報取得装置を実装したタイヤを示す図
【図2】本発明の第1実施形態における情報取得装置を示す外観図
【図3】本発明の第1実施形態における情報取得装置を示す分解斜視図
【図4】本発明の第1実施形態におけるプリント配線基板を示す平面図
【図5】本発明の第1実施形態におけるプリント配線基板を示す側面図
【図6】本発明の第1実施形態における情報取得装置の電気系回路を示すブロック図
【図7】本発明の第1実施形態における情報取得装置のリムへの実装状態を示す側面断面図
【図8】本発明の第1実施形態における導電体非配置空間を示すアンテナの平面図
【図9】本発明の第1実施形態における導電体非配置空間を示すアンテナの正面図
【図10】本発明の第2実施形態における情報取得装置を示す分解斜視図
【図11】本発明の第2実施形態におけるプリント配線基板を示す平面図
【図12】本発明の第2実施形態におけるプリント配線基板を示す側面図
【図13】本発明の第2実施形態における情報取得装置のリムへの実装状態を示す側面断面図
【図14】本発明の第2実施形態における導電体非配置空間を示すアンテナの平面図
【図15】本発明の第2実施形態における導電体非配置空間を示すアンテナの正面図
【図16】本発明の第3実施形態における情報取得装置を示す分解斜視図
【図17】本発明の第3実施形態におけるプリント配線基板を示す平面図
【図18】本発明の第3実施形態におけるプリント配線基板を示す側面図
【図19】本発明の第3実施形態における情報取得装置のリムへの実装状態を示す側面断面図
【図20】本発明の第3実施形態における導電体非配置空間を示すアンテナの平面図
【図21】本発明の第3実施形態における導電体非配置空間を示すアンテナの正面図
【図22】本発明の第4実施形態における情報取得装置を示す外観斜視図
【図23】本発明の第4実施形態における情報取得装置を示す平面図
【図24】本発明の第4実施形態における情報取得装置を示す側面断面図
【図25】本発明の第4実施形態における装置本体を示す外観斜視図
【図26】本発明の第4実施形態における装置本体を示す外観斜視図
【図27】本発明の第4実施形態における装置本体の要部を示す外観斜視図
【図28】本発明の第4実施形態における平面導体板と保持材を示す外観斜視図
【図29】本発明の第4実施形態における保持材を示す外観斜視図
【図30】本発明の第4実施形態における導電体非配置空間を示すアンテナの平面図
【図31】本発明の第4実施形態における導電体非配置空間を示すアンテナの正面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
【0012】
図1は本発明の第1実施形態における情報取得装置を実装したタイヤを示す図、図2は本発明の第1実施形態における情報取得装置を示す外観斜視図、図3は本発明の第1実施形態における情報取得装置を示す分解斜視図、図4は本発明の第1実施形態におけるプリント配線基板を示す平面図、図5は本発明の第1実施形態におけるプリント配線基板を示す側面図、図6は本発明の第1実施形態における情報取得装置の電気系回路を示すブロック図である。
【0013】
情報取得装置10は、タイヤ1の空気室2内部においてリム3の所定位置に固定されており、この情報取得装置10内に設けられている後述する圧力検出素子と温度検出素子を備えたセンサ部によってタイヤ1の空気室2内の圧力と温度とを検出し、この検出結果をディジタル値に変換する。また、情報取得装置10はこれらのディジタル値を含むディジタル情報を生成して送信する。このディジタル情報には、上記検出結果のディジタル値の他に情報取得装置10に固有の識別情報が含まれる。
【0014】
情報取得装置10は、ケース100を備え、このケース100内にプリント配線基板300と電池420が収容されている。プリント配線基板300には図6に示す検出・送受信回路400が形成されている。すなわち、検出・送受信回路400はセンサ部410、電池420、主制御部430、送受信部440、アンテナ450から構成されている。
【0015】
ケース100は、電波を透過する合成樹脂よりなるケース本体120と上蓋110から構成され、上蓋110の所定位置にはセンサ部410の位置に対向する位置に矩形状の開口部113が形成され、この開口部113は通気孔112を有する蓋体111によって覆われる。
