説明

成膜装置および成膜方法

【課題】プラズマを発生させて成膜する際に膜厚の測定精度を高めることを目的とする。
【解決手段】成膜装置1は、真空チャンバ2と成膜基体支持体21とを備える。成膜基体支持体21に支持された成膜基体7とスパッタリングターゲット4との間にはプラズマ3が発生する。また、真空チャンバ2内には、成膜基体7と成膜レートが異なる位置にモニタ基板30が配置される。モニタ基板30には、モニタ光照射器25からモニタ光が照射される。モニタ光がモニタ基板30の表面に形成されたモニタ膜で反射した反射光およびプラズマ3が発光してモニタ膜を透過した透過光は受光器26で受光される。制御器9は、プラズマ光測定器8が測定したプラズマ3の発光強度に基づいて、受光器26が受光した光のうち反射光の強度を補正して求める。反射光の強度に基づいて、モニタ膜の厚さ、およびそれに比例する成膜基体7上の膜厚が求められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空チャンバ内の成膜基体にスパッタリング法により膜を形成する成膜装置および成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
所要の化合物膜を成膜基体上に得る方法として、反応性スパッタリングが知られている。反応性スパッタリングでは、反応性ガス導入下でターゲット材のスパッタリング現象を用いて成膜基体上に化合物膜を生成する。たとえば光学薄膜を得る場合、酸素ガス導入下で各種金属ターゲットの金属をスパッタ蒸発させ、金属酸化物による光学薄膜を成膜基体上に成膜することなどが行われる。反応性スパッタリングには、成膜レートや膜質の異なる3つの状態が存在する。一般的には、金属状態、遷移状態、化合物状態と呼ばれる三態である。
【0003】
化合物状態は、使用するターゲット表面全体を化合物化させるのに十分な量の反応性ガスがチャンバ内に存在し、ターゲット表面が化合物化されている状態である。そのため、成膜レートは非常に遅いが、状態としては非常に安定で、成膜物は十分に化合物化されている。
【0004】
金属状態は、使用するターゲット表面を化合物化するには不十分な量の反応性ガスしかチャンバ内に存在しない状態である。そのため、成膜レートは非常に速く、状態としても非常に安定であるが、成膜物はほとんど未化合の状態で、金属的な膜が得られる。
【0005】
遷移状態は、使用するターゲット表面が部分的に化合物化される程度の量の反応性ガスがチャンバ内に存在している状態である。そのため、成膜レートは比較的速くなる。ただし、ターゲット表面が部分的に化合物化されているので、化合物状態と金属状態との中間的な、非常に不安定な状態である。また、成膜レートは比較的速く、条件によって、十分に化合物化された膜質から、不十分に化合物化された膜質まで、得ることができる。しかし、状態としては、非常に不安定であるといえる。
【0006】
反応性スパッタリングにおける遷移状態は不安定なものであるため、工業的に安定的に使用する場合には、化合物状態において成膜を行って所望の化合物膜を得ることが一般的となっている。しかし、非常に不安定な状態ではあるが膜質と成膜レートの点で有利であることから、遷移状態を利用することが、工業的にもいくつか行なわれている。
【0007】
光学部材、たとえば光学フィルタなどの透明光学膜を透明成膜基体に成膜したものでは、珪素が用いられる場合がある。珪素は、低屈折率の透明光学膜が形成でき、また形成材料として一般に広く使用されていているために調達が容易で安価であり、材料として安定している。珪素の化合物である酸化珪素の透明光学膜は、低屈折率であることから厚さの薄い透明光学膜を必要とされる光学部材などで多く用いられている状況にある。このため、光学部材などの透明光学膜を成膜する際にも、膜質と成膜レートの点で有利な遷移状態を利用することが考えられる。
【0008】
遷移状態を安定して維持する成膜制御方法としては、プラズマ・エミッション・モニタリング法(PEM法)(たとえば特許文献1および2参照)がある。PEM法は、不安定な遷移状態をPID制御などにより制御して安定的に成膜を行おうとする方法である。PEM法では、たとえば材料として透明光学膜に用いられる珪素を選択すると、波長288nmのプラズマ光をモニタリングすることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−7600号公報
【特許文献2】特開2010−150594号公報
【特許文献3】特開2006−265739号公報
【特許文献4】特開2001−342563号公報
【特許文献5】特開平11−246968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
成膜装置で成膜された膜の厚さを測定する方法として、光学的に測定する方法が知られている。たとえば特許文献3ないし5には、成膜基体上あるいはモニタ基板上に形成された膜を透過した透過光あるいはその膜で反射した反射光を測定して、膜厚を測定する方法が記載されている。この方法では、膜厚の増加に伴う光量のピークを検出して、膜厚を測定している。しかし、膜厚が薄い段階では、光量の波形にピークが現れないため、成膜速度(成膜レート)を求めることができない。
【0011】
また、プラズマを発生させて成膜する方法では、プラズマの発光が光量の測定の際のノイズとなる。このため、プラズマの発光の影響を排除して、透過光あるいは反射光の光量を測定する必要がある。特許文献5では、プラズマに起因する波長以外の光を測定することにより、プラズマの発光の影響を排除することとしている。しかし、プラズマに起因する発光には原子発光による特定波長のピークの他、熱発光のような広い波長帯に及ぶ発光が存在する。このため、特定波長の光を測定することとしても、プラズマの影響を完全に排除することができない。
