説明

抗肥満作用を有する低分子多糖類を含む組成物、およびその性質を利用した組成物

【課題】サプリメントとして利用され得る抗肥満作用を有する組成物を提供する。
【解決手段】動物の肥満を防ぐための組成物であって、低分子多糖類を含み、該組成物は、該動物が摂取する食品または飼料と該低分子多糖類との重量比が1:130〜20:80の割合になるように該食品または飼料とともに摂取され、該低分子多糖類が約16個のD−グルコースからなり、かつ約6個のD−グルコースのホモグルコース鎖を単位とする螺旋構造をもつ組成物を提供する。好ましくは、この組成物は、さらにヒスチジン、カツオ抽出物または食物繊維を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗肥満作用または抗肥満作用を増強する性質をもつ、螺旋構造を備えた低分子多糖類を含む組成物に関する。本発明はまた、この低分子多糖類の抗肥満作用または抗肥満作用を増強する性質を利用した組成物に関する。本発明さらに、これら組成物を用いた肥満を防ぐ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒスチジンを多く含むタンパク質、例えば、魚介類タンパク質が有する摂食抑制作用は、その作用機序の解明も進み、ヒスチジンが体内で代謝され誘導体化されて生じるヒスタミンが、ヒスタミンニューロンを活性化することにより過食予防に寄与するとされている(非特許文献1〜12)。
【0003】
例えば、非特許文献1は、食事調査から、ヒスチジン高含有タンパク質が摂食量を抑制していることを示唆している。また、非特許文献2は、摂取されたヒスチジンが体内でヒスタミンに変換され、ヒスタミンニューロンを活性化することにより摂食抑制作用を示し、その傾向は女性の方が男性より顕著であったと記載している。非特許文献3は、BMIと体重当たりのヒスチジン摂取量との間に有意な負の相関があることを認めている。また、非特許文献4は、魚介類を摂取するとタンパク質摂取量当たりのヒスチジン摂取量が多くなり、正の相関関係が成立したことを認めている。非特許文献5は、体脂肪率の低い人ほどヒスチジン摂取量が多く、神経ヒスタミンを介した摂食抑制作用や脂肪分解作用によって体脂肪減少が起こり、肥満防止に繋がることを報告している。非特許文献6は、カゼイン、煮干しとあこや貝を与えた1週間のラット飼育結果から、ヒスチジンリッチの煮干しを与えた場合、体重増加が相対的に最も少なかったと報告している。非特許文献7は、ヒスチジン食(ヒスチジン4g/kg)とアルギニン食(アルギニン4g/kg)によるラット飼育実験から、体内に吸収されたヒスチジンが約1日で摂食抑制作用を示すことを報告している。非特許文献8は、ヒスチジン食(ヒスチジン4g/kg)とアルギニン食(アルギニン4g/kg)によるラット飼育実験から、飼料摂取量に有意差は認められないにもかかわらず、肝臓組織中の中性脂肪量がヒスチジン飼料群で有意に低い値を示したことから、ヒスチジンはエネルギー消費を亢進している可能性があることを記載している。非特許文献9は、ヒスタミンが摂食抑制作用を発現する濃度が、29mg/g飼料であると報告している。非特許文献10は、カツオ熱水抽出物を添加した飼料(ヒスタミン37mg/g)による摂食抑制および脂肪分解の促進を実証している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】中島滋、濱田稔ほか:低エネルギー摂取者に観察されたヒスチジン高含有タンパク質摂取による摂食抑制、日栄・食糧会誌 2000、53:207−214.
【非特許文献2】中島滋、田中香ほか:瀬戸内海浜地区の女性におけるエネルギー摂取量とヒスチジン摂取量との相関、肥満研究 2001、7:276−282.
【非特許文献3】辻真紀子、中島滋ほか:BMIとヒスチジン摂取量との相関、肥満研究 2002、8:302−305.
【非特許文献4】中島滋、田中香ほか:タンパク質を供給する食品群別にみたヒスチジン摂取量に関する調査研究、肥満研究 2004、10:66−72.
【非特許文献5】辻真紀子、笠岡誠一ほか:体脂肪率と体重当たりのヒスチジン摂取量との相関、肥満研究 2004、10:173−176.
