説明

感光性平版印刷版

【課題】 感度、耐刷性および保存安定性が十分な感光性平版印刷版を提供する。
【解決手段】 親水性表面を有する支持体上に、i)線状高分子重合体バインダー、ii)付加重合可能なエチレン性不飽和結合とウレタン基を有する化合物及び溶剤を含有する光重合層塗布液を塗布し、感光性平版印刷版の温度が90〜140℃で10秒間以上保たれる条件で加熱乾燥することにより得られたことを特徴とし、好ましくは、該加熱乾燥後、感光性平版印刷版の温度を50℃以下に冷却したあと、引き続きその光重合層上に、水溶性の酸素遮断性物質を含有する保護層を塗布し、加熱乾燥することにより得られる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、感光性平版印刷版に関し、特に感度、耐刷性および保存安定性に優れる感光性平版印刷版に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、感光性平版印刷版としては親水性表面を有する支持体上に親油性の感光性樹脂を用いたPS版が広く用いられ、通常は、リスフィルムを介してマスク露光(面露光)後、非画像部を溶解除去することにより所望の印刷版を得ていた。近年、画像情報をコンピュータを用いて電子的に処理、蓄積、出力する、ディジタル化技術が普及してきている。そして、そのようなディジタル化技術に対応した新しい画像出力方式が種々実用されるようになってきた。その結果レーザ光のような指向性の高い光をディジタル化された画像情報に従って走査し、リスフィルムを介することなく、直接印刷版を製造するコンピュータ トゥ プレート(CTP)技術が普及してきており、これに適応した感光性平版印刷版を得ることは重要な技術課題となっている。
【0003】このような走査露光可能な感光性平版印刷版を得る方式の一つとして、従来より、親水性支持体上に設ける感光性樹脂層として非常に感光スピードに優れた光重合性組成物の層を設け、さらに酸素遮断性の保護層を設けた構成が多く提案され、一部上市されている。使用される光重合性組成物は基本的にはエチレン性不飽和化合物(以下、付加重合性化合物ともいう)、光重合開始剤、バインダー樹脂からなる。画像形成は、光重合開始剤が光吸収し、活性ラジカルを生成、エチレン性不飽和化合物の付加重合を引き起こし、感光層の不溶化を生じるものである。しかしながら、上記のような感光性平版印刷版から製版された平版印刷版は、実用上十分に満足できる性能が得られないことがあった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、感度、耐刷性および保存安定性が十分な感光性平版印刷版を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、ウレタン基を有する付加重合性化合物を含有する光重合層を90〜140℃で加熱乾燥した感光性平版印刷版が、感度、耐刷性および保存安定性に優れていることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0006】すなわち、本発明は以下の通りの感光性平版印刷版である。
(1)親水性表面を有する支持体上に、i)線状高分子重合体バインダー、ii)付加重合可能なエチレン性不飽和結合とウレタン基を有する化合物及び溶剤を含有する光重合層塗布液を塗布し、感光性平版印刷版の温度が90〜140℃で10秒間以上保たれる条件で加熱乾燥することにより得られたことを特徴とする感光性平版印刷版。
(2)前記加熱乾燥後、感光性平版印刷版の温度を50℃以下に冷却したあと、引き続きその光重合層上に、水溶性の酸素遮断性物質を含有する保護層を塗布し、加熱乾燥することにより得られたことを特徴とする前記(1)の感光性平版印刷版。
【0007】本発明の感光性平版印刷版が、感度、耐刷性および保存安定性に優れたものとなる理由は明確ではないが、該光重合層塗布液を塗布後、感光性平版印刷版の温度が90〜140℃で10秒間以上保たれる条件で加熱乾燥することにより、該付加重合性化合物のウレタン基同士間で水素結合などの何らかの配位状態の変化が形成され、これによって画像部樹脂層の硬化が促進され、感度および耐刷性が向上するものと考えられる。
【0008】また、上記の光重合層を設けた後、その上に水溶性の酸素遮断性物質を含有する保護層(以下、酸素遮断性層ともいう)を塗布する場合には、感光性平版印刷版の温度を50℃以下に冷却した後に行うことにより、塗布ムラのない状態で形成することができる。感光性平版印刷版の温度が50℃を超えた状態で、前記酸素遮断性層した場合には塗布ムラが生じ、酸素遮断性が悪くなる。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の感光性平版印刷版について詳細に説明する。先ず、本発明の感光性平版印刷版の製造において、特に重要な構成である光重合層の加熱乾燥条件について説明する。本発明の感光性平版印刷版の製造において、後述の支持体上に後述の光重合層塗布液を塗布した後の加熱乾燥は、感光性平版印刷版の温度が90〜140℃で10秒間以上保たれる条件で行うものである。
【0010】前記加熱乾燥における感光性平版印刷版の温度としては、90〜140℃であれば特に限定されないが、好ましくは100〜135℃、より好ましくは105〜130℃である。前記感光性平版印刷版の温度は、実質上、支持体の温度を測定することによって特定することができる。支持体温度の測定方法としては、特に限定されないが、i)支持体裏面に、直接、熱電対温度センサーを貼り付けて測定する方法、ii)非接触放射温度計で支持体裏面より測定する方法、iii)最高到達温度によって変色するサーモテープを支持体裏面に貼り付けて乾燥後、該サーモテープの変色を確認する方法、等が挙げられる。
【0011】上記i)の測定方法は、少量サンプル作成実験等、感光性平版印刷版をバッチ的に作成する場合には有効であるが、工業的な大量生産が行われる場合には、長尺の支持体ウエッブが生産ライン上で絶えず移動しているため、適用が困難である。上記のような工業的な大量生産が行われる場合には、ii)およびiii)の方法が有効である。なお、iii)の方法はあくまで最高到達温度が示されるのみであるが、生産ライン上の過熱乾燥工程におけるある程度の目安にはなる。また、最も正確な温度測定方法はii)の方法である。
【0012】上記ii)の測定方法において用いられる非接触放射温度計としては、特に限定されないが、堀場製作所(株)製のCT−3100、RT50、RT50−LX、RT−60−1、RT−60−2、IT−340S、IT−540N、IT−540S、IT−540E、530 01、530 03、530 04、等が挙げられる。
【0013】本発明の感光性平版印刷版の製造における光重合層の加熱乾燥において、感光性平版印刷版の温度を所定の温度範囲に保持する時間としては、10秒以上であれば上限は特に限定されない。ただし、工業的な生産ラインで大量生産が行われる場合には、可能な限り短時間であることが好ましい。具体的には3分間以内が好ましくは、より好ましくは2分間以内であり、さらに好ましくは1分間以内である。以上のことから、上記の加熱乾燥時における感光性平版印刷版の実際の温度とその保持時間は、生産設備等によって適宜選択される。
【0014】また、上記の加熱乾燥をオーブン等の中で行う場合には、オーブン等の加熱乾燥手段の設定温度を感光性平版印刷版の該所定温度範囲よりも高めにする必要がある。
【0015】次に、本発明の感光性平版印刷版の製造において用いられる光重合層塗布液について説明する。本発明の感光性平版印刷版の製造において用いられる光重合層塗布液は、i)線状高分子重合体バインダーの少くとも1種、ii)付加重合可能なエチレン性不飽和結合とウレタン基を有する化合物の少くとも1種、光重合開始剤及び溶剤を含有するものである。
【0016】付加重合可能なエチレン性不飽和結合とウレタン基を有する化合物先ず始めに、上記光重合層塗布液に含有される成分の中でも特に重要な付加重合可能なエチレン性不飽和結合とウレタン基を有する付加重合性化合物について説明する上記光重合層塗布液に含有されるウレタン基を有する付加重合性化合物としては、特に限定されないが、分子内に2個以上のエチレン性不飽和結合と2個以上のウレタン基とを有するものが好ましい。このような、ウレタン基を有する付加重合性化合物の例としては、特開昭57−128716号公報や、特開平6−35189号公報に記載のものが挙げられる。
【0017】特開昭57−128716号公報に記載のウレタン基を有する付加重合性化合物とは、分子内に少なくとも2個のウレタン基を有する多価ヒドロキシ化合物のアクリレート又はメタクリレートであり、そのエステルがグリセロールジメタクリレートもしくはグリセロールジアクリレートとOH基2〜6個を有するポリヒドロキシ化合物とジイソシアネートとの反応により得た多価イソシアネートとの反応生成物又はグリセロールジメタクリレートもしくはグリセロールジアクリレートとジイソシアネートとの反応生成物であるものである。多価ヒドロキシ化合物は、好ましくは2又は3個の、特に好ましくは2個のOH基を有する。以下の式:
【0018】
【化1】


