説明

感光性平版印刷版材料及びそれを用いた平版印刷版の作製方法

【課題】高感度で、且つ低pHでの現像処理によっても、非画像部に汚れの生じない感光性平版印刷版材料及びそれを用いた平版印刷版の作製方法を提供する。
【解決手段】支持体上に、分光増感剤、重合開始剤、共開始剤、重合性モノマー、及び高分子結合材を含有する感光層を有し、更にその上にポリビニルアルコールを含有する酸素遮断層を有する感光性平版印刷版材料であって、該感光層が、重合開始剤としてヘキサアリールビスイミダゾール化合物を含有し、共開始剤として特定構造のメルカプト化合物を含有し、かつ、平版印刷版の作製の際、350nm〜450nmの範囲内に発光波長を持つレーザー光源により画像情報を露光・記録した後の未露光部が、水溶性樹脂及び界面活性剤を含有し温度25℃でのpHが3.0〜9.0である水溶液により除去され得ることを特徴とする感光性平版印刷版材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆるコンピューター・トゥ・プレート(computer−to−plate:以下において、「CTP」という。)システムに用いられる感光性平版印刷版に関し、特に、波長350〜450nmのレーザー光での露光に適した感光性平版印刷版材料及びそれを用いた平版印刷版の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像情報をコンピューターを用いて電子的に処理、蓄積、出力する、デジタル化技術が広く普及し、オフセット印刷用の印刷版の作製技術においては、デジタル化された画像情報に従って、指向性の高いレーザー光を走査し、直接感光性平版印刷版に記録するいわゆるCTPシステムが開発され、実用化が進展している。
【0003】
これらのうち、比較的高い耐刷力を要求される印刷の分野においては、重合可能な化合物を含む重合型の感光層を有するネガ型の感光性平版印刷版材料を用いることが知られている(例えば特許文献1、2参照。)。
【0004】
重合型の感光層に用いられる光源としては、Arレーザー(488nm)やYD−YAG(532nm)のような光源が知られているが、これらの光源を用いた製版においては出力が十分高くないことなどから製版工程の生産性を上げるには不充分であり、セーフライトの使用の面から作業性が不充分であった。
【0005】
一方、近年高出力かつ小型の短波光(波長350〜450nm)の範囲内で連続発信可能なレーザーが容易に入手できるようになっている。
【0006】
そして、上記の生産性、セーフライト性などを改善するため、これらの短波光のレーザーに適する印刷版材料が開発されている。例えば、感光層にビイミダゾールを含む印刷版材料が知られており、さらに、高感度で、低昇華性の光重合性組成物として、例えば、アルキル基などの置換基を有するアリール基を含むヘキサアリールビイミダゾール化合物を含む光重合性組成物が知られている(例えば特許文献3、4参照。)。
【0007】
しかしながら、これらの印刷版材料において、まだ感度、現像適正が不充分である等の問題があった。
【0008】
また一方、光重合型の感光性平版印刷版材料は通常、画像露光、必要に応じ加熱処理を行った後、酸素遮断層除去のための水洗、未露光部分(非画像部分)を溶解除去するための現像処理、水洗処理、非画像部の親水化のためのフィニッシャーガム処理を行い、平版印刷版を得ている。この感光性平版印刷版材料から平版印刷版を作製する際、感光層のうち未露光部の感光層を完全に除去する為、即ち現像を行う為に、通常、水系アルカリ現像液として、pH12.5以上で用いられることが一般的であった。
【0009】
しかしながら、近年に至り、作業性、安全性、環境適性等の観点からより低いpHのアルカリ現像液での処理が望まれる様になってきている。しかしながら、このような比較的低pHの現像液は、基本的に感光層の溶解力が乏しいため、例えば、十分に現像が進まない、非画像部に汚れを生じやすい等の問題があった。
【特許文献1】特開平1−105238号公報
【特許文献2】特開平2−127404号公報
【特許文献3】特開2001−194782号公報
【特許文献4】特開2004−137152号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記問題に鑑み、高感度で、且つ低pHでの現像処理によっても、非画像部に汚れの生じない感光性平版印刷版材料を提供すること及びそれを用いた平版印刷版の作製方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る上記課題は、下記の手段によって解決される。
【0012】
1.支持体上に、分光増感剤、重合開始剤、共開始剤、重合性モノマー、及び高分子結合材を含有する感光層を有し、更にその上にポリビニルアルコールを含有する酸素遮断層を有する感光性平版印刷版材料であって、該感光層が、重合開始剤としてヘキサアリールビスイミダゾール化合物を含有し、共開始剤として下記一般式(1)で表される化合物を含有し、かつ、平版印刷版の作製の際、350nm〜450nmの範囲内に発光波長を持つレーザー光源により画像情報を露光・記録した後の未露光部が、水溶性樹脂及び界面活性剤を含有し温度25℃でのpHが3.0〜9.0である水溶液により除去され得ることを特徴とする感光性平版印刷版材料。
【0013】
【化1】

【0014】
〔Xは酸素原子、−NR1−又はセレンを表し、R1は置換基を有してもよいアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基を表し、YはN=C−X部分と共に5員ヘテロ環を形成する原子団を表し、Yは更に置換基を有してもよい。〕
2.前記一般式(1)で表される化合物が下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする前記1に記載の感光性平版印刷版材料。
【0015】
【化2】

【0016】
〔R1は置換基を有してもよいアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基を表し、R2は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基を表す。〕
3.前記一般式(1)で表される化合物が下記一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする前記1に記載の感光性平版印刷版材料。
【0017】
【化3】

【0018】
〔R2は水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基を表す。〕
4.前記一般式(1)で表される化合物が下記一般式(4)で表される化合物であることを特徴とする前記1に記載の感光性平版印刷版材料。
【0019】
【化4】

【0020】
〔R1は置換基を有してもよいアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基を表す。〕
5.前記一般式(1)で表される化合物が下記一般式(5)で表される化合物であることを特徴とする前記1に記載の感光性平版印刷版材料。
【0021】
【化5】

【0022】
〔R2、R3は、それぞれ独立に水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基を表す。〕
6.前記一般式(1)で表される化合物が下記一般式(6)で表される化合物であることを特徴とする前記1に記載の感光性平版印刷版材料。
【0023】
【化6】

【0024】
〔R1は置換基を有してもよいアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基を表す。R4〜R7は、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシル基、ジアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基を表す。〕
7.前記感光層が、前記重合性モノマーとして、分子内にヒドロキシル基を有する重合性化合物を含有することを特徴とする前記1〜6のいずれか一項に記載の感光性平版印刷版材料。
【0025】
8.前記感光層が、前記高分子結合材として、N−ビニルピロリドンのホモポリマー又は共重合体を含有することを特徴とする前記1〜7のいずれか一項に記載の感光性平版印刷版材料。
【0026】
9.前記1〜8のいずれか一項に記載の感光性平版印刷材料にレーザー光源により画像情報を露光・記録した後、版面の温度が80℃〜160℃になるように加熱する工程を経て、水溶性樹脂及び界面活性剤を含有し温度25℃でのpHが3.0〜9.0である水溶液により未露光部を除去することを特徴とする平版印刷版の作製方法。
【0027】
10.版面の温度が80℃〜160℃になるように加熱する工程の後、水溶性樹脂及び界面活性剤を含有し温度25℃でのpHが3.0〜9.0である水溶液により未露光部を除去する工程の前に、あらかじめ水洗によって酸素遮断層と感光層の一部を除去する工程を有することを特徴とする前記9に記載の平版印刷版の作製方法。
【発明の効果】
【0028】
本発明の上記手段により、高感度で、且つ低pHでの現像処理によっても、非画像部に汚れの生じない感光性平版印刷版材料を提供すること及びそれを用いた平版印刷版の作製方法を提供することができる。
【0029】
より詳しくは、請求項1〜6に記載の発明により、高感度で、且つ低pHでの現像処理によっても、非画像部に汚れの生じない感光性平版印刷版材料を提供することが出来る。更に、請求項7及び8に記載の発明により感光性平版印刷版材料自体の側面から低pHでの現像処理適性を一層高めることが出来る。更にまた、請求項9及び10に記載の発明によって、平版印刷版の作製工程の側面から、一層の高感度化及び現像処理適性の向上、即ち、非画像部の汚れの低減を達成することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の感光性平版印刷版材料は、支持体上に、分光増感剤、重合開始剤、共開始剤、重合性モノマー、及び高分子結合材を含有する感光層を有し、更にその上にポリビニルアルコールを含有する酸素遮断層を有する感光性平版印刷版材料であって、該感光層が、重合開始剤としてヘキサアリールビスイミダゾール化合物を含有し、共開始剤として前記一般式(1)で表される化合物を含有し、かつ、平版印刷版の作製の際、350nm〜450nmの範囲内に発光波長を持つレーザー光源により画像情報を露光・記録した後の未露光部が、水溶性樹脂及び界面活性剤を含有し温度25℃でのpHが3.0〜9.0である水溶液により除去され得ることを特徴とする。本発明に係る平版印刷版の作製方法は、当該感光性平版印刷版材料の技術的特徴を活かし、且つ上記課題の解決を一層高レベルにおいて達成するために適した方法であることを特徴とする。
【0031】
なお、レーザー光源により画像情報を露光・記録した後の「未露光部」とは、感光層の全体うちレーザー光が実質的に到達せず光化学的乃至物理化学的な変化が生じていない部分、即ち、いわゆる「非画像部」をいう。
【0032】
以下、本発明とその構成要素等について詳細な説明をする。
【0033】
(共開始剤:一般式(1)で表される化合物)
本発明の感光性平版印刷版材料は、感光層に、共開始剤として、一般式(1)で表される化合物を含有することを特徴とする。
【0034】
ここで、「共開始剤」とは、後述する重合開始剤の反応を契機として進行する重合反応を促進する機能を有する化合物をいう。
【0035】
本発明に係る共開始剤としての一般式(1)で表される化合物は、より具体的には、一般式(2)〜(6)で表される化合物であることが好ましい。
【0036】
一般式(1)〜(6)において、Xは酸素原子、−NR1−、またはセレンを表し、YはN=C−X部分と共に5員ヘテロ環を形成する原子団を表し、Yはさらに置換基を有してもよい。
【0037】
1〜R3は置換基を有してもよいアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基を表す。
【0038】
4〜R7は、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシル基、ジアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基を表す。
【0039】
上記の置換基を有していてもよいアルキル基は特に限定は無いが、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の直鎖、分岐、環状アルキル基と、これらに任意の置換基を有するものが例として挙げられる。これらアルキル基に置換可能な置換基としては特に限定は無いが、アルキル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、ハロゲン、アリール基、アラルキル基等が例として挙げられる。
【0040】
好ましい例としては、メチル基、エチル基、n−ブチル基、t−ブチル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、ベンジル基、クロロメチル基等が挙げられる。
【0041】
上記の置換基を有していてもよいアリール基は、フェニル基、ナフチル基とこれらに任意の置換基を有するものが例として挙げられる。これらアリール基に置換可能な置換基としては特に限定は無いが、アルキル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、ハロゲン、アリール基、アラルキル基等が例として挙げられる。
好ましい例としては、フェニル基、トリル基、メトキシフェニル基、クロロフェニル基、t−ブチルフェニル基、ジアルキルアミノフェニル基等が挙げられる。
【0042】
以下、上記一般式(1)〜(6)で表される化合物の具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
【化7】

