説明

感光性樹脂組成物及びそれを用いたカラーフィルター

【課題】 高透明性、パターンのエッジ形状が良好で高信頼性を得るカラーフィルター用に適した感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 (A)下記一般式(1)で表されるビスフェノール類から誘導される2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応物を更に飽和酸無水物及び飽和酸二無水物を反応させて得られた不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂化合物、(B)エチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマー、(C)光重合開始剤又は増感剤、(D)エポキシ基を有する化合物とを含むアルカリ現像型感光性樹脂組成物である。
【化1】


但し、R1〜R4はH、アルキル基、ハロゲン又はフェニル基を、R5はH又はメチル基を、Aは-CO-、-SO2-、-C(CF3)2-、-Si(CH3)2-、-CH2-、-C(CH3)2-、-O-、9,9-フルオレニル基又は直結合を、X及びY1、Y2は飽和カルボン酸残基又はHを、nは1〜20の数を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光硬化性樹脂組成物及びそれを用いたカラーフィルターに関し、詳しくは、カラーフィルター用のレジストに適した感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー液晶表示装置は、光の透過量あるいは反射量を制御する液晶部とカラーフィルターを構成要素とするが、そのカラーフィルターの製造方法は、通常、ガラス、プラスチックシート等の透明基板の表面に黒色のマトリックスを形成し、続いて、赤、緑、青の異なる色相を順次、ストライプ状あるいはモザイク状等の色パターンで形成する方法が用いられている。ここ数年、液晶テレビ、液晶モニター、カラー液晶携帯電話などあらゆる分野でカラー液晶表示装置が用いられてきており、カラーフィルターはこれらカラー液晶表示装置の視認性を左右する重要な部材の一つである。パターンサイズはカラーフィルターの用途並びにそれぞれの色により異なるが赤、緑、青の画素は200〜300μmから100μmへ、ブラックマトリックスは20μmから10μmへ細線化され、これにともなって感光性樹脂材料には高い寸法精度が求められている。
【0003】
これらカラーフィルター用途に用いられる感光性樹脂組成物としてフルオレン骨格を有する感放射線性樹脂が提案されている。例えば、特開平4−345673号公報、特開平4−345608号公報、特開平4−355450号公報や特開平4−363311号公報には、ビスフェノールフルオレン構造を有するエポキシ(メタ)アクリレートと多塩基性カルボン酸又はその無水物との反応生成物を用いた耐熱性の液状樹脂が開示されている。この樹脂は、その硬化物が透明性及び耐熱性に優れているものの、要求される性能を十分満足させ得るとは言えない。例えば、これらの樹脂を用いて成膜し、プリベークした場合、スティッキングが生じるためマスク汚れの原因となる。そのため、パターン形状のコントラスト向上に有利な密着露光法が適用できないという問題がある。加えて、耐熱性及び耐溶剤性の点においても著しい改善を達成することはできないという問題もある。
【0004】
上記ビスフェノールフルオレン構造を有する樹脂の改良研究が行われている。例えば、下記特許文献1〜3には、2官能芳香族エポキシアクリレート化合物と、酸無水物、及び酸二無水物を同時に反応させ高分子量化させる合成法が、例えば、特許文献4には、2官能芳香族エポキシアクリレート化合物と酸二無水物を反応させ、更に酸無水物を反応させ2段階反応させる合成法が記載されている。これら樹脂は、その硬化物が透明性、現像性、及び耐熱性に優れているものの、要求される性能を十分満足させえるとは言えない。加えて、耐熱変色性の点においても著しい改善を達成することはできないという問題もあり、合成方法だけによる解決は困難である。
【0005】
【特許文献1】特開平5−339356号公報、
【特許文献2】特開平6−1938号公報
【特許文献3】特開平7−3122号公報
【特許文献4】特開2003−89716号公報
【0006】
上記ビスフェノールフルオレン構造を有する化合物は芳香族環や脂肪族二重結合を有する不飽和酸無水物又は不飽和酸二無水物と反応させて得た感光性樹脂組成物であり、光透過性、現像性、耐熱性が要求される性能を十分満足させえるとは言えない。その結果、高透明性、耐熱黄変性が良好で高信頼性であるカラーフィルターを得ることが困難であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、上記の問題を解決し、高透明性、耐熱黄変性が良好な高信頼性を得るアルカリ現像型感光性樹脂組成物を提供することにある。また、他の目的は、このアルカリ現像型感光性樹脂組成物を用いて形成した塗膜並びにカラーフィルターを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは前記の課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、ビスフェノール類から誘導される芳香族エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応物を、更にa)飽和ジカルボン酸又はその酸無水物及びb)飽和テトラカルボン酸又はその酸二無水物とを反応させて得られた不飽和基含有化合物を含む感光性樹脂組成物とすれば、前記の問題点が解決されることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明は、ビスフェノール類から誘導される2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応物と、a)飽和ジカルボン酸又はその酸無水物及びb)飽和テトラカルボン酸又はその酸二無水物と反応させて得られたアルカリ可溶性樹脂(A)を樹脂成分の主成分として含有することを特徴とする感光性樹脂組成物である。ここで、a)飽和ジカルボン酸又はその酸無水物とb)飽和テトラカルボン酸又はその酸二無水物とのモル比a/bは0.1〜10の範囲である。
【0010】
また、本発明は、アルカリ可溶性樹脂(A)に加え、下記(B)〜(D)の成分を含有する前記の感光性樹脂組成物である。
(B)少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマー、
(C)光重合開始剤若しくは増感剤、
(D)少なくとも1つのエポキシ基を有する化合物
【0011】
更に、本発明は、アルカリ可溶性樹脂(A)が、下記一般式(I)で表される前記の感光性樹脂組成物である。
【化1】

