説明

排ガス浄化用制御機器

【課題】排ガス浄化装置に煤や未燃炭化水素が堆積したことを検知し、検知するための装置を良好な状態に保つために新たな装置、新たなエネルギー供給を必要としない、排ガス浄化用制御機器を提供する。
【解決手段】EGR装置3と、EGRバルブ4と、エンジン2からの排ガスを排出する排気管5に設けられ排ガスを通過させる外殻部14と、外殻部14内に設けられ光を透過させる光透過部材30と、光透過部材30に付着又はコーティングされた光触媒17とを備えた排ガス浄化システム1を制御する排ガス浄化用制御機器24において、光透過部材30に光を供給する発光装置31と、発光装置31から光透過部材30に供給された光のうち光透過部材30を透過した光量を検出する光検出装置33と、光検出装置33で検出される光量が所定値未満のときエンジン2から排出される煤や未燃炭化水素を減少させるべくEGRバルブ4を閉じる制御装置12とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンからの排ガスを光触媒を用いて浄化する排ガス浄化システムを制御する排ガス浄化用制御機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジンは、熱効率の点からは、ガソリンエンジンに比べて、有利であるにもかかわらず、黒煙、未燃炭化水素、一酸化炭素、窒素化合物といった有害排出ガスが多いため、日本においては現在でも、商用車を除いて、広く市場に出回っていない。
【0003】
近年、ディーゼル燃焼後に、後処理を加えることで、黒煙や未燃炭化水素などの有害排出物を減少させる工夫が講じられている。図12に示す排ガス浄化装置60は、現在用いられているものであり、黒煙や未燃炭化水素の主成分をなす炭素を酸化することで二酸化炭素として排出するものである。この排ガス浄化装置60は、排ガス中の一酸化炭素、炭化水素を酸化反応により無害化する酸化触媒61と、PM(Particulate Matter:粒子状物質)を捕集し、燃焼させる触媒化セラミックフィルター62とを備える。
【0004】
また、この排ガス浄化装置60には、各種センサーが付属しており、例えば、触媒化セラミックフィルター62に煤や未燃炭化水素が堆積すると、目詰まりを起こし、前後の圧力センサー65によって、圧力差が分かることから、触媒化セラミックフィルター62に熱を加えることで昇温し、堆積した物質を燃焼させることで、目詰まりを防止している。また、圧力センサー65からの情報によって、触媒化セラミックフィルター62に熱を加える手段の他に、エンジン64の燃焼状態を変更し、排ガス温度を上昇させる方法もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−349252号公報
【特許文献2】特開平10−118415号公報
【特許文献3】特開2008−261301号公報
【特許文献4】特開2008−114153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、これまでに製品化されてきた排ガス浄化装置を制御する方法としては、図12のような圧力センサー65を利用した方法が用いられてきた。
【0007】
しかしながら、圧力センサー65の導入管(図示せず)に煤や未燃炭化水素が付着し、正確な圧力の測定が出来なくなり、排ガスの浄化がうまくいかない場合があるという問題があった。
【0008】
かかる問題を回避するための方法としては、特許文献3(図13参照)に記載されるように、差圧センサー65の導入管66、67に堆積した煤などを噴射空気で吹き飛ばす方法が考えられているが、装置の大型化によって、エンジン68の配置に余裕がなくなることや、噴射空気のためのエネルギー使用などによる燃費の悪化が問題視される。特に、燃費の悪化は、現在、最も重要視されている、二酸化炭素排出の削減に対して、妨げとなるものである。
【0009】
また、現在、光触媒を用いた排ガス浄化装置が提案されている(特許文献2参照)。
【0010】
