説明

抗アクネ菌化合物及びその製造方法

【課題】ジテルペン系化合物は、植物界に広く分布する天然物であり、生物学的活性を有するものとされているが、アクネ菌に対する抗菌性を有するかどうか明らかではない。ニキビ(座瘡)の原因菌であるアクネ菌に対して、抗菌作用を有する抗アクネ菌化合物及び抗アクネ菌化合物を含有する皮膚外用剤の提供。
【解決手段】下記構造式に代表される6化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種類の抗アクネ菌化合物を含有することを特徴とする皮膚外用剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニキビ(座瘡)の原因菌であるアクネ菌に対して、抗菌作用を有する抗アクネ菌化合物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然物から抽出することができるジテルペンカテコール系化合物は、抗菌活性を示すものが多く、食品や生薬の成分としても人間が摂取可能な物質であり、人体に対する毒性は極めて低い。上記ジテルペンカテコール系化合物の中でも、アビエタキノンメチドは、東アフリカで消化管内の寄生虫駆除に使用されているシソ科植物(Plectranthus elegans)等から得られるジテルペンであり、毒性が少なく、抗菌化合物として有用性が高いものである。
【0003】
ジテルペンフェノール化合物であるトタロールを含有する抗菌剤が開示されている(例えば、特許文献1)。また、トタロールは、メチシレン耐性黄色ブドウ球菌(以下、MRSAといいます。)やアクネ菌等の各種細菌に対して強い抗菌活性を持つことが知られている(例えば、非特許文献1)。
【0004】
また、ジテルペンカテコール系化合物であるフェルギノール及びその誘導体が、
植物病原菌の防除・抗菌物質として使用できることが開示されている(例えば、特許文献2)。さらに、フェルギノールは、上記トタロールと同様にMRSAに対して抗菌活性を持つことが報告されている(例えば、非特許文献2)。
【0005】
天然物から、ジテルペン系化合物を簡易かつ容易に製造できる方法が開示されている。上記製造方法により得られたジテルペン系化合物は、MRSAのみならずバンコマイシン耐性腸球菌(以下、VREといいます。)に対しても優れた抗菌活性を有することが開示されている(例えば、特許文献3)。
【0006】
一方、ニキビは、思春期頃から皮膚に生ずる慢性炎症性疾患であり、ニキビの発症と悪化は、食生活やストレス等の要因と、皮膚毛穴に寄生したアクネ菌や黄色ブドウ球菌、皮膚ブドウ球菌の増殖(感染症)が原因であるとされている。
上記ジテルペン系化合物は、植物界に広く分布する天然物であり、抗細菌活性以外にも、抗ウィルス活性、抗マラリア活性、抗酸化活性、抗腫瘍活性等の生物学的活性を有するものとされているが、上記アクネ菌に対する抗菌性を有するかどうか明らかではない。
【0007】
また、従来の製造方法により、天然物から抽出することができるジテルペン系化合物は、きわめて少量であり、大量合成することができないという問題点があった。すなわち、天然物からジテルペン系化合物を大量合成することができないことから、抗菌剤の医薬シーズとして研究を行うだけのサンプル量を確保することができないという問題点があった。また、従来の製造方法は、ステップ数が多く、収率が低いという問題があった(非特許文献3)。
【0008】
なお、本件特許出願人は、本件発明に関連する文献公知発明が記載された刊行物として、以下の技術文献を開示する。
【特許文献1】特開平01−311019号公報
【特許文献2】特開平11−292727号公報
【特許文献3】特開2007−169202号公報
【非特許文献1】Biosci. Biotech. Biochem., 58, 1925-1926 (1994).
【非特許文献2】Bioorg. Med. Chem., 9, 347-356 (2001).
【非特許文献3】J. chem. Soc. Perkin, 2657~2664 (2000).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のような状況に鑑み、本発明の課題は、ニキビ(座瘡)の原因菌であるアクネ菌に対して、抗菌作用を有する抗アクネ菌化合物を提供することにある。また、本発明の課題は、上記抗アクネ菌化合物を簡易かつ容易に大量に製造できる方法を提供することにある。さらに本発明は、上記抗アクネ菌を含有する皮膚外用剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、天然物を原料としてトタロール等採択し、これを特定の触媒を使用し、トタロール等のオルト位を選択的に酸化することによって製造される化合物が、MRSAのみならずアクネ菌に対しても抗菌作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は、以下の技術的事項から構成される。
すなわち、
[1] 下記構造式(1)ないし(6)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種類の抗アクネ菌化合物を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【0012】
【化1】



[2]前記抗アクネ菌化合物が、下記構造式(2)又は(5)のいずれか一方で表される化合物であることを特徴とする[1]に記載の皮膚外用剤。
【0013】
【化2】

【0014】
【化3】


[3]前記抗アクネ菌化合物が、下記構造式(2)で表される化合物であることを特徴とする[2]に記載の皮膚外用剤。
【0015】
【化4】

[4][1]ないし[3]に記載の抗アクネ菌化合物の製造方法であって、
下記一般式で表されるジテルペン化合物と、
【0016】
【化5】

(上記一般式中、R1又はR2のいずれか一方が水酸基であり、R1が水酸基の場合には、R3は水素原子であり、R2は、水素、アルキル基、アリール基、水酸基含有アルキル基、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン基又はニトロ基を表す。また、R2が、水酸基の場合には、R1は水素原子であり、R3は、水素、アルキル基、アリール基、水酸基含有アルキル基、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン基又はニトロ基を表す。)
下記一般式で表されるハロゲン化過酸化ベンゾイルを
【0017】
【化6】


(上記一般式において、Xは、ハロゲン原子を表し、nは、1又は2を表す。)
を反応させることにより、カテコール型ジテルペンを酸化する第1の工程と、
前記第1の工程により生成するカテコール型ジテルペン化合物を、還元又は加水分解させる第2の工程を有することを特徴とする抗アクネ菌化合物の製造方法。
[5]前記ジテルペン化合物が、アビエタン骨格、トタラン骨格またはポドカルパン骨格のいずれかの炭素骨格を有することを特徴とする[4]に記載の抗アクネ菌化合物の製造方法。
[6]前記ジテルペン化合物が、フェルギノール又はトタロールのいずれか一方であることを特徴とする[5]に記載の抗アクネ菌化合物の製造方法。
[7]前記ハロゲン化過酸化ベンゾイルは、メタクロロ過酸化ベンゾイルであることを特徴とする[6]に記載の抗アクネ菌化合物の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の抗アクネ菌化合物は、ニキビ(座瘡)の原因菌であるアクネ菌に対して、きわめて高い抗菌作用を有し、同時にMRSAに対しても抗菌活性を有する。さらに、本発明の抗アクネ菌化合物の製造方法によれば、天然物から抽出した化合物を原料とし、わずか数段階の工程により上記化合物を簡易かつ容易にできるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。本発明の皮膚外用剤の主成分である。抗アクネ菌化合物は、以下の一般式で表される化合物からなる群から選ばれるものである。
【0020】
【化7】

