説明

抵抗加熱式ヒータの寿命予測方法及び熱処理装置

【課題】 抵抗加熱式ヒータの寿命予測を正確かつ任意のタイミングで行えるようにする。
【解決手段】 抵抗加熱式ヒータの温度を通電時間で積分した積分値と抵抗加熱式ヒータの寿命との関係を示す寿命判定用情報を、抵抗加熱式ヒータと同型のヒータを用いて予め取得しておき、抵抗加熱式ヒータへの通電開始後は、抵抗加熱式ヒータの温度を温度センサにより検出し、通電開始後からの抵抗加熱式ヒータの温度を通電時間で積分し、温度の積分値と寿命判定用情報とを比較して抵抗加熱式ヒータの寿命を予測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗加熱式ヒータの寿命予測方法及び熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
DRAM等の半導体装置の製造装置として、処理室内に搬入されたシリコンウエハ等の基板を抵抗加熱式ヒータにより加熱して処理する熱処理装置が知られている(例えば特許文献1〜3参照)。なお、抵抗加熱式ヒータは、加熱を繰り返すことで除々に劣化して断線してしまう。熱処理中の不測の断線を防ぐため、抵抗加熱式ヒータの寿命を予測し、寿命が近づいたら交換する必要がある。
【0003】
抵抗加熱式ヒータの寿命は、以下のような方法で予測できる。すなわち、抵抗加熱式ヒータは、高温で昇降温を繰り返すことで塑性変形による伸びが生じ、電気抵抗値が増加するという特性を有している。そのため、抵抗加熱式ヒータを流れる電流と印加電圧とを測定して電気抵抗値の変化を監視すれば、寿命を予測できる。また、抵抗加熱式ヒータの電気抵抗値が増加した場合、印加する電圧が一定であれば電流が減少して発熱量が低下することとなる。一定温度で安定させるには、減少した発熱量を補うために電圧を増加させる必要がある。従って、一定温度で安定させるための印加電圧の変化を監視すれば、寿命を予測できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−125447号公報
【特許文献2】特開平11−54244号公報
【特許文献3】特開2000−223427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、抵抗加熱式ヒータの素線は、温度によって電気抵抗値が変化する金属等から形成されている。そのため、電気抵抗値の増加量を監視することにより抵抗加熱式ヒータの寿命を予測する方法では、寿命を正確に予測することは困難であった。また、印加電圧の増加量を監視することにより抵抗加熱式ヒータの寿命を予測する方法では、抵抗加熱式ヒータの温度を一定温度に保つ工程を実施する際にしか判定を行うことが出来ず、寿命予測を任意のタイミングで行うことは困難であった。
【0006】
本発明は、抵抗加熱式ヒータの寿命予測を正確かつ任意のタイミングで行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、
抵抗加熱式ヒータの寿命予測方法であって、
前記抵抗加熱式ヒータの温度を通電時間で積分した積分値と前記抵抗加熱式ヒータの寿命との関係を示す寿命判定用情報を、前記抵抗加熱式ヒータと同型のヒータを用いて予め取得しておき、
前記抵抗加熱式ヒータへの通電開始後は、前記抵抗加熱式ヒータの温度を温度センサにより検出し、通電開始後からの前記抵抗加熱式ヒータの温度を通電時間で積分し、前記温度の積分値と前記寿命判定用情報とを比較して前記抵抗加熱式ヒータの寿命を予測する抵抗加熱式ヒータの寿命予測方法が提供される。
【0008】
本発明の他の態様によれば、
抵抗加熱式ヒータと、
前記抵抗加熱式ヒータの温度を検出する温度センサと、
前記温度センサに接続される制御部と、を備える熱処理装置であって、
前記制御部は、
前記抵抗加熱式ヒータの温度を通電時間で積分した積分値と前記抵抗加熱式ヒータの寿命との関係を示す寿命判定用情報を読み出し可能に保持しており、
前記抵抗加熱式ヒータへの通電開始後は、前記抵抗加熱式ヒータの温度を前記温度センサから受信し、通電開始後からの前記抵抗加熱式ヒータの温度を通電時間で積分し、前記温度の積分値と前記寿命判定用情報とを比較して前記抵抗加熱式ヒータの寿命を予測するよう構成されている熱処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、抵抗加熱式ヒータの寿命予測を正確かつ任意のタイミングで行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る熱処理装置が備える処理炉の縦断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る熱処理装置が備えるコントローラの概略構成図である。
【図3】本発明の実施例に係る抵抗加熱式ヒータの寿命予測工程を示すフロー図である。
【図4】ヒータ温度とヒータ供給電力との関係を例示するグラフ図である。
【図5】寿命率とヒータ温度との関係を例示するグラフ図である。
【図6】寿命率及び発熱指数とヒータ温度との関係を例示するグラフ図である。
【図7】温度係数(抵抗温度係数)とヒータ温度との関係を例示するグラフ図である。
【図8】温度係数の逆数(温度係数補正値)と素線温度との関係を例示するグラフ図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係るヒータユニットの概略構成図である。
【図10】本発明の第1の実施形態に係る抵抗加熱式ヒータの概略構成図である。
【図11】本発明の第1の実施形態に係る素線の形状を例示する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<本発明の第1の実施形態>
以下に、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る熱処理装置が備える処理炉202の縦断面図である。また、図2は、本実施形態に係る熱処理装置が備えるコントローラ280の概略構成図である。
【0012】
(1)熱処理装置の構成
まず、本実施形態に係る熱処理装置の構成について説明する。本実施形態に係る熱処理装置は、一例として、処理室内に収容された複数枚の基板を加熱し、基板上に薄膜を形成するバッチ式縦型熱処理装置(基板処理装置)として構成されている。
【0013】
(処理炉の構成)
図1に示す通り、本実施形態に係る処理炉202は、処理管としてのプロセスチューブ203を備えている。プロセスチューブ203は、例えば石英(SiO)や炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成され
ている。処理室201内には、基板としてのウエハ200を、基板支持部材としての後述するボート217によって水平姿勢で垂直方向に多段に積層させた状態で収容可能に構成されている。