(一般式(I)において、R1、R2、R3、R4は独立に、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子又はフェニル基を示し、R5は水素原子又はメチル基を示す。また、Aは-CO-、-SO2-、-C(CF3)2-、-Si(CH3)2-、-CH2-、-C(CH3)2-、-O-、9,9-フルオレニル基又は直結合を示し、Xは4価の飽和カルボン酸残基を示し、Y1及びY2は独立に水素原子、-OC-Z-(COOH)mで示される飽和カルボン酸残基(mは1〜3の数を示す)を示し、nは1〜20の数を示す。)
【0012】
また、本発明は前記の感光性樹脂組成物を硬化させて形成した塗膜である。更に、本発明は、前記の感光性樹脂組成物を塗布、硬化させて得られる塗膜を有するカラーフィルターである。
【0013】
以下、本発明の感光性樹脂組成物について詳細に説明する。
本発明の感光性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂(以下、(A)成分と略称することがある)を樹脂主成分として含有するアルカリ現像型感光性樹脂組成物としての性質を有する樹脂組成物である。アルカリ可溶性樹脂は、(メタ)アクリル酸に由来する不飽和基を有するため重合性を有する他、a)飽和ジカルボン酸又はその酸無水物(以下、飽和ジカルボン酸類と略称することがある)及びb)飽和テトラカルボン酸又はその酸二無水物(以下、飽和テトラカルボン酸類と略称することがある)に由来する酸性基を有するためアルカリ可溶性を有する。
なお、本明細書において、酸成分というときは、上記飽和ジカルボン酸類、飽和テトラカルボン酸類又は両方を意味し、飽和ジカルボン酸類及び飽和テトラカルボン酸類の飽和は、カルボキシル基又は酸無水物基を構成するカルボニル基(>C=O)以外の不飽和結合(単結合以外の結合)を有しないことを意味し、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸、メタクリル酸又は両方を意味する。
【0014】
(A)成分のアルカリ可溶性樹脂は、ビスフェノール類から誘導される2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物に、(メタ)アクリル酸を反応させ、得られたヒドロキシ基を有する化合物に、飽和ジカルボン酸類と飽和テトラカルボン酸類の少なくとも各1種類と反応させて得られたエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物である。(A)成分は、エチレン性不飽和二重結合とカルボキシル基とを併せ持つため、アルカリ現像型感光性樹脂組成物に優れた光硬化性、良現像性、パターニング特性を与えて保護膜、遮光膜、赤、緑、青の各画素の物性向上をもたらす。
【0015】
(A)成分は、好ましくは、一般式(II)で表されるエポキシ化合物から誘導される。このエポキシ化合物はビスフェノール類から誘導される。
【化2】

【0016】
一般式(I)及び(II)において、R1、R2、R3、R4は、独立に水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子又はフェニル基を示すが、好ましくは水素原子であり、R5は、水素原子又はメチル基を示す。また、Aは‐CO‐、−SO2−、‐C(CF3)2−、-Si(CH3)2‐、-CH2‐、-C(CH3)2‐、-O-、9,9-フルオレニル基又は不存在を示すが、好ましくは9,9-フルオレニル基である。lは0〜10の整数であるが、好ましくは0又は平均値として0〜2の範囲である。また、Y1、Y2は独立に水素原子、-OC-Z-(COOH)mで示される飽和カルボン酸残基(mは1〜3の数を示す)を示し、nは1〜20の数を示すが、好ましくはnは平均値として1〜10の範囲である。なお、9,9-フルオレニル基は、下記式(III)で表される基をいう。
【化3】

