説明

感光性ペースト組成物およびパターン形成方法

【課題】安価で、かつ薄膜で、抵抗値が低く、高精細なパターンをガラス基板上に形成可能な感光性ペースト組成物を提供すること。
【解決手段】(A1)アルミニウム粉末を30〜5重量%および(A2)アルミニウム合金粉末および亜鉛粉末から選ばれる少なくとも1種を70〜95重量%含有する導電成分(A)、
アルカリ可溶性樹脂(C)、
多官能(メタ)アクリレート(D)ならびに
光重合開始剤(E)を含有することを特徴とする感光性ペースト組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性ペースト組成物およびパターン形成方法に関する。さらに詳しくは、
フラットパネルディスプレイなどのディスプレイパネル、電子部品の高度実装材料および
太陽電池の部材を製造する際に、高感度かつ高精度のパターンを形成することが可能な感
光性ペースト組成物および該組成物を用いたパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、回路基板やディスプレイパネルにおけるパターン加工に対して、高密度化および
高精細化の要求が高まっている。このような要求が高まっているディスプレイパネルの中
でも、特にプラズマディスプレイパネル(以下「PDP」ともいう。)やフィールドエミ
ッションディスプレイ(以下「FED」ともいう。)などのフラットパネルディスプレイ
(以下「FPD」ともいう。)が注目されている。
【0003】
図1は交流型のPDPの断面形状を示す模式図である。図1において、101および1
02は対抗配置されたガラス基板、103および111は隔壁であり、ガラス基板101
、ガラス基板102、背面隔壁103および前面隔壁111によりセルが区画形成されて
いる。104はガラス基板101に固定された透明電極であり、105は透明電極104
の抵抗を下げる目的で該透明電極104上に形成されたバス電極であり、106はガラス
基板102に固定されたアドレス電極である。107はセル内に保持された蛍光物質であ
り、108は透明電極104およびバス電極105を被覆するようガラス基板101の表
面に形成された誘電体層であり、109はアドレス電極106を被覆するようガラス基板
102の表面に形成された誘電体層であり、110は例えば酸化マグネシウムよりなる保
護層である。
【0004】
上述の構成を有するPDPや図2に示されるFEDに代表されるFPDにおいては、パ
ネルの大型化および高精細化が進んでおり、それに伴ってパターン加工技術の向上が要望
されている。しかしながら、パネルの大型化および高精細化に伴い、パターン精度の要求
が非常に厳しくなり、従来の工法であるスクリーン印刷法では、前記要求に対応できない
という問題がある。
【0005】
そこで現在では、フォトリソグラフィー法によるパターン形成が主に用いられている。
例えば電極を製造する場合には、感光性銀ペーストを用いたフォトリソグラフィー法によ
り、スクリーン印刷法では対応できなかった問題である、大型および高精細なパターン形
成が可能となっている。
【0006】
しかしながら、銀は貴金属であるため高価である。このため、感光性銀ペースト自体、
高価な導電性ペーストになっている。また、感光性銀ペーストの欠陥として、高温多湿環
境下でマイグレーションを起こしやすく、銀表面において硫化が発生するという性質が挙
げられる。
【0007】
上記のように、近年のパターン精度およびコストダウンに対する要求から、安価でかつ
高精細なパターンを、セラミック、シリコンおよびガラス基板上に形成可能な無機粒子含
有感光性樹脂材料が望まれている。
銀に代わる安価な材料として、アルミニウム粉末を用いた感光性樹脂材料が検討されている。(特開2009-37232号公報)
【特許文献1】特開2009−37232号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特開2009-37232号公報に開示される感光性ペースト組成物では、成形された電極の基板への密着性はあるものの、さらに低抵抗値の電極が得られることが望まれていた。
【0009】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものである。すなわち
、本発明は、安価で、かつ薄膜で、抵抗値が低く、高精細なパターンをガラス基板上に形
成可能な感光性ペースト組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、前記感光
性ペースト組成物を用いたパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討を行った。その結果、アルミニウム成分としてアルミニウム粉末と、アルミニウム合金および/または亜鉛粉末とを一定の割合で用いることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)(A1)あるアルミニウム粉末を全導電成分の30〜5重量%および(A2)アルミニウム合金粉末および亜鉛粉末から選ばれる少なくとも1種を全導電成分の70〜95重量%含有する導電成分(A)、
アルカリ可溶性樹脂(C)、 多官能(メタ)アクリレート(D)ならびに 光重合開始剤(E)を含有することを特徴とする感光性ペースト組成物と
前記感光性ペースト組成物からなる感光性ペースト層を基板上に形成する工程、 該ペースト層を露光処理してパターンの潜像を形成する工程、 該ペースト層を現像処理してパターンを形成する工程、および 該パターンを焼成処理する工程を含むことを特徴とするパターン形成方法とを提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、安価で、かつ薄膜で、抵抗値が低く、支持体との密着性が良好な高精細なパターンをガラス基板またはシリコン基板上に形成可能な感光性ペースト組成物が提供される。また、本発明によれば、前記感光性
ペースト組成物を用いたパターン形成方法が提供される。
【0012】
特に、本発明に係る感光性ペースト組成物を用いることにより、安価でかつ高精細なパ
ターンを形成することができ、FPDの配線を構成する部材の形成、電子部品の高度実装
材料の部材の形成、および太陽電池の部材の形成に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る感光性ペースト組成物およびパターン形成方法について、詳細に説
明する。なお、以下では、前記感光性ペースト組成物を用いて形成される、露光前の層を
「感光性ペースト層」ともいう。
【0014】
〔感光性ペースト組成物〕
本発明に係る感光性ペースト組成物は、以下に説明する導電成分(A)、アルカリ可溶性樹脂(C)、多官能(メタ)アクリレート(D)および光重合開始剤(E)を含有する。また、前記感光性ペースト組成物には、ガラス粉末(B)や添加剤を配合してもよい。
【0015】
<導電成分(A)>
<アルミニウム粉末(A1)>
アルミニウム粉末(A1)としては、フレーク状アルミニウム粉末、球状アルミニウム粉末を挙げることができる。
フレーク状アルミニウム粉末は、50重量%粒子径(以下「D50」ともいう。)が2.0〜20μm、かつ平均厚さが0.1〜1μm;好ましくはD50が2.5〜18μm、かつ平均厚さが0.15〜0.9μm;より好ましくはD50が3.0〜15μm、かつ平均厚さが0.15〜0.8μmの範囲にある。
【0016】
D50または平均厚さが上記範囲を上回るフレーク状アルミニウム粉末を用いると、高
精細なパターンを形成することが困難になることがある。また、D50または平均厚さが
上記範囲を下回るフレーク状アルミニウム粉末を用いると、該粉末同士が、膜中で面接触
傾向ではなく点接触傾向になるため、低抵抗のパターンを形成することが困難になること
がある。
【0017】
なお、本発明において、50重量%粒子径(D50)は、レーザー回折法により、後述
する実施例での測定条件下で測定される場合の値である。また、平均厚さは、SEM観察
により、後述する実施例での測定条件下で測定される場合の値である。
【0018】
フレーク状アルミニウム粉末は、上記要件(D50および平均厚さ)を満足するフレーク状アルミニウム粉末であれば特に限定されないが、脂肪酸により包接された該フレーク状粉末が挙げられる。
例えばFPDの配線を構成する電極を形成する場合には、前記例示のフレーク状アルミニウム粉末が好適に用いられるが、特に、JIS K 5906に記載の方法に従って測定されるリーフィング価が小さい(またはリーフィング価がない)、ノンリーフィング型フレーク状アルミニウム粉末が好適に用いられる。また、前記例示のフレーク状アルミニウム粉末は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
上記脂肪酸としては、例えば、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、
ぺラルゴン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、パルミトイ
ル酸、マルガリン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、ノナデカン酸
、アラキジン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、リグノセレン酸、ネルボン酸、セロチン酸、
モンタン酸、メリシン酸が挙げられる。これらの脂肪酸の中では、オレイン酸は効率的に
アルミニウム粉末を包接および/または修飾することができる。オレイン酸などの脂肪酸
を用いて、上記フレーク状アルミニウム粉末を包接および/または修飾することで、ノンリーフィング型のフレーク状アルミニウム粉末を容易に得ることができる。そして、このようなノンリーフィング型のフレーク状アルミニウム粉末を用いることで、感光性ペースト層中に該アルミニウム粉末をより均一に分散することが可能となる。このため、このようにして得られる感光性ペースト層は露光光を反射することなく(すなわち、透過率が向上する)、良好にパターン形成することができる。
【0020】
球状アルミニウム粉末は、50重量%粒子径(D50)が1〜20μm、好ましくは1.5〜18μm、さらに好ましくは2〜15μmの範囲にある。なお、本発明において球状アルミニウム粉末の形状とは、フレーク状(燐片状)以外の形状を意味し、特に限定はされない。
【0021】
D50が上記範囲を上回る球状アルミニウム粉末を用いると、高精細なパターンを形成
することが困難になることがある。また、D50が上記範囲を下回る球状アルミニウム粉
