説明

抗炎症剤及びその製造方法

【課題】副作用の危険のない抗炎症剤及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の抗炎症剤は、ホヤ由来脂溶性油を有効成分として含有するので極めて高い抗炎症作用を示し、しかも副作用の危険はない。また、本発明の抗炎症剤における極めて高い抗炎症作用を示す活性本体であるホヤ由来カロテノイドではホヤ特有の香りや風味が低減されるので、これらのホヤの特徴を嫌って、ホヤの摂取を避けてきた人々或いは動物に対して利用する事ができる。逆に、ホヤ由来脂溶性油にはホヤ特有の香りや風味が残っている為、ホヤを珍味として消費してきた人々に対しての利用が有効となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂溶性油を有効成分とした抗炎症剤及びその製造方法に関する。

【背景技術】
【0002】
生体に炎症性の刺激が加わると、まず局所的に発赤、腫腸、熱感、疼痛といった炎症症状が現れる。これに続いて発熱、血沈亢進、CRP上昇、白血球数の増多または減少、食欲不振、倦怠感、疼痛、ストレス反応などの全身症状が現れる(非特許文献1)。更に、最近では肥満やそれに誘発されるメタボリークシンドロームの発症過程に炎症作用が関与していることが報告されている(非特許文献2,3)。
【0003】
通常、炎症性の刺激を受けると、シクロオキシナーゼ(COX)が酵素反応によりアラキドン酸から痛みを伝達する物質であるプロスタグランジン(PG)を産出する。炎症性の刺激に起因するこのような症状を抑える抗炎症剤として、非ステロイド系抗炎症剤(例えば、アセチルサリチル酸、イブプロフェン、エテンザミドなど)が開発され、市販薬として使用されている。この非ステロイド系抗炎症剤の存在下ではCOXにこの非ステロイド系抗炎症剤が優先的に取り付くことにより炎症性の刺激を受けた際のPG合成が阻害され、炎症性の刺激に起因する症状が抑制されると考えられている。
【0004】
しかし、現在までに開発された多数の非ステロイド系抗炎症剤には副作用の生じるものもあり、そのような副作用が生じることのない天然物由来の抗炎症剤の開発が急がれている。また、核内転写因子NF−κBの機能に作用することで炎症性サイトカインの発現を阻害する方法も提案されている。
【0005】
天然物由来の非ステロイド系抗炎症剤としてカロテノイド(特許文献1、特許文献2)、カロテノイドの一種であるアスタキサンチン(特許文献3)及びアスタキサンチンエステル体(特許文献4)などが挙げられる。
【0006】
皮膚外用剤を開示する特許文献1で想定されているカロテノイドはα−カロテン、β−カロテン、γ−カロテン、リコペン、クリプトキサンチン、ルテイン、アスタキサンチン、カンタキサンチン、ゼアキサンチン、ロドキサンチン、カプサンチン、クロセチン、ビオラキサンチン、スピリロキサンチン、スフェロイデンなど、と記載している。これらのカロテノイドを産出する生物として緑色植物やある種のカビ、酵母、キノコ、細菌など、とも記載している。
【0007】
また、カロテノイドは高い抗酸化能力又は/及びラジカル消去能力を示すため、炎症を含む様々な病気の発生の抑制に用いられている。この点については、例えば、病気の抑制と改善の為の構造上のカロチノイド類自体を開示する特許文献5などが挙げられる。この活性酸素、過酸化物によって引き起こされる炎症の改善或いは予防に対するカロテノイドの作用機構は、フリーラジカルや一重項酸素などの活性酸素種を直接的に消去することで生体への損傷を防ぐものである。したがって、炎症刺激に伴いCOXから産出されるPG生産の抑制や炎症性サイトカインの発現抑制が行われる非ステロイド系抗炎症剤の抗炎症作用機構とは本質的に異なる。
【0008】
一方、ホヤエキス及びホヤ抽出物を利用したものとして、ホヤエキスの抽出方法及び抽出成分を含有する健康食品を開示した(特許文献6)や美肌用組成物を開示した(特許文献7、特許文献8)などが挙げられる。
【0009】
特許文献6では、ホヤの筋膜体及び内臓の原材料を用いて摂氏50〜70度の温熱水中又は摂氏50〜70度の温度域でアルコールと反応させてホヤエキスを抽出する、と記載されている。また、このような工程を含んで抽出されたホヤエキスには、主成分としてバナジウム、タウリン、ビタミンB12などが含まれている、とも記載されている。
【0010】
さらにホヤエキスに含まれるバナジウムは、糖尿病の改善に有効で、タウリンは免疫力の増進に役立ち、ビタミンB12は神経痛、関節痛、筋肉痛の改善に役立ち、葉酸は赤血球の造血作用を促進すると記載している。加えて、実施例において、粉末ホヤエキスの有効成分として、バナジウムは微量、タウリン2.95mg/100mg、ビタミンB12は0.18mg/100mg、葉酸は0.85g/100mg、ミネラルは鉄分が0.15mg/100mg、亜鉛が0.14mg/100mg、カルシュウムが0.85mg/100mgであると記載されている。
【0011】
特許文献7では、ホヤ及び/又はその抽出物、特許文献8では、ホヤ及び/又はその抽出物、ウツボ及び/又はその抽出物、ナマコ及び/又はその抽出物から選択される2種以上を併用して、経口若しくは経皮で摂取することにより、高い美肌効果を発揮し、シワ、たるみ、肌荒れといった肌の老化状態を防止するとしている。また、特許文献7及び特許文献8では、これらの肌荒れや小じわ等を予防・改善するためには肌の潤いと張りを保持する事が重要であるとし、肌の保湿性や弾力性の維持効果を有する成分としてホヤ及び/又はその抽出物を利用しているものと考えられる。
【0012】
【非特許文献1】別冊・医学のあゆみ「サイトカイン−基礎から臨床応用まで」医歯薬出版、1992
【非特許文献2】J. P. Bastard et al., Eur. Cytokine Netw., 17 (2006) 4−12.