【0014】
プロセスチューブ203の下方には、プロセスチューブ203の下端開口(炉口)を気密に閉塞可能な真空気密板(炉口蓋体)としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、例えばステンレス等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、プロセスチューブ203の下端と当接する図示しないOリングがシール部材として設けられている。シールキャップ219の下方には、ボート回転機構267が設置されている。ボート回転機構267の回転軸は、シールキャップ219を鉛直方向に貫通してボート217を下方から支持している。ボート回転機構267を作動させることで、処理室201内でボート217を回転可能なように構成されている。また、シールキャップ219は、プロセスチューブ203の外部に配置された図示しない昇降機構によって垂直方向に昇降されるように構成されている。シールキャップ219を昇降させることで、ボート217を処理室201内外に搬送可能なように構成されている。
【0015】
基板支持部材としてのボート217は、複数枚のウエハ200を水平姿勢でかつ互いに中心を揃えた状態で整列させ、多段に支持するように構成されている。ボート217は、複数本(例えば4本)の支柱と、支柱を立設させる底板と、支柱を上部から支持する天板と、を備えている。支柱には、ウエハ200を下方から支持する支持部材が、所定の間隔でそれぞれ配列している。ボート217の下部には、例えば石英や炭化珪素等の耐熱材料からなる断熱筒217aが設けられており、ヒータユニット207からの熱をシールキャップ219側に伝え難くするように構成されている。
【0016】
プロセスチューブ203の側方下部には、処理室201内に所定の処理ガスを供給するガス供給管238の下流端が接続されている。プロセスチューブ203とガス供給管238との接続箇所には、ガス供給口が形成されている。ガス供給管238には、上流側から順に、処理ガス供給源、流量制御コントローラ、開閉バルブ(いずれも図示しない)が設けられている。開閉バルブを開閉することで、流量制御コントローラにより流量制御された処理ガスの処理室201内への供給を制御できるように構成されている。
【0017】
プロセスチューブ203の側方下部であって、ボート217を挟んでガス供給口と対向する位置には、排気管231の上流端が接続されている。プロセスチューブ203と排気管231との接続箇所には、排気口が形成されている。排気管231には、上流側から順に、圧力センサ、圧力調整器、真空排気装置(いずれも図示しない)が設けられている。なお、圧力調整器は、弁を開閉することで処理室201内の真空排気を開始或いは停止させることができ、弁開度を調整することで処理室201内の圧力を調整することができるよう構成された開閉弁(APCバルブ)である。
【0018】
(ヒータユニットの構成)
プロセスチューブ203の外側には、プロセスチューブ203内(処理室201内)を加熱する加熱装置としてのヒータユニット207が、プロセスチューブ203を囲うように設けられている。ヒータユニット207は、発熱体としての複数の抵抗加熱式ヒータ207aと、各抵抗加熱式ヒータ207aを保持する円筒状の断熱体207fと、を備えている。
【0019】
抵抗加熱式ヒータ207aは、図1及び図9に示すように、鉛直方向に少なくとも1つ以上設けられている。また、図1では図示を省略しているが、抵抗加熱式ヒータ207aは、それぞれプロセスチューブ203を囲うように環状に設けられている。抵抗加熱式ヒ
ータ207aは、図10に示すように、環状に構成された発熱体である素線(ヒータ素線)207rと、素線207rの両端部に設けられた一対の給電部207tと、をそれぞれ備えている。一対の給電部207tが設けられた素線207rの両端部は、接触することなく近接して固定されており、電気的には非接触の状態となっている。すなわち、素線207rは完全な円形ではなく、C字状に構成されている。素線207rを構成する材料としては、例えばFe−Cr−Al等のCr合金、MoSi等のMo合金、Ni合金、W合金、Ta合金等の各種金属材料の他、SiC等の抵抗発熱材料を用いることが可能であり、その形状は、図11(a)に示すような線状材料であっても良く、(b)に示すような板状材料であっても良い。一対の給電部207tは、断熱体207fの側壁部を貫通して固定されている。一対の給電部207tは、金属などの導電性材料により構成されている。一対の給電部207tを介して素線207rの一端から他端に向けて電流を流すことで、素線207rが加熱されてプロセスチューブ203内(処理室201内)が昇温されるように構成されている。
【0020】
抵抗加熱式ヒータ207aを保持する断熱体207fは、抵抗加熱式ヒータ207aの外周を囲うように設けられており、ヒータ台207gにより下方から支持されている。断熱体207fは、アルミナ(Al)や石英(SiO)等の断熱材料により形成された環状の断熱材が複数積み上げられることで構成されており、下端が開口し上端が閉塞した円筒形状に形成されている。係る構成により、応力が加わったときの破損を抑制したり、メンテナンス性を向上させたりすることが可能となる。なお、断熱体207fは一体成形されていてもよい。
【0021】
抵抗加熱式ヒータ207aが備える一対の給電部207tには、電力線207eを介して、ヒータコントローラ281bの出力端子が接続されている。ヒータコントローラ281bには、例えば交流電源として構成された電源装置209と、後述する温度コントローラ280bと、が接続されている。ヒータコントローラ281bは、電源装置209からの電力供給を受け、温度コントローラ280bからの制御信号に基づいて、抵抗加熱式ヒータ207aへの電力供給を制御するように構成されている。
【0022】
抵抗加熱式ヒータ207aを流れる電流値、及び抵抗加熱式ヒータ207aに印加される電圧値は、電力線207eに設けられた電流計207c及び電圧計207dによってそれぞれ測定可能に構成されている。電流計207cによって測定された交流電流信号は、CT変換器292cによって直流信号に変換され、温度コントローラ280bに送信されるように構成されている。また、電圧計207dによって測定された交流電圧信号は、PT変換器292dによって直流信号に変換され、温度コントローラ280bに送信されるように構成されている。
【0023】
ヒータユニット207は、抵抗加熱式ヒータ207aのそれぞれに対応するように、外部温度センサ292aを1つ以上備えている。外部温度センサ292aは、断熱体207fの内壁に配設されている。また、処理室201内には、外部温度センサ292aとそれぞれ対応する位置に、内部温度センサ292bが1つ以上配設されている。外部温度センサ292a及び内部温度センサ292bは、温度コントローラ280bにそれぞれ接続されている。