【0012】
そこで、本発明は、プラズマを発生させて成膜する際に膜厚の測定精度を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的を達成するため、本発明は、成膜装置において、真空チャンバと、前記真空チャンバ内に配置されたスパッタリングターゲットと、前記真空チャンバ内に成膜基体を支持する成膜基体支持体と、前記スパッタリングターゲットと前記成膜基体との間にプラズマを発生させるスパッタリング手段と、前記真空チャンバ内で前記成膜基体と成膜レートが異なる位置に配置されたモニタ基板を支持するモニタ基板支持体と、前記プラズマの発光強度を測定するプラズマ光測定器と、前記モニタ基板の前記プラズマの反対側の面に向けてモニタ光を照射するモニタ光照射器と、前記モニタ光が前記モニタ基板の表面に形成されたモニタ膜で反射した反射光および前記プラズマが発光して前記モニタ膜を透過する透過光を受光する受光器と、前記受光器が受光した光のうち前記反射光の強度を前記発光強度に基づいて補正して求める補正器と、前記反射光の強度に基づいて前記モニタ膜の厚さを評価するモニタ膜厚評価器と、を具備することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、真空チャンバ内の成膜基体にスパッタリングターゲットを含有する膜を形成する成膜方法において、前記成膜基体と前記スパッタリングターゲットとの間にプラズマを発生させて前記スパッタリングターゲットを含有する膜を前記成膜基体の表面および前記真空チャンバ内の前記成膜基体と成膜レートが異なる位置に配置されたモニタ基板の表面に形成する成膜工程と、前記プラズマの発光強度を測定するプラズマ光測定工程と、前記モニタ基板の前記プラズマの反対側の面に向けてモニタ光を照射するモニタ光照射工程と、前記モニタ光が前記モニタ基板の表面に形成されたモニタ膜で反射した反射光および前記プラズマが発光して前記モニタ基板を透過する透過光を受光する受光工程と、前記受光器が受光した光のうち前記反射光の強度を前記発光強度に基づいて補正して求める補正工程と、前記反射光の強度に基づいて前記モニタ膜の厚さを評価するモニタ膜厚評価工程と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、プラズマを発生させて成膜する際に膜厚の測定精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る成膜装置の第1の実施の形態における一部の断面とともに示すブロック図である。
【図2】本発明に係る成膜装置の第1の実施の形態において成膜基体およびその表面に形成される膜の断面図である。
【図3】本発明に係る成膜装置の第1の実施の形態においてモニタ基板およびその表面に形成されるモニタ膜の断面図である。
【図4】本発明に係る成膜装置の第2の実施の形態における断面図である。
【図5】本発明に係る成膜装置の第2の実施の形態における直近OMSモニタの断面を示す図6のV−V矢視縦断面図である。
【図6】図5のVI−VI矢視横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る成膜装置の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、同一または類似の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0018】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明に係る成膜装置の第1の実施の形態における一部の断面とともに示すブロック図である。
【0019】
成膜装置1は、真空チャンバ2と成膜基体支持体21とモニタ基板支持体24とスパッタリングターゲット4とプラズマ光測定器8とモニタ光照射器25と受光器26と制御器9とを有している。成膜基体支持体21は、真空チャンバ2の内部に成膜基体7を支持する。成膜基体7は、たとえばガラス板である。モニタ基板支持体24は、真空チャンバ2の内部にモニタ基板30を支持する。モニタ基板30は、たとえばガラス板である。
【0020】
スパッタリングターゲット4は、真空チャンバ2の内部に配置されている。スパッタリングターゲット4には、電源22が接続されている。電源22は、スパッタリングターゲット4の近傍に配置されたアノード23とも接続されている。電源22は、制御器9に制御されてスパッタリングターゲット4とアノード23との間にパルス電圧を発生させる。電源22によって電圧が印加されることにより、スパッタリングターゲット4と成膜基体7との間にはプラズマ3が発生する。プラズマ3の発生には、マグネトロンスパッタ、DCスパッタ、RFスパッタ、ACスパッタなどの方法を用いることができる。
【0021】
真空チャンバ2には、外部からガス供給配管5が延びている。ガス供給配管5の端部のガス供給口6は、真空チャンバ2の内部のプラズマ3が発生する領域の近傍で開口している。ガス供給配管5のガス供給口6の反対側の端部は、ガス供給源33に接続されている。ガス供給源33は、反応性ガスを供給する。ガス供給配管5の途中には、マスフローコントローラ11が取り付けられている。マスフローコントローラ11は、制御器9で制御される。
【0022】
プラズマ光測定器8は、真空チャンバ2の内部に発生したプラズマ3の発光強度を測定する。プラズマ光測定器8は、たとえばバンドパスフィルタを備えていて、特定波長の光の強度を測定できるようになっている。プラズマ光測定器8は、たとえば特定波長の発光強度を電気信号に変換する光電子増倍管とこの光電子増倍管が出力した電気信号を積分し適正な形に変化させる光量積分器とを備えている。測定され、たとえば電気信号に変換された発光強度は、制御器9に伝達される。