【非特許文献3】A. Bouloumie et al., Curr. Opin. Clin. Nutr. Metab. Care, 8 (2005) 347−354.
【特許文献1】特開2002−161031号公報
【特許文献2】特表2003−528139号公報
【特許文献3】特開2004−331512号公報
【特許文献4】特開平7−300421号公報
【特許文献5】特表2006−517197号公報
【特許文献6】特開2004−298161号公報
【特許文献7】特開2006−83115号公報
【特許文献8】特開2006−89385号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来、炎症性の疾患を予防する或いは改善する様々な薬剤が開発されていた。しかしこれらの薬剤には副作用の危険性がある為、その危険のない天然物由来の抗炎症剤が望まれていた。
本発明は以上の従来技術における問題に鑑み、副作用の危険のない抗炎症剤及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者等は上記課題について鋭意検討を行った結果、ホヤ由来脂溶性油に含まれるカロテノイドであるアロキサンチン及びディアトキサンチンをマウス由来マクロファージ様細胞RAW264.7に添加し、リポポリサッカライド(LPS)で炎症誘導したところ、有意に各種炎症性サイトカインの産生が抑制されることを見出し、抗炎症剤として報告されているアスタキサンチンと比較して、ホヤ由来脂溶性油に含まれるアロキサンチン及びディアトキサンチンがより高い抗炎症作用を示すことを見出した。
【0015】
すなわち本発明の抗炎症剤は、ホヤ由来脂溶性油を有効成分として含有することを特徴とする。
【0016】
また一般式1(化1)で示され、抗炎症作用を示す活性本体であるアロキサンチン(Alloxanthin)及び/又は一般式2(化2)で示され、抗炎症作用を示す活性本体であるディアトキサンチン(Diatoxanthin)が抗炎症剤の有効成分であることを特徴とする。
【0017】
(化1)

【0018】
(化2)

【0019】
前記ホヤ由来脂溶性油または一般式1(化1)で示されるアロキサンチン及び/又は一般式2(化2)で示されるディアトキサンチンを食品及び飲料及びサプリメント及びペットフード及び化粧品及びサニタリー製品及び薬剤のうちのいずれかに添加してなる抗炎症剤としてもよい。
【0020】
また前記アロキサンチン及びディアトキサンチンは、ホヤ等の天然物から抽出し精製された成分及び有機合成によって得られた成分及び微生物を介して合成された成分の中から選ばれた一種又は二種以上の組み合わせによって得られたものであってもよい。また前記アロキサンチン及びディアトキサンチンは全トランス体又はシス体又はその混合物であってもよい。
【0021】
さらに本発明の抗炎症剤の製造方法は、ホヤから有機溶媒を用いて脂溶性油を抽出する第一工程と、第一工程で得られた抽出液から有機溶媒を除去する第二工程とからなる様にすることができる。
【0022】
加えて本発明のホヤ由来カロテノイドの製造方法はホヤから有機溶媒を用いて脂溶性油を抽出する第一工程と、第一工程で得られた抽出液から有機溶媒を除去する第二工程と、第二工程後の抽出液をクロマトグラフィを用いて精製する第三工程とからなる様にしても良い。
【0023】
前記有機溶媒は有機溶媒と水との混合溶媒として用いることができる。
【0024】
前記有機溶媒はアルコール類及びエーテル類及びケト類及び脂肪族炭化水素のハロゲン化合物及び脂肪族炭化水素及び芳芳香族炭化水素の中から選ばれた一種又は二種以上の組み合わせによって得られた有機溶媒であっても良い。
【0025】
前記前記第一工程における抽出操作は、ホヤ由来カロテノイドの分解を最小限にする為に、10℃以上50℃以下の温度で行われる様にすることが望まれる。
【0026】
また前記第一工程における抽出操作時間は、ホヤ由来カロテノイドの分解を最小限にする為に、30分以上48時間以下とするのが良い。
【0027】
第三工程のクロマトグラフィで使用する充填剤は、順相系のシリカゲル及びセライト及びアルミナ及び水酸化カルシウム及び逆相系の直鎖アルキル基及び芳香族官能基及び親水性官能基及び極性内包型官能基がシルカゲルに化学結合したものの中から選ばれた一種又は二種以上の組み合わせによって得られた充填剤であっても良い。
【0028】
また第三工程のクロマトグラフィで使用する展開溶媒が、水及びアルコール類及びエーテル類及びケト類及び脂肪族炭化水素のハロゲン化合物及び脂肪族炭化水素及び芳香族炭化水素の中から選ばれた一種又は二種以上の組み合わせによって得られた展開溶媒であっても良い。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、極めて高い抗炎症作用を示し、副作用の危険のない天然物由来の抗炎症剤を提供することができる。しかも、本発明の抗炎症剤における極めて高い抗炎症作用を示す活性本体であるホヤ由来カロテノイドではホヤ特有の香りや風味が低減されるので、これらのホヤの特徴を嫌って、ホヤの摂取を避けてきた人々或いは動物に対して利用する事ができる。逆に、ホヤ由来脂溶性油にはホヤ特有の香りや風味が残っている為、ホヤを珍味として消費してきた人々に対しての利用が有効となる。
【0030】
ホヤ脂溶性油の中にはアロキサンチン及びディアトキサンチン以外にもフコキサンチン及びフコキサンチノール及びハロシンチアキサンチンなどのカロテノイドが存在する。これらのカロテノイドは抗肥満作用、ガン細胞増殖抑制作用を示すことが分かっており、ホヤ由来脂溶性油は抗炎症剤としての有効成分のみに留まらず、抗肥満剤やガン細胞増殖抑制剤などの効果も備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための最良の形態について具体的に説明するが、本発明がこの実施の形態のみに限定されるものではない。
【0032】
本発明の抗炎症剤の有効成分であり抗炎症作用を示す活性本体であるアロキサンチン及びディアトキサンチンは、ホヤに含まれるものに限られず、例えばホタテ等の生物に含まれるものであっても良い。