【0024】
(コントローラの構成)
本実施形態に係る熱処理装置は、制御部としてのコントローラ280を備えている。図2に示すように、コントローラ280は、操作制御部280e、圧力コントローラ280a、温度コントローラ280b、ガス供給コントローラ280c及び駆動コントローラ280dを備えている。これらは、例えばLAN回線や調歩同期回線等により接続されており、相互にデータ交換可能なように構成されている。
【0025】
操作制御部280eは、操作コマンドや各種設定情報の入力の受け付けたり、入力された情報を保存したりする等、オペレータとのユーザインタフェースを提供すると共に、レシピに基づく熱処理装置の自動運転を制御する等、熱処理装置の動作を制御するように構成されている。
【0026】
圧力コントローラ280aは、排気管231に設けられた圧力センサ、圧力調整器、真空排気装置(いずれも図示しない)にそれぞれ接続されている。圧力コントローラ280aは、真空排気装置を作動させつつ、圧力センサにより検出された圧力情報に基づき圧力調整器の開度を調整することで、処理室201内の圧力を所定の圧力(真空度)に真空排気し得るように構成されている。
【0027】
温度コントローラ280bは、上述したように、ヒータコントローラ281b、外部温度センサ292a、内部温度センサ292b、CT変換器292c及びPT変換器292dにそれぞれ接続されている。
【0028】
温度コントローラ280bは、外部温度センサ292a及び内部温度センサ292bにより検出された温度情報に基づき抵抗加熱式ヒータ207aへの供給電力を調整することで、処理室201内の圧力を所定の温度に調整し得るように構成されている。具体的には、温度コントローラ280bは、操作制御部280eから目標温度を受信すると共に、外部温度センサ292a及び内部温度センサ292bにより検出された温度情報に基づき現在温度を算出し、目標温度と内部温度センサ292bの現在温度とが一致するようPID演算等を行って制御量としてのヒータ出力値を算出した後、ヒータコントローラ281bにヒータ出力値を出力するように構成されている。ヒータコントローラ281bは、温度コントローラ280bからヒータ出力値を受け取った後、出力値の演算を行って、抵抗加熱式ヒータ207aへ所定量の電力を出力するように構成されている。なお、ヒータコントローラ281bは、抵抗加熱式ヒータ207a毎に供給電力を独立して調整することで、処理室201内の温度分布を所望の分布とすることが出来るように構成されている。
【0029】
また、温度コントローラ280bは、抵抗加熱式ヒータ207aを流れる電流値及び抵抗加熱式ヒータ207aに印加される電圧値をCT変換器292c及びPT変換器292dから受信し、これに基づいて、抵抗加熱式ヒータ207aに供給されている電力や、抵抗加熱式ヒータ207aの電気抵抗値を算出可能なように構成されている。
【0030】
また、温度コントローラ280bは、抵抗加熱式ヒータ207aの温度を通電時間で積分した積分値と、抵抗加熱式ヒータ207aの寿命との関係を示す「寿命判定用情報」を、読み出し可能に保持している。そして、抵抗加熱式ヒータ207aへの通電開始後は、抵抗加熱式ヒータ207aの温度を、内部温度センサ292b又は外部温度センサ292aの少なくともいずれかを用いて検出し、通電開始後からの抵抗加熱式ヒータ207aの温度を通電時間で積分し、得られた温度の積分値と「寿命判定用情報」とを比較して抵抗加熱式ヒータ207aの寿命を予測するように構成されている。「寿命判定用情報」の内容や、温度コントローラ280bによる寿命予測動作については後述する。
【0031】
ガス供給コントローラ280cは、ガス供給管238に設けられた流量制御コントローラ、開閉バルブ(いずれも図示しない)にそれぞれ接続されている。ガス供給コントローラ280cは、開閉バルブを開閉することで、流量制御コントローラにより流量制御された処理ガスの処理室201内への供給を制御するように構成されている。
【0032】
駆動コントローラ280dは、ボート回転機構267や、シールキャップ219を昇降させる昇降機構(図示しない)等にそれぞれ接続されている。駆動コントローラ280d
は、操作制御部280eからの指令に基づき、ボート回転機構267の回転動作や、昇降機構(図示しない)の昇降動作をそれぞれ制御するように構成されている。
【0033】
(2)基板処理工程
次に、半導体装置の製造工程の一工程として、上述の熱処理装置により実施されるウエハ200上への成膜工程(基板処理工程)について説明する。以下の説明において、熱処理装置を構成する各部の動作は、コントローラ280により制御される。
【0034】
(ウエハ搬入工程(S1))
まず、複数枚のウエハ200をボート217に装填(ウエハチャージ)する。そして、図1に示すように、複数枚のウエハ200を支持したボート217を、図示しない昇降機構によって上昇させて処理室201内に搬入(ボートロード)する。この状態で、シールキャップ219は図示しないOリングを介してプロセスチューブ203の下端をシールした状態となる。なお、処理室201内にボート217を搬入する時には、パージガスとしてのNガス等の不活性ガスを、ガス供給管238から処理室201内に供給し続けることが好ましい。
【0035】
(成膜工程(S2))
処理室201内が所定の圧力(成膜圧力)となるように、排気管231に設けられた図示しない真空排気装置によって真空排気する。この際、処理室201内の圧力を排気管231に設けられた図示しない圧力センサで測定し、この測定した圧力情報に基づき、排気管231に設けられた圧力調整器の開度をフィードバック制御する(圧力調整)。
【0036】
ボート回転機構267を作動させてウエハ200の回転を開始させる。そして、処理ガスとしての成膜ガスを、ガス供給管238から処理室201内に供給する。処理室201内に供給された成膜ガスは、ボート217上の各ウエハ200面上をそれぞれ通過した後、排気管231から排気される(ガス供給)。なお、成膜ガスは、一種のガスを供給する場合に限らず、複数種の処理ガスを同時或いは交互に供給するようにしてもよい。また、成膜ガスを供給する際には、キャリアガス或いは希釈ガスとしてのNガス等の不活性ガスを、ガス供給管238から処理室201内に同時に供給するようにしてもよい。
【0037】
処理室201内が所定の温度(成膜温度)となるように、ヒータユニット207によって加熱する。この際、外部温度センサ292a及び内部温度センサ292bが検出した温度情報に基づき、ヒータユニット207への通電具合をフィードバック制御する(温度調整)。また、抵抗加熱式ヒータ207a毎に供給電力を独立して調整することで、処理室201内の温度分布を所望の分布に調整する。
