説明

抗白癬菌性樹脂組成物

【課題】無機系の抗白癬菌剤を含む樹脂成型品に比べて抗白癬菌効果が高く、かつ、従来の有機系抗白癬菌剤を含む樹脂成型品に比べて、より少量の抗白癬菌剤の含有量で抗白癬菌効果を発揮する樹脂成型品を得るための抗白癬菌性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】対イオンが超強酸である第4級アンモニウム塩(A)からなる抗白癬菌剤、並びに熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂を含有してなる抗白癬菌性樹脂組成物であり、好ましい(A)は一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩。


(式中、R1およびR2は同一の又は異なる、炭素数が1〜22の直鎖もしくは分岐の脂肪族炭化水素基、R3は炭素数が1〜22の直鎖もしくは分岐の脂肪族炭化水素基又は炭素数が7〜22のアリールアルキルもしくはアリールアルケニル基、R4は炭素数が8〜22の直鎖または分岐の脂肪族炭化水素基、X-は超強酸のアニオンを表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗白癬菌性樹脂組成物およびその成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衛生上のニーズ等から、繊維などの樹脂に抗白癬菌剤を添加して抗白癬菌性を付与することが提案されてきた。
添加する抗白癬菌剤としては、銀(特許文献−1)、金属ピリチオン系化合物(特許文献−2)または酢酸セルロース(特許文献−3)などが提案されている。
しかしながら、銀などの無機系の抗白癬菌剤は黄色ブドウ球菌や大腸菌に対する抗菌性は有しているものの白癬菌などの真菌類に対しては効果があまりなかった。また、金属ピリチオン系化合物や酢酸セルロースもしくはアゾール系化合物などの有機系の抗白癬菌剤は白癬菌に対して効果はあるものの耐熱温度が低いため、樹脂に練り込む工程で加熱されて分解や変質が起こり易く、有効成分含量を保つためには多量の抗菌剤を練り込む必要があり、この結果、樹脂製品の特性に悪影響を与えることが多かった。
【0003】
【特許文献−1】特開平2005−82945号公報
【特許文献−2】特開平2004−300650号公報
【特許文献−3】特開平2002−154906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、無機系の抗白癬菌剤を含む樹脂成型品に比べて抗白癬菌効果が高く、かつ、従来の有機系抗白癬菌剤を含む樹脂成型品に比べて、より少量の抗白癬菌剤の含有量で抗白癬菌効果を発揮する樹脂成型品を得るための抗白癬菌性樹脂組成物を提供すること、並びにその成型品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち本発明は、対イオンが超強酸である第4級アンモニウム塩(A)からなる抗白癬菌剤、並びに熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂を含有してなる抗白癬菌性樹脂組成物;および、該抗白癬菌性樹脂組成物を成形してなる抗白癬菌性樹脂成形品;である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の抗白癬菌性樹脂組成物および抗白癬菌性樹脂成型品は、
1.無機系の抗白癬菌剤を含有する抗白癬菌性樹脂組成物および抗白癬菌性樹脂成型品に比べて抗白癬菌効果が高い。
2.従来の有機系抗白癬菌剤を含有する抗白癬菌性樹脂組成物および抗白癬菌性樹脂成型品に比べて、抗白癬菌剤の含有量が少なくても充分な抗白癬菌性を発揮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の抗白癬菌性樹脂組成物は抗白癬菌剤を含有し、該抗白癬菌剤は対イオンが超強酸である第4級アンモニウム塩(A)を有効成分とする。
(A)としては、下記一般式(1)で表される第4級アンモニウム超強酸塩(A1);アミド基[アルキル(炭素数10〜24)アミドアルキル(炭素数2〜6)基]または/および炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基を有する第4級アンモニウム超強酸塩(A2);並びに、環状アミン(ピリジン、モルホリンなど)型第4級アンモニウム超強酸塩(A3)などが挙げられる。
【0008】
【化2】

【0009】