末を用いると、歩留りが悪く、安価にパターンを形成することが困難になることがある。
【0022】
<アルミニウム合金粉末および亜鉛粉末(A2)>
本発明で使用できるアルミニウム合金粉末は、50重量%粒子径(D50)が1〜20μm、好ましくは1〜15μm、特に好ましくは1〜10μmである。
本発明で使用するアルミニウム合金粉末は、アルミニウムと亜鉛、インジウム、チタン、ビスマス、ケイ素、銅、ランタノイド、マンガン、マグネシウムから選ばれる少なくとも1種を含むものである。特に亜鉛を含むアルミニウム合金粉末が好ましく、アルミニウム合金粉末中の亜鉛含有量が5〜97重量%である。
亜鉛をこの割合で含有するアルミニウム合金粉末を使用することにより、焼成後塗膜の密着性および電気特性の点で優れた感光性ペースト組成物を得ることができる。
アルミニウム合金粉末中のアルミニウム含有量は1〜60重量%、好ましくは1〜50重量%である。
本発明で使用する亜鉛粉末成分(A3)としては、フレーク状亜鉛粉末、球状亜鉛粉末を挙げることができる。
フレーク状亜鉛粉末は、50重量%粒子径(以下「D50」ともいう。)が2.0〜20μm、かつ平均厚さが0.1〜1μm;好ましくはD50が2.5〜18μm、かつ平均厚さが0.15〜0.9μm;より好ましくはD50が3.0〜15μm、かつ平均厚さが0.15〜0.8μmの範囲にある。
【0023】
D50または平均厚さが上記範囲を上回るフレーク状亜鉛粉末を用いると、高精細なパターンを形成することが困難になることがある。また、D50または平均厚さが上記範囲を下回るフレーク状亜鉛粉末を用いると、該粉末同士が、膜中で面接触傾向ではなく点接触傾向になるため、低抵抗のパターンを形成することが困難になることがある。
【0024】
なお、本発明において、50重量%粒子径(D50)は、レーザー回折法により、後述
する実施例での測定条件下で測定される場合の値である。また、平均厚さは、SEM観察
により、後述する実施例での測定条件下で測定される場合の値である。
【0025】
フレーク状亜鉛粉末は、上記要件(D50および平均厚さ)を満足するフレーク状亜鉛粉末であれば特に限定されないが、脂肪酸により包接された該フレーク状粉末が挙げられる。
例えばFPDの配線を構成する電極を形成する場合には、前記例示のフレーク状粉末が好適に用いられるが、特に、JIS K 5906に記載の方法に従って測定されるリーフィング価が小さい(またはリーフィング価がない)、ノンリーフィング型フレーク状粉末が好適に用いられる。また、前記例示のフレーク状粉末は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
上記脂肪酸としては、例えば、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、
ぺラルゴン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、パルミトイ
ル酸、マルガリン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、ノナデカン酸
、アラキジン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、リグノセレン酸、ネルボン酸、セロチン酸、
モンタン酸、メリシン酸が挙げられる。これらの脂肪酸の中では、オレイン酸は効率的に
アルミニウム粉末を包接および/または修飾することができる。オレイン酸などの脂肪酸
を用いて、上記フレーク状粉末を包接および/または修飾することで、ノンリーフィング
型のフレーク状粉末を容易に得ることができる。そして、このようなノンリーフィング型
のフレーク状亜鉛粉末を用いることで、感光性ペースト層中に該亜鉛粉末をより均一に分散することが可能となる。このため、このようにして得られる感光性ペースト層は露光光を反射することなく(すなわち、透過率が向上する)、良好にパターン
形成することができる。
【0027】
球状亜鉛粉末は、50重量%粒子径(D50)が1〜20μm、好ましくは1.5〜18μm、さらに好ましくは2〜15μmの範囲にある。なお、本発明において球状亜鉛粉末の形状とは、フレーク状(燐片状)以外の形状を意味し、特に限定はされない。
【0028】
D50が上記範囲を上回る球状亜鉛粉末を用いると、高精細なパターンを形成することが困難になることがある。また、D50が上記範囲を下回る球状亜鉛粉末を用いると、歩留りが悪く、安価にパターンを形成することが困難になることがある。
<導電成分の構成比>
導電成分中のアルミニウム粉末(A1)の含有割合は5〜30重量%、好ましくは10〜30重量%、アルミニウム合金粉末および/または亜鉛粉末の含有割合は70〜95重量%、好ましくは70〜90重量%である。
本発明に係る感光性ペースト組成物において、導電成分(A)の含有量は、本発明の組成物全体に対して、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは15〜50重量%、さらに好ましくは20〜40重量%の範囲にある。導電成分(A)の含有量が前記範囲にあると、導電性に優れたパターンを形成することができる。
【0029】
<ガラス粉末(B)>
本発明において、ガラス粉末(B)を用いることが好ましい。ガラス粉末(B)は、本
発明に係る感光性ペースト組成物を用いて形成されるパターンの用途(例えば、FPDの
部材、電子部品の部材など。)に応じて適宜選択することができる。
【0030】
ガラス粉末(B)の好適な具体例としては、
1.酸化鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素の混合物(PbO−B23−SiO2系)、
2.酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素の混合物(ZnO−B23−SiO2系)、
3.酸化鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素、酸化アルミニウムの混合物
(PbO−B23−SiO2−Al23系)、
4.酸化鉛、酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素の混合物
(PbO−ZnO−B23−SiO2系)、
5.酸化ビスマス、酸化ホウ素、酸化ケイ素の混合物
(Bi23−B23−SiO2系)、
6.酸化亜鉛、酸化リン、酸化ケイ素の混合物(ZnO−P25−SiO2系)、
7.酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化カリウムの混合物(ZnO−B23−K2O系)、
8.酸化リン、酸化ホウ素、酸化アルミニウムの混合物
(P25−B23−Al23系)、
9.酸化亜鉛、酸化リン、酸化ケイ素、酸化アルミニウムの混合物
(ZnO−P25−SiO2−Al23系)、
10.酸化亜鉛、酸化リン、酸化チタンの混合物(ZnO−P25−TiO2系)、
11.酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素、酸化カリウムの混合物
(ZnO−B23−SiO2系−K2O系)、
12.酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素、酸化カリウム、酸化カルシウムの混合物
(ZnO−B23−SiO2−K2O−CaO系)、
13.酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素、酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化アルミ
ニウムの混合物(ZnO−B23−SiO2−K2O−CaO−Al23系)、
14.酸化ホウ素、酸化ケイ素、酸化アルミニウムの混合物
(B23−SiO2−Al23系)、
15.酸化ホウ素、酸化ケイ素、酸化ナトリウムの混合物
(B23−SiO2−Na2O系)、
が挙げられる。これらの中では、環境に配慮した無鉛ガラスが特に好ましい。
【0031】
ガラス粉末(B)の平均粒子径は、パターンの形状を考慮して適宜選択される。ガラス
粉末(B)の50重量%粒子径(D50)は、好ましくは0.2〜5μm、より好ましくは0.2〜4μm、さらに好ましくは0.5〜3.8μmの範囲にある。また、ガラス粉末(B)の10重量%粒子径(D10)は0.05〜0.5μmの範囲にあることが好ましく、90重量%粒子径(D90)は10〜20μmの範囲にあることが好ましい。ガラス粉末(B)の平均粒子径(D50、D10、D90)が前記範囲にあると、露光工程において、露光光が感光性ペースト層の底部まで充分到達し、高精細なパターンを形成することができる。
【0032】
なお、本発明において、50重量%粒子径(D50)、10重量%粒子径(D10)お
よび90重量%粒子径(D90)は、レーザー回折法により、後述する実施例での測定条
件下で測定される場合の値である。
【0033】
また、例えばFPDの配線を構成する電極を形成する場合には、ガラス粉末(B)とし
て、(B1)軟化点が好ましくは350〜700℃、より好ましくは400〜620℃の
範囲にあるガラス粉末(以下「ガラス粉末(B1)」ともいう。)を用いることが好まし
い。
【0034】
軟化点が上記範囲を下回るガラス粉末を用いると、感光性ペースト層を露光・現像して
形成されるパターンを焼成する工程において、アルカリ可溶性樹脂(C)などの有機物質
が完全に分解除去されない段階で該ガラス粉末が溶融してしまうため、電極中に該有機物
質の一部が残留することがある。その結果、前記電極が着色されて、その光透過率が低下
することがある。一方、軟化点が上記範囲を上回るガラス粉末を用いると、感光性ペース
ト層を露光・現像して形成されるパターンを焼成する工程において、その温度条件が非常
に高くなるため、ガラス基板に歪みなどが発生することがある。
【0035】
なお、本発明において、ガラス粉末(B)の軟化点は、DSC測定により、後述する実
施例での測定条件下で測定される場合の値である。
本発明に係る感光性ペースト組成物において、ガラス粉末(B)の含有量は、該組成物
全体に対して、好ましくは0.5〜35重量%、より好ましくは1〜25重量%、さらに好ましくは1.5〜20重量%の範囲にある。
【0036】
特に、ガラス粉末(B)の少なくとも一部がガラス粉末(B1)であることが好ましく、該ガラス粉末(B1)の含有量は、感光性ペースト組成物全体に対して、好ましくは1〜25重量%、より好ましくは1.5〜20重量%の範囲にある。ガラス粉末(B1)の含有量が前記範囲にあると、FPDの配線を構成する電極などの部材を形成する場合に好適である。