【0021】
本発明の皮膚外用剤は、上記抗アクネ菌化合物を含有することを特徴とするものである。上記抗アクネ菌化合物は、いずれも天然物から抽出できる化合物をその原料とし、特定の触媒により処理することにより、所望の抗アクネ菌化合物を簡易かつ容易に製造できる。後述するように、上記抗アクネ菌化合物の中でも、抗アクネ菌活性の観点から、abietaquinone methide (1)の化合物またはtotara-8,11,13-triene-12,13-diol (3)の化合物が好ましい。
7-deoxynimbidiol(2)の化合物又はMaytenoquinone(5)の化合物が好ましい。
【0022】
次に、皮膚外用剤の主成分である抗アクネ菌化合物の製造方法について説明する。本発明の抗アクネ菌の製造方法は、第一工程として、下記一般式で表されるジテルペン化合物をハロゲン化過酸化ベンゾイルとを反応させることにより、カテコール型ジテルペンを酸化する工程を有するものである。
【0023】
まず、本発明の皮膚外用剤の主成分である抗アクネ菌化合物は、以下一般式で表されるジテルペン化合物を原料とするものである。
【0024】
【化8】

【0025】
上記一般式中、R1又はR2のいずれか一方が水酸基であることが必要である。
すなわち、本発明の抗アクネ菌化合物の原料となる化合物は、フェノール性水酸基を有するジテルペン化合物である。R1が水酸基の場合には、R3は水素原子であり、R2は、水素、アルキル基、アリール基、水酸基含有アルキル基、シアノ基、カルボキシル基、ハロゲン基又はニトロ基を選択することができる。また、R2が、水酸基の場合には、R1は水素原子であり、R3は、水素、アルキル基、アリール基、水酸基含有アルキル基、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン基又はニトロ基を選択することができる。
【0026】
アルキル基としては、特に制限されるものではないが、その炭素数が1ないし10の直鎖状、分岐鎖状のアルキル基が好ましい。具体的にメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ノルマルペンチル基、イソペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基を例示することができる。アリール基としては、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基を例示することができる。さら水酸基含有アルキル基としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等を例示することができる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子を例示することができる。
【0027】
上記ジテルペン化合物の中でも、その炭素骨格により分類すると、アビエタン骨格、トタラン骨格又はポトカルパン骨格を有するものが好ましい。さらに、天然物からの抽出し易さを勘案すると、R1を水酸基、R3を水素原子とし、R2をイソプロピル基とした化合物であるフェルギノール又はR2を水酸基、R1を水素原子とし、R3をイソプロピル基とした化合物であるトタロールが特に好ましい。
【0028】
上記一般式において、本発明の抗アクネ菌化合物の原料となる化合物であるフェルギノール9及びトタロール7(以下、フェルギノール等ともいう。)は、ヒノキ科、スギ科、マキ科、シソ科に属する天然物である植物に含まれている化合物であり、例えば、スギの葉、皮、心材、特にスギの皮に大量に含まれている。フェルギノール等は、それぞれ下記一般式で表されるように、水酸基を一つ有するジテルペンであり、抗酸化力を有する化合物である。
【0029】
【化9】

【0030】
【化10】

【0031】
上記フェルギノール等の製造方法は、特に制限されるものではないが、例えば、上記フェルギノール等を含有する原料植物を特定溶媒の存在下、所定温度で抽出した後、精製することによって製造することができる。特定の溶媒とは、その後の加熱処理を施すことにより、原料植物よりフェルギノール等を抽出することができる溶媒であれば特に制限されるものではないが、抽出反応における反応条件をたとえば常圧、60℃程度の緩やかな条件とするために、原料植物の溶解性が高く、沸点が低い溶媒が好ましい。例えば、水、アルコール、アルカン、カルボン酸、ケトン等を例示することができる。なお、本発明においては、これらの溶媒を組み合わせて使用してもよい。
【0032】
具体的には、アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル1−プロパノール、t−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル1−ブタノール、3−メチル1−ブタノール、2、2ジメチル1−プロパノール等を例示することができる。
【0033】
また、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、エチレングリコール、1,4ブタンジオール、1,6ヘキサンジオール等の多価アルコールを例示することができる。上記アルカンとしては、ペンタン、へキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等を例示することができる。
【0034】
ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトンを例示することができる。上記溶媒の中でも、液体化合物としての用途や安全性等の取り扱いの観点から、水、アルコールの単独又は水とアルコールとの混合溶媒を使用することが好ましい。特に好ましくは、水、メタノール、エチレングリコール又はこれらの混合溶媒とするのが好ましい。
【0035】
また、フェルギノール等は、常法に従い、デヒロドアビエチン酸を出発物質として化学合成により製造することもできる。
【0036】
(フェルギノール等のオルト位酸化)
次に、本発明の抗アクネ菌化合物の製造方法は、上記化学式で示されるフェルギノール等及びその誘導体の化学構造式中、フェノールのオルト位酸化反応に際して、下記一般式で示される特定の過酸化物を採択し、酸化する工程を有する。
その結果、フェルギノール等のジテルペン化合物は、カテコール型ジテルペン酸化物中間体となる。上記第工程において、下記一般式で表される特定のハロゲン化過酸化物を酸化剤として使用し、フェルギノール等及びその誘導体のオルト位を特異的に酸化するものである。
【0037】
【化11】

【0038】
一般に、フェルギノール等に代表されるフェノール類のオルト位酸化反応において採択される方法としては、セレン酸化物による直接酸化方法、過酸化ベンゾイルによる酸化方法、空気酸化、Iodoxybenzoic acid(IBX)による酸化等方法を例示することができる。しかしながら、上記の酸化方法はいずれも以下の問題点がある。まず、セレン酸化物による酸化は触媒であるセレン自体が人体に対する毒性が強くため、製造工程に使用する場合には不都合がある。
【0039】
また、上記過酸化ベンゾイルは、極めて爆発する可能性が大きいため、取り扱いが困難であり、現在のところ少なくとも日本においては製造中止となっているものである。また、空気酸化方法は、製造効率の観点から好ましくない。この他の酸化剤としてはIodoxybenzoic acid(IBX)が考えられるが、IBXによる酸化では、オルト位酸化物が更に酸化され、複雑な混合物を生成することが多い。従って、安全かつ取り扱いがきわめて容易でかつ、酸化効率の良い過酸化ベンゾイルを開発する必要がある。このような点を踏まえ、本発明の抗アクネ菌化合物の製造方法においては、フェノールのオルト位酸化のための特定の過酸化物を採用するものである。なお、このハロゲン化過酸化ベンゾイルは、後述するように簡易な製造方法により合成することができる。
【0040】
上記一般式中、ハロゲン化過酸化物において、Xは、ハロゲン原子であり、酸化剤としての安定性と反応性の観点から塩素原子が好ましい。また、上記観点より、nの値は、1又は2であることが好ましい。2以上であると、後述するハロゲン化ベンゾイルの製造方法において製造が困難であり好ましくない。ハロゲン原子は、nが1のときは、イプソ炭素に対して3位にあることが好ましく、nが2のときは、3位と5位にあることが好ましい。上記一般式を充足するハロゲン化過酸化物としては、下記化学式で表されるメタクロロベンゾイルペルオキシド(X=Cl、n=1の場合、以下、「mCBPO」と略する場合がある。)やクロロアセチルメタクロロベンゾイルペルオキシドを例示することができる。
【0041】
【化12】


【0042】
上記メタクロロベンゾイルペルオキシド(mCBPO)を製造する場合には、以下のいずれかの方法で製造することができる。まず第1の製造方法としては、溶媒中で、メタクロロ過安息香酸(mCPBA)に対して、縮合剤としてジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を反応させることにより、メタクロロベンゾイルペルオキシド(mCBPO)が結晶で得られる。このメタクロロベンゾイルペルオキシド(mCBPO)が生成する反応機構は、以下の化学反応式により、メタクロロ過安息香酸(mCPBA)と、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)から、メタクロロ過安息香酸(mCPBA)ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)付加物(mCPBA―DCC)が生成し、その付加物と未反応のメタクロロ過安息香酸(mCPBA)とが反応し、メタクロロベンゾイルペルオキシド(mCBPO)が生成する。以下に上記反応の反応式を示す。
【0043】
【化13】


