説明

排ガス浄化用チタニア系酸化触媒、排ガス浄化用触媒構造体および排ガス浄化方法

【課題】有機溶剤可溶分(SOF)除去性能を有し、特に優れた一酸化炭素、炭化水素の除去性能を有し、耐硫黄被毒性を有する、排ガス浄化用酸化触媒、該触媒を備えてなる排ガス浄化用触媒構造体、および該触媒構造体を用いた排ガス浄化方法を提供する。
【解決手段】チタニアとゼオライトとを含有する担体と、該担体に担持された貴金属とを有し、該ゼオライトの含有量を該触媒に対して35〜50重量%とする。支持体に担持し触媒構造体とし、該触媒構造体を用い排ガス浄化を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に排ガス中の炭化水素(以下、HCともいう)および一酸化炭素(以下、COともいう)を効率よく除去することができ、耐硫黄被毒性を有する、排ガス浄化用酸化触媒、該触媒を備えてなる排ガス浄化用触媒構造体、ならびに該触媒構造体を用いた排ガス浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリンエンジンについては、排ガスの厳しい規制とそれに対処できる技術の進歩により、排ガス中の有害物質は確実に減少している。しかし、ディーゼルエンジンについては、有害成分が主として微粒子物質(PM:粒子状物質)として排出されるという特異な事情から、規制も技術の開発もガソリンエンジンに比べて遅れており、該有害成分を確実に除去できる排ガス浄化用触媒の開発が望まれている。また、ディーゼルエンジン用の燃料としては軽油が用いられるが、日本国内では硫黄(以下、Sともいう)濃度が重量基準で500ppm以下(通常、30〜35ppm程度)のJIS2号のものが中心であるのに対して、海外では数百〜数千ppm程度のものが用いられることもあるため、排ガス浄化用触媒には耐硫黄被毒性が求められる。
【0003】
現在までに開発されているディーゼルエンジン用排ガス浄化装置としては、大きく分けてトラップを用いる方法(触媒無しと触媒付き)と、フロースルー型有機溶剤可溶分(以下、SOFともいう)分解触媒とが知られている。これらのうち、トラップを用いる方法は、微粒子物質を捕捉してその排出を規制するものであり、特にドライスーツの比率の高い排ガスに有効である。しかしながら、トラップを用いる方法では、捕捉された微粒子物質を焼却するための再生処理装置が必要となり、再生時の触媒構造体の割れ、アッシュによる閉塞あるいはシステムが複雑になる等、実用上多くの課題を残している。
【0004】
一方、フロースルー型SOF分解触媒では、例えば、ガソリンエンジンと同様に活性アルミナ(以下、Alともいう)等の担持層に白金族金属等の触媒金属を担持した触媒が利用され、COやHCとともにSOFを酸化分解して除去する(特許文献1)。このフロースルー型SOF分解触媒は、ドライスーツの除去率が低いという欠点があるが、ドライスーツの量はディーゼルエンジンや燃料自体の改良によって低減することが可能であり、かつ再生処理装置が不要という大きなメリットがあるため、今後の技術の一段の向上が期待されている。
【0005】
ところが、フロースルー型SOF分解触媒は、高温条件下ではSOFを効率よく分解可能であるが、低温条件下では触媒金属の活性が低く、SOFの除去率が低下するという欠点がある。そのためエンジン始動時やアイドリング運転時等には、排ガスの温度が低く、未分解のSOFが煤となってハニカム通路内に堆積する現象が起こる。そして、堆積した煤により触媒に目詰まりが生じ、触媒性能が低下するという不具合がある。
【0006】
またフロースルー型SOF分解触媒には、高温域で排ガス中の二酸化硫黄(以下、SOともいう)まで酸化されて三酸化硫黄(以下、SOともいう)、四酸化硫黄(以下、SOともいう)が生成し、サルフェートとなって逆に微粒子物質量が増大するという問題がある。これは、SOは微粒子物質として測定されないが、SOやSOは硫酸塩となって排出され微粒子物質として測定されるからである。特にディーゼルエンジンからの排ガス中には酸素ガスが多く存在し、SOの酸化反応が生じやすい。
【0007】
