説明

押出発泡成形体の製造方法

【課題】 成形体を構成する各層間の剥離を抑制することができる、多層押出発泡成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】 加熱可塑化した溶融樹脂を流れ方向に押出しながら金型で一定断面の形状に整えて連続的に成形する多層押出発泡成形体の製造方法において、高圧下で発泡剤を含有する少なくとも1つの溶融樹脂と、発泡剤を含有しない少なくとも1つの溶融樹脂からなる積層溶融樹脂を得る工程と、積層溶融樹脂を大気圧下に開放して発泡剤を気化させることにより高倍化させる工程との間に、積層溶融樹脂を高圧下で断面形状を保持した状態で下流側へ所定長さ移動させて積層溶融樹脂の構成層間の接着性を改善させる接着工程を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築用、自動車用又は土木用などに好適に使用される、発泡層および非発泡層を積層してなる多層押出発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、発泡層および非発泡層を積層してなる多層押出発泡について、主にポリプロピレン系樹脂を用いたフィルムおよびシート形状での検討がなされてきた(例えば、特許文献1〜4参照。)。
【0003】
また、フィードブロック、マルチマニホールド等の積層装置の構造の複雑化、大型化を伴わずに層数を増加させる方法として、発泡剤を含有する溶融樹脂と発泡剤を含有しない溶融樹脂を厚み方向に合流させた後に幅方向に2分割し、2分割した溶融樹脂の各々を厚み方向に圧縮した後、厚み方向に上下に合流させる積層2倍化方法が提案されており(例えば、非特許文献1参照)、このような積層2倍化方法を多層化に使用することにより効率良く層数を増やすことができる(例えば、非特許文献1並びに特許文献5及び6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−748号公報
【特許文献2】特表平4−505594号公報
【特許文献3】特公平7−98349号公報
【特許文献4】国際公開第08/008875号パンフレット
【特許文献5】特公昭54−23025号公報
【特許文献6】特開平4−278323号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】ADITYA P.RANADE,ANNE HILTNER AND ERIC BAER, ”Structure-Property Relationships in Coextruded Foam/Film Microlayers”, JOURNAL OF CELLULAR PLASTICS, November 2004,Vol.40,pp.497-507
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の多層押出発泡において、発泡剤を含有する溶融樹脂と発泡剤を含有しない溶融樹脂を厚み方向に合流させ積層溶融樹脂を得た直後に成形金型出口から大気圧下に開放し発泡させた場合、または、上述の積層2倍化方法を用いた多層押出発泡において、2分割した積層溶融樹脂を厚み方向に上下に合流させて倍加積層溶融樹脂を得た直後に成形金型出口から大気圧下に開放し発泡させた場合、場合によって、積層溶融樹脂、倍加積層溶融樹脂を構成する各層間の接着性が不十分となり、得られる多層押出発泡成形体の各構成層の間での接着不良に繋がる懸念がある。
【0007】
特に、多層押出発泡成形体を断熱用途に使用する場合には、上述のように、各構成の間の接着不良が発生すると、成形体中から低い熱伝導率を有する発泡剤が逸散しやすくなると共に、成形体中へ高い熱伝導率を有する空気が侵入しやすくなるため、断熱性が大幅に低下して、所期の性能を得ることができないという課題に繋がる懸念がある。
【0008】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、成形体を構成する各層間の接着を確実にすることができる多層押出発泡成形体の製造方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、下記の事項等を見出し、本発明を完成するに至った。
(1)(積層2倍化方法を用いない場合)発泡剤を含有する溶融樹脂と発泡剤を含有しない溶融樹脂を厚み方向に合流した積層溶融樹脂、または、(積層2倍化方法を用いる場合)2分割した積層溶融樹脂を厚み方向に上下に合流させ倍加積層溶融樹脂を、高圧下で断面形状を変化させることなく、下流側へ所定長さ移動させた後に、成形金型出口から大気圧下に開放して発泡させることにより、成形体を構成する各層間の接着が安定化すること。
(2)上述の積層溶融樹脂または倍加積層溶融樹脂を高圧下で断面形状を変化させることなく下流側へ所定長さ移動させると共に、冷却した後、成形金型出口から大気圧下に開放して発泡させることにより、成形体を構成する各層間の接着が更に安定化すること。
【0010】
すなわち、本発明は、
[1] 加熱可塑化した溶融樹脂を流れ方向に押出しながら、金型で一定断面の形状に整えて連続的に成形する押出発泡成形体の製造方法において、
発泡剤を含有する少なくとも1つの溶融樹脂と、発泡剤を含有しない少なくとも1つの溶融樹脂とを、高圧下で厚み方向である上下方向に合流させて積層溶融樹脂を得る第1工程と、
前記積層溶融樹脂を大気圧下に開放して発泡剤を気化させることにより高倍化させる第6工程を含む、多層押出発泡成形体の製造方法であって、
前記第1工程と第6工程との間に、前記積層溶融樹脂を高圧下で断面形状を保持した状態で下流側へ所定長さ移動させる接着工程を設けることを特徴とする、多層押出発泡成形体の製造方法、
[2] 前記接着工程が冷却機構を有することを特徴とする、[1]記載の多層押出発泡成形体の製造方法、
[3]加熱可塑化した溶融樹脂を流れ方向に押出しながら、金型で一定断面の形状に整えて連続的に成形する押出発泡成形体の製造方法において、
発泡剤を含有する少なくとも1つの溶融樹脂と、発泡剤を含有しない少なくとも1つの溶融樹脂とを、高圧下で厚み方向である上下方向に合流させて積層溶融樹脂を得る第1工程と、
この積層溶融樹脂を幅方向である左右方向の中央で分割し、左右方向に離反させて左右2つの分割積層溶融樹脂を得る第2工程と、
これら左右2つの分割積層溶融樹脂を、一方の下端が他方の上端よりも上になるように上下方向に離反させる第3工程と、
これら2つの分割積層溶融樹脂を左右方向に接近させ、これら2つの分割積層溶融樹脂の左右方向中央が、前記積層溶融樹脂の左右方向中央を通り、前記流れ方向に平行な垂直平面内に位置するように上下に重なる位置まで、これら2つの分割積層溶融樹脂が分離した状態で上下に揃うように位置を合わせる第4工程と、
これら上下2つの分割積層溶融樹脂を上下方向に合流させて倍加積層溶融樹脂を得る第5工程と、
前記倍加積層溶融樹脂を大気圧下に開放して発泡剤を気化させることにより高倍化させる第6工程を含む、多層押出発泡成形体の製造方法であって、
前記第5工程と第6工程との間に、前記倍加積層溶融樹脂を高圧下で断面形状を保持した状態で下流側へ所定長さ移動させる接着工程を設けることを特徴とする、多層押出発泡成形体の製造方法、および
[4] 前記接着工程が冷却機構を有することを特徴とする、[3]記載の多層押出発泡成形体の製造方法、に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る多層押出発泡成形体の製造方法によれば、成形体を構成する各層の接着が安定化し、所期の断熱性を確保することができるという顕著な効果を奏する。
【0012】
上記効果は、発泡成形体の断熱性改善を目的とする他の従来技術との組み合わせが可能であり、従来にない優れた断熱性能を有する多層押出発泡成形体の提供を期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る多層押出発泡成形体の製造装置の構成(積層2倍化装置を使用しない場合)を示す概略図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る多層押出発泡成形体の製造装置の構成(積層2倍化装置を使用する場合)を示す概略図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る多層押出発泡成形体の製造方法により製造された多層押出発泡成形体の例を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る多層押出発泡成形体の製造方法の工程説明図を流路断面の模式図と併せて示したものであり、積層2倍化工程を設けない場合を示している。
【図5】本発明の実施の形態に係る多層押出発泡成形体の製造方法の工程説明図を流路断面の模式図と併せて示したものであり、積層2倍化工程を設ける場合を示している。
【図6】図6は、本発明に係る押出発泡成形体の厚みの測定位置を示す模式図である。
【図7】図7は、本発明に係る押出発泡成形体の幅の測定位置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下において、「左方向」および「左方向」とは、溶融樹脂の流れ方向(上流側から下流側へ向かう方向、すなわち、押出方向。図中では、矢印Fとして表記している。)の下流側に向かって、それぞれ、幅方向における左側、右側を示している。
【0015】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る多層押出発泡成形体の製造装置は、加熱可塑化した溶融樹脂を流れ方向(図中、矢印F参照)に押出しながら、成形金型で一定断面の形状に整えて、連続的に成形するものであり、