【0033】
前記ホヤは、海鞘綱(学名:Ascidiacea)、第一目腸性類(学名:Enterogona)、第一亜目無官類(学名:Aplousobranchia)、ポリクリニ科(学名:Polyclinidae)、亜科Polyclininaeに属するマンジュウボヤ(学名:Aplidium pliciferum)、コンボウボヤ(学名:Synoicum clavatum)、モヨウボヤ(学名:Polyclinum constellatum)、スナモチボヤ(学名:Sidneioides snamoti)、亜科Euherdmaniinaeに属するイチゴボヤ(学名:Pseudodistoma kanoko)、ジデムニ科(学名:Didemnidae)に属するミナミウスボヤ(学名:Didemnum candidum)、チャツボボヤ(学名:Didemnum molle)、ミスジジデムニ(学名:Trididemnum savignyii)、マダラボヤ(学名:Leptoclinides madara)、ネンエキボヤ(学名:Diplosoma mitsukurii)、シトネボヤ(学名:Lissoclinum pulvinum)、ポリキトリ科(学名:Polycitoridae)に属するコバルトクラベラ(学名:Clavelina coerulea)、ミドリカイメンボヤ(Eudistoma glaucus)、ヘンゲボヤ(学名:Ploycitor proliferus)、チラシボヤ(学名:Distaplia dubia)、カンザシボヤ(学名:Sycozoa kanzasi)、コップボヤ(学名:Cyathocormus mirabilis)、第二亜目管鰓類(学名:Phlebobranchia)、キオナ科(学名:Cionidae)、亜科Diazoninaeに属するボウズボヤ(学名:Syndiazona grandis)、亜科Cioninaeに属するカタユウレイボヤ(学名:Ciona intestinalis)、ユウレイボヤ(学名:Ciona savignyi)、ペロフォラ科(学名:Perophoridae)に属するタイワンマメボヤ(学名:Perophora multiclathrata)、アスキジア科(学名:Ascidiidae)に属するザラボヤ(学名:Ascidia zara)、ナツメボヤ(学名:Ascidia ahodori)、バナジウムボヤ(学名:Ascidia gemmata)、アグネシア科(学名:Agnesiidae)に属するヒメボヤ(学名:Agnesia himeboja)、コレラ科(学名:Corellidae)に属するガマグチボヤ(学名:Rhodosoma turcicum)、ドロボヤ(学名:Corella japonica)、スボヤ(学名:Chelyosoma siboja)、オクタクネミ科(学名:Octacnemidae)に属するオオグチボヤ(学名:Megalodicopia hians)、第二目壁性類(学名:Pleurogona)、第一亜目褶鰓類(学名:Stolidobranchia)、ボトリルス科(学名:Botryllidae)に属するキクイタボヤ(学名:Botryllus tuberatus)、イタボヤ(学名:Botrylloides violaceus)、スチエラ科(学名:Styelidae)、亜科Polyzoinaeに属するアラレボヤ(学名:Polyzoa vesiculiphora)、コバンイタボヤ(学名:Symplegma reptans)、亜科Styelinaeに属するクロボヤ(学名:Polycarpa cryptocarpa kroboja)、ニシキボヤ(学名:Polycarpa aurata)、シロボヤ(学名:Styela plicata)、エボヤ(学名:Styela clava)、シロボヤモドキ(学名:Cnemidocarpa areolata)、ムラボヤ(学名:Dendrodoa aggregata)、ピウラ科(学名:Pyuridae)に属するミハエルボヤ(学名:Pyura sacciformis)、ハルトボヤ(学名:Microcosmus hartmeyeri)、ツリガネボヤ(学名:Culeolus herdmani)、イブリクシエラボヤ(学名:Boltenia echinata f. iburi)、マボヤ(学名:Halocynthia roretzi)、アカボヤ(学名:Halocynthia aurantium)、ネズミボヤ(学名:Hartmeyeria orientalis)、ベニボヤ(学名:Herdmania momus)、モルグラ科(学名:Molgulidae)に属するカンテンボヤ(学名:Eugyra glutinans)、マンハッタンボヤ(学名:Molgula manhattensis)から選択された一種又は二種以上とすることができ、ホヤ由来カロテノイドを含むものが望ましい。
【0034】
前記ホヤ由来脂溶性油及びアロキサンチン及びディアトキサンチンの形態は、粉末状態のもの、固体状態のもの、有機溶媒に溶解したもの、又は界面活性剤を用いて水溶性にしたものとすることができる。
【0035】
ここで使用するホヤはフリーズドライ又はスプレードライ等を使用して乾燥した状態のものであっても良いし、生の状態であっても良い。さらに、粉砕機又は超臨界装置を使用して、抽出前のホヤが粉末状であっても良いし、切り分けられたものであっても良いし、小さくする何らかの処理をしない状態のものであっても良い。つまり、ホヤの物理、化学的状態がどのようなものであっても良い。
【0036】
また使用するホヤの部位はホヤ由来カロテノイドが含まれていれば何れの部位でも良く、好ましくは、ホヤ由来カロテノイドが蓄積されている部位、例えば被嚢(外皮)が望まれる。
【0037】
前記前記第一工程における抽出操作における温度が10℃未満である場合には、抽出効率が悪く、50℃を超える場合にはカロテノイドの分解がおこり、好ましくない。
【0038】
また前記第一工程における抽出操作時間が30分未満である場合には抽出効率が悪く、48時間を超える場合にはカロテノイドの分解がおこり、好ましくない。
