説明

感光性樹脂およびその製造方法

【課題】
本発明の目的は、高感度であり、生産性を飛躍的に向上できる感光性樹脂およびその製造方法を提供することにある。さらに、耐溶剤性、耐薬品性、耐熱性に優れた感光性樹脂およびその製造方法を提供することにある。
【解決手段】
水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(a)と、(a)以外のエチレン性不飽和単量体(b)とを重合してなる共重合体中の水酸基に、1つのイソシアネート基および2つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(c)中のイソシアネート基を反応してなる感光性樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規にして有用なる感光性樹脂に関し、さらに詳細には、好感度でかつ、耐溶剤性、耐薬品性、耐熱性に優れた感光性樹脂に関する。当該感光性樹脂は、塗料、接着剤、粘着剤、印刷用版材料、封止剤、集積回路用レジスト、プリント配線板用レジスト、カラーフィルター用着色ペースト、立体成形材料等に好適に用いられる。
【背景技術】
【0002】
近年、カラーフィルタやブラックマトリクスなどに代表される感光性着色組成物の分野では、より高い色濃度、光学濃度への要求が急速に高まっており、着色組成物中の着色材料の含有濃度が高められる傾向にある。こういった着色材料濃度の上昇に伴い、着色材料由来の光吸収が増加し、着色組成物としての感光性の低下が引き起こされる。このような流れの中で、着色組成物として従来またはそれ以上の感光性を確保する手段の一つとして、組成物に含まれる樹脂の感光性を向上する手法があり、従来よりも感光性に優れる樹脂が求められていた。
樹脂の感光性を向上する手段としては、樹脂中に感光性基として導入されるエチレン性不飽和基の濃度を上げる方法があり、その手法は数多く知られている。中でも樹脂中の水酸基またはカルボキシル基と、エチレン性不飽和基含有イソシアネートのイソシアネート基とを反応させることでエチレン性不飽和基含有感光性樹脂を得る方法は、樹脂設計の自由度の高さと反応の簡便さから、工業的に広く用いられている。
【特許文献1】特開H06−222556公報
【特許文献2】特開H12−105456公報
【特許文献3】特開H12−250217公報
【特許文献4】特開H12−298337公報
【特許文献5】特開H12−298339公報
【0003】
しかし、これらの方法で樹脂中にエチレン性不飽和基を導入する場合、エチレン性不飽和基の数に応じてウレタン結合の数も増加する。ウレタン結合は一般的に耐熱性に乏しいため、樹脂の感光性を向上する目的で多くのエチレン性不飽和基を導入した場合、同時にウレタン結合の数が増加することで、樹脂自体の耐熱性が悪化するという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、高感度であり、生産性を飛躍的に向上できる感光性樹脂およびその製造方法を提供することにある。さらに、耐溶剤性、耐薬品性、耐熱性に優れた感光性樹脂およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(a)と、(a)以外のエチレン性不飽和単量体(b)とを重合してなる共重合体中の水酸基に、1つのイソシアネート基および2つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(c)中のイソシアネート基を反応してなる感光性樹脂に関する。
【0006】
さらに本発明は、1つのイソシアネート基および2つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(c)が、下記一般式(1)で表される化合物である感光性樹脂に関する。
【0007】
一般式(1)
【化3】


(ただし、R、Rは、それぞれ水素原子またはメチル基を表す。また、Rは、水素原子、C〜Cのアルキル基を表す。)
【0008】
さらに本発明は、二重結合当量が、140〜2000である感光性樹脂に関する。
【0009】
さらに本発明は、ウレタン結合濃度が、0.1〜5.0mmol/gである感光性樹脂に関する。
【0010】
さらに本発明は、重量平均分子量が、2000〜200000である感光性樹脂に関する。
【0011】
さらに本発明は、水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(a)と、(a)以外のエチレン性不飽和単量体(b)とを重合してなる共重合体中の水酸基に、1つのイソシアネート基および2つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(c)中のイソシアネート基を反応させることを特徴とする感光性樹脂の製造方法に関する。
【0012】
さらに本発明は、1つのイソシアネート基および2つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(c)が、下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする感光性樹脂の製造方法に関する。
【0013】
一般式(1)
【化4】


(ただし、R、Rは、それぞれ水素原子またはメチル基を表す。また、Rは、水素原子、C〜Cのアルキル基を表す。)
【発明の効果】
【0014】
本発明により、高感度であり、かつ、塗膜物性に優れた感光性樹脂およびその製造方法を提供することができた。さらに本発明により、耐溶剤性、耐薬品性、耐熱性に優れ、塗料、接着剤、粘着剤、印刷用版材料、封止剤、集積回路用レジスト、プリント配線板用レジスト、カラーフィルター用着色ペースト、立体成形材料等に好適に用いられる感光性樹脂を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明について説明する。
本発明の感光性樹脂は、水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(a)と、(a)以外のエチレン性不飽和単量体(b)とを重合してなる共重合体中の水酸基に、1つのイソシアネート基および2つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(c)中のイソシアネート基を反応してなる感光性樹脂である。