【非特許文献6】中島滋、濱田稔ほか:Inhibitory effect of niboshi on food intake.Fishers Science 2000、66:795−797.
【非特許文献7】中島滋、笠岡誠一ほか:カフェテリア方式を用いたヒスチジン添加飼料によるラットの摂食抑制作用、肥満研究 2002、8:55−60.
【非特許文献8】笠岡誠一、中島滋ほか:ヒスチジン添加飼料によるラット肝組織の中性脂肪低下作用、肥満研究 2002、8:168−172.
【非特許文献9】Kasaoka S.Kasaoka Tら:Histidine supplementation suppresses food intake and fat accumulation in rats.Nutrition 2004、20:991−996.
【非特許文献10】笠岡誠一、鍋島美佳ほか:カツオ節製造工程で得られたヒスチジン高含有物質の摂食抑制および脂肪分解促進、肥満研究 2005、1:63−68.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような過食予防効果にもかかわらず、ヒスチジンは、体内に摂取されると、代謝を受けてヒスタミンに変換され、ヒスタミンが過剰になればアレルギー症状を発現し、過剰のヒスタミンとアレルギー症状発現との間には有意な相関があることが示されている。従って、ヒスチジンの過剰摂取を避けると同時にヒスチジンを利用した過食予防効果を得ることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記のヒスチジンの過剰摂取に付随する課題を解決するために、例えばデンプンから調製される、螺旋構造を備える低分子多糖類を利用する。本発明者らは、特定の螺旋構造を備える低分子多糖類が、抗肥満作用または抗肥満作用を増強する性質を有することを見出し、本発明を完成するに至った。この低分子多糖類は、それ自体抗肥満作用を有するとともに、ヒスチジンとともに存在することによって互いのもつ抗肥満作用を相乗的に増大する。
【0007】
より特定すれば、本発明は以下の項目に関し得る。
(項目1)動物の肥満を防ぐための組成物であって、低分子多糖類を含み、上記組成物は、上記動物が摂取する食品または飼料と上記低分子多糖類との重量比が1:130〜20:80の割合になるように上記食品または飼料とともに摂取され、上記低分子多糖類が約16個のD−グルコースからなり、かつ約6個のD−グルコースのホモグルコース鎖を単位とする螺旋構造をもつ、組成物。
(項目2)さらにヒスチジン、カツオ抽出物または食物繊維を含む、項目1に記載の組成物。
(項目3)上記ヒスチジンと上記低分子多糖類とを、約1:10〜約1:127の割合の重量比で含む、項目2に記載の組成物。
(項目4)上記低分子多糖類と上記食物繊維とを、約1:1の重量比で含む、項目2に記載の組成物。
(項目5)錠剤、顆粒カプセル製剤およびクッキーからなる群から選択される形態である、項目1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【0008】
上記低分子多糖類は、約16個のD−グルコースからなり、約3、000の分子量を有し、約6個のD−グルコースのホモグルコース鎖を単位とする螺旋構造を備えるホモグルコース体であって、水溶性であり、例えば、デンプンから調製され得る。
【0009】
好ましくは、上記低分子多糖類は、螺旋の1巻きがD−グルコース残基6個からなる右巻き螺旋構造を有し得、その結果、その螺旋の中央にヨウ素分子Iが取り込まれてヨウ素呈色反応で発色するような構造を有している。このような低分子多糖類は、例えば、備前化成株式会社(岡山県赤磐市徳富363)からポタコーゲン(登録商標)として市販され入手可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ヒスチジンと、螺旋構造を有する低分子多糖体、代表的にはポタコーゲン(登録商標)との組み合わせによって、従来知られている摂食抑制を発現し、抗肥満作用を得るためのヒスチジンの使用量の低減化を可能とし、かつ同時に動物の組織の脂肪量を相乗的に低減することができる。