さらにフロースルー型SOF分解触媒では、触媒金属がディーゼルエンジン排ガス中に多量に含まれる硫黄の被毒を受け、触媒金属の触媒活性が低下することが知られている。即ち、燃料中の硫黄から生成するSOが触媒担持層のアルミナと反応して硫酸アルミニウム(Al(SO))が形成され、これが触媒金属を覆うために触媒活性が低下する。
【0008】
一方、ボイラー等の排ガス処理分野では、耐硫黄被毒性に優れたチタニア(以下、TiOともいう)を触媒担持層に用い、それに白金、バナジウム等の触媒金属を担持した触媒が開発され、実用に供されている。しかし、この種の触媒はSOFの吸着性がなく、低温域ではHCおよびSOFがそのまま排出されてしまう。
【0009】
そこで、活性アルミナやゼオライト等の吸着性の高いコート層を持ち触媒金属を持たない触媒を排ガス流の上流側に配置し、チタニアやシリカ(以下、SiOともいう)等の吸着性の低いコート層を持つ担体に触媒金属を担持した酸化触媒を下流側に配置した触媒装置が提案されている(特許文献2)。
【0010】
この触媒装置によれば、上流側に配置した触媒ではCO、HCおよびSOFが低温時に吸着されるとともにSOも吸着されるが、上流側に配置した触媒は触媒金属を持たないためSOの酸化が防止されている。そして、下流側に配置した触媒では、高温時に上流側に配置した触媒から放出されたHCおよびSOFが触媒金属により酸化・除去される。一方、上流側に配置した触媒からはSOも放出されるが、下流側に配置した触媒は吸着性が低いためSOが吸着して酸化されるのが抑制され、サルフェートの生成が抑制されている。
【0011】
このような事情に鑑み、排ガス中のCO、HC、SOF、サルフェート等からなる微粒子物質を効率的に除去するディーゼルエンジン用触媒装置が提案されているが(特許文献3)、その除去性能は十分ではなく、さらなる改良が求められている。
【0012】
【特許文献1】特開平1−171626号公報
【特許文献2】特開平4−267928号公報
【特許文献3】特開2002−159861号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、本発明は、SOF除去性能を有し、特に優れたCO、HCの除去性能を有し、耐硫黄被毒性を有する、排ガス浄化用酸化触媒、該触媒を備えてなる排ガス浄化用触媒構造体、および該触媒構造体を用いた排ガス浄化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記問題を解決するために、本発明は、チタニアとゼオライトとを含有する担体と、該担体に担持された貴金属とを有してなる排ガス浄化用酸化触媒であって、該ゼオライトの含有量が該触媒に対して35〜50重量%である前記酸化触媒を提供する。
【0015】
また、本発明は、支持体と、該支持体に担持された前記排ガス浄化用酸化触媒とを備えてなる排ガス浄化用触媒構造体を提供する。
【0016】
さらに、本発明は、前記排ガス浄化用触媒構造体に、内燃機関から排出された排ガスを接触させる排ガス浄化方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の排ガス用チタニア系酸化触媒を適用することにより、SOF除去性能を有し、特に優れたCO、HCの除去性能を有するものとなる。これは、HCがSOFの主要な構成要素であり微粒子を形成することがあり、前記触媒がHCに対する優れた吸着能力および除去能力を有するため、該触媒が排ガス中のSOFに対しても優れた除去能力を有することとなるからである。さらに、該触媒を排ガス浄化用触媒構造体に適用することにより、前記特性を有する触媒構造体が作製可能となることから、特にディーゼルエンジンの排ガス浄化に有用である。また、前記酸化触媒、前記触媒構造体、および本発明の排ガス浄化方法は、優れた耐硫黄被毒性を有することから、硫黄を含む燃料を用いたディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガスの浄化能力に特に優れ、微粒子物質の除去システムにも適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