【0023】
モニタ光照射器25は、モニタ基板支持体24に支持されたモニタ基板30のプラズマ3に対して反対側の面に対向して設けられている。モニタ光照射器25は、モニタ基板30に向かってモニタ光を照射する。モニタ光照射器25は、たとえば制御器9で制御される。モニタ基板30は、モニタ膜35に膜を形成するためスパッタリングターゲット4と対向するよう設けられる。ただし、スパッタリングターゲット4がスパッタされてターゲット材が弾きだされる範囲は、真正面のみでなく広い角度であるため、モニタ基板30のスパッタリングターゲット4と対向する位置とは、スパッタリングターゲット4側を向いているだけでなく、モニタ膜35が形成され得る向き(例えば、スパッタリングターゲット4と直交する向き)も含むものである。
【0024】
受光器26は、モニタ基板支持体24に支持されたモニタ基板30のプラズマ3に対して反対側の面に対向して設けられている。受光器26は、モニタ基板30側から入射する光を受光する。受光器26が受光した光の強度は、制御器9に伝達される。受光器26が受光した光を光ファイバなどで制御器9に伝達して、その強度を制御器9が求めてもよい。
【0025】
図2は、本実施の形態において成膜基体およびその表面に形成される膜の断面図である。
【0026】
この成膜装置1を用いて、反応性スパッタリングによって成膜基体7のプラズマ3に面する側の表面に光学多層膜34を形成する。この成膜装置1は、たとえば不活性ガス供給機構および減圧機構を備えていて、真空チャンバ2の内部にはアルゴン(Ar)ガスなどの不活性ガスが供給され、真空チャンバ2の内部は所定圧力に減圧保持される。電源22によりスパッタリングターゲット4とアノード23との間にパルス電圧が印加されると、プラズマ3が形成され、スパッタリングターゲット4の一部が蒸発する。また、ガス供給源33から供給される反応性ガスは、マスフローコントローラ11で所定の流量に調整されて、ガス供給口6から真空チャンバ2内に放出される。
【0027】
プラズマ3の発生により、成膜基体7のスパッタリングターゲット4に対向する側の表面に膜34が形成される。膜34は、スパッタリングターゲット4の構成元素と反応性ガスとの化合物である。
【0028】
真空チャンバ2への反応性ガスの導入量および放電電圧は、成膜が遷移状態、化合物状態、金属状態のいずれの状態になるよう制御して行ってもよい。
【0029】
本実施の形態の反応性スパッタリングによる成膜方法に用いられる反応性ガスとしては、酸素ガスや窒素ガスおよびフッ素ガスが好適に用いられる。成膜基体7上に形成される化合物膜としては、反応性ガスとして酸素ガスを用いた場合は酸化物膜が、窒素ガスを用いた場合は窒化物膜が、フッ素ガスを用いた場合はフッ化物膜が形成される。また、成膜中には、アルゴンガスなどの不活性ガスをチャンバ内に一定量供給する必要がある。
【0030】
本実施の形態の反応性スパッタリングによる成膜方法に用いられるターゲット材料としては、Nb、Ti、Si、Ta、Zn、Sn、In、MgおよびAlからなる群より選ばれた少なくとも1種以上の元素を含むものが好適に用いられる。具体的には、成膜基体7上に形成する化合物膜に応じてターゲット材料が選択され、上述の元素のみから構成される単元素ターゲットや、多成分系のターゲット、これらの元素を含む酸化物もしくは窒化物ターゲットや、酸素欠陥を有する構造の酸化物ターゲットなどを用いることができる。
【0031】
本実施の形態の反応性スパッタリングによる成膜方法には、チャンバ内に、上記のようなターゲットを1つだけ配置することも可能であるし、チャンバ内に複数のターゲットを配置して成膜を行うことも可能である。チャンバ内に1つのターゲットのみを配置して成膜を行う場合、以下のような例が挙げられる。酸化ニオブ膜を成膜する場合には、ターゲット材料として金属Nbのみからなる1つのターゲットのみをチャンバ内に配置し、不活性ガスをチャンバ内に一定量供給するとともに、反応性ガスとして酸素ガスを導入し、酸化ニオブ膜を成膜することが可能となる。
【0032】
また、SiOの薄膜を形成する場合には、ターゲット材料としてSiCとSiの混合物からなるターゲットをチャンバ内に配置し、不活性ガスをチャンバ内に一定量供給するとともに、反応性ガスとして酸素ガスを導入し、SiOの薄膜を成膜することが可能となる。
【0033】
一方、チャンバ内に複数のターゲットを配置して成膜を行う場合としては、以下のような例が挙げられる。ターゲット材料として、多結晶シリコン若しくは、SiCとSiとの混合物のような、酸化したときに低屈折率材料が形成される第1のターゲットと、Nb若しくはTaのような酸化したときに高屈折率材料が形成される第2のターゲットとの2種類のターゲットをチャンバ内に配置し、これらのターゲットを用いて、交互にSiを含有する化合物膜と、Nb若しくはTaを含有する化合物膜の成膜を行うことができる。
【0034】
化合物膜は、反応性ガスによって完全に化合物化された膜だけでなく、たとえば化学量論的組成と比較して、酸素のモル比が少ない酸化物膜を含んでいてもよい。また、これら化合物膜の幾何学的膜厚は、特に限定されないが、1層あたり1nm〜1μmであるのが好ましく、特に、酸化物光学膜に用いる観点からは、1層あたり1nm〜500nmであるのが好ましい。本実施の形態の成膜装置を用いることで、特に光学的に膜の厚さを測定する従来の方法では測定が困難であった1nm〜40nmの非常に薄い膜厚を精度よく成膜基体上に形成できる。
【0035】