【0011】
このポタコーゲン(登録商標)は、体重増加作用があることが知られるフルクトースを利用したフルクトース負荷ラットにおいても、動物の皮下脂肪低下作用(下腹部皮下脂肪;19%低下、腹腔内脂肪;24%低下)を示すことが明らかとなり、ヒスチジンとポタコーゲン(登録商標)との併用により、抗肥満作用を得るためのヒスチジンの使用量の低減化とともに、動物の皮下脂肪を相乗的に低減する効果を期待できる。また同様に、ポタコーゲン(登録商標)は、おからなどの食物繊維と組み合わせることにより動物の皮下脂肪量または体脂肪量を相乗的に減少する作用を期待できる。従って、本発明をヒトおよびペットを含む動物に応用して、肥満解消に役立てることができる。
【0012】
本発明の水溶性多糖類は、それ自体が抗肥満作用を有し、さらに、ヒスチジンと併用することによって、抗肥満効果を得るために必要なヒスチジンの使用量を低減し、体脂肪を相乗的に低減する。本発明によれば、この水溶性多糖類を用いて、抗肥満作用が増強された複合製剤または食品組成物が製造される。
【0013】
本発明により、抗肥満作用のあるヒスチジンとポタコーゲン(登録商標)との組み合わせにより相乗作用を発現して、抗肥満作用を得るためのそれぞれの成分の使用量を低減して、体脂肪減少作用を示す錠剤、顆粒カプセル製剤またはクッキーなどのパン・菓子類を製造する方法で、ヒトおよびペットなどに適用して健康維持に役立て得る。
【0014】
本発明により、ヒスチジンの体脂肪減少作用を相乗的に増強するために、低分子多糖類とヒスチジン、またはおからなどの食物繊維とを含む食品組成物を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の組成物の抗肥満作用を示す図である。図に示されるグラフの縦軸は、実験に用いたラットの下腹部皮下脂肪含量を表し、図の横軸は実験群を表し、図中左から、普通群、対照群、試験対照群、PoG群をそれぞれ示す。
【図2】本発明の組成物の抗肥満作用を示す図である。図に示されるグラフの縦軸は、実験に用いたラットの腹腔内白色脂肪含量を表し、図の横軸は実験群を表し、図中左から、普通群、対照群、試験対照群、PoG群をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書で用いる用語「抗肥満作用」は、食物もしくは飼料、または食物もしくは飼料の一部として動物に摂取された場合、この動物の摂食量を適正に抑制し、その結果として、この動物の体重の増加を抑制または減少する作用、またはこの動物の体脂肪または組織の皮下脂肪含量を増加を抑制または減少する作用をいう。本発明の組成物は、通常、摂取される飼料または食物のサプリメント(本明細書では「食品類または食品添加物類」とも称される)として摂取され得る。
【0017】
好ましくは、本発明の組成物は、摂取される飼料または食物のサプリメントとして用いられ、この組成物は、上記動物が摂取する食品または飼料と該低分子多糖類との重量比が1:130〜20:80の割合になるように該食品または飼料とともに摂取される。
【0018】
好ましくは、本発明の組成物は、上記ヒスチジンと上記低分子量多糖類とを、約1:5〜約1:127の重量比の割合で含み、さらに好ましくは、本発明の組成物は、上記ヒスチジンと上記低分子量多糖類とを、約1:10重量比の割合で含む。
【0019】
また好ましくは、本発明の組成物は、上記低分子量多糖類と上記カツオ抽出物または食物繊維とを、約1:2〜2:1の範囲の重量比の割合で含み、さらに好ましくは、本発明の組成物は、上記低分子量多糖類と上記カツオ抽出物または食物繊維とを、約1:1の重量比の割合で含む。なお、本明細書で%について言及する場合、特に指定がなければ、重量%を意味する。
【0020】
本発明の組成物が適用される上記「動物」は、制限されずに、霊長類、哺乳類、は虫類、両生類または鳥類に属する動物、ペット動物、家畜類などを含む。
【0021】
