説明

排出ガスセンサのヒータ制御装置

【課題】排気管内の水分の付着による空燃比センサの素子割れを防止しながら空燃比センサを早期に活性化すると共に、低コスト化及び制御装置の負荷軽減を実現する。
【解決手段】空燃比センサの素子抵抗値Rが所定値R0 以下であるか否かによって排気管温度が排気管内で水分が結露しない水分不発生状態となる温度まで昇温されたか否かを判定する。エンジン始動直後で素子抵抗値Rが所定値R0 よりも大きい期間(排気管内で水分が結露する期間)は、ヒータの通電を禁止して空燃比センサの素子割れを防止すると共に、エンジンの点火時期を遅角して排出ガスの温度を強制的に上昇させて排気管温度を速やかに昇温させる。その後、素子抵抗値Rが所定値R0 以下になった時点(水分不発生状態となった時点)で、ヒータへの通電を開始して素子温度を活性温度まで速やかに昇温させるようにヒータの通電を制御すると共に、点火時期の遅角制御を終了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排出ガスセンサのセンサ素子を加熱するヒータを制御して該センサ素子の温度を制御する排出ガスセンサのヒータ制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の電子制御化された内燃機関では、排気管に排出ガスの空燃比やリッチ/リーン等を検出する排出ガスセンサ(空燃比センサ、酸素センサ等)を設け、この排出ガスセンサの出力に基づいて実空燃比を目標空燃比に一致させるように燃料噴射量や吸入空気量等をフィードバック制御するようにしている。一般に、排出ガスセンサは、センサ素子の温度が活性温度まで昇温しないと検出精度が悪いため、排出ガスセンサにヒータを内蔵し、内燃機関の始動時からセンサ素子をヒータで加熱して排出ガスセンサの活性化を促進するようにしている。
【0003】
ところで、内燃機関の排出ガスには、燃料と空気の燃焼反応によって生成された水蒸気が含まれており、内燃機関の始動直後で排気管温度が低いときには、水蒸気を含んだ排出ガスが排気管内で冷やされるため、排気管内で排出ガス中の水蒸気が凝縮して凝縮水が生じることがある。このため、始動直後に排気管内で生じた凝縮水が排出ガスセンサのセンサ素子に付着する可能性があり、始動直後からセンサ素子をヒータで加熱すると、ヒータで加熱された高温のセンサ素子が凝縮水の付着による局所冷却(熱歪み)によって割れてしまう“素子割れ”が発生することがある。
【0004】
この対策として、特許文献1(特公平6−90167号公報)に記載されているように、排気管に温度センサを取り付け、この温度センサで検出した排気管温度が所定温度以下のときには、排気管内に凝縮水が存在すると判断して、ヒータによる排出ガスセンサの加熱を禁止するようにしたものがある。
【0005】
また、特許文献2(特開2002−48749号公報)に記載されているように、内燃機関の運転状態に基づいて排出ガス熱量(又は排出ガス温度)を算出し、この排出ガス熱量(又は排出ガス温度)と、排出ガスと排気管との間の熱伝達及び排気管と外気との間の熱伝達を数学的にモデル化した熱伝達モデルとに基づいて排気管温度を推定して、この排気管温度が排気管内で水分が結露しない温度まで上昇したときに、ヒータによる排出ガスセンサの加熱を開始するようにしたものがある。
【特許文献1】特公平6−90167号公報(第1頁等)
【特許文献2】特開2002−48749号公報(第2頁等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1,2の技術では、内燃機関の始動後に排気管が暖機されて排気管温度が排気管内で水分が結露しない温度(つまり、水分の付着による排出ガスセンサの素子割れが発生しない温度)に昇温するのを待ってからヒータによる排出ガスセンサの加熱を開始するため、排出ガスセンサの活性化が遅れてしまい、その分、空燃比フィードバック制御の開始が遅れて、排気エミッションが悪化するという問題がある。
【0007】
しかも、上記特許文献1の技術では、排気管温度を検出する温度センサを新たに設ける必要があり、その分、コストアップするという欠点もある。また、上記特許文献2の技術では、内燃機関の運転状態に基づいて排出ガス熱量(又は排出ガス温度)を算出すると共に、この排出ガス熱量(又は排出ガス温度)と熱伝達モデルとを用いて排気管温度を算出する必要があるため、排気管温度の演算処理が複雑化して制御装置の演算負荷が増大するという欠点もある。
【0008】
本発明は、これらの事情を考慮してなされたものであり、従って本発明の目的は、排気通路内の水分の付着による排出ガスセンサの素子割れを防止しながら、排出ガスセンサを早期に活性化することができると共に、低コスト化及び制御装置の負荷軽減の要求を満たすことができる排出ガスセンサのヒータ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、内燃機関の排気通路に設けられた排出ガスセンサのセンサ素子を加熱するヒータを制御して該センサ素子の温度を制御する排出ガスセンサのヒータ制御装置において、排気通路内で水分が結露する状態のときに排出ガス温度上昇制御手段によって内燃機関の排出ガスの温度を上昇させ、判定手段によってセンサ素子の抵抗値(インピーダンス)に基づいて排気通路内で水分が結露しない状態(以下「水分不発生状態」という)であるか否かを判定し、水分不発生状態であると判定されたときにヒータ制御手段によってセンサ素子の温度を活性温度まで昇温させるようにヒータを制御するようにしたものである。
【0010】