【0044】
この反応において、溶媒としては、塩化メチレン、クロロホルム又はトルエンが好ましい。各反応物の濃度は、0.1Mないし0.05Mが好ましい。0.1M未満であると、反応が十分進行しないので好ましくなく、0.05M以上であると、反応収率の観点から好ましくない。反応温度は、15℃〜30℃であることが好ましく、15℃未満であると、反応が十分進行しないので好ましくなく、30℃以上となると、反応収率の観点から好ましくない。また、反応時間は、10時間ないし20時間であることが好ましい。10時間未満であると反応が十分進行しないので好ましくなく、30℃以上となると、反応収率の観点から好ましくない。
【0045】
次の製造方法としては、溶媒中でメタ過クロロ安息香酸(mCPBA)をジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)と反応させることにより、メタ過クロロ安息香酸(mCPBA)ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)付加物(mCPBA―DCC)が生成するが、この付加物にメタクロロ安息香酸(mCBA)を加えることによりメタクロロベンゾイルペルオキシド(mCBPO)が生成する。反応式は以下の通りとなる。
【0046】
【化14】

【0047】
上記反応において、使用できる溶媒としては特に制限されるものではないが、
塩化メチレン、クロロホルム又はトルエンが好ましい。各反応物の濃度は、0.4Mないし0.6Mであることが好ましい。反応温度は、好ましくは15〜30℃である。反応時間は好ましくは2時間ないし3時間である。
【0048】
さらに他の製造方法としては、溶媒中でジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)をm−クロロ安息香酸(mCBA)とを反応させ、この反応物にメタクロロベンゾイルペルオキシド(mCBPO)が製造される。反応機構は、以下の通りとなる。
【0049】
【化15】

【0050】
上記反応において、使用できる溶媒としては特に制限されるものではないが、
塩化メチレン、クロロホルム又はトルエンが好ましい。各反応物の濃度は、0.4Mないし0.6Mである。反応温度は、好ましくは15〜30℃である。反応時間は好ましくは2時間ないし3時間である。
【0051】
本発明においては、上記の製造方法によって製造したメタクロロベンゾイルペルオキシド(mCBPO)を使用し、以下の化学反応式で示されるように、フェルギノール等(7)及びその誘導体のフェノールのオルト位に、メタクロロベンゾイルペルオキシド(mCBPO)が付加したカルノシン酸のm-クロロ安息香酸モノエステル(以下フェルギノールモノエステル(8)と言う。)が形成され、その後の還元反応または加水分解反応により、m−クロロベンゾイル基が脱離し、フェノールのオルト位にフェノール性水酸基(3)が形成される。
【0052】
【化16】

【0053】
次に、本発明の抗アクネ菌化合物の製造方法は、上記第1工程において製造されたカテコール型ジテルペン酸化物中間体を還元又は加水分解させる第2の工程を有する。上記第2の工程において、還元反応に使用される還元剤としては、カルボキシル基を還元しない程度の緩やかな還元性を有する触媒であれば特に制限されるものではないが、たとえば、トリアルキル水素化ホウ素カリウム(KBHR)、水素化リチウムホウ素(LiBH)、シアン化ホウ素ナトリウムトリハイドライド(NaBHCN)、ホウ素ナトリウムテトラハイドライド―ルイス酸(NaBH−MXn)、アルキル化ホウ素ハイドライド(BRnH3−n)、ホウ素ナトリウムテトラハイドライド(NaBH)、ボラン(BH)及びアルキル化ホウ素(BRnH3−n)を例示することができる。なお、これらの還元剤は単独で使用してもよいし、組み合わせて使用してもよい。
【0054】
本発明の抗アクネ菌化合物の製造方法においては、上記第1の工程と、第2の工程を経ることによって、簡易かつ容易に抗アクネ菌を製造することができる。
本発明の抗アクネ菌化合物は、皮膚外用剤は勿論のこと、化粧品、医薬部外品及び医薬品のいずれにも使用することができる。その剤型としては、特に限定されるものではなく、例えば、クリーム、乳液、オイル、ローション、オイルゲル、エアゾール剤、エッセンス、パック、洗浄剤、ファンデーション、打粉、軟膏等を例示することができる。本発明の化合物の経皮吸収性を換算すると、上記形態の中でも特に、化粧水、クリーム、乳液、オイルが好ましい。
【実施例】
【0055】
以下、本発明について実施例を用いて説明するが、本発明は、何らこれらに限定されるものではない。
【0056】
(実施例1)
[抗アクネ菌の製造]
Totarane 型カテコール、キノン及びキノンメチドの合成
(+)-トタロール(totarol)(7) からカテコール (3) の合成は、精製したメタクロロ過酸化ベンゾイル(meta-chlorobenzoyl peroxide (CBPO)) を用いて、(+)-トタロール(totarol)(7)のオルト(ortho)位酸化によって行った。以下に、化学反応機構を示す。なお、出発原料であるトタロールは、常法に従って化学合成により製造した。
【0057】
【化17】

【0058】
上記反応機構によると、(+)-トタロール(totarol)(7)とメタクロロ過酸化ベンゾイル(mCBPO)を脱水塩化メチレン(CH2Cl2)中で室温にて、反応させたところ、3,3-シグマトロピー転位を経て生じたと思われるmeta-クロロ安息香酸エステル混合物(8)、(9)が得られた。反応液を濃縮後、そのままテトラヒドロフラン(THF)中、アルゴン下でリチウムアルミニウムハイドライドLiAlH4を用いてm−クロロ安息香酸(mCBA)エステル混合物(8)、(9) 並びにm−クロロ安息香酸(mCBA)および メタクロロ過酸化ベンゾイル(mCBPO)のヒドリド還元を行ったところ、カテコール(3)がわずか二段階工程により、60%の収率で得られた。
【0059】
(実施例2)
[酸化銀を用いたカテコールの酸化]
カテコール(3)を乾燥塩化メチレン(CH2Cl2)に溶解し、酸化銀(Ag2O)を加え加熱還流を行ったところortho -キノン(totara-9,14-diene-12,13-dione)(4)と、互変異性体のpara−キノンメチド(6-deoxymaytenoquinone)(7)の混合物(NMR比20 : 1)が得られた。さらに、反応時間を30分とした場合には、ortho -キノン(4)のみが得られた(quantitative)。以下に、化学反応機構を示す。
【0060】
【化18】



