説明

慣性センサ、及び慣性センサの製造方法

【課題】センサとして安定した特性が得られ、しかも検出軸を所定角度に設定できる慣性
センサを提供することを目的とする。
【解決手段】検出軸方向の物理量の大きさを検出する検出素子である水晶振動素子11、
水晶振動素子11を収納するセラミックパッケージ17、セラミックパッケージ17の外
部底面に形成された実装電極18、及び実装電極18に接続され検出軸を検出すべき正規
方向から所定角度傾斜させる金属球2を備えたセンサ本体10と、金属球2を含む実装電
極18と接続されるリードフレーム4と、センサ本体10をモールドする樹脂5とを備え
るようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加速度センサやジャイロセンサ等の慣性センサ、及び慣性センサの製造方法
に関わり、特に車載用のナビゲーション装置等に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
カーナビゲーション装置が広く普及している。このようなカーナビゲーション装置にお
いて、自動車等の車両の現在位置を検出する際には、所謂GPS(Global Positioning S
ystem)を用いて測位する方法と、車両の移動方向、及び移動距離を自立的に測位する方
法とが併用されている。このため、カーナビゲーション装置においては、車両の移動方向
、及び移動距離を自立的に測位するために車両に加わる加速度や角速度等を検出するジャ
イロセンサ(角速度センサ)や加速度センサ等の慣性センサが搭載されている。
このような慣性センサにより角速度や加速度等を検出する場合は、検出すべき方向に検
出軸を向ける必要があり、例えば、ジャイロセンサであれば、検出軸が鉛直上方を向くよ
うに設置する必要があった。
ところで、近年、カーナビゲーション装置は、小型化が進み、従来、座席の下やトラン
クルーム内等に配置されていた装置本体(以下、「ナビゲーション本体」と称する)を運
転席と助手席との間に位置するセンターコンソールに設置するタイプのものが開発されて
いる。
【0003】
図7は、センターコンソールに設置されたナビゲーション本体を示した図であり、(a
)はその全体斜視図、(b)はカーナビゲーション本体に実装されているジャイロセンサ
を示した図である。
図7(a)に示すように、センターコンソール102にナビゲーション本体100を設
置する場合、ナビゲーション本体100に取り付けられている表示装置101の視認性や
、図示しない操作パネルの操作性の観点から表示装置101、及び操作パネルの盤面を運
転者の目線方向に向けることが好ましい。つまり、ナビゲーション本体100を水平方向
から斜め上方に傾斜させてセンターコンソール102内に設置することが好ましい。しか
しながら、ナビゲーション本体100を斜め上方に傾斜させてセンターコンソール102
に設置した場合は、図7(b)に示すようにナビゲーション本体100内のプリント基板
103に実装されているジャイロセンサ104の検出軸Gが、本来向けられるべき方向で
ある鉛直方向Vからナビゲーション本体100の取り付け角度(傾き角)θだけ傾いてし
まうため、ジャイロセンサ104において検出される角速度に誤差が生じる。
【0004】
通常のカーナビゲーション装置では、ナビゲーション本体100の取り付け角度により
発生するジャイロセンサ104等の検出誤差を補正するため、ソフトウェアの演算処理に
より検出結果の補正が行われているが、このようなソフトウェアによる補正処理には限界
があり、例えば、ナビゲーション本体100の傾き角θが30°以上になるとソフトウェ
アの演算処理では補正しきれないのが現状であった。
このため、カーナビゲーション装置では、斜めに傾けて搭載した場合でも正確に検出を
行うことができる慣性センサが求められ、そのようなセンサが各種提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、センサ内部の角速度検出素子を保持部材により傾けることで
、センサの形状やセンサの実装方法を変えずに検出軸を傾けるようにした角速度センサが
開示されている。
また特許文献2には、一定の方向性を有する物理量の当該方向及び大きさを検出する検
出素子と、検出素子を固定支持する取付部と、を備えるセンサ装置において、検出素子が
方向及び大きさを検出する基準である検出軸の方向と、当該検出する際に実際に検出素子
に加わる物理量の方向と、の差として予測される角度差を減少させる方向に予め設定され
