説明

排ガス処理装置、方法、及び半導体製造システム

【課題】排ガス中の非水溶性有機溶剤成分を除去し、VOCガスの発生を抑制する。
【解決手段】排ガス処理装置1は、容器11及び容器11内に水を噴霧する噴霧器12を有するスクラバーユニット10と、外部装置から排出された非水溶性有機溶剤を含む第1ガスG1を容器11に供給する第1配管21と、水溶性有機溶剤を含む第2ガスG2を、第1配管21を介して、又は直接、容器11に供給する第2配管22と、を備える。容器11内において、噴霧器12から噴霧された水により、前記水溶性有機溶剤及び前記非水溶性有機溶剤が吸着除去された第1ガスG1及び第2ガスG2の混合ガスG3’は、第3配管23を介して容器11から排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、排ガス処理装置、方法、及び半導体製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程には、リソグラフィ工程、エッチング工程、イオン注入工程などの様々な工程が含まれている。各工程の終了後、次の工程に移る前に、半導体基板表面に残存した不純物や残渣を除去して半導体基板表面を清浄にするために、洗浄処理及び乾燥処理を含む半導体基板の表面処理が実施されている。
【0003】
例えば、エッチング工程後の半導体基板の洗浄処理では、半導体基板の表面に洗浄処理のための薬液が供給され、その後に純水が供給されてリンス処理が行われる。リンス処理後は、半導体基板表面に残っている純水を除去して半導体基板を乾燥させる乾燥処理が行われる。
【0004】
半導体基板の乾燥処理としては、例えば半導体基板上の純水をイソプロピルアルコール(IPA)に置換して半導体基板を乾燥させる方法が知られている。ここで使用されるIPAは揮発性有機化合物(Volatile Organic Compound、以下VOCという)の一種であるため、環境保護の観点から、ガスとして空気中に排出される量を低減することが求められている。
【0005】
VOCガスの発生を抑制する方法として、IPAを含有する排ガスを、ミスト状に噴霧した水に接触させ、IPAを水に吸収・移行させて排ガスを浄化する方法が知られている。このような従来の方法は、排ガス中の水溶性有機溶剤成分を除去することはできるが、非水溶性有機溶剤成分を除去することが出来ないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−206303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、排ガス中の非水溶性有機溶剤成分を除去し、VOCガスの発生を抑制する排ガス処理装置、方法、及び半導体製造システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態によれば、排ガス処理装置は、容器及び前記容器内に水を噴霧する噴霧器を有するスクラバーユニットと、外部装置から排出された非水溶性有機溶剤を含む第1ガスを前記容器に供給する第1配管と、水溶性有機溶剤を含む第2ガスを、前記第1配管を介して、又は直接、前記容器に供給する第2配管と、を備えている。前記容器内において、前記噴霧器から噴霧された水により、前記水溶性有機溶剤及び前記非水溶性有機溶剤が吸着除去された前記第1ガス及び前記第2ガスの混合ガスが、第3配管を介して、当該容器から排出される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る排ガス処理装置の概略構成図である。
【図2】変形例による排ガス処理装置の概略構成図である。
【図3】有機溶剤の水滴への吸着を説明する模式図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る半導体製造システムの概略構成図である。
【図5】第2の実施形態に係る半導体基板の表面処理方法を説明するフローチャートである。
【図6】乾燥時に半導体基板上のパターンにかかる倒壊力を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
(第1の実施形態)図1に本発明の第1の実施形態に係る排ガス処理装置の概略構成を示す。排ガス処理装置1は、有機溶剤を含有する排ガスを水に接触させて、排ガス中の有機溶剤を水に吸収、移行させるスクラバーユニット10と、スクラバーユニット10へ排ガスを供給する第1配管21及び第2配管22と、有機溶剤が除去された排ガスをスクラバーユニット10から排出する第3配管23と、スクラバーユニット10から水を排出する第4配管24と、を備えている。