【0016】
水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(a)は、水酸基およびエチレン性不飽和二重結合を有する化合物であれば特に限定されず、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシビニルベンゼン等が挙げられる。これら単量体は、単独でも、または2種以上を混合して用いることができる。
【0017】
水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(a)と共重合しうる(a)以外のエチレン性不飽和単量体(b)は、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド、およびN,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン等のN置換型(メタ)アクリルアミド類、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリロニトリル等のニトリル類、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の脂肪酸ビニル類、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸などの重合性不飽和カルボン酸類、およびそれらの無水物が挙げられる。これら単量体は、単独でも、または2種以上を混合して用いることができる。
【0018】
水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(a)と(a)以外のエチレン性不飽和単量体(b)との共重合比は、重量比で5:95〜95:5であることが好ましく、10:90〜90:10であることがより好ましい。水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(a)の共重合比が5重量%未満の場合は、導入できるエチレン性不飽和二重結合の数が少なく、結果として十分な感度を得ることができない場合がある。95重量%を越える場合は、多くのエチレン性不飽和二重結合を導入することが可能となるが、(a)以外のエチレン性不飽和単量体(b)の比率が低くなるため、重合安定性や最終的な塗膜物性を維持することが困難となる場合がある。
【0019】
水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(a)と(a)以外のエチレン性不飽和単量体(b)との重合は、不活性ガス気流下、開始剤を使用して、一般的には50〜150℃で2〜10時間かけて行われる。開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ジt−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。開始剤は、重合性モノマー100重量部に対して、好ましくは0.1〜20重量部の範囲で使用される。
【0020】
また、上記重合に際しては、必要に応じて溶剤を使用することもできる。溶剤としては、水および/または水混和性有機溶剤、またはエチルセルソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどの酢酸エステル;シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;トリエン、キシレン、エチルベンゼンなどを用いることができる。水混和性有機溶剤としては、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール等のアルコール系溶剤や、エチレングリコールまたはジエチレングリコールのモノまたはジアルキルエーテル等が挙げられる。
【0021】
本発明の感光性樹脂は、上記反応により得られた共重合体に、1つのイソシアネート基および2つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(c)を反応させることにより得られる。
【0022】
1つのイソシアネート基および2つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(c)は、例えばジイソシアネート化合物(d)と、1つの水酸基および2つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(e)とを反応させることで得ることができる。
【0023】
ジイソシアネート化合物(d)としては、例えば、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば1,3−フェニレンジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニルジイソシアネ−ト、1,4−フェニレンジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、2,4−トリレンジイソシアネ−ト、2,6−トリレンジイソシアネ−ト、4,4’−トルイジンジイソシアネ−ト、2,4,6−トリイソシアネ−トトルエン、1,3,5−トリイソシアネ−トベンゼン、ジアニシジンジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニルエ−テルジイソシアネ−ト、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネ−ト等を挙げることができる。
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えばトリメチレンジイソシアネ−ト、テトラメチレンジイソシアネ−ト、ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、ペンタメチレンジイソシアネ−ト、1,2−プロピレンジイソシアネ−ト、2,3−ブチレンジイソシアネ−ト、1,3−ブチレンジイソシアネ−ト、ドデカメチレンジイソシアネ−ト、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネ−ト等を挙げることができる。
芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、例えばω,ω’−ジイソシアネ−ト−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネ−ト−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネ−ト−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネ−ト、1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネ−ト等を挙げることができる。
脂環族ジイソシアネートとしては、例えば3−イソシアネ−トメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネ−ト、1,3−シクロペンタンジイソシアネ−ト、1,3−シクロヘキサンジイソシアネ−ト、1,4−シクロヘキサンジイソシアネ−ト、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネ−ト、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネ−ト、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネ−ト)、1,3−ビス(イソシアネ−トメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネ−トメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
【0024】
1つの水酸基および2つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(e)としては、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0025】
ジイソシアネート化合物(d)と、1つの水酸基および2つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(e)との使用量は、ジイソシアネート化合物(d)中のイソシアネート基のモル数と、1つの水酸基および2つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(e)中の水酸基のモル数との比率が、1.5:1〜2.2:1の範囲になる量で使用する。
【0026】
ジイソシアネート化合物(d)と、1つの水酸基および2つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(e)との反応は、公知の方法で行うことができる。すなわち、3級アミン系化合物、有機金属系化合物等の触媒を使用して、40〜120℃、好ましくは50〜100℃で反応させる。
【0027】
触媒として使用する3級アミン系化合物としては、例えばトリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N−メチルモルホリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等が挙げられる。
【0028】
また、有機金属系化合物としては錫系化合物、非錫系化合物を挙げることができる。錫系化合物としては、例えばジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジブロマイド、ジブチル錫ジマレエ−ト、ジブチル錫ジラウレ−ト、ジブチル錫ジアセテ−ト、ジブチル錫スルファイド、トリブチル錫スルファイド、トリブチル錫オキサイド、トリブチル錫アセテ−ト、トリエチル錫エトキサイド、トリブチル錫エトキサイド、ジオクチル錫オキサイド、トリブチル錫クロライド、トリブチル錫トリクロロアセテ−ト、2−エチルヘキサン酸錫等が挙げられる。非錫系化合物としては、例えばジブチルチタニウムジクロライド、テトラブチルチタネ−ト、ブトキシチタニウムトリクロライドなどのチタン系、オレイン酸鉛、2−エチルヘキサン酸鉛、安息香酸鉛、ナフテン酸鉛などの鉛系、2−エチルヘキサン酸鉄、鉄アセチルアセトネ−トなどの鉄系、安息香酸コバルト、2−エチルヘキサン酸コバルトなどのコバルト系、ナフテン酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛などの亜鉛系、ナフテン酸ジルコニウムなどが挙げられる。これらは単独使用、もしくは併用することもできる。
【0029】
上記反応は、溶剤を使用してもかまわない。使用される溶剤としては、公知のものを使用できる。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、アセトニトリル等が挙げられる。さらに必要に応じてp−メトキシフェノール、ヒドロキノン、ナフチルアミン、tert−ブチルカテコール、2,3−ジ−tert−ブチルp−クレゾール等の重合禁止剤を使用することができる。
【0030】
また、1つのイソシアネート基および2つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(c)は、下記一般式(1)で表される化合物であってもよい。
【0031】
一般式(1)
【化5】


(ただし、R、Rは、それぞれ水素原子またはメチル基を表す。また、Rは、水素原子、C〜Cのアルキル基を表す。)
【0032】
上記一般式(1)で表される化合物としては、1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)メチルイソシアネート、1,1−(ビスメタクリロイルオキシメチル)メチルイソシアネート、1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、1,1−(ビスメタクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)プロピルイソシアネート、1,1−(ビスメタクリロイルオキシメチル)プロピルイソシアネートなどが挙げられる。