[排ガス浄化用酸化触媒]
本発明の排ガス浄化用酸化触媒は、チタニアとゼオライトとを含有する担体と、該担体に担持された貴金属とを有してなるものである。以下、本発明の触媒を構成する各成分について、詳細に説明する。
【0019】
〔ゼオライト〕
本発明の触媒に含有されるゼオライトは、HC、COおよびSOFを効果的に吸着する機能を有する成分であり、該触媒のHC、COおよびSOFの除去活性を向上させるものである。
【0020】
ゼオライトは、HC、COおよびSOFを吸着するものであれば特に制限されないが、HCおよびCOの吸着量が多いことから、例えば、モルデナイト、ZSM−5(H型ZSM−5等)、USY、フェリエライト、Beta(H型Beta、Fe型Beta、Cu型Beta等)等のタイプが好ましい。これらの中でも、ZSM−5タイプおよび/またはBetaタイプを含有することが好ましい。特に、ゼオライトのSiO/Alのモル比率は、20以上であることが望ましく、20〜200であることがより望ましく、25〜100であることがさらに望ましい。
【0021】
前記ゼオライトが遷移金属でイオン交換された場合には、ゼオライトは酸化触媒としての機能を発揮する。この遷移金属としては、環境に優しい点から、鉄および銅が好ましく、ゼオライトとしては、Fe型BetaおよびCu型Betaのタイプが挙げられる。
【0022】
ゼオライトの含有量は、ゼオライトに由来する高いHCトラップ比率を得るとともに、耐硫黄被毒性の向上を得るのに十分な量のチタニアを含有する必要があることから、前記触媒に対して35〜50重量%であることが必要であり、38〜45重量%であることが好ましい。この含有量が35重量%未満の場合には、HCおよびCOの除去性能が低下することがある。この含有量が50重量%を超える場合には、触媒を含有するスラリーの粘度等の物性が悪くなり、コーティング性が低下することがある。前記35〜50重量%の含有量を満たすことにより、本発明の酸化触媒は、コーティング触媒層の表面HCトラップ濃度が高く、排ガス中のSOF等の比較的高分子量の全炭化水素(THC:Total Hydrocarbon)吸着分解反応に有利に機能するものとなる。
【0023】
また、ゼオライトと後述のチタニアとを併用することにより、両者の作用・効果がそれぞれ奏されるので、前記触媒は、HC、COおよびSOFの除去率が向上し、かつサルフェートの生成が抑制され、微粒子物質を効率よく除去することができるだけでなく、ゼオライトを組成するシリカの耐硫黄被毒性と、後述のチタニアの耐硫黄被毒性とが相乗して、耐硫黄被毒性が向上したものとなる。
ゼオライトは、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0024】
〔チタニア〕
本発明の触媒に含有されるチタニアは、酸性酸化物であるため、SOの吸着およびサルフェートの生成を抑制する機能を有する成分である。また、チタニアは、後述の担持されている貴金属の硫黄被毒を防止する機能(耐硫黄被毒性)を有する。
【0025】
チタニアは、特に限定されるものではないが、通常、アナターゼ型チタニアであり、その中でも、触媒の排ガス浄化性能がより向上することから、耐熱性チタニアが好ましい。このチタニアは、通常、粉末状のものであり、そして、後述の貴金属を高分散担持することができ、触媒活性が向上することから、BET比表面積が30〜130m2/gのものが好ましく、50〜120m2/gのものがより好ましい。
【0026】
チタニアの含有量は、本発明の触媒に対して、通常、35〜60重量%、好ましくは42〜55重量%である。この含有量が35〜60重量%の範囲を満たすと、前記チタニアの作用が発現しやすく、十分な活性を有するものとなる。
チタニアは、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0027】
〔助触媒〕
