説明

振動素子

【課題】装置の構成の複雑化を抑制するとともに、可動部の振動状態の検出期間を拡大することが可能な振動素子を提供する。
【解決手段】この電磁駆動式ミラー(振動素子)100は、所定の共振周波数およびその近傍で振動する可動部11と、パルス電流Ipを周期的に供給することにより可動部11を振動させるパルス電流供給部32と、可動部11の振動状態を検出する逆起電力検出部33とを備え、パルス電流供給部32は、少なくとも起動時には、可動部11の共振周波数と略同じ第1周波数f1でパルス電流Ipを供給するとともに、可動部11の振動状態の検出時には、第1周波数f1よりも小さい第2周波数f2でパルス電流Ipを周期的に供給するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、振動素子に関し、特に、所定の共振周波数およびその近傍で振動する可動部を備える振動素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定の共振周波数およびその近傍で振動する可動部を備える振動素子が知られている(たとえば、特許文献1〜5参照)。
【0003】
上記特許文献1には、可動部と、可動部に設けられた第1のコイルおよび第2のコイルと、第1のコイルおよび第2のコイルに磁界を作用させる永久磁石と、第1のコイルおよび第2のコイルに対してそれぞれ設けられるとともに駆動電流を供給可能な2つの駆動部と、第2のコイルに発生する逆起電力を検出する1つの検出部とを備えた電磁アクチュエータが開示されている。この特許文献1による電磁アクチュエータでは、第1のコイルに常時駆動電流を供給する一方、第2のコイルに発生した逆起電力を検出部によって検出する。そして、検出した逆起電力に基づいて可動部の振幅が一定となるように駆動部から供給される駆動電流の大きさを制御するように構成されている。
【0004】
上記特許文献2には、振動ミラー(可動部)と、コイルと、駆動部と、電圧サンプラ(検出部)とを備える振動ミラー型走査装置用駆動回路が開示されている。この振動ミラー型走査装置用駆動回路では、駆動部が、コイルに振動ミラーの共振周波数の倍の周波数で励振パルス電圧を印加する。ただし、励振パルス電圧は、各周期で極性を反転させることにより、共振周波数で駆動する振動ミラーの半周期毎に印加される。このとき、振動ミラーの振動による逆起電圧がコイルから発生する。また、電圧サンプラが、共振周波数の半周期毎に印加される励振パルス電圧の印加されていない期間だけ、逆起電圧を検出する。上記特許文献2による振動ミラー型走査装置用駆動回路では、検出された逆起電圧に基づいて励振パルス電圧のパルス立ち上がり時点およびパルス立下り時点を決定するように構成されている。
【0005】
また、上記特許文献3には、プレーナ型ガルバノミラーと、パルス発生部および電流設定部と、逆起電力検出部とを備えたプレーナ型ガルバノミラー駆動回路が開示されている。このプレーナ型ガルバノミラー駆動回路では、パルス発生部および電流設定部が、目的のミラー回転角度に合わせたパルス電流を共振周波数でプレーナ型ガルバノミラーに供給する。このパルス電流によりプレーナ型ガルバノミラーが振動すると、プレーナ型ガルバノミラーのコイルには、逆起電力が発生する。この逆起電力が、逆起電力検出部によって検出されるように構成されている。このとき、プレーナ型ガルバノミラーはパルス駆動を行うため、逆起電力検出部により検出される波形の前半はパルス波形、後半は逆起電力波形となる。上記特許文献3によるプレーナ型ガルバノミラー駆動回路では、検出される波形の後半部分の逆起電力波形の正負の符号の反転するゼロクロス点にタイミングを合わせてパルス電流を発生させることにより、プレーナ型ガルバノミラーを共振周波数で駆動することができるように構成されている。
【0006】
また、上記特許文献4には、可動部と、可動部に設けられた駆動コイルと、駆動コイルに磁界を作用させる永久磁石と、駆動パルス発生回路と、駆動コイルに発生する逆起電力を検出するとともに、検出された逆起電力波形のゼロクロス位置を同期タイミングとして検出する同期タイミング検出装置とを備えた電磁アクチュエータが開示されている。この電磁アクチュエータにおいて、同期タイミング検出装置により検出される信号波形は、逆起電力波形と駆動パルス発生回路より供給される駆動パルス波形とが混在した信号波形となる。上記特許文献4による電磁アクチュエータでは、同期タイミング検出装置が、逆起電力波形に混合した駆動パルス波形を、駆動パルス波形に同期した逆位相のキャンセルパルスにより除去するとともに、所定の補正処理やノイズの除去を行うことにより逆起電力波形のみを抽出することができるように構成されている。
【0007】
また、上記特許文献5には、可動部と、可動部に取り付けられたコイルと、コイルに磁界を作用させる永久磁石と、コイルにパルス励振電流を供給する駆動部と、コイルに発生する逆起電力を検出する検出部とを備えた電磁アクチュエータが開示されている。この検出部には、パルス励振電流およびコイルに発生する逆起電力を足し合わせた信号が入力される。この電磁アクチュエータでは、検出部は、励振パルス電流の非供給時間(オフ状態)の間には逆起電力だけを検出することができることから、検出される電圧波形の負ピーク値を検出するとともに、符号反転して所定の係数を乗じて励振タイミングとなる電圧値を生成する。そして、駆動部が、励振タイミングとなる電圧値に一致するタイミングでパルス励振電流を供給する事により、共振周波数と一致した周波数でパルス励振電流を供給することができるように構成されている。このように、上記特許文献5による電磁アクチュエータでは、共振周波数で供給されるパルス励振電流の非供給時間に逆起電力の負ピーク値を検出することにより、励振電流による影響を避けて電磁アクチュエータを共振駆動するためのタイミングを取得することができるように構成されている。
【0008】
【特許文献1】特開2004−242488号公報
【特許文献2】特許第3806826号公報
【特許文献3】特開2002−277809号公報
【特許文献4】特開2007−151244号公報