【0019】〔式中R′はO,B,CR2またはSO2であり、Qはフェニレン基又は基:Cq2q及びCq2q-1の1個であり、Rは水素原子又はメチル基であり、ZはO又はNRであり、nは0〜20の整数であり、mは1〜40の整数で有り、pは2〜20の整数であり、qは2〜10の整数であり、rは4〜20の整数であり、sは2〜10の整数であり、vは0〜4の整数であり、p,q及びsは少なくともvより2大きく、rは少なくともvよりも4大きい〕の1個を有する1種の化合物であることが好ましい。
【0020】一般に、ジイソシアネートは、式:OCN−X−NCO(式中Xは炭化水素基であり、好ましくは炭素原子2〜20を有する飽和脂肪族又は脂環式炭化水素基である)の化合物である。通例、グリセロールジメタクリレートの反応生成物はグリセロールアクリレートの反応生成物よりも好ましい。多価ヒドロキシ化合物とジイソシアネートとの反応で得られる多価イソシアネートは、1分子当り平均2〜40、好ましくは2〜20のメタン基を有する。このようなウレタン基を有する付加重合性化合物の製造のために使用される多価ヒドロキシ化合物のうちで、ポリエーテル多価ヒドロキシ化合物等に飽和された代表的なもの即ち式:HO−〔Cp2p-v(OH)v−O−〕mHの化合物が有利である。pに関する値は2〜10、特に2〜4が好ましい。不飽和多価ヒドロキシ化合物を使用する場合は、これらは、多価ヒドロキシ化合物(ポリオールともいう)1単位当り4〜10個の炭素原子を有するのが好ましい。
【0021】ある種の目的、例えばある種の機械特性及び高い感度を得るためには、ポリエステルポリオールを使用するのも好ましい。これらは公知方法でジカルボン酸単位及びポリオール単位から、又は、ヒドロキシカルボン酸単位から合成できる。この点に関して、q=3〜6を有するヒドロキシカルボン酸が好ましい。ヒドロキシカルボン酸からのポリエステルジオールは、通例、ラクトンから、H−活性化合物HO−Cs2s−Z−Hの分子を用いる開環により製造される。この式中で、sは2〜6の値を有し、Zは酸素であるのが有利である。
【0022】ポリエステルジオール及びポリエーテルジオール中の単位の数は、これら化合物の性質及び分子の残りの単位、後述のバインダー成分の性質及び特別の適用目的に依り決まる。分子内に比較的長いポリオキシエチレン鎖を有する付加重合性化合物は、非常に親水性であり、水性現像剤で非常に迅速に現像される。低い親水性が低いバインダーを用いても、このようなポリエーテル基を有する付加重合性化合物は一般に非常に好適である。これと反対に、高級アルキレン基を有するポリオキシアルキレン基又はポリエステル基を含有する付加重合性化合物の場合は、現像剤に有機溶剤を添加せずに材料を現像すべきなら、より親水性のバインダーの使用が必要である。多くの場合に、m=2〜25、特に3〜15の化合物が好ましい。
【0023】好適なジイソシアネートの例は、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート及びトリレンジイソシアネート又はジフェニルメタンジイソシアネート2モルとポリテトラヒドロフラン1モルとの反応生成物である。
【0024】好適なジオールの例は、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、1,4−ビス−ヒドロキシメチルシクロヘキサン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、分子量200〜約1500を有するポリエチレングリコール及び4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシ−ジフェニル−スルファイド、4,4′−ジヒドロキシ−ジフェニルメタン、4,4′−ジヒドロキシ−ジフェニルプロパン又は4,4′−ジヒドロキシ−ジフェニルスルホンと0〜40モルのアルキレンオキサイド、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリブチレングリコール、チオジエチレングリコール又はジチオトリエチレングリコールとの反応生成物である。
【0025】好適なポリエステル成分の例は、ポリカプロラクトン、ポリブチロラクトン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンアジペート、ポリブチレンアジペート及びポリエチレンブチレンセパセートである。約500〜3000の範囲の分子量を有するポリエステルポリオールは、一般に非常に好適である。
【0026】この有利なジオールとは別に、2〜6個の脂肪性ヒドロキシ基を有する化合物も一般に使用できる。付加重合性化合物の例は、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール及びソルビトールである。好適な多価ヒドロキシ化合物は、ポリエステルポリオール類例えば米国特許第3169945号明細書に記載のラクトンポリエステル類、米国特許第364199号明細書に記載の末端ヒドロキシ基含有ポリエステル縮合ポリマー類、米国特許第3931117号明細書に記載のヒドロキシ基含有ポリエステル類、末端ヒドロキシ基を有するポリエーテル類及びポリエステルのブロックコポリマー類、カプロラクトンポリオール類及びポリシロキサンポリオール類である。
【0027】重合可能なジウレタン又はポリウレタンの製造は、例えば米国特許第3297745号、西ドイツ特許出願公開第2064079号及び同2822190号明細書に記載のそれ自体公知方法で行なう。グリセロールジエステルの製造のために、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレート1モルをまずアクリル酸又はメタクリル酸1モルと反応させる。次いでこの反応生成物1モルをポリイソシアネート1当量と反応させる。この工程において、ポリイソシアネート、好ましくはジイソシアネートは、モノマー性であるか又はモノマー性のジイソシアネート過剰とポリオール成分との反応生成物である。後者の場合、ポリオール成分を予め所望の過剰のジイソシアネートと反応させる。この場合、原則として、ポリマー同族体の混合物が得られる。これから得られるモノマーの分子量の非均一性は、高い粘稠性及び著るしい非晶性の生成物を生じる。
【0028】特開平6−35189号公報に記載のウレタン基を有する付加重合性化合物とは、モノイソシアネートまたはジイソシアネートと多価アルコールの部分エステルの反応生成物が有利に使用される。そのような単量体は、DE-A-20 64 079号、同 23 61 041号および同 28 22 190号各明細書に記載されている。
【0029】特に好ましいのは、少なくともひとつの光酸化性(photooxidizable) 基と少なくともひとつのウレタン基とを、分子中に含む、付加重合性化合物である。適当な光酸化性基は、特に、複素環の構成員となっていてもよいチオ基、ウレイド基、アミノ基、およびエノール基、である。それらの基の例としては、トリエタノールアミノ、トリフェニルアミノ、チオウレア、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、アセチルアセトニル、N-フェニルグリシンおよびアスコルビン酸基である、好ましいものは、第1、第2、特に第3アミノ基を含む付加重合性化合物である。
【0030】光酸化性基を含む化合物の例は、EP-A-287,818号、同 353,389号および同 364,735号各明細書に記載されている。そこに記載されている化合物のなかで好ましいものは、第3アミノ基に加えて、ウレイド基および(または)ウレタン基をも含むものである。下記一般式〔I〕の化合物で、窒素の結合手が、置換または非置換の炭化水素基で飽和されているものは、ウレイド基とみなすべきである。
【0031】
【化2】