【0017】
好ましい(A)成分のアルカリ可溶性樹脂を与えるビスフェノール類としては、次のようなものが挙げられる。ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)ジメチルシラン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)ジメチルシラン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-クロロフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)エーテル等。また、Aが9,9−フルオレニル基である9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-クロロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フルオロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)フルオレン等も好ましく挙げられる。更には、4,4'-ビフェノール、3,3'-ビフェノール等も好ましく挙げられる。
【0018】
(A)成分は、上記のようなビスフェノール類から誘導されるエポキシ化合物から得ることができるが、かかるエポキシ化合物の他にフェノールノボラック型エポキシ化合物や、クレゾールノボラック型エポキシ化合物等も2個のグリシジルエーテル基を有する化合物を有意に含むものであれば使用することができる。また、ビスフェノール類をグリシジルエーテル化する際に、オリゴマー単位が混入することになるが、式(II)におけるlの平均値が0〜10、好ましくは0〜2の範囲であれば、本樹脂組成物の性能には問題はない。
【0019】
このようなエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応は、エポキシ化合物1モルに対し、約2モルの(メタ)アクリル酸を使用して行うが、かかる反応は前記特許文献1〜4等で公知である。この反応で得られる反応物は、前記特許文献等に記載されている他、後記式(V)で表されるようなエポキシ(メタ)アクリレート化合物である。
【0020】
エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応で得られた反応物と、酸成分を反応させてアルカリ可溶性樹脂(A)を得る。酸成分としては、エポキシ(メタ)アクリレート化合物分子中のヒドロキシ基と反応し得るa)飽和ジカルボン酸類とb)飽和テトラカルボン酸類が使用される。
【0021】
ここで、a)飽和ジカルボン酸類としては、飽和直鎖炭化水素ジカルボン酸又はその酸無水物や脂環式ジカルボン酸又はその酸無水物が使用される。
飽和直鎖炭化水素ジカルボン酸又はその酸無水物としては、例えば、コハク酸、アセチルコハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、シトラリンゴ酸、マロン酸、グルタル酸、クエン酸、酒石酸、オキソグルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、スベリン酸、ジグリコール酸等の化合物があり、更には飽和炭化水素が置換された直鎖炭化水素ジカルボン酸類又はその酸無水物でもよい。
脂環式ジカルボン酸又はその酸無水物としては、例えば、ヘキサヒドロフタル酸、シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸等の化合物があり、更には飽和炭化水素が置換された脂環式ジカルボン酸類又はその酸無水物でもよい。
【0022】
また、b)飽和テトラカルボン酸類としては、飽和直鎖炭化水素テトラカルボン酸又はその酸二無水物や脂環式テトラカルボン酸又はその酸二無水物が使用される。
ここで、飽和鎖状テトラカルボン酸又はその酸無水物としては、例えば、ブタンテトラカルボン酸、ペンタンテトラカルボン酸、ヘキサンテトラカルボン酸等があり、更には飽和炭化水素が置換された飽和鎖状テトラカルボン酸類又はその酸無水物でもよい。
また、脂環式テトラカルボン酸又はその酸無水物としては、シクロブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、シクロへプタンテトラカルボン酸ノルボルナンテトラカルボン酸等があり、更には飽和炭化水素が置換された脂環式テトラカルボン酸又はその酸無水物でもよい。
【0023】
a)飽和ジカルボン酸類とb)飽和テトラカルボン酸類は、それぞれ1種以上を使用することができ、a)飽和ジカルボン酸類とb)飽和テトラカルボン酸類の使用割合は、a/bのモル比として0.1〜10となる範囲、好ましくは0.2〜1となる範囲である。この使用割合は、最適分子量、アルカリ現像性、光透過性、耐熱性、耐溶剤性、パターン形状の効果に適した割合を選択することができるが、飽和テトラカルボン酸類の使用割合が大きいほどアルカリ溶解性が大となり、分子量が大となる傾向がなる。
【0024】
エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応で得られた反応物と、酸成分を反応させて(A)成分を製造する方法については、特に限定されるものでなく、前記特許文献1〜4に記載のような公知の方法を採用することができる。
有利には、エポキシ(メタ)アクリレート化合物分子中のヒドロキシ基1モル当たり酸成分が1/2モルとなるように定量的に反応させることが望ましい。また、反応温度としては、90〜130℃、好ましくは95〜125℃である。
【0025】
(A)成分を製造する方法の一例を9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンのようなビスフェノール類を出発原料とする場合について示せば、次のようである。
先ず、ビスフェノール類とエピクロロヒドリンとを反応させて下記一般式(IV)で表されるビスフェノール型エポキシ化合物を合成し、このビスフェノール型エポキシ化合物とCH2=CR5-COOHで表される(メタ)アクリル酸とを反応させて下記一般式(V)で表されるビスフェノール型エポキシアクリレート樹脂を合成し、次いでプロピレングリコールモノメチル溶剤中でビスフェノール型エポキシアクリレート樹脂と上記酸成分とを加熱下に反応させ、(A)成分である前記式(I)で表されるアルカリ可溶性樹脂を得る。
【0026】
【化4】