【特許文献5】特開2001−305471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に記載の電磁アクチュエータでは、可動部の振動により発生する逆起電力を検出するためには、常時駆動電流を供給し続ける第1のコイルと、逆起電力を検出するための第2のコイルとの2つのコイルを設ける必要がある。また、これらの2つのコイルに駆動電流を供給するための駆動部もそれぞれ必要となる。このため、装置の構成が複雑化するという問題点がある。
【0010】
また、上記特許文献2に記載の振動ミラー型走査装置用駆動回路では、電圧サンプラが、共振周波数で駆動する振動ミラーの各半周期のうち、励振パルス電圧の印加されていない期間だけしか逆起電圧を検出することができないので、振動ミラーの振動状態を検出可能な期間が短いという問題点があると考えられる。
【0011】
また、上記特許文献3に記載のプレーナ型ガルバノミラー駆動回路では、逆起電力検出部によって検出される波形の後半部分(共振駆動する振動の後半周期)しか逆起電力波形を取得することができないので、プレーナ型ガルバノミラーの振動状態を検出可能な期間が短いという問題点がある。
【0012】
また、上記特許文献4に記載の電磁アクチュエータでは、逆起電力波形のみを抽出するために、ノイズ除去回路や波形補正回路等の波形処理回路が必要となるので、可動部の振動状態を検出するための装置の構成が複雑化するという問題点がある。
【0013】
また、上記特許文献5に記載の電磁アクチュエータでは、共振周波数で供給されるパルス励振電流の非供給時間の間しか可動部の振動状態を検出することができないので、可動部の振動状態を検出可能な期間が短いという問題点があると考えられる。
【0014】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、装置の構成の複雑化を抑制するとともに、可動部の振動状態の検出期間を拡大することが可能な振動素子を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0015】
この発明の第1の局面による振動素子は、所定の共振周波数およびその近傍で振動する可動部と、パルス信号を周期的に供給することにより可動部を振動させる駆動部と、可動部の振動状態を検出する検出部とを備え、駆動部は、少なくとも起動時には、可動部の共振周波数と略同じ第1周波数でパルス信号を供給するとともに、可動部の振動状態の検出時には、第1周波数よりも小さい第2周波数でパルス信号を周期的に供給するように構成されている。
【0016】
この第1の局面による振動素子では、上記のように、可動部の振動状態の検出時には、可動部の共振周波数と略同じ第1周波数よりも小さい第2周波数でパルス信号を周期的に供給するように構成することによって、可動部の振動状態を検出する際にパルス信号の供給を行う間隔(周期)を可動部の共振周波数の周期よりも広げることができる。これにより、可動部の共振周波数と略同じ第1周波数でのパルス信号の供給間隔の間で振動状態を検出する場合に比べて、可動部の振動状態を検出する期間を長くすることができる。また、第1周波数よりも小さい第2周波数でパルス信号を供給するだけで可動部の振動状態を検出する期間を長くすることができるので、装置の構成が複雑化するのを抑制することができる。
【0017】
上記第1の局面による振動素子において、好ましくは、第2周波数は、可動部の振動状態を少なくとも1周期分検出可能な周波数である。このように構成すれば、可動部の振動状態を1周期分検出することにより、振動波形の1周期分の全形状を取得することができる。これにより、より正確に可動部の振動状態を検出することができる。
【0018】
上記第1の局面による振動素子において、好ましくは、磁界を発生させる磁界発生部と、磁界内に配置され、駆動部によってパルス信号が供給されることにより可動部を振動させる1つの駆動コイルとをさらに備え、検出部は、可動部の振動状態の検出時に第2周波数でパルス信号が1つの駆動コイルに供給される状態で、パルス信号の非供給期間における可動部の磁界内での振動により1つの駆動コイルに発生する逆起電力を検出することによって可動部の振動状態を検出するように構成されている。このように構成すれば、可動部の共振周波数と略同じ第1周波数よりも小さい第2周波数でパルス信号が1つの駆動コイルに供給されることにより、逆起電力の検出可能な期間を可動部の共振周波数の周期よりも拡大することができるので、容易に可動部の振動状態を検出することができる。
【0019】
上記第1の局面による振動素子において、好ましくは、第2周波数は、第1周波数の略n分の1(nは2以上の整数)の周波数である。このように構成すれば、可動部の共振周波数と略同じ周波数である第1周波数のn周期に1度、第2周波数でパルス信号が供給されるので、供給されるパルス信号の周期が可動部の共振周波数の周期の2以上の整数倍になる。これにより、共振振動と同期したパルス信号の供給を行いながら、可動部の振動状態の検出可能な期間が共振振動時の1周期を完全に含むこととなる。これにより、第1周波数での可動部の共振振動を維持したまま可動部の振動波形の1周期分の全形状を取得することができる。
【0020】
この場合において、好ましくは、第2周波数は、第1周波数の略2分の1の周波数である。このように構成すれば、可動部の共振周波数と略同じ第1周波数の2周期に1度、第2周波数でパルス信号が供給されるので、供給されるパルス信号の周期が可動部の共振周波数の周期の2倍になる。これにより、共振振動と同期したパルス信号の供給を行いながら、第2周波数を第1周波数の3分の1や4分の1に変更する場合と比べて第1周波数から第2周波数に変更した場合のパルス信号の供給量の減少を抑制するとともに、可動部の振動状態の検出可能な期間が共振振動時の1周期を完全に含むことができる。これにより、第1周波数での可動部の共振振動の維持を容易にしながら可動部の振動波形の1周期分の全形状を取得することができる。
【0021】
上記第1の局面による振動素子において、好ましくは、駆動部は、可動部の振動状態の検出時に、第1周波数で供給されるパルス信号の第1パルス幅よりも大きい時間幅を有する第2パルス幅でパルス信号を供給するように構成されている。このように構成すれば、可動部の共振周波数と略同じ第1周波数でパルス信号を供給する場合と比較して第2周波数でパルス信号を供給することによって減少するパルス信号の供給量を、パルス幅を第1パルス幅よりも広げることによって補うことができる。これにより、第2周波数でパルス供給を行うことによる可動部の振幅の減少を抑制しながら、振動状態の検出期間を大きくすることができる。
