説明

振動子

【課題】本発明は、支持部に接続された振動片の上面に下部電極、圧電体層、上部電極を設け、上部電極と下部電極との間に制御電圧を印加することで振動片を側方に振動させる振動子に関し、振動子の生産性を高めることを目的とする。
【解決手段】この目的を達成するために本発明は、支持部16と、支持部16に接続された振動片17と、振動片17の上面に設けられた下部電極21と、下部電極21上に設けられるとともに外周端が下部電極21の外周端より内側となる圧電体層22と、圧電体層22上に設けられるとともに外周端が圧電体層22の外周端より内側となる上部電極20を有する振動子12において、圧電体層22を振動片17の振動方向に偏倚させることで振動片17の振動方向を調節する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持部に接続された振動片の上面に下部電極、圧電体層、上部電極を設け、上部電極と下部電極との間に制御電圧を印加することで振動片を側方に振動させる振動子に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の振動子は、図7に示すように、振動子1を形成する振動片2の上面に上部電極3と圧電体層4と下部電極5からなる駆動電極6を配置し上部電極3と下部電極5との間に駆動電圧7を印加することで振動子1が矢印8で示すように側方(X軸方向)に振動するものが知られており、その製造方法としては、特に図示していないが、振動片2を形成するウエハの上面に下部電極5、圧電体層4、上部電極3を順次成形し、その後、ドライエッチングにより所定の外形に成形される。
【0003】
しかしながら、ドライエッチングで成形された素子端面は、ウエハにおける素子の成形位置により、破線で示すように傾斜角α,βが異なる傾斜面となり振動片2の重心位置9が偏倚してしまい、この結果、振動子1の基本振動が矢印10で示すように斜め振動となってしまう。
【0004】
そして、このような振動子1を用いたアプリケーションとしては、特に図示しないが、例えば、振動片2の表面にさらに検出用の電極を設け、角速度に応じたコリオリ力による振動を検出する角速度センサであれば、斜め振動による不要振動成分でのノイズ信号が検出信号として出力されてしまうことになる。なお、このような重心位置9のズレに伴う斜め振動の影響は、温度上昇に伴い振動片2が軟化することでより大きくなる。
【0005】
そこで、この斜め振動を抑制する手段として、振動片2の裏面を部分的にトリミングして切り欠き11を設けることで、振動片2の重心位置9を調整し斜め振動を低減させていた。
【0006】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−351874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このように振動片2をトリミングする場合、ウエハから個片分割した後に個々の振動子1に対して行う調整作業であることや、振動子1の信頼性の観点からトリミング屑の完全除去が必要となることから、生産効率が悪いものとなっていた。
【0009】
そこで、本発明はこのような問題を解決し、振動子の生産性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そして、この目的を達成するため本発明は、支持部と、支持部に接続された振動片と、振動片の上面に設けられた下部電極と、下部電極上に設けられるとともに外周端が下部電極の外周端より内側となる圧電体層と、圧電体層上に設けられるとともに外周端が圧電体層の外周端より内側となる上部電極を有する振動子において、圧電体層を振動片の振動方向に偏倚させることで振動片の振動方向を調節する構成としたのである。
【発明の効果】
【0011】
この構成により、振動子の生産性を高めることが出来るのである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態の振動子を用いた角速度センサを示す分解斜視図
【図2】同角速度センサを形成する振動子の上面図
【図3】同振動子の断面図
【図4】同振動子の製造方法を示す模式図
【図5】同振動子の斜め振動の抑制する方法を示す模式図
【図6】同振動子の斜め振動の抑制する他の方法を示す模式図
【図7】従来の振動子の断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について図を用いて説明する。
【0014】
図1は本発明の一実施形態である振動子12を用いた角速度センサを示したものであり、その基本構造は、振動子12と、この振動子12を制御する制御用のIC13とをセラミックからなるパッケージ14の内部に配置しリッド15で封止した構造としている。
【0015】
また、振動子12は図2に示すように、支持部16と、この支持部16に一端が接続された一対の振動片17を有するSi基板からなり、それぞれの振動片17には、振動片17をX軸方向に基本振動させる駆動電極18と、Z軸まわりの角速度の印加に伴うコリオリ力によるY軸方向の撓み成分を検出する検出電極19を有している。
【0016】
なお、これら駆動電極18および検出電極19は、それぞれ図3に示すように、Auからなる上部電極20とPtからなる下部電極21と、これらの間に配置されたPZTからなる圧電体層22により形成された積層電極であり、駆動電極18の上部電極20と下部電極21との間にIC13から出力される制御電圧を印加することでそれぞれの駆動電極18が伸縮しこれにより駆動片がX軸方向に基本振動する。また、検出電極19は振動片17のZ軸方向の撓みにより上部電極20と下部電極21との間に電位差が生じこの電位差を検出信号としてIC13に出力する。
