説明

抗酸化剤及び抗酸化剤組成物

【課題】優れた過酸化脂質生成抑制効果を有する抗酸化剤、及びこの抗酸化剤を配合してなる抗酸化剤組成物を提供する。
【解決手段】(A)パーム油カロテン、リコピン及びルテインから選ばれる1種又は2種以上と、(B)トコフェロール及びトコトリエノールから選ばれる1種又は2種以上と、(C)コエンザイムQ10とを有効成分とする抗酸化剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた過酸化脂質生成抑制効果を有する抗酸化剤、及びこの抗酸化剤を配合してなる抗酸化剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カロテノイド類、ビタミンE様物質等は、食品、化粧品、飼料等の抗酸化物質として利用することが提案されている(例えば、特許文献1:特開平6−189711号公報、特許文献2:特開平6−263647号公報、特許文献3:特開平9−9939号公報、特許文献4:特開平8−176005号公報参照。)。しかしながら、さらに優れた抗酸化効果、特に過酸化脂質生成抑制効果を有する抗酸化剤が望まれていた。
【0003】
【特許文献1】特開平6−189711号公報
【特許文献2】特開平6−263647号公報
【特許文献3】特開平9−9939号公報
【特許文献4】特開平8−176005号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、優れた過酸化脂質生成抑制効果を有する抗酸化剤、及びこの抗酸化剤を配合してなる抗酸化剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、(A)パーム油カロテン、リコピン及びルテインから選ばれる1種又は2種以上と、(B)トコフェロール及びトコトリエノールから選ばれる1種又は2種以上と、(C)コエンザイムQ10とを組み合わせて用いることで、それぞれ単独では得られない顕著な過酸化脂質生成抑制効果を有し、優れた抗酸化剤を得られることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0006】
従って、本発明は
[1].(A)パーム油カロテン、リコピン及びルテインから選ばれる1種又は2種以上と、(B)トコフェロール及びトコトリエノールから選ばれる1種又は2種以上と、(C)コエンザイムQ10とを有効成分とする抗酸化剤、
[2].上記(A)、(B)及び(C)成分のモル比が、(A):(B):(C)=25〜50:30〜70:0.1〜35である[1]記載の抗酸化剤、
[3].[1]又は[2]記載の抗酸化剤を配合してなる抗酸化剤組成物を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、顕著な過酸化脂質生成抑制効果を有する抗酸化剤、及びこの抗酸化剤を配合してなる抗酸化剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の抗酸化剤は、(A)パーム油カロテン、リコピン及びルテインから選ばれる1種又は2種以上と、(B)トコフェロール及びトコトリエノールから選ばれる1種又は2種以上と、(C)コエンザイムQ10とを有効成分とする抗酸化剤であり、抗酸化剤製造のために上記(A)、(B)及び(C)成分からなる混合物を使用することができる。
【0009】
本発明の(A)成分は、パーム油カロテン、リコピン及びルテインから選ばれる1種又は2種以上である。パーム油カロテンはβ−カロテン、α−カロテン、γ−カロテン等が挙げられる。リコピンはトマトやパーム油等に含まれるカロテノイドである。ルテインは緑色の葉の中や卵黄に含まれるカロテノイドである。これらは天然物由来のものでも、合成品でもよい。
【0010】
(A)成分としては、β−カロテン及びα−カロテンを含有するパーム油由来のカロテンであるパーム油カロテンが好適に用いられる。例えばパーム油カロテンの組成は、β−カロテン55〜70質量%、α−カロテン40〜20質量%、β−カロテン及びα−カロテンの合計量85〜97質量%、γ−カロテン及びリコピン3〜15質量である。パーム油カロテンの調製方法は公知の方法が採用できる。例えば、パーム油を低級モノアルコールでアルコリシスし、得られた脂肪酸低級アルキルエステルを親水性溶媒、具体的にはメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトンを用いて希釈し、次いで水を添加することにより析出物を得、次いで本析出物を減圧蒸留、ケイ酸カラムを用いて精製する方法等を用いることができる。
【0011】
(A)成分としては、パーム油カロテン、リコピン及びルテインを併用することがより好ましい。
【0012】
(B)成分はトコフェロール及びトコトリエノールから選ばれる1種又は2種以上である。トコフェロールは植物油等に含まれる脂溶性ビタミンで、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロールの4種が挙げられる。トコトリエノールは、トコフェロールの関連化合物でα−トコトリエノール、β−トコトリエノール、γ−トコトリエノール、δ−トコトリエノールの4種が挙げられる。これらは天然物由来のものでも、合成品でもよい。
【0013】
(C)成分はコエンザイムQ10であり、ユビキノン類の1種である。人の細胞中のミトコンドリアに存在する補酵素で、細胞を活性化させ人体のエネルギー産生に不可欠な成分である。
【0014】
本発明の抗酸化剤は、(A)パーム油カロテン、リコピン及びルテインから選ばれる1種又は2種以上と、(B)トコフェロール及びトコトリエノールから選ばれる1種又は2種以上と、(C)コエンザイムQ10とを有効成分とする抗酸化剤であるが、上記(A)、(B)及び(C)成分のモル比が、(A):(B):(C)=25〜50:30〜70:0.1〜35の範囲とすることで、過酸化脂質生成抑制効果を特に発揮することができる。
