説明

成膜方法および成膜装置

【課題】成膜中に基板を搬送しつつ、基板上に所望の被膜のパターンを形成する成膜方法および成膜装置を提供する。
【解決手段】並列状に配列した複数の孔部を有する、ライン状の蒸着源の前記孔部から蒸着材を飛散させながら、前記孔部に対向する基板およびマスク部材を前記孔部が配列する方向に対して略直交する方向に搬送し、前記基板の上に前記蒸着材を蒸着して薄膜を積層する成膜方法であって、前記蒸着源に隣接し、前記蒸着源からみて搬送により前記基板および前記マスク部材が移動する方向とは反対側に設けられた加熱手段を用いて、前記基板の被蒸着部分を予備加熱した後、前記被蒸着部分に前記蒸着材を蒸着することを特徴とする成膜方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜方法および成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
減圧下で、大型の基板に被膜を形成する方法として、蒸着材をライン状の蒸着源に供給し、この蒸着源に設けた複数の開口を通じて蒸着材を基板に照射する方法がある(例えば、特許文献1、2参照)。この方法では、基板の広範囲に被膜を形成するために、蒸着源に対向する基板を搬送しながら成膜を行う。
しかしながら、蒸着源が基板よりも高温であると、基板の直下に見かけ上、局部的な熱源が存在することになる。従って、成膜の最中に蒸着源上に位置する基板、もしくは基板と蒸着源との間に介在したマスク部材が膨張する場合がある。これにより、基板上に所望の被膜のパターンが形成できない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−317957号公報
【特許文献2】特開2007−332458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、成膜中に基板を搬送しつつ、基板上に所望の被膜のパターンを形成する成膜方法および成膜装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、並列状に配列した複数の孔部を有する、ライン状の蒸着源の前記孔部から蒸着材を飛散させながら、前記孔部に対向する基板およびマスク部材を前記孔部が配列する方向に対して略直交する方向に搬送し、前記基板の上に前記蒸着材を蒸着して薄膜を積層する成膜方法であって、前記蒸着源に隣接し、前記蒸着源からみて搬送により前記基板および前記マスク部材が移動する方向とは反対側に設けられた加熱手段を用いて、前記基板の被蒸着部分を予備加熱した後、前記被蒸着部分に前記蒸着材を蒸着することを特徴とする成膜方法が提供される。
【0006】
本発明の他の一態様によれば、並列状に配列した複数の孔部を有し、ライン状の蒸着源の前記孔部から蒸着材を飛散させながら、前記孔部に対向する基板を前記孔部に接近させつつ前記孔部が配列する方向に対して略直交する方向に搬送し、前記基板の上に前記孔部のそれぞれから飛散させた前記蒸着材を蒸着して、前記基板の上に互いに分離した複数のライン状の薄膜を積層する成膜方法が提供される。
【0007】
本発明の他の一態様によれば、並列状に配列した複数の孔部を有する、ライン状の蒸着源と、基板およびマスク部材を前記孔部に対向させつつ前記孔部が配列する方向に対して略直交な方向に搬送する搬送手段と、前記蒸着源に隣接し、前記蒸着源からみて前記基板および前記マスク部材が前記搬送される方向とは反対側に設けられた、少なくとも1つの加熱手段と、を備え、前記基板および前記マスク部材を搬送しながら前記基板に前記蒸着材を蒸着する前に、前記加熱手段により前記基板の被蒸着部分を予備加熱することを特徴とする成膜装置が提供される。
【0008】
本発明の他の一態様によれば、並列状に配列した複数の孔部を有する、ライン状の蒸着源と、前記孔部に基板を近接させつつ前記孔部が配列する方向に対して略直交する方向に前記基板を搬送する搬送手段と、を備え、前記孔部に対向する基板を前記孔部に接近させつつ搬送しながら、前記基板の上に前記孔部のそれぞれから飛散させた前記蒸着材を蒸着して、前記基板の上に互いに分離した複数のライン状の薄膜を積層する成膜装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、成膜中に基板を搬送しつつ、基板上に所望の被膜のパターンが形成される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】成膜装置の要部模式図である。
