説明

抗IGF1R治療について患者を予め選択するためのバイオマーカー

【課題】IGF1Rを標的とする一つ以上の抗癌治療薬に最も応答する見込みのある特定の癌集団および/または特定の癌患者を同定する方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、IGF1R抑制性の抗癌治療に応答する見込みのある癌を有する患者を処置するための方法に加えて、そのような患者を同定するための方法を提供する。本発明の方法により同定された患者は、抗体、低分子抑制因子およびアンチセンス核酸を含むいくつかの公知のIGF1R抑制性因子のうちのいずれかにより処置され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国仮特許出願第60/633,156号の利益を主張する;上記仮特許出願は、2004年12月3日に出願されており、本明細書中に参考として全体が援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、抗癌治療について患者を選択するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
ソマトメジンとしても公知のインスリン様増殖因子は、インスリン様増殖因子−I(IGF−I)およびインスリン様増殖因子−II(IGF−II)を含む(非特許文献1および非特許文献2)。これらの増殖因子は、腫瘍細胞を含め、様々な細胞型に対してマイトジェン活性を発揮し(非特許文献3)、この活性の発揮は、インスリン様増殖因子受容体−1(IGF1R)と命名された共通の受容体に結合することによる(非特許文献4)。IGFとIGF1Rとの相互作用は、この受容体の自己リン酸化をチロシン残基上で引き起こすことにより上記受容体を活性化する(非特許文献5)。いったん活性化されると、IGF1Rは、次に細胞内の標的をリン酸化し、細胞のシグナル伝達経路を活性化する。この受容体活性化は、腫瘍細胞の増殖および生存の刺激に重要である。従って、IGF1R活性の抑制は、ヒト癌の増殖および他の増殖性疾患を処置または予防するための貴重な可能性のある方法を表す。
【0004】
いくつかの系列の証拠は、IGF−I、IGF−IIおよびそれらの受容体IGF1Rが、上記の悪性表現形の重要なメディエーターであることを示す。IGF−Iの血漿レベルは、前立腺癌の危険性の最も強い予測指標であることが見出されており(非特許文献6)、そして、類似する疫学的研究は、IGF−Iの血漿レベルと乳癌、結腸癌および肺癌の危険性とを強く結びつける。
【0005】
インスリン様増殖因子受容体−1の過剰発現は、いくつかの癌細胞株および腫瘍組織中でも実証されている。IGF1Rは、全ての乳癌細胞株のうちの40%(非特許文献7)ならびに肺癌細胞株のうちの15%で過剰発現される。乳癌腫瘍組織中にて、IGF1Rは、正常組織と比較して6〜14倍過剰発現され、かつ、2〜4倍高いキナーゼ活性を表す(非特許文献8および非特許文献9)。結腸直腸癌組織の生検材料の90%は、上昇したIGF1Rレベルを表し、ここで、IGF1Rの発現の程度はこの疾患の重症度と相関する。子宮頸癌細胞の初代培養物および子宮頸癌細胞株の解析結果により、正常な子宮膣部細胞と比較して各々3倍および5倍のIGF1Rの過剰発現が示された(非特許文献10)。滑膜肉腫細胞中のIGF1Rの発現も、攻撃的表現形(すなわち、転移および高い増殖速度;非特許文献11)と相関した。
現在、IGF1Rを標的とするいくつかの公知の抗癌治療薬が存在する。例えば、抗IGF1R抗体は、Schering Corp(特許文献1を参照のこと);Pfizer(特許文献2または特許文献3を参照のこと);Pierre Fabre medicament(特許文献4を参照のこと)、Pharmacia Corp.(特許文献5を参照のこと)、Immunogen,Inc.(特許文献6を参照のこと)、Hoffman La Roche(特許文献7を参照のこと)およびImclone Systems Inc.(IMC−A12;非特許文献12を参照のこと)により所有されている。さらに、Novartisは、Biotech Research Ventures PTE Ltd(特許文献8を参照のこと)が所有しているように、低分子IGFR抑制因子であるNVP−ADW−742(特許文献9を参照のこと)を所有している。Antisense Therapeutics Ltd.も、IGF1Rの発現を抑制するアンチセンス治療薬であるATL−1101を所有している。
IGF1Rの機能および/または発現を減少させる因子は、ある癌患者の処置において有効である。しかしながら、一部の癌患者はそのような処置に応答しないかもしれないことが、予期される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2003/100008号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2002/53596号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2004/71529号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2003/59951号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2004/83248号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2003/106621号パンフレット
【特許文献7】国際公開第2004/87756号パンフレット
【特許文献8】国際公開第2003/39538号パンフレット
【特許文献9】国際公開第2002/92599号パンフレット
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Klapperら著、Endocrinol.、1983年、112、p.2215
【非特許文献2】Rinderknechtら著、Febs.Lett.、1978年、89、p.283
【非特許文献3】Macaulay著、Br.J.Cancer、1992年、65、p.311
【非特許文献4】Sepp−Lorenzino著、Breast Cancer Research and Treatment、1998年、47、p.235
【非特許文献5】Butlerら著、Comparative Biochemistry and Physiology、1998年、121、p.19
【非特許文献6】Chanら著、Science、1998年、279、p.563
【非特許文献7】Pandiniら著、Cancer Res.、1999年、5、p.1935
【非特許文献8】Websterら著、Cancer Res.、1996年、56、p.2781
【非特許文献9】Pekonenら著、Cancer Res.、1998年、48、p.1343
【非特許文献10】Stellerら著、Cancer Res.、1996年、56、p.1762
【非特許文献11】Xieら著、Cancer Res.、1999年、59、p.3588
【非特許文献12】Burtrumら著、Cancer Research、2003年、63、p.8912−8921
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、当該分野において、IGF1Rを標的とする一つ以上の抗癌治療薬に最も応答する見込みのある特定の癌集団および/または特定の癌患者を同定する方法の必要性が、存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、とりわけ、感知可能なレベルのIGF−IIおよび/またはリン酸化されたIRS−1(インスリン受容体基質−1)を発現する腫瘍を有する患者を予め選択し、その結果として上記患者におけるIGF1Rを標的とする治療薬に対する応答の見込みを増加させることにより、癌を処置するための方法を提供する。
【0010】
本発明は、患者において腫瘍を処置するための方法であって、以下の工程:
(a)以下のもののうちの一つ以上を発現することが既知の腫瘍を有する患者または患者集団を選択する工程:
(i)896位チロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(ii)612位チロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(iii)任意のチロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(iv)IGF−II;
(v)任意のチロシンにおけるIGF1Rのリン酸化;または
(vi)IGF1R;および
(b)上記患者に治療上有効な量のIGF1R抑制性因子を投与する工程
を包含する方法を提供する。
【0011】
本発明は、患者における腫瘍を処置するための方法であって、以下の工程:
(a)以下のもののうちの一つ以上を発現している腫瘍を有する患者を選択する工程:
(i)896位チロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(ii)612位チロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(iii)任意のチロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(iv)IGF−II;
(v)任意のチロシンにおけるIGF1Rのリン酸化;または
(vi)IGF1R;および
(b)上記患者に治療上有効な量のIGF1R抑制性因子を投与する工程
を包含する方法を含む。本発明の一実施形態では、上記癌は、膀胱癌、ウィルムス癌、骨癌、前立腺癌、肺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、多発性骨髄腫、エストロゲン受容体陽性乳癌、エストロゲン受容体陰性乳癌、子宮頸癌、滑膜肉腫、卵巣癌、膵臓癌、神経芽腫、横紋筋肉腫、骨肉腫および血管作動性腸管ペプチド分泌性腫瘍からなる群から選択される。本発明の一実施形態では、上記因子は、ヒトIGF1Rに特異的に結合し、かつ、以下のものからなる群から選択されるメンバーである、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントからなる群から選択される:(i)配列番号8のアミノ酸20〜アミノ酸128を含む軽鎖可変領域に由来する一つ以上のCDRおよび/または配列番号10のアミノ酸20〜アミノ酸137を含む重鎖可変領域に由来する一つ以上のCDRを含み、ヒトIGF1Rに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント;(ii)配列番号2、4、6、8、19〜28、35〜38、43、45または73〜98のアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリンに由来する一つ以上のCDRを含む、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント;
(iii)配列番号10、12〜18、29〜34、39、40、41、42、44または58〜72のアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリンに由来する一つ以上のCDRを含む、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント;ならびに(iv)配列番号46〜51からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、単離された単鎖抗体(scfv);あるいは(v)
【0012】
【化8】

本発明の一実施形態では、本発明の単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントは、以下を含む:(i)配列番号2、4、6、8、19〜28、35〜38、43、45および73〜98からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、単離された免疫グロブリン重鎖;(ii)配列番号10、12〜18、29〜34、39、40、41、42、44および58〜72からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、単離された免疫グロブリン軽鎖;(iii)受託番号PTA−2792、PTA−2788、PTA−2790、PTA−2791、PTA−2789またはPTA−2793でAmerican Type Culture Collectionに寄託されているハイブリドーマにより産生される、単離された抗体;(iv)配列番号8のアミノ酸20〜アミノ酸128を含む軽鎖可変領域および/または配列番号10のアミノ酸20〜アミノ酸137を含む重鎖可変領域を含み、ヒトIGF1Rに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント;ならびに/あるいは(v)受託番号PTA−5220でAmerican Type Culture Collectionに寄託されている細胞株中に含まれるプラスミドによりコードされている免疫グロブリン軽鎖、および受託番号PTA−5214またはPTA−5216でAmerican Type Culture Collectionに寄託されている細胞株中に含まれるプラスミドによりコードされている免疫グロブリン重鎖を含む、単離された抗体。本発明の一実施形態では、IRS−1またはIGF1Rのチロシンリン酸化は、ウェスタンブロット解析、ELISAまたはフローサイトメトリー解析により決定される。本発明の一実施形態では、IGF−IIの発現は、ウェスタンブロット解析、ELISA、定量的PCRによるか、またはノーザンブロット解析により決定される。本発明の一実施形態では、IGF1Rの発現は、ウェスタンブロット解析またはELISAにより決定される。
【0013】
本発明は、腫瘍を有する患者または患者集団のための治療を選択するための方法であって、以下の工程:(a)上記患者の腫瘍が以下のもののうちの一つ以上を発現することが既知であるかどうかを決定する工程:
(i)896位チロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(ii)612位チロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(iii)任意のチロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(iv)IGF−II;
(v)任意のチロシンにおけるIGF1Rのリン酸化;または
(vi)IGF1Rの発現;および/あるいは
(b)上記患者の腫瘍が以下のもののうちの一つ以上を発現するかどうかを決定する工程:
(i)896位チロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(ii)612位チロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(iii)任意のチロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(iv)IGF−II;
(v)任意のチロシンにおけるIGF1Rのリン酸化;または
(vi)IGF1Rの発現;ならびに
(c)上記患者の腫瘍が(i)〜(vi)のうちの一つ以上を発現することが既知である場合および/または上記患者の腫瘍が(i)〜(vi)のうちの一つ以上を発現する場合、IGF1R抑制性因子を上記治療として選択する工程を包含する、方法を提供する。本発明の一実施形態では、上記因子は、ヒトIGF1Rに特異的に結合し、かつ、以下のものからなる群から選択されるメンバーである、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントからなる群から選択される:(i)配列番号8のアミノ酸20〜アミノ酸128を含む軽鎖可変領域に由来する一つ以上のCDRおよび/または配列番号10のアミノ酸20〜アミノ酸137を含む重鎖可変領域に由来する一つ以上のCDRを含み、ヒトIGF1Rに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント;(ii)配列番号2、4、6、8、19〜28、35〜38、43、45または73〜98のアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリンに由来する一つ以上のCDRを含む、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント;(iii)配列番号10、12〜18、29〜34、39、40、41、42、44または58〜72のアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリンに由来する一つ以上のCDRを含む、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント;あるいは(iv)配列番号46〜51からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む単離された単鎖抗体(scfv);あるいは(v)
【0014】
【化9】

本発明の一実施形態では、上記単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントは、以下を含む:(i)配列番号2、4、6、8、19〜28、35〜38、43、45および73〜98からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、単離された免疫グロブリン重鎖;(ii)配列番号10、12〜18、29〜34、39、40、41、42、44および58〜72からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、単離された免疫グロブリン軽鎖;(iii)受託番号PTA−2792、PTA−2788、PTA−2790、PTA−2791、PTA−2789またはPTA−2793でAmerican Type Culture Collectionに寄託されているハイブリドーマにより産生される、単離された抗体;(iv)配列番号8のアミノ酸20〜アミノ酸128を含む軽鎖可変領域および/または配列番号10のアミノ酸20〜アミノ酸137を含む重鎖可変領域を含み、ヒトIGF1Rに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント;ならびに/あるいは(v)受託番号PTA−5220でAmerican Type Culture Collectionに寄託されている細胞株中に含まれるプラスミドによりコードされている免疫グロブリン軽鎖、および受託番号PTA−5214またはPTA−5216でAmerican Type Culture Collectionに寄託されている細胞株中に含まれるプラスミドによりコードされている免疫グロブリン重鎖を含む、単離された抗体。
【0015】
本発明は、以下:
(i)896位チロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(ii)612位チロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(iii)任意のチロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(iv)IGF−II;
(v)任意のチロシンにおけるIGF1Rのリン酸化;または
(vi)IGF1R
のうちの一つ以上を発現する腫瘍または発現することが既知の腫瘍を有する患者または患者集団を処置するためのIGF1R因子またはその薬学的に許容可能な組成物の使用を対象視聴者に促す工程を包含する、上記抑制性因子またはその薬学的組成物についての広告方法も提供する。
【0016】
本発明の一実施形態では、上記因子は、ヒトIGF1Rに特異的に結合し、かつ、以下のものからなる群から選択されるメンバーである、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントからなる群から選択される:(i)配列番号8のアミノ酸20〜アミノ酸128を含む軽鎖可変領域に由来する一つ以上のCDRおよび/または配列番号10のアミノ酸20〜アミノ酸137を含む重鎖可変領域に由来する一つ以上のCDRを含み、ヒトIGF1Rに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント;(ii)配列番号2、4、6、8、19〜28、35〜38、43、45または73〜98のアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリンに由来する一つ以上のCDRを含む、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント;(iii)配列番号10、12〜18、29〜34、39、40、41、42、44または58〜72のアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリンに由来する一つ以上のCDRを含む、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント;ならびに(iv)配列番号46〜51からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む単離された単鎖抗体(scfv);あるいは(v)
【0017】
【化10】