本発明の組成物の抗肥満作用を示すに有効な量は、適切な哺乳動物モデルによって容易に確認され得る。次に、このような情報を用いて、さらにはヒトにおける摂取に有用な量を決定し得る。ヒトにおける「抗肥満作用を示すに有効な量」は、例えば、本明細書に記載されるラットを用いた実験に準じて容易に決定され得る。または、本発明の組成物は、有害成分を含まないので、ヒトにおける「抗肥満作用を示すに有効な量」はヒトに摂取されて容易に確認され得る。
【0022】
実際に飼料または食物とともに摂取されて抗肥満作用を示す上記低分子多糖類、上記低分子多糖類、およびヒスチジン、カツオ抽出物または食物繊維の量は、適用される個体の体重、健康状態などに依存し得、抗肥満作用が最適に達成されるように調整され得る。
【0023】
上記錠剤、顆粒カプセル製剤は、打錠加工助剤、顆粒加工助剤、カプセル加工助剤を用いて調製され得る。
【0024】
本明細書で用いられる用語「打錠加工助剤」は、制限されずに、グラニュー糖、上白糖、粉糖、還元麦芽糖水飴粉末、乳糖、ブドウ糖、プルラン、エリスリトール、デンプン、デキストリンなどあらゆる糖類、結晶セルロース、アラビアガム、おからなどの食物繊維類、トウモロコシタンパク、リン酸カルシウムなどの食品カルシウム、食品エキス類、食品乾燥粉末類、天然果汁末類、ショ糖脂肪酸エステルなどの界面活性剤、粉末油脂類、グリセリン、脂肪酸エステルなどの油脂類、またはチュワブル錠(食べる錠剤)に使用する各種甘味料、各種酸味料、各種香料などの味付け素材、コーティング素材またはとしてのシェラック、トウモロコシタンパク、酵母細胞壁、デンプン、還元麦芽糖水飴、シュガーレス糖衣、マルチトール、グリセリン、ソルビトール、HPMC、HPCを含む。
【0025】
本明細書で用いられる用語「顆粒加工助剤」は、制限されずに、グラニュー糖、上白糖、粉糖、還元麦芽糖水飴粉末、乳糖、ブドウ糖、プルラン、エリスリトール、デンプン、デキストリンなどあらゆる糖類、結晶セルロース、アラビアガムなどの食物繊維類、トウモロコシタンパク、リン酸カルシウムなどの食品カルシウム、食品エキス類、食品乾燥粉末類、天然果汁末類を含む。
【0026】
本明細書で用いられる用語「カプセル加工助剤」は、制限されずに、ハードカプセルタイプのカプセルを調製するための、グラニュー糖、上白糖、粉糖、還元麦芽糖水飴粉末、乳糖、ブドウ糖、プルラン、エリスリトール、デンプン、デキストリンなどあらゆる糖類、結晶セルロース、アラビアガムなどの食物繊維類、トウモロコシタンパク、リン酸カルシウムなどの食品カルシウム、食品エキス類、食品乾燥粉末類、天然果汁末類を、そしてソフトカプセルタイプのカプセルを調製するための、食品油脂、ミツロウ、グリセリン脂肪酸エステルなどの内容物粘度調整剤を含む。
【0027】
打錠製剤は、通常、打錠機を使用して調製される。そして打錠製剤に味付け素材をブレンドしてチュワブル錠にしたり、錠剤表面を自動コーティング機、噴霧顆粒機または手掛けパンを用いてコーティングされる。顆粒製剤の成形には、噴霧顆粒機タイプ、練りだし(押し出し)タイプまたは高速撹拌顆粒機タイプの各種顆粒機が使用され得る。カプセル製剤の調製には、カプセル助剤を混合してカプセル充填機(ハードタイプおよびソフトタイプ)が使用され得る。
【実施例】
【0028】
本発明を、以下の記載の実施例を用いて説明する。以下の実施例は、本発明を制限する意図はなく、本発明の単なる例示に過ぎない。
【0029】
(実施例1)低分子多糖類の抗肥満効果
1.検体、飼料および動物
MF標準飼料(オリエンタル酵母工業(株))にポタコーゲン(登録商標)20%を添加して検体とした。SD系ラット(雌性、7週齢)は、日本チャールズ・リバー(株))から購入した。
【0030】
2.実験方法
1群6匹のSD系メスラットを3群用意した。対照群およびポタコーゲン(登録商標)投与群(実験群)には25%フルクトース水溶液を、正常群には水道水を飲料水として4週間自由摂取させた。その間、実験群には20%ポタコーゲン(登録商標)含有飼料を、対照群および正常群には標準飼料を自由に摂取させた。
【0031】
3.実験結果
飼育開始15日以降は実験群の体重は、対照群に比較して僅かに減少傾向を示した。対照群と実験群は、27日間の飼育期間におけるラット一匹当たりの一日平均攝餌量は9.27gで、約14gであった正常群の一日平均攝餌量より少なかった。また、フルクトースの一日平均摂取量は、対照群では実験群よりやや高めに推移したものの、23〜25mL/日/匹であった。
