説明

情報提示装置、情報提示システム、情報提示方法、及びプログラム

【課題】本発明が解決しようとする課題は、情報を伝えたい相手を出来るだけ多くカバーしながら迅速に情報を伝達できる巡回経路を決めるための情報を提示する技術を提供することにある。
【解決手段】本発明は、情報を発信する情報源の軌跡の周辺空間に関する情報と、前記情報源の発信特性とから、前記軌跡の周辺における情報の伝搬特性を推定する推定手段と、前記推定手段の推定結果から、前記情報源の軌跡の周辺地域における情報の伝達範囲を求めて提示する提示手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体が発する情報の到達範囲を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
地域住民に対して情報を機動的に伝達する方法として、情報発信部を備えた移動体が情報を発しながら地域を巡回する方法が一般に用いられている。例えば、移動体として広報車を用いて自治体からの防災情報を伝達したり、選挙街宣車を用いて有権者へ選挙演説を伝達したり、巡回販売車を用いて営業情報を伝達したりする方法などが挙げられる。
【0003】
このような方法を用いて情報伝達活動を行う際には、限られた時間の中でより多くの相手に情報を伝達することが重要である。そのため、情報を伝えたい相手を出来るだけ多くカバーしながら迅速に情報を伝達できる経路を巡回する必要がある。
【0004】
しかしながら、都市空間において、音、電波、光など情報の伝達に用いる波動の伝搬特性は一般に複雑なので、情報の空間的な伝達範囲を把握するのが難しい。
【0005】
情報の空間的な伝達範囲を把握する方法として、音により情報を伝達する場合の伝搬範囲を推定する方法が特許文献1に記載されている。
【0006】
特許文献1では、幾何学的手法を用いて音源からの音の伝搬経路を求めることにより音の伝搬範囲を推定している。幾何学的手法とは、音源からの音の伝搬経路を幾何学的手法により求めて音の伝搬範囲を推定する手法である。具体的な方法としては、音源から等立体角間隔で多数の音線を出して反射伝搬経路を追跡計算する音線法と、周囲の各壁面による音源の鏡像を幾何学的に求めて、受音点と各鏡像を結ぶ音線から伝搬経路を求める鏡像法がある。
【0007】
さらに、音の伝達範囲の推定結果を表示する技術が非特許文献1や特許文献5に記載されている。
【0008】
非特許文献1では、鉄道車両の移動による騒音の地理的な分布を推定し、予め設定した車両の移動パタンに沿って時間変化する騒音の地理的な分布を地図上に表示する方法が記載されている。また、交通量や走行速度などの交通統計に応じた音源を道路上に面的に配置して推定した騒音の地理的な分布を地図上に表示する方法が記載されている。
【0009】
また、特許文献5では、音の実測値と建物の情報とから騒音を推定する方法が記載されている。
【0010】
一方、効率的な巡回経路を決める技術として、移動体の現在地点および指定された目的地点と経由地点をもとに移動体の最短経路を導出して運転者に案内するシステムが特許文献2や特許文献4に記載されている。この特許文献2では、2地点間の最短経路を探索する技術を用いて目的地と経由地、経由地と別の経由地、経由地と目的地の全ての組み合わせについて移動距離を算出し、現在地と目的地の間の積算距離が最短になる経由地の通過順序を求め、経由地点を当該順序に通過する経路を最適経路として運転者に案内する技術が記載されている。
【0011】
特許文献2に記載されている技術のほかに、2地点間の最短経路を探索する技術としては、グラフ理論における「MOORE法」や「DIJKSTRA法」などの経路探索技術が一般によく用いられている。MOORE法に関しては、例えば特許文献3に具体的なアルゴリズムが記載されている。
【特許文献1】特開2006−58245号公報
【特許文献2】特開2001−66148号公報
【特許文献3】特開平5−73798号公報
【特許文献4】特開2004-085537号公報
【特許文献5】特開2005-030918号公報
【非特許文献1】増田 潔:都市・建築空間の騒音伝搬シミュレーション、可視化情報学会、第10回 ビジュアリゼーションカンファレンス、1-3、2004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記した技術では、情報を伝えたい相手を出来るだけ多くカバーしながら迅速に情報を伝達できる巡回経路を的確に決めるのが難しいという問題点がある。例えば、特許文献1や非特許文献1の技術では、音源から発せられた音の空間的な伝搬範囲を推定して地図上に表示する方法が開示されている。しかし、移動体が巡回経路を通過した場合に、情報を伝えたい相手をどの程度カバーできるかを把握することができない。そのため、既に通過した巡回経路の情報伝達範囲を評価したり、これから巡回すべき経路を決めたりすることが難しいという問題点がある。