本発明の一実施形態では、上記単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントは、以下を含む:(i)配列番号2、4、6、8、19〜28、35〜38、43、45および73〜98からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、単離された免疫グロブリン重鎖;(ii)配列番号10、12〜18、29〜34、39、40、41、42、44および58〜72からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、単離された免疫グロブリン軽鎖;(iii)受託番号PTA−2792、PTA−2788、PTA−2790、PTA−2791、PTA−2789またはPTA−2793でAmerican Type Culture Collectionに寄託されているハイブリドーマにより産生される、単離された抗体;(iv)配列番号8のアミノ酸20〜アミノ酸128を含む軽鎖可変領域および/または配列番号10のアミノ酸20〜アミノ酸137を含む重鎖可変領域を含み、ヒトIGF1Rに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント;ならびに/あるいは(v)受託番号PTA−5220でAmerican Type Culture Collectionに寄託されている細胞株中に含まれるプラスミドによりコードされている免疫グロブリン軽鎖、および受託番号PTA−5214またはPTA−5216でAmerican Type Culture Collectionに寄託されている細胞株中に含まれるプラスミドによりコードされている免疫グロブリン重鎖を含む、単離された抗体。
【0018】
本発明は、IGF1R抑制性因子および薬学的に許容可能なキャリアを含む薬学的組成物とラベルとを一緒に包装されて含む製造物であって、上記ラベルは、上記因子または薬学的組成物が、以下:
(i)896位チロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(ii)612位チロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(iii)任意のチロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(iv)IGF−II;
(v)任意のチロシンにおけるIGF1Rのリン酸化;または
(vi)IGF1R
のうちの一つ以上を発現している腫瘍または発現することが既知の腫瘍を有する患者を処置することが指示されることを記載する、製造物も提供する。
【0019】
本発明の一実施形態では、上記因子は、ヒトIGF1Rに特異的に結合し、かつ、以下のものからなる群から選択されるメンバーである、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントからなる群から選択される:(i)配列番号8のアミノ酸20〜アミノ酸128を含む軽鎖可変領域に由来する一つ以上のCDRおよび/または配列番号10のアミノ酸20〜アミノ酸137を含む重鎖可変領域に由来する一つ以上のCDRを含み、ヒトIGF1Rに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント;(ii)配列番号2、4、6、8、19〜28、35〜38、43、45または73〜98のアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリンに由来する一つ以上のCDRを含む、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント;(iii)配列番号10、12〜18、29〜34、39、40、41、42、44または58〜72のアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリンに由来する一つ以上のCDRを含む、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント;ならびに(iv)配列番号46〜51からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む単離された単鎖抗体(scfv);あるいは(v)
【0020】
【化11】

本発明の一実施形態では、上記単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントは、以下を含む:(i)配列番号2、4、6、8、19〜28、35〜38、43、45および73〜98からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、単離された免疫グロブリン重鎖;(ii)配列番号10、12〜18、29〜34、39、40、41、42、44および58〜72からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、単離された免疫グロブリン軽鎖;(iii)受託番号PTA−2792、PTA−2788、PTA−2790、PTA−2791、PTA−2789またはPTA−2793でAmerican Type Culture Collectionに寄託されているハイブリドーマにより産生される、単離された抗体;(iv)配列番号8のアミノ酸20〜アミノ酸128を含む軽鎖可変領域および/または配列番号10のアミノ酸20〜アミノ酸137を含む重鎖可変領域を含み、ヒトIGF1Rに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント;ならびに/あるいは(v)受託番号PTA−5220でAmerican Type Culture Collectionに寄託されている細胞株中に含まれるプラスミドによりコードされている免疫グロブリン軽鎖、および受託番号PTA−5214またはPTA−5216でAmerican Type Culture Collectionに寄託されている細胞株中に含まれるプラスミドによりコードされている免疫グロブリン重鎖を含む、単離された抗体。
【0021】
本発明は、さらに、IGF1R抑制性因子またはその薬学的組成物を製造するための方法であって、上記因子または薬学的組成物と、ラベルとを包装材中に組み合わせる工程を包含し、上記ラベルは、上記因子または上記薬学的組成物が、以下:
(i)896位チロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(ii)612位チロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(iii)任意のチロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(iv)IGF−II;
(v)任意のチロシンにおけるIGF1Rのリン酸化;または
(vi)IGF1R
のうちの一つ以上を発現している腫瘍または発現することが既知の腫瘍を有する患者を処置することが指示されることを記載する、方法も提供する。
【0022】
本発明の一実施形態では、上記因子は、ヒトIGF1Rに特異的に結合し、かつ、以下のものからなる群から選択されるメンバーである、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントからなる群から選択される:(i)配列番号8のアミノ酸20〜アミノ酸128を含む軽鎖可変領域に由来する一つ以上のCDRおよび/または配列番号10のアミノ酸20〜アミノ酸137を含む重鎖可変領域に由来する一つ以上のCDRを含み、ヒトIGF1Rに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント;(ii)配列番号2、4、6、8、19〜28、35〜38、43、45または73〜98のアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリンに由来する一つ以上のCDRを含む、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント;(iii)配列番号10、12〜18、29〜34、39、40、41、42、44または58〜72のアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリンに由来する一つ以上のCDRを含む、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント;ならびに(iv)配列番号46〜51からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、単離された単鎖抗体(scfv);あるいは(v)
【0023】
【化12】

本発明の一実施形態では、上記単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントは、以下を含む:(i)配列番号2、4、6、8、19〜28、35〜38、43、45および73〜98からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、単離された免疫グロブリン重鎖;(ii)配列番号10、12〜18、29〜34、39、40、41、42、44および58〜72からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、単離された免疫グロブリン軽鎖;(iii)受託番号PTA−2792、PTA−2788、PTA−2790、PTA−2791、PTA−2789またはPTA−2793でAmerican Type Culture Collectionに寄託されているハイブリドーマにより産生される、単離された抗体;(iv)配列番号8のアミノ酸20〜アミノ酸128を含む軽鎖可変領域および/または配列番号10のアミノ酸20〜アミノ酸137を含む重鎖可変領域を含み、ヒトIGF1Rに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント;ならびに/あるいは(v)受託番号PTA−5220でAmerican Type Culture Collectionに寄託されている細胞株中に含まれるプラスミドによりコードされている免疫グロブリン軽鎖、および受託番号PTA−5214またはPTA−5216でAmerican Type Culture Collectionに寄託されている細胞株中に含まれるプラスミドによりコードされている免疫グロブリン重鎖を含む、単離された抗体。
【0024】
本発明は、IGF1R抑制性因子に応答する見込みのある腫瘍を有する患者を同定するための方法であって、以下の工程:(a)上記患者が、以下のもののうちの一つ以上を発現することが既知の腫瘍を有するかどうかを決定する工程:
(i)896位チロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(ii)612位チロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(iii)任意のチロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(iv)IGF−II;
(v)任意のチロシンにおけるIGF1Rのリン酸化;または
(vi)IGF1R;および/あるいは
(b)上記患者が、以下のもののうちの一つ以上を発現する腫瘍を有するかどうかを決定する工程:
(i)896位チロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(ii)612位チロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(iii)任意のチロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(iv)IGF−II;
(v)任意のチロシンにおけるIGF1Rのリン酸化;または
(vi)IGF1R
を包含する、方法も提供する。
【0025】
本発明の一実施形態では、上記因子は、IGF1Rに特異的に結合し、かつ、以下のものからなる群から選択されるメンバーである、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントからなる群から選択される:(i)配列番号8のアミノ酸20〜アミノ酸128を含む軽鎖可変領域に由来する一つ以上のCDRおよび/または配列番号10のアミノ酸20〜アミノ酸137を含む重鎖可変領域に由来する一つ以上のCDRを含み、ヒトIGF1Rに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント;(ii)配列番号2、4、6、8、19〜28、35〜38、43、45または73〜98のアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリンに由来する一つ以上のCDRを含む、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント;(iii)配列番号10、12〜18、29〜34、39、40、41、42、44または58〜72のアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリンに由来する一つ以上のCDRを含む、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント;ならびに(iv)配列番号46〜51からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、単離された単鎖抗体(scfv);あるいは(v)
【0026】
【化13】

本発明の一実施形態では、上記単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントは、以下を含む:(i)配列番号2、4、6、8、19〜28、35〜38、43、45および73〜98からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、単離された免疫グロブリン重鎖;(ii)配列番号10、12〜18、29〜34、39、40、41、42、44および58〜72からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、単離された免疫グロブリン軽鎖;(iii)受託番号PTA−2792、PTA−2788、PTA−2790、PTA−2791、PTA−2789またはPTA−2793でAmerican Type Culture Collectionに寄託されているハイブリドーマにより産生される、単離された抗体;(iv)配列番号8のアミノ酸20〜アミノ酸128を含む軽鎖可変領域および/または配列番号10のアミノ酸20〜アミノ酸137を含む重鎖可変領域を含み、ヒトIGF1Rに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント;ならびに/あるいは(v)受託番号PTA−5220でAmerican Type Culture Collectionに寄託されている細胞株中に含まれるプラスミドによりコードされている免疫グロブリン軽鎖、および受託番号PTA−5214またはPTA−5216でAmerican Type Culture Collectionに寄託されている細胞株中に含まれるプラスミドによりコードされている免疫グロブリン重鎖を含む、単離された抗体。
本発明は例えば、以下の項目を提供する:
(項目1)
癌を有する患者における腫瘍を処置するための方法であって、以下の工程:
(a)以下のもののうちの一つ以上を発現することが既知の腫瘍を有する患者または患者集団を選択する工程:
(i)896位チロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(ii)612位チロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(iii)任意のチロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(iv)IGF−II;
(v)任意のチロシンにおけるIGF1Rのリン酸化;または
(vi)IGF1R;および
(b)該患者に治療上有効な量のIGF1R抑制性因子を投与する工程
を包含する、方法。
(項目2)
項目1に記載の方法であって、ここで、前記癌は、膀胱癌、ウィルムス癌、骨癌、前立腺癌、肺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、多発性骨髄腫、エストロゲン受容体陽性乳癌、エストロゲン受容体陰性乳癌、子宮頸癌、滑膜肉腫、卵巣癌、膵臓癌、神経芽腫、横紋筋肉腫、骨肉腫および血管作動性腸管ペプチド分泌性腫瘍からなる群から選択される、方法。
(項目3)
項目1に記載の方法であって、ここで、前記因子は:
(i)配列番号8のアミノ酸20〜アミノ酸128を含む軽鎖可変領域に由来する一つ以上のCDRおよび/または配列番号10のアミノ酸20〜アミノ酸137を含む重鎖可変領域に由来する一つ以上のCDRを含み、ヒトIGF1Rに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント;
(ii)配列番号2、4、6、8、19〜28、35〜38、43、45または73〜98のアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリンに由来する一つ以上のCDRを含み、ヒトIGF1Rに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント;
(iii)配列番号10、12〜18、29〜34、39、40、41、42、44または58〜72のアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリンに由来する一つ以上のCDRを含み、ヒトIGF1Rに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント;あるいは
(iv)配列番号46〜51からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、ヒトIGF1Rに特異的に結合する、単離された単鎖抗体(scfv);あるいは
(v)
【化1】