【0032】また、本発明の光重合層塗布液に含有されるウレタン基を有する付加重合性化合物としては、上記特開昭57−128716号公報および特開平6−35189号公報に記載のもの以外に、イソシアネート化合物と下記一般式(II)で表されるアルコールとの反応生成物が挙げられる。
【0033】
【化3】


【0034】(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12は各々水素原子、炭素数1〜10のアルキル基またはフェニル基を表し、Yは水素原子又は下記一般式(III)で表される基
【0035】
【化4】


【0036】を表しそのうちの少なくとも一つは水素原子であり、Xはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、−OH又は下記一般式(III)で表される基
【0037】
【化5】


【0038】を表し、全てのX、Yのうち少なくとも一つは前記一般式(III)で表される基であり、n、a、b、c、d、e、fは0または正の数を表す)
【0039】前記イソシアネート化合物の具体例としては、下記のものが例示される。
【0040】
【化6】


【0041】
【化7】


【0042】
【化8】


【0043】
【化9】


【0044】また前記一般式(II)で表されるアルコール具体例としては、下記のものが例示される。
【0045】
【化10】


【0046】上記のイソシアネート化合物と一般式(II)で表されるアルコールとの反応生成物の代表例としては、以下の構造のものである。
【0047】
【化11】


【0048】その他、本発明の光重合層塗布液に含有されるウレタン基を有する付加重合性化合物としては、共栄社化学(株)製のウレタンアクリレートUA−306H、UA−101T、UA−101I、UA−306T、UA−306I等が好適に用いられる。
【0049】線状高分子重合体バインダー次に、本発明において用いられる光重合層塗布液に含有される線状高分子重合体バインダーについて説明する。線状高分子重合体バインダーとしては、光重合可能な付加重合性化合物と相溶性を有している有機高分子重合体である限り、どれを使用してもよい。好ましくは水現像或いは弱アルカリ水現像を可能とする水あるいは弱アルカリ水可溶性又は膨潤性である有機高分子重合体が選択される。有機高分子重合体は、本発明の方法で得られる感光性平版印刷版の光重合層の皮膜形成剤としてだけでなく、水、弱アルカリ水或は有機溶剤現像剤としての用途に応じて選択使用される。例えば、水可溶性有機高分子重合体を用いると水現像が可能になる。この様な有機高分子重合体としては、側鎖にカルボン酸基を有する付加重合体、例えば特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭54−92723号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号に記載されているもの、すなわち、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等がある。
【0050】また、これらのカルボン酸基含有共重合体における、カルボン酸基含有単量体との共重合成分としては、種々の(メタ)アクリル酸のエステル化物、すなわち、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシアクリレート等、また、種々の(メタ)アクリルアミド化合物、すなわち(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、
【0051】
【化12】