【0013】
また、特許文献2の技術では、2地点間を結ぶ最短経路を導出して移動体の運転者に経路案内を提示するシステムが開示されているが、情報を伝えたい相手に対して音情報を伝達できる割合を最大化する移動経路を案内することができない。そのため、上述の技術による経路案内システムでは、巡回に要する時間は短いが伝えたい相手に情報が行き渡らない巡回経路を選択してしまう可能性があるという問題点がある。
【0014】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、情報を伝えたい相手を出来るだけ多くカバーしながら迅速に情報を伝達できる巡回経路を決めるための情報を提示する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するための本発明は、情報提示装置であって、情報を発信する情報源の軌跡の周辺空間に関する情報と、前記情報源の発信特性とから、前記軌跡の周辺における情報の伝搬特性を推定する推定手段と、前記推定手段の推定結果から、前記情報源の軌跡の周辺地域における情報の伝達範囲を求めて提示する提示手段とを有することを特徴とする。
【0016】
上記課題を解決するための本発明は、情報提示システムであって、情報を発信する情報源の位置情報を取得する取得手段と、前記取得した位置情報の履歴を記録した軌跡の周辺空間に関する情報と、前記情報源の発信特性とから、前記軌跡の周辺における情報の伝搬特性を推定する推定手段と、前記推定手段の推定結果から、前記情報源の軌跡の周辺地域における情報の伝達範囲を求めて提示する提示手段とを有することを特徴とする。
【0017】
上記課題を解決するための本発明は、情報提示方法であって、情報を発信する情報源の軌跡の周辺空間に関する情報と、前記情報源の発信特性とから、前記軌跡の周辺における情報の伝搬特性を推定する推定ステップと、前記推定ステップでの推定結果から、前記情報源の軌跡の周辺地域における情報の伝達範囲を求めて提示する提示ステップとを有することを特徴とする。
【0018】
上記課題を解決するための本発明は、情報提示装置のプログラムであって、前記プログラムは、前記情報提示装置を、情報を発信する情報源の軌跡の周辺空間に関する情報と、前記情報源の発信特性とから、前記軌跡の周辺における情報の伝搬特性を推定する推定手段と、前記推定手段の推定結果から、前記情報源の軌跡の周辺地域における情報の伝達範囲を求めて提示する提示手段として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、巡回しながら周囲に情報を伝達する移動体の運転者に対して、効果的な巡回経路を判断するための情報を提供できる。これにより、情報の未伝達エリアに向けた移動体の巡回経路を決めるのが容易になり、より多くの受け手に情報を迅速に伝達できる。その理由は、巡回経路を通過した場合に情報を伝えたい相手をどの程度カバーできるかを提示する構成と、当該カバー範囲を最大化する巡回経路を導出して移動体の運転者に案内する構成を採用したことにある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。以下、本発明では一例として音による情報伝達について記載するが、本発明は音の波動を用いた形態に限定されるものではなく、本発明の基本的技術思想を逸脱しない範囲で、音、電波、光など空間を伝搬する様々な波動を用いた情報伝達であっても良い。
【0021】
本発明の情報提示システムは、移動体と情報提示装置を有する。
【0022】
図1は、本発明の第1の実施形態による情報提示装置の構成を示す図である。
【0023】
情報提示装置100は、情報の発信源となる移動体の位置情報を取得する位置情報取得部101と、移動体が既に通過した軌跡である巡回経路を記録する巡回経路記録部102と、移動体が備える情報発信部の機器特性が格納されている送信器の機器特性DB103と、地図情報が格納されている地図情報DB104と、移動体の巡回経路周辺における音の伝搬特性を推定する伝搬特性推定部105と、音による情報の空間的な伝達範囲を評価する伝達範囲評価部106と、評価結果を表示する表示部107とを備えている。
【0024】
位置情報取得部101は、移動体の巡回経路評価装置100を移動体に搭載して用いる場合は、必要に応じて、GPSなどの位置取得装置から移動体の位置に関する情報を取得する。一方、移動体の巡回経路評価装置を机上で用いる場合は、位置情報取得部101は、移動体から通知される移動体の位置に関する情報、又は装置の利用者が装置に対して入力した移動体の位置に関する情報を取得することができる。
【0025】
巡回経路記録部102は、位置情報取得部101から定期的に移動体の位置を取得して、移動体の位置を順に記録して、地理的な軌跡を記録する。
【0026】