である、方法。
(項目4)
項目3に記載の方法であって、前記単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントは、以下:
(i)配列番号2、4、6、8、19〜28、35〜38、43、45および73〜98からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、単離された免疫グロブリン重鎖;
(ii)配列番号10、12〜18、29〜34、39、40、41、42、44および58〜72からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、単離された免疫グロブリン軽鎖;
(iii)受託番号PTA−2792、PTA−2788、PTA−2790、PTA−2791、PTA−2789またはPTA−2793でAmerican Type Culture Collectionに寄託されているハイブリドーマにより産生される、単離された抗体;
(iv)配列番号8のアミノ酸20〜アミノ酸128を含む軽鎖可変領域および/または配列番号10のアミノ酸20〜アミノ酸137を含む重鎖可変領域を含み、ヒトIGF1Rに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント;あるいは
(v)受託番号PTA−5220でAmerican Type Culture Collectionに寄託されている細胞株中に含まれるプラスミドによりコードされている免疫グロブリン軽鎖、および受託番号PTA−5214またはPTA−5216でAmerican Type Culture Collectionに寄託されている細胞株中に含まれるプラスミドによりコードされている免疫グロブリン重鎖を含む、単離された抗体
を含む、方法。
(項目5)
項目1に記載の方法であって、ここで、IRS−1またはIGF1Rにおけるチロシンのリン酸化は、ウェスタンブロット解析、ELISAまたはフローサイトメトリー解析により決定される、方法。
(項目6)
項目1に記載の方法であって、ここで、IGF−IIの発現は、ウェスタンブロット解析、ELISA、定量的PCRによるかまたはノーザンブロット解析により決定される、方法。
(項目7)
項目1に記載の方法であって、ここで、IGF1Rの発現は、ウェスタンブロット解析またはELISAにより決定される、方法。
(項目8)
癌を有する患者における腫瘍を処置するための方法であって、以下の工程:
(a)以下のもののうちの一つ以上を発現している腫瘍を有する患者を選択する工程:
(i)896位チロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(ii)612位チロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(iii)任意のチロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(iv)IGF−II;
(v)任意のチロシンにおけるIGF1Rのリン酸化;または
(vi)IGF1R;および
(b)該患者に治療上有効な量のIGF1R抑制性因子を投与する工程
を包含する、方法。
(項目9)
項目8に記載の方法であって、ここで、前記癌は、膀胱癌、ウィルムス癌、骨癌、前立腺癌、肺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、多発性骨髄腫、エストロゲン受容体陽性乳癌、エストロゲン受容体陰性乳癌、子宮頸癌、滑膜肉腫、卵巣癌、膵臓癌、神経芽腫、横紋筋肉腫、骨肉腫および血管作動性腸管ペプチド分泌性腫瘍からなる群から選択される、方法。
(項目10)
項目8に記載の方法であって、ここで、前記因子は:
(i)配列番号8のアミノ酸20〜アミノ酸128を含む軽鎖可変領域に由来する一つ以上のCDRおよび/または配列番号10のアミノ酸20〜アミノ酸137を含む重鎖可変領域に由来する一つ以上のCDRを含み、ヒトIGF1Rに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント;
(ii)配列番号2、4、6、8、19〜28、35〜38、43、45または73〜98のアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリンに由来する一つ以上のCDRを含み、ヒトIGF1Rに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント;
(iii)配列番号10、12〜18、29〜34、39、40、41、42、44または58〜72のアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリンに由来する一つ以上のCDRを含み、ヒトIGF1Rに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント;あるいは
(iv)配列番号46〜51からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、ヒトIGF1Rに特異的に結合する、単離された単鎖抗体(scfv);あるいは
(v)
【化2】

である、方法。
(項目11)
項目10に記載の方法であって、ここで、前記単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントは、以下:
(i)配列番号2、4、6、8、19〜28、35〜38、43、45および73〜98からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、単離された免疫グロブリン重鎖;
(ii)配列番号10、12〜18、29〜34、39、40、41、42、44および58〜72からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、単離された免疫グロブリン軽鎖;
(iii)受託番号PTA−2792、PTA−2788、PTA−2790、PTA−2791、PTA−2789またはPTA−2793でAmerican Type Culture Collectionに寄託されているハイブリドーマにより産生される、単離された抗体;
(iv)配列番号8のアミノ酸20〜アミノ酸128を含む軽鎖可変領域および/または配列番号10のアミノ酸20〜アミノ酸137を含む重鎖可変領域を含み、ヒトIGF1Rに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント;あるいは
(v)受託番号PTA−5220でAmerican Type Culture Collectionに寄託されている細胞株中に含まれるプラスミドによりコードされている免疫グロブリン軽鎖、および受託番号PTA−5214またはPTA−5216でAmerican Type Culture Collectionに寄託されている細胞株中に含まれるプラスミドによりコードされている免疫グロブリン重鎖を含む、単離された抗体
を含む、方法。
(項目12)
項目8に記載の方法であって、ここで、IRS−1またはIGF1Rにおけるチロシンのリン酸化は、ウェスタンブロット解析、ELISAまたはフローサイトメトリー解析により決定される、方法。
(項目13)
項目8に記載の方法であって、ここで、IGF−IIの発現は、ウェスタンブロット解析、ELISA、定量的PCRによるかまたはノーザンブロット解析により決定される、方法。
(項目14)
項目8に記載の方法であって、ここで、IGF1Rの発現は、ウェスタンブロット解析またはELISAにより決定される、方法。
(項目15)
腫瘍を有する患者または患者集団についての治療を選択するための方法であって、以下の工程:
(a)該患者の腫瘍が、以下のもののうちの一つ以上を発現することが既知であるかどうかを決定する工程:
(i)896位チロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(ii)612位チロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(iii)任意のチロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(iv)IGF−II;
(v)任意のチロシンにおけるIGF1Rのリン酸化;または
(vi)IGF1R;ならびに
(b)該患者の腫瘍が以下のもののうちの一つ以上を発現するかどうかを決定する工程:(i)896位チロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(ii)612位チロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(iii)任意のチロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(iv)IGF−II;
(v)任意のチロシンにおけるIGF1Rのリン酸化;または
(vi)IGF1R;ならびに
(c)該患者の腫瘍が(i)〜(vi)のうちの一つ以上を発現することが既知である場合、および/または該患者の腫瘍が(i)〜(vi)のうちの一つ以上を発現する場合、IGF1R抑制性因子を該治療として選択する工程
を包含する、方法。
(項目16)
項目15に記載の方法であって、ここで、前記因子は:
(i)配列番号8のアミノ酸20〜アミノ酸128を含む軽鎖可変領域に由来する一つ以上のCDRおよび/または配列番号10のアミノ酸20〜アミノ酸137を含む重鎖可変領域に由来する一つ以上のCDRを含み、ヒトIGF1Rに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント;
(ii)配列番号2、4、6、8、19〜28、35〜38、43、45または73〜98のアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリンに由来する一つ以上のCDRを含み、ヒトIGF1Rに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント;
(iii)配列番号10、12〜18、29〜34、39、40、41、42、44または58〜72のアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリンに由来する一つ以上のCDRを含み、ヒトIGF1Rに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント;あるいは
(iv)配列番号:46〜51からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、ヒトIGF1Rに特異的に結合する、単離された単鎖抗体(scfv);あるいは
(v)
【化3】

である、方法。
(項目17)
項目16に記載の方法であって、ここで、前記単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントは、以下:
(i)配列番号2、4、6、8、19〜28、35〜38、43、45および73〜98からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、単離された免疫グロブリン重鎖;
(ii)配列番号10、12〜18、29〜34、39、40、41、42、44および58〜72からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、単離された免疫グロブリン軽鎖;
(iii)受託番号PTA−2792、PTA−2788、PTA−2790、PTA−2791、PTA−2789またはPTA−2793でAmerican Type Culture Collectionに寄託されているハイブリドーマにより産生される、単離された抗体;
(iv)配列番号8のアミノ酸20〜アミノ酸128を含む軽鎖可変領域および/または配列番号10のアミノ酸20〜アミノ酸137を含む重鎖可変領域を含み、ヒトIGF1Rに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント;あるいは
(v)受託番号PTA−5220でAmerican Type Culture Collectionに寄託されている細胞株中に含まれるプラスミドによりコードされている免疫グロブリン軽鎖、および受託番号PTA−5214またはPTA−5216でAmerican Type Culture Collectionに寄託されている細胞株中に含まれるプラスミドによりコードされている免疫グロブリン重鎖を含む、単離された抗体
を含む、方法。
(項目18)
項目12に記載の方法であって、ここで、IRS−1またはIGF1Rにおけるチロシンのリン酸化は、ウェスタンブロット解析、ELISAまたはフローサイトメトリー解析により決定される、方法。
(項目19)
項目12に記載の方法であって、ここで、IGF−IIの発現は、ウェスタンブロット解析、ELISA、定量的PCRによるかまたはノーザンブロット解析により決定される、方法。
(項目20)
項目12に記載の方法であって、ここで、IGF1Rの発現は、ウェスタンブロット解析またはELISAにより決定される、方法。
(項目21)
IGF1R抑制性因子またはその薬学的に許容可能な組成物を広告するための方法であって、以下:
(i)896位チロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(ii)612位チロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(iii)任意のチロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(iv)IGF−II;
(v)任意のチロシンにおけるIGF1Rのリン酸化;または
(vi)IGF1Rのうちの一つ以上を発現する腫瘍または発現することが既知の腫瘍を有する患者または患者集団を処置するための該因子またはその薬学的組成物の使用を対象視聴者に促す工程
を包含する、方法。
(項目22)
項目21に記載の方法であって、ここで、前記因子は:
(i)配列番号8のアミノ酸20〜アミノ酸128を含む軽鎖可変領域に由来する一つ以上のCDRおよび/または配列番号10のアミノ酸20〜アミノ酸137を含む重鎖可変領域に由来する一つ以上のCDRを含み、ヒトIGF1Rに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント;
(ii)配列番号2、4、6、8、19〜28、35〜38、43、45または73〜98のアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリンに由来する一つ以上のCDRを含み、ヒトIGF1Rに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント;
(iii)配列番号10、12〜18、29〜34、39、40、41、42、44または58〜72のアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリンに由来する一つ以上のCDRを含み、ヒトIGF1Rに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント;あるいは
(iv)配列番号46〜51からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、ヒトIGF1Rに特異的に結合する、単離された単鎖抗体(scfv);あるいは
(v)
【化4】

である、方法。
(項目23)
項目22に記載の方法であって、前記単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントは、以下:
(i)配列番号2、4、6、8、19〜28、35〜38、43、45および73〜98からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、単離された免疫グロブリン重鎖;
(ii)配列番号10、12〜18、29〜34、39、40、41、42、44および58〜72からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、単離された免疫グロブリン軽鎖;
(iii)受託番号PTA−2792、PTA−2788、PTA−2790、PTA−2791、PTA−2789またはPTA−2793でAmerican Type Culture Collectionに寄託されているハイブリドーマにより産生される、単離された抗体;
(iv)配列番号8のアミノ酸20〜アミノ酸128を含む軽鎖可変領域および/または配列番号10のアミノ酸20〜アミノ酸137を含む重鎖可変領域を含み、ヒトIGF1Rに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント;ならびに/あるいは
(v)受託番号PTA−5220でAmerican Type Culture Collectionに寄託されている細胞株中に含まれるプラスミドによりコードされている免疫グロブリン軽鎖、および受託番号PTA−5214またはPTA−5216でAmerican Type Culture Collectionに寄託されている細胞株中に含まれるプラスミドによりコードされている免疫グロブリン重鎖を含む、単離された抗体
を含む、方法。
(項目24)
IGF1R抑制性因子および薬学的に許容可能なキャリアを含む薬学的組成物とラベルとを一緒に包装されて含む製造物であって、該ラベルは、該因子または薬学的組成物が、以下:
(i)896位チロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(ii)612位チロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(iii)任意のチロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(iv)IGF−II;
(v)任意のチロシンにおけるIGF1Rのリン酸化;または
(vi)IGF1R
のうちの一つ以上を発現している腫瘍または発現することが既知の腫瘍を有する患者を処置することが指示されることを記載する、製造物。
(項目25)
項目24に記載の物であって、ここで、前記因子は:
(i)配列番号8のアミノ酸20〜アミノ酸128を含む軽鎖可変領域に由来する一つ以上のCDRおよび/または配列番号10のアミノ酸20〜アミノ酸137を含む重鎖可変領域に由来する一つ以上のCDRを含み、ヒトIGF1Rに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント;
(ii)配列番号2、4、6、8、19〜28、35〜38、43、45または73〜98のアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリンに由来する一つ以上のCDRを含み、ヒトIGF1Rに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント;
(iii)配列番号10、12〜18、29〜34、39、40、41、42、44または58〜72のアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリンに由来する一つ以上のCDRを含み、ヒトIGF1Rに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント;あるいは
(iv)配列番号46〜51からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、ヒトIGF1Rに特異的に結合する、単離された単鎖抗体(scfv);あるいは
(v)
【化5】

である、物。
(項目26)
項目25に記載の方法であって、ここで、前記単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントは、以下:
(i)配列番号2、4、6、8、19〜28、35〜38、43、45および73〜98からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、単離された免疫グロブリン重鎖;
(ii)配列番号10、12〜18、29〜34、39、40、41、42、44および58〜72からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、単離された免疫グロブリン軽鎖;
(iii)受託番号PTA−2792、PTA−2788、PTA−2790、PTA−2791、PTA−2789またはPTA−2793でAmerican Type Culture Collectionに寄託されているハイブリドーマにより産生される、単離された抗体;
(iv)配列番号8のアミノ酸20〜アミノ酸128を含む軽鎖可変領域および/または配列番号10のアミノ酸20〜アミノ酸137を含む重鎖可変領域を含み、ヒトIGF1Rに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント;あるいは
(v)受託番号PTA−5220でAmerican Type Culture Collectionに寄託されている細胞株中に含まれるプラスミドによりコードされている免疫グロブリン軽鎖、および受託番号PTA−5214またはPTA−5216でAmerican Type Culture Collectionに寄託されている細胞株中に含まれるプラスミドによりコードされている免疫グロブリン重鎖を含む、単離された抗体
を含む、方法。
(項目27)
IGF1R抑制性因子またはその薬学的組成物を製造するための方法であって、該因子またはその薬学的組成物と、ラベルとを包装材中で組み合わせる工程を包含し、該ラベルは、該因子または薬学的組成物が、以下:
(i)896位チロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(ii)612位チロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(iii)任意のチロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(iv)IGF−II;
(v)任意のチロシンにおけるIGF1Rのリン酸化;または
(vi)IGF1R
のうちの一つ以上を発現している腫瘍もしくは発現することが既知の腫瘍を有する患者を処置することが指示されることを記載する、方法。
(項目28)
項目27に記載の方法であって、ここで、前記因子は:
(i)配列番号8のアミノ酸20〜アミノ酸128を含む軽鎖可変領域に由来する一つ以上のCDRおよび/または配列番号10のアミノ酸20〜アミノ酸137を含む重鎖可変領域に由来する一つ以上のCDRを含み、ヒトIGF1Rに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント;
(ii)配列番号2、4、6、8、19〜28、35〜38、43、45または73〜98のアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリンに由来する一つ以上のCDRを含み、ヒトIGF1Rに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント;
(iii)配列番号10、12〜18、29〜34、39、40、41、42、44または58〜72のアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリンに由来する一つ以上のCDRを含み、ヒトIGF1Rに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント;あるいは
(iv)配列番号46〜51からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、ヒトIGF1Rに特異的に結合する、単離された単鎖抗体(scfv);あるいは
(v)
【化6】