【図2】成膜装置の要部模式図である。
【図3】成膜装置の動作を説明するための図である。
【図4】成膜装置の要部模式図である。
【図5】成膜装置の要部模式図である。
【図6】成膜装置の要部模式図である。
【図7】変形例を説明する図である。
【図8】変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は、本発明の実施の形態に係る成膜装置の要部模式図である。図1(a)には、基板上に薄膜積層体を形成する成膜装置1の要部斜視が示され、図1(b)には、成膜装置1のノズル(蒸着源)30の位置での成膜装置1の要部断面が示されている。図1には、成膜装置1のほか、成膜装置1に設置される基板10、マスク部材20等が表示されている。
【0013】
成膜装置1は、ノズル(蒸着源)30と、基板10を搬送する搬送手段(例えば、搬送用ローラ41)と、ノズル30に隣接する加熱手段(例えば、パイプ35)と、を備える。
成膜装置1においては、大型で平面状の基板10のほか、基板10と略同じサイズのマスク部材20を、その内部に設置することができる。基板10は、例えば、ガラス基板、もしくは透明電極付きのガラス基板である。基板10のサイズは、横(長手)600mm、縦(短手)500mmである。
基板10の下側に配置されたマスク部材20は、例えば、金属製マスクである。マスク部材20には、ライン状の開口20hが複数設けられている。
【0014】
また、成膜装置1においては、基板10側に対向するように、ライン状のノズル30が設けられている。ノズル30の長手方向は、基板10を搬送する方向(矢印Aの方向)に対し略直交している。
ノズル30の上側には、複数の孔部30hが設けられている。孔部30hは、ノズル30の長手方向において並設している。孔部30hは、並列状に配列している。これらの孔部30hは、基板10側に対向している。孔部30hの形状は、成膜装置1の上方から眺めて、例えば円状である。
【0015】
孔部30hと反対側のノズル30には、複数の配管30aが接続されている。それぞれの配管30aは、ノズル30下方に設けられた配管30bに接続されている。配管30bは、さらに配管30cに接続されている。さらに、配管30cは、材料源31に接続している。
ノズル30、配管30a、30b、30cの材質は、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム(Al)等である。
配管30a、材料源31については、図示された数に限られるものではなく、さらに多くの配管30a、材料源31を設けてもよい。
【0016】
成膜装置1は、一例として、有機ELディスプレイを製造する工程で使用される装置である。例えば、成膜装置1は、有機EL素子の有機層を基板10上にパターニングする場合に用いられる。有機層がパターニングされた基板10は、有機層付き基板として、有機ELディスプレイの一部品として使用される。このため、材料源31には、有機EL素子の原料となる低分子有機材料が蓄えられている。なお、成膜装置1の使用用途は、有機ELディスプレイを製造する目的外であってもよい。
【0017】
低分子有機材料としては、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq)、ビス(ベンゾキノリノラト)ベリリウム錯体(BeBq)、トリ(ジベンゾイルメチル)フェナントロリンユーロピウム錯体(Eu(DBM)(Phen))、ジトルイルビニルビフェニル(DTVBi)等の発光物質、ペリレン、キンクリドン、クマリン、DCJBT等の蛍光物質、芳香族アミン誘導体、1,3,4−オキサゾール誘導体、1,2,4-トリアゾール誘導体(TAZ)等のキャリア輸送物質が該当する。
【0018】
これらの蒸着材は、材料源31に設けられたヒータ(図示しない)により加熱される。蒸着材は、材料源31内で蒸発し、配管30a、30b、30cを通じて、ノズル30にまで供給される。さらに、孔部30hからは、蒸着材32が基板10側に向かい飛散する。ノズル30と基板10との間の距離は、蒸着速度の向上を図る都合上、なるべく短くすることが望ましい。また。この距離を短くすることにより、蒸着材の広角拡散が抑制される。これにより、蒸着材の使用効率が向上する。なお、孔部30hの口径については、それぞれの孔部30hから噴射する蒸着材の噴射量が略均一になるように、適宜調整される。
【0019】