送信器の機器特性DB103には、移動体に備わる情報発信器に対して、出力の大きさや空間的な出力指向性等の機器特性に関する情報、即ち、発信源が発した音の伝搬特性に関係する情報が格納されている。
【0027】
地図情報DB104には地図情報、格納されている地図の地形情報、格納されている地図上に立ち並ぶ建物の形状および地理的な分布等の情報が格納されている。地図情報DB104に記憶されている地図情報は、位置情報取得部101が取得する位置情報が地図情報のどこに当たるかを示すことができるように対応付けがなされている。
【0028】
伝搬特性推定部105は、巡回経路記録部102から取得した巡回経路に示されている各位置情報が示す地域の地形とその周辺の建物に関する情報とを地図情報DB104から取得する。取得した地形と周辺の建物に関する情報と、送信器の機器特性DB103から取得した移動体に備わる情報発信器の機器特性に関する情報とから、移動体の巡回経路周辺における音の伝搬特性を推定する。伝搬特性推定部105における音の伝搬特性の推定には、必要に応じて、特許文献1に記載の推定技術を用いても良い。
【0029】
伝達範囲評価部106は、伝搬特性推定部105により推定した音の伝搬特性をもとに、巡回経路に沿った音の空間的な伝達範囲を推定して評価する。
【0030】
表示部107には、巡回経路記録部102から取得した移動体の巡回経路と、地図情報DB104から取得した巡回経路中の各位置情報が示す地域の地図と、伝搬特性伝達範囲評価部106により求めた音の空間的な伝達範囲を重ね合わせて表示する。
【0031】
次に、本実施形態に係る情報提示装置の動作について図面を参照して詳細に説明する。
【0032】
図2は、本実施形態に係る情報提示装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【0033】
図2を参照すると、まず、位置情報取得部101は情報発信源である移動体の位置情報を取得していく(ステップS101)。
【0034】
巡回経路記録部102は、位置情報取得部101が取得した位置情報を記録していき、移動体の軌跡として巡回経路として記録する(ステップS102)。記録された巡回経路は伝搬特性推定部105に引き渡される。
【0035】
伝搬特性推定部105は、まず、巡回経路に示されている位置情報を用いて、地図情報DB104から巡回経路の周辺に存在する建物や地形に関する情報を取得する(ステップS103)。
【0036】
続いて、伝搬特性推定部105は、移動体に搭載されている送信器の機器特性に関する情報を機器特性DB103から取得する(ステップS104)。
【0037】
ステップS103及び104で取得した情報をもとに移動体の巡回経路周辺における音の伝搬特性を推定する(ステップS105)。ここで、音の伝搬特性とは、音源からの距離に応じて生じる減衰量や伝搬遅延時間などのパラメータを意味する。
【0038】
次に、伝達範囲評価部106が、伝搬特性推定部105により推定された音の伝搬特性をもとに、巡回経路に沿った音の空間的な伝達範囲を推定して評価する(ステップS106)。ここで、音の空間的な伝達範囲は、巡回経路周辺の地図上に複数の観測点を配置し、各観測点における音の受信レベルおよびエコーの度合いを音の伝搬特性から算出した結果と、予め定めた閾値を比較して判断する。観測点における受信レベルおよびエコーが、音情報を聞き取ることができる品質を満たしている場合に、観測点で音情報を聞き取れると判定し、聞き取り可能な観測点の集合で定まる地理的な範囲を音の空間的な伝達範囲とする。観測点の集合から地理的な範囲を定める方法には、例えば、ボロノイ分割として知られる方法を用いることができる。すなわち、隣接する観測点の間に垂直二等分線を引いて定まる境界線により、観測点ごとに当該観測点が最近傍の観測点となる領域(ボロノイ領域)を求め、当該集合に含まれる観測点に対応するボロノイ領域の総和により地理的な範囲を定めることができる。
【0039】
巡回経路記録部102から取得した移動体の巡回経路と、地図情報DB104から取得した巡回経路周辺の地図及び地形と、伝達範囲評価部106により求めた音の空間的な伝達範囲を用いて、地図上に巡回経路と伝達範囲とが表示されるように表示部107に出力して終了する(ステップS107)。
【0040】
図3は、上記ステップS107で出力される画面表示の例である。図3を参照すると、評価対象エリア200には、建物205や道路206の分布が表示されている。さらに、評価対象エリア200には、移動体の出発地点201と現在地点202とを結ぶ巡回経路203が表示されるとともに、巡回経路203に沿って音情報の伝達範囲204が表示されている。
【0041】
以上のように、本発明の第1の実施形態によれば、特定のエリア内で移動体の巡回経路に沿って音情報の伝達範囲を推定し、該伝達範囲を地図上に表示する構成を採用しているので、巡回しながら周囲に情報を伝達する移動体の運転者に対して、効果的な巡回経路を判断するための情報を提供できる。
