説明

成形用中空部材

【課題】成形用中空部材の製造工数を抑制しながら、成形用中空部材の耐圧性を向上させる。
【解決手段】成形用中空部材1は、耐圧ホース11と、この耐圧ホース11の外周面を覆うように設けられたシリコーンゴム製外覆体12とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形用中空部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、繊維強化プラスチック製成形品を加熱・加圧成形することが知られている。
【0003】
特許文献1のものでは、型主体とこの型主体よりも容積が小さい突出型とを有する型の内表面に沿ってプリプレグを敷設した後、突出型に敷設したプリプレグ上に発泡シートを重ねて配置し、次いで突出型の内部空間形状とほぼ同じ形状の内部型を突出型内部にプリプレグ及び発泡シートを介して配置し、そして、型主体に敷設したプリプレグの内側に膨張バッグを配置し、この膨張バッグに流体を充填することによりプリプレグを加圧し、それから、加熱により発泡シートを発泡させるとともにプリプレグを硬化させることにより、繊維強化プラスチック製中空成形品を製造している。
【0004】
特許文献2のものでは、成形治具板の上に載置される繊維強化プラスチック製複合材から成る板材と、この板材上に立設される屈曲断面を持った繊維強化プラスチック製補強ビームとをオートクレーブ成形する際に、屈曲断面を持った補強ビームで囲まれる空間内に、変形防止等のため、複合材成形用治具を挿入している。
【特許文献1】特開2005−161701号公報
【特許文献2】特開平5−116162号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、本発明者たちは、繊維強化プラスチック製中空成形品を加熱・加圧成形するのに用いられる図7に示すようなシリコーンゴム製成形用中空部材101を開発した。図7のものは、横断面形状が長方形状のものである。
【0006】
この成形用中空部材101を用いて中空成形品を加熱・加圧成形する際には、まず、成形用中空部材101の周りにプラスチック、繊維、及びプラスチックをこの順に巻き付け、そして、これらプラスチック及び繊維をローラーで成型用中空部材の周囲に押し付けて積層プリプレグ化し、それから、この積層プリプレグを成形用中空部材101に巻き付けた状態で所定の圧力下で所定の熱を加えて硬化させ、その後、硬化させたプリプレグから成形用中空部材101を抜き取る。以上のようにして、横断面形状が長方形状の中空成形品が出来上がる。
【0007】
このように、成形用中空部材を用いた中空成形品の成形時には、プリプレグを成形用中空部材に巻き付けた状態で所定の圧力下で硬化させることから、成形用中空部材に圧力がかかり、よって、成形用中空部材には耐圧性が要求される。しかしながら、成形用中空部材101は、シリコーンゴムのみからなるため、耐圧性が十分ではない。また、成形用中空部材の製造工数はできる限り抑えたい。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、成形用中空部材の製造工数を抑制しながら、成形用中空部材の耐圧性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、繊維強化プラスチック製中空成形品を加熱・加圧成形するのに用いられる成形用中空部材であって、耐圧ホースと、上記耐圧ホースの外周面を覆うように設けられたシリコーンゴム製外覆体とを備えていることを特徴とするものである。
【0010】
これにより、成形用中空部材は耐圧ホースを備えているので、この耐圧ホースにより、成形用中空部材の耐圧性を向上させることができる。
【0011】
また、シリコーンゴム製外覆体を耐圧ホースの外周面を覆うように設けることにより、成形用中空部材を製造することができるので、成形用中空部材の製造工数を抑制することができる。
【0012】
以上より、成形用中空部材の製造工数を抑制しながら、成形用中空部材の耐圧性を向上させることができる。
【0013】
なお、繊維強化プラスチックは、ガラス繊維や炭素繊維などをプラスチック中に分散させて強化・軽量化した材料である。
【0014】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記中空成形品の成形時における加熱温度に耐える耐熱性を有していることを特徴とするものである。
【0015】
これにより、成形用中空部材は、中空成形品の成形時における加熱温度に耐えることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、成形用中空部材は耐圧ホースを備えているので、この耐圧ホースにより、成形用中空部材の耐圧性を向上させることができ、また、シリコーンゴム製外覆体を耐圧ホースの外周面を覆うように設けることにより、成形用中空部材を製造することができるので、成形用中空部材の製造工数を抑制することができ、以上より、成形用中空部材の製造工数を抑制しながら、成形用中空部材の耐圧性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0018】
本発明の実施形態に係る成形用中空部材(成形用ブラダー)1は、繊維強化プラスチック(以下、FRPという)製中空成形品(例えば中空パイプや中空フレーム)をオートクレーブ成形するのに用いられるものであって、図1、図2に示すように、耐圧性に優れた中空円筒状の耐圧ホース11と、この耐圧ホース11の外周面の略全体を覆うように設けられたシリコーンゴム製外覆体12とを備えている。このシリコーンゴムは、耐熱性・耐薬品性・撥水性・電気絶縁性などに優れている。
【0019】
上記耐圧ホース11は、シリコーンゴム製内層と、この内層の外側にガラス繊維を編組して形成した耐圧補強層と、この耐圧補強層の外側に形成したシリコーンゴム製外層とを有している市販のものである。上記外覆体12は、内周面の横断面形状が円形閉断面形状で、かつ外周面の横断面形状が長方形閉断面形状のものであって、耐圧ホース11の外周面の略全体に亘って圧縮一体成形されている。なお、図1、図2では、図を見易くするため、耐圧ホース11を簡略して描いている。このことは、下記の図3〜図6でも同様である。