【0037】
<アルカリ可溶性樹脂(C)>
アルカリ可溶性樹脂(C)は、アルカリ可溶性であれば特に限定されない。なお、本発
明において「アルカリ可溶性」とは、目的とする現像処理が可能な程度に、アルカリ性の
現像液に溶解する性質をいう。
【0038】
アルカリ可溶性樹脂(C)としては、以下のアルカリ可溶性官能基含有モノマー(C1
)と(メタ)アクリル酸誘導体(C2)との共重合体が好ましい。
<アルカリ可溶性官能基含有モノマー(C1)>
アルカリ可溶性官能基含有モノマー(C1)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、
マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、ケイ皮酸
、コハク酸モノ(2−(メタ)アクリロイロキシエチル)、2−メタクリロイロキシエチ
ルフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2−アクリロイル
オキシプロピルハイドロゲンフタレート、2−アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロ
ハイドロゲンフタレート、2−アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフ
タレート、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレートなどのカルボ
キシル基含有モノマー類;
(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピ
ル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(α−ヒドロキシメチル)アクリレー
トなどの水酸基含有モノマー類;
o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレンなどのフ
ェノール性水酸基含有モノマー類などの、アルカリ可溶性官能基と不飽和結合とを有する
モノマーが挙げられる。
【0039】
これらのモノマー(C1)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。ま
た、これらのモノマー(C1)の中では、(メタ)アクリル酸、2−メタクリロイロキシ
エチルフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2−アクリロ
イルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2−アクリロイルオキシプロピルヘキサヒ
ドロハイドロゲンフタレート、2−アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲ
ンフタレート、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルが好ましい。
【0040】
アルカリ可溶性官能基含有モノマー(C1)を共重合することにより、樹脂にアルカリ
可溶性を付与することができる。このアルカリ可溶性官能基含有モノマー(C1)由来の
構成単位の含有量は、アルカリ可溶性樹脂(C)の全構成単位中、通常は5〜90重量%
、好ましくは10〜80重量%、より好ましくは15〜70重量%である。
【0041】
<(メタ)アクリル酸誘導体(C2)>
(メタ)アクリル酸誘導体(C2)としては、アルカリ可溶性官能基含有モノマー(C
1)と共重合可能な(メタ)アクリル酸誘導体であれば特に限定されない。例えば、メチ
ル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレー
ト、ラウリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチ
ル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシ
ル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、トリチル(メタ)ア
クリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート
、グリシジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートなどの、
上記モノマー(C1)以外の(メタ)アクリレート類が挙げられる。
【0042】
これらのモノマー(C2)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、本発明では、(メタ)アクリル酸誘導体(C2)の代わりに、あるいは(メタ)
アクリル酸誘導体(C2)とともに、例えば、スチレン、メチル(メタ)アクリレート、
エチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどから得られるポリマー
の一方の鎖末端に、(メタ)アクリロイル基、アリル基、ビニル基などの重合性不飽和基
を有するマクロモノマーを用いてもよい。
【0043】
<ラジカル重合開始剤>
上記共重合の際、ラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。ラジカル重合開始剤と
しては、ビニル単量体の重合に用いられるラジカル重合開始剤を用いることができる。
【0044】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,
2'−アゾビス(2−メチルブチルニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバ
レロニトリル)、1,1'−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、ジメチル
−2,2'−アゾビスイソブチレート、4,4'−アゾビス(4−シアノバレリック酸)な
どのアゾ化合物;t−ブチルパーオキシビバレート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘ
キサノエート、クミルパーオキシ2−エチルヘキサノエートなどのパーオキシエステル類
の有機過酸化物が挙げられる。
【0045】
これらのラジカル重合開始剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、これらのラジカル重合開始剤の使用量は、上記共重合に使用する全モノマー100
重量部に対して、通常は0.1〜10重量部程度である。
【0046】
<連鎖移動剤>
上記共重合の際、連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤としては、例えば、α−メチ
ルスチレンダイマー、t−ドデシルメルカプタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3
−メルカプトプロピオン酸)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレ
ート)、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタンが挙げられる。
【0047】
これらの連鎖移動剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、こ
れらの連鎖移動剤の使用量は、上記共重合に使用する全モノマー100重量部に対して、
通常は0.1〜10重量部程度である。
【0048】
<アルカリ可溶性樹脂(C)の物性>
アルカリ可溶性樹脂(C)の重量平均分子量(以下「Mw」ともいう。)は、ゲルパー
ミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算値で、好ま
しくは5000〜100000、より好ましくは10000〜80000である。Mwは
、上記モノマーの共重合割合、連鎖移動剤、重合温度などの条件を適宜選択することによ
り制御することができる。Mwが前記範囲を上回ると、現像後の膜荒れが発生しやすくな
る。また、Mwが前記範囲を下回ると、未露光部の現像液に対する溶解性が低下し、パタ
ーンの解像度が低下する場合がある。
【0049】
アルカリ可溶性樹脂(C)のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは0〜120℃、よ
り好ましくは10〜100℃である。ガラス転移温度が前記範囲を下回ると、塗膜にタッ
クを生じやすく、ハンドリングがしにくい傾向にある。また、ガラス転移温度が前記範囲
を上回ると、感光性ペースト層とガラス基板などの支持体との密着性が悪くなり、後述す
る転写フィルムを用いる場合には、該ペースト層を転写できないことがある。なお、ガラ
ス転移温度は、アルカリ可溶性官能基含有モノマー(C1)および(メタ)アクリル酸誘
導体(C2)の量を変更することによって適宜調節することがでる。
【0050】
アルカリ可溶性樹脂(C)の酸価は、好ましくは20〜200mgKOH/g、より好
ましくは30〜160mgKOH/gである。酸価が前記範囲を下回ると未露光部をアル
カリ現像液で速やかに除去しにくく、高精細なパターンを形成することが困難になること
がある。また、酸価が前記範囲を上回ると、露光光によって硬化した部分もアルカリ現像
液に浸食されやすくなり、高精細なパターンを形成することが困難になることがある。
【0051】
本発明に係る感光性ペースト組成物は、5〜90重量%(5〜89.5重量%)の感光
性樹脂成分と95〜10重量%(95〜10.5重量%)の無機粒子とからなることが好
ましい。なお、感光性樹脂成分とは、感光性ペースト組成物から無機粒子を除いた部分、
すなわち感光性機能を有する有機成分全体をいい、アルカリ可溶性樹脂(C)、多官能(
メタ)アクリレート(D)および光重合開始剤(E)などが含まれる。また、無機粒子に
は、フレーク状アルミニウム粉末(A1)および球状アルミニウム粉末(A2)などのア
ルミニウム粉末(A)、ガラス粉末(B)などが含まれる。
【0052】
<多官能(メタ)アクリレート(D)>
本発明に係る感光性ペースト組成物には、感光性成分が含まれる。前記感光性成分とし
ては、一般的に光不溶化型の成分と光可溶化型の成分とがある。
【0053】
光不溶化型の成分としては、(i)分子内に不飽和基などを1つ以上有する感光性モノ
マーまたはオリゴマー、(ii)芳香族ジアゾ化合物、芳香族アジド化合物、有機ハロゲ