【0012】
スクラバーユニット10は、第1配管21及び第2配管22から排ガスが供給され、第3配管23を介して排ガスを排出するトラップボックス(容器)11と、トラップボックス11内に水を噴霧する噴霧器12とを有する。噴霧器12には、第5配管13を介して水(例えば工場用水)が供給される。第5配管13には、水の流量を計測する流量計14及び流量を調整するバルブ15が設けられている。また、スクラバーユニット10には、トラップボックス11に供給される排ガスの量、及び流量計14の計測値に基づいてバルブ15の開度を制御する制御部16が設けられている。
【0013】
また、トラップボックス11の下部には受けバット17が設けられており、噴霧器12から噴霧された水を一時的に貯留しておくことができる。受けバット17に貯留されている水は、第4配管24を介して排出される。第4配管24にはバルブ25が設けられており、トラップボックス11からの排水量を調節できるようになっている。
【0014】
第1配管21は、図示しない外部装置から排出された非水溶性有機溶剤を含む排ガス(以下、第1ガスという)G1をトラップボックス11に供給する。ここで、非水溶性有機溶剤は、例えば、トルエン、ベンゼン、キシレン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロヘキサノール、ホルムアルデヒド、テトラメチルシリルジエチルアミン(TMSDEA)、又はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)である。
【0015】
第2配管22は、図示しない外部装置から排出された水溶性有機溶剤を含む排ガス(以下、第2ガスという)G2をトラップボックス11に供給する。ここで、水溶性有機溶剤は、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール等のアルコール類、アセトン等の水溶性第一石油類、酢酸等の水溶性第二石油類、又はエチレングリコール等の水溶性第三石油類である。
【0016】
図1では、第2配管22が第1配管21に連結され、第1ガスG1と第2ガスG2の混合ガスG3がトラップボックス11に供給される構成になっているが、図2に示すように、第2配管がトラップボックス11に直接連結され、トラップボックス11内で第1ガスG1と第2ガスG2とが混合するようにしてもよい。
【0017】
第3配管23は、噴霧器12を挟んで、第1配管21及び第2配管22とは反対側に設けられている。このような構成にすることで、第3配管23は、混合ガスG3のうち、噴霧器12から噴霧された水と接触し、非水溶性有機溶剤及び水溶性有機溶剤が吸着除去された混合ガスG3’(非VOCガス)を排出することができる。
【0018】
第1配管21及び第2配管22に、トラップボックス11へガスを送り込むためのポンプ(図示せず)を設けてもよい。また、第3配管23に、トラップボックス11からガスを引き抜くためのポンプ(図示せず)を設けてもよい。
【0019】
スクラバーユニット10のトラップボックス11内では、第1ガスG1と第2ガスG2の混合ガスG3に対して、噴霧器12から水が噴霧される。水をミスト状に噴霧することで、水と気相との接触面積を増加させ、水滴(水ミスト)に混合ガス中の有機溶剤(水溶性有機溶剤及び非水溶性有機溶剤)を吸着させることができる。
【0020】
水滴への有機溶剤の吸着を、図3(a)〜(c)を用いて説明する。図3(a)に示すように、噴霧器12から噴霧された水滴31は、トラップボックス11内を下降しながら、混合ガス中の水溶性有機溶剤32及び非水溶性有機溶剤33と接触する。
【0021】
水溶性有機溶剤32は、親水基と親油基の両方を持っている。例えば、アルコール類は、親油性のアルキル基と親水性のヒドロキシル基とを有している。また、例えば、アセトンは、親油性のメチル基と親水性のカルボニル基とを有している。また、例えば、酢酸は、親油性のメチル基と親水性のカルボキシル基とを有している。水溶性有機溶剤32に含まれる親水基により、水溶性有機溶剤32は水に対する親和性を有し、図3(b)に示すように、水溶性有機溶剤32が水滴31に吸着される。
【0022】