なお、ノズル30、孔部30hおよび配管30a、30b、30cは、加熱することができる。この加熱により、成膜中には、ノズル30、孔部30hおよび配管30a、30b、30cの内部には、気相状態の蒸着材が存在する。
加熱の方法としては、ノズル30、配管30a、30b、30cのそれぞれの管内に設けられた棒状ヒータ、それぞれの管に巻き付けられるシースヒータ等により実施する(図示しない)。材料源31、配管30a、30b、30cおよびノズル30のそれぞれの温度は、所定の温度に制御される。
【0020】
さらに、材料源31と孔部30hとの間には、蒸着材32の流量を制御するための流量制御手段が設けられている。流量制御手段としては、マスフローコントローラ(MFC)等が該当する。
【0021】
また、成膜装置1は、ノズル30と、基板10(マスク部材20)との相対位置を変えることが可能な搬送手段を備える。この場合、基板10は、背面側から静電チャック40により支持され(図1(b)参照)、静電チャック40とともに基板10が矢印Aの方向に搬送される。図1(a)には、基板10の全面を表示する都合上、静電チャック40、搬送用ローラ41を表示させていない。マスク部材20については、例えば、基板10の背面側に設けられた磁石により基板10に固定される。この場合、マスク部材20の少なくとも一部(例えば、外周)は、磁性体材で構成されている。
【0022】
搬送手段としては、例えば、静電チャック40の端の下側に設けられた搬送用ローラ41が該当する。搬送用ローラ41の回転軸(図示しない)は、矢印Aの方向に対し略直交するように配置されている。この回転軸を回転させることにより、静電チャック40に支持された基板10およびマスク部材20が孔部30hが配列する方向に対し略直交に搬送される。また、蒸着面側の全域がノズル30に対し開放されている。
なお、搬送手段としては、静電チャック40等をワイヤで牽引する方法、ベルトコンベア式で搬送する方法、搬送用アームにより搬送する方法等でもよい。
【0023】
このような搬送手段により、基板10を矢印Aの方向に移動させることができる。これにより、基板10の全面に蒸着材32のパターニングが可能になる。例えば、マスク部材20の開口20hが矢印Aの方向に略平行に形成されている場合には、基板10に、ライン・スペース状のパターンが形成される。
【0024】
さらに、成膜装置1においては、ノズル30に隣接するように、パイプ35が設けられている。パイプ35は、ノズル30の外形と略同じ形状をしている。パイプ35は、基板10等を加熱することができる加熱手段である。このパイプ35については、図2を用いて説明する。
【0025】
図2には、矢印Aの方向に対し略垂直な方向から成膜装置1を眺めた場合の模式図が示されている。
パイプ35は、ノズル30に対し、搬送により基板10等が移動する方向(矢印Aが示す方向)とは反対側に位置している。パイプ35は、その内部に棒状のヒータ35hを有する。このヒータ35hにより、ヒータ35h周囲のパイプ35が加熱される。これにより、パイプ35は、基板10およびマスク部材20を下方側から予備加熱する熱源(予備ヒータ)として機能する。なお、パイプ35の本数については、1本とは限らず、複数本としてもよい。パイプ35の温度は、例えば、ノズル30が蒸着時に到達する温度に設定する。あるいは、パイプ35の温度は、少なくともノズル30が蒸着時に到達する温度以上に設定してもよい。
なお、基板10およびマスク部材20を予備加熱する加熱手段は、上述したパイプ35のほか、ランプ加熱に依ってもよい。
【0026】
以上説明した各部材については、真空槽50内部に設けられている(図1(a)参照)。成膜装置1は、真空槽50の内部を減圧状態にする排気手段を備える(図示しない)。蒸着材32、流量制御手段については、真空槽50外に設けてもよい。
【0027】
次に、成膜装置1の動作について説明する。
図3は、成膜装置1の動作を説明するための図である。図3では、成膜装置を上方から眺めた状態が示されている。
比較のために、図3(a)には、パイプ35が設けられていない成膜装置100が示され、図3(b)には、本実施の形態に係る成膜装置1が示されている。なお、図3では、基板10が表示されていないが、マスク部材20上に基板10が配置されているのは勿論である。
【0028】
先ず、図3(a)に示す成膜装置100の動作から説明する。
成膜装置100においては、成膜装置1と同様に、蒸着(成膜)中に、基板10およびマスク部材20(以下、基板10等)を矢印Aの方向に搬送する。この際、ノズル30の温度は、基板10およびマスク部材20の温度よりも高温に設定されているので、基板10等は、ノズル30からの輻射熱よってノズル30上に位置する部分において膨張してしまう。