た減少角度だけ傾斜して取付部に固定するようにしたセンサ装置が開示されている。
また特許文献3には、振動子を支持基板に接続する脚部、及びその支持基板とパッケー
ジ用基板とを接続する接着剤によって、パッケージ内の振動子の角度を設定し、振動子の
検出軸を所望方向に配向させるようにした振動子の支持構造が開示されている。
【特許文献1】WO03/100350
【特許文献2】特開2003−227844公報
【特許文献3】特開2005−249428公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、自動車の車内は温度変化が激しいため、自動車等に搭載されるセンサは急激
な温度変化によっても安定した特性が求められていた。しかしながら、上記特許文献1〜
3に開示されているセンサは、半田によりセンサを電子機器側の回路基板の表面に直接接
続するようにしているため、回路基板とセンサのパッケージとの材質が異なると、回路基
板とパッケージとの熱膨張係数の違いによって、センサと回路基板とを接続している半田
にクラックが生じ、センサとしての機能が不安定になったり、機能が損なわれたりして安
定した特性が得られなくなる虞があった。
本発明は上記した点を鑑みてなされたものであり、センサとして安定した特性が得られ
、しかも検出軸を所定角度に設定できる慣性センサと、その製造方法を提供することを目
的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の慣性センサは、検出軸方向の物理量の大きさを検出
する検出素子、検出素子を収納するパッケージ用基板、パッケージ用基板の外部底面に形
成された実装電極、及び実装電極に接続され検出軸を検出すべき正規方向から所定角度傾
斜させる傾斜部材を備えた慣性センサ本体と、傾斜部材を含む実装電極と接続されるリー
ドフレームと、慣性センサ本体をモールドするモールド部材と、を備えるようにした。
このように本発明の慣性センサにおいては、慣性センサ本体をモールド材料によりモー
ルドして慣性センサ本体と回路基板とは弾性を有するリードフレームを介して接続するよ
うにした。このように構成すれば、慣性センサ本体と、この慣性センサが搭載される回路
基板との材質が異なり、慣性センサ本体と回路基板との線膨張係数が異なる場合でも、周
囲温度の急激な変化によって慣性センサと回路基板とを接続している半田にクラックが生
じるのを防止することができる。よって、慣性センサの機能が不安定になったり、慣性セ
ンサの機能が損なわれたりするといったことがなく、安定した特性を得ることができる。
【0008】
また本発明の慣性センサでは傾斜部材に金属球を用いるようにした。
金属球は加工精度が高いため、傾斜部材に金属球を用いると、その直径に依存する検出
軸の傾き角のバラツキを抑えることができる。また傾斜部材に金属球を用いると、セルフ
アライメント作用によって金属球を実装電極の重心位置に接続することができるため、金
属球の接続位置に依存する検出軸の傾き角のバラツキを抑えることができる。さらに金属
球は導電性を有するため、実装電極として利用することができるという利点もある。
また、本発明の慣性センサでは、傾斜部材として径の異なる2種類の金属球を用いて検
出軸を検出すべき検出方向から所定角度傾斜させるようにすれば、検出軸の角度調整を容
易に行うことができる。
また本発明の慣性センサの製造方法は、パッケージ用基板の内部底面に半導体集積回路
を実装する工程と、パッケージ用基板に形成した内部パッドに支持基板を実装する工程と
、パッケージ用基板の支持基板を含む空間を真空封止する工程と、傾斜部材を慣性センサ
本体の実装電極に接続する工程と、傾斜部材を含む実装電極をリードフレームに接続する
工程と、慣性センサ本体をモールド材料によりモールドする工程と、リードフレームの切
断・整形する工程とを含むようにした。このようにすれば、前記したような本発明の慣性
センサを作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、本実施形態では本発明の慣性センサ
の一例としてジャイロセンサを例に挙げて説明する。
図1は本実施形態に係るジャイロセンサの構造を模式的に示した図であり、(a)はそ
の側面図、(b)はその上面図である。また図2は本実施形態に係るジャイロセンサの他
の構造例を模式的に示した図である。
図1に示すジャイロセンサ1は、ジャイロセンサ本体(以下、「センサ本体」という)
10を、リードフレーム4に傾斜部材である金属球2を用いて傾斜させて実装すると共に