ン化合物などの感光性化合物、(iii)ジアゾ系アミンとホルムアルデヒドとの縮合物
などのいわゆるジアゾ樹脂といわれるものなどがある。
【0054】
光可溶化型の成分としては、(iv)ジアゾ化合物と無機酸や有機酸との錯体、(v)
キノンジアゾ類、(vi)キノンジアゾ類を適当なポリマーバインダーと結合させたもの
(例えば、フェノール樹脂のナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルフォン酸エステ
ル。)などがある。
【0055】
本発明においては、上記の全ての成分を用いることができるが、上記無機粒子と混合し
て簡便に用いることができる点で、上記(i)感光性モノマーまたはオリゴマーに分類さ
れる、多官能(メタ)アクリレート(D)が必須成分として用いられる。
【0056】
多官能(メタ)アクリレート(D)としては、例えば、アリル化シクロヘキシルジ(メ
タ)アクリレート、2,5−ヘキサンジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオール
ジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブ
チレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート
、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)
アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオ
ールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエ
チレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、メト
キシ化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アク
リレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ
(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)タク
リレート類;
ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ
)アクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチ
ロールプロパンEO変性トリ(メタ)アクリレート、ベンジルメルカプタン(メタ)トリ
アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリス
リトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(
メタ)アクリレートなどの3官能以上の(メタ)アクリレート類;
上記化合物中の芳香環に結合した水素原子のうち、1〜5個が塩素原子または臭素原子
に置換されたモノマーが挙げられる。これらの多官能(メタ)アクリレート(D)は1種
単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
本発明に係る感光性ペースト組成物において、多官能(メタ)アクリレート(D)の含
有量は、露光光に対する感度の点から、上記感光性樹脂成分全体に対して、好ましくは1
0重量%以上、より好ましくは15〜60重量%の範囲にある。多官能(メタ)アクリレ
ート(D)の含有量が前記範囲を上回ると、焼成後の部材(例えば、ディスプレイパネル
用部材)の形状が劣化することがある。
【0058】
また、本発明の目的を損なわない範囲で、多官能(メタ)アクリレート(D)とともに
、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、塩素化ス
チレン、臭素化スチレン、α−メチルスチレン、塩素化α−メチルスチレン、臭素化α−メチルスチレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン、カルボシキメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルカルバゾール、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1−ビニル−2−ピロリドンなどを用いてもよい。
【0059】
<光重合開始剤(E)>
光重合開始剤(E)としては、従来公知の光重合開始剤を用いることができる。また、
露光感度を向上させるために、光重合開始剤(E)とともに増感剤を用いてもよい。
【0060】
光重合開始剤(E)としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチ
ル、4,4−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)
ベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェ
ニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2
,2−ジメトキシ−2−フェニル−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−
メチルプロピオフェノン、p−t−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2
−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン
、4−イソプロピルチオキサントン、1−クロロ−4−プロピルチオキサントン、2,4
−ジエチルチオキサントン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチル
エーテル、アントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン
、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンゾスベロン、メチ
レンアントロン、4−アジドベンザルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジ
リデン)シクロヘキサノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシク
ロヘキサノン、カンファーキノン、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(o−メト
キシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボ
ニル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニ
ル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(o−ベンゾイル
)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−
モルフォリノ−1−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4
−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−
プロパン−1−オン、2,2’−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンなど
のカルボニル化合物;
ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフ
ィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイ
ド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドなど
のアシルフォスフィンオキサイド系化合物;
ベンジルジメチルケタノール、ベンジルメトキシエチルアセタール、ナフタレンスルホ
ニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、N−フェニルチオアクリドン、4,4
−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィ
ド、トリフェニルホスフィン、四臭素化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベン
ゾイン;
エオシンやメチレンブルーなどの光還元性の色素と、アスコルビン酸やトリエタノール
アミンなどの還元剤との組み合せが挙げられる。これらの光重合開始剤(E)は1種単独
で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
本発明に係る感光性ペースト組成物において、光重合開始剤(E)の含有量は、多官能
(メタ)アクリレート(D)100重量部に対して、好ましくは1〜50重量部、より好
ましくは2〜40重量部の範囲にある。光重合開始剤(E)の含有量が前記範囲を上回る
と、焼成後の部材(例えば、ディスプレイパネル用部材)の形状が劣化することがある。
【0062】
<増感剤>
増感剤としては、例えば、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2
−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、1−クロロー4−プ
ロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,3−ビス(4−ジエチル
アミノベンザル)シクロペンタノン、2,6−ビス(4−ジメチルアミニベンザル)シク
ロヘキサノン、2,6−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)−4−メチルシクロヘキサ
ノン、ミヒラーケトン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)−ベンゾフェノン、4,4−ビ
ス(ジメチルアミノ)カルコン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)カルコン、p−ジメチ
ルアミノシンナミリデンインダノン、p−ジメチルアミノベンジリデンインダノン、2−
(p−ジメチルアミノフェニルビニレン)−イソナフトチアゾール、1,3−ビス(4−