【化5】

式(IV)及び(V)において、R1、R2、R3、R4、R5及びAは、式(I)及び(II)で説明したと同様な意味を有する。
【0027】
ところで、上記(A)成分のアルカリ可溶性樹脂は新規樹脂でもある。
好ましい新規アルカリ可溶性樹脂には、式(V)において、Aが式(III)で表される基であり、R1〜R4がいずれも水素原子であり、R5が水素原子又はメチル基である化合物と、a)飽和ジカルボン酸又はその酸無水物及びb)飽和テトラカルボン酸又はその酸二無水物を、a/bのモル比を上記の範囲で反応させて得られたアルカリ可溶性樹脂(A)がある。そして、a)飽和ジカルボン酸類としては、ヘキサヒドロフタル酸無水物及び無水琥珀酸から選択される1以上の飽和ジカルボン酸類が好ましく、b)飽和テトラカルボン酸類としては、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物及びシクロブタンテトラカルボン酸二無水物から選択される1以上の飽和テトラカルボン酸類が好ましい。かかるアルカリ可溶性樹脂(A)は、式(I)で表されるが、Xは飽和テトラカルボン酸類の残基であり、Y1及びY2は、a)飽和ジカルボン酸類とb)飽和テトラカルボン酸類の使用量によって変化するが、少なくとも一部、好ましくは50%以上は飽和ジカルボン酸類の残基であり、他は飽和テトラカルボン酸類の残基、水素又は両者である。なお、上記は新規樹脂の発明としての観点からの好ましいアルカリ可溶性樹脂の説明と理解される。
【0028】
本発明の感光性樹脂組成物は、上記(A)成分を樹脂成分の主成分として含有する。ここで、樹脂成分とは、重合又は硬化させることにより樹脂となる成分をいい、樹脂の他、オリゴマー、モノマーを含む。また、主成分として含有するとは、20wt%以上、好ましくは50wt%以上、より好ましくは60wt%以上含むことをいう。溶剤を除いた状態で計算した場合は、50wt%以上、好ましくは70wt%以上含むことがよい。本発明の感光性樹脂組成物は、(A)成分を必須成分として含めばよく、(A)成分以外の成分は樹脂成分であっても、溶剤や充填材や着色剤等の非樹脂成分であってもよい。なお、上記樹脂成分定義にしたがうと、後記の(B)及び(D)成分は樹脂成分に該当し、(C)及び(E)成分は非樹脂成分に該当する。
【0029】
感光性樹脂組成物としての特徴を生かすためには、下記(B)〜(D)成分を含有することが好ましい。
(B)少なくとも1個以上のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマー、
(C)光重合開始剤若しくは増感剤、
(D)少なくとも1つ以上のエポキシ基を有する化合物
【0030】
(B)成分の少なくとも1個以上のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するモノマーや、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類を挙げることができ、これらの化合物は、その1種又は2種以上を使用することができる。
【0031】
これら(A)成分と(B)成分の配合割合は、重量比(A)/(B)で20/80〜90/10であり、好ましくは40/60〜80/20であり、より好ましくは60/40〜80/20である。(A)成分の配合割合が少ないと、光硬化後の硬化物が脆くなり、また、未露光部において塗膜の酸価が低いためにアルカリ現像液に対する溶解性が低下し、パターンエッジがぎざつきシャープにならないといった問題が生じ、また、多いと、樹脂に占める光反応性官能基の割合が少なく架橋構造の形成が十分でなく、更に、樹脂成分における酸価度が高過ぎて、露光部におけるアルカリ現像液に対する溶解性が高くなることから、形成されたパターンが目標とする線幅より細ったり、パターンの欠落が生じや易くなるといった問題が生じる恐れがある。
【0032】
また、(C)成分の光重合開始剤若しくは増感剤としては例えば、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルアセトフェノン等のアセトフェノン類、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p'-ビスジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、等のベンゾインエーテル類、2-(o-クロロフェニル)-4,5-フェニルビイミダゾール、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)ビイミダゾール、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルビイミダゾール、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルビイミダゾール、2、4,5-トリアリールビイミダゾール等のビイミダゾール系化合物類、2-トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル-5-(p-シアノスチリル)-1,3,4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-(p-メトキシスチリル)-1,3,4-オキサジアゾール等のハロメチルチアゾール化合物類、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-メチル−4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-フェニル-4、6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-クロロフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロRメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(3,4,5-トリメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メチルチオスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン等のハロメチル−S−トリアジン系化合物類、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(O-ベンゾイルオキシム)、1-(4-フェニルスルファニルフェニル)ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-O-ベンゾアート、1-(4-メチルスルファニルフェニル)ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-O-アセタート、1-(4-メチルスルファニルフェニル)ブタン-1-オンオキシム-O-アセタート等のO-アシルオキシム系化合物類、ベンジルジメチルケタール、チオキサンソン、2-クロロチオキサンソン、2,4-ジエチルチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン、2-イソプロピルチオキサンソン等のイオウ化合物、2-エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン等のアントラキノン類、アゾビスイソブチルニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、クメンパーオキシド等の有機過酸化物、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール等のチオール化合物、トリエタノールアミン、トリエチルアミン等の第3級アミンなどが挙げられる。
【0033】
これらの光重合開始剤や増感剤は、その1種又は2種以上を使用することができる。
【0034】