また、成膜基体上に形成される化合物膜は、酸化物光学膜であってもよい。この場合、反応性スパッタリングによる成膜方法に用いられる反応性ガスとして、酸素ガスを用い、前記の適宜のターゲット材を用いて形成される。酸化物光学膜としては、例えば、ビデオカメラ等の固体撮像素子の光学系に用いられる、反射防止膜や、近赤外線カット膜などがある。反射防止膜は、成膜基体表面の光の反射率を低減し、光の透過率を増加するものであり、MgFの単層膜やAl・Ta・MgFの多層膜などで構成される。また、近赤外線カット膜は、近赤外域の波長の光のみを選択的にカットするものであり、低屈折率膜と高屈折率膜との交互多層膜で構成され、たとえば、TiO・SiOの多層膜やAl・TiO・SiOの多層膜などで構成される。このように、複数の化合物膜を多層構造で成膜基体上に形成する場合は、チャンバ内に複数のターゲットを配置して、順番に薄膜を形成する。
【0036】
その他、本実施の形態の成膜装置で形成された酸化物光学膜は、増反射膜、ダイクロイックフィルタ、バンドパスフィルタなどに用いることも可能である。
【0037】
次に、本実施の形態における、モニタ基板を用いた成膜制御について説明する。
【0038】
図3は、本実施の形態においてモニタ基板およびその表面に形成されるモニタ膜の断面図である。
【0039】
本実施の形態では、モニタ基板30上に形成されるモニタ膜35の厚さを測定することにより、成膜基体7上に成膜された膜34の厚さを求める。モニタ基板30は、成膜基体7上に形成される膜34の膜厚に対して、モニタ基板30上のモニタ膜35の膜厚が厚くなるようにするため、成膜基体7よりもスパッタリングターゲット4に近い位置に、モニタ基板30の表面がスパッタリングターゲット4の方向に向いた状態で配置される。その結果、モニタ基板30の表面は必然的にプラズマ3の方向にも向いた状態となる。
【0040】
これにより、成膜基体7上の膜34に形成すべき膜厚が非常に薄く、光学制御等の従来方法での膜厚制御が困難な場合であっても、成膜基体7への成膜と同時にモニタ基板30のプラズマ3に対向する側の面にも膜34と同一組成のモニタ膜35が形成され、モニタ基板30上のモニタ膜35の膜厚が膜34よりも厚くなることにより、モニタ膜35の成膜状態を制御することで、成膜基体7上の膜34を所望の厚さに成膜制御することが可能となる。なお、モニタ基板30のモニタ膜35への成膜レートに対する成膜基体7の膜34への成膜レートの比は1未満であることが好ましい。これにより、膜34とモニタ膜35との膜厚差をより大きくすることができ、成膜基体7の膜34が非常に薄い場合であっても、より有効にモニタ膜35の膜厚を用いた膜厚制御が可能となる。
【0041】
成膜基体7への成膜中、モニタ光照射器25は、所定の波長のモニタ光をモニタ基板30のプラズマ3の反対側の面に向けて照射する。モニタ光照射器25から照射されたモニタ光は、モニタ基板30を透過し、モニタ基板30の表面に形成されたモニタ膜35で反射される。モニタ基板30の表面に形成されたモニタ膜35で反射された反射光は、さらにモニタ基板30を透過し、受光器26で受光される。
【0042】
モニタ光は、モニタ基板30を透過する際に減衰し、ある反射率でモニタ膜35で反射し、再度モニタ基板30を透過する際に減衰して受光器26に入射する。モニタ基板30内の往復でのモニタ光の減衰は、モニタ光照射器25と受光器26とモニタ基板30との相対的な位置関係、モニタ基板30の厚さ、モニタ光の波長およびモニタ基板30の材質に依存する。例えば、相対的な位置関係によるモニタ光の減衰は、受光器26の光軸がずれることなどが要因として考えられる。しかしながら、モニタ光照射器25と受光器26とモニタ基板30との相対的な位置関係、モニタ基板30の厚さ、モニタ光の波長およびモニタ基板30の材質は、成膜中に実質的に変化しないため、モニタ基板30内の往復でのモニタ光の減衰は一定である。
【0043】
一方、モニタ光のモニタ膜35での反射率は、モニタ光の波長、モニタ膜35の厚さおよびモニタ膜35の材質に依存する。モニタ光の波長およびモニタ膜35の材質は、成膜中に実質的に変化しないものの、モニタ膜35の厚さは成膜中に増加していく。このため、モニタ光がモニタ膜35で反射して受光器26に入射する反射光の強度は、モニタ膜35の厚さによって変化する。したがって、モニタ光がモニタ膜35で反射して受光器26に入射する反射光の強度を測定することができれば、モニタ膜35の厚さを求めることができる。
【0044】
しかし、受光器26には、プラズマ3が発光してモニタ膜35を透過する光も到達する。このため、受光器26が受光する光には、モニタ光がモニタ膜35で反射した反射光とプラズマ3が発光してモニタ膜35を透過する透過光とが含まれる。したがって、受光器26が測定した光の強度のうちモニタ光がモニタ膜35で反射して受光器26に入射する反射光の強度を求めるため、プラズマ3が発光してモニタ膜35を透過して受光器26に到達する透過光の強度を差し引くことで、反射光の強度のみが得られ、モニタ膜35の膜厚を正確に把握することができ、これにより成膜基体7の膜34を精度よく成形することが可能となる。
【0045】
そこで、制御器9は、受光器26が受光した光のうち、モニタ膜35で反射した反射光の強度を、プラズマ光測定器8が測定した発光強度に基づいて補正して求める。この補正は、制御器9の内部に設けられた補正器が行う。この補正は、プラズマ3に対する相対位置の影響、プラズマ光がモニタ膜35を透過して受光器26にて受光されることなどを考慮して行われる。
【0046】
相対位置の影響とは、プラズマ光測定器8と受光器26とのプラズマ3に対する相対的な位置の違いに起因する影響のことである。プラズマ3の発光は、全方位に対して一定ではなく、また、プラズマ3からの距離によってもその強度が変化する。相対位置の影響による受光強度の違いは、プラズマ3の状態および観測する波長に対し、一定の関連性を示すものの無視できるため、モニタ基板30が存在しない場合における、プラズマ光測定器8で測定される発光強度と受光器26で測定される発光強度の比は一定とすることができる。