【0038】
所定の圧力、所定の温度となった処理室201内に成膜ガスが供給され続けることで、加熱されたウエハ200面上において所定の成膜処理が進行する。この状態を所定時間保つことによって所定の膜厚の薄膜がウエハ200上に形成されたら、ヒータユニット207による加熱、ガス供給管238による成膜ガスの供給をそれぞれ中止する。その後、パージガスとしてのNガス等の不活性ガスを、ガス供給管238から処理室201内に供給し続け、処理室201内をパージする。処理室201内が不活性ガスによってパージされたら、圧力調整器の開度を調節することで、処理室201内の圧力を例えば大気圧に復帰させる。
【0039】
(ウエハ搬出工程(S3))
その後、図示しない昇降機構によりシールキャップ219を下降させ、プロセスチューブ203の下端を開口させると共に、処理済のウエハ200を支持したボート217を処理室201内から搬出(ボートアンロード)する。その後、処理済のウエハ200をボー
ト217より取り出す(ウエハディスチャージ)。
【0040】
(3)ヒータの寿命予測動作
上述の基板処理工程を繰り返すと、抵抗加熱式ヒータ207aは徐々に劣化して断線してしまう。基板処理中の不測の断線を防ぐため、抵抗加熱式ヒータ207aの寿命を予測し、寿命が近づいたら抵抗加熱式ヒータ207aを交換する必要がある。
【0041】
抵抗加熱式ヒータ207aの寿命は、以下のような方法で予測できる。すなわち、抵抗加熱式ヒータ207aの素線207rは、高温で昇降温を繰り返すことで塑性変形による伸びが生じ、電気抵抗値が増加するという特性を有している。そのため、抵抗加熱式ヒータ207aを流れる電流と印加電圧とを測定して電気抵抗値の変化を監視すれば、抵抗加熱式ヒータ207aの寿命を予測できる。また、抵抗加熱式ヒータ207aのの素線207rの電気抵抗値が増加した場合、印加する電圧が一定であれば電流が減少して発熱量が低下することとなる。一定温度で安定させるには、減少した発熱量を補うために電圧を増加させる必要があるため、一定温度で安定させるための印加電圧の変化を監視すれば、寿命を予測できる。
【0042】
しかしながら、抵抗加熱式ヒータ207aの素線207rは、温度によって電気抵抗値が変化する金属等から形成されている。そのため、電気抵抗値の増加量を監視することによって抵抗加熱式ヒータ207aの寿命を予測する方法では、寿命を正確に予測することは困難であった。また、印加電圧の増加量を監視することによって抵抗加熱式ヒータ207aの寿命を予測する方法では、抵抗加熱式ヒータ207aの温度を一定温度に保つ工程を実施する際にしか判定を行うことが出来ず、寿命予測を任意のタイミングで行うことは困難であった。
【0043】
これに対し本実施形態では、抵抗加熱式ヒータ207aの温度を通電時間で積分した積分値と抵抗加熱式ヒータ207aの寿命との関係を示す「寿命判定用情報」を、抵抗加熱式ヒータ207aと同型のヒータを用いて予め取得しておき、抵抗加熱式ヒータ207aへの通電開始後は、抵抗加熱式ヒータ207aの温度を、内部温度センサ292b又は外部温度センサ292aの少なくともいずれかを用いて検出し、通電開始後からの抵抗加熱式ヒータ207aの温度を通電時間で積分し、温度の積分値と寿命判定用情報とを比較して抵抗加熱式ヒータ207aの寿命を予測する寿命予測工程を任意のタイミングで行うことで、これらの課題を解決するようにしている。
【0044】
以下に、本実施形態に係る寿命予測工程について詳しく説明する。
【0045】
上述の「寿命判定用情報」に含まれる“温度を通電時間で積分した積分値”とは、抵抗加熱式ヒータ207aと同型のヒータの温度を、通電時間(すなわち加熱時間)で積分したものである。例えば、抵抗加熱式ヒータ207aと同型のヒータを1000℃で2000時間通電加熱したら、上述の積分値は2×10(=1000℃×2000時間)等となる。また、同型のヒータを1200℃で1000時間加熱したら、上述の積分値は1.2×10(=1200℃×1000時間)等となる。また、同型のヒータを1000℃で1000時間加熱した後、さらに1200℃で500時間加熱したら、上述の積分値は1.6×10(=1000℃×1000時間+1200℃×500時間)等となる。
【0046】
「寿命判定用情報」には、抵抗加熱式ヒータ207aと同型のヒータが寿命に至る(例えば断線するか、断線が近い)までの温度の積分値、すなわち、寿命に至るまでの温度の積分値の許容値(最大値)が記載されている。例えば、「寿命判定用情報」には、“抵抗加熱式ヒータ207aと同型のヒータは、温度の積分値が1.5×10に達したら寿命となる(例えば断線するか、断線が間近である)”旨の情報が記載されている。なお、こ
の「寿命判定用情報」は、抵抗加熱式ヒータ207aと同型のヒータに対して通電耐久試験を行うこと等により、予め取得することができる。取得された「寿命判定用情報」は、温度コントローラ280bが備える外部記憶装置等に読み出し可能に保持されている。
【0047】
抵抗加熱式ヒータ207aへの通電開始後、温度コントローラ280bは、抵抗加熱式ヒータ207aの温度を、内部温度センサ292b又は外部温度センサ292aの少なくともいずれかを用いて検出する。このとき、温度コントローラ280bは、通電開始後の抵抗加熱式ヒータ207aの温度として、例えば外部温度センサ292aが検出した温度をそのまま用いることができる。また例えば、内部温度センサ292bが検出した温度と外部温度センサ292aが検出した温度との両方を用いて所定の演算方法により推定した温度を用いることもできる。また例えば、内部温度センサ292bが検出した処理室201内温度と抵抗加熱式ヒータ207aへの供給電力とを用いて所定の演算方法により推定した温度を用いることもできる。さらには、素線207rの断面積や、プロセスチューブ203、ボート217、ウエハ200の熱容量や、断熱体207fの断熱効率等の種々のパラメータをさらに考慮し、所定の演算方法により推定した温度を用いることもできる。
【0048】
抵抗加熱式ヒータ207aの温度を検出したら、温度コントローラ280bは、通電開始後からの抵抗加熱式ヒータ207aの温度を通電時間で積分する。例えば、抵抗加熱式ヒータ207aを1000℃で100時間加熱している場合、温度の積分値を0.1×10(=1000℃×100時間)等と算定する。また、抵抗加熱式ヒータ207aを1000℃で1000時間加熱した後、更に1200℃で100時間加熱している場合、上述の温度の積分値を0.22×10(=1000℃×100時間+1200℃×100時間)等と算定する。算定した積分値は、抵抗加熱式ヒータ207aの温度履歴として、上述の外部記憶装置等に読み出し可能に保持しておく。
【0049】