【0033】
1つのイソシアネート基および2つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(c)としては、化合物(c)中に含まれるエチレン性不飽和基濃度が高くなること、反応工程が煩雑でないことを考慮すると、上記一般式(1)で表される化合物を使用する方が好ましい。
【0034】
次に、水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(a)と、(a)以外のエチレン性不飽和単量体(b)とを重合してなる共重合体と、1つのイソシアネート基および2つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(c)との反応について説明する。この反応は、前記に示したジイソシアネート化合物(d)と、1つの水酸基および2つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(e)との反応と同様に行うことができる。
【0035】
本発明の、感光性樹脂に導入されるエチレン性不飽和基の量は、二重結合当量により示される。二重結合当量とは、下記式で定義され、分子中に含まれる二重結合量の尺度となるものであり、同じ分子量の感光性樹脂であれば、二重結合当量の数値が小さいほど二重結合の導入量が多くなる。
[二重結合当量]=[繰り返し構成単位の分子量]/[繰り返し構成単位中の二重結合の数]
【0036】
本発明の、感光性樹脂の二重結合当量は140〜2000であることが好ましい。二重結合当量が140未満の場合は、エチレン性不飽和基を導入させる水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(a)の比率が高くなり、(a)以外のエチレン性不飽和単量体(b)の比率が低下し、重合安定性や最終的な塗膜物性に悪影響をおよぼす可能性がある。また、二重結合当量が2000を越える場合は、感光性が低下する可能性がある。
より実用的に考慮すると、本発明の感光性樹脂の二重結合当量は、より好ましくは150〜1000、更に好ましくは200〜800である。
【0037】
本発明で言う、ウレタン結合濃度とは、樹脂固形分1g中に含まれるウレタン結合基のモル数のことである。本発明の、ウレタン結合濃度は、0.1〜5.0mmol/gであることが好ましい。ウレタン結合濃度が0.1mmol/g未満の場合は、実質的にエチレン性不飽和基の導入量が少なくなり、感光性が低下する可能性がある。また、ウレタン結合濃度が5.0mmol/gを超える場合は、耐熱性に問題が出る可能性がある。
より実用的に考慮すると、本発明の感光性樹脂のウレタン結合濃度は、より好ましくは0.5〜4.0mmol/gである。
【0038】
また、本発明の、感光性樹脂の重量平均分子量は、最終的な塗膜の強度などの点から、好ましくは2000〜200000、より好ましくは5000〜100000である。
【0039】
本発明の感光性樹脂は、必要に応じて、バインダー樹脂、エチレン性不飽和化合物、光重合開始剤などを添加して使用する。バインダー樹脂としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、ビニル樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、エチレン性不飽和二重結合が導入されていてもよい。エチレン性不飽和二重結合の導入方法はどのようなものであっても構わない。これらの樹脂を単独で添加しても良いし、他の樹脂を含む、複数の樹脂を混合して添加しても良い。
【0040】
本発明の感光性樹脂は、有機溶剤を含まない硬化性組成物としても、有機溶剤を含む硬化性組成物としても用いることができる。
有機溶剤を含む場合には、各種基材に塗布し、前記有機溶剤を揮発させた後に硬化に必要な紫外線、電子線等の活性エネルギー線を照射すればよい。
本発明の被覆剤に用いられる有機溶剤としては、公知のものを使用することができる。具体的には、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、トルエン、メチルプロピレングリコールアセテート等が挙げられる。
【0041】
この他、本発明の感光性材料には目的を損なわない範囲で任意成分として、さらに溶剤、染料、顔料、酸化防止剤、重合禁止剤、レベリング剤、保湿剤、粘度調整剤、防腐剤、抗菌剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、電磁波シールド剤、フィラー等を添加することができる。
【0042】
<感光>
本発明の感光性材料は、公知のラジエーション硬化方法により硬化させ硬化物とすることができ、活性エネルギー線としては、電子線、紫外線、400〜500nmの可視光を使用することができる。
照射する電子線の線源には熱電子放射銃、電界放射銃等が使用できる。また、紫外線および400〜500nmの可視光の線源(光源)には、例えば、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ガリウムランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ等を使用することができる。具体的には、点光源であること、輝度の安定性から、超高圧水銀ランプ、キセノン水銀ランプが用いられることが多い。照射する活性エネルギー線量は、5〜2000mJ/cmの範囲で適時設定できるが、工程上管理しやすい50〜1000mJ/cmの範囲であることが好ましい。
また、これら紫外線または電子線と、赤外線、遠赤外線、熱風、高周波加熱等による熱の併用も可能である。
【0043】
本発明の感光性材料は、基材に塗工後、自然または強制乾燥後にラジエーション硬化を行っても良いし、塗工に続いてラジエ
ーション硬化させた後に自然または強制乾燥しても構わないが、自然または強制乾燥後にラジエーション硬化した方が好ましい。電子線で硬化させる場合は、水による硬化阻害又は有機溶剤の残留による塗膜の強度低下を防ぐため、自然または強制乾燥後にラジエーション硬化を行うのが好ましい。ラジエーション硬化のタイミングは塗工と同時でも構わないし、塗工後でも構わない。