【0029】
例えば、マスク部材20が膨張する前の幅(矢印Aの方向に対し略直交する方向の幅)を幅Bとすると、ノズル30上に位置するマスク部材20の幅Bは、時間とともに増加する(B>B)。
これは、ノズル30上に、基板10等を搬送した直後においては、基板10等は充分に伸びていない状態にあり、ノズル30上に位置する基板10等は、ノズル30からの輻射熱よって蒸着中に膨張し続けるためである。
【0030】
なお、基板10の主成分は、ガラスであり、マスク部材20の主成分は、金属であるので、マスク部材20の方が基板10よりも、線膨張係数が大きく伸びやすい傾向にある。 これにより、マスク部材20に設けた開口20hのピッチ、線幅は、蒸着中に変動してしまう。その結果、基板10上に形成する被膜のパターンのピッチ、線幅等は、歪(いびつ)になる場合がある。
【0031】
仮に、基板10とマスク部材20との線膨張係数を近接させたとしても、表示パネル等に用いられる基板10のサイズは、近年、益々増大する傾向にある。これに応じて、マスク部材20のサイズも増大する。従って、基板10等を加熱した直後では、基板10の周辺において、基板10とマスク部材20とがずれ易くなっている。
【0032】
また、マスク部材20は、均一な開口パターンを全面に配置しているとは限らない。さらに、マスク部材20には、開口20hがある部分と開口20hがない部分とがある。これにより、基板10等を加熱した直後では、基板10およびマスク部材20は、それぞれ不均一に膨張し、基板10とマスク部材20との位置ずれを起こし易い。
【0033】
これに対し、図3(b)に示す成膜装置1においては、ノズル30とは別の熱源であるパイプ35がノズル30に隣接している。
このような装置では、基板10等を矢印Aの方向に搬送すると、基板10等は、ノズル30によって加熱される前に、パイプ35によって予め加熱される。そして、搬送により、パイプ35によって温められた部分の基板10等がノズル30上に位置しても、ノズル30上に位置する基板10等は、既にパイプ35によって充分に温められた状態にある。
【0034】
すなわち、ノズル30上に位置する基板10等は、蒸着(成膜)を開始する前から、膨張がほぼ終了した状態になっている。例えば、ノズル30上に位置するマスク部材20の幅を幅Bとすると、この幅Bは、蒸着中において変動し難く、安定している。
【0035】
従って、成膜装置1においては、蒸着中に、マスク部材20に設けた開口20hのピッチ、線幅が変動し難くなる。このような状況で、基板10に対し蒸着材の蒸着を行えば、基板10上には、常時所望の被膜のパターンが形成される。
【0036】
なお、マスク設計に関しては、上述した基板10等の膨張がほぼ終了して、マスク部材のサイズが安定した状態でのマスクパターンを、正規のマスクパターンとして設計すればよい。このようなマスク部材を用いれば、バッチ処理毎に所望の被膜のパターンが形成される。
【0037】
また、蒸着(成膜)中の基板10等の膨張の程度をより安定させるには、パイプ35を複数本、設けてもよい。
このように、成膜装置1では、並列状に配列した孔部30hを有するノズル30から蒸着材を飛散させつつ、孔部30hに対向する基板10およびマスク部材20を、孔部30hが配列する方向に対し略直交に搬送する。基板10およびマスク部材20を搬送する際には、ノズル30に隣接する加熱手段を用いて、基板10の被蒸着部分を予備加熱してから被蒸着部分に蒸着材を蒸着する。
次に、成膜装置の変形例について説明する。以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、適宜その説明を省略する。
【実施例2】
【0038】
図4は、成膜装置の要部模式図である。図4には、矢印Aの方向に対し略垂直な方向から成膜装置を眺めた場合の模式図が示されている。
成膜装置2には、さらに、基板10もしくはマスク部材20の伸縮の程度を検出するセンサ37が設けられている。また、成膜装置2は、パイプ35のほか、ノズル30の近傍に、別のパイプ36を有する。パイプ36は、その内部にヒータ36hを有し、熱源として機能する。このパイプ36からの輻射熱を制御することにより、基板10もしくはマスク部材20の膨張の程度を徴調整できる。
【0039】