水溶性有機溶剤32を吸着した水滴31は、水溶性有機溶剤32に含まれる親油基により、非水溶性有機溶剤33が持つ親油基(アルキル基)に対する親和性が向上する。そのため、図3(c)に示すように、非水溶性有機溶剤33が、水溶性有機溶剤32を吸着した水滴31に吸着される。このように、1つの水滴31が、水溶性有機溶剤32及び非水溶性有機溶剤33の両方を吸着することができる。
【0023】
水溶性有機溶剤32及び非水溶性有機溶剤33を吸着した水滴31は、重力により下降し、受けバット17に一時的に貯留される。その後、受けバット17内の水は、第4配管24を介して排水される。
【0024】
噴霧器12から噴霧された水により水溶性有機溶剤及び非水溶性有機溶剤が吸着除去された混合ガスG3’は、第3配管23を介してトラップボックス11から排気される。
【0025】
このように、本実施形態では、非水溶性有機溶剤を含む第1ガスG1から非水溶性有機溶剤を除去するために、水溶性有機溶剤を含む第2ガスG2を混合させ、水滴に水溶性有機溶剤を吸着させることで、同じ水滴に非水溶性有機溶剤も吸着できるようにしている。そのため、水スクラバーのみで排ガス中の非水溶性有機溶剤成分を除去し、VOCガスの発生を抑制することができる。
【0026】
なお、上記実施形態において、非水溶性有機溶剤を含む第1ガスG1と、水溶性有機溶剤を含む第2ガスG2との混合比(ガス流量比)は、除去すべき非水溶性有機溶剤と水溶性有機溶剤との親和性に基づいて、あらかじめ好適な比率となるように設定しておくことが好ましい。
【0027】
また、噴霧器12からの噴霧量を、風量や、非水溶性有機溶剤と水溶性有機溶剤の混合比、第3配管23から排出される混合ガスG3’中の有機溶剤濃度のターゲット値等に基づいて決定し、制御部16により制御することが好ましい。
【0028】
(第2の実施形態)図4に本発明の第2の実施形態に係る半導体製造システムの概略構成を示す。図4に示すように、半導体製造システムは、半導体基板の表面処理を行う表面処理装置100と、表面処理装置100から排出される排ガスを処理する排ガス処理装置1とを備える。排ガス処理装置1は、図1に示す排ガス処理装置1と同様の構成である。図4において、図1に示す第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0029】
まず、表面処理装置100について説明する。図4に示すように、表面処理装置100は、基板保持回転部110及び液体供給部120を備え、半導体基板Wの洗浄及び乾燥を行うものである。
【0030】
基板保持回転部110は、処理チャンバを構成するスピンカップ111、回転軸112、スピンベース113、及びチャックピン114を有する。回転軸112は略鉛直方向に延び、回転軸112の上端に円盤状のスピンベース113が取り付けられている。回転軸112及びスピンベース113は、図示しないモータにより回転させることができる。
【0031】
チャックピン114はスピンベース113の周縁部に設けられている。チャックピン114が半導体基板Wを狭持することで、基板保持回転部110は基板Wをほぼ水平に保持して回転させることができる。
【0032】
半導体基板Wの表面の回転中心付近に、液体供給部120から液体が供給されると、液体は半導体基板Wの半径方向に広がる。また、基板保持回転部110は、半導体基板Wのスピン乾燥を行うことができる。半導体基板Wの半径方向に飛散した余分な液体は、スピンカップ111に捕らえられ、配管115を介して排出される。
【0033】
液体供給部120は、半導体基板W表面に、薬液、純水、IPA、及び撥水化剤を供給することができる。液体供給部120の第1供給部において、薬液が供給ライン121を介して供給され、ノズル122から吐出される。薬液は例えばSPM(Sulfuric acid Hydrogen Peroxide Mixture:硫酸と過酸化水素水の混合液)である。
【0034】
同様に、液体供給部120の第2供給部において、純水が供給ライン123を介して供給され、ノズル124から吐出される。また、液体供給部120の第3供給部において、IPAが供給ライン125を介して供給され、ノズル126から吐出される。
【0035】
また、液体供給部120の第4供給部において、撥水化剤が供給ライン127を介して供給され、ノズル128から吐出される。撥水化剤は、半導体基板Wの表面に形成された凸形状パターンの表面に撥水性保護膜を形成し、パターン表面を撥水化する薬液であり、例えばシランカップリング剤である。シランカップリング剤は、分子中に無機材料と親和性、反応性を有する加水分解基と、有機材料と化学結合する有機官能基とを有するものであり、例えばテトラメチルシリルジエチルアミン(TMSDEA)等を用いることができる。