【0052】等を挙げることができる。
【0053】また同様に側鎖にカルボン酸基を有する酸性セルロース誘導体がある。この外に水酸基を有する付加重合体に環状酸無水物を付加させたものなどが有用である。特にこれらの中で〔ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/必要に応じてその他の付加重合性ビニルモノマー〕共重合体及び〔アリル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/必要に応じてその他の付加重合性ビニルモノマー〕共重合体が好適である。この他に水溶性有機高分子として、ポリビニルピロリドンやポリエチレンオキサイド等が有用である。また硬化皮膜の強度を上げるためにアルコール可溶性ポリアミドや2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとエピクロロヒドリンのポリエーテル等も有用である。また、ポリウレタン樹脂を挙げることができる。
【0054】この中で特に好ましいのは、(メタ)アクリル酸エステルの共重合体及び、カルボキシル基を0.4meq/g以上含有するポリウレタン樹脂である。
【0055】なお、本発明に用いるバインダーとしては、ポリウレタン樹脂バインダーが、ウレタン結合基を有する前記付加重合性化合物との相互作用が向上すると考えれれるため、好ましい。
【0056】iii)光重合開始剤本発明の感光性平版印刷版の製造において用いられる光重合層塗布液には、本発明の作用効果と直接因果関係はないが、光重合開始剤を必須に含有するものである。本発明において用いられる光重合層塗布液に含有される光重合開始剤としては、使用する光源の波長により、特許、文献等で公知である種々の光重合開始剤、あるいは2種以上の光重合開始剤の併用系(光重合開始系)を適宜選択して使用することができる。なお、本発明においては単独で用いる光重合開始剤、2種以上の光重合開始剤を併用した系を総括して単に光重合開始剤または光開始剤ともいう。例えば400nm付近の光を光源として用いる場合、ベンジル、ベンゾイルエーテル、ミヒラーズケトン、アントラキノン、チオキサントン、アクリジン、フェナジン、ベンゾフェノン等が広く使用されている。
【0057】また、400nm以上の可視光線、Arレーザー、半導体レーザーの第2高調波、SHG−YAGレーザーを光源とする場合にも、種々の光重合開始剤が提案されており、例えば、米国特許第2,850,445号に記載の、ある種の光還元性染料、例えばローズベンガル、エオシン、エリスロシンなど、あるいは、染料と光重合開始剤との組み合わせによる系、例えば、染料とアミンの複合開始系(特公昭44−20189号)、ヘキサアリールビイミダゾールとラジカル発生剤と染料との併用系(特公昭45−37377号)、ヘキサアリールビイミダゾールとp−ジアルキルアミノベンジリデンケトンの系(特公昭47−2528号、特開昭54−155292号)、環状シス−α−ジカルボニル化合物と染料の系(特開昭48−84183号)、環状トリアジンとメロシアニン色素の系(特開昭54−151024号)、3−ケトクマリンと活性剤の系(特開昭52−112681号、特開昭58−15503号)、ビイミダゾール、スチレン誘導体、チオールの系(特開昭59−140203号)、有機過酸化物と色素の系(特開昭59−1504号、特開昭59−140203号、特開昭59−189340号、特開昭62−174203号、特公昭62−1641号、米国特許第4,766,055号)、染料と活性ハロゲン化合物の系(特開昭63−178105号、特開昭63−258903号、特開平2−63054号など)、染料とボレート化合物の系(特開昭62−143044号、特開昭62−150242号、特開昭64−13140号、特開昭64−13141号、特開昭64−13142号、特開昭64−13143号、特開昭64−13144号、特開昭64−17048号、特開平1−229003号、特開平1−298348号、特開平1−138204号など)、ローダニン環を有する色素とラジカル発生剤の系(特開平2−179643号、特開平2−244050号)、チタノセンと3−ケトクマリン色素の系(特開昭63−221110号)、チタノセンとキサンテン色素さらにアミノ基あるいはウレタン基を含む付加重合可能なエチレン性不飽和化合物を組み合わせた系(特開平4−221958号、特開平4−219756号)、チタノセンと特定のメロシアニン色素の系(特開平6−295061号)、チタノセンとベンゾピラン環を有する色素の系(特開平8−334897号)等を挙げることができる。
【0058】好ましい光重合開始剤(系)は、色素として、シアニン系、メロシアニン系、キサンテン系、ケトクマリン系、ベンゾピラン系色素を用い、光重合開始剤としてチタノセン化合物、トリアジン化合物を用いた組合せである。シアニン系色素として好ましくは下記の構造を有するものが挙げられるが、特に限定されない。
【0059】
【化13】


【0060】(式中、Z1およびZ2はベンゾイミダゾールまたはナフトイミダゾール環を形成するのに必要な非金属原子群を表わし、同一でも異なっていてもよい。R24、R25、R26およびR27はそれぞれ置換されていてもよいアルキル基を表わす。X-は対アニオンを表わし、nは0または1である。)
【0061】下の表1にシアニン系色素の具体例を示す。
【0062】
【表1】


【0063】メロシアニン系色素として好ましくは下記の構造を有するものが挙げられるが、特に限定されない。
【0064】
【化14】


【0065】(式中、Z1、Z2はそれぞれシアニン色素で通常用いられる5員環及び/又は6員環の含窒素複素環を形成するに必要な非金属原子群を表わす。R28、R29はそれぞれアルキル基を表わす。Q1とQ2は組み合わせることにより、4−チアゾリジノン環、5−チアゾリジノン環、4−イミダゾリジノン環、4−オキサゾリジノン環、5−オキサゾリジノン環、5−イミダゾリジノン環または4−ジチオラノン環を形成するに必要な原子群を表わす。L1、L2、L3、L4及びL5はそれぞれメチン基を表わす。mは1又は2を表わす。i、hはそれぞれ0又は1を表わす。lは1又は2を表わす。j、kはそれぞれ0、1、2又は3を表わす。X-は、対アニオンを表わす。)
【0066】
【化15】


【0067】(式中R30およびR31は各々独立して水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アルコキシカルボニル基、アリール基、置換アリール基またはアラルキル基を表わす。Aは酸素原子、イオウ原子、セレン原子、テルル原子、アルキルないしはアリール置換された窒素原子、またはジアルキル置換された炭素原子を表わす。Xは含窒素ヘテロ五員環を形成するのに必要な非金属原子群を表わす。Yは置換フェニル基、無置換ないしは置換された多核芳香環、または無置換ないしは置換されたヘテロ芳香環を表わす。Zは水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、置換アミノ基、アシル基、またはアルコキシカルボニル基を表わし、Yと互いに結合して環を形成していてもよい。)
【0068】以下にメロシアニン系色素の具体例を示す。
【0069】
【化16】


【0070】
【化17】


【0071】キサンテン系色素としては、ローダミンB、ローダミン6G、エチルエオシン、アルコール可溶性エオシン、ピロニンY、ピロニンB等を挙げることができる。
【0072】ケトクマリン系色素として好ましくは下記の構造を有するものが挙げられるが、特に限定されない。
【0073】
【化18】