(C)成分の光重合開始剤若しくは増感剤の使用量は、(A)及び(B)の各成分の合計100重量部を基準として2〜30重量部であり、好ましくは5〜20重量部である。(C)成分の配合割合が少ないと、光重合の速度が遅くなって感度が低下し、一方、多過ぎると感度が強すぎてパターン線幅がパターンマスクに対して太った状態になり、マスクに対して忠実な線幅が再現できない、又は、パターンエッジがぎざつきシャープにならないといった問題が生じる恐れがある。
【0035】
(D)成分のエポキシ化合物には更なる密着性向上、耐アルカリ性の向上を目的にエポキシ樹脂を混合することができる。エポキシ基を有する化合物としては、例えばフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、フェニルグリシジルエーテル、p−ブチルフェノールグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、ジグリシジルイソシアヌレート、アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基を少なくとも1個有する化合物などが挙げられる。
【0036】
このエポキシ化合物の配合量は、上記(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して10〜30重量部の範囲で配合するのがよい。
上記(A)成分、有利には(A)〜(D)成分を必須成分として含む感光性樹脂組成物は、カラーフィルターインク、保護膜等のカラーフィルター用材料などに有用であり、必要により溶剤に溶解されたり、各種添加剤が配合される。
【0037】
カラーフィルターインクとして使用する場合は、(E)成分として着色剤を配合することもできる。着色剤は、色調が特に限定されるものでなく、得られるカラーフィルターの用途に応じて適宜選定され、顔料、染料あるいは天然色素何れでもよい。カラーフィルターには高精細な発色と耐熱性が求められることから、通常、顔料、特に好ましくは有機顔料、カーボンブラックが用いられる。
【0038】
前記有機顔料としては、赤色の顔料には、単一の赤色顔料系を用いてもよいし、黄色顔料系を赤色顔料系に混合して調色を行ってもよい。赤色顔料系としては、例えば、アントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロール系顔料、ペリレン系顔料など、特に好ましくはジケトピロロピロールレッド( C.I.ピグメントレッド254)やジアントラキノリルレッド( C.I.ピグメントレッド177)などが挙げられる。
【0039】
黄色顔料系としては、例えば、イソインドリンイエロー( C.I.ピグメントイエロー139)、ニッケルアゾイエロー( C.I.ピグメントイエロー150)、ジアリリドイエロー( C.I.ピグメントイエロー83)などが挙げられる。これらの赤色顔料系及び黄色顔料系は、それぞれ2種以上混合して用いることもできる。また、赤色顔料系と黄色顔料系を混合して用いる場合には、赤色顔料系と黄色顔料系の総量100重量部に対して黄色顔料系を90重量部以下で用いることが好ましい。
【0040】
緑色の顔料には、単一の緑色顔料系を用いてもよいし、黄色顔料系を緑色顔料系に混合して調色を行ってもよい。緑色顔料系としては、塩素化フタロシアニングリーン( C.I.ピグメントグリーン7)、臭塩素化フタロシアニングリーン(C.I.ピグメントグリーン36)などが挙げられる。また、黄色顔料系としては、例えば、イソインドリンイエロー( C.I.ピグメントイエロー139)、ジアリリドイエロー( C.I.ピグメントイエロー83)などが挙げられる。これらの緑色顔料系及び黄色顔料系は、それぞれ2種以上混合して用いることもできる。また、緑色顔料系と黄色顔料系を混合して用いる場合には、緑色顔料系と黄色顔料系の総量100重量部に対して黄色顔料系を90重量部以下で用いることが好ましい。
【0041】
青色の顔料には、単一の青色顔料系を用いてもよいし、紫色顔料系を青色顔料系に混合して調色を行ってもよい。青色顔料系としては、フタロシアニン系顔料、スレン系顔料など、特に好ましくはε-フタロシアニンブルー(C.I.ピグメントブルー15:6)などが挙げられる。また、紫色顔料系としては、例えば、ジオキサジンバイオレット(C.I.ピグメントバイオレット23)などが挙げられる。これらの青色顔料系及び紫色顔料系は、それぞれ2種以上混合して用いることもできる。また、青色顔料系と紫色顔料系を混合して用いる場合には、青色顔料系と紫色顔料系の総量100重量部に対して紫色顔料系を90重量部以下で用いることが好ましい。
【0042】
遮光性顔料には、黒色有機顔料、混色有機顔料又は遮光材などが挙げられ、黒色有機顔料としては、例えばペリレンブラック、シアニンブラック等が挙げられる。混色有機顔料としては、赤、青、緑、紫、黄色、シアニン、マゼンタ等から選ばれる少なくとも2種以上の顔料を混合して擬似黒色化されたものが挙げられる。遮光材としては、カーボンブラック、酸化クロム、酸化鉄、チタンブラック、アニリンブラック、シアニンブラックを挙げることができ、2種以上を適宜選択して用いることもできるが、特にカーボンブラックが、遮光性、表面平滑性、分散安定性、樹脂との相溶性が良好な点で好ましい。
【0043】
また、着色剤は所望により、分散剤と共に使用することができる。このような分散剤としては、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性系、シリコーン系、フッ素系等の界面活性剤を挙げることができる。前記界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類等を挙げることができる。
【0044】
(E)成分の着色剤の使用量は、(A)成分及び(B)成分の総量100重量部に対して30〜280重量部、好ましくは50〜230重量部の範囲がよい。少ないと、色純度又は遮光性が十分でなくなり、望ましいコントラストを得るためには膜厚を厚くしなければならなくなり、カラーフィルターの面平滑性が得にくい。反対に、多すぎると、(A)成分を含むカラーフィルター用感光性樹脂組成物の分散安定性が低下し、また、本来のバインダーとなる感光性樹脂の含有量も減少するため、現像特性を損なうと共に膜形成能が損なわれるという好ましくない問題が生じる恐れがある。
【0045】
本発明の感光性樹脂組成物をカラーフィルター用等に使用する場合においては、上記(A)〜(E)成分の他に溶剤を使用することが好ましい。溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、α−若しくはβ−テルピネオール等のテルペン類等、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N-メチル-2-ピロリドン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類等が挙げられ、これらを用いて溶解、混合させることにより、均一な溶液状の組成物とすることができる。
【0046】
また、本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて硬化促進剤、熱重合禁止剤、可塑剤、充填材、溶剤、レベリング剤、消泡剤等の添加剤を配合することができる。熱重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、tert-ブチルカテコール、フェノチアジン等を挙げることができ、可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、トリクレジル等を挙げることができ、充填材としては、グラスファイバー、シリカ、マイカ、アルミナ等を挙げることができ、また、消泡剤やレベリング剤としては、例えば、シリコン系、フッ素系、アクリル系の化合物を挙げることができる。
【0047】
本発明の感光性樹脂組成物は、上記(A)成分、好ましくは(A)〜(D)成分又は(A)〜(E)成分、又はこれらと溶剤を主成分として含有する。溶剤を除いた固形分(固形分には硬化後に固形分となるモノマーを含む)中に、(A)〜(D)成分が合計で70wt%以上、好ましくは80wt%、より好ましくは90wt%以上含むことが望ましい。溶剤の量は、目標とする粘度によって変化するが、20〜80wt%の範囲が望ましい。本発明の感光性樹脂組成物をカラーフィルター用とする場合は、保護膜用途に適する。