ジメチルアミノベンザル)アセトン、1,3−カルボニル−ビス(4−ジエチルアミノベ
ンザル)アセトン、3,3−カルボニル−ビス(7−ジエチルアミノクマリン)、N−フ
ェニル−N−エチルエタノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、N−トリルジエ
タノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、
ジエチルアミノ安息香酸イソアミル、3−フェニル−5−ベンゾイルチオテトラゾール、
1−フェニル−5−エトキシカルボニルチオテトラゾールが挙げられる。
【0063】
これらの増感剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、増感剤
の中には光重合開始剤としても用いられるものもあり、光重合開始剤との組み合せにより
、増感剤であるか光重合開始剤であるかが決定される。
【0064】
本発明に係る感光性ペースト組成物において、増感剤の含有量は、上記無機粒子100
重量部に対して、好ましくは0.01〜5重量部、より好ましくは0.05〜3重量部の
範囲にある。増感剤の含有量が前記範囲を下回ると、光感度を向上させる効果が発揮され
ないことがあり、増感剤の含有量が前記範囲を上回ると、露光部の残存率が小さくなり過
ぎることがある。
【0065】
<添加剤>
本発明に係る感光性ペースト組成物には、紫外線吸収剤、重合禁止剤、酸化防止剤、有
機溶媒、密着助剤、溶解促進剤、増感助剤、可塑剤、増粘剤、分散剤、無機粒子およびア
ルカリ可溶性樹脂の沈降防止剤、ならびにレベリング剤などの添加剤を添加してもよい。
【0066】
<紫外線吸収剤>
本発明に係る感光性ペースト組成物には、紫外線吸収剤を添加してもよい。紫外線吸収
効果の高い化合物を添加することによって、高アスペクト比、高精細、高解像度のパター
ンが得られる。紫外線吸収剤としては、有機系染料または無機系顔料を用いることができ
、中でも350〜450nmの波長範囲で高い紫外線吸収係数を有する有機系染料または
無機系顔料が好ましく用いられる。
【0067】
有機系染料としては、例えば、アゾ系染料、アミノケトン系染料、キサンテン系染料、
キノリン系染料、アミノケトン系染料、アントラキノン系染料、ベンゾフェノン系染料、
ジフェニルシアノアクリレート系染料、トリアジン系染料、p−アミノ安息香酸系染料が
挙げられ;無機系顔料としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウムが挙げら
れる。これらの中では、FPDの配線を構成する電極を形成する場合には、その信頼性の
観点から、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウムなどの無機系顔料がより好ましい。
【0068】
無機系顔料は、ガラス粉末(B)100重量部に対して、好ましくは0.001〜5重
量部、より好ましくは0.01〜1重量部の範囲となる量で添加することができる。無機
系顔料の添加量が前記範囲を下回ると、紫外線吸収剤の添加効果が小さく、所望の効果が
得られないことがある。また、無機系顔料の添加量が前記範囲を上回ると、紫外線吸収剤
の添加効果が大きく、感光性ペースト層の底部まで露光光が届かなくなり、パターンを形
成できなくなることや成膜強度を保てないことがある。
【0069】
<重合禁止剤>
本発明に係る感光性ペースト組成物には、保存時の熱安定性を向上させるために、重合
禁止剤を添加してもよい。重合禁止剤としては、例えば、ヒドロキノン、ヒドロキノンの
モノエステル化物、N−ニトロソジフェニルアミン、フェノチアジン、p−t−ブチルカ
テコール、N−フェニルナフチルアミン、2,6−ジ−t−ブチル−p−メチルフェノー
ル、クロラニール、ピロガロールが挙げられる。
【0070】
重合禁止剤は、感光性ペースト組成物全体に対して、好ましくは0.001〜1重量%
の範囲となる量で添加することができる。
<酸化防止剤>
本発明に係る感光性ペースト組成物には、保存時におけるアルカリ可溶性樹脂(C)の
酸化を防ぐために、酸化防止剤を添加してもよい。酸化防止剤としては、例えば、2,6
−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−
4−エチルフェノール、2,2−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノ
ール)、2,2−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4
−ビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチ
ル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ
−t−ブチルフェニル)ブタン、ビス[3,3−ビス−(4−ヒドロキシ−3−t−ブチ
ルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、ジラウリルチオジプロピオナー
ト、トリフェニルホスファイトが挙げられる。
【0071】
酸化防止剤は、感光性ペースト組成物全体に対して、好ましくは0.001〜1重量%
の範囲となる量で添加することができる。
<有機溶媒>
本発明に係る感光性ペースト組成物には、その粘度を調整するために、有機溶媒を加え
てもよい。有機溶媒としては、例えば、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ジヒ
ドロターピネニルアセテート、リモネン、カルベオール、カルビニルアセテート、シトロ
ネロール、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール
モノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、
プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチ
ルセロソルブ、メトキシプロピルアセテート、メチルエチルケトン、ジオキサン、アセト
ン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコ
ール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド、γ−ブチロラクトン、ブロモベン
ゼン、クロロベンゼン、ジブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモ安息香酸、クロロ
安息香酸が挙げられる。これらの有機溶媒は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用し
てもよい。
【0072】
有機溶媒は、感光性ペースト組成物全体に対して、好ましくは15〜40重量%の範囲
となる量で添加することができる。
<密着助剤>
本発明に係る感光性ペースト組成物には、感光性ペースト層とガラス基板などの支持体
との密着性を向上させるために、密着助剤を添加してもよい。密着助剤としては、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランなどの反応性基を有するシラン化合物が好適に用いられる。
【0073】
本発明に係る感光性ペースト組成物において、密着助剤の含有量は、アルカリ可溶性樹
脂(C)100重量部に対して、好ましくは0.05〜15重量部、より好ましくは0.
1〜10重量部の範囲にある。
【0074】
<溶解促進剤>
本発明に係る感光性ペースト組成物には、後述する現像液への充分な溶解性を発現させ
る目的で、溶解促進剤を添加してもよい。溶解促進剤としては、界面活性剤が好ましく用
いられる。このような界面活性剤としては、例えば、フッ素系界面活性剤、シリコーン系
界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、脂肪酸が挙げられる。
【0075】
フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、BM CHIMIE社製「BM−10
00」、「BM−1100」;大日本インキ化学工業(株)製「メガファックF142D
」、「同F172」、「同F173」、「同F183」;住友スリーエム(株)製「フロ
ラードFC−135」、「同FC−170C」、「同FC−430」、「同FC−431
」;旭硝子(株)製「サーフロンS−112」、「同S−113」、「同S−131」、
「同S−141」、「同S−145」、「同S−382」、「同SC−101」、「同S
C−102」、「同SC−103」、「同SC−104」、「同SC−105」、「同S
C−106」が挙げられる。
【0076】
シリコーン系界面活性剤の市販品としては、例えば、東レ・ダウコーニング・シリコー
ン(株)製「SH−28PA」、「SH−190」、「SH−193」、「SZ−603
2」、「SF−8428」、「DC−57」、「DC−190」;信越化学工業(株)製
「KP341」;新秋田化成(株)製「エフトップEF301」、「同EF303」、「
同EF352」が挙げられる。
【0077】
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリ
オキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどのポリオ
キシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、
ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエー
テルなどのポリオキシエチレンアリールエーテル類;ポリオキシエチレンジラウレート、
ポリオキシエチレンジステアレートなどのポリオキシエチレンジアルキルエステル類が挙
げられる。
【0078】
ノニオン系界面活性剤の市販品としては、例えば、花王(株)製「エマルゲンA−60
」、「A−90」、「A−550」、「B−66」、「PP−99」;共栄社化学(株)
製「(メタ)アクリル酸系共重合体ポリフローNo.57」、「同No.90」が挙げら
れる。
【0079】
脂肪酸としては、例えば、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ぺラ
ルゴン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、パルミトイル酸