一般式(1)におけるR1およびR2は炭素数1〜22の直鎖もしくは分岐の脂肪族炭化水素基(アルキル基およびアルケニル基など)を表す。
直鎖の脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、ヤシ油由来のアルコールから水酸基を除いたアルキル基(以下、ヤシ油アルキル基と略記する。)およびオレイル基などが挙げられ、分岐の炭化水素基としては、イソプロピル基および2−エチルヘキシル基が挙げられる。これらのうち、好ましいのは炭素数が1〜14、さらに炭素数1〜8、特に炭素数1または2のものであり、最も好ましいのはメチル基である。また、R1とR2は同一であっても異なっていてもよいが、同一であるのが好ましい。
【0010】
3は炭素数が1〜22の直鎖もしくは分岐の脂肪族炭化水素基または炭素数が7〜22のアリールアルキルもしくはアリールアルケニル基を表す。直鎖もしくは分岐の脂肪族炭化水素基としては、前記で例示したものが挙げられ、アリールアルキル基としてはベンジル基およびフェネチル基など、アリールアルケニル基としてはスチリル基およびシンナミル基などが挙げられる。
3のうち好ましいのは炭素数が1〜18の直鎖もしくは分岐の脂肪族炭化水素基または炭素数が7〜15のアリールアルキルもしくはアリールアルケニル基、さらに好ましいのは炭素数が6〜14の直鎖もしくは分岐の脂肪族炭化水素基である。
【0011】
4は炭素数8〜22の直鎖また分岐の脂肪族炭化水素基(アルキル基およびアルケニル基など)を表す。
直鎖の脂肪族炭化水素基としては、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、ヤシ油アルキル基およびオレイル基などが挙げられ、分岐の脂肪族炭化水素基としては、2−エチルヘキシル基などが挙げられる。R4のうち好ましいのは炭素数8〜18の直鎖また分岐の脂肪族炭化水素基、さらに好ましいのは炭素数10〜16の直鎖また分岐の脂肪族炭化水素基である。
【0012】
一般式(1)で表される第4級アンモニウム超強酸塩(A1)を構成する第4級アンモニウム基の具体例としては、R3が脂肪族炭化水素基の場合は、たとえば、1つの長鎖アルキル基を有するもの(トリメチルドデシルアンモニウム、トリメチルテトラデシルアンモニウム、トリメチルヘキサデシルアンモニウム、トリメチルオクタデシルアンモニウム、トリメチルヤシ油アルキルアンモニウム、トリメチル−2−エチルヘキシルアンモニウム、ジメチルエチルドデシルアンモニウム、ジメチルエチルテトラデシルアンモニウム、ジメチルエチルヘキサデシルアンモニウム、ジメチルエチルオクタデシルアンモニウム、ジメチルエチルヤシ油アルキルアンモニウム、ジメチルエチル−2−エチルヘキシルアンモニウム、メチルジエチルドデシルアンモニウム、メチルジエチルテトラデシルアンモニウム、メチルジエチルヘキサデシルアンモニウム、メチルジエチルオクタデシルアンモニウム、メチルジエチルヤシ油アルキルアンモニウムおよびメチルジエチル−2−エチルヘキシルアンモニウム)、2つの長鎖アルキル基(炭素数6〜22)を有するもの(ジメチルジヘキシルアンモニウム、ジメチルジオクチルアンモニウム、ジメチルジデシルアンモニウムおよびジメチルジドデシルアンモニウム)、1つの長鎖アルケニル基(炭素数8〜22)を有するもの(トリメチルオレイルアンモニウム、ジメチルエチルオレイルアンモニウムおよびメチルジエチルオレイルアンモニウム)が挙げられる。
また、R3がアリールアルキル基の場合は、たとえば、ジメチルデシルベンジルアンモニウム、ジメチルドデシルベンジルアンモニウム、ジメチルテトラデシルベンジルアンモニウム、ジメチルヘキサデシルベンジルアンモニウム、ジメチルヤシ油アルキルベンジルアンモニウム、ジメチルオレイルベンジルアンモニウムおよびジメチル−2−エチルヘキシルベンジルアンモニウムが挙げられる。
【0013】
これらのうち抗白癬菌性の観点から好ましいのは、トリメチルヘキサデシルアンモニウム、ジメチルジデシルアンモニウム、ジメチルドデシルベンジルアンモニウムおよびジメチルテトラデシルベンジルアンモニウムである。
【0014】
アミド基または/および炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基を有する第4級アンモニウム超強酸塩(A2)を構成する第4級アンモニウム基としては、例えばオレアミドエチルジエチルメチルアンモニウム、ステアラミドエチルジエチルベンジルアンモニウム、およびステアラミドプロピルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム基などが挙げられる。
