説明

押出機の処理量制御方法及び装置

【課題】本発明は、貯蔵タンクから押出機に供給される溶融樹脂の供給量を可変制御し、造粒ペレットの品質の確保を行うことを目的とする。
【解決手段】合成樹脂原料が貯蔵タンク(9)からゲートバルブ(8)を介してシリンダ(2)の原料供給口(7)へ供給され、シリンダ(2)内で回転駆動されるスクリュ(3)により溶融混練され、シリンダ(2)の先端からダイス(11)を経て紐状に押出される時に、スクリュ(3)の回転数を調整して合成樹脂原料の混練状態を調整すると共に、ゲートバルブ(8)の開度を調整して貯蔵タンク(9)からシリンダ(2)内へ供給される合成樹脂原料の供給量を調整する方法と構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出機の処理量制御方法及び装置に関し、特に、貯蔵タンクから押出機に供給される溶融樹脂の供給量を可変制御するための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、合成装置により生産された合成樹脂原料は、通常、原料の揮発成分除去、品質改善あるいは均質化等を目的として、回転駆動されるスクリュを内挿したシリンダを主要構成部とするスクリュ式押出機(以下において、「押出機」と略して記述する。)により溶融混練される。溶融混練された高温溶融状態の合成樹脂原料は、原材料として取扱い易いように、シリンダの先端に設けられたダイスの多数のダイス孔から紐(ストランド)状となって冷却水中へ押出され、カッター装置によりペレットに造粒されている。
【0003】
前記合成装置から溶融状態の合成樹脂原料が、直接、前記押出機へ供給される場合、合成樹脂原料は、まず、押出機のシリンダの原料供給口に連結して設けられた貯蔵タンクへ供給される。この貯蔵タンクと原料供給口との間には、通常、ゲートバルブが設けられ、押出機の運転時にはゲートバルブが全開され、合成装置から供給される溶融状態の合成樹脂原料が貯蔵タンクから押出機へ連続的に供給される。
【0004】
前記押出機の処理量は前記スクリュの回転数にほぼ比例する。また、押出機の運転は、前記原料貯蔵タンクにおける合成樹脂原料の貯蔵量(上面レベル)を一定に維持するように運転される。押出機の定常運転時において、供給される合成樹脂原料の供給量が変動して貯蔵タンクのレベルが変動する場合がある。そのような場合は、押出機のスクリュの回転数を変え、すなわち、レベルが低下した場合はスクリュの回転数を下げて処理量を減少させ、レベルが上昇した場合はスクリュの回転数を上げて処理量を増加させることにより、貯蔵タンクから押出機への供給量が変化し、貯蔵タンクにおいて所定の一定レベルが確保され維持されている。
前述の従来方法は、社内技術としては慣用技術で一般に用いられているため、特に、特許出願は行っておらず、特許文献としては特に開示していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の押出機の処理量制御方法及び装置は以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。すなわち、貯蔵タンクと押出機の原料供給口との間に単に、開弁か閉弁かの機能のみを有するゲートバルブが設けられた押出機の場合、造粒されるペレットの定常な製品品質が得られない場合があった。
【0006】
すなわち、押出機のスクリュの回転数を変更することだけで運転状態の変動要因に対応しているため、スクリュの回転数が変更されることにより、直接的には押出機の処理量が変化し、ダイスから押出される紐状の原料の押出速度が変化する。その結果、定常運転されているカッター装置により造粒されるペレットの形状すなわち長さが変化し、形状(形状に関する製品品質)の異なるペレットが造粒されることがあった。
【0007】
また、スクリュの回転数が変更されることにより、シリンダ内における原料の混練状態あるいは充満率が変化し、原料の揮発成分除去、品質改善あるいは均質化等の作用が変化し、物性に関して製品品質の異なるペレットが造粒される恐れがあった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による押出機の処理量制御方法は、合成樹脂原料が貯蔵タンクからゲートバルブを介して押出機のシリンダの原料供給口へ供給され、前記シリンダ内で回転駆動されるスクリュにより溶融混練され、前記シリンダの先端からダイスを経て紐状に押出される押出機の処理量制御方法において、前記スクリュの回転数を調整して合成樹脂原料の混練状態を調整すると共に、前記ゲートバルブの開度を調整して前記貯蔵タンクからシリンダ内へ供給される合成樹脂原料の供給量を可変制御する方法であり、また、前記ゲートバルブの開度の検出は、前記ゲートバルブに設けられ弁体のスライド量を検出するための位置検出センサにより行う方法であり、また、前記ゲートバルブには、ゲートバルブ駆動装置が接続され、前記位置検出センサ及びゲートバルブ駆動装置には制御装置が接続されている方法であり、また、シリンダの原料供給口の上流側にベントポートを設けた方法であり、また、本発明による押出機の処理量制御装置は、合成樹脂原料が貯蔵タンクからゲートバルブを介して押出機のシリンダの原料供給口へ供給され、前記シリンダ内で回転駆動されるスクリュにより溶融混練され、前記シリンダの先端からダイスを経て紐状に押出される押出機の処理量制御装置において、前記スクリュの回転数を調整して合成樹脂原料の混練状態を調整すると共に、前記ゲートバルブの開度を調整して前記貯蔵タンクからシリンダ内へ供給される合成樹脂原料の供給量を可変制御する構成であり、また、前記ゲートバルブの開度の検出は、前記ゲートバルブに設けられ弁体のスライド量を検出するための位置検出センサにより行う構成であり、また、前記ゲートバルブには、ゲートバルブ駆動装置が接続され、前記位置検出センサ及びゲートバルブ駆動装置には制御装置が接続されている構成であり、また、前記シリンダの原料供給口の上流側にベントポートを設けた構成である。
【発明の効果】
【0009】
本発明による押出機の処理量制御方法及び装置は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、合成樹脂原料が貯蔵タンクからゲートバルブを介して押出機のシリンダの原料供給口へ供給され、前記シリンダ内で回転駆動されるスクリュにより溶融混練され、前記シリンダの先端からダイスを経て紐状に押出される押出機の処理量制御方法において、前記スクリュの回転数を調整して合成樹脂原料の混練状態を調整すると共に、前記ゲートバルブの開度を調整して前記貯蔵タンクからシリンダ内へ供給される合成樹脂原料の供給量を可変制御するため、ダイスでの樹脂の線速速度の変動を抑えることが可能となり、良好な品質のペレットを得ることができる。
また、前記ゲートバルブの開度の検出は、前記ゲートバルブに設けられ弁体のスライド量を検出するための位置検出センサにより行うと共に、開度により溶融樹脂の供給量を制御し、スクリュ回転数を変更することで、シリンダ内の樹脂充満率を変えることができる。
また、ベンチポートがゲートバルブよりも上流に位置し、シリンダ内の樹脂充満率を変更及び維持することで、溶融樹脂の脱気を十分に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による押出機の処理量制御方法及び装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、貯蔵タンクから押出機に供給される溶融樹脂の供給量を可変制御するようにした押出機の処理量制御方法及び装置を提供することを目的とする。
【実施例】
【0012】
以下、図面と共に本発明による押出機の処理量制御方法及び装置の好適な実施の形態について説明する。
図1において、符号1で示されるものは押出機であり、この押出機1は、シリンダ2、シリンダ2内に挿入されて回転駆動されるスクリュ3、シリンダ2の後端側に続けて配置されてスクリュ3を回転駆動する減速機4、可変速電動機5および電動機駆動装置6により構成されている。
【0013】
前記シリンダ2は、その上流側である後端部側に原料供給口7が形成され、この原料供給口7にゲートバルブ8を介して貯蔵タンク9が連結され、シリンダ2の先端開口10にダイス11が設けられている。前記ゲートバルブ8は図示しない弁体を開閉するゲートバルブ駆動装置12、この弁体の開度を調整する制御装置13および弁体の開度を検出する位置検出センサ14を設けて構成されている。
【0014】
次に動作について説明する。
高温溶融状態の合成樹脂原料が、図示しない装置から直接、貯蔵タンク9へ供給される。合成樹脂原料は貯蔵タンク9からゲートバルブ8を介して原料供給口7からシリンダ2内へ供給される。
【0015】
前記スクリュ3が減速機4を介して可変速電動機5により回転駆動される。前記原料供給口7からシリンダ2内へ供給された合成樹脂原料は、スクリュ3により混練され、順次先端方向へ移送される。この原料供給口7から先端部へシリンダ2内を移送される間に、合成樹脂原料はスクリュ2により混練され、揮発成分除去、品質改善あるいは均質化が行われる。
【0016】
前記シリンダ2の先端部に到達した合成樹脂原料は、スクリュ3の移送作用による圧力により先端開口10からダイス11を経て多数本の紐状となって、図示しないカッター装置へ送られペレット化される。
【0017】