この排ガス浄化装置は、光ファイバーで光を導入し、かつ、光ファイバーから光が漏れるような構造とした上で、その光ファイバーの表面に光触媒を担持させ、光触媒による酸化反応を行わせることで排ガスを浄化する仕組みとなっている。
【0011】
光触媒による排ガス分子の浄化の方法のうち、特に窒素酸化物を浄化する方法において、現在一般に考案されているような還元剤となる燃料の噴射を行う方法(特許文献4参照)と異なる。そのため、余分な燃料を噴射しないため燃費の向上につながると考えられる。
【0012】
また、排ガスの浄化性能があるとされる酸化チタン光触媒にエネルギーを供給する必要があるが、光ファイバーによる光の供給では、光ファイバーの円筒形形状の表面にしか光が供給できない。そのため、現在用いられている黒煙、未燃炭化水素酸化触媒、窒素酸化物吸蔵還元触媒の金属系のスポンジ状の構造と比較して、排ガス構成分子との接触面積が小さくなり、十分な浄化性能が得られない可能性がある。
【0013】
そこで、かかる問題を解決すべく排ガス構成分子との反応面積を増大させた複数種類の排ガス浄化装置(未公開)を現在開発中である。
【0014】
ところで、これらの排ガス浄化装置には、先に述べたような、差圧センサー(圧力センサー)が付属してもよいが、その場合、差圧センサーの構造上、差圧センサーの導入管に煤などが堆積する可能性があり、特許文献3で報告したような、煤の排除装置をつけなくてはならない。これでは、光触媒反応を活かした浄化システムの利点(燃料消費の削減による省エネルギー)を減耗するという課題があった。
【0015】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、排ガス浄化装置に煤や未燃炭化水素が堆積したことを検知できると共に検知するための装置を良好な状態に保つために新たな装置、新たなエネルギー供給を必要としない排ガス浄化用制御機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために本発明は、エンジンの排ガスをエンジンの吸気側に還流するEGR装置と、該EGR装置に設けられエンジンの吸気側に還流する排ガスの流量を調整するためのEGRバルブと、前記エンジンからの排ガスを排出する排気管に設けられ排ガスを通過させる外殻部と、該外殻部内に設けられ光を透過させる光透過部材と、該光透過部材に付着又はコーティングされた光触媒とを備えた排ガス浄化システムを制御する排ガス浄化用制御機器において、前記光透過部材に光を供給する発光装置と、該発光装置から前記光透過部材に供給された光のうち光透過部材を透過した光量を検出する光検出装置と、該光検出装置で検出される光量が所定値未満のとき前記エンジンから排出される煤や未燃炭化水素を減少させるべく前記EGRバルブを閉じる制御装置とを備えたものである。
【0017】
前記制御装置は、前記EGRバルブを閉じても前記光検出装置で検出される光量が前記所定値未満のとき前記発光装置で発生する光量を増加させるとよい。
【0018】
前記排ガス浄化システムはエンジンの吸入空気を増加させる過給機を備え、前記制御装置は前記EGRバルブの閉作動と同時に前記過給機を作動させてエンジンの吸入空気を増加させるとよい。
【0019】
また、エンジンからの排ガスを排出する排気管に設けられ排ガスを通過させる外殻部と、該外殻部内に設けられ光を透過させる光透過部材と、該光透過部材に付着又はコーティングされた光触媒とを備えた排ガス浄化システムを制御する排ガス浄化用制御機器において、前記光透過部材に光を供給する発光装置と、該発光装置から前記光透過部材に供給された光のうち光透過部材を透過した光量を検出する光検出装置と、前記光検出装置で検出される光量が所定値未満のとき前記エンジンから排出される煤や未燃炭化水素を減少させるべく上記エンジンの燃料噴射量を減少させる制御装置とを備えたものである。
【0020】
前記制御装置は、前記光検出装置で検出される光量が前記所定値を所定の許容値以上を超えているときは、前記発光装置で発生する光量を減少させるとよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、排ガス浄化装置に煤や未燃炭化水素が堆積したことを検知できると共に、検知するための装置を良好な状態に保つために新たな装置、新たなエネルギー供給を必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は排ガス浄化システムの全体説明図である(第1の実施の形態)。