、センサ本体1をモールド材料である樹脂5によりモールドするようにしている。
ここで、金属球2を含めたセンサ本体10とリードフレーム4との接続は半田3により
行うようにしている。
モールドとは、素子を配置した型の中に例えば樹脂5を流し込み、所定時間、高温高圧
下を維持することで樹脂5を固化してパッケージ化することをいう。
【0010】
なお、図1においては、モールドから露出しているリードフレーム4のリードは、その
先端部が外側を向くように折り曲げるようにしているが、例えば図2に示すように、リー
ドフレームの先端部が内側を向くように折り曲げても良い。
このように本実施形態のジャイロセンサ1においては、センサ本体10を樹脂によりモ
ールドし、図示しない電子機器側の回路基板との接続はリードフレーム4を介して行うよ
うにした。このようにすれば、センサ本体10と当該ジャイロセンサ1が搭載される回路
基板(図示しない)との材質が異なり、センサ本体10と回路基板(図示しない)との線
膨張係数(熱膨張係数)が異なる場合でも、センサ本体10と回路基板とは弾性を有する
リードフレーム4を介して接続されるので、外気温の変化が激しい場合でも、従来のよう
にジャイロセンサ1と回路基板とを接続している半田にクラックが生じるのを防止するこ
とができる。この結果、センサとしての機能が不安定になったり、機能が損なわれたりす
ることがなく、安定した特性を得ることができる。
【0011】
また、本実施形態では、センサ本体10を樹脂5によりモールドすることにより、ジャ
イロセンサ1の周囲の温度変化に比べてセンサ本体10の温度変化が緩やかになり、セン
サ本体10が受ける温度変化の影響を小さくすることができる。
また、例えばセンサ本体10を金属球2により傾けて回路基板に実装する場合は、傾け
たセンサ本体10と回路基板との間の隙間に異物や水分が入り込むなどして予期しない短
絡等が発生することが考えられるが、本実施形態のジャイロセンサ1のようにセンサ本体
10とリードフレーム4との間に金属球2を配置してセンサ本体10を傾けた後、センサ
本体10を樹脂5によりモールドすれば、センサ本体10と回路基板との間の隙間に異物
や水分が入り込んで短絡等が発生するといったこともない。
【0012】
次に図3乃至図5を用いて、本実施形態のジャイロセンサ1を構成するセンサ本体10
の構成について説明する。
図3は、センサ本体の内部構成を示した図である。
この図3(a)に示すセンサ本体(以下、「センサ本体」という)10は、検出素子と
して水晶振動素子11を有する。水晶振動素子11は、脚部13によって支持基板12に
機械的、電気的に接続されている。支持基板12は、接着剤14によってセラミックパッ
ケージ17の内部底面に形成されている段差部の上面に接続されている。またセラミック
パッケージ17の内部底面には、発振回路を含む半導体集積回路(以下、「IC回路」と
いう)15が接続されている。
【0013】
またセラミックパッケージ17の上面には、金属からなる蓋体16が低融点金属等の封
止部材19によって接合されている。これにより、セラミックパッケージ17の内部を真
空封止するようにしている。なお、蓋体16としてガラス蓋を用いることも可能であり、
この場合は封止部材19として低融点ガラス等が用いられる。
また、セラミックパッケージ17の外部底面から側面にかけて実装電極18が形成され
ている。実装電極18は、セラミックパッケージ17に形成されている図示しない内部導
体を介してIC回路15に接続されている。
水晶振動素子11の励振電極(図示しない)とIC回路15とは、パッケージ内部配線
を介して接続されている。例えば、水晶振動子11の励振電極36は基部31の裏面から
、水晶振動素子11を支持するワイヤボンディングまたはリードによって支持基板12に
接続される。支持基板12からパッケージ内部配線を介してフェースダウンまたはワイヤ
ボンディングよりIC回路に電気的に接続されている。
【0014】
図3(b)は、本発明の一実施形態に係る水晶振動素子11を概略的に示す平面図であ
る。図3(c)は、水晶振動素子11の検出振動モードの振動を示す平面図である。本例
の水晶振動素子11は、基部31と、基部31から突出する一対の検出振動片32a、3
2b、基部31から突出する一対の接続部33と、各接続部33の先端に設けられている
各駆動振動片34a、34b、34c、34dとを備えている。各駆動振動片34a、3
4b、34c、34dの各主面には、それぞれ細長い溝が形成されており、各駆動振動片