【0048】
本発明の塗膜は、例えば、上記感光性樹脂組成物の溶液を、基板等に塗布し、乾燥し、光(紫外線、放射線等を含む)を照射し、これを硬化させることにより得られる。光が当たる部分と当たらない部分とを設けて、光が当たる部分だけを硬化させ、他の部分をアルカリ溶液で溶解させれば、所望のパターンの塗膜が得られる。
【0049】
次に、感光性樹脂組成物を用いたカラーフィルターの製造法について説明する。まず、基板の表面上に、必要に応じて、画素を形成する部分を区画するように遮光層を形成し、この基板上に、例えば赤色の顔料が分散された感光性樹脂組成物の液状組成物を塗布したのち、プレベークを行って溶剤を蒸発させ、塗膜を形成する。次いで、この塗膜にフォトマスクを介して露光したのち、アルカリ性現像液を用いて現像して、塗膜の未露光部を溶解除去し、その後ポストベークすることにより、赤色の画素パターンが所定の配列で配置された画素アレイを形成する。その後、緑色又は青色の顔料が分散された感光性樹脂組成物の液状組成物を用い、前記と同様にして、各液状組成物の塗布、プリベーク、露光、現像及びポストベークを行って、緑色の画素アレイ及び青色の画素アレイを同一基板上に順次形成することにより、赤色、緑色及び青色の三原色の画素アレイが基板上に配置し、更に、この上に保護膜として、着色剤を含まない感光性樹脂組成物の液状組成物を前記と同様にして、各液状組成物の塗布、プリベーク、露光、現像及びポストベークを行って、保護膜が形成されたカラーフィルターを得る。ここで、本発明のカラーフィルターは、着色剤を含む感光性樹脂組成物及び着色剤を含まない感光性樹脂組成物のいずれか1つ以上が本発明の感光性樹脂組成物である必要がある。
【0050】
感光性樹脂組成物の液状組成物を基板に塗布する際には、公知の溶液浸漬法、スプレー法の他、ローラーコーター機、ランドコーター機やスピナー機を用いる方法等の何れの方法をも採用することができる。これらの方法によって、所望の厚さに塗布した後、溶剤を除去する(プリベーク)ことにより、被膜が形成される。プリベークはオーブン、ホットプレート等による加熱、真空乾燥又はこれらの組み合わせることによって行われる。プリベークにおける加熱温度及び加熱時間は使用する溶剤に応じて適宜選択され、例えば80〜120℃の温度で1〜10分間行われる。
【0051】
カラーフィルターを作製する際に使用される放射線としては、例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等を使用することができるが、波長が250〜450nmの範囲にある放射線が好ましい。また、このアルカリ現像に適した現像液としては、例えば、アルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸塩の水溶液、アルカリ金属の水酸化物の水溶液等を挙げることができるが、特に炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等の炭酸塩を0.05〜10重量%含有する弱アルカリ性水溶液を用いて20〜30℃の温度で現像するのがよく、市販の現像機や超音波洗浄機等を用いて微細な画像を精密に形成することができる。なお、アルカリ現像後は、通常、水洗する。現像処理法としては、シャワー現像法、スプレー現像法、ディップ(浸漬)現像法、パドル(液盛り)現像法等を適用することができる。現像条件は、常温で10〜120秒が好ましい。
【0052】
このようにして現像した後、180〜250℃の温度及び20〜100分の条件で熱処理(ポストベーク)が行われる。このポストベークは、パターニングされた塗膜と基板との密着性を高めるため等の目的で行われる。これはプリベークと同様に、オーブン、ホットプレート等により加熱することによって行われる。本発明のパターニングされた塗膜は、以上のフォトリソグラフィー法による各工程を経て形成される。
【0053】
画素及び/又はブラックマトリックスを備えたカラーフィルターを形成する際に使用される基板としては、例えば、ガラス、透明フィルム(例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルフォン等)上にITO、金等の透明電極が蒸着あるいはパターニングされたもの等が用いられる。また、これらの基板には、所望により、シランカップリング剤等による薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着等の適宜の前処理を施しておくこともできる。
【発明の効果】
【0054】
本発明のカラーフィルター用感光性樹脂組成物は、高透明性、耐熱黄変性が良好で高信頼性を得ることができ、このため、本発明のカラーフィルター用感光性樹脂組成物は、カラー液晶表示装置、カラーファクシミリ、イメージセンサー等の各種の多色表示体や、光学機器等に使用されるカラーフィルター用の着色インク、及び、これらによって形成されたブラックマトリックスを有するカラーフィルターや、テレビ、ビデオモニター、あるいは、コンピューターのディスプレー等に好適に使用することができる。特に、カラーフィルター保護膜材料として好適である。また、このようにして得られたカラーフィルターは、例えば、透過型あるいは反射型のカラー液晶表示装置、カラー撮像管素子、カラーセンサー等に極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
以下、合成例、実施例、比較例により、本発明を更に詳細に説明する。以下の合成例における樹脂の評価は、断りのない限り以下の通りである。
固形分濃度:樹脂溶液を160℃にて2hr加熱して求めた。
酸価:1/10N−KOHエタノ−ル(50%)水溶液で滴定して求めた。
分子量:GPCにより求めた。この分子量は、未反応原料を除いた(A)成分のポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)である。
【0056】
また、合成例で使用する略号は次のとおりである。
FHPA:フルオレンビスフェノール型エポキシ樹脂とアクリル酸との等当量反応物(式(V)において、Aが9,9-フルオレニル基であり、R1〜R5がいずれも水素原子である化合物)。この合成例では、新日鐵化学社製のASF-400(酸価1.28mgKOH/g、エポキシ当量21300)を使用した。
BPTA:ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
CHDA:シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物
BTA:ブタンテトラカルボン酸二無水物
CBDA:シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
HHPA:ヘキサヒドロフタル酸無水物
SA:無水琥珀酸
THPA:テトラヒドロフタル酸無水物
TPP:トリフェニルホスフィン
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0057】
合成例1
還流冷却器付き500ml四つ口フラスコ中にFHPAの50%PGMEA溶液238.0gと、CHDA33.0g、SA9.81g、PGMEA46g及びTPP0.46gを仕込み、120〜125℃に加熱下に1hr撹拌し、更に75〜80℃にて6hrの加熱撹拌を行って、アルカリ可溶性樹脂溶液を合成した。得られた樹脂溶液の固形分は53.5wt%、酸価(固形分換算)は150mgKOH/g、GPC分析による樹脂溶液中のアルカリ可溶性樹脂(A)-1の面積%は91%、Mwは10000であった。また、得られたアルカリ可溶性樹脂(A)-1の赤外吸収スペクトルを図1に示す。
【0058】
合成例2〜6
表1に記載した飽和酸無水物及び飽和酸二無水物を用いた他は、合成例1と同様にしてアルカリ可溶性樹脂(A)-2〜(A)-6を合成した。なお、FHPAに対する飽和酸無水物及び飽和酸二無水物の合計の使用モル比は合成例1と同じである。
【0059】
【表1】