【図2】図2は排ガス浄化装置の説明図である。
【図3】図3は排ガス浄化装置の要部拡大説明図である。
【図4】図4(a)は図3の要部拡大説明図であり、図4(b)は光透過部材に煤及び未燃炭化水素の付着が有るときと無いときの光検出装置に到達する光量を示すグラフである。
【図5】図5は排ガス浄化用制御機器の処理の流れを説明するフローチャートである。
【図6】図6は図5の変形例の処理の流れを説明するフローチャートである。
【図7】図7は図5の変形例の処理の流れを説明するフローチャートである。
【図8】図8は第2の実施の形態を示す排ガス浄化装置の説明図である。
【図9】図9は図8の排ガス浄化装置の内部構造の説明図である
【図10】図10は図8の光透過部材の側面図である。
【図11】図11は図10の要部拡大図である。
【図12】図12は従来の排ガス浄化装置の説明図である。
【図13】図13は従来の排ガス浄化システムの説明図である(特許文献3)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る第1の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0024】
図1に示すように、排ガス浄化システム1は、ディーゼルエンジンからなるエンジン2の排ガスをエンジン2の吸気側に還流するEGR装置3と、EGR装置3に設けられ排ガスの再循環流量を調整するためのEGRバルブ4と、エンジン2の吸気側に設けられエンジン2の吸入空気を増加させる過給機27と、エンジン2からの排ガスを排出する排気管5に設けられ排ガスを浄化する第1排ガス浄化装置6と、EGR装置3に設けられエンジン2の吸気側に還流する排ガスを浄化する第2排ガス浄化装置7とを備える。
【0025】
EGR装置3は、エンジン2からの排ガスを排気する排気管5とエンジン2に空気を供給する吸気管8とを接続するEGR通路9と、EGR通路9に設けられEGR通路9内の排ガスを冷却するEGRクーラー10とを備え、エンジン2の吸気側に排ガスの一部を還流させることでNOxの発生を抑える機能を有する。EGR通路9は、排ガスのエンタルピーを回収するタービン、蒸気発生装置又は熱交換器等の排気エンタルピー回収装置11を介して排気管5に接続されている。
【0026】
EGRバルブ4は、EGR通路9内を流れる排ガスの流量を0〜100%の間で調節する流量制御バルブからなる。EGRバルブ4は、後述する制御装置12に信号線13を介して接続されており、制御装置12から制御信号を受けることで排ガスの流量を制御信号に応じた流量に調節するようになっている。
【0027】
過給機27は、排気エンタルピー回収装置11からのエネルギーで駆動されるようになっている。
【0028】
図2及び図3に示すように、第1排ガス浄化装置6は、排気管5に設けられ排ガスを通過させる外殻部14と、外殻部14内に設けられ排ガスを通過させる細孔15を有すると共に光を透過させる多孔質の光透過部材30と、光透過部材30に付着又はコーティングされた光触媒17と、光透過部材30に光を供給する発光装置31とを備える。
【0029】
図3に示すように、光透過部材30は、排ガスを通過させる細孔15を有すると共に光を透過させる多孔質に形成される。光透過部材30は、ガラスを発泡させて形成したガラス発泡体からなる。ガラス発泡体は、ガラス粉体に貝殻を粉砕した貝殻粉体を含有したものを溶融後、冷却固化することで製造される。溶融後に貝殻粉体に含有する炭酸カルシウムが分解して炭酸ガスを発生させ、溶融したガラスに気泡が形成されると共に貝殻粉体が焼失して細孔15が形成される。なお、貝殻粉体に代えて炭酸カルシウムの粉体等を用いてもよい。
【0030】
また、図2に示すように、光透過部材30は、外殻部14内に排ガスの流れ方向に複数重ねて配置される。
【0031】