である、方法。
(項目29)
項目28に記載の方法であって、ここで、前記単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントは、以下:
(i)配列番号2、4、6、8、19〜28、35〜38、43、45および73〜98からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、単離された免疫グロブリン重鎖;
(ii)配列番号10、12〜18、29〜34、39、40、41、42、44および58〜72からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、単離された免疫グロブリン軽鎖;
(iii)受託番号PTA−2792、PTA−2788、PTA−2790、PTA−2791、PTA−2789またはPTA−2793でAmerican Type Culture Collectionに寄託されているハイブリドーマにより産生される、単離された抗体;
(iv)配列番号8のアミノ酸20〜アミノ酸128を含む軽鎖可変領域および/または配列番号10のアミノ酸20〜アミノ酸137を含む重鎖可変領域を含み、ヒトIGF1Rに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント;あるいは
(v)受託番号PTA−5220でAmerican Type Culture Collectionに寄託されている細胞株中に含まれるプラスミドによりコードされている免疫グロブリン軽鎖、および受託番号PTA−5214またはPTA−5216でAmerican Type Culture Collectionに寄託されている細胞株中に含まれるプラスミドによりコードされている免疫グロブリン重鎖を含む、単離された抗体
を含む、方法。
(項目30)
IGF1R抑制性因子に応答する見込みのある腫瘍を有する患者を同定するための方法であって、以下の工程:
(a)該患者が、以下のもののうちの一つ以上を発現することが既知の腫瘍を有するかどうかを決定する工程:
(i)896位チロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(ii)612位チロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(iii)任意のチロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(iv)IGF−II;
(v)任意のチロシンにおけるIGF1Rのリン酸化;または
(vi)IGF1R;および/あるいは
(b)該患者が、以下のもののうちの一つ以上を発現している腫瘍を有するかどうかを決定する工程:
(i)896位チロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(ii)612位チロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(iii)任意のチロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(iv)IGF−II;
(v)任意のチロシンにおけるIGF1Rのリン酸化;または
(vi)IGF1R
を包含する、方法。
(項目31)
項目30に記載の方法であって、ここで、前記因子は:
(i)配列番号8のアミノ酸20〜アミノ酸128を含む軽鎖可変領域に由来する一つ以上のCDRおよび/または配列番号10のアミノ酸20〜アミノ酸137を含む重鎖可変領域に由来する一つ以上のCDRを含み、ヒトIGF1Rに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント;
(ii)配列番号2、4、6、8、19〜28、35〜38、43、45または73〜98のアミノ酸配列を含む重鎖免疫グロブリンに由来する一つ以上のCDRを含み、ヒトIGF1Rに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント;
(iii)配列番号10、12〜18、29〜34、39、40、41、42、44または58〜72のアミノ酸配列を含む軽鎖免疫グロブリンに由来する一つ以上のCDRを含み、ヒトIGF1Rに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント;あるいは
(iv)配列番号46〜51からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、ヒトIGF1Rに特異的に結合する、単離された単鎖抗体(scfv);あるいは
(v)
【化7】

である、方法。
(項目32)
項目31に記載の方法であって、ここで、前記単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントは、以下:
(i)配列番号2、4、6、8、19〜28、35〜38、43、45および73〜98からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、単離された免疫グロブリン重鎖;
(ii)配列番号10、12〜18、29〜34、39、40、41、42、44および58〜72からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、単離された免疫グロブリン軽鎖;
(iii)受託番号PTA−2792、PTA−2788、PTA−2790、PTA−2791、PTA−2789またはPTA−2793でAmerican Type Culture Collectionに寄託されているハイブリドーマにより産生される、単離された抗体;
(iv)配列番号8のアミノ酸20〜アミノ酸128を含む軽鎖可変領域および/または配列番号10のアミノ酸20〜アミノ酸137を含む重鎖可変領域を含み、ヒトIGF1Rに特異的に結合する、単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント;あるいは
(v)受託番号PTA−5220でAmerican Type Culture Collectionに寄託されている細胞株中に含まれるプラスミドによりコードされている免疫グロブリン軽鎖、および受託番号PTA−5214またはPTA−5216でAmerican Type Culture Collectionに寄託されている細胞株中に含まれるプラスミドによりコードされている免疫グロブリン重鎖を含む、単離された抗体
を含む、方法。
(項目33)
項目30に記載の方法であって、ここで、IRS−1またはIGF1Rにおけるチロシンのリン酸化は、ウェスタンブロット解析、ELISAまたはフローサイトロメトリー解析により決定される、方法。
(項目34)
項目30に記載の方法であって、ここで、IGF−IIの発現は、ウェスタンブロット解析、ELISA、定量的PCRによるかまたはノーザンブロット解析により決定される、方法。
(項目35)
項目30に記載の方法であって、ここで、IGF1Rの発現は、ウェスタンブロット解析またはELISAにより決定される、方法。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】IRS−1のリン酸化は、正常組織試料と比べてヒト肺腫瘍試料中で高い。4人の異なる患者からの正常組織試料および腫瘍組織試料に関するウェスタンブロット解析の結果。「T」と標記されたレーンは、腫瘍組織を含んでおり、そして「N」と標記されたレーンは、正常組織を含んでいた。
【図2】抗体19D12/15H12 LCF/HCA:インビボでの効力。抗体19D12/15H12 LCF/HCAを投与された異種移植マウスにおいて観察される腫瘍増殖抑制のレベルは、評価される腫瘍の型および各腫瘍を確立するために用いられた細胞株に沿って示されている。
【図3】19D12/15H12 LCF/HCAのインビボでの効力は、IRS−1のリン酸化のIGF−1に対する感受性と相関する。「−」レーンおよび「+」レーンでは、リン酸化されたIRS−1の量が、評価される各細胞株中にて、各々IGF−Iの存在および不在下で示されている。上記の示された細胞株(図2を参照のこと)の増殖を抑制する際における19D12/15H12 LCF/HCAのインビボでの効力レベルも、示されている。
【図4】ヒト卵巣腫瘍組織中におけるIGF−IIのmRNAの過剰発現。20個の正常卵巣組織試料および36個の癌性卵巣組織試料の各々において観察されるIGF−IIのmRNA発現の正規化されたレベルが、示されている。
【図5】ヒト結腸直腸腫瘍組織中におけるIGF−IIのmRNAの過剰発現。36個の正常卵巣組織試料および36個の癌性結腸直腸組織試料の各々において観察されるIGF−IIのmRNA発現の正規化されたレベルが、示されている。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(発明の詳細な説明)
本発明は、癌を処置するための方法またはIGF1R抑制性因子に応答する見込みのある癌を有する患者を同定するための方法を提供する。上記方法は、特に、IGF1R抑制性抗癌治療の患者への投与が有効であるという可能性を増加させるために、有用である。
用語「IGF1R」、「IGFR1」、「インスリン様増殖因子受容体−I」および「インスリン様増殖因子受容体、I型」は、当該分野において周知である。IGF1Rは任意の生物体に由来し得るが、IGF1Rは、好ましくは、動物、より好ましくは、哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジまたはイヌ)および最も好ましくはヒトに由来する。代表的なヒトIGF1R前駆体のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、X04434またはNM_000875というGenbank登録番号を有する。上記前駆体の切断(例えば、アミノ酸710位とアミノ酸711位との間)は、会合して成熟した受容体を形成する、αサブユニットおよびβサブユニットを生じる。
【0029】
用語「IGF−I」、「インスリン様増殖因子−I」および「インスリン様増殖因子、I型」も、当該分野において周知である。用語「IGF−II」、「インスリン様増殖因子−II」および「インスリン様増殖因子、II型」も、当該分野において周知である。IGF−IまたはIGF−IIは任意の生物体に由来し得るが、それらは、好ましくは、動物、より好ましくは、哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジまたはイヌ)および最も好ましくはヒトに由来する。代表的なヒトIGF−IおよびヒトIGF−IIの核酸配列およびアミノ酸配列は、各々、XM_052648およびNM_000612というGenbank登録番号を有する。
【0030】
(IGF1R抑制性因子)
用語「IGF1R抑制性因子」は、(研究者、医師または獣医師のような)投与者により求められる、組織、系、被験体、または患者における生物学的応答または医学的応答(癌の徴候、症状および/もしくは臨床的徴候(例えば、腫瘍増殖)の任意の測定可能な軽減、ならびに/または癌の予防、任意の程度への進行もしくは転移の遅延または停止を含む)を誘発し得る、IGF1Rの発現、リガンド結合、キナーゼ活性または任意の他の生物学的活性を減少させる任意の物質を含む。
【0031】
本発明の一実施形態では、本発明による方法において患者に投与され得るIGF1R抑制性因子は、任意の単離された抗インスリン様増殖因子受容体−1(IGF1R)抗体またはそのフラグメント(例えば、モノクローナル抗体(例えば、完全にヒトのモノクローナル抗体)、ポリクローナル抗体、二重特異性抗体、Fab抗体フラグメント、F(ab)抗体フラグメント、Fv抗体フラグメント(例えば、VHまたはVL)、単鎖Fv抗体フラグメント、dsFv抗体フラグメント、ヒト化抗体、キメラ抗体またはイディオタイプ抗体)であり、例えば、以下のうちのいずれかに開示されているいずれかのものである:Burtrumら著、Cancer Research、63:8912−8921(2003);フランス特許出願FR2834990、FR2834991およびFR2834900、ならびに、PCT出願公開WO03/100008;WO03/59951;WO04/71529;WO03/106621;WO04/83248;WO04/87756およびWO02/53596。
【0032】
本発明の一実施形態では、本発明による方法において患者に投与され得るIGF1R抑制性因子は、単離された抗インスリン様増殖因子受容体−1(IGF1R)抗体であり、この抗体は、成熟したまたはプロセシングされていない19D12/15H12の軽鎖C、D、EまたはF、ならびに成熟した19D12/15H12の重鎖AまたはBを含む。本発明の一実施形態では、本発明による方法において患者に投与され得るIGF1R抑制性因子は、単離された抗体であり、この抗体は、19D12/15H12の軽鎖Fおよび/または19D12/15H12の重鎖Aの一つ以上の相補性決定領域(CDR)(例えば、3個全ての軽鎖CDRおよび3個全ての重鎖CDR)を含み、IGF1Rに特異的に結合する。
【0033】
19D12/15H12抗体鎖のアミノ酸配列およびヌクレオチド配列が、下に示されている。点線の下線の活字は、そのシグナルペプチドを示している。実線の下線の活字は、そのCDRを示している。模様のない活字は、そのフレームワーク領域を示している。成熟したフラグメントは、上記シグナルペプチドを欠く。
【0034】
(改変された19D12/15H12軽鎖C(配列番号1))
【0035】
【数1】