【0032】
実験最終日にラットを犠牲にし、下腹部皮下脂肪および腹腔内脂肪を摘出してこれらの重量を測定比較した。その結果、対照群と比較して実験群では、下腹部皮下脂肪が24.8%、そして腹腔内白色脂肪が19.3%少なかった。この結果より、ポタコーゲン(登録商標)は、体重増加作用のあることが知られるフルクトースの存在下でも、体重減少作用および皮下脂肪含量を減少する作用を示し、抗肥満効果を有することが明らかとなった。
【0033】
(実施例2)
1.検体、飼料および動物
ポタコーゲン(登録商標)50%、L−ヒスチジン5%、L−シトルリン7.5%、粉末マビット50M 35.5%、シュガーエステル1%および第三リン酸カルシウム1%配合の粉末(以下、PoG−His配合末という。)を作製して検体とした。
【0034】
高脂肪高ショ糖食(牛脂、ラードなどの脂肪含量30%、オリエンタル酵母工業(株))、MF標準飼料(オリエンタル酵母工業(株))およびSD系メスラット(7週齢、日本チャールズ・リバー(株))をそれぞれ購入して準備した。
【0035】
2.実験方法
SD系メスラットを4群(各5匹)に分け、対照群には高脂肪高ショ糖食餌を、試験対照群にはラットMF標準飼料を10%となるように高脂肪高ショ糖食餌に混合した餌を、PoG群として検体であるPoG−His配合末を高脂肪高ショ糖食餌に10%混合した餌を、そして普通群としてラットMF標準飼料をそれぞれ自由摂取させ、下記の項目(1〜4)について試験した。PoG群の餌1g中にはポタコーゲン(登録商標)50mg、L−ヒスチジン5mgが含まれている。
(1)体重を、実験開始日と実験開始後3日間おきに連続39日間測定した。
(2)実験最終日に、ラットを犠牲にして下腹部皮下脂肪、腹腔内白色脂肪を摘出し、これらの脂肪を測定した。
(3)各群の餌摂取量は、実験開始前一週間から実験終了までに三日間おきにラット一匹当たりの平均摂取量を算出した。
(4)統計解析は、平均値の差の検定をDunnett,t−試験により行い、p<0.05、p<0.01をそれぞれ有意差あり*、**とした。
【0036】
3.結果
高脂肪高ショ糖食投与群(対照群)のラットは、39日間の飼育によって、MF標準飼料投与群(普通群)のラットと比較して、平均で2.5倍以上の体重増加を示した。そして10%MF標準飼料を添加した高脂肪高ショ糖食投与群(試験対照群)は、高脂肪高ショ糖食投与群(対照群)より平均体重が約11%減少したにもかかわらず、10%PoG−His配合末添加の高脂肪高ショ糖食投与群(PoG群)では約26%の体重減少を認めた。
【0037】
その体重減少の中身として体脂肪含量を調べた結果次のようであった。すなわち、PoG群の下腹部皮下脂肪含量は、試験対照群のそれより平均で約34%減少していた(図1)。また、PoG群の腹腔内白色脂肪含量は試験対照群のそれより平均で約48%減少していた(図2)。このようにPoG−His配合末添加の高脂肪高ショ糖食投与により、ラット下腹部皮下脂肪および腹腔内白色脂肪の増加を有意に減少させることが明らかとなった。ラットの餌の1日平均摂取量は普通群で約16.4gであり、その一方、対照群と試験対照群実験群の2群のいずれとも約14gであり、高脂肪高ショ糖食餌群では摂食抑制作用が認められた。これはMF標準飼料より高脂肪高ショ糖食の方が高エネルギーであることによると考えられる。
【0038】
(実施例3)
1.検体、飼料および動物
クッキーの基剤として薄力粉24.47%、砂糖10%、無塩バター31.55%、甘味料(ステビア)0.1%、トレハロース5.62%、全卵5.26%、デキストリン3.85%を混合した。別にポタコーゲン(登録商標)とカツオ抽出物(ヒスチジン含有:以下に記載のように調製した。)、および、おから(スーパーマーケットなどで市販されているもの)を150:75:150の比率で混合したサンプルAとポタコーゲン(登録商標)とおからを150:150の比率で混合したサンプルBを調整した。サンプルAおよびサンプルBのそれぞれを、上述の基剤に19.15%添加して全体として100%となったものをそれぞれサンプルIおよびサンプルIIのクッキーとして作製した。