図3に示すように、光触媒17は、酸化チタンからなり、紫外光を受けることで触媒として機能する。光触媒17は、光透過部材30の細孔15の内面も含む光透過部材30の表面の全てに、すなわち、排ガスとの接触表面の全てに付着(担持)あるいはコーティングされており、広い面積で排ガスと接触するようになっている。
【0032】
発光装置31は、紫外線発光ダイオードからなり、光透過部材30内に埋め込まれる。発光装置31は多数配置したほうが光透過部材30内(多孔質構造内)に満遍なく光を拡散できるため、発光装置31は非常に小さいものが好ましい。発光装置31が半導体の加工において限界(最小)となる程度の大きさのものであれば光透過部材30内に多量に配置することができ、より満遍なく光触媒17に光を供給できる。
【0033】
また、光透過部材30には、発光装置31に電力を供給するための電力供給線32が設けられる。電力供給線32は、光透過部材30内に複数並行に埋め込まれており、発光装置31に電気的に接続されると共に図示しない外部電源に電気的に接続されている。
【0034】
図1に示す第2排ガス浄化装置7は、外殻部14がEGR通路9に設けられる以外は第1排ガス浄化装置6と同じに構成される。
【0035】
図1に示すように、排ガス浄化システム1には、排ガス浄化システム1を制御するための排ガス浄化用制御機器24が接続されている。
【0036】
図1及び図3に示すように、排ガス浄化用制御機器24は、発光装置31と、発光装置31から光透過部材30に供給された光のうち光透過部材30を透過した光量を検出する光検出装置33と、光検出装置33で検出される光量が所定値以下のときエンジン2から排出される煤や未燃炭化水素を減少させるべくEGRバルブ4を閉じる制御装置12とを備える。
【0037】
光検出装置33は、非常に小さな受光素子からなり、光透過部材30内に多数埋め込まれる。光検出装置33の数を増やすほど、詳細な位置における煤や未燃炭化水素の堆積を知ることができる。また、光検出装置33には、制御装置12に信号を送るための信号電力供給線13が接続されている。信号電力供給線13は、光透過部材30内に複数並行に埋め込まれており、光検出装置に電気的に接続されると共に後述する制御装置12に電気的に接続されている。
【0038】
制御装置12は、エンジン2を制御するECU(電子制御ユニット)からなる。制御装置12は光検出装置33に信号線13を介して接続されると共に、EGRバルブ4に信号線13を介して接続されている。制御装置12は、第1排ガス浄化装置6の光透過部材30内に埋め込まれた光検出装置33で検出される光量が所定値以下のときEGRバルブ4を閉じてEGRを中断し、完全燃焼を実施するように燃焼方式を変更する。所定値とは、予めコンピュータで算出された、光透過部材30に汚れがないときの、光検出装置33に入力される予定の光量の期待値(予測値)である。
【0039】
また、制御装置12は、EGRバルブ4を閉じてEGRを中断するとき、同時に過給機27を作動させてエンジン内への供給酸素量を増加させるようになっている。また、制御装置12は、EGRバルブ4を閉じても光検出装置33で検出される光量が所定値以下のとき、発光装置31の光量を増加させるようになっている。
【0040】
またさらに制御装置12は、光検出装置33で検出される光量がECUで設定される期待値を所定の許容値以上超えているとき発光装置31で発生する光量を減少させるようになっている。
【0041】
次に本実施の形態の作用を述べる。
【0042】
図1に示すエンジン2を始動すると、エンジン2から排気管5に排ガスが流れると共に図3に示す発光装置31が発光する。
【0043】
図4(a)に示すように、発光装置31で発生した紫外光は、光透過部材30を透過して光触媒17に至り、光触媒17を活性化させる。光を受けた光触媒17が励起することで酸素から強力な酸化剤となる活性酸素を生成する。排ガス構成分子は活性酸素によって酸化される。つまり、光触媒17は、紫外線を受けることによって、酸化性能を発揮することになる。
【0044】