34a、34b、34c、34dの横断面形状は略H字形状となっている。また、溝内に
励振電極(駆動電極、以下同じ)36が形成されている。各駆動振動片34a、34b、
34c、34dの各先端にはそれぞれ幅広部または重量部38a、38b、38c、38
dが設けられている。各検出振動片32a、32bの各主面には、それぞれ細長い溝が形
成されており、各検出振動片32a、32bの横断面形状は略H字形状となっている。ま
た、溝内に検出電極37が形成されている。各検出振動片32a、32bの各先端にはそ
れぞれ幅広部または重量部35a、35bが設けられている。
【0015】
図3(b)は駆動モードの振動を示す。駆動時には、各駆動振動片34a、34b、3
4c、34dが、それぞれ、接続部33への付け根39を中心として矢印Aのように屈曲
振動する。この状態で水晶振動素子11を、水晶振動素子11に略垂直な回転軸Gの周り
に角速度ωで回転させる。すると、図3(c)に示すように、重量部38a、38b、3
8c、38dに、屈曲振動の方向Aおよび回転軸Gの両方に垂直な方向である+X軸/−
X軸方向にコリオリ力Fが加わる。その結果、接続部33が基部31への付け根33aを
中心として、矢印Bのように屈曲振動する。各検出振動片32a、32bが、それぞれ、
その反作用によって、基部31の付け根40を中心として、矢印Cのように屈曲振動する
。矢印Cの屈曲振動によって圧電現象が生じ、検出電極37の電位が変化する。この電位
の変化をIC回路15内にある検出回路によって検出することで、回転軸G回りの角速度
ωを求める。ここで、水晶振動素子11の+X軸/−X軸の結晶軸方向を矢印Aの方向と
なるようにし、水晶振動素子11のZ軸の結晶軸方向を回転軸Gと揃えると検出効率が高
い。
【0016】
そして、本実施形態ではセンサ本体10をリードフレーム4に実装する際に、リードフ
レーム4とセンサ本体10との間に傾斜部2を介在させることで、図示しない回路基板の
鉛直方向Vに対する傾き角θに応じて、センサ本体10の検出軸Gの傾き角を設定するこ
とが可能になる。具体的には、センサ本体10の検出軸Gの傾斜角度が鉛直方向Vから許
容範囲である30°以内の傾斜角度となるようにセンサ本体10を取り付けるようにした

【0017】
図4は、センサ本体10の取り付け構造の一例を示した図であり、(a)はセンサ本体
の側面図、(b)は底面図である。
この図4に示すように、センサ本体10をリードフレーム4に接続する際には、(b)
に示すようにセンサ本体10の外部底面に形成されている複数の実装電極18のうち、一
辺側に形成されている実装電極18とリードフレーム4との間に傾斜部材である金属球2
を配置して接続するようにした。これにより、センサ本体10の検出軸Gを、本来検出す
べき(鉛直方向V)から角度θだけ傾けるようにした。即ち、この場合は、傾斜部材であ
る金属球2をセンサ本体10とリードフレーム4との間に介在させることで、本実施形態
のジャイロセンサ1を検出すべき正規方向(鉛直方向V)から所定角度θだけ傾斜させた
回路基板に実装した場合でもセンサ本体10の検出軸Gの傾斜角度が検出すべき正規方向
から許容範囲内の傾斜角度となるようにした。
具体的にはセンサ本体10の検出軸Gの傾斜角度が鉛直方向Vから許容範囲である30
°以内の傾斜角度となるようにセンサ本体10を取り付けるようにした。
このようにすれば、センサ本体10をリードフレーム4に実装する際に、リードフレー
ム4の傾き角θ(リードフレーム4の鉛直方向Vに対する傾き角θ)に応じて、センサ本
体10の検出軸Gの傾き角を設定することが可能になる。
【0018】
また、この場合は、ジャイロセンサ1の検出軸Gを傾斜させるために、センサ本体10
内の検出素子である水晶振動素子11(図3参照)を傾斜させて取付部に固定する必要が
ないので、水晶振動素子11から振動漏れや不要振動モード等が発生するのを防止するこ
とができる。
また、本実施形態では、傾斜部材として例えばCu、樹脂、或いはガラスなどをコア部
材とし、その表面に半田コーティングを施した半田ボールなどの金属球2を用いるように
している。
ジャイロセンサ1の傾き角θは、センサ本体10を傾けたときに支点となるセンサ本体
10の端縁から金属球2の接触点までの長さL、及び金属球2の直径φとによって決定さ
れるが、上記のように構成される金属球2は加工精度が極めて高いため、傾斜部材として
金属球2を用いると、金属球2の直径φのバラツキにより発生する検出軸Gの傾き角のバ