発泡剤を含有する溶融樹脂を加圧して供給する発泡用押出機1および、発泡剤を含有しない溶融樹脂を加圧して供給する非発泡用押出機2、
これら押出機1、2から供給された、発泡剤を含有する少なくとも1つの溶融樹脂と発泡剤を含有しない少なくとも1つの溶融樹脂とを厚み方向である上下方向に合流させ積層溶融樹脂とする、例えばフィードブロックである積層装置3、
前記積層溶融樹脂の冷却および各構成層間接着安定化を担う接着/冷却用アダプター5、
前記積層溶融樹脂を大気圧下に開放して発泡剤を気化させることにより高倍化させる成形金型6、並びに、
発泡成形体を引き取り上下方向に拘束しながら冷却して最終形状とする成形機7からなる。
【0016】
ここで、本発明の効果発現の主要部をなす接着/冷却用アダプター5の構造は、任意の場所における樹脂流路面の断面形状が保持されている限りにおいて、つまり、接着/冷却アダプター5の入口部分樹脂流路面の断面形状と出口部分樹脂流路面面の断面形状が等しく、任意の場所における樹脂流路面の断面形状が入口部分および出口部分の樹脂流路面と等しい限りにおいて、如何なる構造をとることが可能である。
任意の場所における樹脂流路面の断面形状が保持されることにより、接着/冷却用アダプター5内で樹脂の流れを乱す要因が排除され、各構成層の層構造が良好な成形体が得られる。
【0017】
接着/冷却用アダプター5の長さとしては、20〜300mmが好ましく、30〜200mmがより好ましく、50〜250mmが更に好ましく、75〜150mmが特に好ましい。接着/冷却用アダプター5の長さが20〜300mmの範囲では、各構成層間の接着性が安定化され、構成層樹脂の粘度差に起因する樹脂の回り込みが無い良好な層構造の成形体が得られる。
【0018】
接着/冷却用アダプター5は、その樹脂流路面を覆うように温度調整機構を付与することが好ましい。
【0019】
温度調整機構としては、公知の温度調整機構が挙げられ、例えば、オイル循環式温調機構、温水循環式温調機構、アルミ鋳込みヒーター式温調機構、バンドヒーター式温調機構、ジャケットヒーター式温調機構、ドリルジャケットヒーター式温調機構、等が挙げられ、これらの温調機構を併用することも可能である。
なお、これらの中でも、精度よく均一な温度調整が可能なこと、温度調整範囲が広いことなどから、オイル循環式温調機構、ドリルジャケットヒーター式温調機構が好ましい。
【0020】
接着/冷却用アダプター5の温度は、50〜150℃が好ましく、60〜130℃がより好ましく、70〜120℃が更に好ましく、80〜110℃が特に好ましい。接着/冷却用アダプター5の温度が50〜150℃の範囲では、各構成層間の接着性が安定化し、且つ発泡成形に適した温度範囲に樹脂温度を調整することが可能であり、良好な成形体が得られる。
【0021】
図2に示すように、本発明の別の実施の形態に係る多層押出発泡成形体の製造装置としては、積層装置3により得られた積層溶融樹脂を幅方向である左右方向の中央で分割して2つの分割積層溶融樹脂とし、これら分割積層溶融樹脂を上下に重ね合わせるように合流させて倍加積層溶融樹脂とする積層2倍化装置4を、
積層装置3と接着/冷却用アダプター5との間に設ける場合もある。
【0022】
図3(a、b)は上述の多層押出発泡成形体の製造装置により製造された多層押出発泡成形体8の一例を示す断面図であり、非発泡層10が、厚み方向に上下の発泡層9、9の間に積層されている。
【0023】
多層押出発泡成形体8の構造としては、図3(a)に示す発泡層/非発泡層/発泡層の如く、押出発泡成形体の厚み方向に発泡層9が非発泡層10を介して積層されてなる構造を有することが好ましい。これは、非発泡層10の両面に発泡層9が積層された構造において、非発泡層10の膜厚が発泡層9を構成するセルの膜厚に対して厚いことにより、輻射伝熱の抑制に起因する熱伝導率低減効果が有効に作用することによる。
他方、非発泡層/発泡層/非発泡層の如く、非発泡層10の片面のみに発泡層9が積層された構造では、非発泡層10による輻射伝熱の抑制に起因する熱伝導率低減効果が十分発現しない傾向がある。
【0024】
また、図3(b)に示す発泡層/非発泡層/発泡層/非発泡層/発泡層の如く、非発泡層10が複数層存在することがさらに好ましい。これは、押出発泡成形体の厚み方向に非発泡層10を複数層設けることにより、1層の非発泡層10では得られない優れた熱伝導率の低減効果が発現することによる。
【0025】
次に、本発明の実施の形態に係る多層押出発泡成形体の製造方法の一例について、図4〜5に示す工程説明図を用いて説明する。
【0026】
図4〜5における工程において、第1工程は、図1、2中の押出機1、2及び積層装置3による工程を、第2乃至5工程は、図2中の積層2倍化装置4による工程(積層2倍化工程)を、接着工程は、図1、2中の接着/冷却用アダプター5による工程を、第6工程は図1,2中の成形金型6及び成形機7による工程を示している。
【0027】
まず、図4に示す工程について説明する。
(第1工程)
第1工程は、発泡剤を含有する少なくとも1つの溶融樹脂の例として示す発泡剤を含有する上下2層の溶融樹脂A、Aと、発泡剤を含有しない少なくとも1つの溶融樹脂の例として示す1層の発泡剤を含有しない溶融樹脂Bとを高圧下で厚み方向である上下方向に合流させ、上下の溶融樹脂A、Aの間に溶融樹脂Bを介在させた積層溶融樹脂Cを得る工程である。
(接着工程)
接着工程は、第1工程で得られた積層溶融樹脂Cの断面形状を保持した状態で下流側へ所定長さ移動させることにより、前記積層溶融樹脂の各構成層の接着性を改善させる工程である。
(第6工程)
第6工程は、第1工程で得られ、接着工程にて各構成層の接着性が改善された、積層溶融樹脂Cを大気圧下に開放して発泡剤を気化させることにより高倍化させ、発泡成形体を引き取り上下方向に拘束しながら冷却して、最終形状(例えば図3(a)参照)とする工程である。
【0028】
次に、図5に示す工程について説明する。
(第1工程)
第1工程は、発泡剤を含有する少なくとも1つの溶融樹脂の例として示す発泡剤を含有する上下2層の溶融樹脂A、Aと、発泡剤を含有しない少なくとも1つの溶融樹脂の例として示す1層の発泡剤を含有しない溶融樹脂Bとを高圧下で厚み方向である上下方向に合流させ、上下の溶融樹脂A、Aの間に溶融樹脂Bを介在させた積層溶融樹脂Cを得る工程である。
(第2工程)
第2工程は、第1工程で積層された積層溶融樹脂Cを左右方向中央で分割して、左右方向に離反させて左右2つの分割積層溶融樹脂D1、D2を得る工程である。
(第3工程)
第3工程は、第2工程で分割された分割積溶融樹脂D1、D2を、一方の下端が他方の上端よりも上になるように(図4の例ではD1の下端がD2の上端よりも上になるように)上下方向に離反させる工程である。
(第4工程)
第4工程は、第3工程で上下に離反した分割積層溶融樹脂D1、D2を左右方向に接近させ、これら2つの分割積層溶融樹脂D1、D2の左右方向中央が、積層溶融樹脂Cの左右方向中央を通り流れ方向Fに平行な垂直平面内に位置するように上下に重なる位置まで、分割積層溶融樹脂D1、D2が分離した状態で上下に揃うように位置を合わせる工程である。
(幅拡大工程)
幅拡大工程は、第2工程で分割され第3、4工程を経ることで分離した状態で上下に揃うように位置合わせされた2つの分割積層溶融樹脂D1、D2を左右方向の位置を保持しながら断面積を変化させずに左右方向に拡大(図4の例では、(幅拡大工程通過後の分割積層溶融樹脂D1、D2の幅)/(幅拡大工程通過前の分割積層溶融樹脂D1、D2の幅)=2)する工程である。
(整流工程)
整流工程は、幅拡大工程で幅拡大された2つの分割積層溶融樹脂D1、D2を分離した状態で左右方向の位置を保持しながら下流側へ所定長さ移動させることにより、左右方向における流速分布の差を低減させる工程である。
(第5工程)
第5工程は、整流工程で左右方向における流速分布の差が低減した上下2つの分割積層溶融樹脂D1、D2を上下方向に合流させて倍加積層溶融樹脂Eを得る工程である。
(接着工程)
接着工程は、第5工程で得られた倍加積層溶融樹脂Eの断面形状を保持した状態で下流側へ所定長さ移動させることにより、倍加積層溶融樹脂Eの各構成層の接着性を改善させる工程である。
(第6工程)
第6工程は、第5工程で得られ、接着工程で各構成層の接着性が改善された、倍加積層溶融樹脂Eを大気圧下に開放して発泡剤を気化させることにより高倍化させ、発泡成形体を引き取り上下方向に拘束しながら冷却して最終形状(例えば図3(b)参照)とする工程である。
【0029】
本発明の多層押出発泡成形体の製造方法においては、図4、5に示すように、積層溶融樹脂Cまたはおよび倍加積層溶融樹脂Eを大気圧下に開放して発泡剤を気化させる第6工程の前に、高圧下で且つ断面形状を保持した状態で下流側へ所定長さ移動させる接着工程を設けることが必須である。
第6工程を経る前に接着工程を設けることにより、積層溶融樹脂Cまたは倍加積層溶融樹脂Eを構成する各層間の接着を安定化させることが可能となり、各構成層間に剥離の無い多層押出発泡成形体を安定的に得ることが可能となる。
【0030】
本発明の多層押出発泡成形体の製造方法においては、接着工程において、さらに、積層溶融樹脂Cまたは倍加積層溶融樹脂Eの樹脂温度を調整可能なように、冷却整構を設けることが好ましい。
接着工程に冷却機構を設けて樹脂温度を調節することの意味は、樹脂の溶融粘度を発泡適正領域に調整すること、大気圧下に開放後の冷却固化を早め、各構成層間の接着をより確実とすること、等が挙げられる。
【0031】
次に、積層2倍化工程について説明する。