抵抗加熱式ヒータ207aの温度を積分したら、温度コントローラ280bは、得られた「温度の積分値」と上述の「寿命判定用情報」とを比較し、抵抗加熱式ヒータ207aの寿命を予測(判定)する。例えば、抵抗加熱式ヒータ207aの「温度の積分値」が「寿命判定用情報」に記載されている積分値(許容値、最大値)以下である場合には、「抵抗加熱式ヒータ207aは寿命に達していない(まだ使用できる)」旨の判定を行う。また、抵抗加熱式ヒータ207aの「温度の積分値」が「寿命判定用情報」に記載されている積分値(許容値、最大値)を超えている場合には、「抵抗加熱式ヒータ207aは寿命に達した(交換が必要である)」旨の判定を行う。
【0050】
上述の一連の予測工程は、コントローラ280が備えるタイマ装置のタイムアウト等をトリガとし、所定の周期(例えば1時間間隔、或いは基板処理工程を実施する度)で自動的に行われるようにしてもよく、更には、操作制御部280eへのコマンド入力をトリガとして任意のタイミングで行われるようにしてもよい。また、判定結果は、上述の外部記憶装置等に読み出し可能に保持されると共に、操作制御部280eが備えるモニタ装置等に表示されるものとし、例えば「抵抗加熱式ヒータ207aは寿命に達した」旨の判定がなされた場合には、モニタ装置等にアラームが表示されたり、オペレータにメール等が送信されるようにしてもよい。
【0051】
(4)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果を奏する。
【0052】
(a)本実施形態によれば、抵抗加熱式ヒータ207aの温度を通電時間で積分した積分値と抵抗加熱式ヒータ207aの寿命との関係を示す「寿命判定用情報」を、抵抗加熱式ヒータ207aと同型のヒータを用いて予め取得しておき、抵抗加熱式ヒータ207aへの通電開始後は、抵抗加熱式ヒータ207aの温度を、内部温度センサ292b又は外部
温度センサ292aの少なくともいずれかを用いて検出し、通電開始後からの抵抗加熱式ヒータ207aの温度を通電時間で積分し、温度の積分値と寿命判定用情報とを比較して抵抗加熱式ヒータ207aの寿命を予測するようにしている。これにより、抵抗加熱式ヒータ207aの素線207rが温度によって電気抵抗値が変化する金属等から形成されていたとしても、寿命を正確に予測することが可能となる。
【0053】
(b)また、本実施形態によれば、上述の予測工程を、抵抗加熱式ヒータ207aの温度を一定温度に保つ工程を実施する際に限らず、任意のタイミングで、必要に応じてリアルタイムで行うことが可能となる。これにより、抵抗加熱式ヒータ207aの寿命をより高頻度で予測することが可能となる。
【0054】
(c)このように、抵抗加熱式ヒータ207aの寿命予測を正確かつ任意のタイミングで行えるようになることから、基板処理中の不測の抵抗加熱式ヒータ207aの断線をより確実に回避できるようになる。処理対象のウエハ200をスクラップにする危険性を低下させることが可能となる。
【0055】
<本発明の第2の実施形態>
本発明は、素線207rが被覆体により被覆されていない抵抗加熱式ヒータに限らず、素線207rが被覆体に覆われた、いわゆるシーズ型(鞘型)の抵抗加熱式ヒータ207aに対しても好適に適用可能である。以下に、詳しく説明する。
【0056】
本実施形態においては、被覆された素線207rの温度を通電時間で積分した積分値と抵抗加熱式ヒータ207aの寿命との関係を示す「寿命判定用情報」を、抵抗加熱式ヒータ207aと同型のヒータを用いて予め取得しておく。なお、この「寿命判定用情報」も、抵抗加熱式ヒータ207aと同型のシーズ型ヒータに対して通電耐久試験を行うこと等により、予め取得することができる。取得された「寿命判定用情報」は、温度コントローラ280bが備える外部記憶装置等に読み出し可能に保持されている。
【0057】
抵抗加熱式ヒータ207aへの通電開始後、温度コントローラ280bは、被覆体の外側の温度を、例えば外部温度センサ292aにより検出する。さらに、温度コントローラ280bは、抵抗加熱式ヒータ207aを流れる電流値及び抵抗加熱式ヒータ207aに印加される電圧値をCT変換器292c及びPT変換器292dから受信し、これに基づいて、抵抗加熱式ヒータ207aに供給されている電力、すなわち素線207rの消費電力を算出する。そして、温度コントローラ280bは、取得した被覆体の外側の温度及び算出した素線207rの消費電力から、素線207rの推定温度を算出する。
【0058】
素線207rの推定温度を算出したら、温度コントローラ280bは、通電開始後からの素線207rの推定温度を通電時間で積分する。係る積分は上述の実施形態と同様であり、例えば、素線207rを推定温度1000℃で100時間加熱している場合、温度の積分値を0.1×10(=1000℃×100時間)等と算定する。また、素線207rを推定温度1000℃で1000時間加熱した後、更に推定温度1200℃で100時間加熱している場合、上述の温度の積分値を0.22×10(=1000℃×100時間+1200℃×100時間)等と算定する。算定した積分値は、素線207rの温度履歴として、上述の外部記憶装置等に読み出し可能に保持しておく。
【0059】
素線207rの温度を積分したら、温度コントローラ280bは、上述の実施形態と同様に、得られた「温度の積分値」と上述の「寿命判定用情報」とを比較し、抵抗加熱式ヒータ207aの寿命を予測(判定)する。例えば、抵抗加熱式ヒータ207aの「温度の積分値」が「寿命判定用情報」に記載されている積分値(許容値、最大値)以下である場合には、「抵抗加熱式ヒータ207aは寿命に達していない(まだ使用できる)」旨の判
定を行う。また、抵抗加熱式ヒータ207aの「温度の積分値」が「寿命判定用情報」に記載されている積分値(許容値、最大値)を超えている場合には、「抵抗加熱式ヒータ207aは寿命に達した(交換が必要である)」旨の判定を行う。
【0060】
本実施形態によっても上述の実施形態と同様の効果を奏する。また、素線207rが被覆体に覆われたシーズ型(鞘型)の抵抗加熱式ヒータ207aに対して、素線207rの温度をより正確に推定することから、抵抗加熱式ヒータ207aの寿命をより正確に判定できるようになる。
【0061】
<本発明の第3の実施形態>
本発明は、上述の実施形態に限定されない。すなわち、通電開始後からの素線207rの寿命率を、素線207rの推定温度及び「寿命判定用情報」を用いて線形累積損傷則(マイナー則)により算出することで、より正確な判定を行うことが可能である。以下に、詳しく説明する。
【0062】
本実施形態においても、被覆された素線207rの温度を通電時間で積分した積分値と抵抗加熱式ヒータ207aの寿命との関係を示す「寿命判定用情報」を、抵抗加熱式ヒータ207aと同型のヒータを用いて予め取得しておく。