本発明の触媒は、上記成分以外にも、本発明の作用・効果を損なわない範囲で、任意の助触媒を含有してもよい。前記触媒に、要求される酸化機能を満足するのに十分な量の後述の貴金属が含有されている場合には、助触媒は特に必要とされないが、十分な量の該貴金属が含有されていない場合には、助触媒を含有させ、酸化機能を補うことができる。この助触媒としては、例えば、セリア(以下、CeOともいう)、ジルコニア(以下、ZrOともいう)等が挙げられる。
【0028】
セリアが含有されることで酸化機能の向上が期待され、後述の貴金属の含有量が少ない場合にもSOF等の燃焼効果の向上を図ることができる。また、ジルコニアが含有されることでセリアの耐熱性向上が期待され、高温環境においても触媒機能の低下を防ぐことが期待される。これらのセリアおよびジルコニアは、任意の状態で含有させることが可能であるが、触媒中に複合酸化物として含有されることが好ましい。
【0029】
これらの助触媒を含有する場合には、本発明の触媒は、チタニア、ゼオライトおよび助触媒のそれぞれの作用が相乗的に発現され、排ガス中のCOおよびHCはもとより、SOF、サルフェート等からなる微粒子物質を効率よく除去することができる。
【0030】
以上の観点から、助触媒の含有量は、本発明の触媒に対して、通常、0.1〜15重量%、好ましくは1〜7重量%である。助触媒の含有量が0.1〜15重量%を満たすと、他の成分の活性を低下させることなく、該助触媒の作用を発現することができる。
助触媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0031】
〔その他の任意成分〕
本発明の触媒には、上記成分以外にも、本発明の作用・効果を損なわない範囲で、その他の任意成分を含有してもよい。その他の任意成分としては、例えば、バリウム、マグネシウム、ネオジム、プラセオジム、ストロンチウム、ランタン等が含有される。これらの金属は、金属単体として含有されてもよいが、酸化物、複合酸化物、炭酸塩、硝酸塩、またはこれらの組み合わせとして含有されてもよい。また、触媒の劣化を防止する目的から、ゼオライト中に含有されているシリカ、アルミナ以外に、さらなるシリカおよび/またはアルミナ(例えば、シリカ添加アルミナ等)を含有してもよい。
その他の任意成分は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0032】
〔各成分の配合量〕
本発明の触媒において、より少ない量の触媒で効果的に作用・効果を奏することができるとの観点から、前記チタニアと前記ゼオライトとの合計含有量は、本発明の触媒に対して、好ましくは80〜95重量%であり、より好ましくは85〜90重量%である。
【0033】
〔貴金属担持〕
本発明の触媒は、上記各成分を含有する担体が、貴金属を担持していることが必要である。この担持により、貴金属の触媒活性が発現され、CO、HCおよびSOFの除去率がさらに向上し、微粒子物質の除去率が向上する。前記貴金属としては、例えば、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム等が挙げられ、好ましくは白金である。
【0034】
貴金属の担持量は、本発明の触媒に対して、通常、0.3〜6.0重量%であり、好ましくは1〜4重量%である。この担持量が0.3〜6.0重量%を満たすと、貴金属を担持した効果が十分に発現される。
貴金属は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0035】
〔酸化触媒の作製方法〕
本発明の触媒は、任意の方法で作製することができるが、前記各成分(チタニアおよびゼオライト、場合により助触媒、その他の任意成分を含む)を混合し、貴金属を担持させるために該貴金属の化合物の水溶液等を含浸担持させた後、この混合物を湿式粉砕することによりスラリーとして作製することができる。
【0036】
〔酸化触媒の適用環境〕