【0016】
センサ部410は、プリント配線基板300の表面上に搭載され、空気圧検出素子411と、温度検出素子412、アナログ/ディジタル変換回路413とから構成され、タイヤ1の空気室2内の空気圧と温度とを空気圧検出素子411と温度検出素子412によって検出し、この検出結果をアナログ/ディジタル変換回路413によってディジタル値に変換して主制御部430に出力する。
【0017】
電池420は、接続導体421,422によってプリント配線基板300に連結され、プリント配線基板300に形成されている検出・送受信回路400に電力を供給する。一方の接続導体421は電池420の正極とプリント配線基板300の表面とに接続され、他方の接続導体422は電池420の負極とプリント配線基板300の裏面とに接続されている。検出・送受信回路400においては電池420の負極の電位が基準電位(=0V)となっている。
【0018】
主制御部430は周知のCPUとメモリなどから構成され、センサ部410による検出結果をディジタル値で受け取り、このディジタル値を含むディジタル情報を生成して送受信部440に出力する。なお、このディジタル情報には、上記検出結果のディジタル値の他に情報取得装置10に固有の識別情報、例えば製造番号が含まれる。
【0019】
送受信部440は、主制御部430から入力したディジタル情報を所定周波数、例えば315MHzの電波によって送信する。
【0020】
アンテナ450は、共振周波数が送受信部440の送信周波数に設定されたコイル状のヘリカルアンテナであり、プリント配線基板300の表面上に実装されている。なお、ヘリカルアンテナの軸がプリント配線基板300の表面と平行になり且つプリント配線基板300の幅方向に延びるように、アンテナ450はプリント配線基板300の表面上に実装されている。
【0021】
また、プリント配線基板300は積層セラミック多層基板からなり、その裏面のほぼ全面に導体パターン310が設けられ、この導体パターン310は電池420の負極に接続されて、その電位が検出・送受信回路400の基準電位(=0V)に設定されている。このプリント配線基板300は、その裏面、すなわち導体パターン310がケース本体120の底面に対向するようにケース本体120に固定される。なお、導体パターン310を形成する銅箔厚みには一般的に12,18,35,70ミクロン(μm)等があるが、耐久性(引き剥がしに対する強さ)を考慮すると、導体パターン310の厚みは18μm以上であることが好ましい。
【0022】
上記構成よりなる情報取得装置10がリム3に装着されたときの側面断面図を図7に示す。図に示すように、情報取得装置10をリム3に装着するときはケース本体120の底面がリム3の表面に対向するようにケース100がリム3の表面に固定される。このようにケース100がリム3に固定されることにより、プリント配線基板300の表面上に実装されたアンテナ450とリム3の表面との間には基準電位に設定された導体パターン310が配置されるので、情報取得装置10をリム3に装着したときには導体パターン(平面導体)310がアンテナ450とリム3との間の境界面となるので、リム3を構成する金属がアンテナ450に与える影響を従来に比べて大幅に低減することができる。さらに、プリント配線基板300の誘電体の厚みによりアンテナ450と導体パターン310との間の距離が一定になるため、リム3の形状が異なってもアンテナ特性を良好な状態に維持することができる。
【0023】
したがって、リム3の形状毎に最適な特性を備えたアンテナ450を作成する必要がなくなり、どのような形状のリム3であっても同一のアンテナ450を用いることができるので、情報取得装置10の1つあたりの製造コストが従来に比べて大幅に低減できると共に、情報取得装置10の大量生産が容易に可能になる。
【0024】
また、アンテナ450は、そのコイル軸xがプリント配線基板300の表面と平行になり且つプリント配線基板300の幅方向に延びるようにプリント配線基板300の表面上に実装され、アンテナ450の軸方向のケース100内部空間には検出・送受信回路400が配置されていないので、磁界型アンテナであるコイル状のアンテナ450における磁界を形成する磁流を妨げることがなくなるので、アンテナ450からの電波の輻射を効率よく行うことができるため、ケース100内部に電子回路とアンテナ450とを収容してもアンテナ450の送信利得の低下を低減することができる。