【0039】
−カツオ抽出物の調製法−
花かつお500gを蒸留水4Lに入れ、沸騰させて2時間加温抽出した。放冷後、濾過して濾液を集めた。濾別した花かつおに再び蒸留水4Lを加え沸騰させてさらに1時間加温抽出した。放冷後、同様に濾過して濾液を集め、先の濾液と合わせた後、240mLまで減圧濃縮した。得られた濃縮液にエタノールを添加し、生じた沈殿物を濾過によって集め、カツオ抽出物を得た(11.4g)。沈殿物の一部を水に溶かし、薄層クロマトグラフィー(展開液;n−ブタノール:氷酢酸:エタノール:蒸留水=4:1:1:2で展開し、ヒスチジンのスポットを確認した。)
サンプルIおよびサンプルIIを粉砕して粉末としたものを一定の割合で高脂肪高ショ糖食に添加した。サンプルI中のヒスチジン含量はアミノ酸自動測定器による測定結果0.6mg/gであった。ポタコーゲン(登録商標)はサンプルIの1g中に76.6mg含まれる。
【0040】
高脂肪高ショ糖食(牛脂、ラードなどの脂肪含量30%、オリエンタル酵母工業(株))、MF標準飼料(オリエンタル酵母工業(株))およびSD系メスラット(6週齢、日本チャールズ・リバー(株))をそれぞれ購入して準備した。
【0041】
2.実験方法
SD系メスラットを4群(各6匹)に分け、対照群にはラットMF標準飼料が10%となるように、高脂肪高ショ糖食餌に混合して自由摂取させた。また、検体であるサンプルIおよびサンプルIIのクッキーを粉砕後それぞれ高脂肪高ショ糖食餌に10%混合した餌を実験群群とし、普通群にはラットMF標準飼料をそれぞれ自由摂取させ、下記の項目(1〜4)を試験した。
(1)体重を実験開始日と実験開始後1週間おきに連続6週間測定した。
(2)実験最終日にラットを犠牲にして下腹部皮下脂肪、腹腔内白色脂肪を摘出し、これらの重量を測定した。
(3)各群の餌摂取量は実験開始前一週間から実験終了までに三日間おきにラット一匹当たりの平均摂取量を算出した。
(4)統計解析は、平均値の差の検定をDunnett,t−試験により行い、p<0.05、p<0.01をそれぞれ有意差あり*、**とした。
【0042】
3.結果
高脂肪高ショ糖食投与によるラット体脂肪蓄積に対する、ポタコーゲン(登録商標)とヒスチジンとを含有するクッキーの抗肥満作用を検討した。
【0043】
高脂肪高ショ糖食投与群(対照群)のラットは、6週間の飼育により、MF標準飼料投与群(普通群)のラットと比較して、平均で約2.3倍の体重増加を示した。これに対し、サンプルIおよびサンプルII添加の実験群では、対照群のラットと比較して、それぞれ、平均で34.3%および27.8%の体重減少が認められた。また、腹部皮下脂肪含量の変化は、サンプルIおよびサンプルIIのクッキー添加実験群のラットでは、対照群のラットと比較して、それぞれ平均で39.2%と31.7%の減少が認められた。腹腔内白色脂肪の変化は、サンプルIおよびサンプルIIのクッキー添加実験群のラットでは、対照群のラットと比較して、それぞれ平均で54.9%と49.3%と著しい減少が認められた。
【0044】
このようにサンプルIおよびサンプルIIのクッキーを添加した高脂肪高ショ糖食摂取により、ラット下腹部皮下脂肪および腹腔内白色脂肪の増加を有意に減少させることが明らかとなった。
【0045】
また、サンプルIIのクッキー添加実験群の結果から、ラット下腹部皮下脂肪量および腹腔内白色脂肪量が減少していることから、ポタコーゲン(登録商標)とおからの組み合わせによっても、体脂肪の増加を有意に減少させることが明らかとなった。ラットの餌の1日平均摂取量は、普通群で約16gであり、対照群と実験群の2群のいずれとも約14gであり、高脂肪高ショ糖食餌群では摂食抑制作用が認められた。
【0046】
(実施例4)
ポタコーゲン(登録商標):L−ヒスチジン:L−シトルリン=10:1:1.5の比率混合物を作り、混合粉末Aとした。混合粉末Aを62%、還元麦芽糖水飴粉末35.5%、ショ糖脂肪酸エステル1%、第三リン酸カルシウム1%を混合し、直径8mm、250mg/粒の打錠品を成形した。一粒の数値は平均重量249.7g/粒、錠剤硬度平均値12.5kg/cm、錠厚平均値4.9mmであった。