【0015】
環状アミン(ピリジン、モルホリンなど)型第4級アンモニウム超強酸塩(A3)を構成する第4級アンモニウム基をしては、アルキロキシ(炭素数8〜24)メチルピリジニウム基(例えばステアリロキシメチルピリジニウム基)、アルキル(炭素数8〜24)オキシメチルピリジニウム基(例えば、ヘキサデシルオキシメチルピリジニウム基)、およびアルキル(炭素数10〜24)ピリジニウム基(例えば、テトラデシルピリジニウム基)などが挙げられる。
【0016】
一般式(1)における対イオンであるX-は、超強酸のアニオンであり、これらのアニオンを構成する超強酸は、100%硫酸より強い酸強度を有する酸(「超強酸・超強塩基」田部浩三、野依良治著、講談社サイエンティフィック刊、p1参照)であり、Hammettの酸度関数(H0)が100%硫酸の−11.93未満のものであり、プロトン酸、およびプロトン酸とルイス酸の組み合わせからなる酸が挙げられる。
プロトン酸の具体例としては、トリフルオロメタンスルホン酸(H0=−14.10)、ペンタフルオロエタンスルホン酸(H0=−14.00)などが挙げられる。
プロトン酸とルイス酸の組み合わせに用いられるプロトン酸としては、ハロゲン化水素(フッ化水素、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素など)が挙げられ、ルイス酸としては三フッ化硼素、五フッ化リン、五フッ化アンチモン、五フッ化砒素、五フッ化タウリンなどが挙げられる。
プロトン酸とルイス酸の組み合わせは任意であるが、組み合わせて得られる超強酸の具体例としては、四フッ化硼素酸、六フッ化リン酸、塩化フッ化硼素酸、六フッ化アンチモン酸、六フッ化砒酸、六フッ化タウリンなどが挙げられる。
上記の超強酸のうち、(A)の耐熱性の観点から、好ましいのは、Hammettの酸度関数(H0)が−12.00以下のもの、例えばトリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、四フッ化硼素酸、六フッ化リン、塩化フッ化硼素酸、六フッ化アンチモン、六フッ化砒素、および六フッ化タウリンなど、さらに好ましいのは、トリフルオロメタンスルホン酸、四フッ化硼素酸および六フッ化リン酸、特に好ましいのはトリフルオロメタンスルホン酸と四フッ化硼素酸である。
【0017】
(A)のうち、耐熱性、少量の添加で抗白癬菌性を発揮できる点および抗白癬菌性の持続性の観点から、好ましいのは(A1)であり、特に好ましいのはジメチルジデシルアンモニウム四フッ化硼素酸塩、ジデシルジメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホン酸塩、トリメチルヘキサデシルアンモニウム四フッ化硼素酸塩、ジメチルヤシ油アルキルベンジルアンモニウム四フッ化硼素酸塩およびジメチルヤシ油アルキルベンジルアンモニウムトリフルオロメタンスルホン酸である。
【0018】
(A)の製造方法としては、例えば下記の[I]および[II]の方法が挙げられる。
種々の不純物が少ないという観点から好ましいのは[II]の方法である。
【0019】
[I]第4級アンモニウム塩〔例えば、クロルアニオンからなる塩〕の水溶液(20〜70重量%)に前記超強酸のアルカリ金属塩(ナトリウム塩またはカリウム塩など)を加え(第4級アンモニウム塩/超強酸塩の当量比は通常1/1〜1/1.5、好ましくは1/1.05〜1/1.3)、室温で約2時間撹拌混合して得られる水溶液を70〜80℃で約1時間撹拌後、静置して分液した下層(水層)を除去し、上層中の水分を減圧留去して、目的の第4級アンモニウム塩を得る。
【0020】
[II]第3級アミンと同当量以上(好ましくは1.1〜5.0当量)の炭酸ジアルキルエステル(アルキル基の炭素数1〜5)を溶媒(例えば、メタノール)の存在下(第3級アミンの重量に基づいて10〜1000%)または非存在下、反応温度80〜200℃、好ましくは100〜150℃で反応させて第4級アンモニウム塩を形成し、さらに前記超強酸を添加(第4級アンモニウムの当量に基づいて1.0〜1.2当量)し、10〜50℃で1時間撹拌して塩交換する。溶媒を80〜120℃で減圧留去して、目的の第4級アンモニウム塩を得る。
炭酸ジアルキルエステルとしては、炭酸ジメチルおよび炭酸ジエチルが挙げられ、残存する未反応炭酸ジアルキルエステルの含量(測定法:ガスクロマトグラフィー法)は(A)の重量に基づいて好ましくは200ppm以下、さらに好ましくは100ppm以下、とくに好ましくは50ppm以下である。該未反応炭酸ジアルキルエステルが200ppm以下であればを本発明の後述の抗白癬菌性樹脂組成物を成形してなる成型品の樹脂強度が低下することがないので好ましい。