【0015】
本発明の(A)パーム油カロテン、リコピン及びルテインから選ばれる1種又は2種以上と、(B)トコフェロール及びトコトリエノールから選ばれる1種又は2種以上と、(C)コエンザイムQ10とからなる抗酸化剤の摂取量は、各々の成分で異なっており、(A)に含まれるカロテノイドでビタミンA活性を有するα−カロテンやβ−カロテン等についてはビタミンAとして上限量が「日本人の食事摂取基準(2005年版)」に記載されている。また、栄養機能食品と称して販売する場合、ビタミンAとして135〜600μgと定められている。(B)に含まれる成分としては、α−トコフェロールについて「日本人の食事摂取基準(2005年版)」に上限量が記載されている。また、栄養機能食品として販売する場合は、α−トコフェロールとして2.4mg〜150mgと定められている。(C)については、厚生労働省から医薬品として用いられる量(1日30mg)を超えないようにとの通知が出されている。(A)〜(C)いずれも、その範囲内が望ましい。また、その摂取方法は特に限定されず、食事等に左右されることなく、1日の有効量を摂取すればよい。
【0016】
本発明の抗酸化剤は、例えば適宜油に溶解したり、分散させたりして用いることができ、飲食品、健康食品、保健機能食品等の飲食品、医薬部外品及び医薬品等の医薬品として用いることができる。剤型は限定されず、他の成分を添加して、ソフトカプセル、顆粒、顆粒又は粉末を打錠したタブレット、飲料等の経口剤、注射剤、点滴剤等の非経口剤等の剤型にし、公知の方法で得ることができる。この場合の(A)、(B)及び(C)成分からなる抗酸化剤の配合量は有効量であれば特に限定されないが、抗酸化剤組成物中2〜50質量%の範囲が好ましい。
【0017】
本発明の抗酸化剤は、優れた過酸化脂質生成抑制効果を有するため、過酸化脂質生成抑制剤、老化防止剤、しみ、しわの予防剤や改善剤、過酸化脂質生成抑制用食品、老化防止用食品、しみ・しわ予防・改善用食品としても好適である。
【実施例】
【0018】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において、特に明記がない場合は、組成の「%」は質量%、表1中の各成分の量は純分換算した量である。
【0019】
[実施例1〜8、比較例1〜3]
表1に示す組成の混合物のクロロホルム溶液を調製し、In vitro系での脂質過酸化に対する抗酸化効果を評価した。結果を表中に併記する。
【0020】
評価方法
試験方法
ラジカル発生剤(AMVN(2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)))を用いたリノール酸均一溶液系での抗酸化測定法で、リノール酸の過酸化で生成される脂質ペルオキシラジカルの共役ジエン増加量を吸光度計にて検出した。
(1)溶液の調製
(a)158mMのリノール酸ヘキサン溶液20mLを調製した。
(b)20mMの検体のクロロホルム溶液を調製した(20mMは検体中の(A)、(B)及び(C)成分合計量である。)
(c)75mMのAMVN(2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル))ヘキサン溶液(ラジカル発生剤)を調製した。
(2)(a)で調製した溶液2mLを試験管に入れ、(b)で調製した溶液を100μL加えた。(b)で調製した溶液を加えないものをコントロールとした。
(3)(c)で調製したラジカル発生剤を400μL添加し、50℃にてインキュベーションした。反応溶液合計2.5mLにおける終濃度は以下の通りとなる。
(a)リノール酸終濃度:130mmol/L、(b)検体の終濃度:0.8mmol/L、(c)AMVNの終濃度:12mM)
(4)経時的に反応溶液をヘキサンで希釈(1000倍希釈)し、吸光度(234nm:共役ジエン増加量)を測定した。
共役ジエン量測定法:検体のヘキサン溶液の234nmの吸光度を測定し、下記式(1)に基づいて共役ジエン濃度を算出した。
共役ジエン濃度(mol/L)=A234/(E×l) (1)
(A234:234nmの吸光値、E:吸光係数=2.8×104(M-1cm-1)、l::セル幅(1cm))
(5)(c)で調製したラジカル発生剤添加し、50℃,4hr後の共役ジエン濃度から、下記式(2)に基づいて、過酸化脂質抑制率を算出した。
過酸化脂質抑制率(%)=(コントロールの吸光度−検体の吸光度)/コントロールの吸光度×100 (2)
【0021】
【表1】

【0022】
[実施例9]
表2に示す組成物を植物油脂に懸濁し、常法により、ゼラチン等を用いてソフトカプセルを作製した。
【0023】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)パーム油カロテン、リコピン及びルテインから選ばれる1種又は2種以上と、(B)トコフェロール及びトコトリエノールから選ばれる1種又は2種以上と、(C)コエンザイムQ10とを有効成分とする抗酸化剤。
【請求項2】
上記(A)、(B)及び(C)成分のモル比が、(A):(B):(C)=25〜50:30〜70:0.1〜35である請求項1記載の抗酸化剤。
【請求項3】
請求項1又は2記載の抗酸化剤を配合してなる抗酸化剤組成物。

【公開番号】特開2008−239714(P2008−239714A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−80026(P2007−80026)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】