酸化銀(Ag2O)を用いたカテコールの酸化
【0061】
(実施例3)
[互変異性平衡]
ortho-キノン(4)、p-キノンメチド(6-deoxymaytenoquinone)(7) 混合物(167.0mg, 0.556 mmol, NMR比 15 : 1)をacetoneに溶解し、約100倍量のシリカゲルを加えた後、acetoneを留去することによりシリカゲル表面に吸着させた。これを空気中で19h放置後、ドライシリカゲルカラム上部に積層しhexane-EtOAc溶媒で溶出、精製し、P-キンンメチド(6-deoxymaytenoquinone)(7)を33% の収率で得た。その後の混合物画分では、ortho-キノン(7), para-キノンメチド(7)混合物 (NMR比 4 : 1)を26% 、6-deoxymaytenoquinone(7)と6-ヒドロキシ-para-キノンメチド(8)との混合物 (50.4mg, NMR比 1 : 2、それぞれ10%、19%) を得た。これらを換算するとシリカゲル上でp-キノンメチド(4)が約67% まで転換が進み、そのうちの約19%分が6-ヒドロキシ-p-キノンメチド(8)に酸化され、シリカゲルに対して不安定だと思われるortho-キノン(4)も約20%残留したと見られる。以下に、化学反応機構を示す。
【0062】
【化19】

ortho-キノン、para-キノンメチドの互変異性
【0063】
(実施例4)
[シリカゲル表面での酸化によるmaytenoquinoneの合成]
精製した6-deoxymaytenoquinone (7)を用いて酸化を行った。6-deoxymaytenoquinone(7)をシリカゲル上に吸着させたものをドライカラム上部に積層し、さらに飛沫粉塵混入防止用にシリカゲルを詰めたプレカラムを接続して、これにエアーポンプで強制的に通気した。サンプルからacetone が完全に気化した後、さらに30分間通気し、EtOAcで溶出させ、濃縮したものを分取薄層クロマトグラフィーで精製し、maytenoquinone (5)を20% の収率で得た。同様にo-キノン(4)および6-deoxymaytenoquinone(8)は回収されなかった。以下に、化学反応機構を示す。
【0064】
【化20】


空気酸化によるmaytenoquinoneの合成
【0065】
以上をまとめると、高度に酸化されたtotarane型ジテルペン化合物であるmaytenoquinone(5)は、その前駆体であるo-キノン(4)が連続的に酸化を受けてゆくことで、半ば自発的に生成することが判った。このことはmaytenoquinone(5)が天然物として単離される一方で、生合成過程においてその前駆体と考えられるo-キノン(4)、6-deoxymaytenoquinone(7)および6-ヒドロキシ-p-キノンメチド(8)が同一植物種から単離されるという報告がないということからも肯ける。
【0066】
(実施例5)
Podocarpane 型カテコールの合成
フェギノール(9)(Ferruginol) は、定法に従い、dehydroabietic acidを原料として製造した。または、スギの樹液からの分離によって供給することもできる。フェギノール(9)(Ferruginol)のフェノールのメチル保護は、フェギノール(9)(Ferruginol)をt-BuOH中、t-BuOK 、CH3Iを加えて11時間加熱還流し、エーテル(10)を82%の収率で得た。エーテル(10)をフリーデル・クラフツ(Friedel-Crafts)アシル化条件下で反応させることでイソプロピル基がイプソ(ipso)置換されたnimbosone(11)を73%の収率で得た。
【0067】
次に、バイヤー・ビリガー(Baeyer-Villiger)反応により酸素原子挿入を試みた。mCPBA―p-TsOH反応条件下で生成物(12)のエステルは、容易に加水分解し、反応時間14hでは化合物(12)の残留は確認できず化合物エーテル(13)のみが得られた。以下に、化学反応機構を示す。
【0068】
【化21】


フェルギノールから(+)-7-deoxynimbidiol (2) の合成
【0069】
さらに、上記化合物(13)を塩化メチレン(CH2Cl2)に溶解し、BBr3-CH2Cl2溶液を加え、5℃で反応させることにより脱保護し、(+)-7-deoxynimbidiol (2) を合成した。
【0070】
(実施例6)
Abietane 型カテコールエステルの合成
(+)-フェルギノール(9)(Ferruginol)を塩化メチレン(CH2Cl2)中、室温でメタクロロ過酸化ベンゾイル(mCBPO)によるortho位酸化後、化合物(14) および(15) を含む反応液を濃縮し、そのままテトラヒドロフラン(THF)中、アルゴン雰囲気中で、リチウムアルミニウムハイドライドLiAlH4を用いて還元を行い、カテコール化合物 (16)をわずか二段階工程により、52%の収率で得た。以下に、化学反応機構を示す。
【0071】
【化22】