【0022】
この場合において、好ましくは、駆動部は、可動部の振動状態の検出時に、可動部の振動周期の略2分の1以下の時間幅を有する第2パルス幅でパルス信号を供給するように構成されている。このように構成すれば、パルス幅を第2パルス幅に拡大した場合にも、可動部の振動周期の半周期を超えてパルス信号が供給されることがないので、可動部の振動周期の半周期を超えてパルス信号が供給されることに起因して、可動部の振動が抑制されてしまうという不都合が生じることがない。これにより、可動部の振動状態の検出時における振幅の維持を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態による振動素子の全体構成を示した模式図である。また、図2〜図4は、図1に示した本発明の一実施形態による振動素子の詳細な構成を示した図である。まず、図1〜図4を参照して、本発明の一実施形態による電磁駆動式ミラー100の構成について説明する。なお、本実施形態では、振動素子の一例である電磁駆動式ミラー100に本発明を適用した場合について説明する。
【0025】
本発明の一実施形態による電磁駆動式ミラー100は、図1に示すように、ミラー本体部10と、制御部30とから構成されている。
【0026】
電磁駆動式ミラー100のミラー本体部10は、図1に示すように、中央部にミラー12が取り付けられた可動部11と、可動部11を一対の回動軸22を介して回動可能に支持する固定部21とから構成されている。この可動部11と、回動軸22および固定部21とは、一体的に形成されている。電磁駆動式ミラー100は、制御部30からミラー本体部10に所定の周波数のパルス電流Ipを供給することによって、可動部11を回動軸22回りで共振振動させる。これにより、可動部11に配置されたミラー12に照射されるレーザー光などの反射方向を変化させることにより、レーザー光などの走査を行うものである。なお、パルス電流Ipは、本発明の「パルス信号」の一例である。
【0027】
ミラー本体部10の可動部11は、平面的に見て、長方形の平板形状を有している。この可動部11は、対向するそれぞれの長辺の中央部で、一対の回動軸22にそれぞれ支持されている。可動部11は、この回動軸22を中心としてP方向に回動すると、回動軸22の復元力が作用するように構成されている。これにより、可動部11は、回動軸22回りに所定の振動振幅でP方向に回動を繰り返す振動運動を行うように構成されている。
【0028】
また、可動部11は、中央部に可動部11の形状に対応した長方形状のミラー12を有している。このミラー12にレーザー光などを照射すると、可動部11の振動によってミラー12が反射角度を変化させる。これにより、ミラー12に照射されたレーザー光などの走査が可能となるように構成されている。
【0029】
また、可動部11の外周には、ミラー12を取り囲むように駆動コイル13が取り付けられている。この駆動コイル13は、制御部30と接続されている。駆動コイル13は、磁界内に配置された状態で、所定の電流が供給されると、駆動コイル13内を流れる電流によってローレンツ力を発生させる。このように、駆動コイル13は、磁界内で制御部30によってパルス電流Ipを供給されてローレンツ力を発生させることにより、可動部11を回動軸22回りに回動させるように構成されている。
【0030】
また、可動部11を支持する固定部21は、一対の回動軸22を含むとともに、一対の永久磁石23aおよび23bとを備えている。なお、永久磁石23aおよび23bは、それぞれ本発明の「磁界発生部」の一例である。
【0031】
固定部21は、可動部11を取り囲む四角形状の枠状に形成されるとともに、平板形状を有している。この固定部21は、対向するそれぞれの長辺の中央部で一対の回動軸22を介して、中央に配置された可動部11を両側から支持している。一方、固定部21の短辺側には、一対の永久磁石23aおよび23bが取り付けられている。
【0032】
固定部21の回動軸22は、可動部11を回動軸22回りでP方向に回動可能に支持している。可動部11が駆動コイル13に流れるパルス電流Ipにより発生するローレンツ力によって回動されると、回動軸22は、ねじり力による復元力を発生させるように構成されている。したがって、可動部11は、パルス電流Ipが駆動コイル13に供給されることによって回動軸22回りに時計方向に回動を始め、回動軸22のねじり力による復元力と釣り合う角度まで回動する。可動部11は、回動軸22の復元力と釣り合うことによって回動を停止すると、その後は回動軸22の復元力によって反時計方向に回動を始める。そして、反時計方向の回動によって可動部11の初期状態(図1に示す状態)を越えると、さらに可動部11は慣性によって自由振動を続ける。このとき、回動軸22には、可動部11に対して時計方向の復元力が発生する。ここで、可動部11の回動中に所定のタイミングで駆動コイル13にパルス電流Ipが供給されると、可動部11がローレンツ力によって再び回動され、振動を継続する。これを繰り返すことにより、可動部11が回動軸22回りで共振振動するように構成されている。
【0033】
固定部21の対向するそれぞれの短辺側に取り付けられた一対の永久磁石23aおよび23bは、互いの逆極性の磁極が対向するように配置されている。この一対の永久磁石23aおよび23bが、駆動コイル13に作用する磁界を発生させるように構成されている。そして、永久磁石23aおよび23bが発生する磁界内に配置された駆動コイル13にパルス電流Ipが供給されることによって、駆動コイル13がローレンツ力を発生させるように構成されている。一方、可動部11が駆動コイル13へのパルス電流Ipの供給によって振動を始めた後、パルス電流Ipの非供給期間においては、可動部11の自由振動に伴って駆動コイル13が磁界内を振動することにより、駆動コイル13に逆起電力が発生するように構成されている。この逆起電力に起因して、可動部11の自由振動時(パルス電流Ipの非供給期間)には、駆動コイル13に逆起電力信号(誘導電流)Ibが発生するように構成されている。なお、逆起電力信号Ibは、本発明の「逆起電力」の一例である。
【0034】
また、電磁駆動式ミラー100の制御部30は、図1に示すように、主制御部31と、パルス電流供給部32および逆起電力検出部33とから構成されている。制御部30のパルス電流供給部32および逆起電力検出部33は、それぞれ可動部11の駆動コイル13と接続されている。そして、制御部30は、駆動コイル13に供給する電流を制御することによって、可動部11の回動軸22回りの振動を制御するように構成されている。なお、パルス電流供給部32および逆起電力検出部33は、それぞれ本発明の「駆動部」および「検出部」の一例である。
【0035】
制御部30の主制御部31は、パルス電流供給部32へ制御信号を送信することにより、パルス電流供給部32が駆動コイル13に供給するパルス電流Ipの周波数およびパルス幅と、パルス電流Ipを供給するタイミングとを制御するように構成されている。また、主制御部31は、逆起電力検出部33から検出された逆起電力信号Ibを受信するとともに、受信した逆起電力信号Ibの信号波形に基づき、パルス電流供給部32への制御信号を生成する。これにより、主制御部31は、パルス電流供給部32と、逆起電力検出部33とを用いて、電磁駆動式ミラー100の可動部11の振動制御を行うように構成されている。なお、主制御部31による可動部11の振動制御の具体的な動作については後述する。
【0036】
パルス電流供給部32は、主制御部31からの制御信号に基づき、駆動コイル13に所定のパルス電流Ipを供給するように構成されている。このパルス電流Ipは、図2に示すように、少なくとも起動時には、可動部11の共振周波数と略等しい第1周波数f1(周期T)で供給される。この際、パルス電流供給部32は、予め設定された可動部11の振動振幅に対応した時間幅を有する所定の第1パルス幅t1でパルス電流Ipを供給する。このパルス電流Ipによって、可動部11は回動軸22回りで共振振動を行う。このように、電磁駆動式ミラー100は、共振周波数で駆動されるため、小電力で大きな振動振幅を得ることが可能なように構成されている。
【0037】
また、本実施形態では、パルス電流供給部32は、逆起電力信号Ibの検出時には、主制御部31からの制御信号に基づき、第1周波数f1よりも小さい第2周波数f2で駆動コイル13にパルス電流Ipを供給するように構成されている。このとき、供給されるパルス電流Ipは、第1パルス幅t1よりも大きい第2パルス幅t2を有するように構成されている。
【0038】
また、本実施形態では、逆起電力検出部33は、パルス電流Ipの非供給期間に駆動コイル13に発生する逆起電力信号Ibを検出するように構成されている。すなわち、駆動コイル13に第1周波数f1でパルス電流Ipが供給されることによって可動部11が振動すると、パルス電流Ipの非供給期間にも、慣性によって振動(自由振動)を継続する。このパルス電流Ipの非供給期間には、可動部11の慣性による自由振動に伴って駆動コイル13が磁界内を移動することにより逆起電力が発生するとともに、この逆起電力による逆起電力信号Ibが駆動コイル13を流れる。逆起電力検出部33は、この逆起電力信号Ibを検出するように構成されている。なお、逆起電力信号Ibの検出についての詳細は、後述する。
【0039】
ここで、本実施形態では、発生する逆起電力信号Ibは、共振振動を行う可動部11の自由振動に起因するため、図2に示すように、可動部11の共振周波数と等しい周波数を有するとともに、正弦的な振動波形を有する。逆起電力検出部33は、逆起電力信号Ibを検出することにより、可動部11の振動状態の検出を行うように構成されている。また、逆起電力検出部33は、検出した逆起電力信号Ibを主制御部31に出力するように構成されている。
【0040】
電磁駆動式ミラー100は、第1周波数f1でのパルス電流Ipの供給を続けて共振駆動を継続すると、温度変化などによって可動部11の共振周波数が変化する。このため、パルス電流Ipを供給する第1周波数f1と、可動部11の共振周波数とがずれることによって可動部11の共振振動を維持することができず、可動部11の振動振幅が減少してしまう。そこで、本実施形態では、主制御部31は、逆起電力検出部33から出力される逆起電力信号Ibの振動波形から、可動部11の実際の振動周波数、振動振幅および供給されるパルス電流Ipとの位相のずれなどを取得する。そして、得られた可動部11の振動周波数や位相のずれに基づいて、供給するパルス電流Ipの周波数(第1周波数f1)を可動部11の共振周波数の変化に追従させるフィードバック制御を行うように構成されている。
【0041】
ここで、検出される逆起電力信号Ibの発生経路は、図1に示すように、パルス電流Ipの供給経路と一致する。このため、逆起電力検出部33において検出される信号波形は、図2に示すように、パルス電流Ipと逆起電力信号Ibとが混在した波形となるので、この逆起電力信号Ibは、パルス電流Ipの非供給期間でのみ検出することができる。したがって、パルス電流Ipを第1周波数f1で供給することにより可動部11を共振振動させる場合には、パルス電流Ipと逆起電力信号Ibとが同じ周期Tを有することから、逆起電力信号Ibの信号波形の1周期分の全体形状を取得することができない。また、たとえば温度変化によって可動部11の共振周波数がずれることにより、図3に示すように、パルス電流Ipの供給タイミングと逆起電力信号Ibのピークの位置が重なってしまうと、主制御部31が逆起電力信号Ibのピークを正しく取得することができず、検出エラーが発生してしまう。
【0042】
このため、本実施形態では、逆起電力信号Ibの検出を確実に行うために、供給されるパルス電流Ipの供給周波数の変更を行う。すなわち、図2に示すように、電磁駆動式ミラー100の初期駆動時には、可動部11の共振周波数と略同じ第1周波数f1でパルス電流Ipを供給して可動部11を共振振動させる。そして、可動部11の振動状態が安定すると、パルス電流Ipの供給を第1周波数f1から第2周波数f2に変更するとともに逆起電力信号Ibの検出を行うように構成されている。逆起電力信号Ibの検出時には、図1に示すように、主制御部31からの制御信号に基づき、パルス電流供給部32が、パルス電流Ipを第2周波数f2で供給する。ここで、第2周波数f2は、第1周波数f1の2分の1の周波数である。パルス電流供給部32が第2周波数f2でパルス電流Ipを供給することによって、パルス電流Ipが供給される間隔(周期)が2倍に拡大される。このとき、第1周波数f1(周期T)で共振振動を行う可動部11に対して、パルス電流Ipが共振振動の2周期に1度の割合で供給されることになる。これにより、可動部11が2周期に1度、共振振動と同期したパルス電流Ipの供給により振動されることによって共振振動を続けることができるので、可動部11の共振振動を維持しながら逆起電力信号Ibの検出可能な期間(パルス電流Ipの非供給期間)を拡大することができるように構成されている。そして、パルス電流Ipの非供給期間には、図2に示すように、可動部11が自由振動を行うことによって共振周波数(周期T)で振動する逆起電力信号Ibが発生することから、パルス電流Ipを第2周波数f2(周期2T)で供給することによって、逆起電力信号Ibの振動波形(周期T)の1周期分の全形状を検出エラーが発生することなく、確実に取得することができるように構成されている。