【0060】
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。ここで、実施例、比較例で用いた原料及び略号は以下の通りである。
【0061】
(A)-1〜(A)-4:上記合成例1〜4で得られたアルカリ可溶性樹脂
(B):ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアク リレートとの混合物(日本化薬(株)製、 商品名 DPHA)
【0062】
(C):オキシムエステル系光重合開始剤(チバスペシャリティ製、CGI124)
【0063】
(D):フルオレン型エポキシ樹脂(新日鐵化学社製、商品名ESF-300)
【0064】
溶剤−1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
溶剤−2:乳酸エチル
添加剤−1:シランカップリング剤
添加剤−2:界面活性剤
【実施例】
【0065】
上記配合成分を表2に記載の割合で配合して、実施例1〜4の樹脂組成物を調製した。なお、配合量の数値は重量部である。
【0066】
【表2】

【0067】
上記実施例1〜4の感光性樹脂組成物を均一に混合して得た感光性樹脂組成物を、スピンコーターを用いて125mm×125mmのガラス基板上にポストベーク後の膜厚が3.0μmとなるように塗布し、90℃で2分間プリベーク。その後、I線照度30mW/cm2の超高圧水銀ランプで200mJ/cm2の紫外線を照射し感光部分の光硬化反応を行った。次に、この露光済み塗板を0.04%水酸化カリウム水溶液中、23℃にて60秒の0.1MPa圧シャワー現像及び0.5MPa圧のスプレー水洗を行い、塗膜の未露光部を除去し、熱風乾燥機を用いて230℃、30分間熱ポストベークしてカラーフィルター用保護膜を作成した。
【0068】
更に、ポストベーク実施済みの保護膜作成基板を、熱風乾燥機を用いて250℃/60分熱処理を行い耐熱変色性評価した。
実施例、比較例における光透過性等の評価結果を表3に示す。これらの評価方法は以下の通りである。
【0069】
膜厚:触針式段差形状測定装置(ケーエルエー・テンコール(株)製 商品名P-10)を用いて測定した。
透過率:分光光度計を用い、400nm波長域の光線透過率評価をした。
耐熱変色性:分光光度計を用い透過率96%以上のときを◎<良好>、93〜95%のときを○、92%以下のときを×<不良>と判定した。
ライン形状:測長顕微鏡を用い、現像後の画素パターンを観察し、基板に対する剥離やパターンエッジ部分のギザツキが認められないものを○<良好>、認められるものを×<不良>と判定した。
残膜率:プレベーク後の膜厚と現像後の膜厚との比率を評価した。
【0070】
【表3】

【0071】
比較例1
(A)成分を(A)-7に変更した以外は、実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を調製し、カラーフィルター用保護膜を作成した。これについて、実施例1と同様の条件で透過率の評価を行ったが、透過率が92%以下であった。更に、耐熱変色性評価を行ったが、透過率が87%以下で不良(×)であった。なお、(A)-7は合成例1のアルカリ可溶性樹脂(A)-1の製造の際、SAの代わりにTHPAを使用し、CHDAの代わりにBPTAを使用して合成したアルカリ可溶性樹脂である。
【0072】
比較例2
(A)成分を(A)-8に変更した以外は、実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を調製し、カラーフィルター用保護膜を作成した。これについて、実施例1と同様の条件で透過率の評価を行ったが、透過率が95%以下であった。更に、耐熱変色性評価を行ったが、透過率が91%以下で不良(×)であった。
なお、(A)-8は合成例1のアルカリ可溶性樹脂(A)-1の製造の際、SAの代わりにTHPAを使用して合成したアルカリ可溶性樹脂である。
【0073】
比較例3
(A)成分を(A)-9に変更した以外は、実施例1と同様にして感光性樹脂組成物を調製し、カラーフィルター用保護膜を作成した。これについて、実施例1と同様の条件で透過率の評価を行ったが、透過率が95%以下であった。更に、耐熱変色性評価を行ったが、透過率が91%以下で不良(×)であった。
なお、(A)-9は合成例1のアルカリ可溶性樹脂(A)-1の製造の際、CHDAの代わりにBPTAを使用して合成したアルカリ可溶性樹脂である。
【0074】
比較例1〜3のカラーフィルター用保護膜について、残膜率を測定したところ全て残膜率97%であった。
【0075】
実施例5、6及び比較例4、5
表4記載の割合で各成分を配合して感光性樹脂組成物を調製した。なお、ここでは着色剤成分として、他の色よりも多量の顔料分を必要とする緑色顔料(塩臭素化フタロシアニン:Pigment Green36)を使用した。
【0076】
【表4】