一方、図2に示す第1排ガス浄化装置6に流入した排ガスは、図3に示す光透過部材30の細孔15内に入り、光触媒17と接触することで徐々に酸化されていく。酸化反応した排ガス中の有害成分は無害化される。具体的には、この酸化反応により排ガス中の黒煙などの炭素が二酸化炭素になり、未燃炭化水素が二酸化炭素と水になり、窒素酸化物が硝酸イオンになる。このとき、酸素の供給が必要になるが、酸素は排ガス中に含まれるため、上述の酸化反応は可能である。
【0045】
図5に示すように、発光装置31から光触媒17に光を供給S1し、光検出装置33を作動S2させると、光検出装置33は、発光装置31から発せられた光のうち光透過部材30内を透過した光を検出する。光透過部材30に煤や未燃炭化水素が堆積していない場合、光検出装置33で検出される光量はECUで設定されている期待値となる。この場合、制御装置12は、光検出装置33で検出された光量から発光装置31のエネルギー使用量を減少する意図があるか否かを判断する。具体的には、光検出装置33で検出された光量が期待値を所定の許容値以上超えているか否かを判断し、光量が期待値を許容値以上超えているとき発光装置31のエネルギー使用量を減少する意図があるものと判断し、発光装置31からのエネルギー供給をECUにおいて設定した所定量減少S3させる(発光量を所定量減少させる)。この後、制御装置12は、定期的に光検出装置33を作動S2させ、光検出装置33で検出される光量が期待値を許容値以上超えている度に発光装置31からのエネルギー供給を所定量減少S3させる。これにより、発光装置31から過度に光が発せられるのを防ぐことができ、省エネルギー化できる。
【0046】
光検出装置33で検出される光量が期待値以上、かつ、期待値を許容値以上超えない値になったら、制御装置12は発光装置31のエネルギー使用量を減少する意図がないものと判断する。このとき、発光装置31からの光量は排ガスによる汚れ量の蓄積と、光によって浄化される量とが平衡状態を保っているため丁度良く、かつ、光触媒17に排ガス構成分子が付着していない状態であるため、制御装置12は排ガス浄化に係る制御を何もしない。
【0047】
光検出装置33で検出される光量が期待値よりも減少したら、制御装置12は、EGRバルブ4を閉じてEGRを中断すると同時に過給機27を働かせるS4ことにより、エンジン2内への供給酸素量を増加させ、完全燃焼が行われるように変更して完全燃焼を実施する。第1排ガス浄化装置6にあっては、光触媒17で浄化すべき排ガス成分である煤と未燃炭化水素が排ガス中から減少することにより、光触媒17の処理能力と煤及び未燃炭化水素の供給量とのバランスが変わる。光触媒17の処理能力が煤及び未燃炭化水素の供給量を上回ることにより、煤及び未燃炭化水素が減少する。第2排ガス浄化装置7にあっては、煤及び未燃炭化水素の供給が止まり、第2排ガス浄化装置7内の煤及び未燃炭化水素が光触媒によって処理されるのみとなって減少する。このとき、第2排ガス浄化装置7内の排ガス中には酸素が含まれているため、上述の処理は可能である。
【0048】
また、エンジン2の燃焼を完全燃焼モードに変更しても光検出装置33で検出される光量が期待値よりも減少しているとき、エンジン2の燃焼を完全燃焼モードに変更することは不可能であるため、発光装置31の光量を増加させる。これにより、第1排ガス浄化装置6の光触媒17表面の排ガス構成分子が酸化されると共に、これまで汚れのせいで十分な光量が得られなかった環境にある光触媒17に光が到達し、光触媒17が活性化する。そのため、光触媒17が有効となる領域が拡がり、酸化光触媒の触媒機能回復が可能となる。
【0049】
このように、光透過部材30に光を供給する発光装置31と、発光装置31から光透過部材30に供給された光のうち光透過部材30を透過した光量を検出する光検出装置33と、光検出装置33で検出される光量が期待値(所定値)未満のときエンジン2から排出される煤や未燃炭化水素を減少させるべくEGRバルブ4を閉じる制御装置12とを備えて排ガス浄化用制御機器24を構成したため、差圧センサーを用いることで煤の堆積度合いを検知してきた仕組みのように差圧センサーの導入管に堆積した煤の吹き飛ばし操作を必要としないため、より省エネルギーな仕組みで第1排ガス浄化装置6に煤や未燃炭化水素が堆積したことを検知できる。そして、多孔質構造の光透過部材30の内部に、発光装置31と、光検出装置33を埋め込んだ構造にすると、光検出装置33を配置した位置の近くにおける煤や未燃炭化水素の堆積量を測定することができ、煤や未燃炭化水素の堆積を正確に検知できる。