【0043】
また、第2周波数f2でパルス電流Ipを供給する間に逆起電力検出部33が逆起電力信号Ibの1周期分の全体の波形を検出すると、主制御部31が、この逆起電力信号Ibの信号波形から可動部11の共振周波数を取得する。そして、主制御部31は、温度変化などによって可動部11の共振周波数と第1周波数との間にずれが生じていた場合には、第1周波数f1を変更して可動部11の共振周波数に追従させるように構成されている。そして、逆起電力信号Ibの検出と、第1周波数f1の可動部11の共振周波数への変更とが終了すると、主制御部31は、パルス電流供給部32によるパルス電流Ipの供給を第2周波数f2から第1周波数f1に戻すように構成されている。これにより、本実施形態では、可動部11の共振周波数と第1周波数f1とを常に一致させた状態でパルス電流Ipの供給を行うことが可能なように構成されている。
【0044】
また、本実施形態では、図4に示すように、逆起電力信号Ibの検出時には、パルス電流Ipが第2周波数f2で供給されることにより、可動部11の自由振動を行う期間(パルス電流Ipの非供給期間)が拡大されるので、供給されるパルス電流Ipの総量が減少する。このパルス電流Ipの供給総量の減少を補うため、パルス電流Ipのパルス幅を第1周波数f1における第1パルス幅t1から拡大して、第2パルス幅t2を有するパルス電流Ipを供給するように構成されている。ここで、第2パルス幅t2は、自由振動時(パルス電流Ipの非供給期間)にも、可動部11の振動振幅を維持することができる大きさを有するとともに、可動部11の振動周期(T)の略2分の1以下の時間幅である。ここで、パルス電流Ipのパルス幅の上限を可動部11の振動周期の2分の1とすることにより、可動部11の振動周期(T)を超えてパルス電流Ipが供給されることがないので、可動部11が回動方向を反転させた後にもパルス電流Ipが供給され続けることによって振動を抑制することが無いように構成されている。
【0045】
ここで、図4に第2周波数f2による逆起電力信号Ibの検出波形を示す。図4においては、第1周波数f1の2分の1の第2周波数f2でパルス電流Ipが供給されている。このとき、パルス電流Ipは、周期2Tで供給されるとともに、パルス幅を第2パルス幅t2に拡大している。この場合には、第1周波数f1(周期T)で振動する可動部11が、2周期に1度の割合でパルス電流Ipによって振動される。このため、逆起電力信号Ibの検出時にも、可動部11は、第1周波数f1と同期した共振振動を継続することができる。また、パルス幅が第2パルス幅t2に拡大されることから、可動部11には、パルス電流Ipによって、より長い時間幅(t2)でローレンツ力が作用する。このため、可動部11の振動振幅が大きくなるので、検出される逆起電力信号Ibの振動波形は、パルス幅t1で振動する場合の振幅A1(図2参照)よりも大きい振幅A2を有する。そして、パルス電流Ipによって可動部11が励振された後、パルス電流Ipの非供給期間では、可動部11は、僅かに減衰しながら略2周期分自由振動を行う。そして、次のパルス電流Ipが供給される直前には、第1周波数f1でパルス電流Ipが供給される場合の振幅A1と略同等の振幅となるように構成されている。これにより、第2周波数f2でパルス電流Ipを供給する場合にも、可動部11の自由振動時(パルス電流非供給期間)の振動振幅を維持するとともに、逆起電力信号Ibの1周期分の全形状を取得することができる。
【0046】
図5は、電磁駆動式ミラーの駆動制御の流れを示すフローチャートである。次に、図5を参照して、本発明の一実施形態による電磁駆動式ミラー100の共振駆動制御を説明する。
【0047】
電磁駆動式ミラー100の起動時には、可動部11の振動を共振周波数近傍で安定させる必要がある。このため、ステップS1において、可動部11は、図2に示すように、予め設定された第1周波数f1での駆動を行う。このとき、主制御部31に予め設定された可動部11の共振周波数と略等しい第1周波数f1で、パルス電流供給部32からパルス電流Ipが駆動コイル13に供給される。そして、駆動コイル13に供給されたパルス電流Ipにより、可動部11が共振周波数と略一致する第1周波数f1で振動を開始する。起動時における可動部11の第1周波数f1による駆動は、可動部11の振動状態を安定させるため、予め主制御部31に設定された所定の初期駆動時間の間行われる。
【0048】
次に、ステップS2において、主制御部31により、予め設定された所定の時間が経過したか否かが判断される。設定された初期駆動時間を経過していない場合には、パルス電流供給部32は、第1周波数f1でのパルス電流Ipの供給を継続することにより、可動部11の振動状態を安定させる。
【0049】
設定された初期駆動時間を経過した場合には、ステップS3において、主制御部31からの制御信号に基づき、パルス電流供給部32は、供給するパルス電流Ipの周波数を第1周波数f1から第2周波数f2(周期2T)に変更する。これにより、可動部11は、パルス電流Ipの供給によって略2周期に渡って慣性による自由振動を継続する。また、第2周波数f2への変更に伴い、供給されるパルス電流Ipのパルス幅が第1パルス幅t1から第2パルス幅t2に拡大される。このため、パルス電流Ipの供給直後には、第1パルス幅t1により励振される場合の振幅A1よりも大きな振幅A2を有する逆起電力信号Ibが検出されるとともに、可動部11の自由振動によって僅かに減衰しながら共振振動が継続される。これにより、図4に示すように、自由振動時の可動部11の振動振幅を共振駆動時の振動振幅と略同等の大きさに維持しながら、逆起電力信号Ibの信号波形(周期T)の1周期分の全形状を取得することが可能となる。