(配列番号2)
【0036】
【数2】

(改変された19D12/15H12軽鎖D(配列番号3))
【0037】
【数3】

(配列番号4)
【0038】
【数4】

(改変された19D12/15H12軽鎖E(配列番号5))
【0039】
【数5】

(配列番号6)
【0040】
【数6】

(19D12/15H12軽鎖F(LCF;配列番号7))
【0041】
【数7】

(配列番号8)
【0042】
【数8】

(19D12/15H12重鎖A(HCA;配列番号9))
【0043】
【数9】

(配列番号10)
【0044】
【数10】

(改変された19D12/15H12重鎖B(配列番号11))
【0045】
【数11】

(配列番号12)
【0046】
【数12】

15H12/19D12のLCC、LCD、LCE、LCFまたは15H12/19D12のHCAもしくはHCBに作動可能に連結されたCMVプロモーターを含むプラスミドが、American Type Culture Collection(ATCC);10801 University Boulevard;Manassas,Virginia 20110−2209に2003年5月21日に寄託されている。上記プラスミドについての寄託名称ならびにATCC登録番号を、以下に示す:
(1)CMVプロモーター−15H12/19D12 HCA(γ4)−
寄託名称:“15H12/19D12 HCA(γ4)”
ATCC登録番号:PTA−5214
(2)CMVプロモーター−15H12/19D12 HCB(γ4)−
寄託名称:”15H12/19D12 HCB(γ4)”
ATCC登録番号:PTA−5215
(3)CMVプロモーター−15H12/19D12 HCA(γ1)−
寄託名称:”15H12/19D12 HCA(γl)”;
ATCC登録番号:PTA−5216
(4)CMVプロモーター−15H12/19D12 LCC(κ)−
寄託名称:”15H12/19D12 LCC(κ)”;
ATCC登録番号:PTA−5217
(5)CMVプロモーター−15Hl2/19D12 LCD(κ)−
寄託名称:”15Hl2/19D12 LCD(κ)”;
ATCC登録番号:PTA−5218
(6)CMVプロモーター−15H12/19D12 LCE(κ)−
寄託名称:”15H12/19D12 LCE(κ)”;
ATCC登録番号:PTA−5219
(7)CMVプロモーター−15H12/19D12 LCF(κ)−
寄託名称:”15H12/19D12 LCF(κ)”;
ATCC登録番号:PTA−5220。
【0047】
ATCCに寄託されているプラスミドの利用における全ての制限は、特許の付与により除去され得る。本発明の一実施形態では、本発明の抗IGF1R抗体またはその抗原結合性フラグメントは、PTA−5214からPTA−5220までのうちのいずれかについてのCDRまたはIg重鎖またはIg軽鎖またはそれらの可変領域のうちのいずれかを含む。本発明の一実施形態では、上記抗体は、PTA−5220という番号で寄託されたプラスミドによりコードされる軽鎖、およびPTA−5214またはPTA−5216という番号で寄託されたプラスミドによりコードされる重鎖を含む。
【0048】
一実施形態では、ヒトIGF1Rに「特異的に」結合する抗体は、Biacore測定による約1.28×10−10M以下のKd、またはKinExA測定による約2.05×10−12以下のKdで結合する。
【0049】
本発明の一実施形態では、本発明による方法において患者に投与され得るIGF1R抑制性因子は、本明細書中に参考として全体が援用されている公開された国際出願WO2002/53596に示される通りの任意の軽鎖免疫グロブリンおよび/または重鎖免疫グロブリンを含む。例えば、一つの実施形態では、上記抗体は、WO2002/53596に示される通りの配列番号2、6、10、14、18、22、47および51からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域、ならびに/またはWO2002/53596に示される通りの配列番号4、8、12、14、16、20、24、45および49からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域を含む。
【0050】
本発明の一実施形態では、本発明による方法において患者に投与され得るIGF1R抑制性因子は、本明細書中に参考として全体が援用されている公開された国際出願WO2003/59951に示される通りの任意の軽鎖免疫グロブリンおよび/または重鎖免疫グロブリンを含む。例えば、一実施形態では、上記抗体は、WO2003/59951に示される通りの配列番号54、61および65からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域および/またはWO2003/59951に示される通りの配列番号69、75、79および83からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0051】
本発明の一実施形態では、本発明による方法において患者に投与され得るIGF1R抑制性因子は、本明細書中に参考として全体として援用されている公開された国際出願WO2004/83248に示される通りの任意の軽鎖免疫グロブリンおよび/または重鎖免疫グロブリンを含む。例えば、一実施形態では、上記抗体は、WO2004/83248に示される通りの配列番号109、111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、133、135、137、139、141および143からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、ならびに/またはWO2004/83248に示される通りの配列番号108、110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、132、134、136、138、140および142からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0052】
本発明の一つの実施形態では、本発明による方法において患者に投与され得るIGF1R抑制性因子は、本明細書中に参考として全体として援用されている公開された国際出願WO2003/106621に示される通りの任意の軽鎖免疫グロブリンおよび/または重鎖免疫グロブリンを含む。例えば、一実施形態では、上記抗体は、WO2003/106621に示される通りの配列番号8〜12、58〜69、82〜86、90、94、96、98からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域および/またはWO2003/106621に示される通りの配列番号7、13、70〜81、87、88、92からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0053】
本発明の一実施形態では、本発明による方法において患者に投与され得るIGF1R抑制性因子は、本明細書中に参考として全体として援用されている公開国際出願WO2004/87756に示される通りの任意の軽鎖免疫グロブリンおよび/または重鎖免疫グロブリンを含む。例えば、一つの実施形態では、上記抗体は、WO2004/87756に示される通りの配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域および/またはWO2004/87756に示される通りの配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0054】
さらに、本発明の範囲は、以下に示される方法のうちのいずれかにより同定される通りのWO2002/53596;WO2003/59951;WO2004/83248;WO2003/106621またはWO2004/87756に示される軽鎖免疫グロブリンまたは重鎖免疫グロブリンのうちのいずれかについての一つ以上のCDRおよび/またはフレームワーク領域を含む、任意の抗体または抗体フラグメントを含む:Chothiaら著、J.Mol.Biol.、1985年、第186巻、p.651−663;NovotnyおよびHaberら著、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、1985年、第82巻、p.4592−4596またはKabat,E.A.ら著、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、National Institutes of Health,Bethesda,Md.、1987年。
【0055】
本発明の一実施形態では、抗IGF1R抗体は、American Type Culture Collectionに、PTA−2792、PTA−2788、PTA−2790、PTA−2791、PTA−2789またはPTA−2793という受託番号で寄託されているハイブリドーマにより生産される。
【0056】
本発明の一実施形態では、本発明の抗IGF1R抗体は、以下の配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変領域を含む:
【0057】
【数13】

本発明の一実施形態では、本発明の抗IGF1R抗体は、以下の配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む:
【0058】
【数14】

本発明の一実施形態では、上記抗IGF1R抗体は、以下のアミノ酸配列を含め、軽鎖免疫グロブリンまたはその成熟したフラグメント(すなわち、シグナル配列を欠損している)またはその可変領域を含む:
【0059】
【数15】

本発明の一実施形態では、上記シグナル配列は、配列番号25〜28におけるアミノ酸1〜アミノ酸22である。本発明の一実施形態では、上記成熟した可変領域は、下線が引かれている。
【0060】
本発明の一実施形態では、上記抗IGF1R抗体は、以下のアミノ酸配列を含め、重鎖免疫グロブリンまたはその成熟したフラグメント(すなわち、シグナル配列を欠損している)またはその可変領域を含む:
【0061】
【数16】

本発明の一実施形態では、上記シグナル配列は、配列番号29〜32におけるアミノ酸1〜アミノ酸19である。本発明の一実施形態では、上記成熟した可変領域は、下線が引かれている。
【0062】
本発明の一実施形態では、上記抗IGF1R抗体は、配列番号13〜18のうちのいずれかのアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と対になった、配列番号19〜24のうちのいずれかのアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を各々含む。本発明の一実施形態では、上記抗IGF1R抗体は、配列番号29または30のうちのいずれかのアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と対になった、配列番号25または26のうちのいずれかのアミノ酸配列を含む成熟した軽鎖可変領域を各々含む。本発明の一実施形態では、上記抗IGF1R抗体は、配列番号31または32のうちのいずれかのアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と対になった、配列番号27または28のうちのいずれかのアミノ酸配列を含む成熟した軽鎖可変領域を各々含む。
【0063】
本発明の一実施形態では、本発明の抗IGF1R抗体は、2.12.1fx(配列番号33)の免疫グロブリン重鎖または成熟したフラグメントもしくは可変領域を含む(本発明の一実施形態では、上記リーダー配列は、下線が引かれている):
【0064】
【数17】

本発明の一実施形態では、本発明の抗IGF1R抗体は、成熟した免疫グロブリン重鎖可変領域2.12.1fx(アミノ酸20〜アミノ酸144または配列番号33;配列番号34)を含む:
【0065】
【数18】

本発明の一実施形態では、本発明の抗IGF1R抗体は、免疫グロブリン軽鎖または成熟したフラグメントもしくは可変領域2.12.1fx(配列番号35)を含む(本発明の一実施形態では、上記リーダー配列は、下線が引かれている):
【0066】
【数19】

本発明の一実施形態では、本発明の抗IGF1R抗体は、成熟した免疫グロブリン軽鎖可変領域2.12.1fx(配列番号35のアミノ酸23〜アミノ酸130;配列番号36)を含む:
【0067】
【数20】

本発明の一実施形態では、本発明の抗IGF1R抗体は、ヒト化された7C10免疫グロブリン軽鎖可変領域;バージョン1(配列番号37)を含む:
【0068】
【数21】

本発明の一実施形態では、本発明の抗IGF1R抗体は、ヒト化された7C10免疫グロブリン軽鎖可変領域;バージョン2(配列番号38)を含む:
【0069】
【数22】

本発明の一実施形態では、本発明の抗IGF1R抗体は、ヒト化された7C10免疫グロブリン重鎖可変領域;バージョン1(配列番号39)を含む:
【0070】
【数23】

本発明の一実施形態では、本発明の抗IGF1R抗体は、ヒト化された7C10免疫グロブリン重鎖可変領域;バージョン2(配列番号40)を含む:
【0071】
【数24】

本発明の一実施形態では、本発明の抗IGF1R抗体は、ヒト化された7C10免疫グロブリン重鎖可変領域;バージョン3(配列番号41)を含む:
【0072】
【数25】

本発明の一実施形態では、本発明の抗IGF1R抗体は、A12免疫グロブリン重鎖可変領域(配列番号42)を含む:
【0073】
【数26】

本発明の一実施形態では、本発明の抗IGF1R抗体は、A12免疫グロブリン軽鎖可変領域(配列番号43)を含む:
【0074】
【数27】

本発明の一実施形態では、本発明の抗IGF1R抗体は、1A免疫グロブリン重鎖可変領域(配列番号44)を含む:
【0075】
【数28】

;必要であれば以下の変異のうちの一つ以上を含んでいる:R30、S30、N31、S31、Y94、H94、D104、E104。
【0076】
本発明の一実施形態では、本発明の抗IGF1R抗体は、1A免疫グロブリン軽鎖可変領域(配列番号45)を含む:
【0077】
【数29】

;必要であれば以下の変異のうちの一つ以上を含んでいる:P96、I96、P100、Q100、R103、K103、V104、L104、D105、E105。
【0078】
本発明の一実施形態では、本発明の抗IGF1R抗体は、単鎖抗体(fv)8A1(配列番号46)を含む:
【0079】
【数30】

本発明の一実施形態では、本発明の抗IGF1R抗体は、単鎖抗体(fv)9A2(配列番号47)を含む:
【0080】
【数31】

本発明の一実施形態では、本発明の抗IGF1R抗体は、単鎖抗体(fv)11A4(配列番号48)を含む:
【0081】
【数32】

本発明の一実施形態では、本発明の抗IGF1R抗体は、単鎖抗体(fv)7A4(配列番号49)を含む:
【0082】
【数33】

本発明の一実施形態では、本発明の抗IGF1R抗体は、単鎖抗体(fv)11A1(配列番号50)を含む:
【0083】
【数34】

本発明の一実施形態では、本発明の抗IGF1R抗体は、単鎖抗体(fv)7A6(配列番号51)を含む:
【0084】
【数35】

本発明の一実施形態では、本発明の抗IGF1R抗体またはその抗原結合性フラグメント(例えば、重鎖免疫グロブリンまたは軽鎖免疫グロブリン)は、以下の配列からなる群から選択された一つ以上の相補性決定領域(CDR)を含む:
【0085】
【数36】

本発明の一実施形態では、本発明の抗IGF1R抗体またはその抗原結合性フラグメントは、以下を含む:
【0086】
【数37】

【0087】
【数38】

【0088】
【数39】

【0089】
【数40】

【0090】
【数41】

本発明の範囲は、患者が抗インスリン様増殖因子受容体−1(IGF1R)抗体を投与される方法を含み、ここで、上記抗体の可変領域は、任意の免疫グロブリン定常領域に連結されている。一実施形態では、上記軽鎖可変領域は、κ鎖定常領域に連結されている。一実施形態では、上記重鎖可変領域は、γ1、γ2、γ3、またはγ4鎖定常領域に連結されている。本発明の一実施形態では、本明細書中に示されている任意の免疫グロブリン可変領域は、前記の定常領域のうちのいずれかに連結され得る。
【0091】
本発明の一実施形態では、本発明による方法において患者に投与され得るIGF1R抑制性因子は、AEW−541(NVP−AEW−541;NVP−AEW−541−NX−7)である:
【0092】
【化14】

本発明の一実施形態では、本発明による方法において患者に投与され得るIGF1R抑制性因子は、任意のIGF1Rアンチセンス核酸である。例えば、一実施形態では、上記アンチセンスIGF1R核酸は、ATL−1101(Antisense Therapeutics Ltd;Australia)である。一実施形態では、上記IGF1Rアンチセンス核酸は、以下のヌクレオチド配列のうちのいずれかを含む:5’−ATCTCTCCGCTTCCTTTC−3’(配列番号99)、5’−ATCTCTCCGCTTCCTTTC−3’(配列番号100)、5’−ATCTCTCCGCTTCCTTTC−3’(配列番号101)または公開された米国特許出願US20030096769;公開された国際出願WO2003/100059;Fogartyら著、Antisense Nucleic Acid Drug Dev.、2002年12月、第12巻、第6号、p.369−377;Whiteら著、J Invest Dermatol.、2002年6月、第118巻、第6号、p.1003−7;Whiteら著、Antisense Nucleic Acid Drug Dev.、2000年6月、第10巻、第3号、195−203;もしくはWraightら著、Nat Biotechnol.、2000年5月、第18巻、第5号、p.521−526のうちのいずれかに示される任意のIGF1Rアンチセンス核酸。
【0093】
本発明の一実施形態では、本発明による方法において患者に投与され得るIGF1R抑制性因子は、抗IGF−I抗体または抗IGF−II抗体である;例えば、WO2003/93317またはEP00492552に開示されている任意の抗体。
【0094】
本発明の範囲は、公開された国際出願WO2004/030627またはWO2004/030625に示されている任意のキナーゼ抑制因子化合物を含む。一実施形態では、上記キナーゼ抑制因子は、(±)−4−[2−(3−クロロ−4−フルオロ−フェニル)−2−ヒドロキシ−エチルアミノ]−3−[6−(イミダゾール−1−イル)−4−メチル−1H−ベンズイミダゾール−2−イル]−1H−ピリジン−2−オンである:
【0095】
【化15】