【0032】
積層2倍化方法としては、JOURNAL OF CELLULAR PLASTICS Vol.40 November P497-(2004)等に記載の方法があげられる。
積層2倍化方法を用いることにより、複数の発泡剤を含有する溶融樹脂Aと複数の発泡剤を含有しない溶融樹脂Bを合流させる際に使用されるフィードブロック、マルチマニホールド等の積層装置の構造を複雑化、大型化させずに層数を増やすことが可能となる。また、積層2倍化工程は、これを複数回繰り返すことも可能であり、これにより効率良く層数を増やすことが可能となる。
なお、積層2倍化方法の具体例としては、図5に示す第2工程→第3工程→第4工程→幅拡大工程→整流工程→第5工程を経る以外にも種々の方法、例えば、幅拡大工程→第2工程→第3工程→第4工程→整流工程→第5工程、第2工程→幅拡大工程→第3工程→第4工程→整流工程→第5工程、第2工程→第3工程→幅拡大工程→第4工程→整流工程→第5工程、第2工程→第3工程→第4工程→整流工程→第5工程→幅拡大工程を経る方法が挙げられる。その中でも、図5に示す第2工程→第3工程→第4工程→幅拡大工程→整流工程→第5工程を経る方法は、得られる成形体の構成層各層の層構造の乱れが小さく好ましい。
【0033】
また、図5に示す工程のように、(幅拡大工程通過後の分割積層溶融樹脂D1、D2の幅)/(幅拡大工程通過前の分割積層溶融樹脂D1、D2の幅)=2とすることにより、積層2倍化工程の前後、すなわち、第1工程の下流側の流路断面積と第5工程の下流側の流路断面積(第5工程の後に幅拡大工程を設ける場合はこの幅拡大工程の下流側の流路断面積)とが同一になることから、積層2倍化工程を多段化する際に好都合であり、簡素な構成により積層2倍化工程の多段化流路を構成して成形体を多層化することができる。
【0034】
積層2倍化工程においては、図5に示すように、分割積層溶融樹脂D1、D2を厚み方向に合流させる前に、分割積層溶融樹脂D1、D2の幅方向における流速分布の差を減少させる工程(整流工程)を設けることが好ましい、整流工程を設けることにより得られる多層押出発泡成形体は成形体を構成する発泡層と非発泡層が厚み方向に水平に積層されたものとなる。
【0035】
一方、分割積層溶融樹脂D1、D2を、整流部を設けずに合流した場合、厚み方向に合流される2つの分割積層溶融樹脂D1、D2の幅方向の流速差に起因して、合流直後の倍化積層溶融樹脂Eの厚み方向に流速差が生じるため、得られる多層押出発泡成形体は成形体を構成する発泡層と非発泡層が厚み方向に斜めに積層されたものとなる。
【0036】
本発明の多層押出発泡成形体の製造方法においては、図4、5で示す第1工程において、発泡剤を含有する溶融樹脂Aと発泡剤を含有しない溶融樹脂Bを高圧下で合流させることにより、発泡剤を含有する溶融樹脂A中の発泡剤が大気圧下に開放されるまでに経由する流路内での発泡を抑えることができる。発泡剤を含有する溶融樹脂A中の発泡剤が、大気圧下に開放されるまでに経由する流路内で発泡すると、発泡層ではセル肥大化、低独立気泡率化が起こり、得られる多層押出発泡成形体は多層化によって期待される熱伝導率の低減効果が発現しないものとなる傾向がある。
【0037】
大気圧下に開放されるまでに経由する流路内で発泡が起こらない圧力は、発泡剤種、発泡剤量、発泡剤含有溶融樹脂の温度に依存するため、一概には設定できない。
【0038】
本発明の多層押出発泡成形体の製造方法においては、少なくとも1層の発泡剤を含有する溶融樹脂Aと、少なくとも1層の発泡剤を含有しない溶融樹脂Bを厚み方向に合流させることにより、多層化によって期待される熱伝導率の低減効果を発現しやすい構造を得ることができる。これは、断熱材の熱伝導率はJIS A9511に規定されるように断熱材の厚み方向で測定され、厚み方向に非発泡層が複数層存在することにより、発泡層間の輻射伝熱を抑制する効果が期待され、また、発泡層を被覆する非発泡層の面積が広くなることにより、効率的なガスバリアー効果が期待されることによる。
【0039】
このため、発泡剤を含有する溶融樹脂Aと、発泡剤を含有しない溶融樹脂Bを厚み方向に合流させて得られる多層押出発泡成形体は、熱伝導率が低く断熱性が良好なものとなる。一方、幅方向に合流させた場合は、得られる多層押出発泡成形体は、熱量が発泡層に比べて熱伝導率の高い非発泡層を伝熱する(いわゆる、熱橋として働く)ため、熱伝導率が高く断熱性能に劣るものとなる傾向がある。
【0040】
また、発泡剤を含有する溶融樹脂Aと発泡剤を含有しない溶融樹脂Bを合流させ大気圧下に開放する共押出発泡法を使用することの意味は、経済的な有利性に加え、製造直後に発生する発泡層セル内への空気の侵入を非発泡層が抑止することにより高断熱化が期待されることによる。
【0041】
本発明の多層押出発泡成形体の製造方法により得られる多層発泡成形体を構成する発泡層とは、複数の気泡が気泡壁(wall)および気泡壁結合部(struts)によって結合された気泡構造を有する層をいう。その形状としては、特に限定されず、フィルム形状、シート形状、ボード形状が挙げられ、これらの中でも、断熱性能を発現しやすいこと、押出発泡成形体に軽量性を付与できることより、シート形状、ボード形状が好ましい。
当該発泡層の密度は、目的とする押出発泡成形体の密度にもよるが、500kg/m以下が好ましい。
【0042】
本発明の多層押出発泡成形体の製造方法により得られる多層発泡成形体を構成する発泡層としては、平均気泡径の1.2倍未満の気泡径を有し、気泡径が0.25mm以下の小気泡と、平均気泡径の1.2倍以上の気泡径を有する大気泡よりなるが海島状に混在する特徴的な気泡構造を有してもよい。このような特徴的な気泡構造を有することにより、得られる成形体は低密度化が可能となり、断熱性、成形性に優れた発泡成形体を得ることができる。ここで、小気泡は主に断熱性能の向上に寄与し、大気泡は主に低密度化、成形性改善に寄与するものである。
【0043】
なお、通常の均一な気泡径の気泡のみからなる発泡成形体においても、気泡径を小さくすることにより、断熱性能をある程度向上させることは可能である。ただし、均一な気泡径の気泡のみからなる発泡成形体では、気泡径が小さくなると、所定の厚さを出すためには、より多くの樹脂が必要となって高密度化し、結果として、断熱性能改善効果が低下する傾向となる。また、押出時の圧力が高くなる、吐出量が少なくなるなど、成形性が低下する傾向となる。
これに対して、小気泡と大気泡が海島状に混在する前記特徴的な気泡構造では、断熱性能を向上させると共に、大気泡により得られる発泡層が低密度で厚み方向の拡大率が高い発泡成形体を得ることが可能となる。
【0044】
小気泡と大気泡の気泡径の関係について、小気泡が平均気泡径の1.2倍未満であり、小気泡の平均気泡径が0.25mm以下であり、且つ、大気泡の平均気泡径が平均気泡径の1.2倍以上であれば、特に限定はされない。
【0045】
なお、本発明の発泡成形体の発泡層において、小気泡と大気泡の気泡径の中間に位置する気泡が全く存在しないわけではないが、該気泡が目立って増加すると、小気泡と大気泡との区別がつきにくくなり、すなわち、異なる気泡径が連続的に存在する気泡構造となり、海島状に存在する前記の特徴的な気泡構造ではなくなることから、断熱性能と成形性のバランスが崩れる傾向となる。
【0046】
本発明の多層押出発泡成形体の製造方法により得られる多層発泡成形体の厚み方向中央部に位置する発泡層の断面に占める小気泡の総面積の割合(単位断面積あたりの占有面積率)は、5〜95%が好ましく、10〜90%がよりに好ましく、20〜80%がさらに好ましく、25〜70%が特に好ましい。発泡層断面に占める小気泡の総面積の割合が5〜95%の場合、断熱性と成形性に優れた良好な押出発泡成形体が得られる。
【0047】
小気泡と大気泡からなる特徴的な気泡構造の発泡層を作製する方法としては、発泡剤として物理型発泡剤と水を併用することがあげられる。
【0048】
発泡剤として使用される水の添加量としては、小気泡および大気泡の生成しやすさや加工性の面から、発泡層を構成する熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.1〜5.0重量部が好ましく、0.2〜4.0重量部がより好ましく、0.3〜3.0重量部が特に好ましい。
【0049】
水の添加量は、発泡層剤全量に対して、1〜80重量%が好ましく、2〜70重量%がより好ましく、3〜60重量%が特に好ましい。
水の添加量が発泡層を構成する熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.1〜5.0重量部であり、且つ、発泡剤全量に対して1〜80重量%を満たす場合、得られる発泡層は容易に小気泡と大気泡からなる特徴的な気泡構造をとることが可能となり、結果、得られる多層発泡成形体は軽量性と断熱性、成形性に優れたものとなる。
【0050】
小気泡と大気泡からなる特徴的な気泡構造の発泡層を作製する方法において、発泡層を構成する熱可塑性樹脂と相溶性のない水を如何に溶融樹脂中に均一に分散させるかが、重要となる。その方法としては、熱可塑性樹脂中にスメクタイト、膨潤性フッ素雲母などの吸水性または水膨潤性の層状珪酸塩類またはこれらの有機化処理品、吸水性高分子、日本アエロジル(株)製AEROSILなどのシラノール基を有する無水シリカなど(本明細書においては、これらの物質を「吸水性物質」と総称する)の1種または複数種を添加することがあげられる。これにより、発泡層中の小気泡および大気泡の分散状態が安定化し、得られる多層発泡成形体の成形性、生産性および断熱性能をさらに向上させることができる。
【0051】