【0063】
但し、本実施形態に係る「寿命判定用情報」は、積分値と寿命との関係を“温度帯毎に複数示す”点が、上述の実施形態と異なる。すなわち、素線207rの素材や形状によっては、寿命に至るまでの温度の積分値の許容値(最大値)は、温度帯によって異なることがある。例えば、高温で用いた場合、寿命に至るまでの温度の積分値の許容値(最大値)は、低温で用いた場合よりも小さくなることが多い。そこで、本実施形態に係る「寿命判定用情報」では、寿命に至るまでの温度の積分値の許容値(最大値)を、温度帯によってそれぞれ複数示している。例えば、本実施形態に係る「寿命判定用情報」には、“抵抗加熱式ヒータ207aと同型のヒータは、800℃で加熱した場合には温度の積分値が3.2×10に達したら寿命となり(すなわち許容加熱時間は4000時間であり)、1000℃で加熱した場合には温度の積分値が2×10に達したら寿命となり(すなわち許容加熱時間は2000時間であり)、1200℃で加熱した場合には温度の積分値が1.2×10に達したら寿命となる(すなわち許容加熱時間は1000時間である)”旨の情報が記載されている。
【0064】
この「寿命判定用情報」も、抵抗加熱式ヒータ207aと同型のシーズ型ヒータに複数の温度帯で通電耐久試験を行うこと等により、予め取得することができる。取得された「寿命判定用情報」は、温度コントローラ280bが備える外部記憶装置等に読み出し可能に保持されている。
【0065】
抵抗加熱式ヒータ207aへの通電開始後、温度コントローラ280bは、素線207rの温度を、上述の実施形態と同様の手法によって推定する。例えば、温度コントローラ280bは、被覆体の外側の温度を外部温度センサ292aにより検出し、さらに、抵抗加熱式ヒータ207aを流れる電流値及び抵抗加熱式ヒータ207aに印加される電圧値をCT変換器292c及びPT変換器292dから受信し、これに基づいて素線207rの消費電力を算出し、取得した被覆体の外側の温度及び算出した素線207rの消費電力から、素線207rの推定温度を算出する。
【0066】
素線207rの推定温度を算出したら、温度コントローラ280bは、通電開始後からの素線207rの「寿命率」を、算出した推定温度及び上述の「寿命判定用情報」を用いて線形累積損傷則(マイナー則)により算出する。例えば、素線207rを推定温度1000℃で500時間加熱した後、推定温度1200℃で200時間加熱している場合には
、500/2000(=1000℃での許容加熱時間)+200/1000(=1200℃での許容加熱時間)=0.45を、寿命率として算出する。
【0067】
そして、温度コントローラ280bは、算出した寿命率を元に抵抗加熱式ヒータ207aの寿命を判定する。例えば、算出した「寿命率」が所定値(例えば1.0)未満である場合には、「抵抗加熱式ヒータ207aは寿命に達していない(まだ使用できる)」旨の判定を行う。また、「寿命率」が所定値(例えば1.0)以上である場合には、「抵抗加熱式ヒータ207aは寿命に達した(交換が必要である)」旨の判定を行う。
【0068】
本実施形態によっても上述の実施形態と同様の効果を奏する。また、素線207rの素材や形状によっては、寿命に至るまでの温度の積分値の許容値(最大値)は温度帯によって異なることがあるが、本実施形態によれば、係る特性を考慮した判定を行うため、より正確な判定を行うことが出来る。特に、抵抗加熱式ヒータ207aを複数の温度帯で用いる場合には、本実施形態による効果が顕著に得られる。
【0069】
<本発明の第4の実施形態>
上述の実施形態に係る予測方法は、それぞれ単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。更には、素線207rの電気抵抗値を寿命予測に用いる以下の予測方法を組み合わせて用いてもよい。複数の予測結果をAND又はOR条件で用いることにより、寿命予測の信頼性をさらに向上させることが可能となる。以下に、電気抵抗値を寿命予測に用いる方法について詳しく述べる。
【0070】
素線207rの電気抵抗値を寿命予測に用いるには、被覆された素線207rの電気抵抗値と抵抗加熱式ヒータ207aの寿命との関係を示す「寿命判定用情報」を、抵抗加熱式ヒータ207aと同型のヒータを用いて予め取得しておく。本実施形態に係る「寿命判定用情報」には、例えば、“抵抗加熱式ヒータ207aと同型のヒータは、電気抵抗率が1.5×10Ωに達したら寿命となる(例えば断線するか、断線が間近である)”旨の情報が記載されている。なお、この「寿命判定用情報」は、抵抗加熱式ヒータ207aと同型のヒータに対して通電耐久試験を行うこと等により、予め取得することができる。取得された「寿命判定用情報」は、温度コントローラ280bが備える外部記憶装置等に読み出し可能に保持されている。
【0071】
抵抗加熱式ヒータ207aへの通電開始後、温度コントローラ280bは、抵抗加熱式ヒータ207aを流れる電流値及び抵抗加熱式ヒータ207aに印加される電圧値をCT変換器292c及びPT変換器292dから受信し、これに基づいて、素線207rの電気抵抗値を算出する。
【0072】
素線207rの電気抵抗値を算出したら、温度コントローラ280bは、得られた電気抵抗値と上述の「寿命判定用情報」とを比較し、抵抗加熱式ヒータ207aの寿命を予測(判定)する。例えば、抵抗加熱式ヒータ207aの電気抵抗値が「寿命判定用情報」に記載されている電気抵抗値(許容値、最大値)以下である場合には、「抵抗加熱式ヒータ207aは寿命に達していない(まだ使用できる)」旨の判定を行う。また、抵抗加熱式ヒータ207aの電気抵抗値が「寿命判定用情報」に記載されている積分値(許容値、最大値)を超えている場合には、「抵抗加熱式ヒータ207aは寿命に達した(交換が必要である)」旨の判定を行う。
【実施例】
【0073】
本実施例では、抵抗加熱式ヒータ(以下、単にヒータとも呼ぶ)の温度の積分値を算出し、係る積分値を用いて寿命を判定している。その後、ヒータの電気抵抗値を算出し、係る電気抵抗値を用いて寿命を再度判定している。図3は、本実施例にかかる寿命予測工程
を説明するフロー図である。
【0074】
通電開始後、ヒータのヒータ温度(素線温度)を推定する(S10)。ヒータ温度は、ヒータへの供給電力(以下、ヒータ供給電力とも呼ぶ)、素線の断面積、処理室内温度(以下、炉内温度とも呼ぶ)を用いて推定する。自然開放された抵抗加熱式ヒータに関するヒータ供給電力とヒータ温度との関係、及びその近似曲線を図4に示す。図4の横軸はヒータ電力(W/cm)を、縦軸はヒータ温度(℃)をそれぞれ示している。また、図4の◆印は直径φ8mmのヒータのヒータ温度の実測値を、点線は近似曲線(関数φとしている)をそれぞれ示している。実際のヒータは、その内部に反応管やウエハが設けられ、外部に断熱体が配置されており、自然開放ではない。そのため、ヒータ温度上昇分のヒータ電力(以下、ヒータ上昇電力とする)は、ヒータへの供給電力から処理室内の温度維持のための電力(以下、安定時電力とする)を差し引いたもののうち、その1/3程度が寄与するものとして算出した。