本発明の一実施形態では、上記IGF1R抑制性因子は、IGF1Rの可溶性フラグメント(例えば、IGF1Rのアミノ酸30位〜アミノ酸902位)またはIGF−1Rに対するsiRNA(干渉性低分子RNA)である。
【0096】
一実施形態では、IGF1Rは、Genbank登録番号XM_052648またはNM_000612で示されているアミノ酸配列を含む。
【0097】
本発明は、上記患者が、パクリタキセル、サイドマイド(thalidomide)、ドセタキセル、ゲフィチニブ、テモゾロミド(temozolomide)、ロナファルニブ(lonafarnib)、チピファルニブ(tipifarnib)、レトロゾール(letrozole)、ドキソルビシン、シスプラチン、オキサリプラチン、カンプトテカン(camptothecan)、トポテカン(topotecan)、エトポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ラロキシフェン、ゲムシタビン、レチノイン酸(retinoic acid)、タモキシフェン、トラスツズマブ、セツキシマブ(cetuximab)またはオクトレオチドが挙げられるがこれらに限定されない一つ以上他の抗癌剤;または、外科的腫瘍切除もしくは抗癌放射線治療を含むがこれらに限定されない抗癌治療手順に関連して、IGF1R抑制性因子を受ける実施形態も含む。本発明はさらに、二つ以上のIGF1R阻害性因子が一つの別の因子と関連して投与される実施形態を含む。
【0098】
用語「と関連して」は、本発明の組み合わせの成分が、同時送達のための単一の組成物として処方されてもよく、または二つ以上の組成物として別々に処方されてもよい(例えば、キット)ことを示す。さらに、本発明の組み合わせの各成分は、他の成分が投与される時とは異なる時期において被験体に投与され得る;例えば、各投与は、同時ではなく、所定の期間にわたって、何らかの間隔をおいて行われ得る。その上、上記別々の成分は、被験体に同一経路または異なる経路により(例えば、経口的に、静脈内に、腫瘍内に)投与され得る。
【0099】
(抗体の作製)
任意の適切な方法が、IGF1Rを抑制するための望ましい生物学的性質を有する抗体を誘発するために用いられ得る。マウス、齧歯動物、霊長類動物、ヒトなどのような様々な哺乳類宿主からモノクローナル抗体(mAb)を調製することが望ましい。そのようなモノクローナル抗体を調製するための技術の説明は、例えば、Stitesら編集、「BASIC AND CLINICAL IMMUNOLOGY」、第4版、Lange Medical Publications、Los Altos、CA、およびその中に引用されている参考文献;HarlowおよびLane著、「ANTIBODIES:A LABORATORY MANUAL」、CSH Press、1988年;Goding著、「MONOCLONAL ANTIBODIES:PRINCIPLES AND PRACTICE」、第2版、Academic Press、New York、NY.、1986年中に見出され得る。従って、モノクローナル抗体は、当業者に周知の多様な技術により得られ得る。典型的には、望ましい抗原で免疫された動物由来の脾臓細胞は、(一般的には骨髄腫細胞との融合により)不死化される。KohlerおよびMilstein著、Eur.J.Immunol.、1976年、第6巻、p.511−519を参照のこと。代替的な不死化の方法は、エプスタイン−バーウイルス、癌遺伝子、もしくはレトロウイルス、または当該分野で公知の他の方法による形質転換を含む。例えば、Doyleら著、「CELL AND TISSUE CULTURE:LABORATORY PROCEDURES」、1994年版および定期増刊号、John Wiley and Sons、New York、NY.を参照のこと。単一の不死化された細胞から生じたコロニーは、上記抗原に対する望ましい特異性および親和性を有する抗体の産生に関してスクリーニングされ、そして、そのような細胞により産生されるモノクローナル抗体の収量は、脊椎動物宿主の腹膜腔への注入を含む様々な技術により増強され得る。あるいは、例えば、Huseら著、Science、1989年、第246巻、p.1275−1281により概説されている一般的なプロトコルに従って、ヒトB細胞由来のDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、モノクローナル抗体またはその結合性フラグメントをコードするDNA配列を単離し得る。改変された抗体は、例えば、免疫グロブリン鎖をコードするDNA内に(例えば、従来の組換えの生物学的技術の使用によって)変異を導入することにより産生され得る。
【0100】
他の適切な技術は、ファージまたは類似のベクター中での抗体のライブラリーの選択を含む。例えば、Huseら著、Science、1989年、第246巻、p.1275−1281;およびWardら著、Nature、1989年、第341巻、p.544−546を参照のこと。本発明のポリペプチドおよび抗体は、改変を含むかまたは改変を含まずに用いられ得、これらとしては、キメラ抗体またはヒト化抗体が挙げられる。しばしば、上記ポリペプチドおよび抗体は、検出可能なシグナルを提供する物質を、共有結合または非共有結合のうちのいずれかによって連結させることにより標識される。多岐にわたる標識および結合技術が、公知であり、かつ、科学文献および特許文献の両方において広く報告されている。適切な標識としては、放射性核種、酵素、基質、補因子、抑制因子、蛍光部分、化学発光部分、磁性粒子などが挙げられる。そのような標識の使用を教示する特許としては、米国特許第3,817,837号;米国特許第3,850,752号;米国特許第3,939,350号;米国特許第3,996,345号;米国特許第4,277,437号;米国特許第4,275,149号;および米国特許第4,366,241号が挙げられる。組換え免疫グロブリンも、産生され得(Cabillyの米国特許第4,816,567号;およびQueenら著、Proc. Nat’l Acad. Sci. USA、1989年、第86巻、p.10029−10033を参照のこと);またはトランスジェニックマウス内で作製され得る(Mendezら著、Nature Genetics、1997年、第15巻、p.146−156を参照のこと)。さらに、キメラ抗体、ヒト化抗体およびヒト抗体を産生するための方法は、当該分野において周知である。例えば、Queenらに発行された米国特許第5,530,101号、Winterらに発行された米国特許第5,225,539号、Bossらに発行された米国特許第4,816,397号を参照のこと。これらの全ては、参考として全体として援用されている。
【0101】
(腫瘍解析)
本発明の方法は、腫瘍細胞が以下の特徴のうちの一つ以上を有するかどうかを決定する工程を包含する:
(i)896位チロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(ii)612位チロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(iii)任意のチロシンにおけるIRS−1のリン酸化;
(iv)IGF−IIの発現;
(v)任意のチロシンにおけるIGF1Rのリン酸化;または
(vi)IGF1Rの発現。
【0102】
腫瘍細胞は、これらの特徴のうちのどれかが存在するかどうかを決定するため、当該分野で一般的に公知のいくつかの方法のうちのいずれかによりアッセイされ得る。一実施形態では、IRS−1またはIGF1Rのチロシンリン酸化は、抗ホスホチロシン抗体を用いたウェスタンブロット解析により決定され得る。例えば、抗ホスホチロシン抗体であるPY20、PT66およびP−Try−100は、PerkinElmer Life and Analytical Sciences,Inc.(Boston、MA)から市販されている;そして抗ホスホチロシン抗体である4G10は、Upstate Cell Signaling Solutions(Waltham、MA)から市販されている。ウェスタンブロット解析は、当該分野において周知の従来の方法である。一実施形態では、IRS−1またはIGF1Rのチロシンリン酸化は、酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)または免疫沈降法により決定され得る。一実施形態では、腫瘍細胞によるIGF1RまたはIGF−IIの発現は、同様にして、ウェスタンブロット解析、免疫沈降法によるかまたはELISAにより決定され得る。当該分野において公知のいくつかの抗IGF1R抗体(例えば、本明細書中に記載されている通りのもの)のうちのいずれもが、用いられ得る。
【0103】
上記技術を適用する際の手引きを提供する多くの参考文献が、入手可能である(Kohlerら著、「Hybridoma Techniques」、Cold Spring Harbor Laboratory、New York、1980年;Tijssen著、「Practice and Theory of Enzyme Immunoassays」、Elsevier、Amsterdam、1985年;Campbell著、「Monoclonal Antibody Technology」、Elsevier、Amsterdam、1984年;Hurrell著、「Monoclonal Hybridoma Antibodies:Techniques and Applications」、CRC Press、Boca Raton、FL、1982年;Zola著、「Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques」、CRC Press,Inc.、1987年、pp.147−158)。
【0104】
本発明の一実施形態では、腫瘍細胞によるIGF−IIの発現は、IGF−IIのRNAの検出により決定され得る。本発明の一実施形態では、IGF−IIのRNAは、ノーザンブロット解析により決定される。ノーザンブロット解析は、当該分野において周知の従来の方法であり、そして、例えば、「Molecular Cloning、a Laboratory Manual」、第2版、Sambrook、Fritch、Maniatis、Cold Spring Harbor Press、10 Skyline Drive、Plainview、NY、11803−2500、1989年に記載されている。
【0105】
(投与量)
一実施形態では、IGF1R抑制性因子は、患者に「治療上有効な投与量」または「治療上有効な量」で投与される。上記「治療上有効な投与量」または「治療上有効な量」は、好ましくは、疾患または状態(例えば、腫瘍増殖)を任意の程度まで(すなわち、処置されていない被験体と比較して、好ましくは少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約40%、なお一層より好ましくは少なくとも約60%、そしてなお一層より好ましくは少なくとも約80%〜100%)抑制する。本発明の一実施形態では、用語「治療上有効な量」または「治療上有効な投与量」は、投与者(例えば、研究者、医師または獣医師)によって求められる組織、系、被験体または宿主における生物学的応答または医学的応答(これは、癌の徴候、症状および/もしくは臨床的徴候(例えば、腫瘍増殖)の測定可能な緩和、ならびに/または癌の予防、任意のグレードへの進行もしくは転移の遅延もしくは停止を包含する)を惹起するIGF1R抑制性因子(例えば、抗IGF1R抗体またはその抗原結合性フラグメント)量またはIGF1R抑制性因子投与量を意味する。。IGF1R阻害性因子が癌を抑制する能力は、ヒト腫瘍中での効力を予測する動物モデルシステムにおいて評価され得る。あるいは、効力は、本発明の処置または任意のその成分がインビトロで腫瘍細胞増殖を抑制する能力を当業者に周知のアッセイにより調べることにより評価され得る。当業者は、被験体の大きさ、被験体の症状の重症度、および選択された特定の組成物または投与経路のような要因に基づいて、そのような量を決定し得る。
【0106】
臨床家は、IGF1R抑制性因子の特定の投薬スキームにおける有効性を測定するために、当業者に公知のいくつかの方法のうちのいずれをも用い得る。例えば、腫瘍の大きさは、X線、陽電子断層撮影法(PET)スキャン、コンピュータ連動断層撮影(CT)スキャンまたは磁気共鳴画像法(MRI)のような非侵襲的経路で決定され得る。
【0107】
あるIGF1R抑制性因子が、癌の徴候、症状および/もしくは臨床的徴候(例えば、腫瘍増殖)の任意の測定可能な軽減ならびに/または癌の予防、任意のグレードへの進行もしくは転移の遅延もしくは停止を提供し得る場合、癌細胞または腫瘍細胞は、この因子に対して「応答性」である。
【0108】
投薬のレジメンは、最適の望ましい応答(例えば、治療応答)を提供するように調節され得る。例えば、用量が投与され得、いくつかの分割された用量は、期間にわたり投与され得るか、または上記用量は、その治療上の状況における緊急性により示されるのに従って比例して減少もしくは増加され得る。投与の容易さおよび投与量の均一性のために、投薬単位形態の非経口の組成物を処方することは、特に有利である。
【0109】
当業者である医師または獣医師は、必要とされる薬学的組成物の有効量を容易に決定し、かつ処方し得る。例えば、上記医師または獣医師は、上記の望ましい治療上の効果を得るために、必要とされるレベルよりも低いレベルで、薬学的組成物中に用いられているIGF1R抑制性因子の用量を開始し得、そして、上記の望ましい効果が得られるまで上記投与量を段階的に増加させ得る。IGF1R抑制性因子についての所定の用量または処置レジメンの有効性は、例えば、上記被験体中の処置されている腫瘍が縮小するかまたは増殖を止めるかのいずれかを決定することにより、決定され得る。
【0110】
本発明の一実施形態では、IGF1R抑制性因子の投与は、標的部位(例えば、腫瘍)に近接した注入による。一実施形態では、IGF1R抑制性因子またはその薬学的組成物における治療上有効な一日用量は、一日を通じて適切な間隔で別々に投与される2、3、4、5、6またはそれより多くのサブ用量として投与される。一実施形態では、任意の抗IGFR抗体(例えば、19D12/15H12 LCF/HCA)の「治療上有効な」投与量は、一日当たり、約3mg/kg(体重)〜約20mg/kg(例えば、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、11mg/kg、12mg/kg、13mg/kg、14mg/kg、15mg/kg、16mg/kg、17mg/kg、18mg/kg、19mg/kgまたは20mg/kg)の範囲内にある。一実施形態では、化学療法剤(例えば、IGF1R抑制性因子)の「治療上有効な投与量」は、可能である場合はいつでも、本明細書中に参考として援用されているThomsonHealthcare著、「Physicians’Desk Reference 2003」、第57版、2002年11月1日に示されている通りである。例えば、本発明の一実施形態では、NVP−ADW−742の治療上有効な投与量は、約1mg/kg/日〜約50mg/kg/日(例えば、5mg/kg/日、10mg/kg/日、15mg/kg/日、20mg/kg/日、25mg/kg/日、30mg/kg/日、35mg/kg/日、40mg/kg/日、45mg/kg/日)である。
【0111】
(治療法および投与)