例えば、基板10、マスク部材20を複数準備した段階では、それぞれのサイズ、厚みは、均一であるとは限らない。従って、ノズル30(もしくは、パイプ35)から同じ熱量を放出させた場合、バッチ処理毎において基板10、マスク部材20の膨張する程度が異なる場合がある。
【0040】
これに対し、成膜装置2では、センサ37が検知した信号に基づき、帰還制御方式によってパイプ36から放出される熱量を制御して、各バッチ毎の基板10、マスク部材20の膨張の程度が同じ程度になるように調整する。このような形態によれば、それぞれの基板10上に形成される被膜のパターンの精度(位置、幅等)は、より向上する。
【実施例3】
【0041】
図5は、成膜装置の要部模式図である。図5(a)には、成膜装置3の要部斜視が示され、図5(b)には、成膜装置3のノズル30の位置での成膜装置3の要部断面が示されている。図5(c)には、被膜のパターンが形成された基板10の平面が示されている。図5には、成膜後の基板10等が表示されている。
【0042】
成膜装置3は、ノズル30の孔部30hと、基板10とを接近させた構造を有する。 成膜装置3では、並列状に配列した孔部30hを有するノズル30から蒸着材を飛散させつつ、孔部30hに対向する基板10およびマスク部材20を、孔部30hが配列する方向に対し略直交に搬送する。基板10およびマスク部材20を搬送する際には、ノズル30に隣接する加熱手段を用いて、基板10の被蒸着部分を予備加熱してから被蒸着部分に蒸着材を蒸着する。
成膜装置3では、上述したマスク部材20を取り付けることを要さず、基板10にライン・スペースのパターンが形成される。
【0043】
ここで、ノズル30に設けられた孔部30hのピッチ、口径は、基板10上に形成するラインパターンのピッチ、線幅に対応している。例えば、孔部30hのピッチは、300μm以下であり、孔部30hの口径は、100μm以下である。
【0044】
そして、搬送手段により、基板10が矢印Aの方向に移動すると、孔部30hから飛散した蒸着材が直ちに基板10上に付着し、基板10の全面に蒸着材32のラインパターン10pが形成される。
【0045】
また、成膜装置3においては、ノズル30に隣接するように、パイプ35を設けてもよい。パイプ35は、ノズル30に対し、矢印Aが示す方向とは逆側に位置している。パイプ35は、上述したように、熱源(予備ヒータ)として機能する。
【0046】
このような装置によれば、基板10を矢印Aの方向に搬送すると、基板10は、ノズル30によって加熱される前に、予め、パイプ35によって加熱される。パイプ35によって加熱された部分の基板10がノズル30上に位置したときには、ノズル30上に位置する基板10は、既にパイプ35によって充分に温められている。すなわち、ノズル30上に位置する基板10は、蒸着(成膜)を開始する前から、膨張がほぼ終了した状態になっている。
【0047】
従って、成膜装置3においては、蒸着中に、ノズル30に設けた孔部30hのピッチ、口径が変動し難くなる。このような状況で、基板10に対し蒸着材の蒸着を行えば、基板10上には、所望の被膜のパターンが形成される。
なお、ノズル30の設計に関しては、基板10およびノズル30の膨張がほぼ終了して、それぞれサイズが安定した状態での孔部30hのピッチ、口径を、正規のノズルとすればよい。このようなノズル30を用いれば、バッチ処理毎に所望の被膜のパターンが形成される。
【0048】
また、基板10上に形成するラインパターンの位置、幅、ピッチを変更する場合には、それぞれのラインパターンに対応するノズル30を複数準備すればよい。また、蒸着中に、基板10が反る場合には、その反りの程度に適合させてノズル30の形状を変えたり、孔部30hのピッチを適宜変更すればよい。
【0049】
成膜装置3によれば、マスク部材20が不要になり、成膜処理の低コスト化を図ることができる。さらに、マスク部材20を介さず、蒸着材を直接基板10上に形成できるので、蒸着材料の使用効率が向上する。
【実施例4】
【0050】
図6は、成膜装置の要部模式図である。図6(a)には、成膜装置4の要部斜視が示され、図6(b)には、成膜装置4のノズル30の位置での成膜装置4の要部断面が示されている。図6(c)には、ノズル30に設けられた突起部30tの斜視図が示されている。図6には、成膜装置4のほか、成膜装置4に設置される基板10等が表示されている。
【0051】