【0047】
混合粉末Aの添加量は95%〜10%で打錠可能であり、錠剤の重量形状に合わせて含有量をコントロールできる。1錠中のポタコーゲン(登録商標)、L−ヒスチジンおよびL−シトルリンの計算上の含量は、それぞれ124mg、12.4mg、および18.6mgである。
【0048】
(実施例5)
混合粉末Aを34%、還元麦芽糖水飴粉末25%、トレハロース10%、酸味料5%、高甘味料0.2%ミルクカルシウム3%、フルーツ香料1%、果汁粉末3%、デキストリン48.8%の重量割合で噴霧顆粒機を使用し、その際の噴霧液として水を使用して顆粒化した。本品は流動性のよい酸味と甘味のあるフルーツ系の顆粒が製造できた。混合粉末Aは1%〜90%の含量で増粘剤である糊剤溶液90〜10%を添加して噴霧顆粒化は可能である。
【0049】
(実施例6)
混合粉末A98%、第三リン酸カルシウム1%、ショ糖脂肪酸エステル1%の混合物をハードカプセル充填機にてカプセル錠を製造した。
【0050】
(実施例7)
混合粉末A37%、植物油55%、ミツロウ・グリセリン脂肪酸エステル8%の重量割合で混合しソフトカプセル充填製剤が得られた。
【0051】
(まとめ)
1.先ず、ポタコーゲン(登録商標)の脂肪の低減効果を実施例1によって検討した。その結果、4週間の飼育期間中に、25%フルクトース水溶液を自由摂取させた実験群において、ポタコーゲン(登録商標)0.2g/餌1gを含む飼料を与えた群のラットでは、ポタコーゲン(登録商標)を含まない飼料を与えた対照群と比較して、下腹部皮下脂肪が24.8%、腹腔内白色脂肪が19.3%減少していた。この結果よりポタコーゲン(登録商標)は体重増加作用のあるフルクトースの存在下においても体重減少作用および動物の組織の皮下脂肪含量を減少する作用を示すことが明らかとなった。
【0052】
ポタコーゲン(登録商標)の脂肪を減少されるメカニズムは、ポタコーゲン(登録商標)の投与により、インスリンが上昇し、インスリン感受性ホルモンのレプチンに作用して、AMPキナーゼを活性化し、活性化されたAMPキナーゼが脂質代謝を調節し(Minokoshi、Yら:Leptin stimulates fatty acid oxidation by activating AMP−activated protein kinase、Nature、415:339−343、2002)、脂肪酸を燃焼させて脂肪分を減少したと推測される。
【0053】
2.ヒスチジンとポタコーゲン(登録商標)との組み合わせによって、ヒスチジンの使用量を非特許文献9に記載されるヒスタミンの摂食抑制作用発現濃度29mg/gより低い濃度で体脂肪減少効果を示すか否かを検討した(実施例2)。実施例2では、SD系メスラットを4群(各5匹)に分け、対照群には高脂肪高ショ糖食餌、試験対照群にはラットMF標準飼料を10%高脂肪高ショ糖食餌に混合し自由摂取させた。また、検体であるヒスチジンとポタコーゲン(登録商標)の配合末を高脂肪高ショ糖食餌に10%混合した餌をPoG群とし、普通群にはラットMF標準飼料をそれぞれ自由摂取させ、4群のラットを連続39日間飼育後犠牲にして体重、腹部皮下脂肪含量、腹部皮下脂肪含量を測定した。PoG群の餌1g中にはポタコーゲン(登録商標)50mg、L−ヒスチジン5mgが含まれる(実施例2)。ポタコーゲン(登録商標)50mgとL−ヒスチジン5mgでその比率は10:1となっているが、その比率に限定されるものではない。
【0054】
高脂肪高ショ糖食投与群(対照群)のラットはMF標準飼料投与群(普通群)のラットより39日間の飼育により2.5倍以上の体重増加を示した。そして10%MF標準飼料添加高脂肪高ショ糖食投与群(試験対照群)は、高脂肪高ショ糖食投与群(対照群)より体重が約11%減少にもかかわらず、10%PoG−His配合末添加の高脂肪高ショ糖食投与群(PoG群)では約26%の体重減少を認めた。その体重減少の中身として脂肪含量を調べた結果次のようであった。すなわち、PoG群の腹部皮下脂肪含量は試験対照群のそれよりより約34%減少した。また、PoG群の腹腔内白色脂肪含量は試験対照群のそれよりより約48%減少した。このようにPoG−His配合末添加の高脂肪高ショ糖食投与によりラット下腹部皮下脂肪および腹腔内白色脂肪の増加を有意に減少させることが明らかとなった。