【0044】
【化8】

【0045】
【化9】

【0046】
【化10】

【0047】
【化11】

【0048】
これらの一般式(1)〜(6)で表される化合物の使用量は感光層の全固形分の質量に対し、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.1〜15質量%である。さらに好ましくは1.0〜10質量%である。
【0049】
なお、本発明においては、本発明に係る技術分野において従来公知の各種共開始剤、例えば、特開平8−254821号及び特開2005−062482号公報に開示されている共開始剤を併用することも出来る。
【0050】
(未露光部を除去するための水溶液)
本発明の感光性平版印刷版材料は、平版印刷版の作製の際、350nmから450nmの範囲に発光波長を持つレーザー光源により画像情報を露光・記録した後の未露光部(非画像部)が、水溶性樹脂及び界面活性剤を含有し温度25℃でのpHが3.0〜9.0の範囲にある水溶液で除去され得ることを特徴とする。
【0051】
本発明に係る上記水溶性樹脂としては、アラビアガム、繊維素誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース等)及びその変性体、ポリビニルアルコール及びその誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド及びその共重合体、ビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル/無水マレイン酸共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。これらの水溶性樹脂の含有量は、組成物中に0.1〜50質量%、より好ましくは0.5〜3.0質量%が適当である。
【0052】
また、本発明に係る上記界面活性剤としてはアニオン界面活性剤又はノニオン界面活性剤が挙げられる。例えば、アニオン型界面活性剤としては、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホコハク酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、ポリオキシエチレンアリールエーテルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンナフチルエーテルスルホン酸塩、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム類、N−アルキルスルホコハク酸モノアミドニナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硝酸化ヒマシ油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硝酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩類、スチレン−無水マレイン酸共重合物の部分ケン化物類、オレフィン−無水マレイン酸共重合物の部分ケン化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類等が挙げられる。これらの中でもジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類及びアルキルナフタレンスルホン酸塩類が特に好ましく用いられる。
【0053】
又、ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンアリールエーテル類、ポリオキシエチレンナフチルエーテル、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド等が挙げられる。その中でもポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリエキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー類等が好ましく用いられる。又、弗素系、シリコン系のアニオン、ノニオン界面活性剤も同様に使用することができる。
【0054】
また、好ましい界面活性剤の例として、特開2004−167903号、特開2004−230650号、特開2005−43393号公報に記載の平版印刷版用版面保護剤に添加する界面活性剤が挙げられる。
【0055】
これら界面活性剤は2種以上併用することもできる。例えば互いに異なる2種以上を併用することもできる。例えば互いに異なる2種以上のアニオン界面活性剤の併用やアニオン界面活性剤とノニオン界面活性剤の併用が好ましい。上記界面活性剤の使用量は特に限定する必要はないが、好ましくは後処理液の0.01〜20質量%である。
【0056】
本発明に係る水溶液のpHは、3.0から9.0の範囲で用いることが出来る。酸性領域pH3〜6の範囲で使用する場合には水溶液中に鉱酸、有機酸又は無機塩等を添加して調節する。その添加量は0.01〜2質量%が好ましい。例えば鉱酸としては硝酸、硫酸、リン酸及びメタリン酸等が挙げられる。
【0057】
又、有機酸としては、クエン酸、酢酸、蓚酸、マロン酸、p−トルエンスルホン酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、レブリン酸、フィチン酸及び有機ホスホン酸等が挙げられる。
【0058】
更に無機塩としては、硝酸マグネシウム、第1リン酸ナトリウム、第2リン酸ナトリウム、硫酸ニッケル、ヘキサメタン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム等が挙げられる。鉱酸、有機酸又は無機塩等の少なくとも1種もしくは2種以上を併用してもよい。
塩基性領域pH8〜9で用いる場合には、水溶性有機塩基、無機塩基を添加して該pHに調節することが出来る。好ましいのは水溶性有機塩基で、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン等が挙げられる。
【0059】
また本発明に係る水溶液には、防腐剤、消泡剤等を添加することができる。
【0060】
例えば防腐剤としてはフェノール又はその誘導体、o−フェニルフェノール、p−クロロメタクレゾール、ヒドロキシ安息香酸アルキルエステル、ホルマリン、イミダゾール誘導体、デヒドロ酢酸ナトリウム、4−イソチアゾリン−3−オン誘導体、ベンゾイソチアゾリン−3−オン、ベンズトリアゾール誘導体、アミジングアニジン誘導体、四級アンモニウム塩類、ピリジン、キノリン、グアニジン等の誘導体、ダイアジン、トリアゾール誘導体、オキサゾール、オキサジン誘導体等が挙げられる。好ましい添加量は、細菌、カビ、酵母等に対して、安定に効力を発揮する量であって、細菌、カビ、酵母の種類によっても異なるが、使用時の版面保護剤に対して0.01〜4質量%の範囲が好ましく、又種々のカビ、殺菌に対して効力のある様に2種以上の防腐剤を併用することが好ましい。又、消泡剤としてはシリコン消泡剤が好ましい。その中で乳化分散型及び可溶化等が何れも使用できる。好ましくは0.01〜1.0質量%の範囲が最適である。
【0061】
更にキレート化合物を添加してもよい。好ましいキレート化合物としては、例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ジエチレントリアミンペンタ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、そのナトリウム塩;エチレンジアミンジコハク酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩:ニトリロトリ酢酸、そのナトリウム塩;1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、そのナトリウム塩等の様な有機ホスホン酸類或いはホスホノアルカントリカルボン酸類を挙げることが出来る。
【0062】
上記キレート剤のナトリウム塩、カリウム塩の代わりに有機アミンの塩も有効である。これらキレート剤はガム液組成中に安定に存在し、印刷性を阻害しないものが選ばれる。添加量としては0.001〜1.0質量%が適当である。
【0063】
上記成分の他、必要により感脂化剤も添加することができる。例えばテレピン油、キシレン、トルエン、ローヘプタン、ソルベントナフサ、ケロシン、ミネラルスピリット、沸点が約120℃〜約250℃の石油留分等の炭化水素類、例えばジブチルフタレート、ジヘブチルフタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、ジノニルフタレート、ジデシルフタレート、ジラウリルフタレート、ブチルベンジルフタレート等のフタル酸ジエステル剤、例えばジオクチルアジペート、ブチルグリコールアジペート、ジオクチルアゼレート、ジブチルセバケート、ジ(2−エチルヘキシル)セバケート、ジオクチルセバケート等の脂肪族二塩基酸エステル類、例えばエポキシ化大豆油等のエポキシ化トリグリセリド類、例えばトリクレジルフォスフェート、トリオクチルフォスフェート、トリスクロルエチルフォスフェート等のリン酸エステル類、例えば安息香酸ベンジル等の安息香酸エステル類等の凝固点が15℃以下で、1気圧下での沸点が300℃以上の可塑剤が含まれる。
【0064】
更にカプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ヘラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸、イソ吉草酸等の飽和脂肪酸とアクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、ニルカ酸、ブテシジン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、プロピオール酸、ステアロール酸、イワシ酸、タリリン酸、リカン酸等の不飽和脂肪酸も挙げられる。より好ましくは50℃において液体である脂肪酸であり、更に好ましくは炭素数が5〜25であり、最も好ましくは炭素数が8〜21である。これらの感脂化剤は1種もしくは2種以上併用することもできる。使用量として好ましい範囲は0.01〜10質量%、より好ましい範囲は0.05〜5質量%である。
【0065】
なお、本発明の感光性平版印刷版材料は、平版印刷版の作製の際、350nmから450nmの範囲内に発光波長を持つレーザー光源により画像情報を露光・記録した後の未露光部が、水溶性樹脂及び界面活性剤を含有し温度25℃でのpHが3.0〜9.0である水溶液により除去され得ることを特徴とするが、未露光部分を除去できるようにするためには種々の手段が採り得る。
【0066】
例えば、本発明においては、感光性平版印刷版材料の感光層に含有させる重合性モノマーの種類や含有量の適切条件の選択によって未露光部分の除去を可能とすることが好ましい態様の一つである。この態様の、例としては、感光層に含有させる重合性モノマーとして、少なくとも分子内にヒドロキシル基を有する重合性化合物を選ぶこと、高分子結合材として、少なくともN−ビニルピロリドンのホモポリマー又は共重合体を選ぶことが、本発明に係る課題解決の観点から好ましい。
【0067】
また、未露光部分を除去できるようにするためには他の手段としては、本発明の感光性平版印刷材料にレーザー光源により画像情報を露光・記録した後、版面の温度が80℃〜160℃になるように加熱する工程を経て、当該水溶液により未露光部を除去する方法、
版面の温度が80℃〜160℃になるように加熱する工程の後、当該水溶液により未露光部を除去する工程の前に、あらかじめ水洗によって酸素遮断層と感光層の一部を除去する工程を有する方法が、本発明に係る課題解決の観点から好ましい。
【0068】
(重合開始剤)
本発明に係る重合開始剤は、画像露光により、重合可能なエチレン性二重結合含有化合物の重合を開始し得るものであり、本発明では、感光層が、重合開始剤としてヘキサアリールビスイミダゾール化合物を含有することを特徴とする。
【0069】
本発明において用いられるヘキサアリールビイミダゾール(HABI、トリアリール−イミダゾールの二量体)化合物類の製造方法はDE1,470,154に記載されており、そして光重合可能な組成物中でのそれらの使用はEP24,629、EP107,792、US4,410,621、EP215,453およびDE3,211,312に記述されている。
【0070】
好ましい誘導体は例えば、2,4,5,2′,4′,5′−ヘキサフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(2−ブロモフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4′,5′−テトラキス(3−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2′−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4′,5′−テトラキス(3,4,5−トリメトキシフェニル)−ビイミダゾール、2,5,2′,5′−テトラキス(2−クロロフェニル)−4,4′−ビス(3,4−ジメトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2′−ビス(2,6−ジクロロフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(2−ニトロフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ジ−o−トリル−4,5,4′,5′−テトラフェニルビイミダゾール、2,2′−ビス(2−エトキシフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニルビイミダゾールおよび2,2′−ビス(2,6−ジフルオロフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニルビイミダゾールである。
【0071】
本発明においては、重合開始剤として、ヘキサアリールビイミダゾールに加えて他種の重合開始剤を併用することも出来る。例えばチタノセン化合物、モノアルキルトリアリールボレート化合物、鉄アレーン錯体化合物、ポリハロゲン化合物が好ましく用いられる。
【0072】
チタノセン化合物としては、特開昭63−41483、特開平2−291に記載される化合物等が挙げられるが、更に好ましい具体例としては、ビス(シクロペンタジエニル)−Ti−ジ−クロライド、ビス(シクロペンタジエニル)−Ti−ビス−フェニル、ビス(シクロペンタジエニル)−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル、ビス(シクロペンタジエニル)−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル、ビス(シクロペンタジエニル)−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニル、ビス(シクロペンタジエニル)−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニル、ビス(シクロペンタジエニル)−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニル、ビス(メチルシクロペンタジエニル)−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル、ビス(メチルシクロペンタジエニル)−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニル、ビス(メチルシクロペンタジエニル)−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニル(IRUGACURE727L:チバスペシャリティーケミカルズ社製)、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピリ−1−イル)フェニル)チタニウム(IRUGACURE784:チバスペシャリティーケミカルズ社製)、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,4,6−トリフルオロ−3−(ピリ−1−イル)フェニル)チタニウムビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,4,6−トリフルオロ−3−(2−5−ジメチルピリ−1−イル)フェニル)チタニウム等が挙げられる。
【0073】
モノアルキルトリアリールボレート化合物としては、特開昭62−150242、特開昭62−143044に記載される化合物等挙げられるが、更に好ましい具体例としては、テトラ−n−ブチルアンモニウム・n−ブチル−トリナフタレン−1−イル−ボレート、テトラ−n−ブチルアンモニウム・n−ブチル−トリフェニル−ボレート、テトラ−n−ブチルアンモニウム・n−ブチル−トリ−(4−tert−ブチルフェニル)−ボレート、テトラ−n−ブチルアンモニウム・n−ヘキシル−トリ−(3−クロロ−4−メチルフェニル)−ボレート、テトラ−n−ブチルアンモニウム・n−ヘキシル−トリ−(3−フルオロフェニル)−ボレート等が挙げられる。
【0074】
鉄アレーン錯体化合物としては、特開昭59−219307に記載される化合物等挙げられるが、更に好ましい具体例としては、η−ベンゼン−(η−シクロペンタジエニル)鉄ヘキサフルオロホスフェート、η−クメン−(η−シクロペンタジエニル)鉄ヘキサフルオロホスフェート、η−フルオレン−(η−シクロペンタジエニル)鉄ヘキサフルオロホスフェート、η−ナフタレン−(η−シクロペンタジエニル)鉄ヘキサフルオロホスフェート、η−キシレン−(η−シクロペンタジエニル)鉄ヘキサフルオロホスフェート、η−ベンゼン−(η−シクロペンタジエニル)鉄テトラフルオロボレート等が挙げられる。
【0075】
ポリハロゲン化合物としては、トリハロゲンメチル基、ジハロゲンメチル基又はジハロゲンメチレン基を有する化合物が好ましく用いられ、特に下記一般式(PIH1)で表されるハロゲン化合物及び上記基がオキサジアゾール環に置換した化合物が好ましく用いられる。
【0076】
この中でもさらに、下記一般式(PIH2)で表されるハロゲン化合物が特に好ましく用いられる。