【0047】
制御器9内部の補正器における、プラズマ光がモニタ膜35を透過して受光器26にて受光されることによる影響を補正する方法を以下に述べる。
【0048】
受光器26が受光する光(観測光)は、前述のとおりモニタ光がモニタ膜35で反射した反射光とプラズマ3が発光してモニタ膜35を透過した透過光の2つの成分が含まれる。プラズマ3は、真空チャンバ内の反応性ガスや不活性ガスの量や成膜状態の変化により変動するため、透過光もこの影響を受け光の強度が変動する。具体的には、プラズマ3の発光には、スパッタリングターゲット4に使用された原子種の原子発光、反応性ガス種の原子発光、不活性ガス種の原子発光等、これら原子発光に起因する特定波長にピークを有する光が複数存在する。また、これら特定波長の光以外にもプラズマ3により真空チャンバ内が高温になることに起因して起こる熱発光のような弱い光が広い波長帯に及ぶ発光も存在する。また、これらプラズマ発光は、スパッタの状態によって、発光ピーク波長および発光ピーク強度等が変動する。観測光は、モニタ膜35の膜厚変化を把握するために用いるため、モニタ膜と無関係に変動する透過光はノイズ成分であり、モニタ膜35の成膜状況を把握するための妨げとなる。
【0049】
そのため、プラズマ光測定器8を用いてプラズマ3の発光を測定し、観測光における監視波長と同一の波長の光の強度を把握し、それを用いて観測光から透過光による光の強度の影響を差し引くことで、プラズマ発光の影響が除外されたモニタ膜35の反射光のみの光の強度を得ることができる。
【0050】
観測光は、受光器26内もしくは制御器9内に設けられたモノクロメータもしくはバンドパスフィルタを用いて監視波長の光の強度として取り出される。観測光の中の反射光の監視波長における光の強度は、モニタ膜の厚さの増加に伴い、サインカーブのような周期的な増減を繰り返す。この光の強度変化の極値が出現するタイミングを把握することで、成膜時のモニタ膜35の膜厚を制御器9の内部に設けられたモニタ膜厚評価器により算出する。また、モニタ膜35の膜厚の時間変化を用いてモニタ基板への成膜レートも算出することができる。
【0051】
制御器9の補正器における観測光の監視波長は、どの波長を用いてもよい。成膜基体7上に形成される膜34の膜厚が非常に薄く、モニタ膜35の膜厚も薄い場合は、短い波長を監視波長として選択することが好ましい。これは、前述の反射光の光量変動における極値を用いてモニタ膜35の膜厚変化を把握する場合、短い波長を用いた方が、膜厚変化に対して極値を示すタイミングが早く、モニタ膜35の僅かな膜厚変化を把握できるためである。そのため、成膜基体7上に形成される膜34の膜厚が薄い場合は、360nm〜500nmの波長域を監視波長として選択することが好ましい。また、観測光の監視波長は、単一の波長だけでなく複数の波長の光を対象としてもよい。
【0052】
また、反応性スパッタリングにおけるプラズマ発光は前述のとおり、様々な発光ピークが存在する。制御器9の補正器における観測光の監視波長は、モニタ膜35の膜厚が薄い場合、短い波長を用いることが好ましいが、例えば波長360〜500nmにはプラズマの発光スペクトルのピーク波長群が複数存在している。そのため、プラズマ3の影響を排除するためピーク波長群を避けた監視波長を設定することは実質的に困難である。そこで、プラズマの発光スペクトルのピーク波長群の内のいずれかの波長の光を観測光の監視波長とすることで、成膜すべき膜厚に最適な監視波長を選択することが可能となる。なお、プラズマ3の発光ピークは、真空チャンバ内に存在する各種ガスやターゲット材に起因するものであるが、本実施の形態における観測光の監視波長は、これらの主要な発光ピークだけではなく、前後の波長より発光量が多い波長をプラズマの発光スペクトルのピーク波長群とみなし、監視波長として用いることができる。なお、監視波長の光の強度を観測光から取りだす際に用いるモノクロメータやバンドパスフィルタは、設計上の中心波長に対し前後数nmの波長を含むものであり、本実施の形態ではこれらの部材に起因する測定範囲に発光スペクトルのピーク波長群が含まれてもよい。
【0053】
モニタ膜の膜厚が増加することに伴い、監視波長における反射光の光の強度が増減するが、これと同様に監視波長における透過光の強度も増減する。反射光および透過光は、それぞれ同一のモニタ膜35を反射もしくは透過することからモニタ膜35の変化に伴う光の強度の変化の向き(増減方向)はそれぞれ逆となる。プラズマ3の発光の変動がなく光の強度が一定である場合、反射光および透過光の膜厚変化に伴う光の強度の変化の極値を示すタイミングは同一である。しかしながら、プラズマ3の発光の変動があり、透過光の監視波長における光の強度が変動すると、反射光と透過光との光の強度が合わさった観測光の極値を示すタイミングは、反射光のみのタイミングとずれることがある。そのため、反射光のみの極値を示すタイミングを正確に把握するためには、観測光から透過光の監視波長の光の強度を除外する必要がある。
【0054】
プラズマ光測定器8による監視光の波長は、受光器26での観測光の監視波長と同一であっても異なってもよい。同一である場合、プラズマ光測定器8の光の強度データをそのまま、もしくは相対位置の違いを補正した上で、制御器9の補正器に入力する。また、異なる場合、プラズマ光測定器8の監視光の波長の光の強度と受光器26での観測光の監視波長の光の強度との比を把握し、プラズマ光測定器8の光の強度データに乗じ、必要に応じて相対位置の違いを補正した上で、制御器9の補正器に入力する。なお、成膜状態が一定に保たれている場合は、プラズマ光測定器8の監視光の波長の光の強度と受光器26での観測光の監視波長の光の強度は、それぞれの波長が異なっていてもその比は一定となる。