、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、ノ
ナデカン酸、アラキジン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、リグノセレン酸、ネルボン酸、セ
ロチン酸、モンタン酸、メリシン酸が挙げられる。
【0080】
これらの界面活性剤の中では、現像時に未露光部の除去が容易であることから、ノニオ
ン系界面活性剤が好ましく、ポリオキシエチレンアリールエーテル類がより好ましく、該
ポリオキシエチレンアリールエーテル類の中では、下記式(1)で表される化合物が特に
好ましい。
【0081】
【化1】

【0082】
上記式(1)中、R1は炭素数1〜5のアルキル基、好ましくはメチル基であり;pは1
〜5の整数であり;sは1〜5の整数、好ましくは2であり;tは1〜100の整数、好
ましくは10〜20の整数である。
【0083】
本発明に係る感光性ペースト組成物において、溶解促進剤の含有量は、アルカリ可溶性
樹脂(C)100重量部に対して、好ましくは0.001〜20重量部、より好ましくは
0.01〜15重量部、特に好ましくは0.1〜10重量部の範囲にある。溶解促進剤の
含有量が前記範囲にあると、後述する現像液への溶解性に優れた感光性ペースト組成物が
得られる。
【0084】
<感光性ペースト組成物の調製>
本発明に係る感光性ペースト組成物は、アルミニウム粉末(A1)とアルミニウム合金粉末を含む導電成分(A)、アルカリ可溶性樹脂(C)、多官能(メタ)アクリレート(D)および光重合開始剤(E)と、ガラス粉末(B)および有機溶媒などの添加剤とを所定の組成比となるように調合した後、3本ロールや混練機で均質に混合分散して調製される。
【0085】
本発明に係る感光性ペースト組成物の粘度は、上記無機粒子、増粘剤、有機溶媒、可塑
剤および沈殿防止剤などの添加量によって適宜調整することができるが、100〜500
000cps(センチ・ポイズ)の範囲にあることが好ましい。
【0086】
上記感光性ペースト組成物は、上記感光性ペースト組成物からなる感光性ペースト層を
基板上に形成する工程(感光性ペースト層形成工程)で得られる感光性ペースト層におい
て、膜厚5μmで波長365nmの光に対する透過率が0.1%以上となることが好まし
い。膜厚5μmで波長365nmの光に対する透過率が0.1%未満となる場合、フォト
リソグラフィー法によるパターン形成は困難となることがある。
【0087】
〔パターン形成方法〕
本発明に係るパターン形成方法は、上記感光性ペースト組成物からなる感光性ペースト
層を基板上に形成する工程(感光性ペースト層形成工程)、該感光性ペースト層を露光処
理してパターンの潜像を形成する工程(露光工程)、該感光性ペースト層を現像処理して
パターンを形成する工程(現像工程)、および該パターンを焼成処理する工程(焼成工程
)を含むことを特徴とする。
【0088】
<感光性ペースト層形成工程>
本工程では、上記感光性ペースト組成物からなる感光性ペースト層を基板上に形成する
。感光性ペースト層の形成方法としては、例えば、(i)上記感光性ペースト組成物を基
板上に塗布して塗膜を形成し、該塗膜を乾燥させて形成する方法、(ii)上記感光性ペー
スト組成物を支持フィルム上に塗布して塗膜を形成し、該塗膜を乾燥させて得られる感光
性ペースト層を有する転写フィルムを用いて、基板上に該ペースト層を転写する方法など
が挙げられる。
【0089】
(i)上記感光性ペースト組成物を基板上に塗布する方法としては、膜厚が大きく(例
えば20μm以上)、かつ均一性に優れた塗膜を効率よく形成することができる方法であ
れば特に限定されない。例えば、ナイフコータによる塗布方法、ロールコータによる塗布
方法、ドクターブレードによる塗布方法、カーテンコータによる塗布方法、ダイコータに
よる塗布方法、ワイヤーコータによる塗布方法、スクリーン印刷装置によるスクリーン印
刷法が挙げられる。
【0090】
塗膜の乾燥条件は、乾燥後における有機溶媒の残存割合が2重量%以内となるように適
宜調整すればよく、例えば、乾燥温度が50〜150℃、乾燥時間が0.5〜60分程度
である。
【0091】
上記のようにして形成された感光性ペースト層の膜厚は、好ましくは3〜300μm、
より好ましくは5〜200μmである。なお、感光性ペースト組成物の塗布をn回繰り返
すことで、n層(nは2以上の整数を示す。)の感光性ペースト層を有する積層体を形成
してもよい。
【0092】
(ii)上記感光性ペースト層を有する転写フィルムを用いた転写工程の一例を以下に示
す。基板と感光性ペースト層とが接するように、基板と転写フィルムとを重ね合わせ、該
転写フィルムを加熱ローラなどにより熱圧着した後、該ペースト層から支持フィルムを剥
離除去する。これにより、基板上に感光性ペースト層が転写されて密着した状態となる。
【0093】
上記支持フィルムは、耐熱性および耐溶剤性を有するとともに可撓性を有する樹脂フィ
ルムであることが好ましい。支持フィルムを形成する樹脂としては、例えば、ポリエチレ
ンテレフタレートなどのポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、
ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリフロロエチレンなどの含フッ
素樹脂、ナイロン、セルロースが挙げられる。
【0094】
転写条件としては、例えば、加熱ローラの表面温度が10〜200℃、加熱ローラによ
るロール圧が0.5〜10kg/cm2、加熱ローラの移動速度が0.1〜10m/分で
ある。また、上記基板は予熱されていてもよく、その予熱温度は、例えば40〜140℃
である。
【0095】
本発明で用いられる基板としては、例えば、ガラス、セラミック、シリコーン、ポリカ
ーボネート、ポリエステル、芳香族アミド、ポリアミドイミド、ポリイミドなどの絶縁性
材料からなる板状部材が挙げられる。これらの中では、耐熱性を有するガラス基板を用い
ることが好ましい。
【0096】
<露光工程>
本工程では、上記感光性ペースト層形成工程により基板上に感光性ペースト層を形成し
た後、露光装置を用いて露光を行う。具体的には、感光性ペースト層に、露光用マスクを
介して、紫外線などの露光光を選択的に照射して、該ペースト層にパターンの潜像を形成
する。
【0097】
露光は通常のフォトリソグラフィーで行われるように、フォトマスクを用いてマスク露
光する方法を採用することができる。フォトマスクの露光パターンは、目的によって異な
るが、例えば10〜500μm幅のストライプまたは格子である。
【0098】
また、フォトマスクを用いずに、赤色や青色の可視光レーザー光、Arイオンレーザー
などで直接描画する方法を用いてもよい。
露光装置としては、平行光露光機、散乱光露光機、ステッパー露光機、プロキシミティ
露光機などを用いることができる。また、大面積の露光を行う場合は、ガラス基板などの
基板上に感光性ペースト層を形成した後に、搬送しながら露光を行うことによって、小さ
な露光面積の露光機で、大きな面積を露光することができる。
【0099】
露光光としては、例えば、可視光線、近紫外線、紫外線、電子線、X線、レーザー光が
挙げられるが、これらの中では紫外線が好ましい。紫外線の光源としては、例えば、低圧
水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ハロゲンランプなどが挙げられる。これらの中では
超高圧水銀灯が好適である。
【0100】
露光条件は、塗布厚みによって異なるが、例えば1〜100mW/cm2出力の超高圧
水銀灯を用いて0.05〜1分間露光を行う。この場合、波長フィルターを用いて露光光
の波長領域を狭くすることによって、光の散乱を抑制し、パターン形成性を向上させるこ
とができる。具体的には、i線(365nm)の光をカットするフィルター、あるいは、
i線およびh線(405nm)の光をカットするフィルターを用いて、パターン形成性を
向上させることができる。
【0101】
<現像工程>
本工程では、上記露光後、露光部と非露光部との現像液に対する溶解度差を利用して、
感光性ペースト層を現像してパターンを形成する。現像方法(例えば、浸漬法、揺動法、
シャワー法、スプレー法、パドル法、ブラシ法など)および現像処理条件(例えば、現像
液の種類・組成・濃度、現像時間、現像温度など)などは、感光性ペースト層の種類に応
じて適宜選択、設定すればよい。
【0102】
現像工程で用いられる現像液としては、感光性ペースト層中の有機成分を溶解可能な有
機溶媒が使用できる。また、前記有機溶媒にその溶解力が失われない範囲で水を添加して
もよい。感光性ペースト層中にカルボキシル基などの酸性基を持つ化合物が存在する場合
、アルカリ水溶液で現像できる。
【0103】
上記感光性ペースト層には、導電成分(A)、ガラス粉末(B)などの無機粒子が含まれている。このような無機粒子は
アルカリ可溶性樹脂(C)により均一に分散されているため、該樹脂(C)を現像液で溶
解して洗浄することにより、該無機粒子も同時に除去される。
【0104】
上記アルカリ水溶液としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カ
リウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸水素二カリウム、リ
ン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水
素ナトリウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、炭酸水素リチウム
、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウ
ム、ホウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、アンモニア水溶液、テトラメ
チルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキシド
、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチル
アミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、エタノー
ルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンが挙げられる。
【0105】
上記アルカリ水溶液のアルカリ濃度は、通常は0.01〜10重量%、好ましくは0.