【0021】
本発明における(A)は、通常は固体であり、その融点は通常30〜120℃であり、好ましくは40〜110℃である。
【0022】
本発明における抗白癬菌剤は、通常は(A)そのものからなるが、少量(好ましくは10重量%以下)の不純物(例えば、未反応原料のアミンなど)を含んでいてもよい。
抗白癬菌剤も通常は固体であり、その融点も(A)と同様の範囲である。
【0023】
本発明の抗白癬菌性樹脂組成物は、上記の抗白癬菌剤と、熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂を含有する組成物である。
【0024】
熱可塑性樹脂としては ポリオレフィン系樹脂[たとえばポリプロレン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、エチレン−エチルアクリレート系共重合樹脂など];ポリアクリル系樹脂[たとえばポリメタクリル酸メチルなど];ポリスチレン系樹脂[たとえばポリスチレン、スチレン/アクリロニトリル共重合体(AN樹脂)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)、メタクリル酸メチル/ブタジエン/スチレン共重合体(MBS樹脂)、スチレン/メタクリル酸メチル共重合体(MS樹脂)など];ポリエステル系樹脂[たとえばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペートなど];ポリアミド系樹脂[たとえばナイロン66、ナイロン69、ナイロン612、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン6/66、ナイロン6/12など];ポリカーボネート系樹脂[たとえばポリカーボネート、ポリカーボネート/ABS樹脂アロイ等];ポリアセタール樹脂;熱可塑性ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
これらのうち好ましいものは、ポリアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリアミド系樹脂であり、特に好ましいものはポリスチレン系樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂である。
【0025】
熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂(グリコールと、不飽和および飽和二塩基酸から誘導される不飽和ポリエステルと他のビニルモノマーとの架橋共重合物など)、エポキシ樹脂(ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂の、ポリアミン、酸無水物などによる硬化樹脂など)、熱硬化性ポリウレタン樹脂(ポリウレタンフォームを含む)、高吸水性樹脂(架橋ポリアクリルアミドの部分加水分解物、架橋されたアクリル酸−アクリルアミド共重合体など)などが挙げられる。
【0026】
本発明の抗白癬菌性樹脂組成物における、抗白癬菌性樹脂組成物の重量に基づく(A)の含有量は、通常0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜10%(以下において、特に限定しない限り%は重量%を表す)、さらに好ましくは0.2〜5%、特に好ましくは0.3〜3%である。0.1%以上であれば抗白癬菌効果をさらに発揮し易く、10%以下であれば樹脂成形品の物理的物性に悪影響を与えることが少なくなる。
また、本発明の抗白癬菌性樹脂組成物における、抗白癬菌性樹脂組成物の重量に基づく熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の含有量は、通常90〜99.99%、好ましくは90〜99.9%、さらに好ましくは95〜99.8%、特に好ましくは97〜99.7%である。
【0027】
本発明の抗白癬菌性樹脂組成物は、必要によりさらに顔料、核剤、可塑剤、安定剤、充填材、難燃剤、分散剤、酸化防止剤および紫外線吸収剤から選ばれる添加剤を含有させることができる。
【0028】