【0042】
また、移動体の運転者は、巡回経路に沿って既に情報が伝達された範囲を把握して、今後巡回する必要がある経路を的確に決めることができる。
【0043】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について図面を参照して説明する。本発明の第2の実施形態は、情報を伝えたい相手が存在するエリアを予め指定し、当該エリアを巡回経路がどの程度カバーできるかを評価した結果を提示できるようにしたものである。以下、上記した第1の実施形態と同様の構成要素および動作ステップについては同一の符号を付して詳細な説明を省略し、相違部分を中心に説明する。
【0044】
図4は、本発明の第2の実施形態による情報提示装置の構成を示す図である。図4を参照すると、本実施形態に係る移動体の情報提示装置100は、上記した第1の実施形態の構成に対して、情報を伝えたい相手が存在するエリアを指定する入力部108と、当該エリアが巡回経路によってどの程度カバーされるかを評価するカバー率評価部109とが追加された構成となっている。
【0045】
カバー率評価部109は、入力部108から取得したエリアと、伝達範囲評価部106から取得した音情報の伝達範囲を比較し、評価結果を表示部107に出力する。
【0046】
次に、本実施形態に係る情報提示装置の動作について図面を参照して詳細に説明する。図5は、本実施形態に係る情報提示装置の動作を説明するためのフローチャートである。ステップS101からS106までは上記した第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0047】
ステップS108では、情報を伝えたい相手が存在する地理的な範囲を入力部108を介して指定する。
【0048】
ステップS109では、ステップS108で指定された地理的な範囲(エリア)と、伝達範囲評価部106から取得した音情報の伝達範囲を比較し、当該エリアが巡回経路に沿った音情報の伝達範囲によってどの程度カバーされるかを面積比率(カバー率)で求める。
【0049】
ステップS107では、上記した第1の実施形態で出力する情報に加えて、ステップS109で求めたカバー率を表示部107に出力して終了する。
【0050】
図6は、上記ステップS107で出力される画面表示の例である。図6を参照すると、第1の実施形態で出力する情報に加えて、ステップS108で指定された情報を伝えたい相手が存在するエリア207とカバー率208が表示されている。
【0051】
以上のように、本発明の第2の実施形態によれば、上記した第1の実施形態の構成に加えて、情報を伝えたい相手が存在するエリアを指定して、該エリアが巡回経路によりどの程度音情報でカバーされるかを評価する構成を採用している。このため、上記した第1の実施形態の効果に加えて、移動体の運転者は巡回経路に沿って既に情報が伝達された範囲を定量的に把握して、今後巡回する必要がある経路をより的確に決めることができる。
【0052】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。本発明の第3の実施形態は、情報を伝えたい相手が存在するエリアを予め指定し、当該エリアをカバーする割合が最大となる巡回経路を自動的に探索して提示できるようにしたものである。以下、上記した第2の実施形態と同様の構成要素および動作ステップについては同一の符号を付してその相違部分を中心に説明する。
【0053】
図7は、本発明の第3の実施形態による情報提示装置の構成を示す図である。図7を参照すると、本実施形態に係る情報提示装置100は、上記した第2の実施形態の構成に対して、巡回経路記録部102を巡回経路探索部110に置き換えて、さらに巡回経路選択部111を追加した構成となっている。
【0054】
巡回経路探索部110は、地図情報DB104から取得した道路情報と、位置情報取得部101から取得した移動体の位置情報と、入力部108を介して指定された経由地点および目的地の情報をもとに、経由地点を通過して現在地と目的地を結ぶ経路を探索する。巡回経路探索部110における経路探索には、必要に応じて、特許文献3に記載の探索技術を用いることができる。
【0055】
巡回経路選択部111は、巡回経路探索部110が導出した巡回経路の候補と、該巡回経路の候補に対してカバー率評価部109が評価したカバー率をもとに、該巡回経路の候補を巡回経路として選択するか否かを判断する。
【0056】
次に、本実施形態に係る情報提示装置の動作について図面を参照して詳細に説明する。図8は、本実施形態に係る情報提示装置の動作を説明するためのフローチャートである。ステップS101、ステップS103からS106、ステップS109は上記した第2の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0057】