【0025】
なお、図8のアンテナ450の平面図及び図9のアンテナ450の正面図に示すように、アンテナ450のコイル軸x方向端部の開口面周縁位置からコイル軸xに対して外側方向に所定角度θをなす仮想面によって囲まれる空間E以外のケース100内部空間に検出・送受信回路400を形成する電子部品や導電体などを配置することが好ましい。例えば、角度θは5度以上の角度であり、好ましくは90度である。なお、アンテナ450の磁流を大きく変化させなければ、上記空間E内に微小な電子部品や微小導電体を配置しても良い。
【0026】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
【0027】
図10は本発明の第2実施形態における情報取得装置10Aを示す分解斜視図、図11は本発明の第2実施形態におけるプリント配線基板300Aを示す平面図、図12は本発明の第2実施形態におけるプリント配線基板300Aを示す側面図、図13は本発明の第2実施形態における情報取得装置10Aのリム3への実装状態を示す側面断面図である。これらの図において、前述した第1実施形態と同一構成部分は同一符号をもって表し、その説明を省略する。また、第2実施形態と第1実施形態との相違点は、第1実施形態におけるアンテナ450に代えてコイル状のアンテナ460を設けるとともに、プリント配線基板300に代えてプリント配線基板300Aを用い、ケース本体120の内部底面に導体膜511と絶縁膜512を設けたことである。
【0028】
アンテナ460は、共振周波数が315MHzに設定されたスプリングコイル形状をなし、その中央部に給電点が設けられ、この給電点がプリント配線基板300Aに形成されている送受信部440に接続されている。また、アンテナ460は、アンテナ450に比べてコイルの直径が大きく形成されているので、アンテナ460のコイル軸が近傍のプリント配線基板300Aの辺及び表面と平行になり且つプリント配線基板300Aの幅方向に延びるように、プリント配線基板300Aの周縁部外側に設けられている。
【0029】
プリント配線基板300Aは、第1実施形態におけるプリント配線基板300の裏面に設けられていた導体パターン310を除去したもので、導体パターン310が除去されたこと以外はプリント配線基板300と同じである。
【0030】
ケース本体120の内側底面には、図に示すように、導体膜511が設けられているとともに、導体膜511の表面には電気的な絶縁膜512が設けられている。この絶縁膜512により、導体膜511とプリント配線基板300A及びアンテナ460との導電接続が防止されている。また、導電膜511は電池420の負極に導電接続され、導電膜511の電位は検出・送受信回路400の基準電位(=0V)に設定されている。なお、導体膜511の厚みは前述と同様の理由により18μm以上であることが好ましい。
【0031】
上記構成よりなる情報取得装置10Aをリム3に装着するときは、図13に示すように、ケース本体120の底面がリム3の表面に対向するようにケース100がリム3の表面に固定される。このようにケース100がリム3に固定されることにより、アンテナ460とリム3の表面との間には基準電位に設定された導体膜511が配置されるので、情報取得装置10をリム3に装着したときには導電膜(平面導体)511がアンテナ460とリム3との間の境界面となるので、リム3を構成する金属がアンテナ460に与える影響を従来に比べて大幅に低減することができる。さらに、プリント配線基板300Aはケース本体120の所定位置に固定されるのでアンテナ460と導電膜511との間の距離が一定になるため、リム3の形状が異なってもアンテナ特性を良好な状態に維持することができる。
【0032】
したがって、リム3の形状毎に最適な特性を備えたアンテナ460を作成する必要がなくなり、どのような形状のリム3であっても同一のアンテナ460を用いることができるので、情報取得装置10Aの1つあたりの製造コストが従来に比べて大幅に低減できると共に、情報取得装置10Aの大量生産が容易に可能になる。
【0033】