【0050】
また、制御装置12は、EGRバルブ4を閉じても光検出装置33で検出される光量が期待値(所定値)未満のとき発光装置31で発生する光量を増加させるため、光触媒17表面に煤や未燃炭化水素が堆積した場合であっても煤や未燃炭化水素を光触媒17表面から確実に除去できる。
【0051】
またさらに、排ガス浄化システム1はエンジン2の吸入空気を増加させる過給機27を備え、制御装置12はEGRバルブ4の閉作動と同時に過給機27を作動させてエンジン2の吸入空気を増加させるものとしたため、エンジン2内への供給酸素量を増加でき、より確実に完全燃焼が行われるようにできる。
【0052】
なお、制御装置12は光検出装置33で検出される光量が期待値未満のときEGRバルブ4を閉じてEGRを中断することを示しているが、EGRバルブ4を絞ってEGR量を減少させるものとしてもよい。
【0053】
また、制御装置12は光検出装置33で検出される光量が期待値未満のときEGRバルブ4を閉じてEGRを中断すると共に過給機27を作動させて完全燃焼を実施するように燃焼を変更し、光検出装置33で検出される光量が依然期待値未満のとき発光装置31で発生する光量を増加させるものとしたが、EGRを中断すると共に過給機27を作動させるステップS4を省略し、図6に示すように、光検出装置33で検出される光量が期待値未満のとき発光装置31で発生する光量を増加36させるものとしてもよい。
【0054】
また、図7に示すように、制御装置12は光検出装置33で検出される光量が期待値未満のときエンジン2の燃料噴射量を減少S7させるものとしてもよい。
【0055】
このように、排ガス浄化用制御機器24が、光透過部材30に光を供給する発光装置31と、発光装置31から光透過部材30に供給された光のうち光透過部材30を透過した光量を検出する光検出装置33と、光検出装置33で検出される光量が期待値(所定値)未満のときエンジン2から排出される煤や未燃炭化水素を減少させるべくエンジン2の燃料噴射量を減少させる制御装置12とを備えるものとしてもエンジン2から排出される煤や未燃炭化水素を減少させることができる。光触媒17の処理能力が煤と未燃炭化水素の供給量を上回ることで煤及び未燃炭化水素が減少する。
【0056】
光触媒17は酸化チタンに限るものではなく他のものであってもよい。光触媒17が酸化チタンである場合、光触媒17に供給する光は紫外線が最も効果が高くなるので発光装置31は紫外線発光ダイオードとしたが、光触媒17が酸化チタン以外のものである場合、発光装置31も光触媒17を最も活性化させる光を発するものにするとよい。
【0057】
発光装置31は紫外線発光ダイオードに限るものではなく、紫外光を自発光する光源であれば他のものであってもよい。例えば、発光装置31は、酸化亜鉛半導体、ダイヤモンド、窒化アルミニウムガリウムインジウムなどであってもよい。また、発光装置31は発光ダイオード等の発光素子に限らない。発光装置31が紫外線を出すものであれば酸化チタン触媒は性能が発揮できるので、発光装置31はフィラメントでもよい。
【0058】
また、制御装置12は、EGRを中断するとき同時に過給機27を作動させるものとしたが、EGRの中断のみで十分完全燃焼できるエンジン2の場合、過給機27は省略してもよい。あるいはまた、EGRの中断をせず、過給機を作動させるものとしてもよい。
【0059】
またさらに、排ガス浄化システム1は、排気管5に設けられた第1排ガス浄化装置6と、EGR装置3に設けられた第2排ガス浄化装置7とを備えるものとしたが、第1排ガス浄化装置6、第2排ガス浄化装置7のいずれか一方のみを備えるものとしてもよい。第1排ガス浄化装置6のみとした場合、EGR装置3を介してエンジン2の吸気側に還流する排ガスの浄化は行われないが、排気管5とEGR通路9との接続部より下流側で排ガスの浄化を行うことができ、煤や未燃炭化水素が大気に排出されることはない。また、第2排ガス浄化装置7のみとした場合、エンジン2の吸気側に還流する排ガスの浄化を行うことができる。この場合、排気管5とEGR通路9との接続部より下流側の排気管5に別途排ガス浄化装置を設けるとよい。