11,12-bis(bromoacetoxy)abieta-8,11,13-triene 6 の合成
【0072】
一方、リチウムアルミニウムハイドライド(LiAlH4)還元では、酸素雰囲気中で行なったためか、カテコール化合物(5)は酸化され単離されなかったが、アルゴン雰囲気中の反応では単離することができた。得られたAbieta-8,11,13-triene-11,12-diolをdichloromethane- pyridineに溶解し、bromoacetyl bromide(0.5 ml)加えたのち、アルゴン気流下、室温で6時間反応させ、11,12-bis(bromoacetoxy)abieta-8,11,13-triene (6)を53%の収率で得た。
【0073】
なお、製造した化合物の定性分析は、以下の機器により行った。すなわち、(1)核磁気共鳴装置、日本電子 JEOL AL-400(1H:400MHz, 13C:100MHz)、日本電子 JEOL α600(1H:600MHz, 13C:150MHz)を使用した。サンプル溶媒として重水素クロロホルムCDCl3を用い、内部標準物質として1H-NMRは、TMS(δ: 0.00)、13C-NMRはCHCl3 (δ: 77.03)を用いた。
【0074】
(2)赤外線分光光度計は、日本電子 JEOL JIR-WINSPEC50を使用した。試料調製法は、油状物質では岩塩板法を、結晶物質ではKBr錠剤法を用いた。
【0075】
(3)質量分析装置は、日本電子 JEOL SX-102A Mass Spectrometerを使用した。イオン化はEI法を用い、サンプルはダイレクトインジェクションした。高分解能測定では内部標準物質としてPFKを用いた。
【0076】
(4)融点測定装置は、MEL-TEMP (Laboratory Device)及び(5)旋光光度計は、日本分光 JASCO DIP-360を使用した。
【0077】
Totara-8,11,13-triene-12,13-diol (2)
トタロール(Totarol)(7)、292.4 mg, 1.02 mmol を塩化メチレン(CH2Cl2 )5 ml に溶解し、メタクロロ過酸化ベンゾイル(mCBPO)、546 mg, 1.75 mmol, 1.72 eq. を加え、アルゴン雰囲気中室温で19時間攪拌した。反応液を濃縮後、THF (5 ml) を加え、リチウムアルミニウムハイドライド(LiAlH4) (133 mg, 3.50 mmol, 3.43 eq.) を氷冷しながら少量ずつ加えた後、室温に戻し3時間攪拌した。氷冷しながらEtOAc, 1N HCl を加えて反応を停止させ、EtOAcで液−液抽出した後、有機層をMgSO4 で乾燥し、濃縮した後にシリカゲルカラムクロマトグラフィー (hexane : EtOAc = 5 : 1)で精製し、totara-8,11,13-triene-12,13-diol(3)(184.4 mg, 0.61 mmol) を60% の収率で得た。以下に、製造した上記化合物の定性分析結果を示す。
【0078】
Totara−8,11,13−triene−12,13−diol : yellow resin ; m.p. 54−61℃
H−NMR (CDCl,400MHz) δ 6.69 (1H, s), 5.81 (1H, s) , 5.47 (1H, s) , 3.32 (1H , sept, J = 7.0 Hz), 3.03−2.64 (2H, m), 2.16−2.05 (1H, m), 1.96 (1H, dd, J = 12.9, 7.8 Hz), 1.84−1.48 (4H, m), 1.42 (3H, d, J = 7.0 Hz), 1.41 (3H, d, J = 7.0 Hz), 1.38−1.23 (3H, m), 1.20 (3H, s), 1.01 (3H, s), 0.97 (3H, s);
【0079】
13C−NMR (CDCl, 100MHz) δ 142.389, 140.954, 131.657, 125.478, 109.206, 49.645, 41.560, 39.502, 37.646, 33.253, 33.208, 28.229, 27.483, 25.061, 21.584, 20.417, 20.359, 19.509, 19.427;
【0080】
IR(KBr, cm−1) 3502, 2933, 2877, 1711, 1605, 1485, 1466, 1441, 1377, 1275, 1190, 1101, 1043, 1007, 947, 866;
【0081】
MS(EI) m/z (rel. int.%) 302 (M, 88), 287 (100), 272 (17), 257 (17), 245 (9), 229 (39), 217 (47), 205 (21), 191 (54);
【0082】
HRMS(EI) m/z 302.2278 (302.2246 calcd. for C2030
【0083】
Totara−9,14−diene−12,13−dione(4)
Totara−8,11,13−triene−12,13−diol 3 (449.2 mg, 1.49 mmol) を塩化メチレン(CHCl )10mlに溶解し、酸化銀(AgO) (624.6 mg, 2.70 mmol) を加え、アルゴン雰囲気中室温で30分間攪拌した。酸化銀(AgO) をcelite 濾過した後、濃縮し、totara−9,14−diene−12,13− dione(4)を定量的に得た。以下に、製造した上記化合物の定性分析結果を示す。
【0084】
totara−9,14−diene−12,13−dione (4): reddish resin
H−NMR (CDCl, 600MHz) δ 6.16 (1H, s), 3.01 (1H, sept, J = 7.0 Hz) , 2.91 (1H, ddd, J = 20.0, 7.8, 2.9 Hz), 2.68 (1H, dt, J = 20.0, 8.8 Hz), 2.00−1.92 (1H , m), 1.91−1.84 (1H, m), 1.72−1.59 (3H, m), 1.52−1.45 (1H, m), 1.40 (1H, dt, J = 12.2, 5.4 Hz), 1.27−1.16 (2H, m), 1.24 (3H, d, J = 7.0 Hz), 1.21 (3H, s), 1.20 (3H, d, J = 7.0 Hz), 0.95 (3H, s), 0.94 (3H, s);
【0085】
13C−NMR (CDCl, 150MHz) δ 181.743, 180.173, 167.094, 145.927, 143.075, 120.765, 46.511, 41.061, 39.466, 38.356, 33.843, 32.684, 27.876, 26.840, 22.401, 21.834, 20.305, 20.042, 18.685, 18.439;
【0086】
IR(NaCl, cm−1) 3290, 2949, 2875, 1657, 1616, 1537, 1460, 1375, 1335, 1246, 1198, 1138, 1099, 1024, 984, 937, 864, 827, 793, 754, 696, 656;
【0087】
MS(EI) m/z (rel. int.%) 302 (M+2, 40), 300 (M, 100), 287 (46), 285 (23), 270 (14), 243 (33), 229 (69), 218 (48), 215 (43), 201 (28), 175 (29), 173 (25);
【0088】
HRMS(EI) m/z 300.2104 (300.2089 calcd. for C2028
【0089】
(+)−6−Deoxymaytenoquinone (7)
Totara−8,11,13−triene−12,13−diol (3) (106.0 mg, 0.35 mmol) をクロロホルム(CHCl)10mlに溶解し、酸化銀(AgO) (162.4mg, 0.71 mmol, 2 eq.) を加え、アルゴン雰囲気中7時間加熱還流した。AgO をcelite 濾過した後、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane : EtOAc = 8 : 1)で精製したところtotara−9,14−diene−12,13−dione (4) と(+)−6−deoxymaytenoquinone(7) の混合物 (99.9mg, 0.333 mmol, NMR比 7 : 1) を95% の収率で得た。この混合物 (167.0mg, 0.556 mmol, NMRによる存在比 15 : 1) をacetone に溶解し、シリカゲル15g を加え濃縮し、シリカゲル上に吸着させた後、空気中で19時間放置した。これをシリカゲルカラムの上端に積層し、 クロマトグラフィー (hexane : EtOAc = 8 : 1)にて溶出、精製し、6−deoxymaytenoquinone(7)、54.6mg, 0.182 mmol を33% の収率で得た。その後の画分にて6−hydroxy−p−quinonemethide 化合物(8)を19%の収率(H−NMRにより決定)で得た。以下に、製造した上記化合物の定性分析結果を示す。
【0090】
6−Deoxymaytenoquinone (7): yellow solid; m.p. 96℃
H−NMR (CDCl, 600MHz) δ 7.17 (1H, dd, J = 6, 2.4 Hz), 6.96 (1H, s), 6.31 (1H, s), 3.12 (1H, sept, J = 7.0 Hz), 2.61 (1H, ddd, J = 20.9, 6.6, 4.4 Hz), 2.46 (1H, ddd, J = 20.9, 11.7, 3.3 Hz), 2.02−1.98 (1H, m), 1.72−1.62 (2H, m), 1.56 (1H, dd, J = 11.4, 4.2 Hz), 1.51−1.47 (1H, m), 1.46 (1H, dt, J = 12.8, 4.4 Hz), 1.36 (3H, d, J = 7.0 Hz), 1.32 (3H, d, J = 7.0 Hz), 1.22 (1H, dt, J = 13.2, 4.2 Hz), 1.09 (3H, s), 1.00 (3H, s), 0.93 (3H, s);
【0091】
13C−NMR (CDCl, 150MHz) δ 181.603, 162.138, 144.694, 143.354, 130.243, 127.144, 117.074, 48.714, 41.381, 38.258, 36.885, 33.326, 32.430, 26.462, 26.412, 22.006, 21.645, 20.387, 18.685;
【0092】
IR (KBr, cm−1) 3448, 3327, 3294, 2949, 2929, 2870, 1612, 1549, 1464, 1431, 1377, 1300, 1277, 1277, 1217, 1196, 1109, 887, 714, 623;
【0093】
MS(EI) m/z (rel. int.%) 300 (M, 100), 285 (41), 257 (28), 243 (57), 229 (71), 218 (89), 215 (81), 201 (54), 175 (57), 173 (52);
【0094】
HRMS(EI) m/z 300.2062 (300.2089 calcd. for C2028);[α] (acetone) = +27.3°:
【0095】
6−Hydroxy−totara−p−quinone methide (8) : yellow oil
H−NMR (CDCl, 400MHz) δ 6.95 (1H, br), 6.89 (1H, s), 6.26 (1H, s), 4.68 (1H, br d, J = 9.5 Hz), 3.11 (1H, sept, J = 7.1 Hz), 2.64−2.59 (1H, m), 1.75−1.41 (6H, m), 1.36 (3H, d, J = 7.1 Hz), 1.32 (3H, d, J = 7.1 Hz), 1.29−1.22 (1H, m), 1.21 (3H, s), 1.18 (3H, s), 1.13 (3H, s);
【0096】
HRMS(EI) m/z 316.2076 (300.2038 calcd. for C2028
【0097】
(+)−Maytenoquinone (5)
6−Deoxymaytenoquinone(7) (18.4mg, 0.061mmol) をアセトン(acetone) に溶解し、シリカゲル2g を加え濃縮、シリカゲル上に吸着させた。これをドライカラムに積層し、さらに塵混入防止用にシリカゲルを詰めたプレカラムを接続して、これにエアーポンプで強制的に通気した。サンプルからacetone が完全に気化した後、さらに30分間通気し、これをEtOAc で溶出させ、濃縮したものを分取薄層クロマトグラフィー (hexane : EtOAc = 5 : 1) で精製し、maytenoquinone (5) (3.7mg, 0.012 mmol) を20% の収率で得た。以下に、製造した上記化合物の定性分析結果を示す。
【0098】
Maytenoquinone(5) : orange solid; m.p. 85℃
H−NMR (CDCl, 400MHz) δ 7.14 (1H, s), 6.61 (1H, d, J = 1.2 Hz), 6.40 (1H, d, J = 1.5 Hz), 3.06 (1H, sept, J = 7.1 Hz), 2.49 (1H, s), 2.03−1.96 (1H, m), 1.80−1.44 (4H, m), 1.36 (3H, d, J = 7.1 Hz), 1.31 (3H, d, J = 7.1 Hz), 1.27−1.19 (1H, m), 1.26 (3H, s), 1.25 (3H, s), 1.17 (3H, s);
【0099】
13C−NMR (CDCl, 100MHz) δ 199.579, 181.331, 161.532, 146.267, 140.344, 130.989, 126.249, 119.827, 62.064, 43.045, 42.464, 37.233, 33.039, 32.874, 26.785, 26.088, 21.654, 20.194, 18.288;IR (KBr, cm−1) 3417, 3334, 2929, 2872, 2850, 1670, 1620, 1470, 1419, 1290, 1273, 1225, 1203, 1144, 995, 872, 706, 623, 586, 525, 478;
【0100】
MS(EI) m/z (rel. int.%) 314(M, 100), 299 (55), 286 (14), 271 (77), 257 (13), 245 (26), 229 (40), 217 (35), 203 (30), 190 (28), 175 (21), 173 (14), 149 (15), 137 (12), 109 (19) 69 (21), 55 (13);
【0101】
HRMS(EI) m/z 314.1923 (314.1882 calcd. for C2026);[α] (acetone) = 108.5°;
【0102】
(+)−12O−Methyl ferruginol (10)
(+)−フェルギノール(9)(Ferruginol)(550.9 mg, 1.92 mmol) をt−BuOH (8 ml) に溶解し、t−BuOK (308.2 mg, 2.75 mmol) を加え、空気中室温で10分間攪拌した後、CHI (0.5 ml, 8.03 mmol) を加えてアルゴン雰囲気中室温で20分攪拌した後、さらに2時間加熱還流した。その後、再びt−BuOK (66.9 mg, 0.596 mmol) を加え、アルゴン雰囲気中室温で20分攪拌した後、CHI (0.3 ml, 4.82 mmol) を加えて室温で20分攪拌した後、さらに11時間加熱還流した。生成した沈殿物を濾過(hexane)した濾液を濃縮後、1N HCl で酸性化し、hexaneで液−液抽出した後、有機層を水道水、Na aq.で洗浄した。これを硫酸マグネシウム(MgSO )で乾燥し、濃縮した後にシリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane 100%)で精製し、(+)−12−methyl ferruginol(10)(474.0 mg, 1.58 mmol) を82% の収率で得た。以下に、製造した上記化合物の定性分析結果を示す。
【0103】
(+)−12 O−Methyl ferruginol(10) : colorless oil;
H−NMR (CDCl, 400 MHz) δ 6.83 (1H, s), 6.72 (1H, s), 3.78 (3H, s), 3.22 (1H, sept, J = 6.8 Hz), 2.86 (1H, ddd, J = 17.1, 7.3, 2.0 Hz), 2.77 (1H, ddd, J = 17.1, 11.2, 7.3 Hz) 2.30−2.20 (1H, m), 1.90−1.81 (1H, m), 1.81−1.30 (7H, m), 1.20 (3H, s), 1.19 (3H, d, J = 6.8 Hz), 1.17 (3H, d, J = 6.8 Hz), 0.94 (3H, s), 0.92 (3H, s);
【0104】
13C−NMR (CDCl, 100 MHz) δ 155.01, 148.06, 134.12, 126.86, 126.38, 106.54, 55.34, 50.50, 41.72, 38.94, 37.84, 33.45, 33.33, 29.82, 26.46, 24.80, 22.89, 22.69, 21.63, 19.35, 19.25;