【0039】
第二工程の有機溶媒又は有機溶媒及び水から成る混合溶媒の除去は、ホヤ由来カロテノイドの分解を最小限にする為に、エバポレータ等の減圧蒸留装置を使用して行うことができる。
【0040】
以下に本発明の実施例につき説明する。一連の本実施例では、炎症性サイトカインの産生評価モデルとして一般的に使用されているマウス由来マクロファージ様細胞RAW264.7について各試験を行った。
【0041】
(実施例1)ホヤ脂溶性油の調製及びホヤ脂溶性油に含まれるカロテノイドの単離及び分析
ホヤ脂溶性油はエタノール抽出によって生のホヤより得た。このホヤ脂溶性油をシリカゲルの薄層クロマトグラフィ(展開溶媒はアセトン:ヘキサン=2:3(v/v)を使用)に展開させることにより、4つの画分(フラクション1〜4)を得た。これを図1に示す。
【0042】
図1において、(a)〜(d)はそれぞれ、フラクション1〜4として分離し、フラクション3及び4はNMR測定により、それぞれハロシンチアキサンチン(Halocynthiaxanthin)及びフコキサンチノール(Fucoxanthinol)に同定され、これらのカロテノイドは前記操作により単離及び精製されることが分かった。
【0043】
図2は薄層クロマトグラフィで分離された図1に(b)で示すフラクション2画分のHPLC分析結果を示す。図2に示す様に、フラクション2は高速液体クロマトグラフィ(充填剤はODS、展開溶媒はアセトニトリル:メタノール=30:70(v/v)、流速:1.0mL/min)測定から、少なくとも5つのカロテノイド(フラクション2−1〜2−5)から構成される混合物であることが分かった。NMR測定によりフラクション2−1は全トランスアロキサンチン(all−trans alloxanthin)、フラクション2−2は全トランスディアトキサンチン(all−trans diatoxnahin)、フラクション2−3は9,9’シスアロキサンチン(9,9’−cis alloxanthin)、フラクション2−4は9シスアロキサンチン(9−cis alloxanthin)、フラクション2−5は9シスディアトキサンチン(9−cis diatoxnahin)に同定され、前記操作によりこれらのカロテノイドが単離及び精製されることが分かった。図3に本実施例で得られたカロテノイドの化学構造式を示した。
【0044】
ホヤ脂溶性油の収率は、ホヤ(外殻を含む)乾燥重量406.33g(試料1)及び325.78g(試料2)からそれぞれ14.159g(3.48重量%)及び16.508g(5.07重量%)を得た。平均すると乾燥したホヤに対して4.28重量%のホヤ脂溶性油が得られた。得られたホヤ脂溶性油をカラムクロマトグラフィ(充填剤はシリカゲル、展開溶媒はアセトン:ヘキサン=2:3(v/v))に展開させることにより、試料1及び試料2から粗カロテノイド分画をそれぞれ8.336g(2.05重量%)及び10.503g(3.22重量%)を得た。
【0045】
さらに前記のHPLC操作を行うことにより、試料1及び試料2から全トランスアロキサンチン0.3521g(0.086重量%)及び0.3304g(0.101重量%)、ハロシンチアキサンチン0.0430g(0.011重量%)及び0.0432g(0.013重量%)、フコキサンチノール0.0311g(0.008重量%)及び0.0321g(0.009重量%)を得た。
【0046】
(実施例2)炎症性サイトカイン及び炎症関連酵素のmRNA量
1×10cells/mLに濃度を調製したRAW264.7細胞は、RPMI培地中で各ウェルに5mLづつ6穴マイクロプレート中に分注した。これらの細胞を37℃、5%CO存在下で24時間培養した(前培養)。
【0047】
各カロテノイド添加用の高濃度カロテノイドのエタノール溶液(全トランスアロキサンチン、全トランスディアトキサンチン、9シスアロキサンチン、9シスディアトキサンチン50μMの1000倍濃度(50mM)の全トランスアロキサンチン、全トランスディアトキサンチン、9シスアロキサンチン、9シスディアトキサンチンのエタノール溶液)を調製した。
【0048】
これらのカロテノイドのエタノール溶液を前培養したRAW264.7細胞培養液に添加した。その際、培地中のエタノールの濃度は細胞毒性を示さない0.1%以下になるように添加した(ネガティブコントロール(LPS−)及びポジティブコントロール(LPS+)としたRAW264.7細胞培養液にはエタノールのみを添加した)。
【0049】
マイクロプレートシェイカーを攪拌した後、37℃、5%CO存在下で24時間培養し、更にLPSを終濃度0.1 mg/mLとなるように添加し(ネガティブコントロール(LPS−)としたRAW264.7細胞培養液には水のみを添加した)、所定の時間培養した。
【0050】
その後、RAW264.7細胞培養液を除去し、更に生理的リン酸緩衝液(PBS)を用いてRAW264.7細胞を洗浄した。この操作を3回行った。その後、RNeasy Mini Kit (QIAGEN Inc)を用いてTotal RNAを抽出し、定量RT−PCR法により炎症性サイトカインであるTNFα、IL−1β、IL−6のmRNA産生量および炎症関連酵素であるCOX−2、iNOSのmRNA発現量をPRISM7000(Applied Biosystem社)にて測定した。
【0051】
その結果、全トランスアロキサンチン、全トランスディアトキサンチン、9シスアロキサンチン、9シスディアトキサンチンのいずれのカロテノイドにおいても、LPSによって惹起されたIL−1β、IL−6、TNFαのmRNA発現量(LPSのみを添加したポジティブコントロール)を顕著に抑制することが明らかとなった(図4、図5、図6)。
【0052】
図4は全トランスアロキサンチン(F2−1)、全トランスディアトキサンチン(F2−2)、9,9’シスアロキサンチン(F2−3)、9シスアロキサンチン(F2−4)、9シスディアトキサンチン(F2−5)をRAW264.7細胞に添加した時のIL−1β遺伝子発現量の添加試料濃度依存性を示す。
【0053】