【0075】
ヒータ上昇電力=(ヒータ供給電力−安定時電力(炉内温度との関数より算出))/3(W/cm
ヒータ温度=ヒータ上昇温度(ヒータ上昇電力との関数より算出)+炉内温度(℃)
【0076】
そして、ヒータ温度の積分値(発熱指数積分値、発熱使用量とも呼ぶ)、及び抵抗加熱式ヒータの寿命率を算出する(S20)。なお、発熱指数の時間積分は、ヒータでの寿命上の発熱使用量を示している。図5は、寿命率とヒータ温度との関係を例示するグラフ図である。図5の横軸はヒータ温度(℃)を、縦軸は寿命率(任意単位)をそれぞれ示している。図5においては、ヒータ温度(素線温度)を1200℃としたのときの寿命率を基準(すなわち1)とし、他の温度での寿命率を相対値で示している。図5の◆印は寿命率の実測値を、点線は近似曲線(関数寿命率としている)をそれぞれ示している。
【0077】
そして、上述の関数寿命率の逆数、つまり、各温度での発熱を1200℃相当の発熱に換算した値を発熱指数として算出する。図6は、寿命率及び発熱指数とヒータ温度との関係を例示するグラフ図である。図6の横軸はヒータ温度(℃)を、左側の縦軸は寿命率(任意単位)を、右側の縦軸は発熱指数(任意単位)をそれぞれ示している。図6の作成に用いた関係式は以下の通りである。なお、発熱指数の時間積分は、抵抗加熱ヒータでの寿命上の発熱使用量を示している。
【0078】
発熱指数=1/寿命率(ヒータ温度と寿命との関数より算出)
発熱指数積分値=Σ(発熱指数/時間)
【0079】
そして、積分値を用いた寿命判定を行う(S30)。ここでは、事前の評価試験により決定された断線に至るまでの発熱使用量の寿命限界値と、得られた発熱指数積分値(現在の値)とを比較する。限界値を超えていた場合(「Yes」の場合)には、寿命に至ったものと判定して第1アラームフラグの値を1にセットする(S40)。また、限界値を超えていなかった場合(「No」の場合)には、寿命に至っていないものと判定して第1アラームフラグの操作を行わない。
【0080】
そして、温度によって可変する抵抗加熱式ヒータの電気抵抗率を、温度補正を行いながら算出する(S50)。以下、補正された電気抵抗率を温度補正抵抗率とも呼ぶ。電気抵抗率は、印加電圧及び電流から以下のように算出する。なお、印加電圧及び電流は常時計測するが、値が小さいと誤差が大きくなるため、電気抵抗率の算出は、ヒータ電力が定格の10%以上(電流換算で30%以上)の時に行う。
【0081】
電気抵抗率(Ω)=印加電圧(V)/電流(A)
【0082】
電気抵抗率は、冷間抵抗率と熱間抵抗率とで値が異なるが、リアルタイム計測を行うため、熱間抵抗値を温度補正する。熱間抵抗率は、温度上昇によって値が上昇する特性がある。図7は、温度係数(抵抗温度係数)とヒータ温度との関係を例示するグラフ図である。図7の横軸はヒータ温度(℃)を、縦軸は温度係数(任意単位)をそれぞれ示している。図7の◆印は温度係数の実測値を、点線は近似曲線(温度係数関数としている)をそれぞれ示している。
【0083】
関数化して逆数を温度係数補正値として掛けることにより、温度補正抵抗値を算出することができる。図8は、温度係数の逆数(温度係数補正値)と素線温度との関係を例示するグラフ図である。図8の横軸はヒータ温度(℃)を、左側の縦軸は温度係数(任意単位)を、右側の縦軸はその逆数をそれぞれ示している。図8の作成に用いた関係式は以下の通りである。
【0084】
温度係数補正値=1/抵抗温度係数(ヒータ温度と寿命との関数より算出)
温度補正抵抗値=抵抗測定値×温度係数補正値
【0085】
そして、電気抵抗値を用いた寿命判定を行う(S60)。ここでは、事前の評価試験により、所定の昇温速度を満足するヒータ電力の最低値を算出し、ヒータ定格電圧時に、最低出力地となる限界抵抗値を求めておき、限界抵抗値と、現在の温度補正抵抗値とを比較する。
【0086】
限界抵抗値=最低出力値/ヒータ定格電圧
【0087】
ヒータ発熱使用量の増加に伴い電気抵抗値が増加し、限界抵抗値を超えた場合(「Yes」の場合)に、は所定の昇温速度を満足することができず、寿命に達したものと判定することができる。係る場合、第2アラームフラグの値を1にセットする(S70)。また、限界値を超えていなかった場合(「No」の場合)には、寿命に至っていないものと判定して、第2アラームフラグの操作を行わない。
【0088】
その後、2段階の寿命判定の結果として、第1アラームフラグ及び第2アラームフラグの値を操作制御部にそれぞれ送信する。操作制御部は、受信したフラグの値をAND又はOR条件で処理し、次の基板処理工程を行うべきか否かを判断する。
【0089】
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0090】
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0091】
(付記1)
抵抗加熱式ヒータの寿命予測方法であって、
前記抵抗加熱式ヒータの温度を通電時間で積分した積分値と前記抵抗加熱式ヒータの寿命との関係を示す寿命判定用情報を、前記抵抗加熱式ヒータと同型のヒータを用いて予め取得しておき、
前記抵抗加熱式ヒータへの通電開始後は、前記抵抗加熱式ヒータの温度を温度センサにより検出し、通電開始後からの前記抵抗加熱式ヒータの温度を通電時間で積分し、前記温度の積分値と前記寿命判定用情報とを比較して前記抵抗加熱式ヒータの寿命を予測する抵抗加熱式ヒータの寿命予測方法。
【0092】
(付記2)
被覆体により被覆された素線を有する抵抗加熱式ヒータの寿命予測方法であって、
前記素線の温度の積分値と前記抵抗加熱式ヒータの寿命との関係を示す寿命判定用情報を、前記抵抗加熱式ヒータと同型のヒータを用いて予め取得しておき、
前記抵抗加熱式ヒータへの通電開始後は、前記被覆体の外側の温度を温度センサにより検出し、前記素線を流れる電流及び前記素線へ印加される電圧を電流計及び電圧計によりそれぞれ検出して前記素線の消費電力を算出し、前記被覆体の外側の温度及び前記素線の消費電力から前記素線の推定温度を算出し、通電開始後からの前記素線の推定温度を通電時間で積分し、前記推定温度の積分値と前記寿命判定用情報とを比較して前記抵抗加熱式ヒータの寿命を予測する抵抗加熱式ヒータの寿命予測方法。
【0093】
(付記3)
被覆体により被覆された素線を有する抵抗加熱式ヒータの寿命予測方法であって、
前記素線の温度の積分値と前記抵抗加熱式ヒータの寿命との関係を温度帯毎に複数示す寿命判定用情報を、前記抵抗加熱式ヒータと同型のヒータを用いて予め取得しておき、