【0077】
一般式(PIH1) R1−CY2−(C=O)−R2
式中、R1は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アシル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、イミノスルホニル基またはシアノ基を表す。R2は一価の置換基を表す。R1とR2が結合して環を形成してもかまわない。Y2はハロゲン原子を表す。
【0078】
一般式(PIH2) CY3−(C=O)−X−R3
式中、R3は、一価の置換基を表す。Xは、−O−、−NR4−を表す。R4は、水素原子、アルキル基を表す。R3とR4が結合して環を形成してもかまわない。Y3はハロゲン原子を表す。これらの中でも特にポリハロゲンアセチルアミド基を有するものが好ましく用いられる。
【0079】
又、ポリハロゲンメチル基がオキサジアゾール環に置換した化合物も好ましく用いられる。さらに、特開平5−34904号公報、同−45875号公報、同8−240909号公報に記載のオキサジアゾール化合物も好ましく用いられる。
【0080】
ビイミダゾール化合物は、ビイミダゾールの誘導体であり、例えば特開2003−295426号公報に記載される化合物等が挙げられる。
【0081】
その他に任意の重合開始剤の併用が可能である。例えばJ.コーサー(J.Kosar)著「ライト・センシテイブ・システムズ」第5章に記載されるようなカルボニル化合物、有機硫黄化合物、過硫化物、レドックス系化合物、アゾ並びにジアゾ化合物、ハロゲン化合物、光還元性色素などが挙げられる。更に具体的な化合物は英国特許1,459,563号に開示されている。
【0082】
即ち、併用が可能な重合開始剤としては、次のようなものを使用することができる。
【0083】
ベンゾインメチルエーテル、ベンゾイン−i−プロピルエーテル、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン等のベンゾイン誘導体;ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4′−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体;2−クロロチオキサントン、2−i−プロピルチオキサントン等のチオキサントン誘導体;2−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン等のアントラキノン誘導体;N−メチルアクリドン、N−ブチルアクリドン等のアクリドン誘導体;α,α−ジエトキシアセトフェノン、ベンジル、フルオレノン、キサントン、ウラニル化合物の他、特公昭59−1281号、同61−9621号ならびに特開昭60−60104号記載のトリアジン誘導体;特開昭59−1504号、同61−243807号記載の有機過酸化物;特公昭43−23684号、同44−6413号、同44−6413号、同47−1604号ならびに米国特許3,567,453号記載のジアゾニウム化合物;米国特許2,848,328号、同2,852,379号ならびに同2,940,853号記載の有機アジド化合物;特公昭36−22062b号、同37−13109号、同38−18015号ならびに同45−9610号記載のo−キノンジアジド類;特公昭55−39162号、特開昭59−14023号ならびに「マクロモレキュルス(Macromolecules)」10巻,1307頁(1977年)記載の各種オニウム化合物;特開昭59−142205号記載のアゾ化合物;特開平1−54440号、ヨーロッパ特許109,851号、同126,712号ならびに「ジャーナル・オブ・イメージング・サイエンス(J.Imag.Sci.)」30巻,174頁(1986年)記載の金属アレン錯体;特願平4−56831号及び同4−89535号記載の(オキソ)スルホニウム有機硼素錯体;「コーディネーション・ケミストリー・レビュー(Coordination Chemistry Review)」84巻,85〜277頁(1988年)ならびに特開平2−182701号記載のルテニウム等の遷移金属を含有する遷移金属錯体;特開平3−209477号記載の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;四臭化炭素、特開昭59−107344号記載の有機ハロゲン化合物、等。
【0084】
本発明に係る重合開始剤の含有量(重合開始剤の総量)は重合可能なエチレン性不飽和結合含有化合物に対して、0.1質量%〜20質量%が好ましく0.5質量%〜15質量%が特に好ましい。
【0085】
(重合性モノマー)
重合性モノマーとは、画像露光による重合開始剤の反応の生成物を契機として重合し得る化合物(単量体)である。本発明に係る重合性モノマーとしては、本発明に係る重合開始剤から生成するラジカル種等との反応を契機として重合反応が開始し得る広範囲の化合物が使用できる。
【0086】
本発明に係る重合性モノマーとして、好ましく用いられるのは、エチレン性不飽和結合含有化合物であって、重合可能な化合物であり、一般的なラジカル重合性のモノマー類、紫外線硬化樹脂に一般的に用いられる分子内に付加重合可能なエチレン性二重結合を複数有する多官能モノマー類や、多官能オリゴマー類である。
【0087】
本発明に係る重合性モノマーに限定は無いが、好ましいものとして、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、グリセロールアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ノニルフェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルオキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルオキシヘキサノリドアクリレート、1,3−ジオキサンアルコールのε−カプロラクトン付加物のアクリレート、1,3−ジオキソランアクリレート等の単官能アクリル酸エステル類、或いはこれらのアクリレートをメタクリレート、イタコネート、クロトネート、マレエートに代えたメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸エステル、例えば、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングルコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ハイドロキノンジアクリレート、レゾルシンジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのジアクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートのジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物のジアクリレート、2−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−5−ヒドロキシメチル−5−エチル−1,3−ジオキサンジアクリレート、トリシクロデカンジメチロールアクリレート、トリシクロデカンジメチロールアクリレートのε−カプロラクトン付加物、1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテルのジアクリレート等の2官能アクリル酸エステル類、或いはこれらのアクリレートをメタクリレート、イタコネート、クロトネート、マレエートに代えたメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸エステル、例えばトリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートのε−カプロラクトン付加物、ピロガロールトリアクリレート、プロピオン酸・ジペンタエリスリトールトリアクリレート、プロピオン酸・ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ヒドロキシピバリルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリアクリレート等の多官能アクリル酸エステル酸、或いはこれらのアクリレートをメタクリレート、イタコネート、クロトネート、マレエートに代えたメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸エステル等を挙げることができる。
【0088】
また、プレポリマーも上記同様に使用することができる。プレポリマーとしては、後述する様な化合物等を挙げることができ、また、適当な分子量のオリゴマーにアクリル酸、又はメタクリル酸を導入し、光重合性を付与したプレポリマーも好適に使用できる。これらプレポリマーは、1種又は2種以上を併用してもよいし、上述のモノマー及び/又はオリゴマーと混合して用いてもよい。
【0089】
プレポリマーとしては、例えばアジピン酸、トリメリット酸、マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、ハイミック酸、マロン酸、こはく酸、グルタール酸、イタコン酸、ピロメリット酸、フマル酸、グルタール酸、ピメリン酸、セバシン酸、ドデカン酸、テトラヒドロフタル酸等の多塩基酸と、エチレングリコール、プロピレングルコール、ジエチレングリコール、プロピレンオキサイド、1,4−ブタンジオール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、1,6−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール等の多価のアルコールの結合で得られるポリエステルに(メタ)アクリル酸を導入したポリエステルアクリレート類、例えば、ビスフェノールA・エピクロルヒドリン・(メタ)アクリル酸、フェノールノボラック・エピクロルヒドリン・(メタ)アクリル酸のようにエポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を導入したエポキシアクリレート類、例えば、エチレングリコール・アジピン酸・トリレンジイソシアネート・2−ヒドロキシエチルアクリレート、ポリエチレングリコール・トリレンジイソシアネート・2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルフタリルメタクリレート・キシレンジイソシアネート、1,2−ポリブタジエングリコール・トリレンジイソシアネート・2−ヒドロキシエチルアクリレート、トリメチロールプロパン・プロピレングリコール・トリレンジイソシアネート・2−ヒドロキシエチルアクリレートのように、ウレタン樹脂に(メタ)アクリル酸を導入したウレタンアクリレート、例えば、ポリシロキサンアクリレート、ポリシロキサン・ジイソシアネート・2−ヒドロキシエチルアクリレート等のシリコーン樹脂アクリレート類、その他、油変性アルキッド樹脂に(メタ)アクリロイル基を導入したアルキッド変性アクリレート類、スピラン樹脂アクリレート類等のプレポリマーが挙げられる。
【0090】
本発明に係る感光層には、ホスファゼンモノマー、トリエチレングリコール、イソシアヌール酸EO(エチレンオキシド)変性ジアクリレート、イソシアヌール酸EO変性トリアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、トリメチロールプロパンアクリル酸安息香酸エステル、アルキレングリコールタイプアクリル酸変性、ウレタン変性アクリレート等の単量体及び該単量体から形成される構成単位を有する付加重合性のオリゴマー及びプレポリマーを含有することができる。
【0091】
更に、本発明に併用可能なエチレン性単量体として、少なくとも一つの(メタ)アクリロイル基を含有するリン酸エステル化合物が挙げられる。該化合物は、リン酸の水酸基の少なくとも一部がエステル化された化合物であり、しかも、(メタ)アクリロイル基を有する限り特に限定はされない。
【0092】
その他に、特開昭58−212994号公報、同61−6649号公報、同62−46688号公報、同62−48589号公報、同62−173295号公報、同62−187092号公報、同63−67189号公報、特開平1−244891号公報等に記載の化合物などを挙げることができ、更に「11290の化学商品」化学工業日報社、p.286〜p.294に記載の化合物、「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」高分子刊行会、p.11〜65に記載の化合物なども本発明においては好適に用いることができる。これらの中で、分子内に2以上のアクリル基又はメタクリル基を有する化合物が本発明においては好ましく、更に分子量が10,000以下、より好ましくは5,000以下のものが好ましい。
【0093】
また、本発明に係る感光層には、三級アミンモノマーである、分子内に三級アミノ基を含有する付加重合可能なエチレン性二重結合含有化合物を使用することが好ましい。構造上の限定は特に無いが、水酸基を有する三級アミン化合物を、グリシジルメタクリレート、メタクリル酸クロリド、アクリル酸クロリド等で変性したものが好ましく用いられる。具体的には、特開平1−165613号公報、特開平1−203413号公報、特開平1−197213号公報に記載の重合可能な化合物が好ましく用いられる。
【0094】
さらに本発明では、三級アミンモノマーである、分子内に三級アミノ基を含有する多価アルコール、ジイソシアネート化合物、および分子内にヒドロキシル基と付加重合可能なエチレン性二重結合を含有する化合物の反応生成物を使用することが好ましい。
【0095】
ここでいう、分子内に三級アミノ基を含有する多価アルコールとしては、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、N−tert.−ブチルジエタノールアミン、N,N−ジ(ヒドロキシエチル)アニリン、N,N,N′,N′−テトラ−2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、p−トリルジエタノールアミン、N,N,N′,N′−テトラ−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)アニリン、アリルジエタノールアミン、3−(ジメチルアミノ)−1,2−プロパンジオール、3−ジエチルアミノ−1,2−プロパンジオール、N,N−ジ(n−プロピル)アミノ−2,3−プロパンジオール、N,N−ジ(iso−プロピル)アミノ−2,3−プロパンジオール、3−(N−メチル−N−ベンジルアミノ)−1,2−プロパンジオール等が挙げられるが、これに限定されない。
【0096】
ジイソシアネート化合物としては、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサン−1,6−ジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、オクタン−1,8−ジイソシアネート、1,3−ジイソシアナートメチル−シクロヘキサノン、2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,2−フェニレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネート、トリレン−2,5−ジイソシアネート、トリレン−2,6−ジイソシアネート、1,3−ジ(イソシアナートメチル)ベンゼン、1,3−ビス(1−イソシアナート−1−メチルエチル)ベンゼン等が挙げられるが、これに限定されない。
【0097】
分子内にヒドロキシル基と付加重合可能なエチレン性二重結合とを含有する化合物としては例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(MH−1)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(MH−2)、4−ヒドロキシブチルアクリレート(MH−4)、2−ヒドロキシプロピレン−1,3−ジメタクリレート(MH−7)、2−ヒドロキシプロピレン−1−メタクリレート−3−アクリレート(MH−8)等が挙げられる。
【0098】
以下に、分子内に三級アミノ基を含有する多価アルコール、ジイソシアネート化合物、および分子内にヒドロキシル基と付加重合可能なエチレン性二重結合を含有する化合物の具体例を、下記の化合物を原料とする反応生成物として示す。これらの反応は、通常のジオール化合物、ジイソシアネート化合物、ヒドロキシル基含有アクリレート化合物の反応で、ウレタンアクリレートを合成する方法と同様に行うことが出来る。
【0099】
M−1:トリエタノールアミン(1モル)、ヘキサン−1,6−ジイソシアネート(3モル)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(3モル)の反応生成物
M−2:トリエタノールアミン(1モル)、イソホロンジイソシアネート(3モル)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(3モル)の反応生成物
M−3:N−n−ブチルジエタノールアミン(1モル)、1,3−ビス(1−イソシアナート−1−メチルエチル)ベンゼン(2モル)、2−ヒドロキシプロピレン−1−メタクリレート−3−アクリレート(2モル)の反応生成物
M−4:N−n−ブチルジエタノールアミン(1モル)、1,3−ジ(イソシアナートメチル)ベンゼン(2モル)、2−ヒドロキシプロピレン−1−メタクリレート−3−アクリレート(2モル)の反応生成物
M−5:N−メチルジエタノールアミン(1モル)、トリレン−2,4−ジイソシアネート(2モル)、2−ヒドロキシプロピレン−1,3−ジメタクリレート(2モル)の反応生成物
この他にも、特開平1−105238号公報、特開平2−127404号公報に記載の、アクリレート又はアルキルアクリレートが用いることが出来る。
【0100】
本発明においては、上記重合性モノマーのうち、特に分子内にヒドロキシル基を有する重合性化合物を使用することが、本発明に係る前記課題解決のために好ましい。
【0101】
本発明において用いることができる分子内にヒドロキシル基を有する重合性化合物としては、下記一般式(PMOH)で表される化合物が好ましい。
【0102】
【化12】