1〜5重量%である。アルカリ濃度が低すぎると可溶部(未露光部)が除去されず、アル
カリ濃度が高すぎると、パターンを剥離させ、あるいは非可溶部(露光部)を腐食するお
それがある。
【0106】
また、現像時の現像温度は、20〜50℃で行うことが工程管理上好ましい。
上記アルカリ水溶液には、ノニオン系界面活性剤や有機溶媒などの添加剤が含有されて
いてもよい。なお、アルカリ現像液による現像処理がなされた後は、通常は水洗処理が施
される。
【0107】
<焼成工程>
本工程では、現像工程により形成されたパターンに含まれる有機物質を焼失させるため
に、焼成炉にて該パターンを焼成処理する。
【0108】
焼成雰囲気は、感光性ペースト組成物や基板の種類によって異なるが、空気、オゾン、
窒素、水素などの雰囲気中で焼成する。焼成炉としては、バッチ式の焼成炉やベルト式の
連続型焼成炉を用いることができる。
【0109】
焼成処理条件は、パターン中の有機物質が焼失されることが必要であるため、通常は、
焼成温度が300〜1000℃、焼成時間が10〜90分間程度である。例えば、ガラス
基板上にパターンを形成する場合は、焼成温度が350〜600℃、焼成時間が10〜6
0分程度である。
【0110】
<加熱工程>
上記感光性ペースト層形成、露光、現像、焼成の各工程中に、乾燥または予備反応の目
的で、50〜300℃の加熱工程を導入してもよい。
【0111】
〔FPD用部材などの製造〕
上記工程を含む本発明に係るパターン形成方法を用いることにより、ディスプレイパネ
ル(FPDなど)の配線を構成する部材(電極など)、電子部品の高度実装材料の部材(
回路パターンなど)、および太陽電池部材の部材(配線パターンなど)を形成することが
できる。特に、本発明に係るパターン形成方法を用いることにより、PDPなどのFPD
を好適に製造にすることができる。
【実施例】
【0112】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例および比較例における「部」および「%」は、特に断りのない限り、それぞれ「重量部」および「重量%」を示す。
まず、物性の測定方法および評価方法について説明する。
〔重量平均分子量(Mw)および重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)(以下、Mw/Mnと呼称する。)の測定方法〕
MwおよびMw/Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製「HLC−8220GPC」)により測定したポリスチレン換算の値である。なお、GPC測定は、GPCカラムとして東ソー(株)製「TSKguardcolumn SuperHZM−M」を用い、テトラヒドロフラン(THF)溶媒、測定温度40℃の条件で行った。
〔電気抵抗測定の評価方法〕
体積抵抗[μΩ・cm]は、ガラス基板上に感光性ペースト組成物を塗布して焼成することにより、該ガラス基板上に膜厚10μmの膜を形成して、NPS社製の「Resistivity Proccessor ModelΣ−5」を用いて評価した。
〔現像後および焼成後のパターンの評価方法〕
現像後および焼成後の試験片を切断して、パターン切断面を走査型電子顕微鏡(日立製作所製「S4200」)で観察してパターンの幅および高さを計測し、それぞれを下記基準で評価した。なお、所望の規格は、パターンの幅が50μm、高さが10μm、間隔が100μmである。
A:所望の規格のもの。
B:所望の規格から±5%以内のもの。
C:所望の規格から±5%を超えて±10%以内のもの。
D:所望の規格から±10%を超えるもの。
【0113】
〔焼成後のパターン密着性評価〕
焼成後の試験片に対して、パターンと支持体であるガラス基板との密着性評価を、以下のようにして行った。なお、所望の規格は、パターンの幅が50μm、高さが10μm、間隔100μmである。
セロテープ(登録商標:ニチバン社製)を、試験片を構成する支持体表面に加熱ローラにより熱圧着した。圧着条件は、加熱ローラの表面温度を23℃、ロール圧を4kg/cm2、加熱ローラの移動速度を0.5m/分とした。これにより、支持体の表面にセロテープ(登録商標:ニチバン社製)が転写されて密着した状態となった。このセロテープ(登録商標:ニチバン社製)を支持体より剥離することでパターンの密着性を評価した。
○:パターン剥れなし。
×:パターン剥れあり。
【0114】
〔合成例1〕
2−ヒドロキシエチルメタクリレート15g、メタクリル酸15g、n−ブチルメタクリレート40g、2−エチルヘキシルメタクリレート30g、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)1g、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)(堺化学工業(株)製)1gを攪拌機付きオートクレーブに仕込み、窒素雰囲気下において、ジヒドロターピネオール150g部中で均一になるまで攪拌した。
次いで、上記単量体を80℃で4時間重合させ、さらに100℃で1時間重合させた後、室温まで冷却してアルカリ可溶性樹脂(1)を得た。このアルカリ可溶性樹脂(1)の重合率は98%であり、アルカリ可溶性樹脂(1)の重量平均分子量は20000(Mw/Mn=1.6)であった。
【0115】
〔合成例2〕
合成例1において、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)に代えてトリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)(堺化学工業(株)製)1gを使用したこと以外は合成例1と同様にして、アルカリ可溶性樹脂(2)を得た。このアルカリ可溶性樹脂(2)の重合率は98%であり、アルカリ可溶性樹脂(2)の重量平均分子量は22000(Mw/Mn=2)であった。
【0116】
〔感光性樹脂成分の調製〕
表3に示す組成の感光性樹脂成分(1)〜(6)を調製した。
[実施例1]
表1に示すアルミニウム粉末A1−1(10g)、表2に示すアルミニウム合金粉末A2−1(30g)、表3に示すガラス粉末B1(5g)および表4に示す感光性樹脂成分(1)(55g)を混練機で混練して、感光性ペースト組成物(以下「感光性ペースト」ともいう。)を調製した。
上記感光性ペーストを325メッシュのスクリーンを用いて、試験片(150mm×150mm×1.8mm)であるガラス基板上に100mm角の大きさにベタに印刷し、100℃で10分間保持して乾燥し、感光性ペースト層を形成した。
次に、ネガ型クロムマスク(パターン幅100μm、パターン間隔100μm)を用いて、25mW/cm2出力の超高圧水銀灯により、上面から感光性ペースト層を紫外線露光した。露光量は1000mJ/cm2であった。
次に、露光後の感光性ペースト層に、23℃に保持した炭酸ナトリウムの0.5%水溶液を、シャワーで60秒間かけることにより現像した。その後、シャワースプレーを用いて水洗浄し、光硬化していない部分を除去してガラス基板上に格子状の硬化パターンを形成した。この現像後の硬化パターンを上記評価方法により評価した。結果を表4に示す。
次に、得られた硬化パターンを580℃で30分間焼成して電極パターンを形成した。この焼成後の電極パターンを上記評価方法により評価した。結果を表5に示す。
【0117】
[実施例2〜27]
表1に示すアルミニウム粉末(10g)、表2に示すアルミニウム合金粉末または亜鉛粉末(30g)、表3に示すガラス粉末(5g)および表4に示す感光性樹脂成分(55g)を表5に示す組合わせで用いて感光性ペーストを調製したこと以外は実施例1と同様にして、ガラス基板上に感光性ペースト層、硬化パターン、電極パターンを順次形成した。次いで、硬化パターンおよび電極パターンを上記評価方法により評価した。結果を表5および表6に示す。なお、実施例2〜27の何れにおいても感光性ペースト層の膜厚は、10μm±1μmの範囲にあった。
[実施例28]