【0074】(式中、R32、R33およびR34はそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、アルキル基又はアルコキシ基を表わし、R34およびR35はそれぞれアルキル基を表わすが、少なくとも一方が炭素数4〜16個のアルキル基を表わし、R37は水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、シアノ基、カルボキシル基、もしくはそれのエステル誘導体またはアミド誘導体の基を表わし;R38は炭素原子の総数が3〜17個の複素環残基−CO−R39を表わし、R33とR34、R35とR36は互いに結合して環を形成してもよい。ここでR39は下に示す基である。)
【0075】
【化19】


【0076】以下にケトクマリン系色素の具体例を示す。
【0077】
【化20】


【0078】ベンゾピラン系色素として好ましくは下記の構造を有するものが挙げられるが、特に限定されない。
【0079】
【化21】


【0080】(式中、R3〜R5はお互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、水酸基、アルコキシ基またはアミノ基を表す。また、R3〜R5はそれらが各々結合できる炭素原子と共に非金属原子から成る環を形成していても良い。R7は、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ芳香族基、シアノ基、アルコキシ基、カルボキシ基またはアルケニル基を表す。R5は、R7で表される基または−Z−R7であり、Zはカルボニル基、スルホニル基、スルフィニル基またはアリーレンジカルボニル基を表す。またR7およびR8は共に非金属原子から成る環を形成しても良い。AはO、S、NHまたは置換基を有する窒素原子を表す。Bは、基
【0081】
【化22】


【0082】であり、G1、G2は同一でも異なっていても良く、水素原子、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、アリールカルボニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基またはフルオロスルホニル基を表す。但しG1とG2は同時に水素原子となることはない。またG1およびG2は炭素原子と共に非金属原子から成る環を形成していても良い。)
【0083】以下にベンゾピラン系色素の具体例を示す。
【0084】
【化23】


【0085】光重合開始剤としてのトリアジン化合物としては、次式の化合物を挙げることができる。
【0086】
【化24】


【0087】(式中、Halはハロゲン原子を表わす。Y2は−C(Hal)3、−NH2、−NHR21、−N(R21)2、−OR21を表わす。ここでR21はアルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基を表わす。またR20は−C(Hal)3、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、置換アルケニル基を表わす。)で表わされる化合物。
【0088】以下にトリアジン化合物の具体例を示す。
【0089】
【化25】


【0090】また、好ましい光重合開始剤としては、チタノセン化合物が挙げられる。チタノセン化合物としては、例えば、特開昭59−152396号、特開昭61−151197号公報に記載されている公知の化合物を適宜に選択して用いることができる。
【0091】更に具体的には、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ジ−クロライド、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル(以下A−1と記す)、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル(以下A−2と記す)、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピリ−1−イル)フェニル)チタニウム(以下A−3と記す)等を挙げることができる。
【0092】本発明で用いられる光重合層塗布液中のこれらの光重合開始剤の含有濃度は通常わずかなものである。また、不適当に多い場合には有効光線の遮断等好ましくない結果を生じる。本発明における光重合開始剤の量は、バインダー成分と付加重合性化合物成分との合計に対して0.01重量%から70重量%の範囲で使用するのが好ましい。より好ましくは、1重量%から50重量%で良好な結果を得る。
【0093】また、光重合開始剤にはアミン化合物、チオール化合物等の助剤を加えてもよく、特に好ましいものは下記一般式で表されるアミン化合物及びアミノ酸類である。
【0094】
【化26】


【0095】(式中、R8〜R18はそれぞれアルキル基を表わす。)
【0096】
【化27】


【0097】(式中、R19〜R22は、アルキル、アルコキシを表し、R21とR22は環を形成してもよく、R23は複素環、アルキルチオを表す。)
【0098】
【化28】


【0099】(式中、R28、R29は同一または異なり、置換基を有していても良く不飽和結合を含んでいても良い炭化水素基、あるいはヘテロ環基を表す。R26、R27は同一または異なり、水素原子、置換基を有していても良く不飽和結合を含んでいても良い炭化水素基、ヘテロ環基、ヒドロキシル基、置換オキシ基、メルカプト基、置換チオ基を表わす。また、R26、R27は互いに結合して環を形成し、−O−、−NR24−、−O−CO−、−NH−CO−、−S−、及び/又は、−SO2−を環の連結主鎖に含んでいても良い炭素数2から8のアルキレン基を表す。R24、R25は水素原子、置換基を有していても良く不飽和結合を含んでいても良い炭化水素基、或いは置換カルボニル基を表す。)
【0100】また、p−ジエチルアミノ安息香酸エチル等のジアルキル安息香酸エステル、4,4′−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン等のビスアミノベンゾフェノン、4,4′−ビス(ジエチルアミノ)ベンジル等のビスアミノベンジル、
【0101】
【化29】