本発明の多層押出発泡成形体の製造方法により得られる多層発泡成形体を構成する発泡層を製造する際に用いられる吸水性物質の添加量は、水の添加量などによって適宜調整されるものであるが、一般に、発泡層を構成する熱可塑性樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部が好ましく、0.2〜8重量部がさらに好ましく、0.3〜7重量部が特に好ましい。吸水性物質の添加量が0.1〜10重量部の場合、押出機内で水が良好に分散されて、気泡ムラ、ボイド等の発生が無い良好なセル構造を有する発泡層が得られ、バラツキのない良好な断熱性能を有する押出発泡成形体を得ることができる。
【0052】
本発明の多層押出発泡成形体の製造方法により得られる多層発泡成形体を構成する発泡層を製造する際に用いられる層状珪酸塩とは、酸化ケイ素を主成分とする四面体シートと金属水酸化物を主成分とする八面体シートからなり、前記四面体シートと前記八面体シートが単位層を形成し、単位層単独構造の、または複数の単位層が層間に陽イオンなどを介して積層された構造の一次粒子、および、一次粒子の凝集体(二次粒子)として存在するものである。層状珪酸塩の具体例としては、例えば、スメクタイト族粘土および膨潤性雲母などがあげられる。
【0053】
前記のスメクタイト族粘土は下記一般式(I)
0.2〜0.62〜310(OH)・nHO・・・・・・一般式(I)
(ただし、XはK、Na、1/2Ca、および1/2Mgからなる群より選ばれる1種以上であり、YはMg、Fe、Mn、Ni、Zn、Li、Al、およびCrからなる群より選ばれる1種以上であり、ZはSi、およびAlからなる群より選ばれる1種以上である。なお、H2Oは層間イオンと結合している水分子を表わすが、nは層間イオンおよび相対湿度に応じて著しく変動する)で表される、天然または合成されたものである。
【0054】
前記スメクタイト族粘土の具体例としては、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、鉄サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイトおよびベントナイト等、またはこれらの置換体、誘導体、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0055】
また、前記の膨潤性雲母は下記一般式(II)
0.5〜1.02〜3(Z10)(F、OH)・・・・・・一般式(II)
(ただし、XはLi、Na、K、Rb、Ca、Ba、およびSrからなる群より選ばれる1種以上であり、YはMg、Fe、Ni、Mn、Al、およびLiからなる群より選ばれる1種以上であり、ZはSi、Ge、Al、Fe、およびBからなる群より選ばれる1種以上である)で表される、天然または合成されたものである。
【0056】
これらは、水、水と任意の割合で相溶する極性のある有機化合物、および水と該極性のある有機化合物の混合溶媒中で膨潤する性質を有する物であり、例えば、リチウム型テニオライト、ナトリウム型テニオライト、リチウム型四ケイ素雲母、およびナトリウム型四ケイ素雲母等、またはこれらの置換体、誘導体、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0057】
前記膨潤性雲母の中にはバーミキュライト類と似通った構造を有するものもあり、この様なバーミキュライト類相当品等も使用し得る。該バーミキュライト類相当品には3八面体型と2八面体型があり、下記一般式(III)
(Mg,Fe,Al)2〜3(Si4−xAl)O10(OH)・(M,M2+1/2)・nHO・・・・・・一般式(III)
(ただし、MはNaおよびMg等のアルカリまたはアルカリ土類金属の交換性陽イオン、x=0.6〜0.9、n=3.5〜5である)で表されるものがあげられる。
【0058】
膨潤性層状珪酸塩は、単独で用いても良く、2種以上組み合わせて用いても良い。これらの内では、得られる多層発泡成形体中の分散性の点などから、スメクタイト族粘土、膨潤性雲母が好ましく、モンモリロナイト、ベントナイト、ヘクトライト、合成スメクタイトおよび膨潤性フッ素雲母などの層間にナトリウムイオンを有する膨潤性雲母が、さらに好ましい。
【0059】
ベントナイトの代表例としては、天然ベントナイト、精製ベントナイトなどがあげられる。また、有機化ベントナイトなども使用できる。本発明におけるスメクタイトには、アニオン系ポリマー変性モンモリロナイト、シラン処理モンモリロナイト、高極性有機溶剤複合モンモリロナイトなどのモンモリロナイト変性処理生成物もその範疇に含まれる。
【0060】
ベントナイトなどのスメクタイトの含有量は、水の添加量などによって、適宜調整されるものであるが、熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましくは0.2〜8重量部がさらに好ましく、0.3〜7重量部が特に好ましく、1〜5重量部が最も好ましい。
【0061】
スメクタイトの添加量が0.1〜10重量部の場合、押出機内で水が良好に分散され、気泡ムラ、ボイドの発生が無い良好なセル構造を有する発泡層が得られ、バラツキのない良好な断熱性能を有する押出発泡成形体を得ることができる。
【0062】
水/スメクタイトの混合比率は、重量比で、0.02〜20が好ましく、0.1〜10がさらに好ましく、0.15〜5が特に好ましく、0.25〜2の範囲が最も好ましい。
【0063】
発泡層の密度としては、前記のように、500kg/m以下であれば特に限定はされないが、軽量でかつ優れた断熱性および曲げ強度、圧縮強度を付与するためには、20〜65kg/mであることが好ましく、20〜50kg/mであることが更に好ましく、20〜40kg/mであることがより好ましい。密度が20〜60kg/mの範囲では、軽量性、圧縮強度など機械的特性、断熱性に優れた発泡成形体が得られる。
【0064】
本発明の多層押出発泡成形体の製造方法により得られる多層発泡成形体の発泡層を構成する樹脂(以降、「発泡層構成樹脂」と称する場合がある)は、押出発泡成形が可能な熱可塑性樹脂から任意に選択される。
【0065】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体などのスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂などのビニル系樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン3元共重合体、シクロオレフィン系(共)重合体などのポリオレフィン系樹脂およびこれらに分岐構造、架橋構造を導入してレオロジーコントロールされたポリオレフィン系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、MXDナイロンなどのポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレートなどのポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリオキシメチレン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、芳香族ポリエーテル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、液晶樹脂などのエンジニアリングプラスチック;ポリ乳酸などの脂肪族ポリエステル系樹脂などが挙げられ、これらは単独または2種以上を混合して使用することができる。
【0066】
発泡層を構成する樹脂としてスチレン系樹脂を用いる場合には、特に限定されず、例えば、スチレン単量体のみから得られるスチレンホモポリマー、スチレン単量体とスチレンと共重合可能な単量体またはその誘導体から得られるランダム、ブロックまたはグラフト共重合体、後臭素化ポリスチレン、ゴム強化ポリスチレンなどの変性ポリスチレン、ABS樹脂などが挙げられる。これらは単独または2種以上混合して使用することができる。
【0067】
スチレンと共重合可能な単量体としては、例えば、メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレンなどのスチレン誘導体;ジビニルベンゼンなどの多官能性ビニル化合物;アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、アクリロニトリルなどの(メタ)アクリル系化合物;ブダジエンなどのジエン系化合物またはその誘導体;無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などの不飽和カルボン酸無水物;N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−4−ジフェニルマレイミド、N−2−クロロフェニルマレイミド、N−4−ブロモフェニルマレイミド、N−1−ナフチルマレイミド等のN−アルキル置換マレイミド化合物;などがあげられる。これらは単独または2種以上混合して使用することができる。
【0068】
発泡層を構成する樹脂としては、これらの中でも、押出発泡成形が容易で軽量かつ断熱性に優れた押出発泡成形体が得られることなどから、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、無水マレイン酸変性ポリスチレン、スチレン−不飽和ジカルボン酸無水物−N−アルキル置換マレイミド系共重合体、耐衝撃性ポリスチレンなどのスチレン系樹脂、あるいは、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル系樹脂などのビニル系樹脂;ポリスチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂の混合樹脂である変性ポリフェニレンエーテル系樹脂が好ましい。最も好ましくはポリスチレンホモポリマーである。