表1に示すアルミニウム粉末A1−2(2g)、表2に示す亜鉛粉末A2−20(38g)、表3に示すガラス粉末B2(5g)および表4に示す感光性樹脂成分(1)(55g)を混練機で混練して、感光性ペースト組成物(以下「感光性ペースト」ともいう。)を調製したこと以外は実施例1と同様にして、ガラス基板上に感光性ペースト層、硬化パターン、電極パターンを順次形成した。次いで、硬化パターンおよび電極パターンを上記評価方法により評価した。結果を表6に示す。なお、感光性ペースト層の膜厚は、10μm±1μmの範囲にあった。
[実施例29]
表1に示すアルミニウム粉末A1−2(8g)、表2に示す亜鉛粉末A2−20(32g)、表3に示すガラス粉末B2(5g)および表4に示す感光性樹脂成分(1)(55g)を混練機で混練して、感光性ペースト組成物(以下「感光性ペースト」ともいう。)を調製したこと以外は実施例1と同様にして、ガラス基板上に感光性ペースト層、硬化パターン、電極パターンを順次形成した。次いで、硬化パターンおよび電極パターンを上記評価方法により評価した。結果を表6に示す。なお、感光性ペースト層の膜厚は、10μm±1μmの範囲にあった。
[実施例30]
表1に示すアルミニウム粉末A1−2(12g)、表2に示す亜鉛粉末A2−20(28g)、表3に示すガラス粉末B2(5g)および表4に示す感光性樹脂成分(1)(55g)を混練機で混練して、感光性ペースト組成物(以下「感光性ペースト」ともいう。)を調製したこと以外は実施例1と同様にして、ガラス基板上に感光性ペースト層、硬化パターン、電極パターンを順次形成した。次いで、硬化パターンおよび電極パターンを上記評価方法により評価した。結果を表6に示す。なお、感光性ペースト層の膜厚は、10μm±1μmの範囲にあった。
[実施例31]
表1に示すアルミニウム粉末A1−2(5g)、表2に示すアルミニウム合金粉末A2−1(10g)および亜鉛粉末A2−20(25g)、表3に示すガラス粉末B2(5g)および表4に示す感光性樹脂成分(1)(55g)を混練機で混練して、感光性ペースト組成物(以下「感光性ペースト」ともいう。)を調製したこと以外は実施例1と同様にして、ガラス基板上に感光性ペースト層、硬化パターン、電極パターンを順次形成した。次いで、硬化パターンおよび電極パターンを上記評価方法により評価した。結果を表6に示す。なお、感光性ペースト層の膜厚は、10μm±1μmの範囲にあった。
[実施例32]
表1に示すアルミニウム粉末A1−2(5g)、表2に示すアルミニウム合金粉末A2−1(25g)および亜鉛粉末A2−20(10g)、表3に示すガラス粉末B2(5g)および表4に示す感光性樹脂成分(1)(55g)を混練機で混練して、感光性ペースト組成物(以下「感光性ペースト」ともいう。)を調製したこと以外は実施例1と同様にして、ガラス基板上に感光性ペースト層、硬化パターン、電極パターンを順次形成した。次いで、硬化パターンおよび電極パターンを上記評価方法により評価した。結果を表6に示す。なお、感光性ペースト層の膜厚は、10μm±1μmの範囲にあった。
【0118】
【表1】





【0119】
【表2】

【0120】
【表3】













【0121】
【表4】

【0122】
TMP:トリメチロールプロパン(プロピオンオキサイド変性)トリアクリレート
MTPMP:2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパン−1−オン
DETX:2,4−ジエチルチオキサントン
MTMS:γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン
BHHD:1,7−ビス(4−ヒドロキシフェノール)−1,6−ヘプタジエン−3,5−ジオン
MTMS:γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン
DTNOL:ジヒドロターピネオール


















【0123】
【表5】














【0124】
【表6】


表に示すように、現像後および焼成後のパターン評価では、実施例1、2、4および6〜23、25、25、26および28〜32が特に優れていた。実施例3、5および27は優れていた。実施例24は良好であった。焼成後の密着性評価では、実施例1〜32は良好であった。体積抵抗の評価では、実施例1〜32は16〜80μΩ・cmの範囲に入った。
【0125】
[比較例1〜5]
表5に示すアルミニウム成分、ガラス粉末および感光性樹脂成分を用いて感光性ペーストを調製したこと以外は実施例1と同様にして、ガラス基板上に感光性ペースト層、硬化パターン、電極パターンを順次形成した。次いで、硬化パターンおよび電極パターンを上記評価方法により評価した。結果を表6に示す。















































【0126】
【表7】

【0127】
表7に示すように、現像後および焼成後のパターン評価では、比較例1および2は特に優れていた。比較例5は良好。比較例3および4は不良。焼成後の密着性評価では、比較例1〜4は良好。比較例5は不良。体積抵抗の評価では、比較例1〜4は15〜500μΩ・cmの範囲に入った。

【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】図1は、交流型プラズマディスプレイパネルの断面形状を示す模式図である。
【図2】図2は、一般的なフィールドエミッションディスプレイの断面形状を示す模式図である。
【符号の説明】
【0129】
101 ガラス基板
102 ガラス基板
103 背面隔壁
104 透明電極
105 バス電極
106 アドレス電極
107 蛍光物質
108 誘電体層
109 誘電体層
110 保護層
111 前面隔壁
201 ガラス基板
202 ガラス基板
203 絶縁層
204 透明電極
205 エミッタ
206 カソード電極
207 蛍光体
208 ゲート
209 スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A1)アルミニウム粉末を30〜5重量%および(A2)アルミニウム合金粉末および亜鉛粉末から選ばれる少なくとも1種を70〜95重量%含有する導電成分(A)、
アルカリ可溶性樹脂(C)、
多官能(メタ)アクリレート(D)ならびに
光重合開始剤(E)を含有することを特徴とする感光性ペースト組成物。
【請求項2】
アルミニウム合金粉末がアルミニウムと亜鉛、インジウム、チタン、ビスマス、ケイ素、銅、ランタノイド、マンガン、マグネシウムから選ばれる少なくとも1種とを含むことを特徴とする請求項1記載の感光性ペースト組成物。
【請求項3】
アルミニウム合金粉末中のアルミニウム含有量が1〜60重量%であることを特徴とする請求項1記載の感光性ペースト組成物。
【請求項4】
さらに50重量%粒子径が0.2〜4μmであるガラス粉末(B)を含有することを特徴とする請求項1に記載の感光性ペースト組成物。
【請求項5】
前記ガラス粉末(B)として、軟化点が350〜700℃であるガラス粉末を含有することを特徴とする請求項2に記載の感光性ペースト組成物。
【請求項6】
請求項1〜5に記載の感光性ペースト組成物からなる感光性ペースト層を基板上に形成する工程、
該ペースト層を露光処理してパターンの潜像を形成する工程、
該ペースト層を現像処理してパターンを形成する工程、および
該パターンを焼成処理する工程を含むことを特徴とするパターン形成方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−276703(P2010−276703A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−126673(P2009−126673)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】