【0060】
次に第1の実施の形態の光透過部材30、発光装置31及び光検出装置33に変更を加えた第2の実施の形態を図面を用いて説明する。第1の実施の形態と同様の構成については説明を省き同符号を付す。
【0061】
図8及び図9に示すように、光透過部材40は、細長いファイバー状(繊維状)に形成されており、外殻部14内に複数並行に設けられる。これら光透過部材40の束は、外殻部14内にフィルタ状の層41を作る。また、光透過部材40の束から構成される層41は外殻部14内に排ガスの流れ方向に複数重ねて配置されると共に、隣接する層41の光透過部材40の向き(延長方向)が互いに異なるように配置される。光透過部材40の束の層41の間隔は光透過部材40の太さ程度に形成されている。なお、図例では層41の光透過部材40は上下、左右方向に延びるものとしたが、斜めに延びるように配置されていてもよい。
【0062】
図10及び図11に示すように、光透過部材40には、発光装置18からの光を案内するための光導波路部42が筒状に形成され、光導波路部42の内周の光透過部材40と外周の光透過部材40には、光導波路部42より屈折率の高い光分散部43が光導波路部42に隣接して形成される。光分散部43は、光導波路部42の内部を通過する光の供給を受けて、光導波路部42からの光が外部に漏出するように屈折率が調整されている。また、光導波路部42の内周の光透過部材40には、排ガス導入用の空洞44が形成されている。空洞44は、光透過部材40の中心部に長手方向に沿って形成されると共に、一端を径方向外方に開口され、他端を一端の開口方向とは反対方向に開口されている。一端の開口は、排ガスの上流側に向けられることで排ガスの入口45を形成し、他端の開口は排ガスの下流側に開口する排ガス出口46を形成する。また、光透過部材40の外周面47と空洞44の内周面48には予め凹凸49が形成されており、排ガスの流れが乱流に遷移するように工夫されている。乱流による慣性遮り効果、拡散効果は、排ガスを構成する分子と光触媒17との衝突を促進する。光触媒17は光透過部材40にコート又は保持(担持)されている。また、図8及び図10に示すように、光透過部材40の光導波路部42の一端には、コネクタ50を介して発光装置18が接続されている。発光装置18は、主に紫外線レーザー発生装置などからなる。光導波路部42の他端側には、外殻部14内に挿入された光検出装置25が配置されている。光検出装置25は信号電力供給線13を通じて制御装置12に接続されている。光検出装置25は、発光装置18から光導波路部42に供給された光のうち光透過部材40内を透過した光量を検出するようになっている。
【0063】
第2の実施の形態の作用を述べる。
【0064】
発光装置18から紫外光が発せられると、紫外光は、コネクタ50を介して光透過部材40の光導波路部42に入射する。光導波路部42に入射した紫外光のうち、光導波路部42と径方向内側の光分散部43との界面に至った紫外光は、半径方向内側に向かうように屈折して空洞44の内周面48の光触媒17に供給され、光導波路部42と径方向外側の光分散部43との界面に至った紫外光は、半径方向外側に向かうように屈折し、光透過部材40の外周面47の光触媒17に供給される。紫外光を供給された光触媒17はそれぞれ活性化する。
【0065】
発光装置18が発光すると、光触媒17に光が供給されると共に、発光装置18から発せられた光のうち光透過部材40内を透過した光が外殻部14内に挿入された光検出装置25に到達する。光透過部材40の表面に煤又は未燃炭化水素の分子が付着すると、外殻部14内に挿入された光検出装置25に到達する光量が減少し、光検出装置25が検出する光量が期待値より減少する。
【0066】