【0102】N−フェニルグリン、N−フェニルグリシンナトリウム塩が挙げられる。
【0103】なお、本発明の感光性平版印刷版の製造においては、光重合層塗布液を塗布した後の加熱乾燥温度が90〜140℃と、従前の製造方法に比べて若干高めであるため、光重合開始剤としても比較的熱安定性に優れたものを用いることが好ましい。
【0104】本発明において用いられる光重合層塗布液に含有される溶剤としては、特に限定されないが、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、エチレンジクロライド、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシプロパノール、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチルなどが挙げられる。これらの溶剤は、単独あるいは混合して使用することができる。
【0105】本発明において用いられる光重合層塗布液には、以上の基本成分の他に光重合層のための組成物の製造中あるいは保存中において前記付加重合性化合物の不要な熱重合を阻止するために少量の熱重合禁止剤を添加することが望ましい。適当な熱重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン第一セリウム塩、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等が挙げられる。熱重合禁止剤の添加量は、本発明の感光性平版印刷版の光重合層組成物の全成分の重量に対して、約0.01%〜約5%が好ましい。また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で光重合層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、本発明の感光性平版印刷版の光重合層組成物の全成分の重量に対して、約0.5%〜約10%が好ましい。
【0106】更に光重合層の着色を目的として、着色剤を添加してもよい。着色剤としては、例えば、フタロシアニン系顔料(C. I. Pigment Blue 15 : 3 、15 : 4、15 :6など)、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料、エチルバイオレット、クリスタルバイオレット、アゾ染料、アントラキノン系染料、シアニン系染料がある。染料および顔料の添加量は、本発明の感光性平版印刷版の光重合層組成物の全成分の重量に対して、約0.5%〜約5%が好ましい。
【0107】加えて、硬化皮膜の物性を改良するために、無機充填剤やジオクチルフタレート、ジメチルフタレート、トリクレジルホスフェート等の可塑剤等の添加剤を加えてもよい。これらの添加量は本発明の感光性平版印刷版の光重合層組成物の全成分の重量に対して10%以下が好ましい。本発明で用いられる光重合層塗布液には、塗布面質を向上するために界面活性剤を添加することができる。
【0108】上記のような光重合層塗布液中の固形分の濃度は、1〜50重量%が適当である。本発明の感光性平版印刷版において光重合層の被覆量は塗布乾燥後の重量で約0.1g/m2〜約10g/m2の範囲が適当である。より好ましくは0.3〜5g/m2であり、更に好ましくは0.5〜3g/m2である。
【0109】本発明の感光性平版印刷版において、上記のような光重合層塗布液を塗布するための支持体としては、寸度的に安定な板状物が用いられる。該寸度的に安定な板状物としては、紙、プラスチック(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなど)がラミネートされた紙、また、例えばアルミニウム(アルミニウム合金も含む。)、亜鉛、銅などのような金属の板、さらに、例えば二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酪酸酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタールなどのようなプラスチックのフィルム、上記の如き金属がラミネートもしくは蒸着された紙もしくはプラスチックフィルムなどが挙げられる。これらの支持体のうち、アルミニウム板は寸度的に著しく安定であり、しかも安価であるので特に好ましい。更に、特公昭48−18327号に記載されているようなポリエチレンテレフタレートフィルム上にアルミニウムシートが結合された複合体シートも好ましい。
【0110】また金属、特にアルミニウムの表面を有する支持体の場合には、砂目立て処理、珪酸ソーダ、弗化ジルコニウム酸カリウム、燐酸塩等の水溶液への浸漬処理、あるいは隔極酸化処理などの表面処理がなされていることが好ましい。さらに、砂目立てしたのちに珪酸ナトリウム水溶液に浸漬処理されたアルミニウム板が好ましく使用できる。特公昭47−5125号に記載されているようにアルミニウム板を陽極酸化処理したのちに、アルカリ金属珪酸塩の水溶液に浸漬処理したものが好適に使用される。上記陽極酸化処理は、例えば、燐酸、クロム酸、硫酸、硼酸等の無機酸、若しくは蓚酸、スルファミン酸等の有機酸またはそれらの塩の水溶液又は非水溶液の単独又は二種以上を組み合わせた電解液中でアルミニウム板を陽極として電流を流すことにより実施される。
【0111】また、米国特許第3,658,662号に記載されているようなシリケート電着も有効である。更に、特公昭46−27481号、特開昭52−58602号、特開昭52−30503号に開示されているような電解グレインを施した支持体に、上記陽極酸化処理および珪酸ソーダ処理を組合せた表面処理をしたものも有用である。また、特開昭56−28893号に開示されているような機械的粗面化、化学的エッチング、電解グレイン、陽極酸化処理、さらに珪酸ソーダ処理を順に行ったものも好適である。
【0112】更に、これらの処理を行った後に、水溶性の樹脂、たとえばポリビニルホスホン酸、スルホン酸基を側鎖に有する重合体および共重合体、ポリアクリル酸、水溶性金属塩(例えば硼酸亜鉛)もしくは、黄色染料、アミン塩等を下塗りしたものも好適である。更に、特開平7−159983号に開示されているようなラジカルによって付加反応を起し得る官能基を共有結合させたゾルーゲル処理基板も好適に用いられる。これらの親水化処理は、支持体の表面を親水性とするために施される以外に、その上に設けられる光重合層の組成物の有害な反応を防ぐため、且つ光重合層の密着性の向上等のために施されるものである。
【0113】支持体上に設けられた光重合層の上には、空気中の酸素による重合禁止作用を防止するため、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、酸性セルロース類などのような酸素遮断性に優れたポリマーよりなる保護層を設けてもよい。このような保護層の塗布方法については、例えば米国特許第3,458,3111号、特開昭55−49729号に詳しく記載されているが、本発明の方法では、特に、感光性平版印刷版の温度を50℃以下に冷却した後に行うことにより、塗布ムラのない状態で形成することができる。感光性平版印刷版の温度が50℃を超えた状態で、前記酸素遮断性層した場合には塗布ムラが生じ、酸素遮断性が悪くなる。
【0114】本発明の感光性平版印刷版は、画像形成のため、Arレーザー、YAG−SHGレーザー等により直接画像露光される。画像露光を行った後、現像処理を行う。かかる現像処理に使用される現像液としては従来より知られているアルカリ水溶液が使用できる。例えば、ケイ酸ナトリウム、同カリウム、第三リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、第二リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、ほう酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、水酸化ナトリウム、同アンモニウム、同カリウムおよび同リチウムなどの無機アルカリ剤が挙げられる。また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジンなどの有機アルカリ剤も用いられる。これらのアルカリ剤は単独もしくは二種以上を組み合わせて用いられる。
【0115】上記のアルカリ水溶液の内、本発明による効果が一段と発揮される現像液はアルカリ金属ケイ酸塩を含有するpH12以上の水溶液である。アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液はケイ酸塩の成分である酸化ケイ素SiO2とアルカリ金属酸化物M2Oの比率(一般に〔SiO2〕/〔M2O〕のモル比で表す)と濃度によって現像性の調節が可能であり、例えば、特開昭54−62004号公報に開示されているような、SiO2/Na2Oのモル比が1.0〜1.5(即ち〔SiO2〕/〔Na2O〕が1.0〜1.5)であって、SiO2の含有量が1〜4重量%のケイ酸ナトリウムの水溶液や、特公昭57−7427号公報に記載されているような、〔SiO2〕/〔M〕が0.5〜0.75(即ち〔SiO2〕/〔M2O〕が1.0〜1.5)であって、SiO2の濃度が1〜4重量%であり、かつ該現像液がその中に存在する全アルカリ金属のグラム原子を基準にして少なくとも20%のカリウムを含有している、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液が好適に用いられる。
【0116】更に、自動現像機を用いて、該感光性平版印刷版を現像する場合に、現像液よりもアルカリ強度の高い水溶液(補充液)を現像液に加えることによって、長時間現像タンク中の現像液を交換する事なく、多量の感光性平版印刷版を処理することができることが知られている。本発明の方法によって得られる感光性平版印刷版においてもこの補充方式が好ましく適用される。例えば、特開昭54−62004号公報に開示されているような現像液のSiO2/Na2Oモル比が1.0〜1.5(即ち〔SiO2〕/〔Na2O〕が1.0〜1.5)であって、SiO2の含有量が1〜4重量%のケイ酸ナトリウムの水溶液を使用し、しかも感光性平版印刷版の処理量に応じて連続的または断続的にSiO2/Na2Oのモル比が0.5〜1.5(即ち〔SiO2〕/〔Na2O〕が0.5〜1.5)のケイ酸ナトリウム水溶液(補充液)を現像液に加える方法、更には、特公昭57−7427号公報に開示されている、〔SiO2〕/〔M〕が0.5〜0.75(即ち〔SiO2〕/〔M2O〕が1.0〜1.5)であって、SiO2の濃度が1〜4重量%であるアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液を現像液として用い、補充液として用いるアルカリ金属ケイ酸塩の〔SiO2〕/〔M〕が0.25〜0.75(即ち、〔SiO2〕/〔M2O〕が0.5〜1.5)であり、かつ該現像液および該補充液のいずれもがその中に存在する全アルカリ金属のグラム原子を基準にして少なくとも20%のカリウムを含有していることを特徴とする現像方法が好適に用いられる。
【0117】このようにして現像処理された感光性平版印刷版は特開昭54−8002号、同55−115045号、同59−58431号等の各公報に記載されているように、水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体等を含む不感脂化液で処理される。本発明の感光性平版印刷版から製版された平版印刷版の後処理にはこれらの処理を種々組み合わせて用いることができる。
【0118】現像後またはさらに任意に上記の不感脂化処理等の後処理を行った後、先に述べた方法により全面露光を行い、このようにして得られた平版印刷版はオフセット印刷機に掛けられ、多数枚の印刷に用いられる。印刷時、版上の汚れ除去のため使用するプレートクリーナーとしては、従来より知られているPS版用プレートクリーナーが使用され、例えば、CL-1、CL-2、CP、CN-4、CN、CG-1、PC-1、SR、IC(富士写真フイルム株式会社製)等が挙げられる。好ましくは、CP、CN-4が挙げられる。
【0119】
【実施例】以下実施例をもって本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〜3、比較例1〜3〕
(感光性平版印刷版の作成)厚さ0.30mmのアルミニウム板をナイロンブラシと400メッシュのパミストンの水懸濁液とを用いその表面を砂目立てした後、よく水で洗浄した。10%水酸化ナトリウム水溶液に70℃で60秒間浸漬してエッチングした後、流水で水洗後20%硝酸水溶液で中和洗浄し、次いで水洗した。これをVA=12.7Vの条件下で正弦波の交番波形電流を用いて1%硝酸水溶液で160クーロン/dm2の陽極時電気量で電解粗面化処理を行った。その表面粗さを測定したところ、0.6μm(Ra表示)であった。引き続いて30%の硫酸水溶液中に浸漬し55℃で2分間デスマットした後、20%硫酸水溶液中、電流密度2A/dm2において陽極酸化皮膜の厚さが2.7g/m2になるように2分間陽極酸化処理した。次に下記の手順によりSG法の液状組成物(ゾル液)を調整した。
【0120】
〔ゾル液〕
ユニケミカル(株):ホスマーPE 24重量部 メタノール 130重量部 水 20重量部 85%リン酸 16重量部 テトラエトキシシラン 50重量部 3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 48重量部
【0121】を混合し攪拌した。約5分で発熱が認められた。60分間反応させた後、内容物を別の容器へ移し、メタノール3000重量部加えることにより、ゾル液を得た。このゾル液をメタノール/エチレングリコール=9/1(重量比)で希釈して、基板上のSiの量が3mg/m2となるようにホイラー塗布し、100℃で1分乾燥させた。このように処理されたアルミニウム板上に、下記に示す組成の光重合層塗布液をワイヤーバーを用いて乾燥塗布重量が1.50g/m2となるよう塗布した。
【0122】このアルミニウム板の裏面に熱電対温度センサーを粘着テープで貼付けた後、楠本化成(株)製高温熱風乾燥オーブンETAC HT220中で乾燥させて光重合層を形成した。この時の乾燥条件と、貼付けた温度センサーにより測定したアルミニウム板支持体の温度を表2に示す。
【0123】
(光重合層塗布液A)
2モルのヘキサメチレンジイソシアネートと 3.33 g 2モルのメタクリル酸ヒドロキシエチル及び 1モルの2−ヒドロキシエチルピペリジンの 反応生成物 メチルメタクリレート63mol%,メタクリル酸37mol%の 1.00 g 共重合体(平均分子量2.8万、酸価3.82meq./g)
エチルエオシン 0.123g IRGACURE 784 0.512g (Ciba/Geigy社製チタノセン 系開始剤)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 29.62 g ブタノン 16.03 g
【0124】この光重合層を形成した後、一旦50℃以下に冷却した後、該光重合層上にポリビニルアルコール(ケン化度86.5〜89モル%、重合度1000)の3重量%の水溶液を乾燥塗布重量が2g/m2となるように塗布し、100℃で90秒間乾燥させた。
【0125】このプレートをCymbolic Sciences社製FD−YAGレーザ−プレートセッターPlate Jet4を用いて露光量260設定(版面光強度0.17mJ/cm2)1,000DPI、default条件で100線/inchの網点画像露光を行った後、富士写真フィルム(株)製デジタルプレートプロセッサーLP−850Pに、富士写真フィルム(株)製現像液LP−D(10倍水希釈液)を仕込み現像処理し、その現像性を評価した。画像露光した通りに画像部が得られたものを○とし、画像露光した通りに画像部が得られなかったものを×とし、表2に示した。また、塗布乾燥後のプレートを50℃‐40%の条件下で3日間保存後、同様に露光現像し、強制経時保存後の現像性を同様に評価した。また、得られた各印刷版を用いてハイデルベルグ社製KOR−D型印刷機で市販のインキにて上質紙に印刷した。各印刷版の耐刷枚数を表2に合わせて示す。
【0126】
【表2】