【0105】
IR(NaCl, cm−1) 2956, 2945, 2926, 2866, 2843, 1614, 1572, 1500, 1462, 1443, 1404, 1389, 1375, 1362, 1323, 1250, 1207, 1165, 1066, 1055, 1043, 891, 847;
【0106】
MS(EI) m/z (rel. int.%) 300 (M, 91), 285 (100), 283 (13), 271 (7), 243 (19), 229 (14), 215 (35), 203 (34), 189 (44), 173 (13), 163 (23), 161 (10), 147 (10), 129 (6), 128 (6), 83 (6), 69 (19);
【0107】
HRMS(EI) m/z 300.2470 (300.2453 calcd. for C2132O)
【0108】
Nimbosone (11)
(+)−12 O−Methyl ferruginol(10) (1.7302 g, 5.76 mmol) を塩化メチレン(CHCl ) (20 ml) に溶解し、AcCl (2 ml, 0.0281 mol) を加え、アルゴン雰囲気中0℃で10分間攪拌した後、氷冷下で塩化アルミニウムAlCl (1.6422 g, 0.0123 mol) を加えて、室温に戻しさらに2時間攪拌した。1N HCl で反応を停止させ、EtOAc で液−液抽出した後、有機層を1N HCl 、NaHCO aq.、brineで洗浄した。これを硫酸マグネシウムMgSO で乾燥し、濃縮した後にシリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane : EtOAc = 10 : 1) で精製し、nimbosone (11)、1.2591 g, 4.19 mmolを73% の収率で得た。以下に、製造した上記化合物の定性分析結果を示す。
【0109】
Nimbosone (11) : white crystal ; m.p. 63−65℃
H−NMR (CDCl, 600 MHz) δ 7.44 (1H, s), 6.83 (1H, s), 3.87 (3H, s), 2.90 (1H, dd, J = 16.9, 6.6 Hz), 2.78 (1H, ddd, J = 16.9, 10.9, 8.1 Hz), 2.58 (3H, s), 2.30−2.23 (1H, m), 1.92−1.85 (1H, m), 1.82−1.72 (1H, m) 1.72−1.58 (2H, m), 1.52−1.38 (2H, m), 1.34−1.20 (2H, m), 1.20 (3H, s), 0.95 (3H, s), 0.93 (3H, s);
【0110】
13C−NMR (CDCl, 150 MHz) δ 199.48, 157.22, 156.41, 130.89, 127.55, 125.50, 107.49, 55.45, 50.00, 41.51, 38.78, 38.49, 33.53, 33.24, 31.76, 29.23, 24.52, 21.65, 19.20, 18.95;
【0111】
IR(KBr, cm−1) 2993, 2980, 2958, 2943, 2920, 2889, 2864, 2841, 1670, 1662, 1603, 1558, 1495, 1470, 1460, 1402, 1352, 1329, 1296, 1265, 1240, 1180, 1034, 993, 972, 914, 850, 677, 604, 565;
【0112】
MS(EI) m/z (rel. int.%) 300 (M, 94), 285 (100), 271 (9), 257 (7), 243 (14), 229 (16), 217 (45), 203 (48), 189 (35), 187 (12), 173 (12), 163 (9), 128 (8), 115 (7), 83 (6), 69 (16), 55 (7);
【0113】
HRMS(EI) m/z 300.2101 (300.2089 calcd. for C2028
【0114】
(+)−13−Hydroxy−12−methoxypodocarpa−8,11,13−triene(13)
Nimbosone(13) (1.1 g, 3.66 mmol) を1,2−dichloroethane (30 ml) に溶解し、クロロ過酸化ベンゾイル(mCBPO)、メタ過クロロ安息香酸(mCPBA)(65% purity, 1.3079 g, 4.93 mmol) 、p−TsOH (52.2 mg, 0.303 mmol) を加え、アルゴン雰囲気中14時間加熱還流した。冷却後、チオ硫酸ナトリウム水溶液Na aq.及び炭酸水素ナトリウム水溶液NaHCO aq. で反応を停止させ、EtOAc で液−液抽出した後、有機層をチオ硫酸ナトリウムNa aq. 、炭酸水素ナトリウムNaHCO aq. 、brineで洗浄した。これを硫酸マグネシウムMgSO で乾燥し、濃縮した後にシリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane : EtOAc = 10 : 1) で精製し、
(+)−13−hydroxy−12−methoxypodocarpa−8,11,13−triene(13) (805.3 mg, 2.94 mmol) を80% の収率で得た。以下に、製造した上記化合物の定性分析結果を示す。
【0115】
(+)−13−Hydroxy−12−methoxypodocarpa−8,11,13−triene(13): white crystal ; m.p. 90−91℃
H−NMR (CDCl, 600 MHz) δ 6.73 (1H, s), 6.57 (1H, s), 5.45 (1H, br), 3.83 (3H, s), 2.81 (1H, dd, J = 16.9, 7.0 Hz), 2.74 (1H, ddd, J = 16.9, 11.7, 7.0 Hz) 2.24−2.17 (1H, m), 1.87−1.80 (1H, m), 1.80−1.54 (3H, m) 1.52−1.20 (4H, m), 1.17 (3H, s), 0.94 (3H, s), 0.91 (3H, s);
【0116】
13C−NMR (CDCl, 150 MHz) δ 144.62, 143.10, 141.83, 128.11, 114.20, 106.89, 55.97, 50.57, 41.63, 39.16, 37.53, 33.35, 33.27, 29.85, 24.88, 21.54, 19.31, 19.05;IR(KBr, cm−1) 3521, 3450, 3034, 2993, 2964, 2947, 2918, 2902, 2862, 2839, 1624, 1592, 1506, 1462, 1446, 1439, 1389, 1377, 1363, 1340, 1329, 1281, 1271, 1200, 1138, 1072, 1043, 972, 870, 860, 850, 839, 777, 469;
【0117】
MS(EI) m/z (rel. int.%) 274 (M, 97), 259 (100), 257 (6), 231 (8), 217 (8), 203 (21), 189 (54), 177 (31), 163 (40), 151 (9), 137 (10), 131 (9), 115 (5), 69 (23);
【0118】
HRMS(EI) m/z 274.1909 (274.1933 calcd. for C1826
【0119】
(+)−7−Deoxynimbidiol (2)
13−Hydroxy−12−methoxypodocarpa−8,11,13−triene (13) (119.3 mg, 0.435 mmol) を脱水CHCl (5 ml) に溶解し、氷冷しながらBBr の脱水塩化メチレン(CHCl)溶液 (0.6 ml BBr / 3 ml CHCl2, BBrとして6.35 mmol) を加え、アルゴン雰囲気中5℃で21時間攪拌した。メタノール、水道水で反応を停止させ、EtOAc で液−液抽出した後、有機層をbrineで洗浄した。これを硫酸マグネシウムMgSO で乾燥し、濃縮した後にシリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane : EtOAc = 5 : 1) で精製し、7−deoxynimbidiol (2) (101.2 mg, 0.389 mmol) を90%、の収率で定量的に得た。以下に、製造した上記化合物の定性分析結果を示す。
【0120】
(+)−7−Deoxynimbidiol(2) : white crystal; m.p. 82−85℃
H−NMR (CDCl, 400 MHz) δ 6.73 (1H, s), 6.51 (1H, s), 5.69 (2H, br), 2.82−2.57 (2H, m), 2.16−1.98 (1H, m), 1.87−1.76 (1H, m), 1.75−1.36 (4H, m), 1.34−1.13 (3H, m), 1.11 (3H, s), 0.92 (3H, s), 0.89 (3H, s);
【0121】
13C−NMR (CDCl, 100 MHz) δ 143.33, 141.22, 140.89, 128.02, 115.32, 111.60, 50.43, 41.61, 38.92, 37.28, 33.32, 33.26, 29.75, 24.80, 21.53, 19.27, 19.03;
【0122】
IR(KBr, cm−1) 3350, 2927, 2846, 1608, 1516, 1448, 1371, 1273, 1174, 1132, 872, 865, 839, 752;MS(EI) m/z (rel. int.%) 260 (M, 68), 245 (100), 217 (6), 203 (9), 189 (20), 175 (49), 163 (31), 149 (33), 137 (7), 123 (7), 115 (6), 69 (26), 55 (5);
【0123】
HRMS(EI) m/z 260.1798 (260.1776 calcd. for C1724
【0124】
Abieta−8,11,13−triene−11,12−diol(16)
フェルギノール(9)(Ferruginol) (1.3125 g, 4.58 mmol) を脱水塩化メチレン(CHCl )(15 ml) に溶解し、クロロ過酸化ベンゾイル(mCBPO) (1.5723 g, 5.05 mmol) を加え、アルゴン雰囲気中室温で20時間攪拌した。反応液を濃縮後、生成した沈殿物を濾過(hexane)した濾液を濃縮後、脱水テトラヒドロフランTHF (25 ml) を加え、リチウムアルミニウムハイドライドLAH (433.4 mg, 11.4 mmol) を氷冷しながら少量ずつ加えた後、室温に戻し7時間攪拌した。氷冷しながらEtOAc, 1N HCl を加えて反応を停止させ、hexane で液−液抽出した後、有機層を1N HCl で洗浄した。これをMgSO で乾燥し、濃縮した後にシリカゲルカラムクロマトグラフィー (hexane : EtOAc = 5 : 1)で精製し、の分析結果を示す。abieta−8,11,13−triene−11,12−diol(16) (714.9 mg, 2.36 mmol) を52% の収率で得た。以下に、製造した上記化合物の定性分析結果を示す。
【0125】
Abieta−8,11,13−triene−11,12−diol (16) : colorless oil
H−NMR (CDCl, 400 MHz) δ 6.44 (1H, s), 5.63 (1H, br), 4.60 (1H, br), 3.09−3.01 (1H, m), 2.97 (1H, sept, J = 6.8 Hz), 2.83−2.75 (2H, m), 1.85−1.67 (2H, m), 1.62−1.41 (4H, m), 1.33 (3H, s), 1.40−1.28 (2H, m), 1.25 (3H, d, J = 6.8 Hz), 1.23 (3H, d, J = 6.8 Hz), 0.95 (3H, s), 0.92 (3H, s);
【0126】
13C−NMR (CDCl, 100 MHz) δ 142.85, 138.17, 133.12, 131.41, 129.71, 117.29, 52.81, 41.37, 39.17, 36.74, 33.69, 32.45, 27.26, 22.72, 22.47, 22.11, 20.24, 19.35, 19.29;
【0127】
IR(NaCl, cm−1) 3489, 2956, 2918, 2864, 2841, 1705, 1620, 1568, 1493, 1475, 1462, 1435, 1387, 1367, 1325, 1146, 1095, 1045, 1011, 993, 972, 895, 877, 858, 831, 816, 771, 561, 519, 501;
【0128】
MS(EI) m/z (rel. int.%) 302 (M, 100), 287 (65), 285 (17), 272 (13), 257 (16), 245 (14), 231 (34), 229 (23), 217 (75), 205 (77), 191 (93);
【0129】
HRMS(EI) m/z 302.2252 (302.2246 calcd. for C2030
【0130】
11,12−bis(bromoacetoxy)abieta−8,11,13−triene (6)
Abieta−8,11,13−triene−11,12−diol (325.2 mg, 1.075 mmol)をdichloromethane(10 ml)中に溶解し、pyridine(0.5 ml)を加え撹拌した後、bromoacetyl bromide(0.5 ml)加えた。アルゴン気流下、室温で6時間撹拌後、1N HClを加え、反応を停止し、EtOAcで液−液抽出を行い、有機層を1N HCl、NaHCO aq.、brineで洗浄した。これをMgSOで乾燥し、濃縮した後に、シリカゲルクロマトグラフィー(Hexane:EtOAc=20:1)で精製し、 11,12−bis(bromoacetoxy)abieta−8,11,13−triene (312.0 mg, 0.573 mmol)を53%の収率で得た。以下に、製造した上記化合物の定性分析結果を示す。
【0131】
11,12−bis(bromoacetoxy)abieta−8,11,13−triene(6) yellow oil
H−NMR(CDCl, 600 MHz) δ 6.93 (1H, s), 4.08−4.02 (4H, m), 2.93 (3H, m), 1.87 (1H, m), 1.73−1.64 (1H, m), 1.63−1.56 (1H, m), 1.56−1.49(1H,m), 1.47−1.39(2H, m), 1.32 (1H, d, J = 11.4 Hz), 1.23 (3H, s), 1.21 (1H, d, J = 5.4 Hz), 1.19 (3H, d, J = 7.2 Hz), 1.16 (3H, d, J = 5.4 Hz), 0.95 (3H, s), 0.91 (3H, s);
【0132】
13C−NMR(CDCl, 600 MHz) δ 165.07, 164.82, 140.12, 139.38, 138.52, 137.65, 136.47, 125.37, 51.50, 40.79, 39.48, 36.94, 33.65, 33.49, 32.22, 26.98, 25,46, 24.88, 22.94, 22.80, 21.92, 21.62, 19.10, 18.82
【0133】
(実施例10〜実施例15)
[抗アクネ菌活性の測定]
上記実施例で得られた化合物を使用して、その抗アクネ菌活性の測定を行なった。抗アクネ菌化合物としては、それぞれ実施例1のabietaquinone methide(1)、実施例2の7-deoxynimbidiol (2)、実施例3のTotara-8,11,13-triene-12,13-diol (3)、実施例4のtotara-9,14-diene-12,13-dione (4)、実施例5のmaytenoquinone (5)、実施例6の11,12-bis(bromoacetoxy)abieta-8,11,13-triene(6)を使用した。また、抗菌活性の測定方法としては、本発明の抗アクネ菌化合物を試料として、プルロニックL44(ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン)にて10倍にて希釈し、これをアクネ菌用培地に10重量%希釈することで試料を1.0重量%濃度に調製した。コントロールとしては10重量%プルロニックL−44を用いた。GAM液体培地にてアクネ菌を24時間培養した後沈殿さて、アクネ菌用培地にて上記GAM液体培地を2回洗浄し、これを接種菌液として試料に接種した。その後、24時間、48時間後に残存菌数をカウントした。カウントは、アクネ菌用培地を用いて1.0〜100,000倍まで段階希釈し、平板塗抹法を用い嫌気的に培養後カウントした。結果を表1に示す。なお、上記同様の条件にてメチシレン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対する抗菌活性の測定を行った。
【0134】
(比較例1及び比較例2)
上記実施例において、抗アクネ菌化合物に代えて、それぞれアンピシリン(比較例1)及びバンコマイシン(比較例2)を使用した以外は、実施例1と同様にして抗アクネ菌活性及び抗メチシレン耐性黄色ブドウ球菌活性を測定した。結果を表1に示す。
【0135】
【表1】