顔料としては、酸化チタン、ベンガラ、黄鉛、カドミウム、群青、アゾ系、フタロシアニン系、建染染料系、キナクリドン系、ジオキサジン系、染付レーキなど;核剤としては、ジベンジリデンソルビトールなど;可塑剤としては、フタル酸エステル系(ジオクチルフタレートなど)、リン酸エステル系、アジピン酸系、セバチン酸エステル系、グリコール酸エステル系、ポリエステル系、エポキシ系など;安定剤としては、鉛白、塩基性亜硫酸鉛、三塩基性硫酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛、シリカゲル共沈けい酸鉛、液状金属系、ラウレート系有機スズ、マレエート系有機スズ、メルカプタイド系有機スズ、アンチモン系、エポキシ系、亜リン酸エステル系など;充填材としては、炭酸カルシウム、タルク、クレー、けい酸、けい酸塩、アスベスト、マイカ、ガラス繊維、ガラスバルーン、カーボン繊維、金属繊維、セラミックウィスカ、チタンウィスカなど;難燃剤としては、リン酸エステル系[トリクレジルホスフェート、トリス(2,3ジブロモプロピル)ホスフェートなど]、臭素系(デカブロモビフェニルエーテルなど)、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、ホウ酸塩系(ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウムなど)、水酸化アルミニウム、赤リン、水酸化マグネシウム、ポリリン酸アンモニウム、ヘット酸、テトラブロモビスフェノールAなどが挙げられる。
【0029】
また、酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、など;紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系(2−ヒドロキシベンゾフェノンなど)、サリチレート系(フェニルサリチレートなど)、ベンゾトリアゾール系、アクリル系[エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、メチル−2−カルボメトキシ−3−(パラメトキシベンジル)アクリレートなど];が挙げられる。
【0030】
上記の添加剤の使用量は、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂の合計重量に基づいて、可塑剤、充填材は通常80%以下、好ましくは10〜50%、難燃剤は通常40%以下、好ましくは10〜30%、顔料は通常40%以下、好ましくは1〜10%、核剤、安定剤は通常10%以下、好ましくは1〜5%、酸化防止剤、紫外線防止剤は通常5%以下、好ましくは0.1〜2%である。
【0031】
本発明の抗白癬菌性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、本発明における(A)以外の抗白癬菌剤を含有させることができる。(A)以外の抗白癬菌剤の含有量は、(A)の含有量の通常30%以下、好ましくは10%以下である。
(A)以外の抗白癬菌剤としては、無機系の抗白癬菌剤(例えば、銀、銅および亜鉛ゼオライト、および有機系の抗白癬菌剤(例えば、イミダゾール系、金属ピリチオン系化合物、酢酸セルロース、チアゾリン系、ハロゲン化第4級アンモニウム塩、およびアニオン性高分子と第4級アンモニウム塩との塩など)が挙げられる。
【0032】
本発明の抗白癬菌性樹脂組成物は、成型されてフィルム状もしくはシート状の抗白癬菌性樹脂成型品を得る目的の場合には、フィルムもしくはシートの成型のし易さの観点から、抗白癬菌性樹脂組成物は必要により溶剤を含有していてもよい。
含有することができる溶剤としては、使用される熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂の種類によって適宜選択され、通常は使用される樹脂の良溶媒である。
例えば、熱可塑性ポリウレタン樹脂の場合はジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドおよびメチルエチルケトンなどが使用でき、ポリアクリル系樹脂やポリスチレン系樹脂などではトルエン、キシレン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、アセトンおよびテトラヒドロフランなどが使用できる。
これらの溶剤は、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂の製造時に使用された溶剤をそのまま除去せずに使用してもよい。
溶剤の含有量は、抗白癬菌性樹脂組成物の重量に基づいて80%以下、好ましくは70%以下である。
【0033】