【0127】〔実施例4〜6、比較例4〕前述の実施例および比較例において光重合層塗布液を下記の組成(B)に変更する以外は同様にして感光性平版印刷版を得、同様にPlate Jet4を用いて画像露光を行った後、実施例1〜3と同じ現像処理を行い印刷版を得た。現像性の評価を同様に行いその結果と、その印刷版を同様に印刷した時の各印刷版の耐刷枚数とを表3に示す。
【0128】
(光重合層塗布液B)
共栄社化学(株)製ウレタンアクリレートモノマー 1.5 gUA−306H(2モルのペンタエリスリトールトリアクリレートと1モルのヘキサメチレンジイソシアネートの反応物)
下記構造のバインダーB−1 2.0 g 下記構造の化合物1 0.15 g IRGACURE−784 0.20 g 下記構造の化合物2 0.50 g 銅フタロシアニン顔料(有機ポリマー分散) 0.5 g メガファックF−177(大日本インキ化学工業 0.02 g (株)製、フッ素界面活性剤)
N−ニトロソフェニルヒドロキシル 0.015g アミンアルミニウム塩 (和光純薬製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 27.5 g メチルエチルケトン 19.0 g
【0129】上記バインダーB−1、化合物1および化合物2の構造式を以下に示す。
【0130】
【化30】