前述の運転において、スクリュ3は、電動機駆動装置6が回転数を調整する可変速電動機5により回転駆動される。また、ゲートバルブ8は、位置検出センサ14の検出データに基づいて、制御装置13によりゲートバルブ駆動装置12が駆動され、ゲートバルブ8の開度が調整される。また、シリンダ2の原料供給口7の上流側にはベントポート15が設けられ、シリンダ2内の樹脂充満率を変更又は維持することで脱気を充分に行うことができる。
【0018】
前記ゲートバルブ8の開度は位置検出センサ14により検出され、制御装置13へ入力され、ゲートバルブ8の開度が変化することにより、押出機1への合成樹脂原料の供給量が変化するが、造粒されるペレットの製品品質を維持する方向で、必要に応じて電動機駆動装置6が可変速電動機5の回転数を適正値に調整する。
このように、制御装置13および電動機駆動装置6と造粒装置に関連するシステムの間で相互にデータの交換を行い、連動して調整を行うことにより、造粒されるペレットの形状および物性に関する製品品質を定常状態に容易に維持することができるように予めプログラムが設定されている。
【符号の説明】
【0019】
1 押出機
2 シリンダ
3 スクリュ
4 減速機
5 可変速電動機
6 電動機駆動装置
7 原料供給口
8 ゲートバルブ
9 貯蔵タンク
10 先端開口
11 ダイス
12 ゲートバルブ駆動装置
13 制御装置
14 位置検出センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂原料が貯蔵タンク(9)からゲートバルブ(8)を介して押出機(1)のシリンダ(2)の原料供給口(7)へ供給され、前記シリンダ(2)内で回転駆動されるスクリュ(3)により溶融混練され、前記シリンダ(2)の先端からダイス(11)を経て紐状に押出される押出機の処理量制御方法において、前記スクリュ(3)の回転数を調整して合成樹脂原料の混練状態を調整すると共に、前記ゲートバルブ(8)の開度を調整して前記貯蔵タンク(9)からシリンダ(2)内へ供給される合成樹脂原料の供給量を可変制御することを特徴とする押出機の処理量制御方法。
【請求項2】
前記ゲートバルブ(8)の開度の検出は、前記ゲートバルブ(8)に設けられ弁体のスライド量を検出するための位置検出センサ(14)により行うことを特徴とする請求項1記載の押出機の処理量制御方法。
【請求項3】
前記ゲートバルブ(8)には、ゲートバルブ駆動装置(12)が接続され、前記位置検出センサ(14)及びゲートバルブ駆動装置(12)には制御装置(13)が接続されていることを特徴とする請求項1又は2記載の押出機の処理量制御方法。
【請求項4】
前記シリンダ(2)における原料供給口(7)の上流側には、ベントポート(15)が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の押出機の処理量制御方法。
【請求項5】
合成樹脂原料が貯蔵タンク(9)からゲートバルブ(8)を介して押出機(1)のシリンダ(2)の原料供給口(7)へ供給され、前記シリンダ(2)内で回転駆動されるスクリュ(3)により溶融混練され、前記シリンダ(2)の先端からダイス(11)を経て紐状に押出される押出機の処理量制御装置において、前記スクリュ(3)の回転数を調整して合成樹脂原料の混練状態を調整すると共に、前記ゲートバルブ(8)の開度を調整して前記貯蔵タンク(9)からシリンダ(2)内へ供給される合成樹脂原料の供給量を可変制御することを特徴とする押出機の処理量制御装置。
【請求項6】
前記ゲートバルブ(8)の開度の検出は、前記ゲートバルブ(8)に設けられ弁体のスライド量を検出するための位置検出センサ(14)により行うことを特徴とする請求項5記載の押出機の処理量制御装置。
【請求項7】
前記ゲートバルブ(8)には、ゲートバルブ駆動装置(12)が接続され、前記位置検出センサ(14)及びゲートバルブ駆動装置(12)には制御装置(13)が接続されていることを特徴とする請求項5又は6記載の押出機の処理量制御装置。
【請求項8】
前記シリンダ(2)における原料供給口(7)の上流側には、ベントポート(15)が設けられていることを特徴とする請求項5ないし7の何れかに記載の押出機の処理量制御装置。

【図1】
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【公開番号】特開2010−188546(P2010−188546A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32801(P2009−32801)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】