図5は全トランスアロキサンチン(F2−1)、全トランスディアトキサンチン(F2−2)、9,9’シスアロキサンチン(F2−3)、9シスアロキサンチン(F2−4)、9シスディアトキサンチン(F2−5)をRAW264.7細胞に添加した時のIL−6遺伝子発現量の添加試料濃度依存性を示す。
【0054】
図6は全トランスアロキサンチン(F2−1)、全トランスディアトキサンチン(F2−2)、9,9’シスアロキサンチン(F2−3)、9シスアロキサンチン(F2−4)、9シスディアトキサンチン(F2−5)をRAW264.7細胞に添加した時のTNF−α遺伝子発現量の添加試料濃度依存性を示す。
【0055】
また、全トランスアロキサンチン、全トランスディアトキサンチン、9シスアロキサンチン、9シスディアトキサンチンのいずれのカロテノイドもCOX−2 mRNA発現量を抑制した(図7)。iNOS mRNAに対しては全トランスアロキサンチン、9シスアロキサンチンがLPSによって惹起されたmRNA発現量を有意に抑制した(図8)。
【0056】
図7は全トランスアロキサンチン(F2−1)、全トランスディアトキサンチン(F2−2)、9,9’シスアロキサンチン(F2−3)、9シスアロキサンチン(F2−4)、9シスディアトキサンチン(F2−5)をRAW264.7細胞に添加した時のCOX−2遺伝子発現量の添加試料濃度依存性を示す。
【0057】
図8は全トランスアロキサンチン(F2−1)、全トランスディアトキサンチン(F2−2)、9,9’シスアロキサンチン(F2−3)、9シスアロキサンチン(F2−4)、9シスディアトキサンチン(F2−5)をRAW264.7細胞に添加した時のiNOS遺伝子発現量の添加試料濃度依存性を示す。
【0058】
これらの結果は、全トランスアロキサンチン、全トランスディアトキサンチン、9シスアロキサンチン、9シスディアトキサンチンが、炎症誘発物質によって惹起される炎症性サイトカイン及び炎症関連酵素をmRNAの発現レベルで抑制できることを示しており、それらの抗炎症作用が期待される結果である。
【0059】
(実施例3)炎症性サイトカイン産生量
1×10cells/mLに濃度を調製したRAW264.7細胞は、RPMI培地中で各ウェルに5mLづつ6穴マイクロプレート中に分注した。これらの細胞を37℃、5%CO存在下で24時間培養した(前培養)。全トランスアロキサンチン添加用の高濃度カロテノイドのエタノール溶液(50μMの1000倍濃度(50mM)の全トランスアロキサンチンのエタノール溶液)を調製した。
【0060】
この全トランスアロキサンチンのエタノール溶液を前培養したRAW264.7細胞培養液に添加した。その際、培地中のエタノールの濃度は細胞毒性を示さない0.1%以下になるように添加した(ネガティブコントロール(LPS−)及びポジティブコントロール(LPS+)としたRAW264.7細胞培養液にはエタノールのみを添加した)。
【0061】
マイクロプレートシェイカーを攪拌した後、37℃、5%CO存在下で24時間培養し、更にLPSを終濃度0.1 mg/mLまたは1 mg/mLとなるように添加し(ネガティブコントロール(LPS−)としたRAW264.7細胞培養液には水のみを添加した)、更に24時間培養した。その後、市販のIL−1β、IL−6量測定ELISAキット(PIERCE Chemical Co.)を用いて培養液中に分泌されたサイトカイン量を測定した。
【0062】
全トランスアロキサンチンは炎症性サイトカインであるIL−1β、IL−6の産生量をタンパク質レベルで抑制していた(図9、図10)。このことより、ホヤ由来のカロテノイドが炎症物質により惹起された炎症性サイトカインの発現量を遺伝子のみならずタンパク質レベルで抑制しており、その有効性が確認された。
【0063】
図9は全トランスアロキサンチンをRAW264.7細胞に添加した時の、IL−1β蛋白質発現量の添加試料濃度依存性を示す。
図10は全トランスアロキサンチンをRAW264.7細胞に添加した時の、IL−6蛋白質発現量の添加試料濃度依存性を測定した結果を示す。
【0064】
(実施例4)カロテノイドによる炎症性サイトカインのmRNA量の比較
実施例4として、本発明の抗炎症剤の有効成分であるホヤ由来脂溶性油が含有する50μMの全トランスアロキサンチン(F2−1)及び全トランスディアトキサンチン(F2−2)をRAW264.7細胞に添加した時のIL−1β遺伝子発現量を測定した。またこれに対する比較例として特許文献1で緑色植物やある種のカビ、酵母、キノコ、細菌から産出されると指摘されたゼアキサンチン(Zea)、βカロテン(β−car)、アスタキサンチン(Ast)についても同様にRAW264.7細胞に添加した時のIL−1β遺伝子発現量を測定した。
測定にあたって、1×10cells/mLに濃度を調製したRAW264.7細胞をRPMI培地中で各ウェルに5mLづつ6穴マイクロプレート中に分注した。これらの細胞を37℃、5%CO存在下で24時間培養した(前培養)。
【0065】
一方、各カロテノイド添加用の高濃度カロテノイドのエタノール溶液またはジメチルスルホキシド(DMSO)溶液(全トランスアロキサンチン、全トランスディアトキサンチンはエタノール溶液、ゼアキサンチン、β−カロテン、アスタキサンチンはDMSO溶液とした)を調製した。
【0066】
これらのカロテノイド溶液を前培養したRAW264.7細胞培養液に添加した。その際、培地中のエタノールおよびDMSOの濃度は細胞毒性を示さない0.1%以下になるように添加した(ネガティブコントロール(LPS−)及びポジティブコントロール(LPS+)としたRAW264.7細胞培養液にはエタノールまたはDMSOのみを添加した)。マイクロプレートシェイカーを攪拌した後、37℃、5%CO存在下で24時間培養し、更にLPSを終濃度0.1mg/mLとなるように添加し(ネガティブコントロール(LPS−)としたRAW264.7細胞培養液には水のみを添加した)、所定の時間培養した。
【0067】