本発明の抗白癬菌性樹脂組成物は、(1)抗白癬菌剤、必要によりその他の添加剤、並びに熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂が、それぞれ粉末状で混合された粉末状のままの形態のもの、(2)熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂が溶融した、もしくは溶解した連続相に、抗白癬菌剤などが分散した形態のもの、並びに、(3)全ての成分が相互に溶融もしくは溶解して混合された形態のものなど、いずれの形態であってもよい。
また、本発明の抗白癬菌性樹脂組成物は、後述の抗白癬菌性樹脂成型品に成型される前段階のものであり、その形状は、液状、粉末状、液状、ブロック状、ペレット状またはストランド状のいずれでもよい。成型のし易さの観点から好ましいのは液状、粉末状またはペレット状である。
【0034】
本発明の抗白癬菌性樹脂組成物の製造方法は例えば以下の方法が挙げられる。
樹脂が熱可塑性の場合は、
(1)抗白癬菌剤および液状(溶剤溶液状もしくは溶融状)の樹脂を所定濃度になるように配合し、混合機で均一に混合して、抗白癬菌剤が分散もしくは溶解した液状の抗白癬菌性樹脂組成物を得る方法。
(2)抗白癬菌剤および固状(粉末状もしくはペレット状など)の樹脂を所定割合で配合し、
加熱溶融混錬して、さらに粉末状もしくはペレット状の抗白癬菌性樹脂組成物を得る方法。
(3)上記の(1)もしくは(2)において予め高濃度の抗白癬菌剤を樹脂に配合したいわゆるマスターバッチ[(A)/樹脂=11〜60/89〜40重量比]を作成しておき、次いで抗白癬菌剤を含まない樹脂で所定濃度まで希釈し、必要により加熱溶融混錬して、さらに粉末状もしくはペレット状などにして抗白癬菌性樹脂組成物を得る方法。
樹脂が熱硬化性樹脂の場合は、
(1)抗白癬菌剤を混合可能な成分(熱硬化する前の成分)に予め配合した後に加熱溶融混錬して、さらにペレット状もしくは粉末状の抗白癬菌性樹脂組成物を得る方法。
なお、前述の添加剤を加える場合は、通常は、抗白癬菌剤と同時に添加される。
また、加熱溶融混練は、通常、ヘンシェルミキサーなどの混合機で混合した後に、2軸押出機などを用いて溶融混練(通常150〜250℃)して行われる。
【0035】
本発明の抗白癬菌性樹脂成形品は、上記の抗白癬菌性樹脂組成物を成形して得られるものであり、その形状はフィルム状、シート状、ブロック状、フォーム状または繊維状である。
抗白癬菌性樹脂成形品の製造方法は、
(1)フィルム状またはシート状の成型品の場合は、
液状の抗白癬菌性樹脂組成物を基材上に塗布し、加熱(溶剤を含む場合には加熱乾燥)してキャストし、必要により基材から剥がす方法、並びに粉末状もしくはペレット状の抗白癬菌性樹脂組成物を加熱溶融混練し、溶融状のまま基材上に塗布し、冷却して固化させ、必要により基材から剥がす方法、などが挙げられる。
(2)ブロック状(厚さの厚い、例えば0.3mm以上のシート状も含む)の場合は、
粉末状もしくはペレット状の抗白癬菌性樹脂組成物を加熱溶融混練し、引き続き連続的に加圧成型機もしくは射出成型機等により成型加工する方法などが挙げられる。
成型加工時の温度は、樹脂の種類によって適宜選択されるが、通常180〜250℃、好ましくは200〜230℃である。
(3)フォーム状の場合は、
樹脂の種類によって成形条件が異なるが、例えばポリウレタン樹脂の場合は、従来から公知のポリウレタン樹脂フォームの原料のうちの一つに抗菌性樹脂組成物を使用し、発泡成型する方法などが挙げられる。
(4)繊維状の場合は、
液状もしくは固状の抗白癬菌性樹脂組成物と繊維原料となる樹脂成分を混合し、湿式もしくは乾式で溶融紡糸し、繊維を形成する樹脂と一体化する方法、並びに、一般に繊維の加工方法として用いられている各種の方法が適用可能であるが、中でもパディング法、スプレー法、コーティング法、浴中吸着・吸尽法が好ましく用いられる(前記特許文献−2参照)。
本発明の抗白菌性樹脂組成物を含む繊維は耐洗濯性が良好である。
【0036】
本発明の成形品は、成形時に抗白癬菌剤の熱分解や変質を起こしにくいので、抗白癬菌性が低下したり成形品が着色するという問題が起こりにくい。
【0037】
本発明の成形品は浴槽・洗面台等のサニタリー用品、洗濯機等の家電用品、食卓・台所等の家庭用品、塩ビパイプ等の建築用品、ポリプロピレン・ポリエステル・ナイロン・スパンデックス等の繊維および繊維製品、ポリエチレンシート等の包装用品などの各種用途に使用できる。
【0038】
<実施例>