本発明の触媒は、周囲の環境に左右されることなく使用することができる。例えば、排ガスの温度が低い場合(例えば、室温(20℃))であっても、ディーゼルエンジン等の駆動状態に起因して排ガスの温度が高い場合(例えば、700℃)であっても、該触媒の機能は同等のものとなる。典型的には、前記触媒は、通常、70〜800℃の温度で用いられ、好ましくは100〜600℃の温度で用いられる。このように幅広い温度範囲において触媒機能を発揮することから、欧州排気ガス規制走行モードECE、EUDC条件下においても、優れた排ガス浄化性能を発揮することができる。
【0037】
[排ガス浄化用触媒構造体]
本発明の排ガス浄化用触媒構造体は、支持体と、該支持体に担持された前記排ガス浄化用酸化触媒とを備えてなるものである。前記支持体としては、例えば、コージェライト、アルミナ、ムライト、メタル単体等が挙げられる。前記排ガス浄化用触媒構造体の具体例としては、連続再生方式(例えば、酸化触媒(フロースルー型)+フィルタ方式、酸化触媒担持フィルタ方式等)のフロースルー型支持体等が挙げられる。本発明の排ガス浄化用触媒構造体は、排ガスからCO、HC、SOF等を除去する用途であればどのような用途に用いることも可能であるが、特にディーゼルエンジンの排ガスを浄化する用途に用いることが好ましい。
前記排ガス浄化用触媒構造体における前記排ガス浄化用酸化触媒の担持量は、前記支持体の単位体積あたり、好ましくは55〜120g/L、より好ましくは65〜95g/Lである。
【0038】
[排ガス浄化方法]
本発明の酸化触媒は、前記排ガス浄化用触媒構造体に適用可能であることは上述のとおりである。前記排ガス浄化用触媒構造体は、どのように使用してもよいが、好ましくは、ディーゼル機関等の内燃機関が備えられた装置において、該内燃機関から排出される排ガスを接触させることにより、該排ガス中のCO、HCおよびSOFの量を減少させる方法に使用される。また、前記内燃機関と前記排ガス浄化用触媒構造体との間に別の浄化装置を併用してもよい。前記内燃機関の燃料として硫黄を含有する軽油が用いられる場合には、本発明の酸化触媒および触媒構造体の耐硫黄被毒性の効果が顕著に現れる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例を用いて本発明についてより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例で用いた各成分の詳細は以下のとおりである。なお、表中の各成分の含有量(重量%)は、酸化触媒に対するものであり、小数第2位を四捨五入したものである。
【0040】
<酸化触媒の構成成分>
・アルミナ
γ−アルミナ(触媒学会参照触媒:JRC−ALO−5)
・チタニア
アナターゼ型チタニア(BET比表面積:約100m2/g)
・ゼオライト
H型ZSM−5(SiO/Al(モル比)=25)
Fe型Beta(SiO/Al(モル比)=40、Fe:1重量%)
H型Beta(SiO/Al(モル比)=40)
・助触媒
CeO/ZrO(20重量%CeO/80重量%ZrO
・貴金属
塩化白金酸水溶液
・その他の任意成分
シリカ添加アルミナ(20重量%SiO/80重量%Al
【0041】
<実施例1〜6、比較例1〜2>
下記の表1に示す各成分の種類・含有量に従って、貴金属以外の各成分を混合した後、貴金属(白金)として20g相当の塩化白金酸水溶液を含浸担持させ、湿式粉砕してスラリー(酸化触媒)を調製した。このスラリーを高さ5.66inch×直径6inch(400cell/6mil)のフロースルー型支持体に、貴金属含有量が該支持体の単位体積あたり2g/Lとなるようにコーティングし、触媒構造体を作製した。該触媒構造体を用い、下記の評価方法に従って、CO排出量およびHC排出量(実施例1については、さらにS堆積量)を測定・評価した。
【0042】
<比較例3>
実施例1において、チタニアおよびシリカ添加アルミナの代わりに活性アルミナとしてγ−アルミナを用いた以外は、実施例1と同じにして、スラリー(酸化触媒)を調製し、触媒構造体を作製した。該触媒構造体を用い、下記の評価方法に従って、S堆積量を測定・評価した。
【0043】
<評価方法>
1.CO排出量・HC排出量
