説明

感光性難燃性組成物及びその利用

【課題】エチレン性不飽和二重結合とカルボキシル基とを有する成分に、ハロゲンを含まず、溶解性が良く、樹脂添加時に機械的特性、成形加工性等の樹脂本来の特性を低下させず、白化を起こさない難燃剤を用いる事で、プリント基板などの保護層に最適な感光性難燃性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】エチレン性不飽和二重結合とカルボキシル基とを有する成分と、9、10−ジヒドロ−9−オキサ−10−オキシド−10−ホスファフェナントレン部位を1分子中に2つ含む難燃剤とを含有することを特徴とする感光性難燃性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板等、特にフレキシブルプリント配線板用のソルダーレジスト、メッキレジストとして好適であり、層間電気絶縁材料、感光性光導波路等としても有用な、ハロゲン及びアンチモンを含有しない感光性難燃性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板には、製造時に電子部品を表面実装する際に行われるハンダ付け工程等、製造中や製造後の配線回路の保護等を目的としてカバーレイやソルダーレジスト等と呼ばれる保護層が形成されている。
【0003】
例えば、携帯電話やデジタルカメラ等の情報機器には、高機能化や小型軽量化等のためにリジッド配線板に加えてフレキシブルプリント配線板が使用されていることが多い。フレキシブルプリント配線板は主に機器の屈曲部や接続部周辺に用いられるため、これに用いるフォトソルダーレジストには高度の可撓性・耐折性を保持しながら、ファインパターンを実現しうる現像性、ハンダ耐熱性、基板密着性、絶縁性等を満足させる性能が要求されている。
【0004】
また、電子材料の分野では難燃性を要求される事が多く、レジスト形成用組成物には、難燃剤を加えることが多い。従来は、難燃剤としてアンチモン酸化物やハロゲン系難燃剤が用いられてきた。しかし、アンチモン酸化物は中毒を引き起こす有毒物質であり、ハロゲン系難燃剤を用いた場合、焼却時にダイオキシンを生じるという問題があった。そこで、ハロゲンやアンチモンを含有しない難燃剤の利用が望まれている。
【0005】
ハロゲンやアンチモンを含有しない難燃剤としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムのような無機系難燃剤が挙げられる。しかし、充分な難燃性を得るためには、前記化合物を多量に添加する必要があり、その結果、フレキシブルプリント基板用フォトソルダーレジストとして要求される基板密着性や可撓性・耐折性が満足のいくものでなくなってしまう。
【0006】
また、非特許文献1に開示されているようなリン系難燃剤は、上記の無機系難燃剤の問題に加え、感光性成分もしくは溶剤への溶解性が低く、結晶性が高いので、液状の感光性難燃性組成物が白濁し、形成される難燃性組成物層も白化するという問題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Journal of Polymer Science, PartA: Polymer Chemistry,第40巻,359頁,2001年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ハロゲン及びアンチモンを含まず、透明性に優れる感光性難燃性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記諸問題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、本発明に至った。
すなわち、本発明は、エチレン性不飽和二重結合とカルボキシル基とを有する成分(A)と、前記 成分(A)と下記一般式[1]で示される難燃剤(B)とを含有することを特徴とする感光性難燃性組成物に関する。
【0010】
一般式[1]
【化1】