【0077】
表4の感光性樹脂組成物について、その製造直後(直後)、25℃で24hr保存後(24hr後)、25℃で72hr保存後(72hr後)のものを使用して、ガラス基板上にポストベーク後の膜厚が2.0μmとなるように塗布し、90℃で2分間プリベーク後、所定マスクを用いて実施例1と同様の条件で光硬化を行った。その後、0.04%水酸化カリウム水溶液のアルカリ溶液で現像を行い、その現像時間(ライン確認から現像終了までの秒数)とマスク100μmラインの硬化部分の線幅測定を行った。3サンプルによる平均測定値を表5に示す。なお、表中、現像試験のXは現像不可を示し、100μ線幅のXはライン形成不可を示す。
【0078】
【表5】

【0079】
一般に、樹脂量が少ないものほど、樹脂の硬化不足やアルカリ溶解性の低下が起こり光硬化時のライン形成が困難となるが、上記結果からもその傾向が確認できる。すなわち、実施例5及び 6の(A)成分に(A)-1を用いた系においては、安定したアルカリ現像時間でライン幅を形成することができ、良好の結果となった。また、室温で24時間後、72時間保存した後の結果も、現像終了時間は経時でも安定した結果が得られた。一方、比較例4及び5は、(A)成分に(A)-7を用いた系であるが、これらのものはアルカリ現像時に露光部分が剥がれてしまい全くラインの形成ができないか、形成が確認できてもすぐに剥がれてしまう不良の結果となった。以上の結果から、高顔料濃度の感光性樹脂組成物においても、(A)-1を用いたものは高いアルカリ現像特性と感度を維持していると判断できる。
【0080】
実施例7〜9、比較例6〜8
次に、赤、緑、青の各色について、表6に示した配合割合で感光性樹脂組成物を調製し、100μmマスク時の線幅の比較を行った。なお、着色剤としては、赤(Pigment Red254)、緑(Pigment Green36)、青(Pigment Blue15:6)を用いたが、緑と赤では、補色としてPigment Yellow 150を用いた。
【0081】
【表6】

【0082】
上記感光性樹脂組成物をガラス基板上に塗布し、各露光量(50mJ,100mJ,150mJ)別の露光時使用のマスク100μmのラインに対する、アルカリ現像後の光硬化部分の実測値を測定した。結果を表7に示す。
【0083】
【表7】

【0084】
表7の結果より、各色の(A)-1と(A)-7のみが異なる配合において、ガラス基板上に塗布、露光、アルカリ現像を行った後、マスク100μmの各サンプルの光硬化部の線幅を比較すると、各色とも(A)-1を用いた実施例7〜9において、それぞれ対応する比較例6〜8よりも同露光量にあるにも関わらず、幅広い線幅を維持することができ、各色において顔料を問わず、光硬化性樹脂としての高い光硬化性を確認することができた。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】合成例1で得られたアルカリ可溶性樹脂(A)-1のIRスペクトル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスフェノール類から誘導される2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応物と、a)飽和ジカルボン酸又はその酸無水物及びb)飽和テトラカルボン酸又はその酸二無水物を、a/bのモル比が0.1〜10となる範囲で反応させて得られたアルカリ可溶性樹脂(A)を樹脂成分の主成分として含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項2】
アルカリ可溶性樹脂(A)に加え、下記(B)〜(D)の成分を含有する請求項1記載の感光性樹脂組成物。
(B)少なくとも1個以上のエチレン性不飽和結合を有する光重合性モノマー、
(C)光重合開始剤若しくは増感剤、
(D)少なくとも1つ以上のエポキシ基を有する化合物
【請求項3】
アルカリ可溶性樹脂(A)が、下記一般式(I)で表される請求項1又は2記載の感光性樹脂組成物。
【化1】

(一般式(I)において、R1、R2、R3及びR4は独立に、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子又はフェニル基を示し、R5は水素原子又はメチル基を示す。また、Aは-CO-、-SO2-、-C(CF3)2-、-Si(CH3)2-、-CH2-、-C(CH3)2-、-O-、9,9-フルオレニル基又は直結合を示し、Xは4価の飽和カルボン酸残基を示し、Y1及びY2は独立に水素原子、-OC-Z-(COOH)mで示される飽和カルボン酸残基(mは1〜3の数を示す)を示し、nは1〜20の数を示す。)
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を硬化させて形成した塗膜。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を塗布、硬化させて得られる塗膜によって形成されているカラーフィルター。

【図1】
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【公開番号】特開2006−3860(P2006−3860A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−331650(P2004−331650)
【出願日】平成16年11月16日(2004.11.16)
【出願人】(000006644)新日鐵化学株式会社 (747)
【Fターム(参考)】