【0103】
〔式中、R1は水素原子またはメチル基を表し、X1は、−CH2−CR23−CH2−、−(CH2−CH(OR4)−CH2−O)m−CH2−CH(OR5)CH2−、−(CH(R6)CH2O)n−CH(R6)CH2−、−CO−X2−CO−又は−X2−を表す。R2、R3は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、置換アルキル基を表す。R4、R5、R6は、それぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表す。X2は、アリーレン基、アルキレン基、シクロアルキレン基を表す。m及びnは1〜20の整数を表す。〕
一般式(PMOH)におけるR2〜R6の好ましいアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等が挙げられる。これらの内、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。特に好ましくは、1〜5のアルキル基が挙げられるが、R2及びR3については、特に炭素数が1〜4のアルキル基が好ましく、R4〜R6ついては、特にメチル基が好ましい。
【0104】
置換アルキルの置換基としては、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、アルコキシル基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、等が挙げられる。
【0105】
これら置換基の中でも好ましくは、アリール基、アミノ基、アミド基、アルコキシカルボニル基及びヒドロキシル基である。
【0106】
2のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、プロピレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、2,2,4−トリメチルヘキサメチレン基等が挙げられる。
【0107】
シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0108】
アリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられる。
【0109】
以下に、本発明に係る一般式(PMOH)で表される化合物の具体的な例を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0110】
【化13】