以下実施例および製造例により本発明をさらに説明するが本発明はこれに限定されるものではない。実施例中の部は重量部を示す。
【0039】
[(A1)の製造例]
製造例1
加熱冷却装置、攪拌機および滴下ロートを備えたガラス製反応容器に、メタノール56部、メチルジn−デシルアミン163部(0.88モル)、および炭酸ジメチル144部(1.6モル)を仕込み、120℃で20時間反応させた後、メタノールと炭酸ジメチルの一部を留去してジメチルジn−デシルアンモニウムメチルカーボネートの83%メタノール溶液250部(0.52モル)を得た。さらに、30〜60℃に昇温したのち、その温度に保ちながら42%四フッ化硼素酸水溶液114部(0.55モル)を2時間で徐々に加えた。その後、さらに、同温度で1時間攪拌した後、静置分液した上層を分取し、メタノールと水を減圧下、80〜100℃で留去して、さらに減圧乾燥(減圧度950hpa、105℃×3時間)した後、80℃で溶融状態にして、析出した塩を200メッシュ金網で濾過して除き、常温で固体のジメチルジn−デシルアンモニウム四フッ化硼素酸塩(A1−1)206部を得た。
【0040】
製造例2
製造例1と同様にして得られたジメチルジn−デシルアンモニウムメチルカーボネートの83%メタノール溶液250部(0.52モル)に、室温でトリフルオロメタンスルホン酸79.5部(0.53モル)を加え、2時間攪拌した。この反応溶液に粒状苛性カリを添加して中和(pH:6〜8)し、析出する塩を濾過後、濾液のメタノールを留去し、減圧乾燥(前記条件に同じ)して120℃で溶融状態にして取り出し、常温で固体のジメチルジn−デシルアンモニウムトリフルオロメタンスルホン酸塩(A1−2)250部を得た。
【0041】
製造例3
水1,100部に四フッ化硼素酸ナトリウム293部(2.67モル)と30%苛性ソーダ水溶液65部(0.49モル)を室温で配合し、さらにジメチルヤシ油アルキルベンジルアンモニウムクロライド80%メタノール溶液1058部(2.39モル)を加え2時間撹拌した。この反応溶液を50〜60℃でさらに攪拌した後、同温度で1時間静置した。下層(水層)を分液除去し、さらに上層のメタノールと水を留去して、常温で固体のジメチルヤシ油アルキルベンジルアンモニウム四フッ化硼素酸塩(A1−3)を得た。
【0042】
(A1−1)〜(A1−3)の各々の炭酸ジメチルエステルは検出限界(10ppm)以下であった。
【0043】
比較の抗白癬菌剤
比較の抗白癬菌剤として、銀ゼオライト(B−1)、2−(4'−チアゾリル)−ベンズイミダゾール(B−2)、塩化ジメチルジn−デシルアンモニウム(B−3)を使用した。
【0044】
実施例1〜2、比較例1〜3
抗白癬菌性ポリウレタン樹脂シートの作成:
撹拌機および温度計を備えた四つ口フラスコに、数平均(OH価から計算)分子量2,300のポリテトラメチレングリコール230部、分子量90の1,4−ブタンジオール21.1部、ジフェニルメタンジイソシアネート84.5部、n−プロピルアルコール2.03部およびジメチルアセトアミド503部を仕込み、乾燥窒素雰囲気下で70℃で5時間反応させ、次ぎにn−プロピルアルコール3.4部を加えて[この時の反応系中の遊離イソシアネート基含量は(樹脂固形分換算で)0.038重量%であった]1時間かけて末端停止反応を行い、樹脂濃度40重量%、粘度700,000mPa・s/20℃、数平均分子量65,000のポリウレタン樹脂溶液を得た。
表1もしくは表2に示す部数の抗白癬菌剤、および表1もしくは表2に示す部数のポリウレタン樹脂の部数となるように樹脂溶液を混合し、抗白癬菌性樹脂組成物を調製した。
これらの抗白癬菌性樹脂組成物を20cm×30cmのガラス板上に、乾燥後の厚さが2mmとなるように塗布し、これを70℃の真空下のもと、48時間乾燥させてキャストした。 キャスト後、ガラス板からシートを剥がして50mm×50mm×2mmに裁断し、抗白癬菌性ポリウレタン樹脂シートを得た。
【0045】
実施例3〜7、比較例4〜6
抗白癬菌性ポリプロピレン樹脂シートの作成:
表1もしくは表2に示す部数の抗白癬菌剤、および表1もしくは表2に示す部数のポリプロピレン樹脂[出光興産(株)製のポリプロピレン樹脂「E−105GM」]を配合し、ヘンシェルミキサーで混合した後、ベント付き2軸押出機にて200℃で溶融混練してペレット状の抗白癬菌性樹脂組成物を得た。さらにこれらのペレットを射出成型して、実施例および比較例の抗白癬菌性ポリプロピレン樹脂シート(50mm×50mm×2mm)を得た。
【0046】
<抗白癬菌性樹脂成形品の抗白癬菌性評価>