また、アンテナ460は、そのコイル軸xがプリント配線基板300Aの表面と平行になり且つプリント配線基板300Aの幅方向に延びるようにプリント配線基板300Aの周縁部外側に実装され、アンテナ460の軸方向のケース100内部空間には検出・送受信回路400や導電体が配置されていないので、磁界型アンテナであるコイル状のアンテナ460における磁界を形成する磁流を妨げることがなくなるので、アンテナ460からの電波の輻射を効率よく行うことができるため、ケース100内部に電子回路とアンテナ460とを収容してもアンテナ460の送信利得の低下を低減することができる。
【0034】
なお、図14の導電体非配置空間を示すアンテナ460の平面図及び図15の導電体非配置空間を示すアンテナ460の正面図に示すように、アンテナ460のコイル軸x方向端部の開口面周縁位置からコイル軸xに対して外側方向に所定角度θをなす仮想面によって囲まれる空間以外のケース100内部空間に電子回路を形成する電子部品や導電体などを配置することが好ましい。例えば、角度θは5度以上の角度であり、好ましくは90度である。なお、アンテナ460の磁流を大きく変化させなければ、上記空間E内に微小な電子部品や微小導電体を配置しても良い。
【0035】
次に、本発明の第3実施形態を説明する。
【0036】
図16は本発明の第3実施形態における情報取得装置10Bを示す分解斜視図、図17は本発明の第3実施形態におけるプリント配線基板300Bを示す平面図、図18は本発明の第3実施形態におけるプリント配線基板300Bを示す側面図、図19は本発明の第3実施形態における情報取得装置10Bのリム3への実装状態を示す側面断面図である。これらの図において、前述した第1実施形態と同一構成部分は同一符号をもって表し、その説明を省略する。また、第3実施形態と第1実施形態との相違点は、第1実施形態におけるアンテナ450に代えてアンテナ470を設けるとともに、プリント配線基板300に代えてプリント配線基板300Bを用いたことである。
【0037】
プリント配線基板300Bは、第1実施形態におけるプリント配線基板300よりもやや形状が大きく、大きく広げられた部分にアンテナ470が形成されている。また、プリント配線基板300Bの裏面にはほぼ全面に第1実施形態と同様の導体パターン320が設けられ、この導体パターン320は電池420の負極に接続され、導体パターン320の電位は検出・送受信回路400の基準電位(=0V)に設定されている。なお、導体パターン320の厚みは前述と同様の理由により18μm以上であることが好ましい。
【0038】
アンテナ470はプリント配線基板300Bに形成されたプリント配線パターン(以下、配線パターンと称する)と、プリント配線基板300Bに対して複数の連結導体によって連結されたプリント配線基板500によって構成されている。
【0039】
上記構成よりなる情報取得装置10Bをリム3に装着するときは、図19に示すように、ケース本体120の底面がリム3の表面に対向するようにケース100がリム3の表面に固定される。このようにケース100がリム3に固定されることにより、アンテナ470とリム3の表面との間には基準電位に設定された導体パターン320が配置されるので、情報取得装置10Bをリム3に装着したときには導体パターン(平面導体)320がアンテナ470とリム3との間の境界面となるので、リム3を構成する金属がアンテナ470に与える影響を従来に比べて大幅に低減することができる。
【0040】
したがって、リム3の形状毎に最適な特性を備えたアンテナ470を作成する必要がなくなり、どのような形状のリム3であっても同一のアンテナ470を用いることができるので、情報取得装置10Bの1つあたりの製造コストが従来に比べて大幅に低減できると共に、情報取得装置10Bの大量生産が容易に可能になる。
【0041】
また、アンテナ470は、そのコイル軸xがプリント配線基板300Bの表面と平行になり且つプリント配線基板300Bの幅方向に延びるようにプリント配線基板300B上に形成され、アンテナ470の軸方向のケース100内部空間には検出・送受信回路400や導電体が配置されていないので、磁界型アンテナであるコイル状のアンテナ470における磁界を形成する磁流を妨げることがなくなるので、アンテナ470からの電波の輻射を効率よく行うことができるため、ケース100内部に電子回路とアンテナ470とを収容してもアンテナ470の送信利得の低下を低減することができる。