【0011】
(式中、X1およびX2は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシル基、置換もしくは無置換のアミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のシリルオキシ基、置換もしくは無置換のシリル基、置換もしくは無置換のホスフィンオキシ基、置換もしくは無置換のホスフィン基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の複素環オキシ基、置換もしくは無置換の複素環基、置換もしくは無置換のアルキルチオ基、置換もしくは無置換のアリールチオ基、スルホン酸基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、または、置換カルボニル基を表す。但し、X1とX2は同じになることはない。
1〜R24はそれぞれ独立に水素原子、ヒドロキシル基、置換もしくは無置換のアミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のシリルオキシ基、置換もしくは無置換のシリル基、置換もしくは無置換のホスフィンオキシ基、置換もしくは無置換のホスフィン基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換の複素環オキシ基、置換もしくは無置換の複素環基、置換もしくは無置換のアルキルチオ基、置換もしくは無置換のアリールチオ基、スルホン酸基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、または、置換カルボニル基を表す。X1とR1およびX2とR6は、それぞれ独立に、環を形成しても良い。)
【0012】
また、本発明は、R9〜R24が水素原子である上記発明に記載の感光性難燃性組成物に関する。
【0013】
また、本発明は、R1〜R8が水素原子である上記発明いずれかに記載の感光性難燃性組成物に関する。
【0014】
また、本発明は、エチレン性不飽和二重結合とカルボキシル基とを有する成分(A)が、ウレタン樹脂であることを特徴とする上記発明のいずれかに記載の感光性難燃性組成物に関する。
【0015】
また、本発明は、有機溶剤をさらに含有することを特徴とする上記発明のいずれかに記載の感光性難燃性組成物に関する。
【0016】
また、本発明は、上記発明に記載の感光性難燃性組成物から形成される感光性難燃性組成物層が、2つの剥離性フィルムの間に挟まれていることを特徴とする感光性難燃性ドライフィルムに関する。
【0017】
また、本発明は、導電性回路の形成されたプリント配線板の少なくとも一方の面が部分的に、上記発明に記載の感光性難燃性組成物から形成される難燃性組成物層で被覆されてなることを特徴とするソルダーレジスト層付きプリント配線板に関する。
【0018】
また、本発明は、導電性回路の形成されたプリント配線板が、導電性回路の形成されたフレキシブルプリント配線板であることを特徴とする上記発明に記載のソルダーレジスト層付きプリント配線板に関する。
【0019】
また、本発明は、導電性回路の形成されたプリント配線板の少なくとも一方の面の全面に、上記発明に記載の感光性難燃性組成物を塗工・乾燥し、形成された感光性難燃性組成物層に、紫外線を部分的に照射し、未露光部感光性難燃性組成物層を除去した後、残った露光部難燃性組成物層を熱硬化することを特徴とするソルダーレジスト層付きプリント配線板の製造方法に関する。
【0020】
また、本発明は、上記発明に記載の感光性難燃性ドライフィルムから一方の面を覆っている剥離性フィルムを剥がし、露出した感光性難燃性組成物層を、導電性回路の形成されたプリント配線板の少なくとも一方の面の全面に重ね、他の剥離性フィルムを通じて又は他の剥離性フィルムを剥がした状態で、紫外線を部分的に照射し、他の剥離性フィルムを剥がした後に未露光部感光性難燃性組成物層を除去するか又は未露光部感光性難燃性組成物層を除去するかした後、残った露光部難燃性組成物層を熱硬化することを特徴とするソルダーレジスト層付きプリント配線板の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の難燃剤は、ノンハロゲン化及びアンチモンフリー化することができ、公害も発生することがない。また、硬化性樹脂に添加してもその硬化性に悪影響を与えず、しかも比較的少量の添加で難燃効果を発揮できる。また、従来公知のビス(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−オキシド−10−ホスファフェナントレン−10−イル)ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンの置換基を変更し、非対称の分子型にし、結晶性を下げることで、樹脂組成物や溶剤に対する溶解性の向上、樹脂中での白化(結晶化)防止が可能となる。この難燃剤を使用することで、樹脂添加時に機械的特性、成形加工性等の樹脂本来の特性に影響のない、難燃性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、詳細にわたって本発明を説明する。 本発明のエチレン性不飽和二重結合とカルボキシル基とを有する成分(A)の製造方法としては従来公知のものも含め以下に示すような合成方法が挙げられる。
エポキシ樹脂にアクリル酸をエステル反応させた後、発生した水酸基に酸無水物を付加することで得られる。
また、アクリル酸やメタクリル酸などのカルボキシル基含有モノマーと共重合ビニルモノマーをラジカル重合させ、カルボキシル基含有アクリルプレポリマーを合成し、次いで前記中のカルボキシル基に不飽和基含有エポキシ化合物をエステル反応させることで発生した水酸基に酸無水物を付加することで得られる。
また、ジイソシアネート化合物とポリオール化合物と2個の水酸基を有するカルボン酸化合物を反応させ、カルボキシル基含有ウレタンプレポリマーを合成し、次いで前記中のカルボキシル基の一部に対し、分子中に1個のエポキシ基またはオキセタン基を有する(メタ)アクリレート中のエポキシ基を反応させることで得られる。
またポリオール化合物と、分子中に2個の酸無水物基を有する多塩基酸無水物とを反応させて、主鎖中にハーフエステル化由来のエステル結合を有するカルボキシル基含有ポリエステルポリオールを合成し、これとジイソシアネートを反応させてカルボキシル基含有ウレタンプレポリマーを得た。更にこのウレタンプレポリマー中のカルボキシル基の一部に対して、分子中に1個のエポキシ基またはオキセタン基を有する(メタ)アクリレートを反応させることで製造される。
またポリオール化合物と、ジイソシアネート化合物と分子中に2個の水酸基を有するカルボン酸化合物とを反応させて、カルボキシル基含有ウレタンプレポリマーを合成し、次いで、前記中のカルボキシル基に対し、分子中に1個のエポキシ基またはオキセタン基を有する(メタ)アクリレート中のエポキシ基またはオキセタン基を反応させることで、水酸基含有ウレタンプレポリマーを作成した後、前記中の水酸基と、1個の酸無水物基を有する多塩基酸無水物中の酸無水物基と、を反応させることで得られる。
上記エチレン性不飽和二重結合とカルボキシル基とを有する成分(A)としては可とう性の観点からウレタン結合を有するものが好ましい。
【0023】
本発明のエチレン性不飽和二重結合とカルボキシル基とを有する成分(A)の酸価は、10〜200mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは30〜150mgKOH/gである。酸価が10mgKOH/g未満の場合、充分な現像性が得られず、例えば、現像時に皮膜を溶解させて取り除きたい部分に、残渣として皮膜が残る恐れがある。また、酸価が200mgKOH/gを超える場合、現像液に対する塗膜の溶解性が高くなり、光硬化させてパターンとして残したい部分までもが現像され、パターンの形状が悪化する恐れがある。酸価とはJIS K 2501に従って,電位差滴定法によって測定したものである。
【0024】
本発明のエチレン性不飽和二重結合とカルボキシル基とを有する成分(A)のエチレン性不飽和基当量は、200〜3000g/eqであることが好ましく、より好ましくは、300〜2000g/eqである。エチレン性不飽和基当量が200g/eq未満の場合、光感度が過剰で現像時に皮膜を溶解させて取り除きたい部分まで硬化してしまい、良好なパターン形状が得られない場合がある。エチレン性不飽和基当量が3000g/eqを超える場合、光感度が劣り硬化させたい部分が充分硬化せず、現像時にパターンが溶解して、良好なパターン形状が得られない場合がある。なお、エチレン性不飽和基当量とは、樹脂の分子量を、1分子あたりのエチレン性不飽和基の数で除したものであり、エチレン性不飽和基1つに対する樹脂の分子量すなわち、樹脂中のエチレン性不飽和基濃度の逆数をあらわす。
【0025】
本発明のエチレン性不飽和二重結合とカルボキシル基とを有する成分(A)の重量平均分子量は、1000〜100000であることが好ましく、より好ましくは、3000〜60000である。重量平均分子量が1000満の場合、充分なハンダ耐熱性および可撓性が得られない可能性がある。また塗膜にした際、硬化前の状態ではタックが強く、フォトマスクや基材への貼り付けなどの作業性が大きく悪化してしまう。また、重量平均分子量が100000を越える場合は、ハンダ耐熱性に優れるものの、現像性が悪化する可能性があり、また、塗工時の粘度やハンドリングが悪化する可能性がある。重量平均分子量(Mw)とはGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による標準ポリスチレンの検量線を用いて測定したものである。なお、GPCの測定条件は以下のとおりである。測定機「HPC−8020」(東ソー製)、カラム「LF−604」(昭和電工製:迅速分析用GPCカラム:6mmID×150mmサイズ)を2本直列接続、溶媒:テトラヒドロフラン、流量0.6ml/min、カラム温度40℃。
【0026】
