説明

抗酸化組成物

【課題】
天然物由来で、疾病の憎悪や皮膚の老化防止、健康維持、あるいは油脂等の品質劣化の防止に関与する抗酸化組成物を提供する。
【解決手段】
本発明者らは、玄米あるいは米糠より亜臨界水、あるいは超臨界水を用いて抽出し、本発明にかかる抗酸化組成物を得た。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は玄米、白米および米糠から、亜臨界水あるいは超臨界水を用いて抽出した成分を含有することを特徴とする抗酸化組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、心筋梗塞、動脈硬化、糖尿病および癌など生活習慣病の原因の少なくとも一部は生体内で生成、蓄積される過酸化脂質によるといわれている。このような問題を解消するものとして、天然物中から抽出された抗酸化剤や化学的に合成された抗酸化剤が知られている。また、食用サラダ油をはじめとした油脂の品質劣化を防ぐ目的でも天然物から、あるいは化学合成された抗酸化剤が広く使用されており、抗酸化剤の用途は食品のみならず、医薬品・化粧料・肥料・飼料・化成品といった多岐に渡るものである。
【0003】
特に近年は、動植物から抽出・精製された抗酸化成分が数多く見出されており、米および米糠にもフィチン酸やフェルラ酸といった抗酸化能を有する成分が知られている。また、特開2002−20307等に記載されるような混合成分としての抗酸化組成物も知られている。
【0004】
一方、水を密封容器に入れて加熱していくと、気体の密度は増加し、ついには気体と液体の密度が等しくなり、その境界が消失する。この状態を超臨界、この流体を超臨界水、境界が消失する点(温度374℃、圧力22.1MPa)を臨界点という。臨界点に近い領域、たとえば200℃、1.5MPaの状態では水は液体の状態であり、この状態の水を亜臨界水という。亜・超臨界水中では、物質の分解(加水分解・熱分解)、酸化(酸化剤共存下)、再結合、重合など多様な反応が起こるが、温度・圧力・共存物質などの操作により特定の反応を優先させることができる。
【0005】
この超臨界水あるいは亜臨界水の性質を利用し、動植物素材に作用させる試みは従来から広く行われており、フレーバーの抽出や有機廃棄物の処理等に利用されている(たとえば、特許文献2、3参照)。しかしながら、これらの試みとは廃棄物の削減や処理を目的としたものや、食物繊維やミネラルといった既存の機能性物質を摂取しやすくするといった目的での加工にかぎられており、玄米、白米及び米糠にこれらの流体を作用させ、新たな機能性物質を得るという試みはなされていない。
【特許文献1】特開2002−20307号公報
【特許文献2】特開2001−204415号公報
【特許文献3】特開2004−136227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は玄米、白米及び米糠から、従来には無い抗酸化組成物を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意に研究した結果、玄米、白米および米糠から、亜臨界水または超臨界水を用いて抽出した成分に優れた抗酸化作用を有することを見出し、従来にはない全く新規な抗酸化組成物を得るに至った。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、機能性成分を豊富に含有する米から、従来にはない抗酸化作用に優れた米由来の天然抗酸化組成物を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明において、抽出原料となる玄米、白米については粉砕機等を用いて粉砕したものが望ましい。また、米糠とは玄米を精白して得られる通常の米糠に加え、有機溶媒あるいは圧搾等によって脱脂された脱脂糠や、ビタミンB群などの成分を抽出した後の米糠を指すが、米の品種や生育時期、地域等は特に限定されるものではない。
【0010】
抽出に用いる超臨界水および亜臨界水については、一般に使用されている超臨界水製造装置や超臨界分解装置を用いるほか、オートクレーブ装置等、超臨界水、亜臨界水状態を発生させることが出来るものであれば特に限定されるものではない。
【0011】
抽出原料に水を加えて超臨界あるいは亜臨界状態下まで加熱・加圧した状態で一定時間抽出した後、冷却する。
【0012】
このようにして調製される抽出液はそのまま抗酸化剤として使用しても良いが、更に精製、濃縮、乾燥等の処理を施すことが好ましい。
【0013】
濃縮、精製処理としてはろ過、膜濃縮、カラム精製などが挙げられるが特に限定されるものではなく、乾燥法についても一般的に用いられる乾燥法であれば良い。
【0014】
本発明によって得られる抗酸化組成物の使用量は特に限定されるものではないが、通常約10ppm〜10%である。
【0015】
本発明で得られた抗酸化組成物には使用用途により他の添加剤、例えばデキストリン、乳化剤等を適宜配合しても良い。
【0016】
このようにして得られた抗酸化組成物は、油脂をはじめとする食品・医薬品・化粧料・肥料・飼料・化成品等に添加することで、品質劣化の防止あるいは疾病や皮膚の老化、健康増進に寄与する。
【0017】