【0136】
表1からも明らかなように、本発明の化合物は、抗アクネ菌活性を有するものであり、特に(+)-7-deoxynimbidiol (2)においては、10(μg/ml)という極めて高い抗アクネ菌活性を示した。また、本発明の化合物は、抗アクネ菌活性と同時に抗メチシレン耐性黄色ブドウ球菌活性をも示すものであり、その高い有用性が示された。一方、アンピシリン(比較例1)及びバンコマイシン(比較例2)を使用した場合には、その抗アクネ菌活性が極めて低いか、全く示さないものであることが判明した。
【0137】
このように本発明の抗アクネ菌化合物は、きわめて優れた抗アクネ菌活性を有するものであり、本化合物を主成分とするニキビ治療用皮膚外用剤を製造する原料とすることができる。また、本発明の抗アクネ菌の製造方法は、特定のラジカル開始剤を使用することによりわずか二段階の製造工程により上記化合物を製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明の抗アクネ菌化合物及びその製造方法は、化粧品分野及び医薬品分野の技術革新に大きく寄与することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式(1)ないし(6)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種類の抗アクネ菌化合物を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【化1】

【請求項2】
前記抗アクネ菌化合物が、下記構造式(2)又は(5)のいずれか一方で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の皮膚外用剤。
【化2】