次に本発明の難燃剤(B)について説明する。本発明の難燃剤は、一般式[1]で表記される構造を有している。難燃効果が発現することが公知な9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−オキシド−10−ホスファフェナントレン部位を1分子中に2つ含むことで、ノンハロゲン及びアンチモンフリーを達成し、少量の添加での難燃効果を発揮できる。また、従来公知のビス(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−オキシド−10−ホスファフェナントレン−10−イル)ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンの置換基を変更することで、非対称の分子型にし、分子間のスタッキングを減ずることができる。これにより、難燃剤の結晶性を低下させ、樹脂組成物や溶剤に対する溶解性の向上、樹脂中での白化(結晶化)防止が可能となっている。
【0027】
本発明における一般式[1]のX1およびX2は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシル基、置換もしくは無置換のアミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のシリルオキシ基、置換もしくは無置換のシリル基、置換もしくは無置換のホスフィンオキシ基、置換もしくは無置換のホスフィン基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換の複素環オキシ基、置換もしくは無置換の複素環基、置換もしくは無置換のアルキルチオ基、置換もしくは無置換のアリールチオ基、スルホン酸基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、または、置換カルボニル基で表される。但し、X1とX2は同じになることはない。
【0028】
1およびX2において、置換もしくは無置換のアミノ基としては、好ましくは炭素数1〜40を有する置換アミノ基であり、例えば、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ベンジルアミノ基、ジベンジルアミノ基、(m−トリル)アミノ基、(p−トリル)アミノ基、フェニルメチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジ−m−トリルアミノ基、ジ−p−トリルアミノ基、ジ−p−ピリジルアミノ基、ジ−m−ピリジルアミノ基、フェニルチオフェニルアミノ基、ジフェニルチオアミノ基、ジフラニルアミノ基、ジ−p−ビフェニリルアミノ基、ジ(4−メチルビフェニル)アミノ基、ナフチルフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基、フェニル−p−ビフェニルアミノ基、ビス[4−(α,α’−ジメチルベンジル)フェニル]アミノ基、ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、ブチリルアミノ基、イソブチリルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、イソシアネート基、アジリジニル基、2−メチルアジリジニル基、マレイミド基、アセトアミド基、プロピオンアミド基、ブチルアミド基、カルバミック酸メチルエステル基、カルバミック酸エチルエステル基、カルバミック酸フェニルエステル基、ジグリシジルアミノ基、ビス(3−エチルオキセタン−3−イルメチル)アミノ基などが挙げられる。
【0029】
1およびX2において、置換もしくは未置換のアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜40を有するアルキル基であり、更に好ましくは炭素数1〜20を有する置換アルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ステアリル基等の未置換直鎖状又は分枝状アルキル基の他、エトキシエチル基、エトキシメチル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、2−フェニルイソプロピル基、ベンジル基、α−フェノキシベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、α,α−メチルフェニルベンジル基、トリフェニルメチル基、α−ベンジルオキシベンジル基、3−メチルオキセタン−3−イルメチル基、3−エチルオキセタン−3−イルメチル基、2−イソシアネートエチル基、2−アジリジニルエチル基、2−(tert−ブチルカルボジイミド)エチル基、2−(シクロヘキシルカルボジイミド)エチル基、マレイミドメチル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシブチル基、5−ヒドロキシペンチル基、9−ヒドロキシノニル基、1−ヒドロキシルエチル基などが挙げられる。
【0030】
1およびX2において、置換もしくは無置換のシクロアルキル基としては、好ましくは炭素数4〜8を有する置換もしくは未置換のシクロアルキル基であり、例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、アダマンチル基などが挙げられる。
【0031】
1およびX2において、置換もしくは未置換のアルコキシ基としては、好ましくは炭素数1〜40を有する置換もしくは未置換のアルコキシ基であり、更に好ましくは炭素数1〜10を有する置換もしくは未置換のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンタオキシ基、n−ヘプタオキシ基、n−オクチルオキシ基、t−オクチルオキシ基、ベンジルオキシ基、1−アダマンチルオキシ基、2−アダマンチルオキシ基、3−メチルオキセタン−3−イルメチルオキシ基、3−エチルオキセタン−3−イルメチルオキシ基、2−イソシアネートエチルオキシ基、2−アジリジニルエチルオキシ基、2−ベンゾシクロブテニルエチルオキシ基、ヒドロキシメチルオキシ基、2−ヒドロキシエチルオキシ基、3−ヒドロキシプロピルオキシ基、4−ヒドロキシブチルオキシ基、5−ヒドロキシペンチルオキシ基、9−ヒドロキシノニルオキシ基、2−ヒドロキシ−2メチルプロピルオキシ基、プロペ−2−ニルオキシ基、1−メチルプロペ−2−ニルオキシ基、ブテ−2−ニルオキシ基、3−フェニルプロぺ−2−ニルオキシ基、プロピ−2−ニルオキシ基、1−メチルプロピ−2−ニルオキシ基、ブチ−2−ニルオキシ基、ペンチ−2−ニルオキシ基、3−フェニルプロピ−2−ニルオキシ基、プロピニルオキシ基、2−フェニルエチニル基、アクリル酸基、1−メチルアクリル酸基、1,2−ジメチルアクリル酸基、1−フェニルアクリル酸基、4,5−ジヒドロオキサゾリルメチルオキシ基などが挙げられる。
【0032】
1およびX2において、置換もしくは未置換のシリルオキシ基としては、好ましくは炭素数0〜50を有する置換もしくは未置換のシリルオキシ基であり、更に好ましくは炭素数0〜20を有する置換もしくは未置換のシリルオキシ基であり、例えば、シリルオキシ基、メチルシリルオキシ基、ジメチルシリルオキシ基、トリメチルシリルオキシ基、トリエチルシリルオキシ基、トリブチルシリルオキシ基、トリメトキシシリルオキシ基、トリエトキシシリルオキシ基、フェニルシリルオキシ基、ジフェニルシリルオキシ基、トリフェニルシリルオキシ基、ジメチルフェニルシリルオキシ基、ジフェニルメチルシリルオキシ基、ジフェニルメトキシシリルオキシ基、ジフェニルエトキシシリルオキシ基、ジメチル−tert−ブチルシリルオキシ基などが挙げられる。
【0033】
1およびX2において、置換もしくは未置換のシリル基としては、好ましくは炭素数0〜50を有する置換もしくは未置換のシリル基であり、更に好ましくは炭素数0〜20を有する置換もしくは未置換のシリル基であり、例えば、シリル基、メチルシリル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリブチルシリル基、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、フェニルシリル基、ジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、ジフェニルメトキシシリル基、ジフェニルエトキシシリル基、ジメチル−tert−ブチルシリル基などが挙げられる。
【0034】
1およびX2において、置換もしくは無置換のホスフィンオキシ基としては、ジメチルホスフィンオキシ基、ジフェニルホスフィンオキシ基、ジトリルホスフィンオキシ基、ジナフチルホスフィンオキシ基、置換もしくは無置換のホスフィンオキシドオキシ基としては、ジメチルホスフィンオキシドオキシ基、ジフェニルホスフィンオキシドオキシ基、ジトリルホスフィンオキシドオキシ基、ジナフチルホスフィンオキシドオキシ基、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド基などが挙げられる。
【0035】
1およびX2において、置換もしくは無置換のホスフィン基としては、ジメチルホスフィン基、ジフェニルホスフィン基、ジトリルホスフィン基、ジナフチルホスフィン基、置換もしくは無置換のホスフィンオキシド基としては、ジメチルホスフィンオキシド基、ジフェニルホスフィンオキシド基、ジトリルホスフィンオキシド基、ジナフチルホスフィンオキシド基、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド基などが挙げられる。
【0036】
1およびX2において、置換もしくは無置換のアリールオキシ基としては、好ましくは炭素数6〜40を有する置換もしくは未置換の単環または縮合多環芳香族基であり、更に好ましくは炭素数6〜18を有する置換もしくは未置換の単環または縮合多環芳香族基であり、例えば、フェニルオキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、p−ビフェニルオキシ基、m−ビフェニルオキシ基、2−アントリルオキシ基、9−アントリルオキシ基、2−フェナントリルオキシ基、3−フェナントリルオキシ基、9−フェナントリルオキシ基、2−フルオレニルオキシ基、3−フルオレニルオキシ基、9−フルオレニルオキシ基、1−ピレニルオキシ基、2−ピレニルオキシ基、3−ペリレニルオキシ基、o−トリルオキシ基、m−トリルオキシ基、p−トリルオキシ基、4−メチルビフェニルオキシ基、ターフェニルオキシ基、4−メチル−1−ナフチルオキシ基、4−tert−ブチル−1−ナフチルオキシ基、4−ナフチル−1−ナフチルオキシ基、6−フェニル−2−ナフチルオキシ基、10−フェニル−9−アントリルオキシ基、スピロフルオレニルオキシ基、2−ベンゾシクロブテニルオキシ基などが挙げられる。