ラツキを抑制することができる。
また金属球2は導電性を有することから、金属球2を実装電極18に接続すれば、金属
球2を実装端子として機能させることができ、センサ本体10の実装電極18とリードフ
レーム4のパターン電極52とを確実に導通させることができる。
【0019】
さらに傾斜部材として金属球2を用いた場合は、実装電極18と金属球2とを接続する
半田3が溶融したときの表面張力によって金属球2を実装電極18の重心位置に配置する
ことができる。つまり、金属球2のセルフアライメント作用によって金属球2を実装電極
18の重心位置に配置することができる。この結果、センサ本体10の端縁から金属球2
の接触点までの長さLの精度を高めることが可能になるので、支点となるパッケージ端縁
から金属球2までの長さLのバラツキによる検出軸Gの傾き角のバラツキを抑制すること
ができる。さらに傾斜部材として金属球2を用いた場合は、金属球2を実装電極18に接
続したときの半田フィレットの形状が安定したものとなり接続強度を高めることができる
という利点もある。
なお、本実施形態では、実装電極18の形状が矩形状である場合を例に挙げて説明した
が、これはあくまでも一例であり、実装電極18の形状は円形状であっても良い。
【0020】
図5は、センサ本体10の取り付け構造の他の例を示した図であり、(a)はセンサ本
体の側面図、(b)は底面図である。なお、図4と同一部位には同一符号を付して詳細な
説明は省略する。
図5においては、センサ本体10の外部底面に形成されている複数の実装電極18のう
ち、一辺側に形成されている複数の実装電極18に対して金属球2aを接続すると共に、
他辺側に形成されている複数の実装電極18に対して金属球2aより径が小さい金属球2
bを接続するようにした。これにより、金属球2aと金属球2bとの径の違いによって検
出軸Gを本来検出すべき検出方向(鉛直方向V)から角度θだけ傾けるようにしている。
このように構成した場合も、図4に示したセンサ本体10と同様、検出軸Gを傾斜させ
るためにセンサ本体10内に収納されている水晶振動素子11(図3参照)を傾斜させて
取付部に固定する必要がないので、従来のように水晶振動素子11から振動漏れや不要振
動モード等が発生するのを防止することができる。
【0021】
また金属球2a、2bの加工精度が極めて高いため、金属球2a、2bの直径のバラツ
キにより発生する検出軸Gの傾き角のバラツキを抑制することができる。さらに金属球2
a、2bは導電性を有することから、金属球2a、2bを実装電極18に接続すれば、全
ての実装電極18において金属球2a又は2bを実装端子として機能させることができる
。金属球2a、2bを実装端子として機能させると、センサ本体10の実装電極18とリ
ードフレーム4との接続がより確実なものとなる。
さらに、先に説明した金属球2a、2bのセルフアライメント作用によって金属球2a
、2bを実装電極18の重心位置に配置することができるため、支点となる金属球2aか
ら金属球2bまでの長さLのバラツキにより発生する検出軸Gの傾き角のバラツキを抑制
することができる。さらにこの場合も金属球2a、2bを実装電極18に接続したときの
半田フィレットの形状が安定したものとなり、接続強度を高めることができる。
なお、第2の実施形態では、実装電極18の形状が円形状としたが、矩形状であっても
良いことは言うまでもない。
【0022】
図6は、本実施形態のジャイロセンサの製造手順の一例を示した図である。
本実施形態のジャイロセンサを製造に際には、先ず、実装電極18や図示しない内部導
体を形成したセラミックパッケージ17の内部底面に、例えばフェイスダウンボンディン
グによりIC回路15を実装する(S1)。
次に、セラミックパッケージ17内の段差部の上面に接着剤14を塗布した後(S2)
、検出素子である水晶振動素子11を搭載した支持基板12を載置する(S3)。この後
、セラミックパッケージ17内を真空状態で封止する(S4)。これにより、センサ本体
10を作製することができる。
【0023】
次に、上記のようにして作製したセンサ本体10の外部底面に形成されている実装電極
18に傾斜部材である金属球2を半田により接続する(S5)。
次にセンサ本体10をリードフレーム4に半田により接続し(S6)、リードフレーム
のこのリードフレーム4を取り付けたセンサ本体20を樹脂5によりモールドする(S7
)。このとき、モールドから突き出ているリードフレーム4のリードは延びた状態である
ので、この後、リードフレーム4のリードの切断・整形を行うことで、本実施形態のジャ