その後、RAW264.7細胞培養液を除去し、更に生理的リン酸緩衝液(PBS)を用いてRAW264.7細胞を洗浄した。この操作を3回行った。その後、RNeasy Mini Kit (QIAGEN Inc)を用いてTotal RNAを抽出し、定量RT−PCR法により炎症性サイトカインであるIL−1β、IL−6のmRNA産生量をPRISM7000(Applied Biosystem社)にて測定した。その測定結果を図11及び図12に示す。
【0068】
図11は50μMの全トランスアロキサンチン(F2−1)、全トランスディアトキサンチン(F2−2)、ゼアキサンチン(Zea)、βカロテン(β−car)、アスタキサンチン(Ast)をRAW264.7細胞に添加した時のIL−1β遺伝子発現量を測定した結果を示す。
図12は50μMの全トランスアロキサンチン(F2−1)、全トランスディアトキサンチン(F2−2)、ゼアキサンチン(Zea)、βカロテン(β−car)、アスタキサンチン(Ast)をRAW264.7細胞に添加した時のIL−6遺伝子発現量を測定した結果を示す。
【0069】
図11及び図12に示される様に、本発明の抗炎症剤の有効成分であるホヤ由来脂溶性油が含有する全トランスアロキサンチンおよび全トランスディアトキサンチンによる、IL−1β、IL−6のmRNA発現抑制効果は、特許文献1で緑色植物やある種のカビ、酵母、キノコ、細菌から産出されると指摘されたゼアキサンチン、β−カロテン、アスタキサンチンに比べて顕著な抑制効果であった。特に、これまで抗炎症作用が報告されているアスタキサンチンの効果より顕著であったことは、抗炎症剤としてホヤ由来のカロテノイドが有用であることを示すものである(図11、図12)。
【0070】
(実施例5)ホヤ由来カロテノイドの添加による細胞に対する毒性試験
RAW264.7細胞に対して細胞の生存に深刻な影響を及ぼさない、言い換えると細胞がアポトーシス或いはネクローシスを起こさないようなホヤ由来カロテノイドの添加量を調べた。
10×10cells/mLに濃度を調製したRAW264.7細胞は、RPMI培地中で各ウェルに100μLづつ96穴マイクロプレート中に分注した。これらの細胞を37℃、5%CO存在下で24時間培養した(前培養)。
【0071】
各カロテノイド添加用の高濃度カロテノイドのエタノール溶液(全トランスハロシンチアキサンチン、全トランスフコキサンチン、全トランスフコキサンチノール、全トランスアロキサンチン、全トランスディアトキサンチン、9シスアロキサンチン、9シスディアトキサンチン、これらのカロテノイドには炎症誘導剤としてリポポリサッカライド(LPS)を終濃度が0.1 mg/mLになるように調製して添加している、ネガティブコントロールとしてエタノールのみ(LPS−)、ポジティブコントロールとしてLPSのエタノール溶液(LPS+))を以下のように調製し、前培養後のRAW264.7細胞に添加した。
【0072】
ハロシンチアキサンチン、フコキサンチン、フコキサンチノールは終濃度0.75、1.5、3μMの1000倍濃度(0.75、1.5、3mM)のハロシンチアキサンチン、フコキサンチン、フコキサンチノールのエタノール溶液を、全トランスアロキサンチン、全トランスディアトキサンチン、9シスアロキサンチン、9シスディアトキサンチン50μMの1000倍濃度(50mM)の全トランスアロキサンチン、全トランスディアトキサンチン、9シスアロキサンチン、9シスディアトキサンチンのエタノール溶液を調製した。
【0073】
これらに91倍量(v)のRPMI培地で希釈し、得られた溶液の10μLを前培養したRAW264.7細胞に添加した。このように添加したカロテノイドを調製する事により、培地中のエタノールの濃度は0.1%以下になる。96穴マイクロプレートに取り分けた試料をプレートシェイカーで攪拌し、その後37℃、5%CO存在下で、所定の時間培養した。
【0074】
測定の3時間前にWST−1試薬を各ウェルに10μLずつ添加し、プレートシェーカーで均一に分散させた。さらに3時間培養後、マイクロプレートリーダーで、450nmの吸光度(対照波長は650nm)を測定した。得られた吸光度の値を用いて、細胞生残率=((カロテノイドのエタノール溶液を添加した細胞溶液の吸光度)−(培地とカロテノイドのエタノール溶液の吸光度))/((エタノールを添加した細胞溶液の吸光度)−(培地+エタノール溶液の吸光度))の式から細胞生残率を見積もった。
【0075】
その結果を図13に示す。図13は 全トランスアロキサンチン(F2−1)、全トランスディアトキサンチン(F2−2)、9,9’シスアロキサンチン(F2−3)、9シスアロキサンチン(F2−4)、9シスディアトキサンチン(F2−5)をRAW264.7細胞に添加した時の細胞生残率の添加試料濃度依存性を見積もった結果を示す。
【0076】
図13に示される様に、炎症性サイトカインおよび炎症酵素の発現抑制効果を示したホヤ由来のカロテノイドである全トランスハロシンチアキサンチン、全トランスフコキサンチン、全トランスフコキサンチノール、全トランスアロキサンチン、全トランスディアトキサンチン、9シスアロキサンチン、9シスディアトキサンチンはRAW264.7細胞に対して50ppm以上まで細胞毒性を示さなかった。これらの結果はホヤ由来のカロテノイドが生体に対して適合性を有した抗炎症剤であることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の抗炎症剤は、ホヤ由来脂溶性油を食品素材等に添加することで機能性食品素材として用いることができ、農業の分野での活用も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施例1において抽出されたホヤ脂溶性油をシリカゲル担体に展開させることにより得られた薄層クロマトグラフィを示す図である。
【図2】本発明の実施例1において抽出されたホヤ脂溶性油薄層クロマトグラフィで分離されたフラクション2画分のHPLC分析結果を示す図である。
【図3】本発明の実施例1において抽出されたホヤ抽出脂溶性油中に含まれるカロテノイドの化学構造式を示す図である。
【図4】本発明の実施例2で各カロテノイドをRAW264.7細胞に添加した時のIL−1β遺伝子発現量の添加試料濃度依存性を測定した結果を示す図である。