【0037】
1およびX2において、置換もしくは無置換のアリール基としては、好ましくは炭素数6〜40を有する置換もしくは未置換の単環または縮合多環芳香族基であり、更に好ましくは炭素数6〜18を有する置換もしくは未置換の単環または縮合多環芳香族基であり、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、p−ビフェニル基、m−ビフェニル基、2−アントリル基、9−アントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、9−フェナントリル基、2−フルオレニル基、3−フルオレニル基、9−フルオレニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、3−ペリレニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、4−メチルビフェニル基、ターフェニル基、4−メチル−1−ナフチル基、4−tert−ブチル−1−ナフチル基、4−ナフチル−1−ナフチル基、6−フェニル−2−ナフチル基、10−フェニル−9−アントリル基、スピロフルオレニル基、4−マレイミジルフェニル基、2−ベンゾシクロブテニル基などが挙げられる。
【0038】
1およびX2において、置換もしくは未置換の複素環オキシ基としては、好ましくはヘテロ原子としてO、N、Sを含有する5員または6員環有する複素環オキシ基、または、縮合多環複素環オキシ基が挙げられる。複素環オキシ基としては、好ましくは炭素数4〜40を有する複素環オキシ基であり、更に好ましくは炭素数4〜20を有する複素環オキシ基であり、例えば、チエニルオキシ基、フリルオキシ基、ピリジルオキシ基、ピリジニルオキシ基、ピラジニルオキシ基、ピリミジニルオキシ基、ピリダジニルオキシ基、トリアジニルオキシ基、インドリニルオキシ基、キノリルオキシ基、キノキサリルオキシ基、アクリジニルオキシ基、ピロリルオキシ基、ピラニルオキシ基、チオピラニルオキシ基、ジオキサニルオキシ基、ピペリジニルオキシ基、モルホリニルオキシ基、ピペラジニルオキシ基、カルバゾリルオキシ基、オキサゾリルオキシ基、オキサジアゾリルオキシ基、ベンゾオキサゾリルオキシ基、チアゾリルオキシ基、チアジアゾリルオキシ基、ベンゾチアゾリルオキシ基、トリアゾリルオキシ基、イミダゾリルオキシ基、イミダゾピリジルオキシ基、ベンゾイミダゾリルオキシ基、プラニルオキシ基、モルホリルオキシ基、ピペリジルオキシ基、ピペラジニルオキシ基、ベンゾフリルオキシ基、2−ベンゾチエニルオキシ基、インドリルオキシ基、アクリジニルオキシ基、フェナントロリルオキシ基などが挙げられる。
【0039】
1およびX2において、置換もしくは未置換の複素環基としては、好ましくはヘテロ原子としてO、N、Sを含有する5員または6員環の複素環基、または、縮合多環複素環基が挙げられる。複素環基としては、好ましくは炭素数4〜40を有する複素環基であり、更に好ましくは炭素数4〜20を有する複素環基であり、例えば、チエニル基、フリル基、ピリジル基、ピリジニル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、インドリニル基、キノリル基、キノキサリル基、アクリジニル基、ピロリル基、ピラニル基、チオピラニル基、ジオキサニル基、ピペリジニル基、モルホリニル基、ピペラジニル基、カルバゾリル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、トリアゾリル基、イミダゾリル基、イミダゾピリジル基、ベンゾイミダゾリル基、プラニル基、モルホリル基、ピペリジル基、ピペラジニル基、ベンゾフリル基、2−ベンゾチエニル基、インドリル基、アクリジニル基、フェナントロリル基などが挙げられる。
【0040】
1およびX2において、置換もしくは未置換のアルキルチオ基としては、好ましくは炭素数1〜40を有する置換もしくは未置換のアルキルチオ基であり、更に好ましくは炭素数1〜10を有する置換もしくは未置換のアルキルチオ基であり、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、n−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、n−ペンチルチオ基、n−ヘプチルチオ基、n−オクチルチオ基、t−オクチルチオ基、ベンジルチオ基、アダマンチルチオ基などが挙げられる。
【0041】
1およびX2において、置換もしくは無置換のアリールチオ基としては、好ましくは炭素数6〜40を有する置換もしくは未置換の単環を有する縮合多環芳香族基を有するアリールチオ基であり、更に好ましくは炭素数6〜18を有する置換もしくは未置換の単環または縮合多環芳香族基を有するアリールチオ基であり、例えば、フェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基、p−ビフェニルチオ基、m−ビフェニルチオ基、2−アントリルチオ基、9−アントリルチオ基、2−フェナントリルチオ基、3−フェナントリルチオ基、9−フェナントリルチオ基、2−フルオレニルチオ基、3−フルオレニルチオ基、9−フルオレニルチオ基、1−ピレニルチオ基、2−ピレニルチオ基、3−ペリレニルチオ基、o−トリルチオ基、m−トリルチオ基、p−トリルチオ基、4−メチルビフェニルチオ基、ターフェニルチオ基、4−メチル−1−ナフチルチオ基、4−tert−ブチル−1−ナフチルチオ基、4−ナフチル−1−ナフチルチオ基、6−フェニル−2−ナフチル基、10−フェニル−9−アントリルチオ基、スピロフルオレニルチオ基などが挙げられる。
【0042】
1およびX2において、置換もしくは未置換のアルケニル基としては、好ましくは炭素数1〜40を有するアルケニル基であり、更に好ましくは炭素数1〜20を有する置換アルケニル基であり、例えば、プロペ−2−ニル基、1−メチルプロペ−2−ニル基、ブテ−2−ニル基、3−フェニルプロぺ−2−ニル基、ヘキセ−4−ニル基などが挙げられる。
【0043】
1およびX2において、置換もしくは未置換のアルキニル基としては、好ましくは炭素数1〜40を有するアルキニル基であり、更に好ましくは炭素数1〜20を有する置換アルキニル基であり、例えば、プロピ−2−ニル基、1−メチルプロピ−2−ニル基、ブチ−2−ニル基、ペンチ−2−ニル基、3−フェニルプロピ−2−ニル基、プロピ−1−ニル基、2−フェニルエチニル基などが挙げられる。
【0044】
1およびX2において、置換カルボニル基としては、カルボン酸基、メトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、ジフェニルアミノカルボニル基、ジトリルアミノカルボニル基、メチルカルボニル基、エチルカルボニル基、フェニルカルボニル基、トリルカルボニル基、プロペノニル基、ブテ−2−ン−1−ノニル基、2−メチルブテ−2−ン−1−ノニル基、3−フェニルプロぺ−2−ン−1−ノニル基、2−ブテニルオキシカルボニル基などが挙げられる。
【0045】
本発明における一般式[1]の式中、R1〜R24はそれぞれ独立に水素原子、ヒドロキシル基、置換もしくは無置換のアミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のシリルオキシ基、置換もしくは無置換のシリル基、置換もしくは無置換のホスフィンオキシ基、置換もしくは無置換のホスフィン基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換の複素環オキシ基、置換もしくは無置換の複素環基、置換もしくは無置換のアルキルチオ基、置換もしくは無置換のアリールチオ基、スルホン酸基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、または、置換カルボニル基で表される。
【0046】
1〜R24において、置換もしくは無置換のアミノ基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のシリルオキシ基、置換もしくは無置換のシリル基、置換もしくは無置換のホスフィンオキシ基、置換もしくは無置換のホスフィン基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換の複素環オキシ基、置換もしくは無置換の複素環基、置換もしくは無置換のアルキルチオ基、置換もしくは無置換のアリールチオ基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、および、置換カルボニル基は、上述のX1およびX2で示した、置換もしくは無置換のアミノ基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のシリルオキシ基、置換もしくは無置換のシリル基、置換もしくは無置換のホスフィンオキシ基、置換もしくは無置換のホスフィン基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換の複素環オキシ基、置換もしくは無置換の複素環基、置換もしくは無置換のアルキルチオ基、置換もしくは無置換のアリールチオ基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、および、置換カルボニル基と同義である。
【0047】
1とR1およびX2とR6は、それぞれ独立に環を形成しても良い。
【0048】
1とR1およびX2とR6が環を形成する場合の好ましい例として、以下に示す置換基群が挙げられる。
【0049】
【化2】