【0131】(比較例5〜6)実施例1〜3、比較例1〜3において用いたものと同じ表面処理を施したアルミニウム板支持体上に、下記の組成(C)に示す光重合層塗布液を塗布し、表3に示す乾燥条件で乾燥した後、実施例1〜3と同様に、ポリビニルアルコールからなる層を設け、実施例1〜3と同様にレーザ露光した後、現像処理して、比較例5、6の印刷版を得た。現像性の評価を同様に行いその結果と、この印刷版を用いて実施例1〜3と同じ条件、方法で印刷した時の耐刷枚数とを表3に示す。
【0132】
(光重合層塗布液C)
トリメチロールプロパントリアクリレート 1.5 g 前記バインダーB−1 2.0 g 前記化合物1 0.15 g IRGACURE 784 0.20 g 前記化合物2 0.50 g 銅フタロシアニン顔料(有機ポリマー分散) 0.5 g メガファックF−177(大日本インキ化学工業 0.02 g (株)製、フッ素界面活性剤)
N−ニトロソフェニルヒドロキシル 0.015g アミンアルミニウム塩(和光純薬製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 27.5 g メチルエチルケトン 19.0 g
【0133】
【表3】


【0134】(実施例7、比較例7)実施例4及び比較例4で用いた光重合層塗布液Bを、下記に示す光重合層塗布液Dに代えた以外は、実施例4及び比較例4と全く同様な製造方法で作成した感光性平版印刷版を実施例4と全く同様な方法で評価した。その結果を表4に示す。
【0135】
(光重合層塗布液D)
新中村化学(株)製ウレタンメタクリレートモノマー 1.5 g U−4H (2モルのグリセロールジメタクリレートと 1モルのヘキサメチレンジイソシアネートの反応物)
下記構造のバインダーB−2 2.0 g 前記化合物1 0.15 g IRGACURE 784 0.20 g 前記化合物2 0.50 g 銅フタロシアニン顔料(有機ポリマー分散) 0.5 g メガファックF−177(大日本インキ化学工業 0.02 g (株)製、フッ素界面活性剤)
N−ニトロソフェニルヒドロキシル 0.015g アミンアルミニウム塩 (和光純薬製)
プロピレングリコールモノメチルエーテル 27.5 g メチルエチルケトン 19.0 g
【0136】
【化31】


【0137】
【表4】


【0138】上記の結果より、実施例1〜7の感光性平版印刷版は、付加重合性化合物としてウレタン基を有するものを用い、光重合層の加熱乾燥が90〜140℃の範囲で行われたことにより、現像性および耐刷性のいずれにも優れていた。特に実施例7の感光性平版印刷版は、他の実施例のものより耐刷性が優れていた。これはバインダー成分としてポリウレタン樹脂を用いていることによるものと思われる。一方、比較例1、4、7の感光性平版印刷版は、現像性は良好であったが耐刷性が劣っていた。これは、付加重合性化合物としてウレタン基を有するものを用いているが、光重合層の加熱乾燥が90〜140℃の範囲で行われなかったことにより、光重合層の硬化が十分でなっかたためと考えられる。また、比較例2の感光性平版印刷版は、現像性が不良であり印刷版を作成することができなかった。これは、付加重合性化合物としてウレタン基を有するものを用いているが、光重合層の加熱乾燥時の最高到達温度が140℃以上と所定の範囲より高かっため、硬化が過剰になり非画像部が現像液によって溶解されなかったためと考えられる。さらに、比較例5および6の感光性平版印刷版は、塗布直後の現像性は良好であったが耐刷性が劣っていた。比較例5では、光重合層の加熱乾燥が90〜140℃の範囲で行われているが、付加重合性化合物としてウレタン基を有するものを用いていないことにより、光重合層の硬化が十分でなっかたためと考えられる。比較例6では、付加重合性化合物としてウレタン基を有するものを用いておらず光重合層の加熱乾燥も90〜140℃の範囲で行われなかったことにより、光重合層の硬化が十分でなっかたと考えられる。
【0139】
【発明の効果】本発明の感光性平版印刷版は、光重合層の付加重合性化合物としてウレタン基を有するものを用い、光重合層の塗布後の加熱乾燥を感光性平版印刷版の温度が90〜140℃のに保持されるような条件で行われたことにより、感度、耐刷性および保存安定性に優れたものとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 親水性表面を有する支持体上に、i)線状高分子重合体バインダー、ii)付加重合可能なエチレン性不飽和結合とウレタン基を有する化合物及び溶剤を含有する光重合層塗布液を塗布し、感光性平版印刷版の温度が90〜140℃で10秒間以上保たれる条件で加熱乾燥することにより得られたことを特徴とする感光性平版印刷版。
【請求項2】 前記加熱乾燥後、感光性平版印刷版の温度を50℃以下に冷却したあと、引き続きその光重合層上に、水溶性の酸素遮断性物質を含有する保護層を塗布し、加熱乾燥することにより得られたことを特徴とする請求項1に記載の感光性平版印刷版。

【公開番号】特開2001−125255(P2001−125255A)
【公開日】平成13年5月11日(2001.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−305736
【出願日】平成11年10月27日(1999.10.27)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】