【図5】本発明の実施例2で各カロテノイドをRAW264.7細胞に添加した時のIL−6遺伝子発現量の添加試料濃度依存性を測定した結果を示す図である。
【図6】本発明の実施例2で各カロテノイドをRAW264.7細胞に添加した時のTNF−α遺伝子発現量の添加試料濃度依存性を測定した結果を示す図である。
【図7】本発明の実施例2で各カロテノイドをRAW264.7細胞に添加した時のCOX−2遺伝子発現量の添加試料濃度依存性を測定した結果を示す図である。
【図8】本発明の実施例2で各カロテノイドをRAW264.7細胞に添加した時のiNOS遺伝子発現量の添加試料濃度依存性を測定した結果を示す図である。
【図9】本発明の実施例3で全トランスアロキサンチンをRAW264.7細胞に添加した時の、IL−1β蛋白質発現量の添加試料濃度依存性を測定した結果を示す図である。
【図10】本発明の実施例3で全トランスアロキサンチンをRAW264.7細胞に添加した時の、IL−6蛋白質発現量の添加試料濃度依存性を測定した結果を示す図である。
【図11】本発明の実施例4で本発明の抗炎症剤の有効成分をRAW264.7細胞に添加した時のIL−1β遺伝子発現量と従来の抗炎症剤成分をRAW264.7細胞に添加した時のIL−1β遺伝子発現量を測定した結果を比較して示す図である。
【図12】本発明の実施例4で本発明の抗炎症剤の有効成分をRAW264.7細胞に添加した時のIL−6遺伝子発現量と従来の抗炎症剤成分をRAW264.7細胞に添加した時のIL−6遺伝子発現量を測定した結果を比較して示す図である。
【図13】本発明の実施例5で各カロテノイドをRAW264.7細胞に添加した時の細胞生残率の添加試料濃度依存性を測定した結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホヤ由来脂溶性油を有効成分として含有することを特徴とする抗炎症剤。
【請求項2】
ホヤ由来脂溶性油を食品及び飲料及びサプリメント及びペットフード及び化粧品及びサニタリー製品及び薬剤のうちのいずれかに添加してなることを特徴とする抗炎症剤。
【請求項3】
前記ホヤは、海鞘綱(学名:Ascidiacea)、第一目腸性類(学名:Enterogona)、第一亜目無官類(学名:Aplousobranchia)、ポリクリニ科(学名:Polyclinidae)、亜科Polyclininaeに属するマンジュウボヤ(学名:Aplidium pliciferum)、コンボウボヤ(学名:Synoicum clavatum)、モヨウボヤ(学名:Polyclinum constellatum)、スナモチボヤ(学名:Sidneioides snamoti)、亜科Euherdmaniinaeに属するイチゴボヤ(学名:Pseudodistoma kanoko)、ジデムニ科(学名:Didemnidae)に属するミナミウスボヤ(学名:Didemnum candidum)、チャツボボヤ(学名:Didemnum molle)、ミスジジデムニ(学名:Trididemnum savignyii)、マダラボヤ(学名:Leptoclinides madara)、ネンエキボヤ(学名:Diplosoma mitsukurii)、シトネボヤ(学名:Lissoclinum pulvinum)、ポリキトリ科(学名:Polycitoridae)に属するコバルトクラベラ(学名:Clavelina coerulea)、ミドリカイメンボヤ(Eudistoma glaucus)、ヘンゲボヤ(学名:Ploycitor proliferus)、チラシボヤ(学名:Distaplia dubia)、カンザシボヤ(学名:Sycozoa kanzasi)、コップボヤ(学名:Cyathocormus mirabilis)、第二亜目管鰓類(学名:Phlebobranchia)、キオナ科(学名:Cionidae)、亜科Diazoninaeに属するボウズボヤ(学名:Syndiazona grandis)、亜科Cioninaeに属するカタユウレイボヤ(学名:Ciona intestinalis)、ユウレイボヤ(学名:Ciona savignyi)、ペロフォラ科(学名:Perophoridae)に属するタイワンマメボヤ(学名:Perophora multiclathrata)、アスキジア科(学名:Ascidiidae)に属するザラボヤ(学名:Ascidia zara)、ナツメボヤ(学名:Ascidia ahodori)、バナジウムボヤ(学名:Ascidia gemmata)、アグネシア科(学名:Agnesiidae)に属するヒメボヤ(学名:Agnesia himeboja)、コレラ科(学名:Corellidae)に属するガマグチボヤ(学名:Rhodosoma turcicum)、ドロボヤ(学名:Corella japonica)、スボヤ(学名:Chelyosoma siboja)、オクタクネミ科(学名:Octacnemidae)に属するオオグチボヤ(学名:Megalodicopia hians)、第二目壁性類(学名:Pleurogona)、第一亜目褶鰓類(学名:Stolidobranchia)、ボトリルス科(学名:Botryllidae)に属するキクイタボヤ(学名:Botryllus tuberatus)、イタボヤ(学名:Botrylloides violaceus)、スチエラ科(学名:Styelidae)、亜科Polyzoinaeに属するアラレボヤ(学名:Polyzoa vesiculiphora)、コバンイタボヤ(学名:Symplegma reptans)、亜科Styelinaeに属するクロボヤ(学名:Polycarpa cryptocarpa kroboja)、ニシキボヤ(学名:Polycarpa aurata)、シロボヤ(学名:Styela plicata)、エボヤ(学名:Styela clava)、シロボヤモドキ(学名:Cnemidocarpa areolata)、ムラボヤ(学名:Dendrodoa aggregata)、ピウラ科(学名:Pyuridae)に属するミハエルボヤ(学名:Pyura sacciformis)、ハルトボヤ(学名:Microcosmus hartmeyeri)、ツリガネボヤ(学名:Culeolus herdmani)、イブリクシエラボヤ(学名:Boltenia echinata f. iburi)、マボヤ(学名:Halocynthia roretzi)、アカボヤ(学名:Halocynthia aurantium)、ネズミボヤ(学名:Hartmeyeria orientalis)、ベニボヤ(学名:Herdmania momus)、モルグラ科(学名:Molgulidae)に属するカンテンボヤ(学名:Eugyra glutinans)、マンハッタンボヤ(学名:Molgula manhattensis)から選択された一種又は二種以上である請求項1又は請求項2に記載の抗炎症剤。