【0020】
また、成形用中空部材1は、耐圧ホース11の内層・外層や外覆体12が上述のように耐熱性に優れたシリコーンゴムからなることなどにより、中空成形品のオートクレーブ成形時における加熱温度(約180度)に耐える耐熱性を有している。なお、このオートクレーブ成形方法の詳細は後述する。
【0021】
以下、図3を参照しながら、成形用中空部材1の製造方法を説明する。まず、図3(a)に示すように、耐圧ホース11の孔に円柱状の心棒(芯型)21を嵌め、耐圧ホース11の周りにシリコーンゴム13を巻き付ける。それから、図3(b)に示すように、このシリコーンゴム13を耐圧ホース11に巻き付けた状態で上型22と下型23とで挟み込み、耐圧ホース11とシリコーンゴム13とを圧縮一体成形する。そして、図3(c)に示すように、上型22と下型23とを開き、耐圧ホース11から心棒21を抜き取る。その後、圧縮一体成形された耐圧ホース11及びシリコーンゴム13(外覆体12)を図示しない二次加硫炉の中に入れ、シリコーンゴム13の特性を安定化させるため、二次加硫(再加熱)する。以上のようにして、外周面の横断面形状が長方形状の成形用中空部材1が完成する。
【0022】
以下、成形用中空部材1を用いたFRP製中空成形品のオートクレーブ成形方法を説明する。まず、成形用中空部材1の周りにプラスチック、繊維、及びプラスチックをこの順に巻き付ける。そして、これらプラスチック及び繊維をローラーで成形用中空部材1の周囲に押し付けて積層プリプレグ化する。それから、この積層プリプレグを成形用中空部材1に巻き付けた状態でオートクレーブ(耐圧釜)の中に入れ、所定の圧力下で所定の熱を加えて硬化させる。このとき、プリプレグには外側及び内側の両側から圧力がかかるため、中空成形品を構成する面部を真っ直ぐに延ばすことができる。その後、硬化させたプリプレグをオートクレーブから取り出し、成形用中空部材1を抜き取る。ここで、成形用中空部材1は、上述のような構成を採用することにより、可撓性・柔軟性を有しているため、成型用中空部材1をプリプレグから容易に引き抜くことができる。以上のようにして、横断面形状が長方形閉断面形状の中空成形品が出来上がる。
【0023】
−効果−
以上により、本実施形態によれば、成形用中空部材1は耐圧ホース11を備えているので、この耐圧ホース11により、成形用中空部材1の耐圧性を向上させることができる。
【0024】
また、シリコーンゴム製外覆体12を耐圧ホース11の外周面を覆うように設けることにより、成形用中空部材1を製造することができるので、成形用中空部材1の製造工数を抑制することができる。
【0025】
これらにより、成形用中空部材1の製造工数を抑制しながら、成形用中空部材1の耐圧性を向上させることができる。
【0026】
さらに、成形用中空部材1は、中空成形品の成形時における加熱温度に耐えることができる。
【0027】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、成形用中空部材1を、中空成形品をオートクレーブ成形するのに用いているが、オートクレーブ成形以外の加熱・加圧成形するのに用いてもよい。
【0028】
また、上記実施形態では、耐圧ホース11は内層と耐圧補強層と外層とを有してなるが、耐圧性及び耐熱性を有している限り、その構成や材料などは、上記のものに限らない。
【0029】
さらに、上記実施形態では、外覆体12の外周面の横断面形状を長方形状としているが、これに限らず、中空成形品の横断面形状に合わせて、例えば、円形状、楕円形状(図4参照)、又は三角形(図5参照)、長方形以外の四角形(例えば正方形、台形等)、五角形、六角形(図6参照)、七角形、八角形などの多角形形状としてもよい。
【0030】
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0031】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書には何ら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上説明したように、本発明にかかる成形用中空部材は、その製造工数を抑制しながら、その耐圧性を向上させる用途等に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態に係る成形用中空部材の概略斜視図である。
【図2】成形用中空部材の概略横断面図である。
【図3】製造工程中の成形用中空部材の概略横断面図であり、(a)は、耐圧ホースの孔に心棒を嵌めた様子を示す図であり、(b)は、シリコーンゴムを耐圧ホースに巻き付けた状態で上型と下型とで挟み込んだ様子を示す図であり、(c)は、上型と下型とを開き、耐圧ホースから心棒を抜き取った様子を示す図である。
【図4】成形用中空部材の変形例の図2相当図である。
【図5】成形用中空部材の変形例の図2相当図である。
【図6】成形用中空部材の変形例の図2相当図である。
【図7】成形用中空部材の概略横断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 成形用中空部材
11 耐圧ホース
12 外覆体
13 シリコーンゴム
21 心棒
22 上型
23 下型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化プラスチック製中空成形品を加熱・加圧成形するのに用いられる成形用中空部材であって、
耐圧ホースと、
上記耐圧ホースの外周面を覆うように設けられたシリコーンゴム製外覆体とを備えていることを特徴とする成形用中空部材。
【請求項2】
請求項1記載の成形用中空部材において、
上記中空成形品の成形時における加熱温度に耐える耐熱性を有していることを特徴とする成形用中空部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−178988(P2009−178988A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−21451(P2008−21451)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000201869)倉敷化工株式会社 (282)
【Fターム(参考)】