【0055】
プラズマ3に対する成膜基体7とモニタ基板30と距離の比は成膜中に変化しないため、成膜基体7上に形成される膜34の成膜レートとモニタ基板30上に形成されるモニタ膜35の成膜レートとの比は一定である。そこで、制御器9の内部に設けられた膜厚評価器は、モニタ基板30の成膜レートに対する成膜基体7の成膜レートの比と、モニタ膜35の厚さに基づいて、成膜基体7に形成された膜厚を評価する。モニタ基板30上のモニタ膜35の成膜レートあるいはモニタ膜35の厚さそのものを監視することにより、成膜基体7上に所定の厚さの膜35を形成することができる。
【0056】
本実施の形態では、成膜時に所望の成膜状態(例えば、遷移状態)を保つよう、PEM法を用いたプラズマ中の特定波長の光の強度を一定する制御器(PEM装置)を用いてもよい。これにより、観測光の監視波長における透過光の変動要因であるプラズマ3の発光の変動がほぼなくなるため、透過光の強度の変化はモニタ膜35の膜厚変化のみに依存することとなり、透過光の影響を除外する補正器の処理を簡素化することができる。PEM法においては、プラズマ中の特定波長の光の強度を監視・制御することから、PEM装置におけるプラズマ光の監視装置とプラズマ光測定器8とを共通化することができる。また、PEM法で得られるプラズマの監視光データを制御器9の補正器に用いることも可能である。また、成膜状態を遷移状態に保つ手段としては、PEM法を用いる以外に電圧制御による方法・装置を用いてもよい。
【0057】
[第2の実施の形態]
図4は、本発明に係る成膜装置の第2の実施の形態における断面図である。
【0058】
本実施の形態の成膜装置50において、真空チャンバ52は、円筒状の部分の側面に角筒状の部分が結合した形状に形成されている。真空チャンバ52の円筒状の部分には、その円筒と同軸に、多角形筒の成膜基体支持体51が配置されている。成膜基体支持体51の横断面は、たとえば正12角形である。成膜基体支持体51の各側面には、成膜基体7が支持される。成膜基体支持体51のそれぞれの側面に複数の成膜基体7が支持されてもよい。成膜基体支持体51は、軸を中心にたとえば図中に破線で示した回転方向74に回転する。
【0059】
真空チャンバ52の角筒状の部分には、成膜基体支持体51と対向するように一対のスパッタリングターゲット4が配置されている。一対のスパッタリングターゲット4との間に電圧が印加されることによって、スパッタリングターゲット4と成膜基体支持体51との間にプラズマ3が発生する。また、真空チャンバ52には、外部のガス供給源33(図1参照)からガス供給配管5(図1参照)が延びていて、真空チャンバ52には反応性ガスが供給される。プラズマ3の発光強度は、プラズマ光測定器8で測定される。
【0060】
真空チャンバ52の軸付近には、投光ヘッド71が配置されている。投光ヘッド71は成膜基体支持体51に向かって光を投射する。投光ヘッド71が投射した第2モニタ光73は、成膜基体7を透過する。第2モニタ光73が成膜基体7およびその表面に形成された膜を透過した第2観測光は、真空チャンバ52の外部に設けられた受光ヘッド72で受光される。成膜基体支持体51および真空チャンバ52の一部は、投光ヘッド71が投射した光が受光ヘッド72に到達するように切り欠かれ、または、透明部材がはめ込まれている。第2観測光としては、成膜基体支持体51の外側に投光ヘッドを設けることで成膜基体7の表面に形成された膜で反射した反射光を用いてもよい。これら第2観測光を用いた第2光学モニタにより成膜基体表面の膜厚を評価する。
【0061】
また、真空チャンバ52の円筒部と角筒部の連結部分の近傍に、直近OMSモニタ75が配置されている。この直近OMSモニタ75は、第1の実施の形態における、モニタ基板支持体24(図1参照)、モニタ光照射器25(図1参照)および受光器26を一体化したものである。
【0062】
図5は、本実施の形態における直近OMSモニタの断面を示す図6のV−V矢視縦断面図である。図6は、図5のVI−VI矢視横断面図である。
【0063】
直近OMSモニタ75は、一端に開口が設けられた円筒83を備えている。円筒83の開口部は、モニタ基板30をはめ込めるようになっている。円筒83の内部には、第1光ファイバ81と第2光ファイバ82とが延びている。第1光ファイバ81の出射光端84、および、第2光ファイバ82の入射光端85は、モニタ基板30の円筒83の内側の面に対向するように配置されている。
【0064】
直近OMSモニタ75は、円筒83のモニタ基板30がはめ込まれた端部がスパッタリングターゲット4に対向するように配置される。このように配置することで、モニタ基板30は必然的にプラズマ3に対向することとなる。
【0065】
第1光ファイバ81は、円筒83と同軸に配置されている。たとえば6個の第2光ファイバ82は、第1光ファイバ81を囲むように配置されている。
【0066】
第1光ファイバ81の一方の端部からはモニタ光が照射され、そのモニタ光は出射光端84から出射する。出射光端84から出射したモニタ光は、モニタ基板30のスパッタリングターゲット4に対向する側の表面に形成されたモニタ膜35で反射して入射光端85に入射する。入射光端85に入射した光の強度は、制御器7(図1参照)に伝達される。
【0067】
第1の実施の形態と同様に、プラズマ3を発生させ、反応性ガスを供給することにより、成膜基体支持体51に支持された成膜基体7のスパッタリングターゲット4に対向する面に膜34(図2参照)が形成される。この際、反応性ガスの導入量などはPEM法によって制御される。