【0111】
【化14】

【0112】
【化15】

【0113】
(分光増感剤)
本発明に係る感光層は、分光増感剤として、吸収極大波長が350〜450nmにある分光増感剤を含有することを要する。
【0114】
当該分光増感剤としては、例えばシアニン、メロシアニン、ポルフィリン、スピロ化合物、フェロセン、フルオレン、フルギド、イミダゾール、ペリレン、フェナジン、フェノチアジン、アクリジン、アクリドン、アゾ化合物、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、トリフェニルアミン、クマリン誘導体、キナクリドン、インジゴ、スチリル、ピリリウム化合物、ピロメテン化合物、ピラゾロトリアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合部、バルビツール酸誘導体、チオバルビツール酸誘導体、ケトアルコールボレート錯体、等が挙げられる。
【0115】
上記のクマリン誘導体としては、例えば、特開平8−129258号公報のB−1からB−22のクマリン誘導体、特開2003−21901号公報のD−1からD−32のクマリン誘導体、特開2002−363206号公報の1から21のクマリン誘導体、特開2002−363207号公報の1から40のクマリン誘導体、特開2002−363208号公報の1から34のクマリン誘導体、特開2002−363209号公報の1から56のクマリン誘導体等が挙げられ、好ましく使用可能である。
【0116】
また、他の好ましく使用できる色素としては、例えば特開2000−98605号、特開2000−147763号、特開2000−206690号、特開2000−258910号、特開2000−309724号、特開2001−042524号、特開2002−202598号、特開2000−221790号に記載の分光増感剤等が挙げられる。
【0117】
(高分子結合材)
本発明に係る高分子結合材は、感光層に含まれる成分を支持体上に担持し得るものであり、高分子結合材としては、アクリル系重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、その他の天然樹脂等が使用出来る。また、これらを2種以上併用してもかまわない。
【0118】
好ましくはアクリル系のモノマーの共重合によって得られるビニル系共重合が好ましい。さらに、高分子結合材の共重合組成として、(a)カルボキシル基含有モノマー、(b)メタクリル酸アルキルエステル、またはアクリル酸アルキルエステルの共重合体であることが好ましい。
【0119】
カルボキシル基含有モノマーの具体例としては、α,β−不飽和カルボン酸類、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。その他、フタル酸と2−ヒドロキシメタクリレートのハーフエステル等のカルボン酸も好ましい。
【0120】
メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘプチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ウンデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ウンデシル、アクリル酸ドデシル等の無置換アルキルエステルの他、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル等の環状アルキルエステルや、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、グリシジルアクリレート等の置換アルキルエステルも挙げられる。
【0121】
さらに、高分子結合材は、共重合モノマーとして、下記(1)〜(14)に記載のモノマー等を用いる事が出来る。
【0122】
1)芳香族水酸基を有するモノマー、例えばo−(又はp−,m−)ヒドロキシスチレン、o−(又はp−,m−)ヒドロキシフェニルアクリレート等。
【0123】
2)脂肪族水酸基を有するモノマー、例えば2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、5−ヒドロキシペンチルアクリレート、5−ヒドロキシペンチルメタクリレート、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート、6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド、ヒドロキシエチルビニルエーテル等。
【0124】
3)アミノスルホニル基を有するモノマー、例えばm−(又はp−)アミノスルホニルフェニルメタクリレート、m−(又はp−)アミノスルホニルフェニルアクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド等。
【0125】
4)スルホンアミド基を有するモノマー、例えばN−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミド、N−(p−トルエンスルホニル)メタクリルアミド等。
【0126】
5)アクリルアミド又はメタクリルアミド類、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−(4−ニトロフェニル)アクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド等。
【0127】
6)弗化アルキル基を含有するモノマー、例えばトリフルオロエチルアクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、ヘキサフルオロプロピルメタクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート、N−ブチル−N−(2−アクリロキシエチル)ヘプタデカフルオロオクチルスルホンアミド等。
【0128】
7)ビニルエーテル類、例えば、エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等。
【0129】
8)ビニルエステル類、例えばビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等。
【0130】
9)スチレン類、例えばスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等。
【0131】
10)ビニルケトン類、例えばメチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等。
【0132】
11)オレフィン類、例えばエチレン、プロピレン、i−ブチレン、ブタジエン、イソプレン等。
【0133】
12)N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、4−ビニルピリジン等。
【0134】
13)シアノ基を有するモノマー、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、2−ペンテンニトリル、2−メチル−3−ブテンニトリル、2−シアノエチルアクリレート、o−(又はm−,p−)シアノスチレン等。
【0135】
14)アミノ基を有するモノマー、例えばN,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリブタジエンウレタンアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−i−プロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド等。
【0136】
さらにこれらのモノマーと共重合し得る他のモノマーを共重合してもよい。
【0137】
さらに、高分子結合材は、側鎖にカルボキシル基および重合性二重結合を有するビニル系重合体であることが好ましい。例えば、上記ビニル系共重合体の分子内に存在するカルボキシル基に、分子内に(メタ)アクリロイル基とエポキシ基を有する化合物を付加反応させる事によって得られる、不飽和結合含有ビニル系共重合体も高分子結合材として好ましい。
【0138】
分子内に不飽和結合とエポキシ基を共に含有する化合物としては、具体的にはグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、特開平11−271969号に記載のあるエポキシ基含有不飽和化合物等が挙げられる。また、上記ビニル系重合体の分子内に存在する水酸基に、分子内に(メタ)アクリロイル基とイソシアネート基を有する化合物を付加反応させる事によって得られる、不飽和結合含有ビニル系共重合体も高分子結合材として好ましい。分子内に不飽和結合とイソシアネート基を共に有する化合物としては、ビニルイソシアネート、(メタ)アクリルイソシアネート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、m−またはp−イソプロペニル−α,α′−ジメチルベンジルイソシアネートが好ましく、(メタ)アクリルイソシアネート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等が挙げられる。
【0139】
側鎖にカルボキシル基および重合性二重結合を有するビニル系重合体は、全高分子結合剤において、50〜100質量%であることが好ましく、100質量%であることがより好ましい。
【0140】
なお、本発明の感光性平版印刷版材料においては、上記高分子結合材のうち、特に、N−ビニルピロリドンのホモポリマー又は共重合体を感光層に含有させることが、本発明に係る課題解決のために好ましい。
【0141】
N−ビニルピロリドンの共重合体を用いる場合、共重合させるモノマーには特に限定は無いが、酢酸ビニルを好ましく用いることができる。
【0142】
感光層中における高分子結合材の含有量は、10〜90質量%の範囲が好ましく、15〜70質量%の範囲が更に好ましく、20〜50質量%の範囲で使用することが感度の面から特に好ましい。
【0143】
(各種添加剤)
本発明に係る感光層には、上記各種成分の他に、感光性平版印刷版材料の製造中あるいは保存中において重合可能なエチレン性二重結合単量体の不要な重合を阻止するために、重合防止剤を添加することが望ましい。
【0144】
適当な重合防止剤としてはハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン第一セリウム塩、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0145】
重合防止剤の添加量は、感光層の全固形分の質量に対して、約0.01%〜約5%が好ましい。また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加したり、塗布後の乾燥の過程で感光性層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、全組成物の約0.5%〜約10%が好ましい。
【0146】
また、着色剤も使用することができ、着色剤としては、市販のものを含め従来公知のものが好適に使用できる。例えば、改訂新版「顔料便覧」,日本顔料技術協会編(誠文堂新光社)、カラーインデックス便覧等に述べられているものが挙げられる。
【0147】
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、赤色顔料、褐色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料等が挙げられる。具体的には、無機顔料(二酸化チタン、カーボンブラック、グラファイト、酸化亜鉛、プルシアンブルー、硫化カドミウム、酸化鉄、ならびに鉛、亜鉛、バリウム及びカルシウムのクロム酸塩等)及び有機顔料(アゾ系、チオインジゴ系、アントラキノン系、アントアンスロン系、トリフェンジオキサジン系の顔料、バット染料顔料、フタロシアニン顔料及びその誘導体、キナクリドン顔料等)が挙げられる。
【0148】
これらの中でも、使用する露光レーザーに対応した分光増感色素の吸収波長域に実質的に吸収を持たない顔料を選択して使用することが好ましく、この場合、使用するレーザー波長での積分球を用いた顔料の反射吸収が0.05以下であることが好ましい。又、顔料の添加量としては、上記組成物の固形分に対し0.1〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.2〜5質量%である。
【0149】
上記の感光波長領域での顔料吸収及び現像後の可視画性の観点から、紫色顔料、青色顔料を用いるのが好ましい。このようなものとしては、例えばコバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、フォナトーンブルー6G、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルーフアーストスカイブルー、インダンスレンブルー、インジコ、ジオキサンバイオレット、イソビオランスロンバイオレット、インダンスロンブルー、インダンスロンBC等を挙げることができる。これらの中で、より好ましくはフタロシアニンブルー、ジオキサンバイオレットである。
【0150】
また、感光層は、本発明の性能を損わない範囲で、界面活性剤を塗布性改良剤として含有することが出来る。その中でも好ましいのはフッ素系界面活性剤である。
【0151】
また、硬化皮膜の物性を改良するために、無機充填剤やジオクチルフタレート、ジメチルフタレート、トリクレジルホスフェート等の可塑剤等の添加剤を加えてもよい。これらの添加量は全固形分の10%以下が好ましい。
【0152】
また、本発明に係る感光層の感光層塗布液を調製する際に使用する溶剤としては、例えば、アルコール:多価アルコールの誘導体類では、sec−ブタノール、イソブタノール、n−ヘキサノール、ベンジルアルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、又エーテル類:プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、又ケトン類、アルデヒド類:ジアセトンアルコール、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、又エステル類:乳酸エチル、乳酸ブチル、シュウ酸ジエチル、安息香酸メチル等が好ましく挙げられる。
【0153】
以上感光層塗布液について説明したが、本発明に係わる感光層は、これを用いて支持体上に塗設することにより構成される。
【0154】
本発明に係る感光層は支持体上の付き量としては、0.1g/m2〜10g/m2が好ましく特に0.5g/m2〜5g/m2が好ましい。
【0155】
(酸素遮断層)
本発明に係る感光層の上側には、酸素遮断及び必要に応じその他の保護的機能を有する酸素遮断層を設けることを特徴とする。
【0156】
この酸素遮断層は、後述の現像液(一般にはアルカリ水溶液)への溶解性が高いことが好ましく、そのために、本発明においては、ポリビニルアルコールを含有することを特徴とする。ポリビニルアルコールは酸素の透過を抑制する効果を有す。なお隣接する感光層との接着性を確保する効果を有するポリビニルピロリドンを併用することが好ましい。
【0157】