【0042】
なお、図20の導電体非配置空間を示すアンテナ470の平面図及び図21の導電体非配置空間を示すアンテナ470の正面図に示すように、アンテナ470のコイル軸x方向端部の開口面周縁位置からコイル軸xに対して外側方向に所定角度θをなす仮想面によって囲まれる空間以外のケース100内部空間に電子回路を形成する電子部品や導電体などを配置することが好ましい。例えば、角度θは5度以上の角度であり、好ましくは90度である。なお、アンテナ470の磁流を大きく変化させなければ、上記空間E内に微小な電子部品や微小導電体を配置しても良い。
【0043】
次に、本発明の第4実施形態を説明する。
【0044】
図22は本発明の第4実施形態における情報取得装置を示す外観斜視図、図23は本発明の第4実施形態における情報取得装置を示す平面図、図24は本発明の第4実施形態における情報取得装置を示す側面断面図、図25及び図26は本発明の第4実施形態における装置本体を示す外観斜視図、図27は本発明の一実施形態における装置本体の要部を示す外観斜視図である。
【0045】
図において、500は情報取得装置で、前述した情報取得装置10,10A,10Bと同様に、タイヤ1の空気室2内部においてリム3の所定位置に固定されており、この情報取得装置500内に設けられている後述する圧力検出素子と温度検出素子を備えたセンサ部によってタイヤ1の空気室2内の圧力と温度とを検出し、この検出結果をディジタル値に変換する。また、情報取得装置500はこれらのディジタル値を含むディジタル情報を生成して送信する。このディジタル情報には、上記検出結果のディジタル値の他に情報取得装置500に固有の識別情報が含まれる。情報取得装置500は、ケース530を備え、このケース530内に装置本体700が収容されている。
【0046】
情報取得装置500のケース530は、図22乃至図24に示すように、略直方体形状をなし、その長手方向の両端部にねじ止め用の突起部を有し、ケース本体531と蓋体532とから構成されている。図24に示すように、ケース本体531の内部には装置本体700を収納するための収納空間534が形成され、収納空間534の開口は蓋体532をケース本体531にねじ541によって固定することにより閉鎖される。また、蓋体532には通気孔533が形成されており、ケース本体531に蓋体532を固定した状態においてもこの通気孔533を介して外部から収納空間534に空気が流通するようになっている。
【0047】
図25乃至図27に示すように、装置本体700は、略長方形をなす2枚のプリント配線基板751,752が所定間隔を開けて平行に配置されてなり、これらの間はアンテナ480を構成する柱状接続導体754と連結用の第3プリント配線基板753などによって互いに固定されている。装置本体700の長手方向の他端部には第1及び第2プリント配線基板751,751の幅方向に延びる中心軸を有するコイル状のアンテナ480が形成されており、一端側にはセンサ部410及び電池420などを含む電子回路を構成する電子部品が搭載されている。連結用プリント配線基板753は2つのプリント配線基板751,752のそれぞれに半田付けされている。
【0048】
第1プリント配線基板751と第2プリント配線基板752は、これらの間に設けられ一方のプリント配線基板に対して他方のプリント配線基板を所定の間隔をあけて固定するとともに一方のプリント配線基板のプリント配線と他方のプリント配線基板のプリント配線とを導電接続する複数の柱状接続導体754によって連結されている。
【0049】
装置本体700には図6に示した検出・送受信回路400が形成されている。すなわち、検出・送受信回路400は前述したようにセンサ部410、電池420、主制御部430、送受信部440、アンテナ480から構成されている。
【0050】
センサ部410は、本体300の表面上に搭載され、空気圧検出素子411と、温度検出素子412、アナログ/ディジタル変換回路413とから構成され、例えば空気式防舷材の空気室内の空気圧と温度とを空気圧検出素子411と温度検出素子412によって検出し、この検出結果をアナログ/ディジタル変換回路413によってディジタル値に変換して主制御部430に出力する。
【0051】