【0050】
そして、ステップS4において、逆起電力検出部33が、可動部11の自由振動時(パルス電流非供給期間)に駆動コイル13に発生する逆起電力信号Ibを検出する。逆起電力検出部33において検出される信号波形には、パルス電流Ipと逆起電力信号Ibとが混在する。しかし、図4に示すように、第2周波数f2で供給されるパルス電流Ipの周期は2Tである一方、可動部11の自由振動は慣性によって共振振動(周期T)を継続するため、供給されるそれぞれのパルス電流Ipの間で1周期分の逆起電力信号Ibを検出することができる。そして、検出された逆起電力信号Ibの信号波形が、逆起電力検出部33から主制御部31に出力される。
【0051】
逆起電力検出部33から逆起電力信号Ibを受け取ると、主制御部31は、逆起電力信号Ibの信号波形から可動部11の実際の振動周波数、振動振幅、および、供給されるパルス電流Ipとの位相のずれを取得する。そして、ステップS5において、主制御部31は、取得した可動部11の振動周波数などのデータから、パルス電流Ipを供給する第1周波数f1と可動部11の共振周波数との間にずれがあるか否かを判断する。ここで、温度変化などによって可動部11の共振周波数にずれが生じた場合には、主制御部31は、ステップS6において、温度変化などによってずれた可動部11の共振周波数に追従させるように第1周波数f1を変更する。
【0052】
そして、ステップS7において、主制御部31は、パルス電流Ipの供給を、第2周波数f2から、可動部11の共振周波数に追従させた第1周波数f1に戻すとともに、パルス電流Ipのパルス幅を第2パルス幅t2から元の第1パルス幅t1に戻すように、パルス電流供給部32に対して制御信号を出力する。そして、パルス電流供給部32は、主制御部31からの制御信号に基づき、可動部11の共振周波数のずれに追従した第1周波数f1でパルス電流Ipを駆動コイル13に供給することにより、可動部11の共振駆動を継続する。
【0053】
一方、ステップS5において、逆起電力信号Ibの波形から取得された可動部11の共振周波数とパルス電流Ipを供給する第1周波数との間にずれがない場合には、共振駆動が適切にされていることから、主制御部31は、第1周波数f1を変更させることなく、元の第1周波数f1および第1パルス幅t1に戻すようにパルス電流供給部32に対して制御信号を出力する。
【0054】
そして、所定の時間経過とともに、主制御部31は、パルス電流Ipの供給を第2周波数f2へ変更するとともに逆起電力信号Ibを検出する検出動作を繰り返す。これにより、逆起電力信号Ibの信号波形の1周期分の全形状を確実に検出するとともに、温度変化などによる可動部11の共振周波数の変動に追従した共振駆動が可能となる。このようにして、電磁駆動式ミラー100の駆動制御が行われる。
【0055】
本実施形態では、上記のように、可動部11の逆起電力信号Ibの検出時には、可動部11の共振周波数と略同じ第1周波数f1よりも小さい第2周波数f2でパルス電流Ipを周期的に供給するように構成することによって、可動部11の振動状態(逆起電力信号Ib)を検出する際にパルス電流Ipの供給を行う間隔(周期)を可動部11の共振周波数の周期(T)よりも広げることができる。これにより、可動部11の共振周波数と略同じ第1周波数f1でのパルス電流Ipの供給間隔の間で振動状態を検出する場合に比べて、可動部11の振動状態を検出するための逆起電力信号Ibの検出期間を長くすることができる。また、第1周波数f1よりも小さい第2周波数f2でパルス電流Ipを供給するだけで可動部11の振動状態を検出する期間(逆起電力信号Ibの検出可能期間)を長くすることができるので、装置の構成が複雑化するのを抑制することができる。
【0056】
本実施形態では、上記のように、逆起電力検出部33は、可動部11の振動状態(逆起電力信号Ib)の検出時に第2周波数f2でパルス電流Ipが1つの駆動コイル13に供給される状態で、パルス電流Ipの非供給期間における可動部11の磁界内での振動により1つの駆動コイル13に発生する逆起電力信号Ibを検出することによって可動部11の振動状態を検出するように構成することによって、可動部11の共振周波数と略同じ第1周波数f1よりも小さい第2周波数f2でパルス電流Ipが1つの駆動コイル13に供給されることにより、逆起電力信号Ibの検出可能な期間を可動部11の共振周波数の周期(T)よりも拡大することができるので、容易に可動部11の振動状態を検出することができる。
【0057】
本実施形態では、上記のように、第2周波数f2は、第1周波数f1の略2分の1の周波数であるように構成することによって、可動部11の共振周波数と略同じ第1周波数f1の2周期に1度、第2周波数f2でパルス電流Ipが供給されるので、供給されるパルス電流Ipの周期(2T)が可動部11の共振周波数の周期(T)の2倍になる。これにより、共振振動と同期したパルス電流Ipの供給を行いながら、第2周波数f2を第1周波数f1の3分の1や4分の1に変更する場合と比べて第1周波数f1から第2周波数f2に変更した場合のパルス電流Ipの供給量の減少を抑制するとともに、可動部11の振動状態(逆起電力信号Ib)の検出可能な期間が共振振動時の1周期(周期T)を完全に含むことができる。これにより、第1周波数f1での可動部11の共振振動の維持を容易にしながら可動部11の逆起電力信号Ibの振動波形の1周期分の全形状を取得することができる。
【0058】
本実施形態では、上記のように、パルス電流供給部32は、可動部11の振動状態(逆起電力信号Ib)の検出時に、第1周波数f1で供給されるパルス電流Ipの第1パルス幅t1よりも大きい時間幅を有する第2パルス幅t2でパルス信号を供給するように構成することによって、可動部11の共振周波数と略同じ第1周波数でパルス電流Ipを供給する場合と比較して第2周波数f2でパルス電流Ipを供給することによって減少するパルス電流Ipの供給量を、パルス幅を第1パルス幅t1よりも広げることによって補うことができる。これにより、第2周波数f2でパルス電流Ipの供給を行うことによる可動部11の振幅の減少を抑制しながら、可動部11の振動状態の検出期間を大きくすることができる。
【0059】