上記2種のポリマーの他に、必要に応じ、ポリサッカライド、ポリエチレングリコール、ゼラチン、膠、カゼイン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチル澱粉、アラビアゴム、サクローズオクタアセテート、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアミン、ポリエチレンオキシド、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸、水溶性ポリアミド等の水溶性ポリマーを併用することもできる。
【0158】
本発明の感光性平版印刷版に酸素遮断層を設ける際、感光層と酸素遮断層間の剥離力が35mN/mm以上であることが好ましく、より好ましくは50mN/mm以上、更に好ましくは75mN/mm以上である。好ましい酸素遮断層の組成としては特開平10−10742号公報に記載されるものが挙げられる。
【0159】
本発明における剥離力は、酸素遮断層上に十分大きい粘着力を有する所定幅の粘着テープを貼り、それを感光性平版印刷版材料の平面に対して90度の角度で酸素遮断層と共に剥離する時の力を測定することにより求めることができる。
【0160】
酸素遮断層には、更に必要に応じて界面活性剤、マット剤等を含有することができる。上記酸素遮断層組成物を適当な溶剤に溶解し感光層上に塗布・乾燥して酸素遮断層を形成する。塗布溶剤の主成分は水、あるいはメタノール、エタノール、i−プロパノール等のアルコール類であることが特に好ましい。
【0161】
酸素遮断層を設ける場合その厚みは0.1〜5.0μmが好ましく、特に好ましくは0.5〜3.0μmである。
【0162】
(支持体)
本発明に係る支持体は感光層を担持可能な板状体またはフィルム体であり、感光層が設けられる側に親水性表面を有するのが好ましい。
【0163】
本発明に係る支持体として、例えばアルミニウム、ステンレス、クロム、ニッケル等の金属板、また、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のプラスチックフィルムに前述の金属薄膜をラミネートまたは蒸着したもの等が挙げられる。
【0164】
また、ポリエステルフィルム、塩化ビニルフィルム、ナイロンフィルム等の表面に親水化処理を施したもの等が使用できるが、アルミニウム支持体が好ましく使用される。
【0165】
アルミニウム支持体の場合、純アルミニウムまたはアルミニウム合金が用いられる。
【0166】
支持体のアルミニウム合金としては、種々のものが使用でき、例えば、珪素、銅、マンガン、マグネシウム、クロム、亜鉛、鉛、ビスマス、ニッケル、チタン、ナトリウム、鉄等の金属とアルミニウムの合金が用いられる。又アルミニウム支持体は、保水性付与のため、表面を粗面化したものが用いられる。
【0167】
アルミニウム支持体を用いる場合、粗面化(砂目立て処理)するに先立って表面の圧延油を除去するために脱脂処理を施すことが好ましい。脱脂処理としては、トリクレン、シンナー等の溶剤を用いる脱脂処理、ケシロン、トリエタノール等のエマルジョンを用いたエマルジョン脱脂処理等が用いられる。又、脱脂処理には、苛性ソーダ等のアルカリの水溶液を用いることもできる。脱脂処理に苛性ソーダ等のアルカリ水溶液を用いた場合、上記脱脂処理のみでは除去できない汚れや酸化皮膜も除去することができる。脱脂処理に苛性ソーダ等のアルカリ水溶液を用いた場合、支持体の表面にはスマットが生成するので、この場合には、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸、或いはそれらの混酸に浸漬しデスマット処理を施すことが好ましい。粗面化の方法としては、例えば、機械的方法、電解によりエッチングする方法が挙げられる。
【0168】
用いられる機械的粗面化法は特に限定されるものではないが、ブラシ研磨法、ホーニング研磨法が好ましい。
【0169】
電気化学的粗面化法も特に限定されるものではないが、酸性電解液中で電気化学的に粗面化を行う方法が好ましい。
【0170】
上記の電気化学的粗面化法で粗面化した後、表面のアルミニウム屑等を取り除くため、酸又はアルカリの水溶液に浸漬することが好ましい。酸としては、例えば、硫酸、過硫酸、弗酸、燐酸、硝酸、塩酸等が用いられ、塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が用いられる。これらの中でもアルカリの水溶液を用いるのが好ましい。
【0171】
表面のアルミニウムの溶解量としては、0.5〜5g/m2が好ましい。又、アルカリの水溶液で浸漬処理を行った後、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸或いはそれらの混酸に浸漬し中和処理を施すことが好ましい。
【0172】
機械的粗面化処理法、電気化学的粗面化法はそれぞれ単独で用いて粗面化してもよいし、又、機械的粗面化処理法に次いで電気化学的粗面化法を行って粗面化してもよい。
【0173】
粗面化処理の次には、陽極酸化処理を行うことができる。本発明において用いることができる陽極酸化処理の方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。陽極酸化処理を行うことにより、支持体上には酸化皮膜が形成される。
【0174】
陽極酸化処理された支持体は、必要に応じ封孔処理を施してもよい。これら封孔処理は、熱水処理、沸騰水処理、水蒸気処理、珪酸ソーダ処理、重クロム酸塩水溶液処理、亜硝酸塩処理、酢酸アンモニウム処理等公知の方法を用いて行うことができる。
【0175】
更に、これらの処理を行った後に、水溶性の樹脂、例えばポリビニルホスホン酸、スルホン酸基を側鎖に有する重合体および共重合体、ポリアクリル酸、水溶性金属塩(例えばホウ酸亜鉛)もしくは、黄色染料、アミン塩等を下塗りしたものも好適である。更に、特開平5−304358号公報に開示されているようなラジカルによって付加反応を起し得る官能基を共有結合させたゾル−ゲル処理基板も好適に用いられる。
【0176】
(塗布)
上記の感光層塗布液を従来公知の方法で支持体上に塗布し、乾燥し、感光性平版印刷版材料を作製することが出来る。
【0177】
塗布液の塗布方法としては、例えばエアドクタコータ法、ブレードコータ法、ワイヤバー法、ナイフコータ法、ディップコータ法、リバースロールコータ法、グラビヤコータ法、キャストコーティング法、カーテンコータ法及び押し出しコータ法等を挙げることが出来る。
【0178】
感光層の乾燥温度は60〜160℃の範囲が好ましく、より好ましくは80〜140℃、特に好ましくは、90〜120℃の範囲で乾燥することが好ましい。
【0179】
(画像露光)
本発明の感光性平版印刷版材料に画像記録する光源としては、発光波長が350〜450nmのレーザ光の使用が好ましい。
【0180】
本発明の感光性平版印刷版を露光する光源としては、例えば、He−Cdレーザ(441nm)、固体レーザとしてCr:LiSAFとSHG結晶の組合わせ(430nm)、半導体レーザ系として、KNbO3、リング共振器(430nm)、AlGaInN(350nm〜450nm)、AlGaInN半導体レーザ(市販InGaN系半導体レーザ400〜410nm)等を挙げることができる。
【0181】
レーザ露光の場合には、光をビーム状に絞り画像データに応じた走査露光が可能なので、マスク材料を使用せず、直接書込みを行うのに適している。
【0182】
又、レーザを光源として用いる場合には、露光面積を微小サイズに絞ることが容易であり、高解像度の画像形成が可能となる。
【0183】
レーザの走査方法としては、円筒外面走査、円筒内面走査、平面走査などがある。円筒外面走査では、記録材料を外面に巻き付けたドラムを回転させながらレーザ露光を行い、ドラムの回転を主走査としレーザ光の移動を副走査とする。円筒内面走査では、ドラムの内面に記録材料を固定し、レーザビームを内側から照射し、光学系の一部又は全部を回転させることにより円周方向に主走査を行い、光学系の一部又は全部をドラムの軸に平行に直線移動させることにより軸方向に副走査を行う。平面走査では、ポリゴンミラーやガルバノミラーとfθレンズ等を組み合わせてレーザ光の主走査を行い、記録媒体の移動により副走査を行う。円筒外面走査及び円筒内面走査の方が光学系の精度を高め易く、高密度記録には適している。
【0184】
尚、本発明においては、10mJ/cm2以上の版面エネルギー(版材上でのエネルギー)で画像露光されることが好ましく、その上限は500mJ/cm2である。より好ましくは10〜300mJ/cm2である。このエネルギー測定には例えばOphirOptronics社製のレーザパワーメーターPDGDO−3Wを用いることができる。
【0185】
(自動現像機)
本発明の感光性平版印刷版材料の未露光部を水溶性樹脂及び界面活性剤を含有し温度25℃でのpHが3.0〜9.0である水溶液により除去するのには一般感光性平版印刷版材料の現像処理に用いる自動現像機を使用するのが有利である。自動現像機としては、露光後の感光性平版印刷版材料を挿入した後、未露光部を除去する前に加熱処理を行う熱処理装置を備えていることが好ましい。熱処理装置としては、セラミックヒーター等の輻射熱により加熱処理を行うもの、またはセラミックヒーター等により加熱した温風によって加熱処理を行うもので、版面の温度が80℃〜160℃の範囲で任意の温度になるように調整出来るものが好ましい。また、加熱処理の後に酸素遮断層と感光層の一部を除去するための水洗部を有することができる。水洗部は、版面に洗浄水を供給するシャワーノズルを備えているもの、洗浄水を張った水洗槽に版を浸漬させるもの等が挙げられる。版面をローラー状のブラシにより擦る機構が付与されているものも好ましい。
【0186】
未露光部を水溶性樹脂及び界面活性剤を含有し温度25℃でのpHが3.0〜9.0である水溶液により除去する工程には、通常の一般感光性平版印刷版材料の現像処理に用いる自動現像機の現像浴を用いることが出来る。該現像浴は該水溶液を一定温度に調整できる機構を有していることが好ましい。温度調節は20〜35℃の範囲で任意に設定できることが好ましい。また、自動的に該水溶液を必要量補充する機構が付与されており、好ましくは一定量を超える該水溶液は、排出する機構が付与されており、好ましくは、通版を検知する機構が付与されており、好ましくは通版の検知を基に版の処理面積を推定する機構が付与されており、好ましくは通版の検知及び/又は処理面積の推定を基に補充しようとする補充液の補充量及び/又は補充タイミングを制御する機構が付与されており、好ましくは該水溶液の温度を制御する機構が付与されており、好ましくは該水溶液のpH及び/又は電導度を検知する機構が付与されており、好ましくは該水溶液のpH及び/又は電導度を基に補充しようとする補充液及び/又は水の補充量及び/又は補充タイミングを制御する機構が付与されている。
【実施例】
【0187】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。尚、実施例における「部」は、特に断りない限り「質量部」を表す。
【0188】
[支持体の作製]
厚さ0.30mm、幅1030mmのJIS A 1050アルミニウム板を用いて以下のように連続的に処理を行った。
【0189】
(a)アルミニウム板を苛性ソーダ濃度2.6質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%、温度70℃でスプレーによるエッチング処理を行い、アルミニウム板を0.3g/m2溶解した。その後スプレーによる水洗を行った。
【0190】
(b)温度30℃の硝酸濃度1質量%水溶液(アルミニウムイオン0.5質量%含む)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後スプレーで水洗した。
【0191】
(c)60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。この時の電解液は、塩酸1.1質量%、アルミニウムイオン0.5質量%、酢酸0.5質量%含む。温度21℃であった。交流電源は電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが2msecの正弦波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。電流密度は実効値で、50A/dm2で、通電量は900C/dm2であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0192】
(d)温度60℃の燐酸濃度20質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)で、10秒間デスマット処理を行い、その後スプレーによる水洗を行った。
【0193】
(e)既存の二段給電電解処理法の陽極酸化装置(第一および第二電解部長各6m、第一給電部長3m、第二給電部長3m、第一及び第二給電電極長各2.4m)を使って電解部の硫酸濃度170g/リットル(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、温度38℃で陽極酸化処理を行った。その後スプレーによる水洗を行った。
【0194】
この時、陽極酸化装置においては、電源からの電流は、第一給電部に設けられた第一給電電極に流れ、電解液を介して板状アルミニウムに流れ、第一電解部で板状アルミニウムの表面に酸化皮膜を生成させ、第一給電部に設けられた電解電極を通り、電源に戻る。
【0195】
一方、電源からの電流は、第二給電部に設けられた第二給電電極に流れ、同様に電解液を介して板状アルミニウムに流れ、第二電解部で板状アルミニウムの表面に酸化皮膜を生成させるが、電源から第一給電部に給電される電気量と電源から第二給電部に給電される電気量は同じであり、第二給電部における酸化皮膜面での給電電流密度は、約25A/dm2であった。第二給電部では、1.35g/m2の酸化皮膜面から給電することになった。最終的な酸化皮膜量は2.7g/m2であった。更に、スプレー水洗後、0.4質量%のポリビニルホスホン酸溶液中に30秒浸漬し、親水化処理した。温度は85℃であった。その後スプレー水洗し、赤外線ヒーターで乾燥した。
この時、表面の中心線平均粗さ(Ra)は0.65μmであった。
【0196】
(感光性平版印刷版の作製)
上記支持体上に、下記組成の光重合性感光層塗工液を乾燥時1.5g/m2になるようワイヤーバーで塗布し、95℃で1.5分間乾燥し光重合感光層塗布試料を得た。
【0197】
さらに、光重合感光層塗布試料上に、下記組成の酸素遮断層塗工液を乾燥時2.0g/m2になるようワイヤーバーで塗布し、65℃で3分間乾燥して、感光層上に酸素遮断層を有する感光性平版印刷版試料を作製した。
【0198】
(光重合性感光層塗工液1)
重合性モノマー1 5.0部
重合性モノマー2 25.0部
重合性モノマー3 25.0部
N−カルボキシメチルアクリドン 4.0部
表1記載の重合開始剤 3.0部
表1記載のメルカプト化合物 0.3部
N−ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体 VA64(BASF社製)20.0部
ポリ(N−ビニルピロリドン) ルビテックK30(BASF社製) 20.0部
アセチレン系界面活性剤(サーフィノール465;エアプロダクツ社製) 0.5部
フタロシアニン顔料分散液MHI#454(御国色素製) 3.0部
水 450部
エタノール 450部
【0199】
【化16】