電池420は、接続導体によって装置本体300に連結され、装置本体300に形成されている検出・送受信回路400に電力を供給する。
【0052】
主制御部430は周知のCPUとメモリなどから構成され、センサ部410による検出結果をディジタル値で受け取り、このディジタル値を含むディジタル情報を生成して送受信部440に出力し、送受信部440からアンテナ480を介して電波で送信する。
【0053】
送受信部440は、主制御部430からの指示に基づいて送信と受信を切り替え、送信時には主制御部430から入力したディジタル情報を所定周波数、例えば315MHzの電波によってアンテナ480から送信するとともに、受信時にはアンテナ480を介して受信した315MHzの電波からディジタル信号を検出し、検出したディジタル信号からディジタル情報を抽出して主制御部430に出力する。なお、送受信部440の送信周波数と受信周波数とは同一周波数に設定されている。
【0054】
アンテナ480は、共振周波数が送受信部440の送受信周波数に設定されたコイル状アンテナであり、第1プリント配線基板751に設けられたプリント配線751aと第2プリント配線基板752に設けられたプリント配線752a及び第1プリント配線基板751のプリント配線と第2プリント配線基板752のプリント配線とを導電接続するとともにこれらのプリント配線基板751,752を互いに固定する柱状接続導体754によって形成されている。
【0055】
さらに、第1プリント配線基板751の他端部外面には長方形をなす平面導体板761が4つの保持材771によって固定されている。装置本体700をケース530に収納した時にケース本体531の底面側に位置するプリント配線基板751と平行になるようにアンテナ480の位置に平面導体板761が設けられている。平面導体板761は保持材771によって第1プリント配線基板751と所定の間隔を維持するように固定されている。この平面導体板761は第1プリント配線基板751の所定の導体パターン(電池420の負極に接続されている導体パターン)に導電接続されて基準電位に設定されている。また、図28に示すように、保持材771は平面導体板761の四隅に固定されている。保持材771は、図29に示すように円柱形の本体771aの両端に本体771aよりも小さい直径の円柱形状の突起部771bを備えた形状をなしている。
【0056】
上記構成よりなる情報取得装置500をリム3に装着するときは、平面導体板761がリム3の表面に対向するようにケース530がリム3の表面に固定される。このようにケース530がリム3に固定されることにより、アンテナ480とリム3の表面との間には基準電位に設定された平面導体板761が配置されるので、情報取得装置500をリム3に装着したときには平面導体板761がアンテナ480とリム3との間の境界面となるので、リム3を構成する金属がアンテナ480に与える影響を従来に比べて大幅に低減することができる。
【0057】
したがって、リム3の形状毎に最適な特性を備えたアンテナ480を作成する必要がなくなり、どのような形状のリム3であっても同一のアンテナ480を用いることができるので、情報取得装置500の1つあたりの製造コストが従来に比べて大幅に低減できると共に、情報取得装置500の大量生産が容易に可能になる。
【0058】
また、アンテナ480は、そのコイル軸xがプリント配線基板751,752の表面と平行になり且つプリント配線基板751,752の幅方向に延びるようにプリント配線基板751,752に形成され、アンテナ480の軸方向のケース530内部空間には検出・送受信回路400や導電体が配置されていないので、磁界型アンテナであるコイル状のアンテナ480における磁界を形成する磁流を妨げることがなくなるので、アンテナ480からの電波の輻射を効率よく行うことができるため、ケース530内部に電子回路とアンテナ480とを収容してもアンテナ480の送信利得の低下を低減することができる。
【0059】
なお、図30の導電体非配置空間を示すアンテナ480の平面図及び図31の導電体非配置空間を示すアンテナ480の正面図に示すように、アンテナ480のコイル軸x方向端部の開口面周縁位置からコイル軸xに対して外側方向に所定角度θをなす仮想面によって囲まれる空間以外のケース530内部空間に電子回路を形成する電子部品や導電体などを配置することが好ましい。例えば、角度θは5度以上の角度であり、好ましくは90度である。なお、アンテナ480の磁流を大きく変化させなければ、上記空間E内に微小な電子部品や微小導電体を配置しても良い。