【化3】

【請求項3】
前記抗アクネ菌化合物が、下記構造式(2)で表される化合物であることを特徴とする請求項2に記載の皮膚外用剤。
【化4】

【請求項4】
請求項1ないし請求項3に記載の抗アクネ菌化合物の製造方法であって、
下記一般式で表されるジテルペン化合物と、
【化5】

(上記一般式中、R1又はR2のいずれか一方が水酸基であり、R1が水酸基の場合には、R3は水素原子であり、R2は、水素、アルキル基、アリール基、水酸基含有アルキル基、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン基又はニトロ基を表す。また、R2が、水酸基の場合には、R1は水素原子であり、R3は、水素、アルキル基、アリール基、水酸基含有アルキル基、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン基又はニトロ基を表す。)
下記一般式で表されるハロゲン化過酸化ベンゾイルを
【化6】

(上記一般式において、Xは、ハロゲン原子を表し、nは、1又は2を表す。)
を反応させることにより、カテコール型ジテルペンを酸化する第1の工程と、
前記第1の工程により生成するカテコール型ジテルペン化合物を、還元又は加水分解させる第2の工程を有することを特徴とする抗アクネ菌化合物の製造方法。
【請求項5】
前記ジテルペン化合物が、アビエタン骨格、トタラン骨格またはポドカルパン骨格のいずれかの炭素骨格を有することを特徴とする請求項4に記載の抗アクネ菌化合物の製造方法。
【請求項6】
前記ジテルペン化合物が、フェルギノール又はトタロールのいずれか一方であることを特徴とする請求項5に記載の抗アクネ菌化合物の製造方法。
【請求項7】
前記ハロゲン化過酸化ベンゾイルは、メタクロロ過酸化ベンゾイルであることを特徴とする請求項6に記載の抗アクネ菌化合物の製造方法に関する。

【公開番号】特開2010−65014(P2010−65014A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−235751(P2008−235751)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(504132881)国立大学法人東京農工大学 (595)
【Fターム(参考)】