【0069】
本発明の多層押出発泡成形体の製造方法により得られる多層発泡成形体の発泡層は、溶融状態にある発泡層構成樹脂に、高圧下で、水および物理型発泡剤を圧入し、低圧領域に開放することにより得られる。
【0070】
圧入する物理型発泡剤としては、特に限定されず、例えば、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、ネオペンタンなどの炭素数3〜5の飽和炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、イソプロピルエーテル、n−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、フラン、フルフラール、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルn−プロピルケトン、メチルn−ブチルケトン、メチルi−ブチルケトン、メチルn−アミルケトン、メチルn−ヘキシルケトン、エチルn−プロピルケトン、エチルn−ブチルケトンなどのケトン類;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、t−ブチルアルコールなどのアルコール類;蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、蟻酸アミル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどのエステル類;塩化メチル、塩化エチルなどのハロゲン化アルキル類;窒素、空気、二酸化炭素などの無機発泡剤、等が挙げられる。これら発泡剤は単独または2種以上混合して使用することができる。
【0071】
前記発泡剤の中でも、押出発泡成形性と高断熱性を両立できるという点から、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、ネオペンタン、シクロペンタンなどの炭化水素が好ましい。また、低密度の押出発泡体が得られるという点から、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテルなどのエーテル類;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、t−ブチルアルコールなどのアルコール類;塩化メチル、塩化エチルなどのハロゲン化アルキル類が好ましい。さらに、不燃性であり環境適合性に優れるという点から、窒素、空気、二酸化炭素などの無機発泡剤が好ましい。
【0072】
溶融した発泡層構成樹脂(熱可塑性樹脂)中に圧入される物理型発泡剤の量としては、発泡倍率の設定値などに応じて適宜選定されるが、通常、発泡剤の合計量を、熱可塑性樹脂100重量部に対して1〜20重量部とすることが好ましく、3〜8重量部とすることがより好ましい。物理型発泡剤の合計圧入量が1〜20重量部の場合、発泡成形体中にボイドが無く、難燃性が制御可能な、適度な発泡倍率を有する発泡層が得られ、押出発泡成形体として軽量、断熱性などの特性が発現される。
【0073】
発泡剤を圧入する際の圧力としては、特に限定されず、押出機などの内圧力よりも高い圧力であればよい。
【0074】
発泡層の気泡径分布を調整する方法としては、発泡剤に水を用い、他の発泡剤の種類および使用量、吸水性物質の種類および使用量、押出発泡の成形条件などにより調整できる。このような成形条件としては、例えば、溶融されたスチレン系樹脂組成物を大気中へ吐出する際の厚みの拡大率の調整(つまり、ダイリップのスリットの厚みと矩形にするための成形金型の高さの調整)、成形抵抗の調整、等が挙げられる。
【0075】
発泡層の厚み方向の平均気泡径を制御する方法としては、シリカ、タルク、ケイ酸カルシウム、ワラストナイト、カオリン、クレイ、マイカ、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウムなどの無機化合物などに代表される造核剤や、前述された層状珪酸塩をスチレン系樹脂に添加し、これらの添加量を調整する方法があげられる。また、発泡剤の種類、組成および添加量によっても、平均気泡径は調整される。さらに、溶融混練手段である押出機のスクリュー形状や、加熱温度、圧力、溶融混練されたスチレン系樹脂組成物がダイリップから吐出される量、ダイス形状、吐出の際の樹脂温度などによっても、平均気泡径は調整される。
【0076】
発泡層の製造時において、必要に応じて、難燃剤、難燃助剤、シリカ、タルク、ケイ酸カルシウム、ワラストナイト、カオリン、クレイ、マイカ、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウムなどの無機化合物、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、流動パラフィン、オレフィン系ワックス、ステアリルアミド系化合物などの加工助剤、フェノール系抗酸化剤、リン系安定剤、窒素系安定剤、イオウ系安定剤、ベンゾトリアゾール類、ヒンダードアミン類などの耐光性安定剤、帯電防止剤、顔料などの着色剤などの添加剤を添加させることが好ましい。
【0077】
また、より安定的に押出発泡するためには、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスフェート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレイトなどのヒンダードフェノール系抗酸化剤;トリフェニルフォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、ビスステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホナイトなどのリン系安定剤;2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体、アルキル化ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンなどのアミン系安定剤;3,3−チオビスプロピオン酸ジオデシルエステル、3,3’−チオビスプロピオン酸ジオクタデシルエステルなどのイオウ系安定剤を添加するのが好ましい。
【0078】
発泡層の厚みは、多層発泡成形体の厚みおよび多層発泡成形体中の発泡層の数(発泡層/非発泡層/発泡層からなるユニットの数)に応じて適宜選択される。
【0079】
本発明の多層押出発泡成形体の製造方法により得られる多層発泡成形体を構成する非発泡層とは、発泡層を構成する気泡の気泡壁あるいは気泡壁結合部のうち厚みの大きな部分よりも1.1倍以上の厚みを有する層をいう。非発泡層の密度は用いる樹脂、添加剤などの密度にもよるが、500kg/m超であることが好ましい。非発泡層には発泡層より少ない数の気泡が含まれていてもよい。
【0080】
非発泡層を構成する樹脂あるいは樹脂組成物(以降、「非発泡層構成樹脂」と称する場合がある)は、目的の高断熱性の多層発泡成形体を得るためには得られた発泡層と非発泡層とが良好に接着されていることが好ましいため、発泡層を構成する樹脂と相溶性を有する樹脂を選定することが好ましい。
【0081】
発泡層を構成する樹脂と相溶性を有する熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリスチレンなどのスチレン系樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレンプロピレンランダム共重合体等のポリオレフィン系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリフェニレンエーテル系樹脂、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリオキシメチレン系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニル酢酸共重合体、ポリアクリル酸、ポリメチルメタクリレート、熱可塑性フェノール系樹脂などが挙げられ、これらは単独または2種以上を混合して使用することができる。これらの中でも、前記発泡層を構成する樹脂との相溶性に優れること、成形性が容易なことから、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂が好ましく、スチレン系樹脂がより好ましい。
【0082】
スチレン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、スチレン単量体のみから得られるスチレンホモポリマー、スチレン単量体とスチレンと共重合可能な単量体またはその誘導体から得られるランダム、ブロックまたはグラフト共重合体、後臭素化ポリスチレン、ゴム強化ポリスチレンなどの変性ポリスチレン、ABS樹脂などが挙げられる。これらは単独または2種以上混合して使用することができる。
【0083】