まず、ステップS110では、情報を伝えたい相手が存在する地理的な範囲、通過したい経由地点、目的地の情報を入力部108を介して指定する。なお、ここで経由地点を指定しない場合は、情報を伝えたい相手が存在する地理的な範囲内で人口密集地域の上位数地点を経由地点の初期値として設定する。また、目的地を指定しない場合は現在地と同じ地点を設定する。情報を伝えたい相手が存在する地理的な範囲を指定しない場合は、表示部107に表示されている地図の全範囲を設定する。
【0058】
上記入力が完了すると、経路探索部110は、位置情報取得部101から取得した移動体の位置情報と、入力部108を介して指定された経由地点および目的地の情報をもとに、経由地点を通過して現在地と目的地を結ぶ経路を探索する(ステップS111)。
【0059】
次に、探索した経路の移動に要する時間(所要時間)が所定の範囲内であるか判定する(ステップS112)。ここで、所要時間が範囲内にない場合は別の経路を再度探索する(ステップS111)。
【0060】
一方、所要時間が範囲内にある場合は、探索した経路を巡回経路の候補とする。
【0061】
以下、該巡回経路の候補に対して上記した第2の実施形態と同じステップS103からステップS109の処理を実施し、巡回経路選択部111において、該巡回経路の候補が所要値以上のカバー率を達成するか否かを判定する(ステップS113)。ここで、該巡回経路の候補に対するカバー率が所要値を下回る場合は、ステップS110で指定した地理的な範囲内で経由地設定されていない人口密集地域を新たに経由地点へ追加し(ステップS113)、経路を再度探索する(ステップS111)。
【0062】
一方、該巡回経路の候補に対するカバー率が所要値以上である場合は、該巡回経路の候補を巡回経路として表示部107に提示する。
【0063】
ステップS115では、上記した第2の実施形態で出力する情報に加えて、巡回経路選択部111で選択した巡回経路、該巡回経路に沿った音情報の伝達範囲、該巡回経路を通過した場合のカバー率を表示部107に出力して終了する。
【0064】
図9は、上記ステップS115で出力される画面表示の例である。図9を参照すると、第2の実施形態で出力する情報に加えて、ステップS110で指定された目的地点211と経由地点210、巡回経路選択部111で選択した巡回経路212、該巡回経路に対応する伝達範囲213、出発地点から現在地点までの巡回経路および現在地点から目的地点までの巡回経路に対応するカバー率209が表示されている。
【0065】
以上のように、本発明の第3の実施形態によれば、上記した第2の実施形態の構成に加えて、所定のカバー率を満たし移動時間が短い巡回経路を自動的に導出する構成を採用している。このため、上記した第2の実施形態の効果に加えて、移動体の運転者は情報を伝達したい相手が存在する範囲を効果的に巡回する経路をより的確に決めることができる。
【0066】
また、情報の未伝達エリアに向けた移動体の巡回経路を決めるのが容易になり、より多くの受け手に情報を迅速に伝達できる。その理由は、巡回経路を通過した場合に情報を伝えたい相手をどの程度カバーできるかを提示する構成と、当該カバー範囲を最大化する巡回経路を導出して移動体の運転者に案内する構成を採用したことにある。
【0067】
尚、上述した本発明は、上記説明からも明らかなように、ハードウェアで構成することも可能であるが、コンピュータプログラムにより実現することも可能である。
【0068】
プログラムメモリに格納されているプログラムで動作するプロセッサによって、上述した実施の形態と同様の機能、動作を実現させる。尚、上述した実施の形態の一部の機能をコンピュータプログラムにより実現することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1の実施形態による情報提示装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態による情報提示装置の動作を説明するフローチャートである。
【図3】本発明の第1の実施形態による情報提示装置により出力される画面表示の例である。
【図4】本発明の第2の実施形態による情報提示装置の構成を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施形態による情報提示装置の動作を説明するフローチャートである。
【図6】本発明の第2の実施形態による情報提示装置により出力される画面表示の例である。
【図7】本発明の第3の実施形態による情報提示装置の構成を示す図である。
【図8】本発明の第3の実施形態による情報提示装置の動作を説明するフローチャートである。
【図9】本発明の第3の実施形態による情報提示装置により出力される画面表示の例である。
【符号の説明】
【0070】
100 情報提示装置
101 位置情報取得部
102 巡回経路記録部
103 送信器の機器特性DB
104 地図情報DB
105 伝搬特性推定部