成膜装置4においては、ノズル30の孔部30h上に、円錐状の突起部30tが接続している。突起部30tは、ノズル30の孔部30hの位置から延在している。さらに、突起部30tの先端には、孔部30thが設けられている。孔部30thの形状は、成膜装置4の上方から眺めて、例えば円状である。蒸着材は、孔部30thから飛散させることができる。なお、孔部30thの口径については、それぞれの孔部30thから噴射する蒸着材の噴射量が略均一になるように、適宜調整される。
【0052】
また、成膜装置4は、突起部30tの先端と、基板10とを接近させた構造を有する。成膜装置4では、上述したマスク部材20を取り付けることを要さず、基板10にライン・スペースのパターンが形成される。
ここで、ノズル30に設けられた突起部30tの孔部30thのピッチ、口径は、基板10上に形成するラインパターンのピッチ、線幅に対応している。例えば、孔部30thのピッチは、300μm以下であり、口径は、100μm以下である。
【0053】
そして、搬送手段により、基板10が矢印Aの方向に移動すると、孔部30thから飛散した蒸着材が直ちに基板10上に付着し、基板10の全面に蒸着材32のラインパターン10pが形成される。
【0054】
また、成膜装置4においては、ノズル30に隣接するように、パイプ35を設けてもよい。このような構成によれば、蒸着中に、ノズル30に設けた孔部30thのピッチ、口径がより変動し難くなる。従って、基板10上には、所望の被膜のパターンが形成される。
【0055】
また、成膜装置4によれば、マスク部材20が不要になり、成膜処理の低コスト化を図ることができる。さらに、マスク部材20を介さず、蒸着材を直接基板10上に形成できるので、蒸着材料の使用効率が向上する。
【0056】
特に、成膜装置4では、突起部30tを通じて、孔部30thから蒸着材を飛散させるので、基板10に入射する蒸着材の方向性がより向上する。これにより、ラインパターンの精度(位置、幅等)は、より向上する。
【0057】
なお、突起部30tを設けたノズル30の設計に関しては、基板10およびノズル30の膨張がほぼ終了して、それぞれサイズが安定した状態での孔部30thのピッチ、口径を、正規のノズルとすればよい。このようなノズル30を用いれば、バッチ処理毎に所望の被膜のパターンが形成される。
【0058】
また、基板10上に形成するラインパターンの位置、幅、ピッチを変更する場合には、それぞれのラインパターンに対応するノズル30を複数準備すればよい。また、蒸着中に、基板10が反る場合には、その反りの程度に適合させてノズル30の形状を変えたり、突起部30tの高さを変えたり、孔部30thのピッチを適宜変更すればよい。
【実施例5】
【0059】
さらに、成膜装置に設けた各部材および成膜方法については、以下のように変形してもよい。
図7は、変形例を説明する図である。
例えば、図7(a)に示すように、突起部30tにおいては、孔部30thを成膜装置4の上方から眺めた場合、その形状を、例えば、矢印Aの方向を長軸とする楕円、もしくは矢印Aの方向に伸びる長円としている。
【0060】
このような形態であれば、孔部30thの形状が搬送方向に伸びているので、突起部30tから噴出する蒸着材の噴出量に揺らぎが生じても、基板10に付着する蒸着材の量が平均化される。これにより、ラインパターンの精度(位置、幅等)は、さらに向上する。
【0061】
また、ノズル30の各孔部30hから噴出する蒸着材の流量をより均等に制御するには、配管30a、30bのコンダクタンスを適宜調整してもよい。
例えば、図7(b)に示すように、ノズル30の下方に設けられた配管30aについては、外側に位置する配管30aaの太さを、内側に位置する配管30abの太さよりも太くしてもよい。あるいは配管30bについては、外側の配管30baの太さを内側の配管30bbの太さよりも太くしてもよい。
このような構造であれば、配管30a、30bは外側ほどコンダクタンスが高くなる。従って、ノズル30の中心部に材料源31を設けても、材料源31から各々の孔部30hに蒸着材を均等に行き渡らせることができる。なお、配管30a、30bのコンダクタンスは、その長さにより適宜調整してもよい。
【0062】
また、成膜装置内には、ノズル30を複数配置してもよい。例えば、配管30a、30bの形状を変えることにより、ノズル30の長手方向において内側の孔部30hほど蒸着材の噴出量が高いノズル30、あるいは、外側の孔部30hほど蒸着材の噴出量が高いノズル30をA方向に並列することにより、基板10上には、結果的に均一な厚みのラインパターンが形成される。
【0063】
図8は、別の変形例を説明する図である。