【実施例】
【0044】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、実施例および比較例中、「部」とは「重量部」を意味する。また、重量平均分子量はGPCにより測定された標準ポリスチレン換算分子量を示す。
【0045】
(合成例1)
温度計、攪拌装置、還流冷却管、窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、シクロヘキサノン130.2部、ペンタエリスリトールテトラアクリレート298.3部、イソホロンジイソシアネート222.3部を仕込み、フラスコ内に窒素ガスを注入しながら60℃になるまで加熱、攪拌した。次いでこのフラスコに、触媒としてラウリン酸ジブチルスズ0.6部を添加し、80℃で2時間攪拌して反応させた。その後、溶液中の残存イソシアネート量を測定し、樹脂固形分1.0gに対して1.92mmolであることを確認したのち、フラスコを室温まで冷却した。得られた溶液を「溶液A」とした。
これとは別に、同様の四つ口フラスコに、シクロヘキサノン240.0部を仕込み、フラスコ内に窒素ガスを注入しながら95℃で30分間加熱、攪拌した。次いでこのフラスコに重合開始剤として2,2‘−アゾビスイソブチロニトリル0.6部を投入し、5分間攪拌後、95℃に保ったまま、下記組成のモノマーと重合開始剤の混合物を2時間かけて滴下した。
ベンジルメタクリレート 63.0部
n-ブチルメタクリレート 60.0部
2-ヒドロキシエチルメタクリレート 35.4部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 4.5部
滴下終了後、同温で30分攪拌した。さらに、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル2.4部をシクロヘキサノン60.0部に溶解させた溶液を、2時間かけて滴下した。滴下終了後、同温で攪拌を1.5時間継続した。その後、室温まで冷却して重合反応を終了させた。
次に、このフラスコに、予め上記で調整した「溶液A」を177.0部、ラウリン酸ジブチルスズ0.02部、重合禁止剤としてメトキノン0.2部を添加し、乾燥空気を注入しながら80℃で2時間攪拌した。次にこの反応溶液をサンプリングしてIRを測定し、約2260cm-1付近のイソシアネート基のピークが消失しているのを確認してから、冷却を開始し、シクロヘキサノンを添加して溶液の固形分が30%になるように調整して反応を終了した。
得られた感光性樹脂の重量平均分子量(Mw)は40400、二重結合当量は368、ウレタン結合濃度は、1.813mmol/gであった。
【0046】
(合成例2)
温度計、攪拌装置、還流冷却管、窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、シクロヘキサノン186.7部、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート524.5部、イソホロンジイソシアネート222.3部を仕込み、フラスコ内に窒素ガスを注入しながら60℃になるまで加熱、攪拌した。次いでこのフラスコに、触媒としてラウリン酸ジブチルスズ0.6部を添加し、80℃で2時間攪拌して反応させた。その後、溶液中の残存イソシアネート量を測定し、樹脂固形分1.0gに対して1.34mmolであることを確認したのち、フラスコを室温まで冷却した。得られた溶液を「溶液B」とした。
これとは別に、同様の四つ口フラスコに、シクロヘキサノン240.0部を仕込み、フラスコ内に窒素ガスを注入しながら95℃で30分間加熱、攪拌した。次いでこのフラスコに重合開始剤として2,2‘−アゾビスイソブチロニトリル0.6部を投入し、5分間攪拌後、95℃に保ったまま、下記組成のモノマーと重合開始剤の混合物を2時間かけて滴下した。
ベンジルメタクリレート 82.5部
n-ブチルメタクリレート 75.0部
2-ヒドロキシエチルメタクリレート 21.1部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 4.5部
滴下終了後、同温で30分攪拌した。さらに、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル2.4部をシクロヘキサノン60.0部に溶解させた溶液を、2時間かけて滴下した。滴下終了後、同温で攪拌を1.5時間継続した。その後、室温まで冷却して重合反応を終了させた。
次に、このフラスコに、予め上記で調整した「溶液B」を151.8部、ラウリン酸ジブチルスズ0.02部、重合禁止剤としてメトキノン0.2部を添加し、乾燥空気を注入しながら80℃で2時間攪拌した。次にこの反応溶液をサンプリングしてIRを測定し、約2260cm-1付近のイソシアネート基のピークが消失しているのを確認してから、冷却を開始し、シクロヘキサノンを添加して溶液の固形分が30%になるように調整して反応を終了した。
得られた感光性樹脂の重量平均分子量(Mw)は41100、二重結合当量は369、ウレタン結合濃度は、1.083mmol/gであった。
【0047】
(合成例3)
温度計、攪拌装置、還流冷却管、窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、シクロヘキサノン240.0部を仕込み、フラスコ内に窒素ガスを注入しながら95℃で30分間加熱、攪拌した。次いでこのフラスコに重合開始剤として2,2‘−アゾビスイソブチロニトリル0.6部を投入し、5分間攪拌後、95℃に保ったまま、下記組成のモノマーと重合開始剤の混合物を2時間かけて滴下した。
ベンジルメタクリレート 90.0部
n-ブチルメタクリレート 60.0部
2-ヒドロキシエチルメタクリレート 52.8部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 4.5部