図5に示すように、発光装置18から光触媒17に光を供給S1し、光検出装置25を作動S2させると、光検出装置25は、発光装置18から発せられた光のうち光透過部材40内を透過した光を検出する。光透過部材40の表面に排ガス構成分子が付着し、光検出装置25で検出される光量が期待値よりも減少したら、制御装置12は、EGRバルブ4を閉じてEGRを中断すると同時に過給機27を働かせることにより、エンジン2内への供給酸素量を増加させ、完全燃焼が行われるように変更して完全燃焼を実施S4する。第1排ガス浄化装置6にあっては、光触媒17の処理能力が煤及び未燃炭化水素の供給量を上回ることにより、煤及び未燃炭化水素が減少する。
【0067】
また、エンジン2の燃焼を完全燃焼が行われるように変更しても光検出装置25で検出される光量が期待値よりも減少しているとき、エンジン2の燃焼を完全燃焼モードに変更するために燃料噴射量を減少S7させてもよい。
【0068】
このように、光透過部材40を細長いファイバー状(繊維状)に形成し、光透過部材40の一端に発光装置18を接続し、光透過部材40の他端に光検出装置25を接続するものとしても、第1排ガス浄化装置6に煤や未燃炭化水素が堆積したことを精度良く省エネルギーで検知できる。
【符号の説明】
【0069】
1 排ガス浄化システム
2 エンジン
3 EGR装置
4 EGRバルブ
5 排気管
12 制御装置
14 外殻部
17 光触媒
24 排ガス浄化用制御機器
27 過給機
30 光透過部材
31 発光装置
33 光検出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排ガスをエンジンの吸気側に還流するEGR装置と、該EGR装置に設けられエンジンの吸気側に還流する排ガスの流量を調整するためのEGRバルブと、前記エンジンからの排ガスを排出する排気管に設けられ排ガスを通過させる外殻部と、該外殻部内に設けられ光を透過させる光透過部材と、該光透過部材に付着又はコーティングされた光触媒とを備えた排ガス浄化システムを制御する排ガス浄化用制御機器において、前記光透過部材に光を供給する発光装置と、該発光装置から前記光透過部材に供給された光のうち光透過部材を透過した光量を検出する光検出装置と、該光検出装置で検出される光量が所定値未満のとき前記エンジンから排出される煤や未燃炭化水素を減少させるべく前記EGRバルブを閉じる制御装置とを備えたことを特徴とする排ガス浄化用制御機器。
【請求項2】
前記制御装置は、前記EGRバルブを閉じても前記光検出装置で検出される光量が前記所定値未満のとき前記発光装置で発生する光量を増加させる請求項1記載の排ガス浄化用制御機器。
【請求項3】
前記排ガス浄化システムはエンジンの吸入空気を増加させる過給機を備え、前記制御装置は前記EGRバルブの閉作動と同時に前記過給機を作動させてエンジンの吸入空気を増加させる請求項1又は2記載の排ガス浄化用制御機器。
【請求項4】
エンジンからの排ガスを排出する排気管に設けられ排ガスを通過させる外殻部と、該外殻部内に設けられ光を透過させる光透過部材と、該光透過部材に付着又はコーティングされた光触媒とを備えた排ガス浄化システムを制御する排ガス浄化用制御機器において、前記光透過部材に光を供給する発光装置と、該発光装置から前記光透過部材に供給された光のうち光透過部材を透過した光量を検出する光検出装置と、前記光検出装置で検出される光量が所定値未満のとき前記エンジンから排出される煤や未燃炭化水素を減少させるべく上記エンジンの燃料噴射量を減少させる制御装置とを備えたことを特徴とする排ガス浄化用制御機器。
【請求項5】
前記制御装置は、前記光検出装置で検出される光量が前記所定値を所定の許容値以上超えているとき前記発光装置で発生する光量を減少させる請求項1〜4のいずれかに記載の排ガス浄化用制御機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−179440(P2011−179440A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45723(P2010−45723)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】