白癬菌として、Trichophyton mentagrophytesを用い、JIS L 1902に準拠して、以下の方法で抗白癬菌性を評価した。
供試菌をサブロー寒天培地で培養し、着生した胞子を生理食塩水で集め、ガーゼをつめたチップでろ過して胞子懸濁液を作成した。この胞子懸濁液を、無菌水で20倍に希釈した1/20サブロー液体培地を用いて胞子数約105〜106cells/mlに調整し、これを試験菌液とした。
【0047】
試験菌液2mlを試験片(上記樹脂シート)の数箇所に接種し、バイアル瓶中、室内光下30±1℃にて、所定の時間静置培養した。所定時間経過後(0時間の場合は、接種後直ちに)、洗い出し用生理食塩水20mlをバイアル瓶に加え、手振り(振幅約30cm、30回振盪)で菌を洗い出した。洗い出し液1mlを採取し、生理食塩水9mlの入った試験管に混ぜ、よく撹拌した。この試験管から1mlを採取し、別の試験管の生理食塩水9mlに入れて撹拌した。この操作を繰り返して、10倍希釈法による希釈系列を作成した。各希釈系列の試験管から0.1ml採取し、サブロー寒天培地に塗布した後、30℃で48時間培養した。30〜300個のコロニーが現れた希釈系列のシャーレのコロニー数を測定した。
【0048】
生菌数は、以下の計算式で求めた。
生菌数 M=Z×R×20
ここで、Zはコロニー数(2枚のシャーレの平均)、Rは希釈倍率である。
生菌数が少ないほど、抗白癬菌性が高いことを示している。なお生菌数が0は、コロニーが全く観察されないことを示しており、非常に高い抗白癬菌性を有していることを示している。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
表1および表2から、本発明の抗白癬菌性樹脂組成物からなる成形品(実施例1〜7)は、従来の抗白癬菌剤を含む成型品に比べて優れた抗白癬菌性があることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の抗白癬菌性樹脂組成物は、成形して抗白癬菌性樹脂成形品とされる。これらの成形品は、抗白癬菌性のブロック状物、シート状物、フィルム状物、フォーム状物または繊維状物などの形状であり、これらはさらに抗白癬菌性に優れた浴槽・洗面台等のサニタリー用品、冷蔵庫・洗濯機等の家電用品、食卓・台所等の家庭用品、塩ビパイプ等の建築用品、ポリプロピレン・ポリエステル・ナイロン・スパンデックス等の繊維および繊維製品、ポリエチレンシート等の包装用品などの各種用途に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対イオンが超強酸である第4級アンモニウム塩(A)からなる抗白癬菌剤、並びに熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂を含有してなる抗白癬菌性樹脂組成物。
【請求項2】
(A)が、一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩である請求項1記載の抗白癬菌性樹脂組成物。
【化1】

(式中、R1およびR2は同一の又は異なる、炭素数が1〜22の直鎖もしくは分岐の脂肪族炭化水素基、R3は炭素数が1〜22の直鎖もしくは分岐の脂肪族炭化水素基又は炭素数が7〜22のアリールアルキルもしくはアリールアルケニル基、R4は炭素数が8〜22の直鎖または分岐の脂肪族炭化水素基、X-は超強酸のアニオンを表す。)
【請求項3】
抗白癬菌性樹脂組成物の重量に基づく(A)の含有量が0.01〜10重量%である請求項1または2記載の抗白癬菌性樹脂組成物。
【請求項4】
さらに顔料、核剤、可塑剤、安定剤、充填材、難燃剤、酸化防止剤および紫外線吸収剤からなる群から選ばれる1種以上を含有してなる請求項1〜3のいずれか記載の抗白癬菌
性樹脂組成物。
【請求項5】
液状、粉末状またはペレット状である請求項1〜4のいずれか記載の抗白癬菌性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか記載の抗白癬菌性樹脂組成物を成形してなる抗白癬菌性樹脂成形品。
【請求項7】
フィルム状、シート状、ブロック状、フォーム状または繊維状である請求項6記載の成形品。

【公開番号】特開2006−321888(P2006−321888A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−145457(P2005−145457)
【出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】