【0036】
また、表面処理装置100は、図示しないエキシマUV(紫外線)照射部を備える。エキシマUV照射部は、半導体基板WにUV光を照射し、凸形状パターンを残存させて、撥水性保護膜を除去することができる。紫外線照射以外の方法で、凸形状パターンを残存させて、撥水性保護膜を除去する除去部を設けてもよい。
【0037】
また、基板保持回転部110の処理チャンバは給排気機能を備えており、処理チャンバの排気は、排気ライン118を介して排出され、切替弁130により流路が切り替えられる。例えば、切替弁130には四方弁が用いられ、SPM等の薬液の排気が配管131を流れ、IPAの排気が配管132を流れ、撥水化剤の排気が配管133を流れるように、切替弁130によって流路の切り替えが行われる。配管133は、排ガス処理装置1の第1配管21に連結されている。また、配管132は、排ガス処理装置1の第2配管22に連結されている。
【0038】
次に、このような表面処理装置100を用いて半導体基板の表面処理を行う方法について図5に示すフローチャートを用いて説明する。なお、基板保持回転部110及び液体供給部120の動作は図示しない制御部により制御することができる。
【0039】
(ステップS101)処理対象の半導体基板Wが搬送部(図示せず)により搬入され、基板保持回転部100に保持される。半導体基板Wの表面の所定領域には、複数の凸形状パターンが形成されている。凸形状パターンは、例えば、ラインアンドスペースパターンである。凸形状パターンの少なくとも一部が、シリコンを含む膜で形成されていてもよい。この凸形状パターンは、例えば、RIE(Reactive Ion Etching)法により形成される。
【0040】
(ステップS102)半導体基板Wを所定の回転速度で回転させ、液体供給部120のノズル122から半導体基板Wの表面の回転中心付近に薬液を供給する。薬液は例えばSPM、SC−1(Standard Clean 1)、SC−2、HF等である。薬液は1種類でもよいし、複数の薬液を同時又は連続的に供給してもよい。
【0041】
薬液が半導体基板Wの回転による遠心力を受けて、半導体基板W表面全域に行き渡り、半導体基板Wの薬液(洗浄)処理が行われる。
【0042】
(ステップS103)薬液処理の後、液体供給部120のノズル124から半導体基板Wの表面の回転中心付近に純水を供給する。純水が半導体基板Wの回転による遠心力を受けて、半導体基板W表面全域に行き渡る。これにより、半導体基板Wの表面に残留していた薬液を純水によって洗い流す純水リンス処理が行われる。
【0043】
(ステップS104)純水リンス処理の後、液体供給部120のノズル126から半導体基板Wの表面の回転中心付近にIPA等のアルコールを供給する。IPAが半導体基板Wの回転による遠心力を受けて、半導体基板W表面全域に行き渡る。これにより、半導体基板Wの表面に残留していた純水をIPAに置換するアルコールリンス処理が行われる。
【0044】
(ステップS105)アルコールリンス処理の後、液体供給部120のノズル128から半導体基板Wの表面の回転中心付近に撥水化剤を供給する。撥水化剤は例えばシランカップリング剤である。
【0045】
シランカップリング剤が半導体基板Wの回転による遠心力を受けて、半導体基板W表面全域に行き渡る。これにより、凸形状パターンの表面に濡れ性が低い保護膜(撥水性保護膜)を形成する撥水化処理が行われる。この撥水性保護膜は、シランカップリング剤のエステル反応が起きることで形成される。
【0046】
(ステップS106)撥水化処理の後、液体供給部120のノズル126から半導体基板Wの表面の回転中心付近にIPAを供給する。IPAが半導体基板Wの回転による遠心力を受けて、半導体基板W表面全域に行き渡る。これにより、半導体基板Wの表面に残留していた未反応のシランカップリング剤をIPAに置換するアルコールリンス処理が行われる。
【0047】
(ステップS107)ステップS106のアルコールリンス処理の後、液体供給部120のノズル124から半導体基板Wの表面の回転中心付近に純水を供給する。純水が半導体基板Wの回転による遠心力を受けて、半導体基板W表面全域に行き渡る。これにより、半導体基板Wの表面に残留していたIPAを純水によって洗い流す純水リンス処理が行われる。
【0048】
(ステップS108)ステップS107の純水リンス処理の後、半導体基板Wの乾燥処理を行う。例えば半導体基板Wの回転速度を所定のスピンドライ回転速度に上げて、半導体基板Wの表面に残っている純水を振り切って乾燥させるスピンドライ処理を行う。