【0050】
式中、R25およびR26は、それぞれ独立に置換もしくは無置換のアルキル基、または、置換もしくは無置換のアリール基を表す。
【0051】
25およびR26において、置換もしくは無置換のアルキル基、および、置換もしくは無置換のアリール基は、上述のX1およびX2で示した、置換もしくは無置換のアルキル基、および、置換もしくは無置換のアリール基と同義である。
【0052】
一般式[1]は原料の入手や合成の難易度等から、X1およびX2のどちらか一方が、水素原子となることが好ましい。
【0053】
一般式[1]は原料の入手や合成の難易度等から、R9〜R24が水素原子となることが好ましく、更には、R1〜R8も水素原子となることがより好ましい。
【0054】
本発明の難燃剤である一般式[1]で表わされる化合物の代表例を、以下の表1に示すが、本発明は、なんらこの代表例に限定されるものではない。
【0055】
表1
【表1】

【0056】

【0057】

【0058】

【0059】

【0060】

【0061】

【0062】

【0063】

【0064】

【0065】

【0066】

【0067】

【0068】

【0069】

【0070】

【0071】

【0072】

【0073】

【0074】

【0075】

【0076】

【0077】

【0078】

【0079】

【0080】

【0081】

【0082】

【0083】

【0084】
一般式[1]で表わされる化合物群は、公知の方法で得ることができ、例えば下記反応式1、2、3のように、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド誘導体、および、ベンゾフェノン誘導体を出発原料として、1または2段階の反応を経て得ることが出来る。(Journal of Polymer Science, PartA: Polymer Chemistry,第40巻,359頁,2001年参照)
【0085】
反応式1
【化3】