【0055】
この結果、餌1g中にポタコーゲン(登録商標)50mg、L−ヒスチジン5mgが含まれている。これは実施例1で示したポタコーゲン(登録商標)含有量0.2g/餌1gより低含量であり、また、非特許文献9記載のヒスタミンの摂食抑制作用発現濃度29mg/gより低含量で体脂肪減少効果を示している。このことより、ヒスチジンとポタコーゲン(登録商標)との組み合わせによって体脂肪減少に対して相乗効果を示すことが明らかになった。
【0056】
3.さらに、ヒスチジンとポタコーゲン(登録商標)の相乗効果を明らかにするために、ヒスチジンとポタコーゲン(登録商標)とを添加したクッキーによるラットに対する影響(6週間飼育)を調べて次のような結果を得た(実施例3)。
【0057】
高脂肪高ショ糖食投与群(対照群)のラットはMF標準飼料投与群(普通群)のラットより6週間の飼育により約2.3倍の体重増加を示した。それに対して、餌1g中にヒスチジン含量0.6mg/gとポタコーゲン(登録商標)は76.6mg含量のクッキーでは対照群のそれの34.3%の体重減少がみとめられた。また、腹部皮下脂肪含量と腹腔内白色脂肪の変化は対照群のそれぞれ39.2%と54.9%と著しい減少が認められ、ヒスチジンとポタコーゲン(登録商標)との組み合わせによって体脂肪減少に対してヒスチジンとポタコーゲン(登録商標)の両者とも低含量で相乗効果を示すことが明らかになった。
【0058】
実施例3の餌には廃棄物利用の目的で食物繊維高含有量のおからを増量の目的で使用したが、ポタコーゲン(登録商標)とおからを共に餌1g中に76.6mg添加したクッキーによって、対照群のそれの27.8%の体重減少がみとめられた。また、腹部皮下脂肪含量と腹腔内白色脂肪の変化は対照群のそれぞれ31.7%と49.3%と著しい減少が認められた。これにより、ラットの体脂肪減少に対してポタコーゲン(登録商標)とおからの組み合わせも有効であることが明らかになった。おからの代わりに結晶セルロース、アラビアガムおよびアルギン酸などの水溶性植物繊維を含む食物繊維類を利用することも考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
抗肥満作用を有する組成物が提供される。この組成物は、飼料または食品のサプリメントとして添加されて、ヒトおよびペットを含む動物に応用して、肥満解消に役立てることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物の肥満を防ぐための組成物であって、低分子多糖類を含み、該組成物は、該動物が摂取する食品または飼料と該低分子多糖類との重量比が1:130〜20:80の割合になるように該食品または飼料とともに摂取され、該低分子多糖類が約16個のD−グルコースからなり、かつ約6個のD−グルコースのホモグルコース鎖を単位とする螺旋構造をもつ、組成物。
【請求項2】
さらにヒスチジン、カツオ抽出物または食物繊維を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ヒスチジンと前記低分子多糖類とを、約1:10〜約1:127の割合の重量比で含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記低分子多糖類と前記食物繊維とを、約1:1の重量比で含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
錠剤、顆粒カプセル製剤およびクッキーからなる群から選択される形態である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−32237(P2011−32237A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181574(P2009−181574)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(391007356)備前化成株式会社 (16)
【Fターム(参考)】