滴下終了後、同温で30分攪拌した。さらに、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル2.4部をシクロヘキサノン60.0部に溶解させた溶液を、2時間かけて滴下した。滴下終了後、同温で攪拌を1.5時間継続した。その後、室温まで冷却して重合反応を終了させた。
次に、このフラスコに1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート97.2部、ラウリン酸ジブチルスズ0.02部、重合禁止剤としてメトキノン0.2部を添加し、乾燥空気を注入しながら80℃で2時間攪拌した。次にこの反応溶液をサンプリングしてIRを測定し、約2260cm-1付近のイソシアネート基のピークが消失しているのを確認してから、冷却を開始し、シクロヘキサノンを添加して溶液の固形分が30%になるように調整して反応を終了した。
得られた感光性樹脂の重量平均分子量(Mw)は38000、二重結合当量は369、ウレタン結合濃度は、1.354mmol/gであった。
【0048】
(合成例4)
温度計、攪拌装置、還流冷却管、窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、シクロヘキサノン240.0部を仕込み、フラスコ内に窒素ガスを注入しながら95℃で30分間加熱、攪拌した。次いでこのフラスコに重合開始剤として2,2‘−アゾビスイソブチロニトリル0.6部を投入し、5分間攪拌後、95℃に保ったまま、下記組成のモノマーと重合開始剤の混合物を2時間かけて滴下した。
ベンジルメタクリレート 30.0部
2-ヒドロキシエチルメタクリレート 95.1部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 4.5部
滴下終了後、同温で30分攪拌した。さらに、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル2.4部をシクロヘキサノン60.0部に溶解させた溶液を、2時間かけて滴下した。滴下終了後、同温で攪拌を1.5時間継続した。その後室温まで冷却して重合反応を終了させた。
次に、このフラスコに1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート174.9部、ラウリン酸ジブチルスズ0.02部、重合禁止剤としてメトキノン0.2部を添加し、乾燥空気を注入しながら80℃で2時間攪拌した。次にこの反応溶液をサンプリングしてIRを測定し、約2260cm-1付近のイソシアネート基のピークが消失しているのを確認してから、冷却を開始し、シクロヘキサノンを添加して溶液の固形分が30%になるように調整して反応を終了した。
得られた感光性樹脂の重量平均分子量(Mw)は39600、二重結合当量は205、ウレタン結合濃度は、2.437mmol/gであった。
【0049】
(合成例5)
温度計、攪拌装置、還流冷却管、窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、シクロヘキサノン240.0部を仕込み、フラスコ内に窒素ガスを注入しながら95℃で30分間加熱、攪拌した。次いでこのフラスコに重合開始剤として2,2‘−アゾビスイソブチロニトリル0.6部を投入し、5分間攪拌後、95℃に保ったまま、下記組成のモノマーと重合開始剤の混合物を2時間かけて滴下した。
ベンジルメタクリレート 84.0部
n-ブチルメタクリレート 54.0部
2-ヒドロキシエチルメタクリレート 57.1部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 4.5部
滴下終了後、同温で30分攪拌した。さらに、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル2.4部をシクロヘキサノン60.0部に溶解させた溶液を、2時間かけて滴下した。滴下終了後、同温で攪拌を1.5時間継続した。その後、室温まで冷却して重合反応を終了させた。
次に、このフラスコに1,1-(ビスメタクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート104.9部、ラウリン酸ジブチルスズ0.02部、重合禁止剤としてメトキノン0.2部を添加し、乾燥空気を注入しながら80℃で2時間攪拌した。次にこの反応溶液をサンプリングしてIRを測定し、約2260cm-1付近のイソシアネート基のピークが消失しているのを確認してから、冷却を開始し、シクロヘキサノンを添加して溶液の固形分が30%になるように調整して反応を終了した。
得られた感光性樹脂の重量平均分子量(Mw)は39200、二重結合当量は368、ウレタン結合濃度は、1.359mmol/gであった。
【0050】
(合成例6)
温度計、攪拌装置、還流冷却管、窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、シクロヘキサノン290.0部を仕込み、フラスコ内に窒素ガスを注入しながら95℃で30分間加熱、攪拌した。次いでこのフラスコに重合開始剤として2,2‘−アゾビスイソブチロニトリル0.7部を投入し、5分間攪拌後、95℃に保ったまま、下記組成のモノマーと重合開始剤の混合物を2時間かけて滴下した。
ベンジルメタクリレート 93.9部
n-ブチルメタクリレート 90.0部
2-ヒドロキシエチルメタクリレート 53.0部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 5.4部
滴下終了後、同温で30分攪拌した。さらに、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル2.8部をシクロヘキサノン60.0部に溶解させた溶液を、2時間かけて滴下した。滴下終了後、同温で攪拌を1.5時間継続した。その後、室温まで冷却して重合反応を終了させた。
次に、このフラスコに2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート63.1部、ラウリン酸ジブチルスズ0.02部、重合禁止剤としてメトキノン0.2部を添加し、乾燥空気を注入しながら80℃で2時間攪拌した。次にこの反応溶液をサンプリングしてIRを測定し、約2260cm-1付近のイソシアネート基のピークが消失しているのを確認してから、冷却を開始し、シクロヘキサノンを添加して溶液の固形分が30%になるように調整して反応を終了した。