さらに、本発明で得られた抗酸化組成物はビタミンEなど既存の抗酸化組成物との併用により、さらに抗酸化作用を増強させる相乗効果を期待することもできる。
【0018】
以下、本発明の実施の形態を実施例に基づいて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。
【実施例1】
【0019】
脱脂米糠10gに水100gを加え、オートクレーブ装置(日東高圧(株)製)の反応容器に入れ、密閉後、撹拌しながら加熱を開始する。250℃に達温後、10分間その温度を保持してから冷却し、抽出液と残渣を反応容器から取り出す。遠心分離(3,000rpm,5min)で残渣を除去後、No.5Cのろ紙でろ過し、得られたろ液を凍結乾燥させ、淡褐色の亜臨界水抽出物1.5gを得た。
【0020】
上記調製法により、脱脂米糠の亜臨界水抽出物を高収率で得られる。以下これらの抗酸化性に関する実施例を説明する。
【実施例2】
【0021】
実施例1で調製した抽出物の過酸化脂質生成抑制能を測定した。その結果を図1に示す。図より、本抽出物が脂質の過酸化によって生じるマロンジアルデヒド(MDA)の生成を顕著に抑制することが確認された。また、比較対照に用いた通常状態の水で抽出した抽出物よりも上回る効果が確認された。具体的方法は以下に示す。
牛レバー1gに9mlのリン酸緩衝液(pH7.5)を加えてホモジネートしたもの0.5mlに対し、上記抽出物0.05%を緩衝液に溶解させた試験溶液0.5ml、リン酸緩衝液3.5mlを加えて、37℃にて1〜6時間インキュベートした。
インキュベートした反応液を0.5ml採取し、8%トリクロロ酢酸2.5mlと0.67%チオバルビツール酸2.0mlを添加した。これを沸騰湯浴中で15分間加熱した後、遠心分離(3,000rpm,10min)を行い、上澄み液の吸光度(532nm)を測定することで、酸化脂質中のマロンジアルデヒド量を測定した。標準物質として、1,1,3,3−テトラエトキシプロパンを用いた。
【実施例3】
【0022】
実施例1で調製した抽出物のラジカル消去能を、DPPH法により測定した。その結果を図2に示す。図より、比較に用いている通常状態の水で抽出した水抽出物に比べ、顕著なラジカル消去能を有することが確認された。具体的方法は以下に示す。
抽出物0.1%を溶解させた0.1M酢酸緩衝液(pH5.5)2mlに、エタノール2mlおよび0.5mMのDPPH(1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジル)-エタノール溶液1mlを加えて全量を5mlとし、室温にて30分放置後、517nmの吸光度を測定した。
【実施例4】
【0023】
実施例1で調製した抽出物を添加した油脂のOSI(酸化安定度試験)を実施した。試験には酸化安定度試験器(Omnion製)を用い、AOCS Standard Method Cd 12b−92に準拠し、抽出物の添加量は100ppmで実施した。本法では、加速的に脂質を酸化させた際に、酸化が急激に上昇を始めるまでの時間により、抗酸化性物質の効果を評価する。結果を図3に示す。図より、本抽出物はオレイン酸の酸化を抑制することが確認された。更に、ビタミンEとの共存下において、酸化抑制に対する相乗効果が確認された。つまり、本抗酸化組成物が単独だけではなく、ビタミンEとの併用によってさらに抗酸化作用を増強する性質を有することが確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明にかかる抽出物の過酸化脂質生成抑制能を示す図面であり、マロンジアルデヒド(MDA)の生成量が少ないほど、抗酸化作用が強い。
【図2】本発明にかかる抽出物のラジカル消去能を示す図面であり、DPPHラジカルを減少させるために必要な量が少ないほど、抗酸化作用が強い。
【図3】本発明にかかる抽出物の油脂に対する酸化抑制作用を示す図面であり、時間(OSI Values)が長いほど、抗酸化作用が強い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
玄米、白米及び米糠より、亜臨界水を用いて抽出することで得られる成分を含有することを特徴とする抗酸化組成物。
【請求項2】
玄米、白米及び米糠より、超臨界水を用いて抽出することで得られる成分を含有することを特徴とする抗酸化組成物
【請求項3】
請求項1又は2記載の抗酸化組成物を配合されたことを特徴とする油脂保存料。
【請求項4】
請求項1又は2記載の抗酸化組成物と、従来の抗酸化組成物を配合することで抗酸化作用を増強させる組成物。
【請求項5】
請求項1又は2記載の抗酸化組成物を配合されたことを特徴とする医薬品・化粧料・食品・飼料・及び肥料
【請求項6】
請求項1又は2記載の抗酸化組成物を配合されたことを特徴とする化成品

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−160825(P2006−160825A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−351147(P2004−351147)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(598073604)築野ライスファインケミカルズ株式会社 (6)
【Fターム(参考)】