106 伝達範囲評価部
107 表示部
108 入力部
109 カバー率評価部
110 経路探索部
111 巡回経路選択部
200 評価対象エリア
201 出発地点
202 現在地点
203、212 巡回経路
204、213 伝達範囲
205 建物
206 道路
207 情報を伝えたいエリア
208、209 カバー率
210 経由地点
211 目的地点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を発信する情報源の軌跡の周辺空間に関する情報と、前記情報源の発信特性とから、前記軌跡の周辺における情報の伝搬特性を推定する推定手段と、
前記推定手段の推定結果から、前記情報源の軌跡の周辺地域における情報の伝達範囲を求めて提示する提示手段と
を有することを特徴とする情報提示装置。
【請求項2】
所定の地域における、前記伝達範囲が占める面積比率を算出する算出手段を有することを特徴とする請求項1に記載の情報提示装置。
【請求項3】
前記情報源の軌跡の周辺地域上に位置する所定の経由地点、現在地点、及び目的地点を結ぶ経路を探索し、この探索した経路の中で前記面積比率が最大となる経路を選択する選択手段を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の情報提示装置。
【請求項4】
前記選択手段は、前記経由地点を前記所定の地域の中の人口密集地域にして経路を探索することを特徴とする請求項3に記載の情報提示装置。
【請求項5】
前記選択手段は、前記面積比率が閾値を下回る場合に、前記所定の地域の中で前記経由地に指定されていない最も人口が密集する地域を新たな経由地点に追加して経路を探索することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の情報提示装置。
【請求項6】
前記推定手段は、空間における音の伝搬特性を推定することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の情報提示装置。
【請求項7】
情報を発信する情報源の位置情報を取得する取得手段と、
前記取得した位置情報の履歴を記録した軌跡の周辺空間に関する情報と、前記情報源の発信特性とから、前記軌跡の周辺における情報の伝搬特性を推定する推定手段と、
前記推定手段の推定結果から、前記情報源の軌跡の周辺地域における情報の伝達範囲を求めて提示する提示手段と
を有することを特徴とする情報提示システム。
【請求項8】
情報を発信する情報源の軌跡の周辺空間に関する情報と、前記情報源の発信特性とから、前記軌跡の周辺における情報の伝搬特性を推定する推定ステップと、
前記推定ステップでの推定結果から、前記情報源の軌跡の周辺地域における情報の伝達範囲を求めて提示する提示ステップと
を有することを特徴とする情報提示方法。
【請求項9】
所定の地域における、前記伝達範囲が占める面積比率を算出する算出ステップを有することを特徴とする請求項8に記載の情報提示方法。
【請求項10】
前記情報源の軌跡の周辺地域上に位置する所定の経由地点、現在地点、及び目的地点を結ぶ経路を探索し、この探索した経路の中で前記面積比率が最大となる経路を選択する選択ステップを有することを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の情報提示方法。
【請求項11】
前記選択ステップは、前記経由地点を前記所定の地域の中の人口密集地域にして経路を探索することを特徴とする請求項10に記載の情報提示方法。
【請求項12】
前記選択ステップは、前記面積比率が閾値を下回る場合に、前記所定の地域の中で前記経由地に指定されていない最も人口が密集する地域を新たな経由地点に追加して経路を探索することを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の情報提示方法。
【請求項13】
前記推定ステップは、空間における音の伝搬特性を推定することを特徴とする請求項8から請求項12のいずれかに記載の情報提示方法。
【請求項14】
情報提示装置のプログラムであって、前記プログラムは、前記情報提示装置を、
情報を発信する情報源の軌跡の周辺空間に関する情報と、前記情報源の発信特性とから、前記軌跡の周辺における情報の伝搬特性を推定する推定手段と、
前記推定手段の推定結果から、前記情報源の軌跡の周辺地域における情報の伝達範囲を求めて提示する提示手段と
して機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−127619(P2010−127619A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−299048(P2008−299048)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】