【0049】
半導体基板Wに形成されている凸形状パターンは撥水性保護膜に覆われているため、液体の接触角θが大きく(90°に近く)なる。
【0050】
図6を用いて、半導体基板Wを乾燥させる際に、半導体基板W上に形成されたパターンにかかる倒壊力について説明する。図6は、半導体基板W上に形成されているパターン200の一部が液体201に濡れた状態を示す。ここで、パターン200間の距離をS、パターン200の両側にある液体201の液面高さの差をΔH、液体201の表面張力をγ、接触角をθとすると、パターン200にかかる倒壊力FはF=2×γ×ΔH×cosθ/Sとなる。接触角θが90°に近付くことで、cosθが0に近づき、倒壊力Fが小さくなることが分かる。従って、凸形状パターンの表面を撥水性保護膜で覆うことで、乾燥処理の際に凸形状パターンが倒壊することを防止できる。
【0051】
(ステップS109)乾燥処理の後、エキシマUV照射部から紫外線を照射し、凸形状パターン表面に形成された撥水性保護膜を除去する。
【0052】
このように、表面処理装置100を用いて、半導体基板Wに形成された凸形状パターンの倒壊を防止しつつ、半導体基板Wの洗浄及び乾燥を行うことができる。
【0053】
続いて、上述のような表面処理装置100を用いて洗浄・乾燥処理を行っている際に、表面処理装置100から排出される撥水化剤を含んだ排ガスの処理について説明する。
【0054】
ステップS105の撥水化処理の際の処理チャンバからの排気(撥水化剤排気)は、図4に示す排気ライン118、配管133、及び排ガス処理装置1の第1配管21を介してトラップボックス11に供給される。また、ステップS104、S106のアルコールリンス処理の際の処理チャンバからの排気(IPA排気)は、排気ライン118、配管132、排ガス処理装置1の第2配管22及び第1配管21を介してトラップボックス11に供給される。すなわち、配管133の撥水化剤排気が、非水溶性有機溶剤を含む第1ガスG1に相当し、配管132のIPA排気が、水溶性有機溶剤を含む第2ガスG2に相当する。
【0055】
上記第1の実施形態で説明したように、第1ガスG1及び第2ガスG2の混合ガスG3がトラップボックス11内で噴霧器12から噴霧された水滴と接触する。これにより、混合ガスG3中のIPA(水溶性有機溶剤)が水滴に吸着される。このIPAを吸着した水滴は、非水溶性有機溶剤が持つ親油基に対する親和性が向上するため、混合ガスG3中の撥水化剤(非水溶性有機溶剤)を吸着する。
【0056】
IPA及び撥水化剤を吸着した水滴は、重力により下降し、受けバット17に一時的に貯留され、その後、第4配管24を介して排水される。
【0057】
一方、噴霧器12から噴霧された水によりIPA成分及び撥水化剤成分が吸着除去された混合ガスG3’は、第3配管23を介してトラップボックス11から排気される。
【0058】
このように、本実施形態に係る半導体製造システムでは、排ガス処理装置1が、表面処理装置100から排気された撥水化剤を含む排ガスから撥水化剤を除去するために、IPAを含む排ガスを混合させ、水滴にIPAを吸着させることで、同じ水滴に撥水化剤も吸着できるようにしている。そのため、水スクラバーのみで排ガス中の撥水化剤成分を除去し、VOCガスの発生を抑制することができる。また、スクラバー水以外の新規用力を用いる必要がないため、設備コストを抑えることができる。
【0059】
上記第2の実施形態では、撥水化剤成分を含む排気と、IPA成分を含む排気とを分けて(切り替えて)排ガス処理装置1に供給していたが、撥水化剤成分及びIPA成分の両方を含む表面処理装置100の排気を、トラップボックス11に供給してもよい。例えば、切替弁130より上流側、すなわち排気ライン118から撥水化剤成分及びIPA成分の両方を含む排気を取り出してトラップボックス11に供給することができる。また、排気ライン118を流れる排気に含まれるIPA成分が少ない場合は、クリーンルーム等の別設備から排気されるIPA含有排ガスをトラップボックス11に供給するようにしてもよい。
【0060】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 排ガス処理装置
10 スクラバーユニット
11 トラップボックス
12 噴霧器
14 流量計
15 バルブ
16 制御部
17 受けバット
21 第1配管
22 第2配管
23 第3配管
24 第4配管