IGF1R抑制性因子は、悪性細胞のような任意の細胞の増殖(growth)または繁殖(proliferation)を、インビトロ(例えば、細胞培養物中)またはインビボ(例えば、IGF1Rの上昇した発現もしくは活性によるかまたはそのリガンド(例えば、IGF−IまたはIGF−II)の上昇した発現により媒介される疾患に罹患している被験体の体内)のいずれかで抑制または減少させるために用いられ得る。そのような細胞の増殖または繁殖の抑制または減少は、上記細胞を上記IGF1R抑制性因子と接触させることにより達成され得る。
【0112】
一実施形態では、IGF1R抑制性因子は、以下の特徴のうちの一つ以上によって特徴づけられる患者において癌を処置するためのものである:(i)896位チロシンにおけるIRS−1のリン酸化;(ii)612位チロシンにおけるIRS−1のリン酸化;(iii)任意のチロシンにおけるIRS−1のリン酸化;(iv)IGF−IIの発現;(v)任意のチロシンにおけるIGF1Rのリン酸化;または(vi)IGF1Rの発現。例えば、一実施形態では、上記癌は、膀胱癌、ウィルムス癌、骨癌、前立腺癌、肺癌、子宮内膜癌、多発性骨髄腫、非小細胞肺癌(NSCLC)、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、乳癌(エストロゲン受容体陽性またはエストロゲン受容体陰性)、子宮頸癌、滑膜肉腫、卵巣癌、膵臓癌、神経芽腫、横紋筋肉腫、骨肉種、転移性カルチノイドまたは血管作動性腸管ペプチド分泌性腫瘍に関連した下痢(例えば、ビポーマまたはヴァーナー−モリソン症候群)である。
【0113】
一実施形態では、IGF1R抑制性因子で処置するべき見込みのある患者が、以下の特徴のうちの一つを表すことが一般に知られている様々な癌に罹患しているかどうかは、最初に決定される:(i)896位チロシンにおけるIRS−1のリン酸化;(ii)612位チロシンにおけるIRS−1のリン酸化;(iii)任意のチロシンにおけるIRS−1のリン酸化;(iv)IGF−IIの発現;(v)任意のチロシンにおけるIGF1Rのリン酸化;または(vi)IGF1Rの発現。上記患者が、上記に示した6つの特徴のうちの一つ以上により特徴づけられることが既知の癌に罹患していると決定された場合、その患者は、IGF1R抑制性因子での処置のために選択される。腫瘍の型は、以下の場合、上記に列挙された特徴のうちのいずれかを含むことが既知であり得る;例えば、そのようなものが科学文献(例えば、定期刊行の雑誌もしくは教科書)で確立されている場合、またはそのようなものが当業者に周知の場合、またはそのような特徴が一人以上の患者もしくは一つ以上の腫瘍中に観察されたことがある場合、またはそのようなものが実験データ(例えば、インビトロのデータまたは動物のデータを含むインビボのデータ)から合理的に推測され得る場合。
【0114】
本発明の一実施形態では、見込みのある患者の個々の腫瘍が解析され、そして、その腫瘍が以下の6つの特徴のうちの一つ以上を表すかどうかが決定される:(i)896位チロシンにおけるIRS−1のリン酸化;(ii)612位チロシンにおけるIRS−1のリン酸化;(iii)任意のチロシンにおけるIRS−1のリン酸化;(iv)IGF−IIの発現;(v)任意のチロシンにおけるIGF1Rのリン酸化;または(vi)IGF1Rの発現。この実施形態では、上記患者の腫瘍が上記に示した6つの特徴のうちの一つ以上により特徴づけられると決定された場合、その患者は、IGF1R抑制性因子での処置のために選択される。一実施形態では、上記患者の腫瘍が、(i)896位チロシンにおけるIRS−1のリン酸化または(ii)612位チロシンにおけるIRS−1のリン酸化という特徴を表すどうかが最初に決定される;次いで、そのような特徴が同定された場合、上記腫瘍が(iv)IGF−IIの発現という性質を含むかどうかが決定される;上記患者の腫瘍が(i)または(ii)の特徴および(iv)の特徴を表すことが決定される場合、その後、その患者は、IGF1R抑制性因子での処置のために選択される。
【0115】
特定の患者の腫瘍由来の細胞は、外科的に、例えば、外科的生検により得られ得る。例えば、腫瘍生検は、内視鏡生検、切除生検もしくは切開生検、または細針吸引(FNA)生検により採られ得る。
【0116】
用語「患者」または「被験体」は、任意の生物体、好ましくは、動物、より好ましくは、哺乳動物(例えば、ラット、マウス、イヌ、ネコ、ウサギ)、および最も好ましくは、ヒトを含む。
【0117】
上記の通り、本発明の一実施形態では、可能な場合、IGF1R抑制性因子は、「Physicians’Desk Reference 2003」、(ThomsonHealthcare;第57版(2002年11月1日))に従うかまたは本明細書中に示されている通りに、被験体に投与される。
【0118】
IGF1R抑制性因子は、注入(上記を参照のこと)によるような侵襲性経路により投与され得る。非侵襲性経路(例えば、経口的に;例えば、丸剤、カプセル、または錠剤で)による投与も、本発明の範囲内である。本発明の一実施形態では、抗IGF1R抗体(例えば、15H12/19D12 LCF/HCA)またはその薬学的組成物は、静脈内に、皮下に、筋肉内に、動脈内に、または腫瘍内に投与される。
【0119】
IGF1R抑制性因子は、当該分野において公知の医学的デバイスを用いて投与され得る。例えば、本発明の薬学的組成物は、皮下針を用いた注入により投与され得る。
【0120】
本発明の薬学的組成物は、以下の針のない皮下注入デバイスを用いても投与され得る;例えば、米国特許第6,620,135号;米国特許第6,096,002号;米国特許第5,399,163号;米国特許第5,383,851号;米国特許第5,312,335号;米国特許第5,064,413号;米国特許第4,941,880号;米国特許第4,790,824号または米国特許第4,596,556号に開示されているデバイス。
【0121】
薬学的組成物を投与するための周知のインプラントおよびモジュールの例は以下のものを含む:制御された速度で薬剤を分配するための移植可能な微量注入ポンプを開示する米国特許第4,487,603号;正確な注入速度で薬剤を送達するための薬剤注入ポンプを開示する米国特許第4,447,233号;連続的な薬物送達のための流速可変式移植可能注入装置を開示する米国特許第4,447,224号;マルチチャンバー区画を有する浸透圧薬剤送達システムを開示する米国特許第4,439,196号。多くの他のそのようなインプラント、送達システム、およびモジュールは、当業者に周知である。
【0122】
(薬学的組成物)
IGF1R抑制性因子は、インビボでの患者への投与に適切な薬学的に許容されたキャリアと共に、薬学的組成物に組み込まれ得る。本発明の範囲は、(例えば、経口注入、眼注入、局所性注入、肺注入(吸入)、腫瘍内注入、静脈内注射、皮下注射、または筋肉内注射を含む)任意の経路により被験体に投与されるのに適切な薬学的組成物を含む。
【0123】
処方に関する一般情報については、例えば、Gilmanら編集、「The Pharmacological Bases of Therapeutics」、第8版、Pergamon Press、1990年;A.Gennaro編集、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、第18版、Mack Publishing Co.,Easton,Pennsylvania.,1990年;Avisら編集、「Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications」、Dekker,New York、1993年;Liebermanら編集、「Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets」、Dekker,New York、1990年;およびLiebermanら編集、「Pharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems」、Dekker,New York、1990年、Kenneth A. Walters編集、「Dermatological and Transdermal Formulations(Drugs and the Pharmaceutical Sciences)」、Marcel Dekker.、第119巻、2002年を参照のこと。
【0124】
薬学的に許容可能なキャリアは、当該分野において通常かつ非常に周知である。例は、生理的に適合する、水性キャリアおよび非水性キャリア、安定剤、抗酸化剤、溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤、緩衝液、血清タンパク質、等張化剤、吸収遅延剤などを含む。好ましくは、上記キャリアは、被験体の体内への注入に適切である。
【0125】
本発明の薬学的組成物中に用いられ得る適切な水性キャリアおよび非水性キャリアの例は、水、エタノール、(グリセロール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどのような)ポリオール、および適切なその混合物、オリーブ油のような植物油、およびオレイン酸エチルのような注入可能な有機エステルを含む。適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティング材料の使用、分散において必要とされる粒子サイズの維持、および界面活性剤の使用により維持され得る。
【0126】
薬学的に許容可能な抗酸化剤の例は、以下のものを含む:アスコルビン酸、システイン塩酸塩、硫酸水素ナトリウム、メタ亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどのような水溶性抗酸化剤;および、アスコルビン酸パルミテート、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ−トコフェロールなどのような脂溶性抗酸化剤;および、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などのような金属キレート剤。
【0127】
微生物の存在の防止は、滅菌操作とEDTA、EGTA、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などのような様々な抗菌剤の包含との両者により保証され得る。
【0128】
本発明の薬学的組成物中に含まれ得る適切な緩衝液としては、L−ヒスチジンを基にした緩衝液、リン酸塩を基にした緩衝液(例えば、リン酸緩衝化食塩水、pHは7にほぼ等しい)、ソルビン酸塩を基にした緩衝液またはグリシンを基にした緩衝液が挙げられる。
【0129】
本発明の薬学的組成物中に含まれ得る血清タンパク質は、ヒト血清アルブミンを含み得る。
【0130】
糖(例えば、スクロース)、エタノール、ポリアルコール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体のポリエチレングリコール、マンニトールまたはソルビトール)、クエン酸ナトリウムまたは塩化ナトリウム(例えば、緩衝化された食塩水)のような等張化剤も、本発明の薬学的組成物中に含まれ得る。本発明の一実施形態では、上記糖(例えば、グルコースまたはスクロース)は、高濃度(例えば、約10〜100mg/ml、例えば、50mg/ml、60mg/ml、または70mg/ml)で存在する。
【0131】
注入可能な薬学的形態の長期の吸収は、モノステアリン酸アルミニウムおよび/またはゼラチンのような吸収を遅延させる物質の包含により達成され得る。
【0132】
分散液も、グリセロール、液体のポリエチレングリコールおよびその混合物中、ならびに油中で調製され得る。
【0133】
薬学的に許容可能なキャリアとしては、滅菌水性溶液または滅菌水性分散液および滅菌の注入可能な溶液または分散液を即時調製するための滅菌粉末が挙げられる。薬学的に活性な物質についてのそのような媒質および薬剤の使用は、当該分野において周知である。
【0134】
抗IGF1R抗体を含む滅菌の注入可能な溶液は、上記必要とされる量の上記抗体またはその抗原結合性フラグメントを、必要に応じて上に列挙された成分のうちの一つまたは組み合わせとともに適切な溶媒中にて組み込み、必要な場合、続けて滅菌微細濾過を行うことにより調製され得る。一般的に、分散液は、基本的分散媒質および上に列挙されているものからの必要とされる他の成分を含む滅菌ビヒクルに上記抗体を組み込むことにより調製される。滅菌の注入可能な溶液の調製用の滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、予め滅菌濾過されたその溶液から、上記活性成分に加えて付加的な望ましい成分の粉末を生じる、真空状態での乾燥および凍結状態での乾燥(凍結乾燥)である。
【0135】
本発明の一実施形態では、本発明の抗IGF1R抗体は、治療上有効な量の上記抗体、緩衝液およびスクロースを含む薬学的処方物中にある。例えば、本発明の一実施形態では、上記緩衝液は、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液、グリシン緩衝液、または酢酸緩衝液のうちのいずれかである。上記薬学的処方物は、任意の適切なpH範囲内にあり得る。本発明の一実施形態では、上記pHは、5.0、5.5、6.0、7.5、または約5.5と約6との間、または約5と約7との間である。
【0136】
抗IGF1R抗体またはその抗原結合性フラグメントを含むIGF1R抑制性因子は、経口的に投与され得る。経口投与のための薬学的組成物は、その結合性組成物に加えて、デンプン(例えば、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプンもしくはコムギデンプンまたはセルロース)、デンプン誘導体(例えば、微結晶性セルロースまたはシリカ)、糖(例えば、ラクトース)、タルク、ステアラート、炭酸マグネシウムまたはリン酸カルシウムのような添加物を含み得る。本発明の抗体または抗原結合性フラグメントを含む経口的組成物が上記患者の消化器系によって充分に許容されることを保証するために、粘液形成剤またはレジンが、含まれ得る。上記抗体または抗原結合性フラグメントを胃液中で不溶性であるカプセル中に処方することにより許容性を高めることも、所望され得る。カプセル形態の例示的な本発明の薬学的組成物は、標準的な二部構成の硬いゼラチンカプセルを、粉末形態の本発明の抗体または抗原結合性フラグメント、ラクトース、タルクおよびステアリン酸マグネシウムで満たすことにより調製される。免疫グロブリンの経口投与が、記載されている(Fosterら著、「Cochrane Database System rev. 3:CD001816」、2001年)。
【0137】
IGF1R抑制性因子は、局所的投与のための薬学的組成物中にも含まれ得る。局所的投与に適切な処方物としては、リニメント剤、ローション剤、クリーム剤、軟膏剤またはパスタ剤、および眼、耳または鼻への投与に適切な、滴剤のような、処置が必要な部位への皮膚を通じた浸透に適切な、液体調製物または半液体調製物が挙げられる。
【0138】
滴剤としては、滅菌の水性溶液または油性溶液または水性懸濁液または油性懸濁液が挙げられ得、そして、滴剤は、IGF1R抑制性因子を、殺菌剤および/または防かび剤および/または任意の他の適切な防腐剤の適切な水溶液であって、好ましくは、界面活性剤を含む水溶液中に溶解させることにより調製され得る。その結果生じた溶液は、その後、濾過により清澄化され得る。