【0086】
反応式2
【化4】

【0087】
反応式3
【化5】

【0088】
上記で得られる化合物は、通常の単離方法、例えば抽出、蒸留、カラム精製、再結晶、再沈、洗浄、濾過、乾燥等の従来公知の慣用方法に従い、反応混合物から単離、精製される。
【0089】
本発明の感光性難燃性樹脂組成物は、光重合開始剤(C)を含むことも好ましい。光重合開始剤としては、光励起によってラジカル重合を開始できる機能を有するものであれば特に限定はなく、例えばモノカルボニル化合物、ジカルボニル化合物、アセトフェノン化合物、ベンゾインエーテル化合物、アシルフォスフィンオキシド化合物、アミノカルボニル化合物等が使用できる。
【0090】
光重合開始剤(C)の使用量に制限はないが、エチレン性不飽和二重結合とカルボキシル基とを有する成分(A)100重量部に対して1〜20重量部の範囲で添加されるのが好ましい。また、増感剤として公知の有機アミンを加えることもできる。
【0091】
本発明の感光性難燃樹脂組成物は、さらにエチレン性不飽和基含有化合物(D)を含むことも好ましい。
【0092】
エチレン性不飽和基含有化合物(D)は、感光性難燃性樹脂組成物の感光性を調整する目的で使用し、その分子中にエチレン性不飽和二重結合を有する。本発明においては、「エチレン性不飽和二重結合とカルボキシル基とを有する成分(A)」以外の感光性化合物をエチレン性不飽和基含有化合物(D)として用いることができる。
エチレン性不飽和基含有化合物(D)は、分子中にエチレン性不飽和二重結合を有すること、及び本発明の「エチレン性不飽和二重結合とカルボキシル基とを有する成分(A)」の規定に含まれないものである限り、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸のアルキレングリコールエステル、カルボキシル基とエチレン性不飽和基とを有する化合物〔但し、前記エチレン性不飽和二重結合とカルボキシル基とを有する成分(A)の規定に含まれる化合物を除く〕、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物、窒素含有(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0093】
前記のエチレン性不飽和基含有化合物(D)は、エチレン性不飽和二重結合とカルボキシル基とを有する成分(A)100重量部に対して、0.1〜300重量部使用するのが好ましく、0.5〜200重量部使用するのがより好ましく、5〜100重量部の量で使用するのが更に好ましい。0.1重量部未満では、感光性難燃性樹脂組成物の感光性が不足する場合があり、300重量部を超えると、可とう性が不足する恐れがある。
【0094】
本発明の感光性難燃樹脂組成物は、さらに熱硬化性化合物(E)及び熱硬化助剤(F)を含んでも良い。
【0095】
熱硬化性化合物(E)は、エチレン性不飽和二重結合とカルボキシル基とを有する成分(A)中に含まれる官能基(カルボキシル基と水酸基)と反応しうる官能基を2つ以上有すれば特に限定されるものではない。
【0096】
熱硬化性化合物(E)のうち水酸基と反応することができる官能基を少なくとも2個有する化合物としては、ポリイソシアネート化合物、アミノ樹脂、フェノール樹脂、多官能ポリカルボン酸無水物が挙げられる。
【0097】
熱硬化性化合物(E)のうちカルボキシル基と反応することができる官能基を少なくとも2個有する化合物としては、エポキシ基又はオキセタン基を2個以上有する化合物、多官能ビニルエーテル化合物、高分子量ポリカルボジイミド類、アジリジン化合物などが挙げられる。この中でもエポキシ基又はオキセタン基を2個以上有する化合物が、硬化速度及び硬化物の耐久性の点で特に好ましい。
【0098】
これら熱硬化性化合物(E)は、単独または複数用いても良い。熱硬化性化合物(E)の使用量は、感光性難燃樹脂組成物の用途等を考慮して決定すればよく、特に限定されるものではないが、エチレン性不飽和二重結合とカルボキシル基とを有する成分(A)100重量部に対して、0.1重量部〜100重量部が好ましく、0.5重量部〜80重量部がより好ましい。これにより、感光性難燃性樹脂組成物から形成する硬化被膜の架橋密度を適度に調節することができるので、硬化被膜の各種物性をより一層向上させることができる。熱硬化性化合物(E)の使用量が0.1重量部よりも少ないと、硬化被膜の架橋密度が低くなり、凝集力や耐久性が不足する恐れがある。また、該使用量が100重量部を越えると硬化被膜の架橋密度が過剰になり硬化物の可撓性が低下する恐れがある。
【0099】
次に、熱硬化助剤(F)について説明する。本発明でいう、熱硬化助剤(F)とは、熱硬化時に硬化反応に直接又は触媒的に寄与する化合物を表す。
熱硬化助剤(F)は、使用する熱硬化性化合物(E)の種類によって適宜選択される。
【0100】
本発明において、熱硬化性化合物(E)としてエポキシ化合物を使用する場合、熱硬化助剤(F)としては、ジシアンジアミド、カルボン酸ヒドラジド、イミダゾール類、ジアザビシクロ化合物類を用いると、より効率的に熱硬化反応が進行し、塗膜の耐性が優れるため、好ましい。
【0101】
また、本発明において、熱硬化助剤(F)、はエチレン性不飽和二重結合とカルボキシル基とを有する成分(A)100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲内で使用することが好ましく、0.5〜8重量部の範囲内が更に好ましい。使用量が0.1重量部よりも少ないと、硬化物の凝集力や耐久性が不足する恐れがある。また、該使用量が10重量部よりも多いと、余剰の熱硬化助剤が硬化物中に残存し、滲み出しや絶縁性の劣化など、硬化物の諸物性を悪化させる恐れがある。
【0102】
本発明の感光性難燃性樹脂組成物は、必要に応じて以下に挙げる樹脂を含んでいてもよい。具体的には例えばアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、ウレタンウレア樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。これらは、現像性の観点から、カルボキシル基を含有しているものが好ましく、また、エチレン性不飽和二重結合とカルボキシル基とを有する成分(A)との相溶性に優れるものが好ましい。
【0103】
この他、本発明の感光性難燃性樹脂組成物には本発明の目的を損なわない範囲で任意成分として、更に溶剤、染料、顔料、酸化防止剤、重合禁止剤、レベリング剤、保湿剤、粘度調整剤、防腐剤、抗菌剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、電磁波シールド剤、フィラー等を添加することができる。
【0104】
本発明の感光性難燃性樹脂組成物はプリント配線板用保護層としての使用時に、アルカリ現像性に優れるという特徴があるため、光硬化、アルカリ現像、ポストキュアを含む塗膜形成プロセスが用いられる用途に好適に用いることができる。さらに、塗膜耐性に優れ、かつ、可撓性も同時に優れることから、特に、フレキシブルプリント配線板用ソルダーレジストインキや、感光性カバーレイフィルム用途で好適に用いることができる。
【0105】
本発明の感光性難燃性樹脂組成物は、基材として、金属、セラミックス、ガラス、プラスチック、木材、スレート等を用いることができ、特に制限されるものではない。具体的なプラスチックの種類としては、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、トリアセチルセルロース樹脂、ABS樹脂、ポリアミド、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。また基材の形状としてはフィルムシート、板状パネル、レンズ形状、ディスク形状、ファイバー状の物が挙げられるが、特に制限されるものではない。
【0106】
本発明の感光性難燃性樹脂組成物は、プラスチックフィルム等のキャリアフィルムに、公知の塗工装置、例えばコンマコータ、ブレードコータ、ロールコーター、ダイコーター、リップコータ等によって均一な厚さに塗布し、加熱・乾燥して溶剤を揮発させ、ドライフィルムとすることができる。その際表面を保護するために保護フィルムを貼り合わせる合わせることが好ましい。前記ドライフィルムの厚さは特に制限はないが、通常10〜100μmの範囲で適宜選択される。
【0107】
本発明の感光性難燃性樹脂組成物は、活性エネルギー線照射により硬化させ硬化物とすることができる。活性エネルギー線とは感光性難燃性樹脂組成物中の光重合開始剤やエチレン性不飽和基を反応させ得る波長の電磁波を意味し、電子線、紫外線、放射線、γ線等が含まれる。照射装置として、例えば紫外線照射装置としては、光源として、例えばメタルハライドランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、無電極ランプ、キセノンランプ、半導体レーザー、Arレーザー、カーボンアークランプ、タングステンランプ、パルスUVランプ等が挙げられる。電子線照射装置としては、例えば熱電子放射銃、電界放射銃等が挙げられる。照射量は、紫外線の場合は5〜2000mJ/cm2の範囲で適宜設定できるが、工程上管理しやすい50〜1000mJ/cm2の範囲がより好ましい。
電子線の場合は20〜2000KeVが好ましい。また紫外線や電子線の照射と、赤外線、遠赤外線、熱風、高周波加熱等による熱の併用も可能である。
【0108】
本発明の感光性難燃性樹脂組成物の使用方法は、例えばポリイミドフィルムやガラスエポキシ基板等の絶縁層上に形成された導電回路上に難燃性樹脂組成物を保護層として形成し、さらに公知の露光・現像プロセスを経て、保護層に所望のパターンを形成した後、ポストキュアとして例えば100℃〜200℃で30分〜2時間程度加熱し硬化層が形成される。なおハンダ耐熱性等の向上のため、ポストキュアの後さらに活性エネルギー線を照射することもできる。本発明の難燃性樹脂組成物は、プリント配線板等の用途で使用されることが好ましいが、密着性、可とう性に優れていることから屈曲性等が要求されるフレキシブルプリント基板用として用いることがより好ましい。
【実施例】
【0109】
以下に、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、実施例における「部」は、「重量部」を表す。
【0110】
実施例に先立ち、本発明の難燃剤として用いる化合物の合成、および難燃性樹脂組成物を作製の際に使用するウレタン樹脂溶液の合成について説明する。
【0111】
合成例1
化合物1の合成方法
100mlフラスコに4−ヒドロキシベンゾフェノン(5.00g)、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(以下HCA)(32.6g)を入れ、窒素雰囲気下3時間190℃で攪拌した。反応液を冷却後、メタノール80ml加え、1時間攪拌した。析出した白色固体を吸引ろ過で収集し、メタノール300ml中に入れ攪拌した。1時間後、吸引ろ過により、白色固体を収集し、真空中で一晩乾燥させ、化合物1を得た。(12.0g)を得た。EI−MS(サーモエレクトロン社製 PolarisQ) m/z=613(分子量:613)。
【0112】
合成例2〜31
上述の合成例1において、使用する4−ヒドロキシベンゾフェノン及びHCAを各化合物に対応したベンゾフェノン誘導体及びHCA誘導体に変更することで表2に示す化合物を合成した。
【0113】
合成例1〜31で得られた本発明の難燃剤である化合物の構造については、EI−MSスペクトルによって同定した。合成した化合物、使用したベンゾフェノン誘導体及びHCA誘導体、化合物のマススペクトルの測定結果を表2に示す。尚、化合物番号は本明細書中の表1に記載したものと同じである。
【0114】
表2
【表2】