スチレンと共重合可能な単量体としては、メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレンなどのスチレン誘導体、ジビニルベンゼンなどの多官能性ビニル化合物、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、アクリロニトリルなどの(メタ)アクリル系化合物、ブダジエンなどのジエン系化合物またはその誘導体、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などの不飽和カルボン酸無水物、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−4−ジフェニルマレイミド、N−2−クロロフェニルマレイミド、N−4−ブロモフェニルマレイミド、N−1−ナフチルマレイミド等のN−アルキル置換マレイミド化合物;などがあげられる。これらは単独または2種以上混合して使用することができる。
【0084】
特に、非発泡層の構成樹脂としてスチレン系樹脂を用いる場合には、発泡層との相溶性の点から、スチレンホモポリマー、スチレンアクリロニトリル共重合体、(メタ)アクリル酸共重合ポリスチレン、無水マレイン酸変性ポリスチレン、スチレン−不飽和ジカルボン酸無水物−N−アルキル置換マレイミド系共重合体、耐衝撃性ポリスチレンを用いることがさらに好ましく、最も好ましくはスチレンホモポリマーである。
【0085】
粘着性・接着性を有する樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ビニルアルコール系樹脂、エチレン−ビニルアルコール系共重合体樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−ブタジエン系共重合樹脂、天然ゴム系樹脂、クロロプレン系樹脂および、上記樹脂にロジン類、ロジン誘導体、石油系樹脂、テルペン系樹脂、フェノール樹脂、ロジンフェノール樹脂、ケトン樹脂等の粘着付与剤樹脂を配合してなる樹脂組成物等が挙げられる。
【0086】
非発泡層の構造は、特に限定されず、単層、複層のいずれの構造も採りうる。
非発泡層の厚みは、押出発泡成形体の厚みおよび多層発泡成形体中の発泡層の数(発泡層/非発泡層/発泡層からなるユニットの数)に応じて適宜選択されるが、10〜500μmが好ましく、20〜300μmがより好ましく、30〜200μmが特に好ましく、40〜100μmが最も好ましい。非発泡層の厚みが10〜500μmの範囲では、軽量性および断熱性を備えた押出発泡成形体を得ることができる。
【0087】
非発泡層の製造時において、必要に応じて、可塑剤、難燃剤、難燃助剤、シリカ、タルク、ケイ酸カルシウム、ワラストナイト、カオリン、クレイ、マイカ、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウムなどの無機化合物、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、流動パラフィン、オレフィン系ワックス、ステアリルアミド系化合物などの加工助剤、フェノール系抗酸化剤、リン系安定剤、窒素系安定剤、イオウ系安定剤、ベンゾトリアゾール類、ヒンダードアミン類などの耐光性安定剤、帯電防止剤、顔料などの着色剤などの添加剤を添加させることが好ましい。
【0088】
これらの添加剤のなかでも、可塑剤は、本発明の多層押出発泡成形体の製造方法により得られる多層発泡成形体製造の際、樹脂合流界面の流れを乱さないようにするため、また、非発泡層構成樹脂の溶融粘度を発泡剤含有樹脂の溶融粘度に近づける調整を行う際に有効に働くため、添加することが好ましい。
【0089】
非発泡層構成樹脂に添加する可塑剤としては、特に限定されず、一般に可塑剤として使用されているいずれの化合物の使用も可能であり、例えば、フタル酸ジメチル(DMP)、フタル酸ジエチル(DEP)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(DOP)、フタル酸ジノルマルオクチル(DNOP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジノニル(DNP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸ブチルベンジル(BBP)、フタル酸混基エステル(C6〜C11)等のフタル酸エステル類;アジピン酸ジオクチル(DOA)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、アジピン酸ジアルキル(C6,8,10)(610A)、アジピン酸ジアルキル(C7,C9)(79A)アゼライン酸ジオクチル(DOZ)セバシン酸ジブチル(DBS)、セバシン酸ジオクチル(DOS)、リン酸トリクレシル(TCP)、アセチルクエン酸トリブチル(ATBC)、エポキシ化大豆油(ESBO)、トリメリット酸トリオクチル(TOTM)、塩素化パラフィン等の非フタル酸エステル類、等が挙げられる。
【0090】
非発泡層構成樹脂に対する可塑剤の添加量は、狙いとする溶融粘度によって適宜選択されるが、非発泡層構成樹脂100重量部に対して1〜20重量部が好ましく、2〜15重量部が更に好ましく、3〜12重量部が特に好ましく、4〜10重量部が好ましい。可塑剤の添加量が非発泡層構成樹脂100重量部に対して、1〜20重量部の範囲では、押出の際に吐出変動が無く、押出後の表面ブリードアウトの無い非発泡層が得られる。
【0091】
本発明において、各々の溶融樹脂を多層積層装置にて多層状に合流させ積層溶融樹脂Cを得る方法としては、特に限定されず、例えば、共押出フィルムで一般に使用されているフィードブロック法、マルチマニホールド法特表2005−523831号公報、特開2004−249520号公報、等に記載の複数の分割流を作った後、逐次積層する方法、等が挙げられる。
【0092】
押出発泡体を製造する際の多層積層装置の温度は、多層積層装置に供給される発泡剤含有溶融樹脂の樹脂温度に等しいか、異なっていても±10℃以下が好ましい。温度差が±10℃以下の場合、発泡適正温度でダイによる成形加工が可能となり、高倍率で低独立気泡率の良好な発泡層を有する押出発泡体を得ることができる。
【0093】
押出発泡体を製造する際の多層積層装置内の圧力は、多層積層装置に供給される発泡剤含有溶融樹脂が多層積層装置内で発泡を起こさない圧力に設定される。但し、多層積層装置内で発泡を起こさない圧力は、発泡剤種、発泡剤量、発泡剤含有溶融樹脂の温度に依存するため、一概には設定できない。
本発明において、発泡成形方法も特に制限されないが、例えば、スリットダイより圧力開放して得られた発泡体をスリットダイと密着または接して設置した成形金型および成形ロールなどを用いて、断面積の大きい板状発泡体を成形する一般的な方法を用いることができる。
【0094】
なお、発泡層構成樹脂の溶融混練に関しては、
(i)熱可塑性樹脂に、必要に応じて前記添加剤を混合した後、加熱溶融する、
(ii)熱可塑性樹脂に、必要に応じて前記添加剤から選ばれる1種以上を混合した後、加熱溶融し、これに残りの前記添加剤をそのまま、または必要により液体化または溶融させて添加し加熱混合する、
(iii)予め熱可塑性樹脂に、必要に応じて前記添加剤から選ばれる1種以上の添加剤を混合した後、加熱溶融した組成物を準備し、次いで、該組成物と残りの前記添加剤、必要に応じて熱可塑性樹脂を改めて混合し、押出機に供給して加熱溶融する、
等、熱可塑性樹脂、必要に応じて、前記添加剤を加熱溶融押出機に供給し、
その後、任意の段階において高圧条件下で発泡剤を熱可塑性樹脂に添加し、流動ゲルとなす。その後、該流動ゲルは、押出発泡に適する温度に冷却した後、積層装置に供給される。
【0095】
熱可塑性樹脂と発泡剤などの添加剤を加熱溶融混練する際の加熱温度、溶融混練時間および溶融混練手段については特に制限するものではない。加熱温度は、使用する熱可塑性樹脂が溶融する温度以上であればよいが、難燃剤などの影響による樹脂の分子劣化ができる限り抑制される温度、例えば150〜280℃程度が好ましい。溶融混練時間は、単位時間あたりの押出量、溶融混練手段などによって異なるので一概には決定することができないが、熱可塑性樹脂と発泡剤が均一に分散混合するのに要する時間が適宜選ばれる。また、溶融混練手段としては、例えばスクリュー型の押出機などがあげられるが、通常の押出発泡に用いられているものであれば特に限定はない。ただし、樹脂の分子劣化をできる限り抑えるため、スクリュー形状については、低剪断タイプのスクリュー形状を用いる方が好ましい。
【0096】
また、非発泡層の構成樹脂の溶融混練に関しても、例えば、
(i)熱可塑性樹脂に、必要に応じて前記添加剤を混合した後、加熱溶融する、
(ii)熱可塑性樹脂に、必要に応じて前記添加剤から選ばれる1種以上を混合した後、加熱溶融し、これに残りの前記添加剤をそのまま、または必要により液体化または溶融させて添加し加熱混合する、
(iii)予め熱可塑性樹脂に、必要に応じて前記添加剤から選ばれる1種以上の添加剤を混合した後、加熱溶融した組成物を準備し、次いで、該組成物と残りの前記添加剤、必要に応じて熱可塑性樹脂を改めて混合し、押出機に供給して加熱溶融する、
など、熱可塑性樹脂、必要に応じて前記添加剤を押出機に供給し、加熱溶融混練を行う。その後、該溶融混練物は多層積層装置に供給される。
【0097】
熱可塑性樹脂と添加剤を加熱溶融混練する際の加熱温度、溶融混練時間および溶融混練手段については特に制限するものではない。
加熱温度は、使用する熱可塑性樹脂が溶融する温度以上であればよいが、溶融樹脂が供給される多層積層装置の設定温度と等しいか、異なっていても温度差が±10℃以内であることが好ましい。温度差が±10℃以下の場合、発泡層と非発泡層の界面部分に破泡がなく接着不良のない良好な押出発泡体を得ることができる。