本実施形態では、上記のように、パルス電流供給部32は、可動部11の振動状態(逆起電力信号Ib)の検出時に、可動部11の振動周期(T)の2分の1以下の時間幅を有する第2パルス幅t2でパルス電流Ipを供給するように構成することによって、パルス幅を第1パルス幅t1から第2パルス幅t2に拡大した場合にも、可動部11の振動周期(T)の半周期を超えてパルス電流Ipが供給されることがないので、可動部11の振動周期(T)の半周期を超えてパルス電流Ipが供給されることに起因して、可動部11の振動が抑制されてしまうという不都合が生じることがない。これにより、可動部11の振動状態(逆起電力信号Ib)の検出時における振幅の維持を容易に行うことができる。
【0060】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0061】
たとえば、上記実施形態では、本発明の振動素子の一例として電磁駆動式ミラーを示したが、本発明はこれに限らず、電磁アクチュエータなどの電磁駆動式ミラー以外の振動素子にも適用可能である。この場合、可動部が回動軸回りで振動するように構成されている必要はなく、たとえば可動部が片持ち梁や振り子状に構成されるとともに、駆動コイルにパルス電流を供給することによって振動するように構成されていてもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、電磁駆動式ミラー100の可動部11は、磁界内で駆動コイル13にパルス電流Ipを供給することにより発生するローレンツ力によって駆動される例を示したが、本発明はこれに限らず、ローレンツ力以外の電磁気力および電磁気力以外の力によって駆動されるように構成されていてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、逆起電力検出部33は、可動部11の慣性による自由振動に伴って駆動コイル13が磁界内を移動することにより発生する逆起電力信号Ibを検出するように構成されている例を示したが、本発明はこれに限らず、検出部は、逆起電力信号以外の物理量を検出するように構成されていてもよい。検出部は、可動部の振動状態を検出するように構成されていればよい。
【0064】
また、上記実施形態では、第2周波数f2は、第1周波数f1の2分の1の周波数である例を示したが、本発明はこれに限らず、第2周波数は、第1周波数よりも小さい周波数であればよい。可動部の振動状態の検出時に可動部の共振周波数と略同じ第1周波数よりも小さい第2周波数で駆動することにより、可動部の振動状態の検出可能期間を拡大できればよい。また、第2周波数を、可動部の振動状態を少なくとも1周期分検出可能な周波数となるように構成すれば、可動部の振動波形の1周期分の全形状を取得することができるので、より正確に可動部の振動状態を検出することができる。
【0065】
さらに、第2周波数を第1周波数のn分の1(nは2以上の整数)に設定した場合には、可動部の振動波形の全形状を検出可能でありながら、第1周波数と同期したパルス電流の供給が可能である。これにより、可動部の共振振動を継続させることにより可動部の振動振幅の維持を容易に行うことができる。
【0066】
ここで、図6に示す第1変形例において、第1周波数f1の略3分の1の第2周波数f3でパルス電流Ipを供給することにより、逆起電力信号Ibの検出を行う例を示す。この第1変形例では、逆起電力信号Ibの検出時には、パルス電流供給部32によって供給されるパルス電流Ipは、周期3Tで供給されるとともに、パルス幅を第2パルス幅t3に拡大する。ここで、第2パルス幅t3は、供給されるパルス電流Ipの減少を補うべく、t2<t3の大きさを有する。この場合にも、第1周波数f1(周期T)で振動する可動部11が、3周期に1度の割合でパルス電流Ipが供給される。このため、逆起電力信号Ibの検出時にも、可動部11は、第1周波数f1と同期した共振振動を継続することが可能である。また、パルス幅が第2パルス幅t3に拡大されることから、検出される逆起電力信号Ibの振幅A3は、パルス幅t2でパルス電流Ipが供給される場合の振幅A2(図4参照)よりもさらに大きくなる。そして、パルス電流Ipが供給された後のパルス電流Ipの非供給期間では、可動部11は、徐々に減衰しながら略3周期分自由振動を行う。これにより、逆起電力信号Ibの検出可能期間(パルス電流非供給期間)をさらに拡大することができる。なお、第2周波数f3で駆動する場合には、逆起電力信号Ibの検出可能期間を拡大するために可動部11が自由振動を行う期間が長くなるとともに、逆起電力信号Ibの波形の徐々に減衰するものとなるが、パルス幅を第2パルス幅t3に拡大することにより、第1周波数f1で駆動する場合の振幅を維持することができるように構成されている。
【0067】
このように、第2周波数f3を、第1周波数の略3分の1の周波数であるように構成することによって、可動部11の共振周波数と略同じ周波数である第1周波数f1の3周期に1度、第2周波数f3(周期3T)でパルス電流Ipが供給されるので、供給されるパルス電流Ipの周期(3T)が可動部11の共振周波数の周期(T)の3倍になる。このため、共振振動と同期したパルス電流Ipの供給を行いながら、可動部11の振動状態の検出可能な期間が共振振動時の1周期(T)を完全に含むこととなる。これにより、第1周波数f1での可動部11の共振振動を維持したまま可動部11の振動波形の1周期分(T)の全形状を取得することができる。
【0068】
また、上記実施形態では、電磁駆動式ミラー100の起動時には、可動部11の振動を共振周波数近傍で安定させるために、予め主制御部31に設定された所定の初期駆動時間の間第1周波数f1で駆動する例を示したが、本発明はこれに限らず、起動時の第1周波数による駆動は、予め設定された初期駆動時間の間行われる必要はない。第1周波数による駆動時でも、逆起電力検出部によって逆起電力信号の一部分の波形を検出することは可能である。したがって、起動時には、第1周波数でパルス電流を供給するとともに、逆起電力検出部によって検出される逆起電力信号の一部分の波形に基づいて、可動部の振動が共振周波数近傍で安定したか否かを判定するように構成してもよい。そして、振動が安定した場合には、第2周波数および第2パルス幅に変更し、逆起電力信号波形の1周期分の全形状を検出すればよい。
【0069】