前記抵抗加熱式ヒータへの通電開始後は、前記被覆体の外側の温度を温度センサにより検出し、前記素線を流れる電流及び前記素線へ印加される電圧を電流計及び電圧計によりそれぞれ検出して前記素線の消費電力を算出し、検出された前記温度及び算出した前記消費電力から前記素線の推定温度を算出し、通電開始後からの前記素線の寿命率を前記推定温度及び前記寿命判定用情報を用いて線形累積損傷則(マイナー則)により算出し、前記寿命率が所定値に達したときに前記抵抗加熱式ヒータの寿命が近づいたと判定する抵抗加熱式ヒータの寿命予測方法。
【0094】
(付記4)
前記素線の電気抵抗値と前記抵抗加熱式ヒータの寿命との関係を示す寿命判定用情報を、前記抵抗加熱式ヒータと同型のヒータを用いて予め取得しておき、
前記抵抗加熱式ヒータへの通電開始後は、前記素線を流れる電流及び前記素線へ印加される電圧を電流計及び電圧計によりそれぞれ検出して前記素線の電気抵抗値を算出し、算出した前記電気抵抗値と前記寿命判定用情報とを比較して前記抵抗加熱式ヒータの寿命を予測する付記1から付記3に記載の抵抗加熱式ヒータの寿命予測方法。
【0095】
(付記5)
抵抗加熱式ヒータを用いて被処理体へ加熱処理を行う熱処理方法であって、
付記1から付記4のいずれかに記載の寿命予測方法により前記抵抗加熱式ヒータの寿命を予測し、前記抵抗加熱式ヒータの寿命が近づいたと判定されたとき次回の加熱処理を中止する熱処理方法。
【0096】
(付記6)
抵抗加熱式ヒータと、
前記抵抗加熱式ヒータの温度を検出する温度センサと、
前記温度センサに接続される制御部と、を備える熱処理装置であって、
前記制御部は、
前記抵抗加熱式ヒータの温度を通電時間で積分した積分値と前記抵抗加熱式ヒータの寿命との関係を示す寿命判定用情報を読み出し可能に保持しており、
前記抵抗加熱式ヒータへの通電開始後は、前記抵抗加熱式ヒータの温度を前記温度センサから受信し、通電開始後からの前記抵抗加熱式ヒータの温度を通電時間で積分し、前記温度の積分値と前記寿命判定用情報とを比較して前記抵抗加熱式ヒータの寿命を予測するよう構成されている熱処理装置。
【0097】
(付記7)
被覆体により被覆された素線を有する抵抗加熱式ヒータと、
前記被覆体の外側の温度を検出する温度センサと、
前記素線を流れる電流を測定する電流計と、
前記素線へ印加される電圧を測定する電圧計と、
前記温度センサ、前記電流計及び前記電圧計に接続される制御部と、を備える熱処理装置であって、
前記制御部は、
前記素線の温度の積分値と前記抵抗加熱式ヒータの寿命との関係を示す寿命判定用情報を読み出し可能に保持しており、
前記抵抗加熱式ヒータへの通電開始後は、前記被覆体の外側の温度を前記温度センサから受信し、前記素線を流れる電流及び前記素線へ印加される電圧を前記電流計及び前記電圧計からそれぞれ受信して前記素線の消費電力を算出し、前記被覆体の外側の温度及び前記素線の消費電力から前記素線の推定温度を算定し、通電開始後からの前記素線の推定温度を通電時間で積分し、前記推定温度の積分値と前記寿命判定用情報とを用いて前記抵抗加熱式ヒータの寿命を予測するよう構成されている熱処理装置。
【0098】
(付記8)
被覆体により被覆された素線を有する抵抗加熱式ヒータと、
前記被覆体の外側の温度を検出する温度センサと、
前記素線を流れる電流を測定する電流計と、
前記素線へ印加される電圧を測定する電圧計と、
前記温度センサ、前記電流計及び前記電圧計に接続される制御部と、を備える熱処理装置であって、
前記制御部は、
前記素線の温度の積分値と前記抵抗加熱式ヒータの寿命との関係を温度帯毎に複数示す寿命判定用情報を読み出し可能に保持しており、
前記抵抗加熱式ヒータへの通電開始後は、前記被覆体の外側の温度を前記温度センサから受信し、前記素線を流れる電流及び前記素線へ印加される電圧を前記電流計及び前記電圧計からそれぞれ受信して前記素線の消費電力を算出し、前記被覆体の外側の温度及び前記素線の消費電力から前記素線の推定温度を算定し、通電開始後からの前記抵抗加熱式ヒータの寿命率を前記推定温度及び前記寿命判定用情報を用いて線形累積損傷則により算出し、前記寿命率が所定値に達したときに前記抵抗加熱式ヒータの寿命が近づいたと判定するよう構成されている熱処理装置。
【0099】
(付記9)
好ましくは、
前記制御部は、
前記素線の電気抵抗値と前記抵抗加熱式ヒータの寿命との関係を示す寿命判定用情報を読み出し可能に保持しており、
前記抵抗加熱式ヒータへの通電開始後は、前記素線を流れる電流及び前記素線へ印加される電圧を前記電流計及び前記電圧計からそれぞれ受信して前記素線のの電気抵抗値を算出し、算出した前記電気抵抗値と前記寿命判定用情報とを比較して前記抵抗加熱式ヒータの寿命を予測するよう構成されている付記6から付記8のいずれかに記載の熱処理装置。
【符号の説明】
【0100】
200 ウエハ
201 処理室
202 処理炉
203 プロセスチューブ
207 ヒータユニット
207a 抵抗加熱式ヒータ
207f 断熱体
207r 素線
292a 外部温度センサ
292b 内部温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗加熱式ヒータの寿命予測方法であって、
前記抵抗加熱式ヒータの温度を通電時間で積分した積分値と前記抵抗加熱式ヒータの寿命との関係を示す寿命判定用情報を、前記抵抗加熱式ヒータと同型のヒータを用いて予め取得しておき、
前記抵抗加熱式ヒータへの通電開始後は、前記抵抗加熱式ヒータの温度を温度センサにより検出し、通電開始後からの前記抵抗加熱式ヒータの温度を通電時間で積分し、前記温度の積分値と前記寿命判定用情報とを比較して前記抵抗加熱式ヒータの寿命を予測する
ことを特徴とする抵抗加熱式ヒータの寿命予測方法。
【請求項2】
抵抗加熱式ヒータと、
前記抵抗加熱式ヒータの温度を検出する温度センサと、
前記温度センサに接続される制御部と、を備える熱処理装置であって、
前記制御部は、
前記抵抗加熱式ヒータの温度を通電時間で積分した積分値と前記抵抗加熱式ヒータの寿命との関係を示す寿命判定用情報を読み出し可能に保持しており、
前記抵抗加熱式ヒータへの通電開始後は、前記抵抗加熱式ヒータの温度を前記温度センサから受信し、通電開始後からの前記抵抗加熱式ヒータの温度を通電時間で積分し、前記温度の積分値と前記寿命判定用情報とを比較して前記抵抗加熱式ヒータの寿命を予測するよう構成されている
ことを特徴とする熱処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−253222(P2012−253222A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125270(P2011−125270)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】