溶融混練時間は、単位時間あたりの押出量、溶融混練手段などによって異なるので、一概には決定することができないが、熱可塑性樹脂と添加剤が均一に分散混合するのに要する時間が適宜選ばれる。
また、溶融混練手段としては、例えばスクリュー型の押出機などがあげられるが、通常の樹脂押出に用いられているものであれば特に限定はない。ただし、樹脂の分子劣化をできる限り抑えるため、スクリュー形状については、低剪断タイプのスクリュー形状を用いる方が好ましい。
【0098】
本発明の多層押出発泡成形体の製造方法により得られる多層発泡成形体の厚みは、特に限定されず、用途に応じて適宜選択される。例えば、建材などに使用される断熱材用途の場合、好ましい断熱性、曲げ強度および圧縮強度を付与するためには、シートのような薄いものよりも、通常の板状物のような厚さのあるものが好ましく、通常10〜150mm、好ましくは20〜100mmである。
【0099】
本発明の多層押出発泡成形体の製造方法により得られる多層発泡成形体の20℃での等価熱伝導率は、0.034W/m・K(0.0292kcal/m・hr・℃)以下が好ましく、0.032W/m・K(0.0275kcal/m・hr・℃)以下がより好ましく、0.030W/m・K(0.0258kcal/m・hr・℃)以下が特に好ましい。
【0100】
等価熱伝導率が0.034W/m・K以下である発泡成形体は、建築用部材用途として好適に使用され、快適な居住空間の提供に貢献する。
【0101】
本発明の多層押出発泡成形体の製造方法により得られる多層発泡成形体は、その優れた軽量性、断熱性の点から、種々の用途、例えば、床材、壁材、屋根材などの建築用部材、保冷車用断熱材、車両バンパー、自動車天井材などの自動車用部材、地盤の凍上防止剤などの土木用部材などに好適に使用できる。
【実施例】
【0102】
次に、本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断らない限り、「%」は重量%を表わす。
【0103】
実施例および比較例に対する評価方法は、以下のとおりである。
【0104】
(1)押出発泡成形体寸法[単位:mm]
厚み:異なる時間にサンプルングした3つの発泡成形体について、図7に示すように、幅方向(押出方向と直交する水平方向)における中央部(幅方向の中点)での厚みを測定し、平均値を算出した。
幅:異なる時間にサンプルングした3つの発泡成形体について、図8に示すように、厚み方向における中央部(厚み方向の中点)での幅を測定し、平均値を算出した。
厚み方向中央部分の特定:上表面から前記厚みの1/2の値、左側面から前記幅の1/2の値に位置する部分を中央部分とした。
【0105】
(2)押出発泡成形体の密度[単位:kg/m
異なる時間にサンプリングした3つの押出発泡成形体に対して、JIS K7222−1999「発泡プラスチック及びゴム−見掛け密度の測定」に記載の方法に則り、発泡体密度を測定して、その平均値を算出した。
【0106】
(3)熱伝導率[単位:W/m・K]
押出発泡成形体の熱伝導率を、熱伝導率測定装置(栄弘精機製、HC−074−300)を用いて測定した。押出発泡成形体気泡内の空気の分圧が51kPa時の熱伝導率を実施例に示した。
【0107】
(4)押出発泡成形体気泡内の空気の分圧
押出発泡成形体を切り出し面から10mmの部分を削除した後、巾方向における中央部より巾方向25mm、長さ方向25mm、厚み方向は成形体のままの厚さで切り出し、押出発泡成形体中の空気量を、ガスクロマトグラフ(島津製作所製 GC−14A)を用いて分析測定し、平均値を算出することにより、押出発泡成形体気泡内の空気の分圧を求めた。
【0108】
(実施例1)
[発泡剤を含有する溶融樹脂Aの製造方法]
ポリスチレン(PSジャパン株式会社製、商品名:680、MFR=7.0g/10分)100重量部に対して、タルク(林化成株式会社製、商品名:TALCAN PAWDER PK−Z)0.5重量部、ステアリン酸カルシウム(堺化学工業株式会社製、商品名:ステアリン酸カルシウム)0.3重量部、流動パラフィン(新日本石油株式会社製、商品名:ポリブテンLV−50)0.1重量部からなる混合物をドライブレンドしてスチレン系樹脂組成物とした。該スチレン系樹脂組成物を、口径65mmの第1押出機と口径90mmの第2押出機とを直列に連結した二段式押出機に対して、40.5kg/時間で供給した。
第1押出機に供給したスチレン系樹脂組成物を、180℃に加熱して混練を行い、第1押出機の先端付近(第2押出機に接続される側)において、発泡剤として、スチレン系樹脂組成物100重量%に対して、i−ブタン(三井化学株式会社製)4.0重量%、ジメチルエーテル(大洋液化ガス株式会社製)4.0重量%を、溶融されたスチレン系樹脂組成物に圧入した。この際、第1押出機の先端における樹脂圧は10.8MPaであり、これに対して、発泡剤の圧入圧力は12.8MPaであった。
第1押出機に連結された第2押出機において、樹脂温度を121℃に冷却した後、2つに分流し、発泡剤を含有する溶融樹脂Aを第2押出機の先端に設けられた2種3層多層積層用フィードブロック(株式会社プラ技研製)に供給した。
[発泡剤を含有しない溶融樹脂Bの製造方法]
ポリスチレン(PSジャパン株式会社製、商品名:679、MFR=18g/10分)100重量部に対して、可塑剤としてジメチルフタレート(大八化学工業株式会社製、商品名:DMP)8.0重量部を添加して予めマスターバッチ化した。
得られた樹脂を、口径50mmの押出機へ10.0kg/時間で供給した。供給した樹脂を125℃に加熱して溶融混練を行い、分流することなく、発泡剤を含有しない溶融樹脂(B)を前記2種3層多層積層用フィードブロックに供給した。
[第1工程:発泡剤を含有する溶融樹脂Aと発泡剤を含有しない溶融樹脂Bを厚み方向に合流させ積層溶融樹脂Cを得る工程]
120℃に温調された前記2種3層多層積層用フィードブロック内で、3.1MPaの圧力下にて、厚み方向に、発泡剤を含有しない溶融樹脂Bを、2つに分流された発泡剤を含有する溶融樹脂Aで挟み込むようにして、それぞれ、11mm/3mm/11mmの厚みで合流させ積層溶融樹脂Cを得た。
[接着工程:積層溶融樹脂の各構成層間の接着性を安定化する工程]
前記2種3層多層積層用フィードブロックで得られた積層溶融樹脂Cを、120℃に温調された、入口部分および出口部分の樹脂流路面の断面形状が等しく、且つ、任意の位置での樹脂流路面の断面形状を変化させず、下流側へ100mm移動させる流路構造を有する接着/冷却用アダプター(株式会社岩本精機製)を経由して成形金型に供給した。
[第6工程:多層押出発泡成形体を得る工程]
接着/冷却用アダプターを経由した積層溶融樹脂Cを、厚さ方向1.6mm×幅方向50mmの長方形断面の空隙を有し、80℃に温調された成形金型のダイスリップより、合流された多層流を大気中へ押し出し、上下にベルトコンベアを配置した成形装置に挟み込んで引き取り、厚み25mm×幅230mmの直方体状で、発泡層/非発泡層/発泡層の3層構造からなる押出発泡成形体を得た。
得られた多層発泡成形体は、成形体を構成する発泡層および非発泡層間に剥離が無く、良好な接着性を示し、成形体密度は33kg/mであり、空気分圧51kPaにおける熱伝導率は0.0283W/m・Kであった。
【0109】
(実施例2)
[接着工程]において、接着/冷却用アダプターの温度を100℃とし、第6工程においてダイスリップの厚さ方向の間隔を1.6mmから2.2mmに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、
厚み25mm×幅235mmの直方体状で、発泡層/非発泡層/発泡層の3層構造からなる押出発泡成形体を得た。
得られた多層発泡成形体は、成形体を構成する発泡層および非発泡層間に剥離が無く、良好な接着性を示し、成形体密度は33kg/mであり、空気分圧51kPaにおける熱伝導率は0.0275W/m・Kであった。
【0110】
(比較例1)
接着工程(接着/冷却アダプター)を経由しなった以外は、実施例1と同様の操作を行い、厚み25mm×幅225mmの直方体状で、発泡層/非発泡層/発泡層の3層構造からなる押出発泡成形体を得た。
得られた多層発泡成形体は、成形体を構成する発泡層および非発泡層間で部分的に剥離が発生し、接着性に劣るもので、成形体密度は32Kg/mであり、空気分圧51kPaにおける熱伝導率は0.0295W/m・Kであった。
【0111】
(実施例3)
[発泡剤を含有する溶融樹脂Aの製造方法]
ポリスチレン(PSジャパン株式会社製、商品名:680、MFR=7.0g/10分)100重量部に対して、タルク(林化成株式会社製、商品名:TALCAN PAWDER PK−Z)0.5重量部、ステアリン酸カルシウム(堺化学工業株式会社製、商品名:ステアリン酸カルシウム)0.3重量部、流動パラフィン(新日本石油株式会社製、商品名:ポリブテンLV−50)0.1重量部からなる混合物をドライブレンドしてスチレン系樹脂組成物とした。該スチレン系樹脂組成物を、口径65mmの第1押出機と口径90mmの第2押出機とを直列に連結した二段式押出機に対して、42.5kg/時間で供給した。
第1押出機に供給したスチレン系樹脂組成物を、180℃に加熱して混練を行い、第1押出機の先端付近(第2押出機に接続される側)において、発泡剤として、スチレン系樹脂組成物100重量%に対して、i−ブタン(三井化学株式会社製)4.0重量%、ジメチルエーテル(大洋液化ガス株式会社製)4.0重量%を、溶融されたスチレン系樹脂組成物に圧入した。この際、第1押出機の先端における樹脂圧は12.3MPaであり、これに対して、発泡剤の圧入圧力は14.1MPaであった。