例えば、基板10等が搬送される方向Aとノズル30の孔部30hが配列する方向(ノズル30の長手方向C)とのなす角を略直交させずに蒸着を行ってもよい。この方法では、方向Aと方向Cのなす角を変更することによって、簡便にラインパターンのピッチを変更することができる。
【0064】
さらに、本実施の形態においては、A方向に並設させた複数のノズル30を、方向Cにおいて互いにずらすように配置して蒸着を実施してもよい。これにより、孔部30hのピッチよりも微細なラインパターンが形成される。また、ラインパターンの各層の材質に応じた各々のノズルを増設する方法も本実施の形態に含まれる。
【0065】
以上、本実施の形態について説明した。しかし、本実施の形態は、これらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。例えば、マスク部材20には、ライン状の開口20hを並設するほか、ドット状の開口を設けてもよい。
【0066】
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて複合させることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0067】
1、2、3、4、100 成膜装置
10 基板
10p ラインパターン
20 マスク部材
20h 開口
30 ノズル(蒸着源)
30a、30b、30c 配管
30h、30th 孔部
30t 突起部
31 材料源
32 蒸着材
35 パイプ
35h ヒータ
36 パイプ
36h ヒータ
37 センサ
40 静電チャック
41 搬送用ローラ
50 真空槽
A 矢印(基板搬送方向)
、B、B
C ノズルの長手方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列状に配列した複数の孔部を有する、ライン状の蒸着源の前記孔部から蒸着材を飛散させながら、前記孔部に対向する基板およびマスク部材を前記孔部が配列する方向に対して略直交する方向に搬送し、前記基板の上に前記蒸着材を蒸着して薄膜を積層する成膜方法であって、
前記蒸着源に隣接し、前記蒸着源からみて搬送により前記基板および前記マスク部材が移動する方向とは反対側に設けられた加熱手段を用いて、前記基板の被蒸着部分を予備加熱した後、
前記被蒸着部分に前記蒸着材を蒸着することを特徴とする成膜方法。
【請求項2】
並列状に配列した複数の孔部を有し、ライン状の蒸着源の前記孔部から蒸着材を飛散させながら、前記孔部に対向する基板を前記孔部に接近させつつ前記孔部が配列する方向に対して略直交する方向に搬送し、前記基板の上に前記孔部のそれぞれから飛散させた前記蒸着材を蒸着して、前記基板の上に互いに分離した複数のライン状の薄膜を積層する成膜方法。
【請求項3】
前記蒸着源から延在する突起部の先端に設けられた前記孔部を前記基板に接近させながら、前記被蒸着部分に前記蒸着材を蒸着することを特徴とする請求項2記載の成膜方法。
【請求項4】
並列状に配列した複数の孔部を有する、ライン状の蒸着源と、
基板およびマスク部材を前記孔部に対向させつつ前記孔部が配列する方向に対して略直交な方向に搬送する搬送手段と、
前記蒸着源に隣接し、前記蒸着源からみて前記基板および前記マスク部材が前記搬送される方向とは反対側に設けられた、少なくとも1つの加熱手段と、
を備え、
前記基板および前記マスク部材を搬送しながら前記基板に前記蒸着材を蒸着する前に、前記加熱手段により前記基板の被蒸着部分を予備加熱することを特徴とする成膜装置。
【請求項5】
並列状に配列した複数の孔部を有する、ライン状の蒸着源と、
前記孔部に基板を近接させつつ前記孔部が配列する方向に対して略直交する方向に前記基板を搬送する搬送手段と、
を備え、
前記孔部に対向する基板を前記孔部に接近させつつ搬送しながら、前記基板の上に前記孔部のそれぞれから飛散させた前記蒸着材を蒸着して、前記基板の上に互いに分離した複数のライン状の薄膜を積層する成膜装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−68916(P2011−68916A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−218271(P2009−218271)
【出願日】平成21年9月22日(2009.9.22)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】