得られた感光性樹脂の重量平均分子量(Mw)は36500、二重結合当量は738、ウレタン結合濃度は、1.355mmol/gであった。
【0051】
(合成例7)
温度計、攪拌装置、還流冷却管、窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、シクロヘキサノン285.8部を仕込み、フラスコ内に窒素ガスを注入しながら95℃で30分間加熱、攪拌した。次いでこのフラスコに重合開始剤として2,2‘−アゾビスイソブチロニトリル0.7部を投入し、5分間攪拌後、95℃に保ったまま、下記組成のモノマーと重合開始剤の混合物を2時間かけて滴下した。
ベンジルメタクリレート 99.9部
n-ブチルメタクリレート 90.0部
2-ヒドロキシエチルメタクリレート 52.8部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 5.4部
滴下終了後、同温で30分攪拌した。さらに、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル2.8部をシクロヘキサノン60.0部に溶解させた溶液を、2時間かけて滴下した。滴下終了後、同温で攪拌を1.5時間継続した。その後、室温まで冷却して重合反応を終了させた。
次に、このフラスコに2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート57.3部、ラウリン酸ジブチルスズ0.02部、重合禁止剤としてメトキノン0.2部を添加し、乾燥空気を注入しながら80℃で2時間攪拌した。次にこの反応溶液をサンプリングしてIRを測定し、約2260cm-1付近のイソシアネート基のピークが消失しているのを確認してから、冷却を開始し、シクロヘキサノンを添加して溶液の固形分が30%になるように調整して反応を終了した。
得られた感光性樹脂の重量平均分子量(Mw)は37000、二重結合当量は740、ウレタン結合濃度は、1.352mmol/gであった。
【0052】
(合成例8)
温度計、攪拌装置、還流冷却管、窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、シクロヘキサノン341.0部を仕込み、フラスコ内に窒素ガスを注入しながら95℃で30分間加熱、攪拌した。次いでこのフラスコに重合開始剤として2,2‘−アゾビスイソブチロニトリル0.9部を投入し、5分間攪拌後、95℃に保ったまま、下記組成のモノマーと重合開始剤の混合物を2時間かけて滴下した。
ベンジルメタクリレート 33.9部
n-ブチルメタクリレート 33.9部
2-ヒドロキシエチルメタクリレート 105.9部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 6.4部
滴下終了後、同温で30分攪拌した。さらに、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル3.6部をシクロヘキサノン70.0部に溶解させた溶液を、2時間かけて滴下した。滴下終了後、同温で攪拌を1.5時間継続した。その後、室温まで冷却して重合反応を終了させた。
次に、このフラスコに2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート126.3部、ラウリン酸ジブチルスズ0.02部、重合禁止剤としてメトキノン0.2部を添加し、乾燥空気を注入しながら80℃で2時間攪拌した。次にこの反応溶液をサンプリングしてIRを測定し、約2260cm-1付近のイソシアネート基のピークが消失しているのを確認してから、冷却を開始し、シクロヘキサノンを添加して溶液の固形分が30%になるように調整して反応を終了した。
得られた感光性樹脂の重量平均分子量(Mw)は34600、二重結合当量は369、ウレタン結合濃度は、2.711mmol/gであった。
【0053】
(合成例9)
温度計、攪拌装置、還流冷却管、窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、シクロヘキサノン331.4部を仕込み、フラスコ内に窒素ガスを注入しながら95℃で30分間加熱、攪拌した。次いでこのフラスコに重合開始剤として2,2‘−アゾビスイソブチロニトリル0.8部を投入し、5分間攪拌後、95℃に保ったまま、下記組成のモノマーと重合開始剤の混合物を2時間かけて滴下した。
ベンジルメタクリレート 40.2部
n-ブチルメタクリレート 40.2部
2-ヒドロキシエチルメタクリレート 105.4部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル 6.2部
滴下終了後、同温で30分攪拌した。さらに、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル3.2部をシクロヘキサノン60.0部に溶解させた溶液を、2時間かけて滴下した。滴下終了後、同温で攪拌を1.5時間継続した。その後、室温まで冷却して重合反応を終了させた。
次に、このフラスコに2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート114.2部、ラウリン酸ジブチルスズ0.02部、重合禁止剤としてメトキノン0.2部を添加し、乾燥空気を注入しながら80℃で2時間攪拌した。次にこの反応溶液をサンプリングしてIRを測定し、約2260cm-1付近のイソシアネート基のピークが消失しているのを確認してから、冷却を開始し、シクロヘキサノンを添加して溶液の固形分が30%になるように調整して反応を終了した。
得られた感光性樹脂の重量平均分子量(Mw)は35700、二重結合当量は370、ウレタン結合濃度は、2.703mmol/gであった。
【0054】
(実施例1)
合成例1の樹脂ワニス(樹脂固形分30%のシクロヘキサノン溶液)50.0部、多官能アクリレート化合物としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)を15.0部、光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトンを2.5部およびN-メチルジエタノールアミン0.5部を混合し、感光性樹脂組成物の溶液を調整した。