【0200】
(酸素遮断層塗工液)
ポリビニルアルコール(GL−05:日本合成化学社製) 90部
ポリ(N−ビニルピロリドン) ルビテックK30(BASF社製) 5部
ポリエチレンイミン(ルパゾールWF:BASF社製) 5部
界面活性剤(サーフィノール465:日信化学工業社製) 0.5部
水 900部
上記の方法で作製した感光性平版印刷版材料を、黄色安全光の環境下で、405nmの光源を備えたプレートセッターNews(ECRM社製)を使用し、解像度1200dpi(dpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。)、線数100lpi(lpiとは、2.54cm当たりの線数を表す。)で、露光量を変化させて露光を行った。
【0201】
露光後、引き続き赤色安全光の環境下で、感光性平版印刷版材料を105℃で30秒間加熱処理したのち、版面を水道水のシャワーで15秒間洗浄して、酸素遮断層を除去した。この際、感光層の未露光部も一部除去された。その後、下記組成の水溶液(1)に20秒浸漬しながら表面をスポンジでこすり、未露光部を完全に除去し、その後乾燥させて平版印刷版を得た。
【0202】
(水溶液(1))
白色デキストリン 5.0質量%
ヒドロキシプロピルエーテル化デンプン 10.0質量%
アラビアガム 1.0質量%
燐酸第1アンモン 0.1質量%
ジラウリルコハク酸ナトリウム 0.15質量%
ポリオキシエチレンナフチルエーテル 0.5質量%
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンのブロック共重合体(エチレンオキシド比50mol%、分子量5000) 0.3質量%
エチレングリコール 1.0質量%
1,2ベンゾイソチアゾリン−3−オン 0.005質量%
リン酸 (25℃においてpH=3.0となる量を添加)
作製した平版印刷版を、印刷機(三菱重工業(株)製DAIYA1F−1)で、コート紙、印刷インキ(東洋インク(株)製トーヨーキングハイエコーM紅)及び湿し水(東京インク(株)製H液SG−51濃度1.5%)を用いて印刷を行った。
【0203】
(感度)
50枚連続印刷後の印刷物上で、正常な画像部インキ着肉性が得られる露光量を感度として評価した。エネルギー量が少ないほど高感度である。
【0204】
(汚れ)
印刷物上の非画像部の汚れの有無を評価した。
【0205】
上記評価結果を表1に示す。
【0206】
【表1】