【0115】

【0116】

【0117】
合成例32
化合物3の合成方法
100mlフラスコに4−クロロベンゾフェノン(5.00g)、HCA(29.9g)を入れ、窒素雰囲気下6時間190℃で攪拌した。反応液を冷却後、THF80ml加え、1時間攪拌した。析出した固体を吸引ろ過で収集し、THF300ml中に入れ攪拌した。1時間後、吸引ろ過により、白色固体を収集し、真空中で一晩乾燥させ、下記に示す中間体1(8.0g)を得た。EI−MS m/z=629 631 633(分子量:631)。
【0118】
中間体1
【化6】

【0119】
100mlフラスコに得られた中間体1(5.00g)、ジフェニルアミン(2.01g)、銅粉(0.2g)、炭酸カリウム(10.0g)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(50mL)を入れ、窒素雰囲気下5時間150℃で攪拌した。反応液を冷却後、蒸留水500mlに注ぎ、1時間攪拌した。析出した固体を吸引ろ過で収集した。得られた固体をカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物3(2.56g)を得た。EI−MS m/z=764(分子量:764)。
【0120】
合成例33〜37
上述の合成例32において、使用する4−クロロベンゾフェノン及びジフェニルアミンを各化合物に対応したベンゾフェノン誘導体及びアミン誘導体に変更することで表3に示す化合物を合成した。
【0121】
合成例32〜37で得られた本発明の難燃剤である化合物の構造については、EI−MSスペクトルによって同定した。合成した化合物、使用したベンゾフェノン誘導体及びアミン誘導体、化合物のマススペクトルの測定結果を表3に示す。尚、化合物番号は本明細書中の表1に記載したものと同じである。
【0122】
表3
【表3】

【0123】
合成例38
化合物8の合成方法
100mlフラスコに4−ヒドロキシベンゾフェノン(5.00g)、9,10−ジヒ
ドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(以下HCA)(32.6g)を入れ、窒素雰囲気下3時間190℃で攪拌した。反応液を冷却後、メタノール80ml加え、1時間攪拌した。析出した白色固体を吸引ろ過で収集し、メタノール300ml中に入れ攪拌した。1時間後、吸引ろ過により、白色固体を収集し、真空中で一晩乾燥させ、化合物1を得た。(12.0g)を得た。EI−MS(サーモエレクトロン社製 PolarisQ) m/z=613(分子量:613)。
【0124】
100mlフラスコに化合物1(5.00g)、ブロモエタン(1.33g)、水酸化
カリウム(1.4g)、エタノール(100mL)を入れ、窒素雰囲気下2日間25℃で攪拌した。反応終了後、蒸留水400mlに注ぎ、1時間攪拌した。析出した固体を吸引ろ過で収集した。得られた固体をカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物8(4.51g)を得た。EI−MS m/z=641(分子量:641)。
【0125】
合成例39〜59
上述の合成例38において、使用する4−ヒドロキシベンゾフェノン及びブロモエタンを各化合物に対応したベンゾフェノン誘導体及びハロゲン化物に変更することで表4に示す化合物を合成した。
【0126】
合成例38〜59で得られた本発明の難燃剤である化合物の構造については、EI−MSスペクトルによって同定した。合成した化合物、使用したベンゾフェノン誘導体及びハロゲン化物、化合物のマススペクトルの測定結果を表4に示す。尚、化合物番号は本明細書中の表1に記載したものと同じである。
【0127】
表4
【表4】

【0128】

【0129】
[エチレン性不飽和二重結合とカルボキシル基とを有する成分製造例]
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、導入管、温度計を備えた4口フラスコに、PTG850sn(保土ヶ谷化学株式会社製:ポリテトラメチレングリコール、重量平均分子量=約850、水酸基価=129mgKOH/g)55部、ジメチロールブタン酸(日本化成株式会社製)178部、溶剤としてシクロヘキサノン375部を仕込み、窒素気流下、攪拌しながら60℃まで昇温し、均一に溶解させた。続いてこのフラスコに、イソホロンジイソシアネート267部を投入し、90℃で8時間攪拌し、ウレタン化の反応を行った。反応終了後、少量サンプリングを行い、ポリスチレン換算の重量平均分子量が10000、分子量分布2.03、実測による樹脂固形分の酸価138mgKOH/gのカルボキシル基含有ウレタンプレポリマーを得た。
次に、このフラスコに窒素導入管からの窒素を停止し、乾燥空気の導入に切り替え、攪拌しながらグリシジルメタクリレート85部、ジメチルベンジルアミン6部、さらに重合禁止剤としてヒドロキノン0.3部を投入し、90℃のまま8時間反応させた。冷却後、少量サンプリングを行い、さらにシクロヘキサノンを加えて固形分が50.0%となるように調整し、ウレタン樹脂(A−2)溶液を得た。本設計による樹脂固形分のエチレン性不飽和基当量は1156g/eqであり、ポリスチレン換算の重量平均分子量は12800、分子量分布2.25、実測による樹脂固形分の酸価は68mgKOH/gであった。
【0130】
[実施例1]
樹脂製造例で得られたエチレン性不飽和二重結合とカルボキシル基とを有するウレタン(A)溶液100部、光重合開始剤(C)としてイルガキュアー907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製:2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパン)1.0部、同じくDETX−S(日本化薬株式会社製:2,4−ジエチルチオキサントン)0.3部、エチレン性不飽和基含有化合物(D)としてアロニックスM−310(東亞合成株式会社製:トリメチロールプロパンPO変性トリアクリレート)6.0部、熱硬化成分(E)としてHP7200(大日本インキ化学株式会社製:ジシクロペンタジエン型エポキシ)20.0部、熱硬化助剤(F)としてDICY7(味の素ファインテクノ株式会社製:ジシアンジアミド)0.8部、添加剤としてR812(日本エアロジル株式会社製:疎水性シリカ微粒子)15.0部、ブルーペースト(ブルー顔料/ベース樹脂(フェノール樹脂)/溶剤(カルビトールアセテート)=28/12/60)1.0部、難燃剤(B)として化合物2を30.0部配合し、3本ロールで混錬して本発明の感光性難燃性樹脂組成物を作成した。
【0131】
[実施例2〜59]
実施例1の化合物2を表5に示す化合物に変更した以外は実施例1と同様の配合により感光性難燃性樹脂組成物を作成した。
【0132】
[比較例1、2]
実施例1の化合物2を公知化合物である化合物X、下記に示す化合物Yに変更した以外は実施例1と同様の配合により感光性難燃性樹脂組成物を作成した。
【0133】
化合物X
【化7】