【請求項4】
前記ホヤ由来脂溶性油は、天然物から抽出し精製された成分及び有機合成によって得られた成分及び微生物を介して合成された成分の中から選ばれた一種又は二種以上の組み合わせによって得られたものである請求項1及至請求項3の何れか一に記載の抗炎症剤。
【請求項5】
請求項1及至請求項4の何れか一に記載の抗炎症剤の製造方法であって、ホヤから有機溶媒を用いて脂溶性油を抽出する第一工程と、第一工程で得られた抽出液から有機溶媒を除去する第二工程とからなることを特徴とする抗炎症剤の製造方法。
【請求項6】
一般式1(化1)で示されるアロキサンチン(Alloxanthin)が有効成分であることを特徴とする抗炎症剤。
(化1)

【請求項7】
一般式1(化1)で示されるアロキサンチン(Alloxanthin)を食品及び飲料及びサプリメント及びペットフード及び化粧品及びサニタリー製品及び薬剤のうちのいずれか一に添加してなることを特徴とする抗炎症剤。
(化1)

【請求項8】
前記アロキサンチンがトランス体及びシス体及びトランス体とシス体の混合物のうちのいずれか一である請求項6又は請求項7に記載の抗炎症剤。
【請求項9】
前記アロキサンチンは、天然生物から抽出し精製された成分及び有機合成によって得られた成分及び微生物を介して合成された成分の内から選ばれた一種又は二種以上の組み合わせによって得られたものである請求項6及至請求項9のいずれか一に記載の抗炎症剤。
【請求項10】
一般式2(化2)で示されるディアトキサンチン(Diatoxanthin)が有効成分であることを特徴とする抗炎症剤
(化2)

【請求項11】
一般式2(化2)で示されるディアトキサンチン(Diatoxanthin)を食品及び飲料及びサプリメント及びペットフード及び化粧品及びサニタリー製品及び薬剤のうちのいずれか一に添加してなることを特徴とする抗炎症剤。
(化2)

【請求項12】
前記ディアトキサンチンがトランス体及びシス体及びトランス体とシス体の混合物のうちのいずれか一である請求項10又は請求項11に記載の抗炎症剤
【請求項13】
前記ディアトキサンチンは、天然生物から抽出し精製された成分及び有機合成によって得られた成分及び微生物を介して合成された成分の内から選ばれた一種又は二種以上の組み合わせによって得られたものである請求項10及至請求項12のいずれか一に記載の抗炎症剤。
【請求項14】
ホヤから有機溶媒を用いて脂溶性油を抽出する第一工程と、第一工程で得られた抽出液から有機溶媒を除去する第二工程と、第二工程後の抽出液をクロマトグラフィを用いて精製する第三工程とからなることを特徴とする請求項6及至9又は請求項10及至請求項13の何れか一に記載の抗炎症剤の製造方法。
【請求項15】
前記有機溶媒が有機溶媒と水との混合溶媒として用いられる請求項5又は請求項14に記載の抗炎症剤の製造方法。
【請求項16】
前記有機溶媒は、アルコール類及びエーテル類及びケト類及び脂肪族炭化水素のハロゲン化合物及び脂肪族炭化水素及び芳芳香族炭化水素の中から選ばれた一種又は二種以上の組み合わせによって得られた有機溶媒である請求項5又は請求項14に記載の抗炎症剤の製造方法。
【請求項17】
前記第一工程における抽出操作は、10℃以上50℃以下の温度で行われる請求項5又は請求項14に記載の抗炎症剤の製造方法。
【請求項18】
前記第一工程における抽出操作時間が30分以上48時間以下とされる請求項5又は請求項14に記載の抗炎症剤の製造方法。
【請求項19】
前記第三工程におけるクロマトグラフィに用いる充填剤は、順相系のシリカゲル及びセライト及びアルミナ及び水酸化カルシウム及び逆相系の直鎖アルキル基及び芳香族官能基及び親水性官能基及び極性内包型官能基がシルカゲルに化学結合したものの中から選ばれた一種又は二種以上の組み合わせによって得られた充填剤である請求項14に記載の抗炎症剤の製造方法。
【請求項20】
前記第三工程における前記クロマトグラフィで使用する展開溶媒が、水及びアルコール類及びエーテル類及びケト類及び脂肪族炭化水素のハロゲン化合物及び脂肪族炭化水素及び芳香族炭化水素の中から選ばれた一種又は二種以上の組み合わせによって得られた展開溶媒である請求項14に記載の抗炎症剤の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−179545(P2008−179545A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−12532(P2007−12532)
【出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度 農林水産省 農業・食品産業技術総合研究機構 生物系特定産業技術研究支援センター委託「生物系産業創出のための異分野融合研究支援事業」および 平成18年度 文部科学省 科学技術総合研究委託「戦略的研究拠点育成北大リサーチ&ビジネスパーク構想(北海道大学創成科学共同研究機構)」, 産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504173471)国立大学法人 北海道大学 (971)
【出願人】(505152756)協同組合マリンテック釜石 (7)
【Fターム(参考)】