25 バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器及び前記容器内に水を噴霧する噴霧器を有するスクラバーユニットと、
外部装置から排出された非水溶性有機溶剤を含む第1ガスを前記容器に供給する第1配管と、
水溶性有機溶剤を含む第2ガスを、前記第1配管を介して、又は直接、前記容器に供給する第2配管と、
前記容器内において、前記噴霧器から噴霧された水により、前記水溶性有機溶剤及び前記非水溶性有機溶剤が吸着除去された前記第1ガス及び前記第2ガスの混合ガスを、当該容器から排出する第3配管と、
を備える排ガス処理装置。
【請求項2】
前記第1ガス及び前記第2ガスの前記容器への供給量に基づいて、前記噴霧器から噴霧する水量を制御する制御部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の排ガス処理装置。
【請求項3】
前記混合ガスから前記水溶性有機溶剤及び前記非水溶性有機溶剤を吸着した水を前記容器から排出する第4配管をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の排ガス処理装置。
【請求項4】
前記非水溶性有機溶剤は、トルエン、ベンゼン、キシレン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロヘキサノール、ホルムアルデヒド、テトラメチルシリルジエチルアミン、又はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートであり、前記水溶性有機溶剤は、アルコール類、水溶性第一石油類、水溶性第二石油類、又は水溶性第三石油類であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の排ガス処理装置。
【請求項5】
前記水溶性第一石油類は、エタノール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール、又はアセトンであり、前記水溶性第二石油類は酢酸であり、前記水溶性第三石油類はエチレングリコールであることを特徴とする請求項4に記載の排ガス処理装置。
【請求項6】
非水溶性有機溶剤を含む第1ガスと水溶性有機溶剤を含む第2ガスとを混合した混合ガスに対して水を噴霧する工程と、
噴霧された水に接触した前記混合ガスを排出する工程と、
を備える排ガス処理方法。
【請求項7】
前記第1ガス及び前記第2ガスの流量に基づいて噴霧する水量を制御する工程をさらに備えることを特徴とする排ガス処理方法。
【請求項8】
前記混合ガスから前記水溶性有機溶剤及び前記非水溶性有機溶剤を吸着した水を排出する工程をさらに備えることを特徴とする請求項6又は7に記載の排ガス処理方法。
【請求項9】
表面に凸形状パターンが形成された半導体基板を保持し、前記半導体基板を回転させる基板保持回転部と、
前記基板保持回転部に保持された前記半導体基板の表面に薬液を供給し、前記半導体基板を洗浄する第1供給部と、
前記基板保持回転部に保持された前記半導体基板の表面に純水を供給し、前記半導体基板をリンスする第2供給部と、
前記基板保持回転部に保持された前記半導体基板の表面にアルコールを供給し、前記半導体基板をリンスする第3供給部と、
前記基板保持回転部に保持された前記半導体基板の表面に撥水化剤を供給し、前記凸形状パターンの表面に撥水性保護膜を形成する第4供給部と、
を有する表面処理装置と、
容器及び前記容器内に水を噴霧する噴霧器を有するスクラバーユニットと、
前記表面処理装置から排出された前記撥水化剤を含む第1ガスを前記容器に供給する第1配管と、
前記表面処理装置から排出された前記アルコールを含む第2ガスを、前記第1配管を介して、又は直接、前記容器に供給する第2配管と、
前記容器内において、前記噴霧器から噴霧された水により、前記アルコール及び前記撥水化剤が吸着除去された前記第1ガス及び前記第2ガスの混合ガスを、当該容器から排出する第3配管と、
を有する排ガス処理装置と、
を備える半導体製造システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−101197(P2012−101197A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253109(P2010−253109)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】