【0134】
化合物Y
【化8】

【0135】
[サンプルAの作成]
得られた感光性難燃性樹脂組成物を、カプトン100H(東レ・デュポン株式会社製:ポリイミドフィルム(25μm厚))上に乾燥膜厚が20μmとなるように塗布し、80℃の熱風乾燥器で30分乾燥させた後、室温まで冷却した。これを紫外線露光装置(ウシオ電機株式会社製:「UVC−2534/1MNLC3−AA08」、120W/cmメタルハライドランプ、1灯)を用いて積算光量400mJ/cm2を照射し、150℃の熱風乾燥機で1時間熱硬化(ポストキュア)した。得られた硬化物を室温まで冷却した。これをサンプルAとする。
【0136】
[密着性の評価]
JIS K5400に準じて、サンプルAについて1mm×1mmの碁盤目を100個作り、セロテープ(登録商標)によりピーリング試験を行った。碁盤目の剥離状態を観察し、次の基準で評価した。
○・・・剥離無し。
×・・・碁盤目の20%以下が剥離する。
【0137】
[可とう性の評価]
サンプルAを、180度に折り曲げ、次いで、さらに同じ部分を逆側にも180度折り曲げた。その時の塗膜の状態を次の基準で判断した。
○・・・膜面にクラック(ひび割れ)が見られない。
×・・・膜が割れ、膜面にはっきりとクラックが見られる。
【0138】
[ハンダ耐熱性の評価]
サンプルAを、260℃のハンダ浴槽(JIS C 6481)に10秒間浸漬することを1サイクルとし、塗膜に膨れや剥離が生じる回数を測定し、次の基準で判断した。
○・・・5サイクル以上塗膜に膨れや剥離が発生しない。
△・・・2〜5サイクルで塗膜に膨れや剥離が発生。
×・・・1サイクルで塗膜に膨れや剥離が発生。
【0139】
[難燃性評価]
サンプルAに関してUL94難燃性試験に準じて試験を行い次の基準で評価した。
VTM−0・・・UL VTM−0相当。
HB・・・UL HB相当
×・・・UL HB試験にて100mmまでに消炎しない、または完全燃焼。難燃性の高さはVTM-0>HB>×の順である。
【0140】
[現像性の評価]
PETフィルム上に、乾燥後の膜厚が20μmになるように実施例1〜59、比較例1、2で得られた感光性難燃性樹脂組成物を塗工し、80℃の熱風乾燥で20分間乾燥させた。乾燥塗膜を真空ラミネート(60℃、0.2MPA=2kg/cm2)にて銅張り積層板(エッチングにより銅表面を粗化処理したもの)に密着させた。続いて、PETフィルム上からレジストパターン[φ200μm穴]を有するネガフィルムを密着させ、紫外線露光装置(オーク製作所製 EXM−1201F、ショートアークランプ)を用いて紫外線を照射(400mJ/cm2)した。次に、PETフィルムを剥がし、1%の炭酸ナトリウム水溶液を用いて、2kg/cm2のスプレー圧で60秒間現像した。その後、150℃の熱風乾燥機で1時間加熱硬化を行い、サンプルBを作成した。Φ200μm穴部を拡大鏡にて観察し、レジスト層が現像されて銅表面がむき出しになっている部分(穴の開いている部分)の直径を測定し、次の基準で解像性を判断した。
○・・・直径150μm以上、200μm未満。
△・・・直径100μm以上、150μm未満。
×・・・直径100μm未満。
【0141】
<評価結果>
評価の結果を表5に示す。
【0142】
表5
【表5】

【0143】

【0144】
表5から明らかなように、本発明の感光性難燃性樹脂組成物は、基材密着性、可とう性、ハンダ耐熱性、難燃性、現像性、に優れ、可撓性・折り曲げ性との両立ができ、従ってプリント配線板等で好適に用いることができることが判る。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン性不飽和二重結合とカルボキシル基とを有する成分(A)と、前記成分(A)と下記一般式[1]で示される難燃剤(B)とを含有することを特徴とする感光性難燃性組成物。
【化1】

(式中、X1およびX2は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシル基、置換もしくは無置換のアミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のシリルオキシ基、置換もしくは無置換のシリル基、置換もしくは無置換のホスフィンオキシ基、置換もしくは無置換のホスフィン基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の複素環オキシ基、置換もしくは無置換の複素環基、置換もしくは無置換のアルキルチオ基、置換もしくは無置換のアリールチオ基、スルホン酸基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、または、置換カルボニル基を表す。但し、X1とX2は同じになることはない。
1〜R24はそれぞれ独立に水素原子、ヒドロキシル基、置換もしくは無置換のアミノ基
、ニトロ基、シアノ基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のシリルオキシ基、置換もしくは無置換のシリル基、置換もしくは無置換のホスフィンオキシ基、置換もしくは無置換のホスフィン基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換の複素環オキシ基、置換もしくは無置換の複素環基、置換もしくは無置換のアルキルチオ基、置換もしくは無置換のアリールチオ基、スルホン酸基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、または、置換カルボニル基を表す。X1とR1およびX2とR6は、それぞれ独立に、環を形成しても良い。)
【請求項2】
9〜R24が水素原子である請求項1記載の感光性難燃性組成物。
【請求項3】
1〜R8が水素原子である請求項1または2記載の感光性難燃性組成物。
【請求項4】
エチレン性不飽和二重結合とカルボキシル基とを有する成分(A)が、ウレタン樹脂であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の感光性難燃性組成物。
【請求項5】
有機溶剤をさらに含有することを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の感光性難燃性組成物。
【請求項6】
請求項5記載の感光性難燃性組成物から形成される感光性難燃性組成物層が、2つの剥離性フィルムの間に挟まれていることを特徴とする感光性難燃性ドライフィルム。
【請求項7】
導電性回路の形成されたプリント配線板の少なくとも一方の面が部分的に、請求項5記載の感光性難燃性組成物から形成される難燃性組成物層で被覆されてなることを特徴とするソルダーレジスト層付きプリント配線板。
【請求項8】
導電性回路の形成されたプリント配線板が、導電性回路の形成されたフレキシブルプリント配線板であることを特徴とする請求項7記載のソルダーレジスト層付きプリント配線板。
【請求項9】
導電性回路の形成されたプリント配線板の少なくとも一方の面の全面に、請求項5記載の感光性難燃性組成物を塗工・乾燥し、形成された感光性難燃性組成物層に、紫外線を部分的に照射し、未露光部感光性難燃性組成物層を除去した後、残った露光部難燃性組成物層を熱硬化することを特徴とするソルダーレジスト層付きプリント配線板の製造方法。
【請求項10】
請求項6記載の感光性難燃性ドライフィルムから一方の面を覆っている剥離性フィルムを剥がし、露出した感光性難燃性組成物層を、導電性回路の形成されたプリント配線板の少なくとも一方の面の全面に重ね、他の剥離性フィルムを通じて又は他の剥離性フィルムを剥がした状態で、紫外線を部分的に照射し、他の剥離性フィルムを剥がした後に未露光部感光性難燃性組成物層を除去するか又は未露光部感光性難燃性組成物層を除去するかした後、残った露光部難燃性組成物層を熱硬化することを特徴とするソルダーレジスト層付きプリント配線板の製造方法。

【公開番号】特開2010−250032(P2010−250032A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−98572(P2009−98572)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】