【0060】
また、上記実施形態では、空気圧と温度の両方を検出できる情報取得装置10,10A,10B,500を構成したが、空気圧または温度の何れか一方或いは他の物理量を検出できる情報取得装置を構成しても良い。
【0061】
また、上記実施形態ではタイヤに装着する情報取得装置10,10A,10B,500としたが、これに限定されることはなく、タイヤ以外にも本発明の情報取得装置を適用することができることは言うまでもないことである。
【0062】
また、上記各実施形態では情報取得装置をリムに取り付けたが、これに限定されることはなく、リム以外の場所、例えばタイヤの内側面などに取り付けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
磁界型アンテナであるコイル状アンテナと送信回路とを必要最小限の内部空間を有するケースに収容したときにもアンテナからの電波の輻射を効率よく行うことができる情報取得装置を構築することができる。
【符号の説明】
【0064】
1…タイヤ、2…空気室、3…リム、10,10A,10B…情報取得装置、100…ケース、110…上蓋、111…蓋体、112…通気孔、113…開口部、120…ケース本体、300,300A,300B…プリント配線基板、310,320…導体パターン、400…検出・送受信回路、410…センサ部、411…空気圧検出素子、412…温度検出素子、413…アナログ/ディジタル変換回路、420…電池、421,422…接続導体、430…主制御部、440…送受信部、450,460,470,480…アンテナ、500…情報取得装置、530…ケース、531…ケース本体、532…蓋体、533…通気孔、534…収納空間、541…ねじ、700…装置本体、751…第1プリント配線基板、751a…プリント配線、752…第2プリント配線基板、752a…プリント配線、753…第3プリント配線基板、754…柱状接続導体、761…平面導体板、771…保持材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の物理情報を検出するセンサと該センサによって検出された物理情報を送信する送信回路とを有する電子回路と、前記送信回路に接続され前記物理情報を含む信号を所定周波数の電波として輻射するコイル状のアンテナとを備えた送信部を、電波を透過可能なケース内部に納めてなる情報取得装置において、
前記アンテナのコイル軸方向に存在する空間以外の空間に前記電子回路の本体が配置されている
ことを特徴とする情報取得装置。
【請求項2】
前記アンテナのコイル軸方向端部の開口面周縁位置から前記コイル軸に対して外側方向に5度以上の角度をなす仮想面によって囲まれる空間以外の空間に前記電子回路の本体が配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の情報取得装置。
【請求項3】
前記仮想平面によって囲まれる空間は、前記仮想面が前記コイル軸に対して外側方向に90度をなすときの空間である
ことを特徴とする請求項2に記載の情報取得装置。
【請求項4】
前記電子回路と前記アンテナは同一回路基板上に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の情報取得装置。
【請求項5】
前記センサは周囲の空気圧を検出するセンサを含むことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の情報取得装置。
【請求項6】
前記アンテナは前記回路基板に形成されたプリント配線をエレメントとして含むことを特徴とする請求項4に記載の情報取得装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2012−105062(P2012−105062A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251821(P2010−251821)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】