また、上記実施形態では、逆起電力信号Ibの検出時には、供給されるパルス電流Ipのパルス幅を拡大して、第2パルス幅t2を有するパルス電流Ipを供給するように構成されている例を示したが、本発明はこれに限らず、図7に示す第2変形例のように、供給されるパルス電流Ipのパルス振幅を変更してもよい。この第2変形例では、逆起電力信号Ibの検出時に、パルス電流Ipを第2周波数f2(周期2T)で供給するとともに、パルス電流Ipのパルス振幅をH1(図2参照)からH2に変更する。なお、図7において、H1は第1周波数f1で供給される場合のパルス電流Ipのパルス振幅を示している。この場合にも、パルス幅を拡大する場合と同様の効果を得ることができる。すなわち、供給されるパルス電流Ipのパルス振幅をパルス振幅H2に拡大することによって、検出される逆起電力信号Ibの振幅A4は、パルス振幅H1で供給される場合の振幅A1よりも大きい。そして、駆動コイル13にパルス電流Ipが供給された後、パルス電流Ipの非供給期間では、可動部11は、僅かに減衰しながら略2周期分自由振動を行う。このとき、パルス振幅を拡大することによって、次のパルス電流Ipが供給される直前の逆起電力信号Ibの振幅が、第1周波数f1によって駆動した場合に次のパルス電流Ipが供給される際の振幅と略同等となるように構成されている。これにより、可動部11の自由振動時(パルス電流非供給期間)の振動振幅を維持するとともに、逆起電力信号Ibを1周期分の全形状を取得することができる。なお、パルス振幅とパルス幅の両方を変更するように構成してもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、一対の永久磁石23aおよび23bが、駆動コイル13に作用する磁界を発生させるように構成されている例を示したが、本発明はこれに限らず、電磁石など、永久磁石以外の磁界発生部によって磁界を発生させるように構成してもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、可動部11は、平面的に見て、長方形の平板形状を有している例を示したが、本発明はこれに限らず、可動部は、円形や正方形形状を有していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の一実施形態による電磁駆動式ミラーの全体構成を示す模式図である。
【図2】本発明の一実施形態によるパルス電流と逆起電力信号の波形を説明するための模式図である。
【図3】本発明の一実施形態による電磁駆動式ミラーの第1周波数での逆起電力信号波形の検出を説明するための図である。
【図4】本発明の一実施形態による電磁駆動式ミラーの第2周波数での逆起電力信号波形の検出を説明するための図である。
【図5】本発明の一実施形態による電磁駆動式ミラーの駆動制御を説明するためのフローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態による電磁駆動式ミラーの第1変形例による第2周波数での逆起電力信号波形の検出を説明するための図である。
【図7】本発明の一実施形態による電磁駆動式ミラーの第2変形例における第2周波数での逆起電力信号波形の検出を説明するための図である。
【符号の説明】
【0073】
11 可動部
13 駆動コイル
23a、23b 永久磁石(磁界発生部)
32 パルス電流供給部(駆動部)
33 逆起電力検出部(検出部)
f1 第1周波数
f2、f3 第2周波数
Ip パルス電流(パルス信号)
Ib 逆起電力信号(逆起電力)
t1 第1パルス幅
t2、t3 第2パルス幅
100 電磁駆動式ミラー(振動素子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の共振周波数およびその近傍で振動する可動部と、
パルス信号を周期的に供給することにより前記可動部を振動させる駆動部と、
前記可動部の振動状態を検出する検出部とを備え、
前記駆動部は、少なくとも起動時には、前記可動部の共振周波数と略同じ第1周波数で前記パルス信号を供給するとともに、前記可動部の振動状態の検出時には、前記第1周波数よりも小さい第2周波数で前記パルス信号を周期的に供給するように構成されている、振動素子。
【請求項2】
前記第2周波数は、前記可動部の振動状態を少なくとも1周期分検出可能な周波数である、請求項1に記載の振動素子。
【請求項3】
磁界を発生させる磁界発生部と、
前記磁界内に配置され、前記駆動部によってパルス信号が供給されることにより前記可動部を振動させる1つの駆動コイルとをさらに備え、
前記検出部は、前記可動部の振動状態の検出時に前記第2周波数で前記パルス信号が前記1つの駆動コイルに供給される状態で、前記パルス信号の非供給期間における前記可動部の磁界内での振動により前記1つの駆動コイルに発生する逆起電力を検出することによって前記可動部の振動状態を検出するように構成されている、請求項1または2に記載の振動素子。
【請求項4】
前記第2周波数は、前記第1周波数の略n分の1(nは2以上の整数)の周波数である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の振動素子。
【請求項5】
前記第2周波数は、前記第1周波数の略2分の1の周波数である、請求項4に記載の振動素子。
【請求項6】
前記駆動部は、前記可動部の振動状態の検出時に、前記第1周波数で供給される前記パルス信号の第1パルス幅よりも大きい時間幅を有する第2パルス幅で前記パルス信号を供給するように構成されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の振動素子。
【請求項7】
前記駆動部は、前記可動部の振動状態の検出時に、前記可動部の振動周期の略2分の1以下の時間幅を有する前記第2パルス幅で前記パルス信号を供給するように構成されている、請求項6に記載の振動素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−278781(P2009−278781A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−127969(P2008−127969)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】