【0017】
そして、この振動子12を成形するにあたっては、図4に示すように、Siからなるウエハ23を用意し、その表面に下部電極21となるPtパターン24を成形する。次いで、このPtパターン24上に圧電体層22となるPZTパターン25をPtパターン24の外周端から内側にオフセットして成形する。次いで、このPZTパターン25の表面に上部電極20となるAuパターン26をPZTパターン25の外周端より内側にオフセットして形成する。次いで、ドライエッチングにより振動子12の外形を形成する。
【0018】
なお、ウエハ23によるドライエッチングは、上述したようにウエハ23における成形位置によりエッチング端面の状態が変化する傾向がある。すなわち、振動子12の成形位置がウエハ23の中心部分のものは、図5に示すように、エッチング端面が破線27で示すように垂直面に近くなり、成形位置がウエハ23の外周部分のものは、実線28で示すようにエッチング端面が傾斜して傾斜角α,βに差が生じ、振動子12の重心位置29が側方にずれてしまう。そして、この重心位置29がずれることにより図7に示すように振動方向が矢印8で示すX軸方向から、矢印10で示す斜め振動となる。
【0019】
そこで、この振動子12においては駆動電極18及び検出電極19を構成する圧電体層22の位置を振動方向(X軸方向)にずらせて重心移動させることにより、振動片17の重心位置29のズレによる影響を相殺している。
【0020】
すなわち、圧電体層22を含む駆動電極18は、上部電極20の対向領域において基本振動を励起するものであり、上部電極20との非対向領域にある下部電極21や圧電体層22は角速度の検出に特に影響しない部分であり、特に圧電体層22は上部電極20や下部電極21に比べ厚み幅や比重が大きく、この圧電体層22の位置を電気特性に影響を及ぼさない範囲、つまり、上部電極20及び下部電極21を所定位置とし圧電体層22のみを上部電極20や下部電極21とのオフセットの範囲で側方に偏倚させることで振動片17の重心位置29を調整することができる。
【0021】
したがって、ドライエッチングにより生じた振動片17における傾斜角αと傾斜角βの差による重心位置29のズレの影響を、圧電体層22の位置を調節することで、振動子12の重心位置29を調整し斜め振動を抑制することができる。
【0022】
また、この圧電体層22による重心位置29の調整は、従来の個片化された振動子12に対する調整とは異なり、ウエハ23の状態での調整となることから生産性が向上できる。
【0023】
すなわち、振動片17における傾斜角αと傾斜角βに差が生じるのは、上述したようにウエハ23に対するドライエッチングの際に生じるもので、同様のウエハ23に対するドライエッチングにおいては同様の傾向となるものである。
【0024】
つまり、予めウエハ23におけるエッチング状態を確認しておき、ウエハ23内における個々の振動片17に対する圧電体層22の偏倚幅を決定し、この偏倚幅に従ってウエハ23全体に対するパターン設計を行うことで、従来行っていた個片化後で作業性の悪い調整作業を排除でき、振動子12の生産性を高められる。
【0025】
なお、この一実施形態においては、駆動電極18および検出電極19を構成する全ての圧電体層22を振動方向に偏倚させて斜め振動を抑制したが、図6に示すように検出電極19を構成する圧電体層22だけを偏倚させるよう、重心位置29の調整量に応じて偏倚させる圧電体層22を選択することで、より細かな調整が可能となる。
【0026】
また、角速度センサに用いる音叉型の振動子12を例に挙げて説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものでなく、振動片17の上面に下部電極21、圧電体層22、上部電極20からなる駆動電極18を設けた振動子12であれば、振動子12の形状によらず同様の作用効果を奏することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明に係る振動子は、振動子の生産性を高めることができ、特に温度保証幅が大きく重心位置ズレに対する影響が大きくなる車載用途の振動子に有用となる。
【符号の説明】
【0028】
12 振動子
16 支持部
17 振動片
20 上部電極
21 下部電極
22 圧電体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部と、前記支持部に接続された振動片と、前記振動片の上面に設けられた下部電極と、前記下部電極上に設けられるとともに外周端が前記下部電極の外周端より内側となる圧電体層と、前記圧電体層上に設けられるとともに外周端が前記圧電体層の外周端より内側となる上部電極を有する振動子であって、前記圧電体層を前記振動片の振動方向に偏倚させることで前記振動片の振動方向を調節したことを特徴とした振動子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−231209(P2012−231209A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96814(P2011−96814)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】