イロセンサ1を作製することができる。
なお、本実施形態では、慣性センサとしてジャイロセンサを例に挙げているため、実装
基板51の実装面を検出すべき正規方向(鉛直方向V)から所定角度θだけ傾斜させたと
きに、センサ本体10の検出軸Gの傾斜角度が検出すべき鉛直方向Vから許容範囲内の傾
斜角度となるようにセンサ本体10を取り付けるようにしているが、慣性センサが加速度
センサである場合は、検出すべき正規方向が進行方向(水平方向)となるので、実装基板
51の実装面を検出すべき水平方向から所定角度傾斜させたときにセンサ本体10の検出
軸Gの傾斜角度が、正規方向から許容範囲内の傾斜角度となるようにセンサ本体10を取
り付けるようにすれば良い。
【0024】
また、これまで説明した本実施形態では、傾斜部材を用いてジャイロセンサの検出軸G
を特定方向(本実施形態では紙面の右側方向)に所定角度傾斜させる場合を例に挙げて説
明したが、例えば金属球を接続する実装電極18の位置を変えたりすることで、検出軸の
傾斜角度に加えて傾斜方向を調整することも可能である。
また、本実施形態では、本発明の慣性センサの一例としてジャイロセンサを例に挙げて
説明したが、あくまでも一例であり、検出素子により検出軸方向の物理量の大きさを検出
するセンサであれば、例えば加速度センサなどにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(a)(b)は本発明の実施形態に係るジャイロセンサの構造例を示した図である。
【図2】本実施形態に係るジャイロセンサの他の構造例を示した図である。
【図3】(a)はジャイロセンサ本体の内部構造を示した図、(b)は水晶振動素子を概略的に示す平面図、(c)は水晶振動素子の検出振動モードの振動を示す平面図である。
【図4】(a)(b)はセンサ本体の取り付け構造の一例を示した図である。
【図5】(a)(b)はセンサ本体の取り付け構造の他の例を示した図である。
【図6】本実施形態のジャイロセンサの製造手順の一例を示した図である。
【図7】(a)(b)はセンターコンソールに設置されたカーナビゲーション本体を示した図である。
【符号の説明】
【0026】
1、20…ジャイロセンサ、2、2a、2b…金属球、3、4…半田、5…リードフレ
ーム、6…樹脂、10…センサ本体、11…水晶振動素子、12…支持基板、13…脚部
、14…接着剤、15…半導体集積回路、16…蓋体、17…セラミックパッケージ、1
8…実装電極、19…封止部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出軸方向の物理量の大きさを検出する検出素子、前記検出素子を収納するパッケージ
用基板、前記パッケージ用基板の外部底面に形成された実装電極、及び前記実装電極に接
続され前記検出軸を検出すべき正規方向から所定角度傾斜させる傾斜部材を備えた慣性セ
ンサ本体と、前記傾斜部材を含む前記実装電極と接続されるリードフレームと、前記慣性
センサ本体をモールドするモールド部材と、を備えたことを特徴とする慣性センサ。
【請求項2】
前記傾斜部材は金属球であることを特徴とする請求項1に記載の慣性センサ。
【請求項3】
前記傾斜部材として径の異なる2種類の金属球を用いて前記検出軸を前記正規方向から
所定角度傾斜させたことを特徴とする請求項1に記載の慣性センサ。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の慣性センサの製造方法であって、
前記パッケージ用基板の内部底面に半導体集積回路を実装する工程と、
前記パッケージ用基板に形成した内部パッドに前記支持基板を実装する工程と、
前記パッケージ用基板の前記支持基板を含む空間を真空封止する工程と、
前記傾斜部材を前記慣性センサ本体の実装電極に接続する工程と、
前記傾斜部材を含む前記実装電極を前記リードフレームに接続する工程と、
前記慣性センサ本体をモールド材料によりモールドする工程と、
前記リードフレームの切断・整形する工程と、
を含むことを特徴とする慣性センサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−58145(P2008−58145A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−235132(P2006−235132)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】