第1押出機に連結された第2押出機において、樹脂温度を121℃に冷却した後、2つに分流し、発泡剤を含有する溶融樹脂Aを第2押出機の先端に設けられた2種3層多層積層用フィードブロック(株式会社プラ技研製)に供給した。
[発泡剤を含有しない溶融樹脂Bの製造方法]
ポリスチレン(PSジャパン株式会社製、商品名:679、MFR=18g/10分)100重量部に対して、可塑剤としてジメチルフタレート(大八化学工業株式会社製、商品名:DMP)8.0重量部を添加して予めマスターバッチ化した。
得られた樹脂を、口径50mmの押出機へ10.0kg/時間で供給した。供給した樹脂を125℃に加熱して溶融混練を行い、分流することなく、発泡剤を含有しない溶融樹脂Bを前記2種3層多層積層用フィードブロックに供給した。
[第1工程:発泡剤を含有する溶融樹脂Aと発泡剤を含有しない溶融樹脂Bを厚み方向に合流させ積層溶融樹脂Cを得る工程]
120℃に温調された前記2種3層多層積層用フィードブロック内で、5.3MPaの圧力下にて、厚み方向に、発泡剤を含有しない溶融樹脂Bを、2つに分流された発泡剤を含有する溶融樹脂Aで挟み込むようにして、それぞれ、11mm/3mm/11mmの厚みで合流させ積層溶融樹脂Cを得た。
[第2工程〜第5工程:積層2倍化工程により倍加積層溶融樹脂Eを得る工程]
図5に示すように、第1工程で積層された積層溶融樹脂Cを左右方向中央で分割し、左右方向に離反させて左右2つの分割積層溶融樹脂D1、D2を得る工程(第2工程)、
第2工程で分割された分割積溶融樹脂D1,D2を、一方の下端が他方の上端よりも上になるように(図4の例では、D1の下端がD2の上端よりも上になるように)上下方向に離反させる工程(第3工程)、
第3工程で上下に離反した分割積層溶融樹脂D1,D2を左右方向に接近させ、これら2つの分割積層溶融樹脂D1,D2の左右方向中央が、積層溶融樹脂Cの左右方向中央を通り流れ方向Fに平行な垂直平面内に位置するように上下に重なる位置まで、分割積層溶融樹脂D1,D2が分離した状態で上下に揃うように位置を合わせる工程(第4工程)、
第2工程で分割され、第3工程、第4工程を経ることで、分離した状態で上下に揃うように位置合わせされた2つの分割積層溶融樹脂D1、D2を左右方向の位置を保持しながら、断面積を変化させずに左右方向に拡大(図4の例ではβ1/α1=2)する工程(幅拡大工程)、
幅拡大工程で幅拡大された2つの分割積層溶融樹脂D1、D2を分離した状態で左右方向の位置を保持しながら下流側へ所定長さ移動させることにより、左右方向における流速分布の差を低減させる工程(整流工程)、
整流工程で左右方向における流速分布の差が低減した上下2つの分割積層溶融樹脂D1、D2を上下方向に合流させて倍加積層溶融樹脂Eを得る工程(第5工程)からなる
3.7MPaの圧力下で120℃に温調された積層2倍化装置(株式会社プラ技研製)に供給して、倍加積層溶融樹脂Eを得た。なお、整流工程の長さは30mmとした。
[接着工程:積層溶融樹脂の各構成層間の接着性を安定化する工程]
積層2倍化装置で得られた倍加積層溶融樹脂Eを120℃に温調された、断面形状を変化させず下流側へ100mm移動させる流路構造を有する接着/冷却用アダプター(株式会社岩本精機製)を経由して成形金型に供給した。
[第6工程:多層押出発泡成形体を得る工程]
接着/冷却用アダプターを経由した倍加積層溶融樹脂Eを厚さ方向1.6mm、幅方向50mmの長方形断面の空隙を有し、80℃に温調された成形金型のダイスリップより、合流された多層流を大気中へ押し出し、上下にベルトコンベアを配置した装置に挟み込んで引き取り厚み26mm、幅230mmの直方体状で発泡層/非発泡層/発泡層/非発泡層/発泡層の5層構造からなる押出発泡成形体を得た。
得られた多層発泡成形体は、成形体を構成する発泡層および非発泡層間に剥離が無く、良好な接着性を示し、成形体密度は35kg/mであり、空気分圧51kPaにおける熱伝導率は0.0275W/m・Kであった。
【0112】
(実施例4)
[接着工程]において、接着/冷却用アダプターの温度を100℃とし、第6工程においてダイスリップの厚さ方向の間隔を1.6mmから2.2mmに変更した以外は、実施例31と同様の操作を行い、
厚み25mm×幅232mmの直方体状で、発泡層/非発泡層/発泡層/非発泡層/発泡層の5層構造からなる押出発泡成形体を得た。
得られた多層発泡成形体は、成形体を構成する発泡層および非発泡層間に剥離が無く、良好な接着性を示し、成形体密度は34kg/mであり、空気分圧51kPaにおける熱伝導率は0.0268W/m・Kであった。
【0113】
(実施例5)
[接着工程]において、入口部分および出口部分の樹脂流路面の断面形状が等しく、且つ、任意の位置での樹脂流路面の断面形状を変化させず、下流側へ25mm移動させる流路構造を有する接着/冷却アダプターを使用した以外は、実施例4と同様の操作を行い、厚み25mm×幅230mmの直方体状で、発泡層/非発泡層/発泡層/非発泡層/発泡層の5層構造からなる押出発泡成形体を得た。
得られた多層発泡成形体は、成形体を構成する発泡層および非発泡層間に剥離が無く、良好な接着性を示し、成形体密度は32kg/mであり、空気分圧51kPaにおける熱伝導率は0.0266W/m・Kであった。
【0114】
(比較例2)
接着工程(接着/冷却アダプター)を経由しなった以外は、実施例実施例31と同様の操作を行い、
厚み25mm×幅222mmの直方体状で、発泡層/非発泡層/発泡層の3層構造からなる押出発泡成形体を得た。
得られた多層発泡成形体は、成形体を構成する発泡層および非発泡層間で部分的に剥離が発生し、接着性に劣るもので、成形体密度は35Kg/mであり、空気分圧51kPaにおける熱伝導率は0.0298W/m・Kであった。
【0115】
以上、実施例1〜5と比較例1〜2の比較によって、第6工程の直前に接着工程を設けることによって、積層溶融樹脂C、倍加積層溶融樹脂Eを構成する各層間の接着性が改善され、成形体を構成する発泡層および非発泡層間に剥離の無い良好な接着性を有する多層押出発泡成形体が得られると共に、断熱性能が改善されることが判る。
【符号の説明】
【0116】
A 発泡剤を含有する溶融樹脂
B 発泡剤を含有しない溶融樹脂
C 積層溶融樹脂
D1、D2 分割積層溶融樹脂
E 倍加積層溶融樹脂
F 流れ方向
1 発泡用押出機
2 非発泡用押出機
3 積層装置
4 積層2倍化装置
5 接着/冷却用アダプター
6 成形金型
7 成形機
8 多層押出発泡成形体
9.発泡層
10.非発泡層
11.押出発泡成形体の厚さ測定位置
12.押出発泡成形体の幅測定位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱可塑化した溶融樹脂を流れ方向に押出しながら、金型で一定断面の形状に整えて連続的に成形する押出発泡成形体の製造方法において、
発泡剤を含有する少なくとも1つの溶融樹脂と、発泡剤を含有しない少なくとも1つの溶融樹脂とを、高圧下で厚み方向である上下方向に合流させて積層溶融樹脂を得る第1工程と、
前記積層溶融樹脂を大気圧下に開放して発泡剤を気化させることにより高倍化させる第6工程とを含む多層押出発泡成形体の製造方法であって、
前記第1工程と第6工程との間に、前記積層溶融樹脂を高圧下で断面形状を保持した状態で下流側へ所定長さ移動させる接着工程を設けたことを特徴とする、多層押出発泡成形体の製造方法。
【請求項2】
前記接着工程が冷却機構を有することを特徴とする、請求項1記載の多層押出発泡成形体の製造方法。
【請求項3】
加熱可塑化した溶融樹脂を流れ方向に押出しながら、金型で一定断面の形状に整えて連続的に成形する押出発泡成形体の製造方法において、
発泡剤を含有する少なくとも1つの溶融樹脂と発泡剤を含有しない少なくとも1つの溶融樹脂とを高圧下で厚み方向である上下方向に合流させて積層溶融樹脂を得る第1工程と、
この積層溶融樹脂を幅方向である左右方向の中央で分割し左右方向に離反させて左右2つの分割積層溶融樹脂を得る第2工程と、
これら左右2つの分割積層溶融樹脂を、一方の下端が他方の上端よりも上になるように上下方向に離反させる第3工程と、
これら2つの分割積層溶融樹脂を左右方向に接近させ、これら2つの分割積層溶融樹脂の左右方向中央が、前記積層溶融樹脂の左右方向中央を通り前記流れ方向に平行な垂直平面内に位置するように上下に重なる位置まで、これら2つの分割積層溶融樹脂が分離した状態で上下に揃うように位置を合わせる第4工程と、
これら上下2つの分割積層溶融樹脂を上下方向に合流させて倍加積層溶融樹脂を得る第5工程と
前記倍加積層溶融樹脂を大気圧下に開放して発泡剤を気化させることにより高倍化させる第6工程とを含む多層押出発泡成形体の製造方法であって、
前記第5工程と第6工程との間に、前記倍加積層溶融樹脂を高圧下で断面形状を保持した状態で下流側へ所定長さ移動させる接着工程を設けたことを特徴とする多層押出発泡成形体の製造方法。
【請求項4】
前記接着工程が冷却機構を有することを特徴とする、請求項3記載の多層押出発泡成形体の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−158024(P2012−158024A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17960(P2011−17960)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成19〜23年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構革新的ノンフロン系断熱材技術開発プロジェクト委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】