【0055】
(実施例2〜5)
合成例1の樹脂ワニスを、合成例2〜5の樹脂ワニスに変えた以外は、実施例1と同様にして感光性樹脂組成物の溶液を調整した。
【0056】
(比較例1〜4)
合成例1の樹脂ワニスを、合成例6〜9の樹脂ワニスに変えた以外は、実施例1と同様にして感光性樹脂組成物の溶液を調整した。
【0057】
感光性組成物の光硬化性および耐熱性の評価は、次の方法で行った。
【0058】
<光硬化性>
1)タック
実施例1〜5および比較例1〜4で調整した溶液を、バーコーター#8を用いてPETフィルム上に塗工し、80℃で30分間乾燥後、120W/cmメタルハライドランプを用いて紫外線を照射した。
照射は、1回につき50mJ/cmとし、1回の照射ごとに塗膜を指触により観察した。指紋がつくかどうかを目視で確認し、指紋がつかなくなる照射回数をカウントした。
この値が小さいほど、少ない露光量で塗膜が硬化し得ることを示し、光硬化性が優れていることが言える。実用的な照射光量を考慮し、照射回数を以下のように判定した。試験結果を表1に示す。なお、○以上が実用レベルを示す。
1回・・・◎ 、 2回・・・○ 、 3回・・・△ 、 4回以上・・・×
【0059】
2)MEKラビング試験
実施例1〜5および比較例1〜4で調整した溶液を、バーコーター#8を用いてPETフィルム上に塗工し、80℃で30分間乾燥後、120W/cmメタルハライドランプを用いて100mJ/cmの紫外線を照射した。
照射後の塗膜を、メチルエチルケトンを滲み込ませた綿棒でラビング(一往復擦る)し、塗膜が剥がれて下地のPETフィルムが露出した時のラビング回数をカウントした。
この値が大きいほど、より強固に塗膜が硬化していることを示し、光硬化性が優れていることが言える。実用的な照射光量を考慮し、ラビング回数を以下のように判定した。試験結果を表1に示す。なお、○以上が実用レベルを示す。
100回以上・・・◎
50回以上100回未満・・・○
10回以上50回未満・・・△
10回未満・・・×
【0060】
<耐熱性>
実施例1〜5および比較例1〜4で調整した溶液を、バーコーター#8を用いてPETフィルム上に塗工し、80℃で30分間乾燥後、120W/cmメタルハライドランプを用いて100mJ/cmの紫外線を照射した。
照射後の硬化塗膜を、カッターで約5mg削り取り、熱重量分析測定にて重量減少が5%となる温度を測定した。なお、熱重量分析測定は、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製示差熱熱重量同時測定装置「EXSTAR6300 TG/DTA」を用い、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/min、窒素流量50mL/minの条件で行った。
この5%重量減少温度が高いほど、塗膜の耐熱性が優れていることが言える。実用的な耐熱性を考慮し、5%重量減少温度を以下のように判定した。試験結果を表1に示す。なお、○以上が実用レベルを示す。
180℃以上・・・◎
150℃以上180℃未満・・・○
120℃以上150℃未満・・・△
120℃未満・・・×
【0061】
<表1>
【表1】

【0062】
表1の結果から、本発明の感光性樹脂は従来技術に比べ、優れた光硬化性と優れた耐熱性とを兼ね備えていることが言える。また、実施例の結果からもわかるように、本発明の感光性樹脂は、ウレタン結合近傍のエチレン性不飽和二重結合濃度が高いという特徴から、ウレタン結合濃度が高い場合においても、優れた耐熱性を発揮することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(a)と、(a)以外のエチレン性不飽和単量体(b)とを重合してなる共重合体中の水酸基に、1つのイソシアネート基および2つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(c)中のイソシアネート基を反応してなる感光性樹脂。
【請求項2】
1つのイソシアネート基および2つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(c)が、下記一般式(1)で表される化合物である請求項1記載の感光性樹脂。
一般式(1)
【化1】


(ただし、R、Rは、それぞれ水素原子またはメチル基を表す。また、Rは、水素原子、C〜Cのアルキル基を表す。)
【請求項3】
二重結合当量が、140〜2000である請求項1または2記載の感光性樹脂。
【請求項4】
ウレタン結合濃度が、0.1〜5.0mmol/gである請求項1〜3いずれか記載の感光性樹脂。
【請求項5】
重量平均分子量が、2000〜200000である請求項1〜4いずれか記載の感光性樹脂。
【請求項6】
水酸基を有するエチレン性不飽和単量体(a)と、(a)以外のエチレン性不飽和単量体(b)とを重合してなる共重合体中の水酸基に、1つのイソシアネート基および2つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(c)中のイソシアネート基を反応させることを特徴とする感光性樹脂の製造方法。
【請求項7】
1つのイソシアネート基および2つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(c)が、下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする請求項6記載の感光性樹脂の製造方法。
一般式(1)
【化2】


(ただし、R、Rは、それぞれ水素原子またはメチル基を表す。また、Rは、水素原子、C〜Cのアルキル基を表す。)

【公開番号】特開2007−204657(P2007−204657A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−26662(P2006−26662)
【出願日】平成18年2月3日(2006.2.3)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】