【0068】
成膜時に成膜基体支持体51は回転しているため、成膜基体7がスパッタリングターゲット4に対向している間だけ成膜基体7上の膜は成長する。モニタ基板30は、成膜基体7よりもスパッタリングターゲット4との平均距離が近い位置に配置されているため、モニタ基板30への成膜レートは成膜基体7よりも高い。ここで、平均距離とは、プラズマ3スパッタリングターゲット4に対向している場合の距離を、プラズマ3が発生している間の時間で平均した距離である。本実施の形態では、成膜基体支持体51が回転して、成膜基体支持体51の12の側面にそれぞれ配置された成膜基体7が順次スパッタリングターゲット4に対向することになるため、成膜基体7のスパッタリングターゲット4との平均距離は成膜基体7が最もスパッタリングターゲット4に近接した状態での距離の1/12以下になる。
【0069】
一方、直近OMSモニタ75に支持されたモニタ基板30の位置は固定されているため、回転する成膜基体支持体51に支持された成膜基体7よりもモニタ基板30は長時間スパッタリングターゲット4に対向していることになる。このため、モニタ基板30への成膜レートは、成膜基体7への成膜レートよりも大きい。本実施の形態は、成膜基体7が回転する成膜基体支持体51に支持されたいわゆるカルーセル型の成膜装置50であるが、カルーセル型以外であっても、成膜基体7よりもスパッタリングターゲット4との平均距離が近い位置にモニタ基板30を配置すれば、モニタ基板30への成膜レートを成膜基体7よりも高めることができる。
【0070】
投光ヘッド71から投射された光73は、成膜基体7およびその表面に形成された膜を透過して受光ヘッド72に到達する。受光ヘッド72で受光した光の強度に基づいて、投光ヘッド71が投射した光の成膜基体7の表面の膜での減衰率を求めることができる。このようにして求められた減衰率は、モニタ膜35の厚さに依存して変化する。この減衰率の変化は、モニタ膜35の厚さの変化に伴って、極値をとりながら変化していく。そこで、制御器9(図1参照)は、たとえばこの極値の数を利用することにより、成膜基体7上の膜厚を求める。
【0071】
このように、本実施の形態は、成膜時の膜厚を光学的に測定するシステム(Optical Monitoring System:OMS)として第2光学モニタを備えている。受光ヘッド72をプラズマ3の発光が入射しない位置に配置することにより、第2光学モニタによる成膜基体7の膜厚測定から、プラズマ3の発光の影響を排除できる。第2光学モニタによる膜厚測定は、成膜基体7上の膜厚を直接測定するため、測定精度が高い傾向がある。しかし、第2光学モニタでは、透過光の強度のピークを利用する必要があるため、膜厚によっては十分な測定精度が得られない可能性がある。特に、透過光の強度のピークが現れないような成膜基体7上の膜厚が薄い間は、測定自体がきわめて困難となる。
【0072】
しかし、本実施の形態では、直近OMSモニタ75を備えていて、第1の実施の形態と同様にモニタ基板30上に形成されたモニタ膜35での反射光の強度を測定することにより、間接的に成膜基体7上の膜厚を測定することができる。この直近OMSモニタ75に支持されるモニタ基板30をプラズマ3の近傍に配置することによってモニタ基板30の成膜レートを成膜基体7の成膜レートよりも大きくしておくことにより、成膜基体7上の膜厚よりもモニタ基板30上のモニタ膜35の厚さを大きくすることができる。このため、受光ヘッド72などからなる第2光学モニタによる成膜基体7上の膜厚の直接測定よりも、厚いモニタ膜35の厚さを測定することができる。
【0073】
モニタ基板30と成膜基体7上の成膜レートの比は一定であるため、モニタ基板30上のモニタ膜35の膜厚を測定することにより、成膜基体7上の膜厚を間接的に測定することができる。その結果、成膜基体7上の膜厚が薄い場合など成膜基体7上の膜厚を第2光学モニタで直接測定できない、あるいは、測定精度が低い場合であっても、成膜基体7上の膜厚を高い精度で測定することができる。さらに、投光ヘッド71および受光ヘッド72などからなるOMSによる成膜基体7上の膜厚測定結果を用いて、直近OMSモニタ75での測定結果を補正することにより、測定精度を高めることもできる。
【0074】
本実施の形態では、モニタ光は第1光ファイバ81を通じてモニタ膜35に照射される。また、モニタ膜35での反射光は、第2光ファイバ82を通じて受光される。このため、モニタ光の照射装置や、反射光の受光装置の配置の自由度が向上する。さらに、直近OMSモニタを一体として形成することにより小型化が可能であり、成膜基体7上への成膜の障害物となりにくく、また、プラズマ3の発生のための電磁場を乱しにくくなる。
【0075】
また、モニタ光を放射する出射光端84およびモニタ膜35での反射光が入射する入射光端85は、モニタ基板30の支持体も兼ねた円筒83に固定されている。このため、モニタ基板30に対するモニタ光の入射角度や反射光の入射角度が変化する可能性が小さくなる。その結果、モニタ光がモニタ膜35で反射した反射光の強度をより安定して測定することができる。
【0076】
[他の実施の形態]
上述の各実施の形態は単なる例示であり、本発明はこれらに限定されない。また、各実施の形態の特徴を組み合わせて実施することもできる。例えば、各実施の形態では、単一のモニタ基板を用いたが、モニタ基板を成膜中に適宜交換可能な装置を用いてもよい。これにより、成膜基体上の膜の総膜厚が厚い場合であっても、モニタ膜の膜厚が厚くなることによる測定誤差の影響を受けることなくモニタ膜の膜厚を正確に把握することが可能となる。
【符号の説明】
【0077】