【0139】
本発明によるローション剤は、皮膚または眼に対する適用に適切なローション剤を含む。眼用ローション剤は、必要であれば殺菌剤を含む無菌の水溶液を含み得、そして、滴剤の調製のための方法と類似する方法により調製され得る。皮膚に対する適用用のローション剤またはリニメント剤は、乾燥を促進しかつ皮膚を冷やすための因子(例えば、アルコールまたはアセトン)、および/あるいは保湿剤(例えば、グリセロールまたはひまし油もしくは落花生油のような油)も含み得る。
【0140】
本発明によるクリーム剤、軟膏剤またはパスタ剤は、外用のための上記活性成分の半固体処方物である。それらは、細かく分割された形態または粉末化された形態のIGF1R抑制性因子を単独かまたは水性流体もしくは非水性流体中の溶液もしくは懸濁液中で、適切な機械の助けを借りて脂肪性基剤または非脂肪性基剤と混合することにより作製され得る。上記基剤としては、炭化水素(例えば、硬質、軟質または液体のパラフィン)、グリセロール、蜜ろう、金属性石けん;漿剤;扁桃油、トウモロコシ油、落花生油、ひまし油またはオリーブ油のような天然起源の油;羊毛脂もしくはその誘導体、またはポリプロピレングリコールもしくはマクロゲル(macrogel)のようなアルコールと一緒になったステアリン酸もしくはオレイン酸のような脂肪酸が挙げられ得る。上記処方物は、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、または非イオン性界面活性剤(例えば、ソルビタンエステルもしくはそのポリオキシエチレン誘導体)のような任意の適切な界面活性剤を組み込み得る。懸濁化剤(例えば、天然ゴム)、セルロース誘導体、または無機物質(例えば、ケイ質(silicaceous)シリカ)、および他の成分(例えば、ラノリン)も、含まれ得る。
【0141】
IGF1R抑制性因子は、吸入によっても投与され得る。吸入用の適切な薬学的組成物は、エアロゾルであり得る。本発明の抗体または抗原結合性フラグメントの吸入のための例示的な薬学的組成物は、以下のものを含み得る:(好ましくは、1,2−ジクロロテトラフルオロエタンおよびジフルオロクロロメタンとの組み合わせ中の)フレオンのような推進剤中に分散された、本発明の抗体または抗原結合性フラグメント、潤滑剤(ポリソルベート85またはオレイン酸例えば、)を含む15〜20mlの容量のエアロゾル容器。好ましくは、上記組成物は、経鼻吸入投与または経口吸入投与のために適合された適切なエアロゾル容器中にある。
【0142】
(キットおよび製造物)
本発明のキットおよび製造物は、薬学的処方物(より好ましくは、丸剤、散剤、注入可能な液剤、錠剤、分散可能な顆粒剤、カプセル剤、カシェ剤または坐剤のような薬学的な投薬形態の)中に(好ましくは薬学的に許容可能なキャリアと組み合わせた)IGF1R抑制性因子を含む。例えば、Gilmanら編集、(1990),「The Pharmacological Bases of Therapeutics」、第8版、Pergamon Press;および「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、前出、Easton,Penn.;Avisら編集、「Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications」、Dekker,New York、1993年;Liebermanら編集、「Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets」、Dekker,New York、1990年;およびLiebermanら編集、「Pharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems」、Dekker,New York.、1990年を参照のこと。
【0143】
本発明のキットおよび製造物は、例えば、IGF1R抑制性因子の標的がIGF1Rであることを示す、パッケージ挿入物またはラベルの形態の情報も含む。用語「標的」は、上記因子が、IGF1Rのリガンド結合性、キナーゼ活性、発現または任意の他の生物学的活性をなんらかの方法で減少または抑制することを示す。上記挿入物またはラベルは、紙または磁気記録媒体(例えば、フロッピー(登録商標)ディスク)もしくはCD−ROMのような電子媒体のような、任意の形態を採り得る。
【0144】
上記ラベルまたは挿入物は、上記キットまたは製造物中の薬学的組成物および投与形態に関する他の情報も含み得る。一般的に、そのような情報は、患者および医師が上記同封された薬学的組成物および投与形態を効果的かつ安全に用いることを手助けする。例えば、上記IGF1R抑制性因子に関する以下の情報が、上記挿入物中に提供され得る:薬物動態、薬理、臨床試験、効能パラメータ、適応症および用途、禁忌、警告、予防措置、有害な反応、過剰投与量、適切な投与量および投与、供給方法、適切な保存条件、参考文献、および患者の情報。
【実施例】
【0145】
この節は、本発明をさらに説明することが意図されており、本発明をさらに限定すると解釈されるべきでない。本明細書中に示される任意の組成物または方法は、本発明の一部分を構成する。
【0146】
この実施例では、ヒト肺腫瘍組織中のIRS−1のリン酸化のレベルを、正常組織試料のものと比較し、そしてIRS−1のリン酸化のレベルが腫瘍細胞中では正常細胞中よりも高いことを見出した。なお、抗IGF1R抗体である19D12/15H12 LCF/HCAのインビボでの効力を、IGF−1が有するIRS−1のリン酸化を引き起こす能力と相関させた。さらに、IGF−IIのmRNA発現のレベルを、56個の様々な正常の卵巣組織試料および結腸直腸組織試料ならびに癌性の卵巣組織試料および結腸直腸組織試料中にて評価し、そしてIGF−IIのmRNA発現のレベルがいくつかの腫瘍組織試料中で高いことを見出した。
【0147】
(腫瘍溶解産物の調製)
初めに腫瘍組織の体重を量り、次いでドライアイス上の予め冷やしておいた粉末化装置で腫瘍組織を粉末化して細かい粉にした。腫瘍粉末をチューブに移し、そして4.5×の体積の緩衝液A(すなわち、100mgの組織あたり450μlの緩衝液A)を添加した。上記試料を30秒間超音波破砕し、0.5×体積の緩衝液B(すなわち、100mgの組織粉末あたり50μlの緩衝液Bを添加)を添加した。次いで、氷上での30分間のインキュベーションの後、試料を13,000rpmで20分間4℃にて遠心した。上澄みを回収し、そして上記溶解産物のタンパク質濃度をBio−Radアッセイにより決定した。
【0148】
緩衝液A:50mMのHepes、pH7.4、150mMのNaCl、5%のグリセロール、1.5mMのMgCl2、2mMのバナジン酸ナトリウム、5mMのNaF、プロテアーゼ阻害剤(Rocheのカタログ番号1,873,580の、2×濃度のC complete EDTA−free)、Phosphatase inhibitor Cocktail 1(Sigma p2850)、Phosphatase inhibitor Cocktail 2(Sigma p5726)。
【0149】
緩衝液B:緩衝液Aに10%のTriton−100を加えたもの。
【0150】
(細胞培養物の溶解産物の調製)
細胞を一回PBS中にて洗浄し、50mMのHepes、pH7.4、150mMのNaCl、10%のグリセロール、1%のTriton X−100、1.5mMのMgCl2、2mMのNa3VO4、およびプロテアーゼ阻害剤カクテル(Complete TM、Roche Diagnostics GmbH;Mannheim、Germany)を含む緩衝液中に溶解させた。氷上での30分間のインキュベーションの後、試料を13,000rpmで10分間4℃にて回転させた。上澄みを回収し、そして上記溶解産物のタンパク質濃度をBio−Radアッセイにより決定した。
【0151】
(ウェスタン解析)
細胞溶解産物または腫瘍溶解産物の等量をSDS−PAGEにより分離し、ニトロセルロースフィルターへ写し、望ましい抗体でプローブし、そしてECL(Amersham;Piscataway、NJ)により可視化した。IGFR検出用抗体およびIRS−1検出用抗体を、Santa Cruz Biotechnology(Santa Cruz、CA)から入手した。ホスホ−IRS1[pY896]に対する抗体およびホスホ−IRS1[pY612]に対する抗体を、Biosource(Camarillo、CA)から入手した。
【0152】
(IGF−IIタンパク質の測定)
様々な細胞株に由来する細胞を、10%のFBSを含む培地中にてT−175プレート内に播種した。細胞を接着させた後、培地を無血清培地へ変えた。培地を回収し、全ての残屑をスピンダウンし、そして上澄みを凍結乾燥させた。上記プレート上の細胞をトリプシン処理し、そして計数した。各々の凍結乾燥させた上澄み試料に水を添加した(1ml/2×10個の細胞)。IGF−IIを、DSLから入手したIGF−II ELISAキット(DSL−10−2600)を用いて測定した。IGF−IIの量を標準曲線により決定し、そして1×10個の細胞あたりのIGF−IIのナノグラムとして報告した。
【0153】
(IGF−IIのmRNAの測定)
RNAを腫瘍試料から作製し、そしてcDNAを合成した。IGF−IIの発現を、20ngのcDNA試料について、特異的プローブおよび特異的プライマーを用いた蛍光発生性5’−ヌクレアーゼPCRアッセイ(Fluorogenic 5’−nuclease PCR assay)において、ABI Prism 7700 Sequence Detection System(Applied Biosystems;Foster City、CA)を用いて解析した。CTの数を、全ての試料中のユビキチン(参考遺伝子)のmRNAの発現を決定することにより正規化した。
IGF2/フォワード:AGGAGCTCGAGGCGTTCAG(配列番号102)
IGF2/リバース:GTCTTGGGTGGGTAGAGCAATC(配列番号103)
プローブ:AGGCCAAACGTCACCGTCCCC(配列番号104)
(マウスにおける異種移植片モデル)
Matrigel中の400万個〜500万個のヒト腫瘍細胞(H322、H838、A2780、ES2、MCF7、SW−527、SK−N−AS、SK−N−MC)を皮下的に各ヌードマウスに接種した。上記腫瘍の大きさが少なくとも約50mmに達したときに19D12/15H12 LCF/HCA処置を開始し、そして一週あたり二回の投薬を続行した。19D12/15H12 LCF/HCAを各ヌードマウスの腹腔内に、0.004mg/マウス、0.02mg/マウス、0.1mg/マウスまたは0.5mg/マウスで注入した。腫瘍体積をLabcatにより測定した。
【0154】
(ヒト肺の癌組織試料および正常組織試料中におけるIRS−1のリン酸化のレベル)
12対の正常のヒト肺組織試料および癌性のヒト肺組織試料を患者から得た。細胞溶解産物を上記組織試料から調製し、そしてウェスタンブロット解析、上記の通りの抗ホスホ−IRS1[pY896]抗体を用いた染色に供した。IRS−1全体も抗IRS抗体を用いた染色により測定した。
【0155】
これらの実験で生じた上記ウェスタンブロットのデータを図1に示す。評価した12対の試料のうちの6対(50%)では、腫瘍組織試料中にて、対応する正常組織試料よりも高いホスホ−IRS−1のレベルが観察された。
【0156】
正常の結腸直腸組織試料および癌性の結腸直腸組織試料の中のIRS−1のリン酸化のレベルを測定したところ、同様の結果を得た。上記結腸直腸組織試料を、上記肺組織試料を評価した方法と本質的に同じく評価した。
【0157】
(19D12/15H12 LCF/HCAのインビボでの効力とIRS−1のリン酸化との相関)
19D12/15H12 LCF/HCA抗体のインビボでの効力を評価するために、ヒト腫瘍異種移植片を保有するヌードマウスに上記抗体またはアイソタイプ対照を投与し、そして上記の通りの期間にわたって腫瘍体積を評価した。
【0158】
腫瘍細胞株中のIRS−1のリン酸化を評価するために、細胞株を100ng/mlのIGF−Iの存在下または不在下で増殖させた。A2780細胞、ES2細胞、H322細胞、H838細胞およびSK−N−AS細胞の細胞溶解産物をその後調製し、そして上記の通りのウェスタンブロット解析により評価した。
【0159】
上記インビボでの効力についての実験結果を図2に示す。上記19D12/15H12 LCF/HCA抗体は、インビボでいくつかの型の腫瘍(例えば、非小細胞肺癌、卵巣癌、乳癌、神経芽細胞腫)の増殖を阻害する点において有効であることが見出された。
【0160】
腫瘍細胞中の基底IRS−1リン酸化およびIGF−I刺激されたIRS−1リン酸化を測定する実験の結果を図3に示す。評価されたA2780細胞株、H322細胞株およびSK−N−AS細胞株は、最も高い、IRS−1の基底リン酸化およびIRS−1のIGF−I刺激されたリン酸化を表した。
【0161】
インビボにおいて19D12/15H12 LCF/HCA(図2)による増殖阻害に最も敏感な細胞株は、最も高い、基底IRS−1リン酸化およびIGF−I刺激されたIRS−1リン酸化を示した細胞株であった(図3)。
【0162】
(卵巣腫瘍試料および結腸直腸腫瘍試料の中のIGF−IIのmRNA発現のレベル)
正常の卵巣組織試料および結腸直腸組織試料ならびに癌性の卵巣組織試料および結腸直腸組織試料を多発性癌患者から得た。IGF−IIのmRNA発現のレベルを上記の通りのTaqman解析により評価した。各卵巣組織試料中のIGF−IIのmRNA発現のレベルを図4に示し、そして各結腸直腸組織試料中のIGF−IIのmRNA発現のレベルを図5に示す。これらの実験では、卵巣腫瘍試料のうちの20%が正常の卵巣組織試料と比較してIGF−IIのmRNAを過剰発現することが見出された。結腸直腸試料のうちの53%が隣接する正常の結腸直腸試料と比較してIGF−IIのmRNAを過剰発現することが見出された。
【0163】
本発明は、本明細書中に記載された特定の実施形態によって範囲が制限されない。むしろ、本明細書中に記載されたものに加えて、本発明の様々な改変が、前の記載および付随する図から当業者にとって明白となる。そのような改変は、添付された特許請求の範囲の範囲内にあることが意図される。
【0164】
特許、特許出願、Genbank登録番号および刊行物が、本出願を通じて引用されており、これらの開示は、本明細書中に参考として全体として援用される。
【0165】






















































































【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−157397(P2011−157397A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−108837(P2011−108837)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【分割の表示】特願2007−544441(P2007−544441)の分割
【原出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation
【Fターム(参考)】