実施例および比較例で作製した各触媒構造体を、電気炉エアー中にて800℃で20時間エージングした後、エンジン試験に用いた。エンジン試験は、5L DI TI(5L ダイレクトイグニッション ターボ・インタークーラー付き)の台上エンジンを使用し、該エンジンから1.5m下流側にエージング済みの前記触媒構造体を設置して行った。この試験では、燃料としてJIS2号軽油(S濃度:重量基準で30〜35ppm)を使用した。また、触媒性能は、ヨーロッパの乗用車用排ガス評価モード(ECE×4+EUDC)により評価した。この評価モードにおけるモードトータル(1サイクル)のCO排出量およびHC排出量を排ガス分析計(商品名:MEXA 7400D、HORIBA製)にて計測した。結果を表1および表2に示す。
【0044】
2.S堆積量
8L DI TI Dieselの台上エンジンを使用し、エンジン回転数2800rpm、エンジン負荷75%の条件で、S堆積試験を行った。この試験では、燃料として高硫黄濃度軽油(JIS2号、S濃度:重量基準で500ppm)を使用した。まず、前記エンジン設定で触媒構造体の触媒部分の入口温度を530℃に保持し、50時間S被毒エージングを実施した。その後、触媒構造体を粉砕し、XRF分析によりS堆積量を測定した。結果を表1および表2に示す。なお、表中の硫黄(S堆積量)は、「触媒構造体に対するS堆積量」を重量%で示したものである。
【0045】
【表1】

*表中の「特性」の欄において、斜線の項目は測定・評価を行わなかった。
【0046】
【表2】

*表中の「特性」の欄において、斜線の項目は測定・評価を行わなかった。
【0047】
<評価>
実施例1〜6の触媒は本発明の要件を満たすものであって、COおよびHCの除去率に優れるものであった。一方、比較例1および比較例2の触媒はゼオライトの含有量が本発明の要件を満たさないものであり、いずれもCOおよびHCの除去率に劣るものであった。
また、実施例1の触媒では硫黄の吸着がごく僅かであったのに対して、比較例3の触媒では硫黄の吸着が著しかった。このことから、本発明の触媒は、排ガスに含有される硫黄による被毒がほとんどなく、安定した浄化機能を持続することが可能なものであることが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタニアとゼオライトとを含有する担体と、該担体に担持された貴金属とを有してなる排ガス浄化用酸化触媒であって、該ゼオライトの含有量が該触媒に対して35〜50重量%である前記酸化触媒。
【請求項2】
前記チタニアの含有量が前記触媒に対して35〜60重量%である請求項1に係る酸化触媒。
【請求項3】
前記チタニアが耐熱性チタニアである請求項1または2に係る酸化触媒。
【請求項4】
前記ゼオライトがZSM−5タイプのゼオライトおよび/またはBetaタイプのゼオライトを含有してなる請求項1〜3のいずれか一項に係る酸化触媒。
【請求項5】
前記貴金属が白金である請求項1〜4のいずれか一項に係る酸化触媒。
【請求項6】
前記貴金属の担持量が前記触媒に対して0.3〜6.0重量%である請求項1〜5のいずれか一項に係る酸化触媒。
【請求項7】
支持体と、該支持体に担持された請求項1〜6のいずれか一項に記載の排ガス浄化用酸化触媒とを備えてなる排ガス浄化用触媒構造体。
【請求項8】
前記酸化触媒の担持量が、前記支持体の単位体積あたり55〜120g/Lである請求項7に係る触媒構造体。
【請求項9】
請求項7または8に記載の排ガス浄化用触媒構造体に、内燃機関から排出された排ガスを接触させる排ガス浄化方法。
【請求項10】
前記内燃機関がディーゼル機関である請求項9に係る方法。
【請求項11】
前記内燃機関に、燃料として硫黄を含有する軽油が用いられる請求項9または10に係る方法。

【公開番号】特開2006−81988(P2006−81988A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−268221(P2004−268221)
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【出願人】(000228198)エヌ・イーケムキャット株式会社 (87)
【Fターム(参考)】