1…成膜装置、2…真空チャンバ、3…プラズマ、4…スパッタリングターゲット、5…ガス供給配管、6…ガス供給口、7…成膜基体、8…プラズマ光測定器、9…制御器、11…マスフローコントローラ、21…成膜基体支持体、22…電源、23…アノード、24…モニタ基板支持体、25…モニタ光照射器、26…受光器、30…モニタ基板、33…ガス供給源、34…膜、35…モニタ膜、50…成膜装置、51…成膜基体支持体、52…真空チャンバ、71…投光ヘッド、72…受光ヘッド、73…光、74…回転方向、75…直近OMSモニタ、81…第1光ファイバ、82…第2光ファイバ、83…円筒、84…出射光端、85…入射光端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバと、
前記真空チャンバ内に配置されたスパッタリングターゲットと、
前記真空チャンバ内に成膜基体を支持する成膜基体支持体と、
前記スパッタリングターゲットと前記成膜基体との間にプラズマを発生させるスパッタリング手段と、
前記真空チャンバ内で前記成膜基体と成膜レートが異なる位置に配置されたモニタ基板を支持するモニタ基板支持体と、
前記プラズマの発光強度を測定するプラズマ光測定器と、
前記モニタ基板の前記プラズマの反対側の面に向けてモニタ光を照射するモニタ光照射器と、
前記モニタ光が前記モニタ基板の表面に形成されたモニタ膜で反射した反射光および前記プラズマが発光して前記モニタ膜を透過する透過光を受光する受光器と、
前記受光器が受光した光のうち前記反射光の強度を前記発光強度に基づいて補正して求める補正器と、
前記反射光の強度に基づいて前記モニタ膜の厚さを評価するモニタ膜厚評価器と、
を具備することを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記モニタ基板の成膜レートに対する前記成膜基体の成膜レートの比と前記モニタ膜の厚さとに基づいて前記成膜基体に形成された膜厚を評価する膜厚評価器をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記モニタ光照射器は前記モニタ光を放射する出射光端が前記モニタ基板に対向するように配置された第1光ファイバを有し、
前記受光器は前記反射光および前記透過光が入射する入射光端が前記出射光端に近接して前記モニタ基板に対向するように配置された第2光ファイバを有する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記出射光端および前記入射光端は前記モニタ基板支持体に固定されていることを特徴とする請求項3に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記反射光の強度は前記プラズマの発光スペクトルのピーク波長群の内のいずれかの波長の光の強度であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記モニタ基板の成膜レートに対する前記成膜基体の成膜レートの比は1未満であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記成膜基体は成膜時に前記スパッタリングターゲットに対向するように配置され、前記モニタ基板は前記成膜基体の前記スパッタリングターゲットからの距離の前記プラズマが発生している時間での平均値よりも前記スパッタリングターゲットに近い位置に配置されることを特徴とする請求項6に記載の成膜装置。
【請求項8】
前記発光強度が一定となるように前記スパッタリング手段を制御可能な制御器を具備することを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項9】
前記成膜基体支持体は外面に複数の前記成膜基体を配置可能な筒状に形成され、
前記成膜基体支持体をその軸を中心に回転させる回転機をさらに具備することを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項10】
前記成膜基体支持体は第2モニタ基板を配置可能であって、
前記第2モニタ基板の表面に形成された膜に第2モニタ光を透過させまたは反射させた第2観測光の強度から前記成膜基体の表面の膜厚を評価する第2光学モニタをさらに具備することを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項11】
真空チャンバ内の成膜基体にスパッタリングターゲットを含有する膜を形成する成膜方法において、
前記成膜基体と前記スパッタリングターゲットとの間にプラズマを発生させて前記スパッタリングターゲットを含有する膜を前記成膜基体の表面および前記真空チャンバ内の前記成膜基体と成膜レートが異なる位置に配置されたモニタ基板の表面に形成する成膜工程と、
前記プラズマの発光強度を測定するプラズマ光測定工程と、
前記モニタ基板の前記プラズマの反対側の面に向けてモニタ光を照射するモニタ光照射工程と、
前記モニタ光が前記モニタ基板の表面に形成されたモニタ膜で反射した反射光および前記プラズマが発光して前記モニタ基板を透過する透過光を受光する受光工程と、
前記受光器が受光した光のうち前記反射光の強度を前記発光強度に基づいて補正して求める補正工程と、
前記反射光の強度に基づいて前記モニタ膜の厚さを評価するモニタ膜厚評価工程と、
を具備することを特徴とする成膜方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−158808(P2012−158808A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19608(P2011−19608)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】