【0207】
【化17】

【0208】
実施例4において、光重合性感光層塗工液1の重合性モノマー3を、PMOH−26に変更したものを実施例6とし、比較例において、光重合性感光層塗工液1の重合性モノマー3を、同様にPMOH−26に変更したものを比較例4とし、その他は実施例1、比較例1と同様にして行った。結果を表2に示す。
【0209】
【表2】

【0210】
実施例6、比較例4において、酸素遮断層を除去のための版面の水道水のシャワー洗浄を行わず、また水溶液(1)への浸漬時間を20秒から120秒に変更し、その他は実施例6、比較例4と同様に行って、それぞれ実施例7、比較例5とした。結果を表3に示す。
【0211】
【表3】

【0212】
実施例6、比較例4において、露光後の105℃での熱処理を行わず、その他は実施例6、比較例4と同様に行って、それぞれ実施例8、比較例6とした。結果を表4に示す。
【0213】
【表4】

【0214】
表1〜4に示した結果から明らかなように、本発明に係る実施例は比較例に対して、高感度で、且つ低pHでの現像処理によっても、非画像部に汚れが生じないことを示している。このことにより、本発明により、高感度で、且つ低pHでの現像処理によっても、非画像部に汚れが生じない感光性平版印刷版材料を提供すること及びそれを用いた平版印刷版の作製方法を提供することができることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、分光増感剤、重合開始剤、共開始剤、重合性モノマー、及び高分子結合材を含有する感光層を有し、更にその上にポリビニルアルコールを含有する酸素遮断層を有する感光性平版印刷版材料であって、該感光層が、重合開始剤としてヘキサアリールビスイミダゾール化合物を含有し、共開始剤として下記一般式(1)で表される化合物を含有し、かつ、平版印刷版の作製の際、350nm〜450nmの範囲内に発光波長を持つレーザー光源により画像情報を露光・記録した後の未露光部が、水溶性樹脂及び界面活性剤を含有し温度25℃でのpHが3.0〜9.0である水溶液により除去され得ることを特徴とする感光性平版印刷版材料。
【化1】

〔Xは酸素原子、−NR1−又はセレンを表し、R1は置換基を有してもよいアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基を表し、YはN=C−X部分と共に5員ヘテロ環を形成する原子団を表し、Yは更に置換基を有してもよい。〕
【請求項2】
前記一般式(1)で表される化合物が下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の感光性平版印刷版材料。
【化2】

〔R1は置換基を有してもよいアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基を表し、R2は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基を表す。〕
【請求項3】
前記一般式(1)で表される化合物が下記一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の感光性平版印刷版材料。
【化3】

〔R2は水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基を表す。〕
【請求項4】
前記一般式(1)で表される化合物が下記一般式(4)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の感光性平版印刷版材料。
【化4】

〔R1は置換基を有してもよいアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基を表す。〕
【請求項5】
前記一般式(1)で表される化合物が下記一般式(5)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の感光性平版印刷版材料。
【化5】

〔R2、R3は、それぞれ独立に水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基を表す。〕
【請求項6】
前記一般式(1)で表される化合物が下記一般式(6)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の感光性平版印刷版材料。
【化6】

〔R1は置換基を有してもよいアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基を表す。R4〜R7は、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシル基、ジアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基を表す。〕
【請求項7】
前記感光層が、前記重合性モノマーとして、分子内にヒドロキシル基を有する重合性化合物を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の感光性平版印刷版材料。
【請求項8】
前記感光層が、前記高分子結合材として、N−ビニルピロリドンのホモポリマー又は共重合体を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の感光性平版印刷版材料。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の感光性平版印刷材料にレーザー光源により画像情報を露光・記録した後、版面の温度が80℃〜160℃になるように加熱する工程を経て、水溶性樹脂及び界面活性剤を含有し温度25℃でのpHが3.0〜9.0である水溶液により未露光部を除去することを特徴とする平版印刷版の作製方法。
【請求項10】
版面の温度が80℃〜160℃になるように加熱する工程の後、水溶性樹脂及び界面活性剤を含有し温度25℃でのpHが3.0〜9.0である水溶液により未露光部を除去する工程の前に、あらかじめ水洗によって酸素遮断層と感光層の一部を除去する工程を有することを特徴とする請求項9に記載の平版印刷版の作製方法。

【公開番号】特開2008−33087(P2008−33087A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−207629(P2006−207629)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】