この構成では、内燃機関の始動直後で排気通路温度が低くて排気通路内で水分が結露する状態のときに、内燃機関の排出ガスの温度を強制的に上昇させることができるため、排出ガスの熱で速やかに排気通路の温度を昇温させて排気通路内の結露水を速やかに蒸発させることができると共に、水分不発生状態になるまでの時間を短縮することができる。そして、水分不発生状態であると判定されたときに、センサ素子の温度を活性温度まで昇温させるようにヒータを制御するため、排気通路内の水分の付着による排出ガスセンサの素子割れを防止しながら、センサ素子の温度を活性温度まで昇温させるヒータ制御を従来よりも早く開始することができ、排出ガスセンサを早期に活性化することができる。
【0011】
また、内燃機関の始動後に排気通路内を流れる排出ガスの熱によって排気通路とセンサ素子とが加熱されて排気通路の温度とセンサ素子の温度とが同じように上昇し、このセンサ素子の温度上昇に応じてセンサ素子の抵抗値が変化するため、センサ素子の抵抗値は排気通路の温度を反映した情報となる。従って、本発明のように、センサ素子の抵抗値を監視すれば、排気通路の温度が水分不発生状態となる温度まで昇温されたか否かを精度良く判定することができる。しかも、センサ素子の抵抗値に基づいて水分不発生状態であるか否かを判定すれば、排気通路温度を検出する温度センサを新たに設ける必要がなく、抵コスト化できると共に、排気通路温度を算出するための複雑な演算処理を行う必要もなく、制御装置の演算負荷を軽減することができる。
【0012】
この場合、請求項2のように、センサ素子の抵抗値または該抵抗値から変換された温度に基づいて前記水分不発生状態であるか否かを判定するようにしても良い。このようにすれば、センサ素子の抵抗値(つまりセンサ素子の温度)によって、排気通路の温度が水分不発生状態となる温度まで昇温されたか否かを判定することができる。
【0013】
ところで、本発明は、内燃機関の始動から水分不発生状態になるまでの期間に、水分の付着による素子割れが発生しない温度範囲内でヒータに通電してセンサ素子を予熱するようにしても良いが、センサ素子をヒータで予熱する場合は、センサ素子の温度がヒータによる予熱分だけ排気通路の温度よりも高くなって、排気通路の温度とセンサ素子の抵抗値(センサ素子の温度)との関係がずれてしまうため、センサ素子の抵抗値に基づく水分不発生状態の判定精度が低下する。この場合でも、ヒータによる予熱分に応じてセンサ素子の抵抗値の検出値や判定条件を補正すれば、センサ素子の抵抗値に基づく水分不発生状態の判定精度を確保できるが、ヒータによる予熱分の補正処理が必要になってくる。
【0014】
そこで、請求項3のように、水分不発生状態であると判定されるまでヒータによるセンサ素子の加熱を禁止するようにすると良い。このようにすれば、センサ素子の抵抗値に基づいて水分不発生状態であると判定される前に、ヒータによるセンサ素子の加熱によって排気通路の温度とセンサ素子の抵抗値(センサ素子の温度)との関係がずれることを防止できて、センサ素子の抵抗値に基づいて水分不発生状態であるか否かを精度良く判定することができると共に、ヒータによる予熱分の補正処理が不要で、演算負荷を軽減できる利点がある。しかも、水分不発生状態であると判定されるまでヒータによるセンサ素子の加熱を禁止することで、水分の付着による排出ガスセンサの素子割れをより確実に防止することができる。
【0015】
また、排出ガスの温度を上昇させる具体的な方法としては、請求項4のように、内燃機関の点火時期を遅角して排出ガスの温度を上昇させるようにすると良い。このように、点火時期を遅角すれば、筒内混合気の燃焼タイミングを遅くして排気バルブの開弁タイミングに近付けることができ、排出ガスの温度を効率良く上昇させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
まず、図1に基づいてエンジン制御システム全体の概略構成を説明する。内燃機関であるエンジン11の吸気管12の最上流部には、エアクリーナ13が設けられ、このエアクリーナ13の下流側に、吸入空気量を検出するエアフローメータ14が設けられている。このエアフローメータ14の下流側には、モータ15によって開度調節されるスロットルバルブ16と、このスロットルバルブ16の開度(スロットル開度)を検出するスロットル開度センサ17とが設けられている。
【0017】
更に、スロットルバルブ16の下流側には、サージタンク18が設けられ、このサージタンク18には、吸気管圧力を検出する吸気管圧力センサ19が設けられている。また、サージタンク18には、エンジン11の各気筒に空気を導入する吸気マニホールド20が設けられ、各気筒の吸気マニホールド20の吸気ポート近傍に、それぞれ燃料を噴射する燃料噴射弁21が取り付けられている。また、エンジン11のシリンダヘッドには、各気筒毎に点火プラグ22が取り付けられ、各点火プラグ22の火花放電によって筒内の混合気に着火される。
【0018】
一方、エンジン11の排気管23(排気通路)には、排出ガスの空燃比を検出する空燃比センサ24(排出ガスセンサ)が設けられ、この空燃比センサ24には、センサ素子を加熱するヒータ(図示せず)が内蔵されている(又は外付けされている)。この空燃比センサ24の下流側に、排出ガスを浄化する三元触媒等の触媒25が設けられている。
【0019】
また、エンジン11のシリンダブロックには、冷却水温を検出する冷却水温センサ26や、エンジン11のクランク軸27が所定クランク角回転する毎にクランク角信号(パルス信号)を出力するクランク角センサ28が取り付けられている。このクランク角センサ28のクランク角信号に基づいてクランク角やエンジン回転速度が検出される。
【0020】
これら各種センサの出力は、エンジン制御回路(以下「ECU」と表記する)29に入力される。このECU29は、マイクロコンピュータを主体として構成され、内蔵されたROM(記憶媒体)に記憶された各種のエンジン制御プログラムを実行することで、エンジン運転状態に応じて燃料噴射弁21の燃料噴射量や点火プラグ22の点火時期を制御する。
【0021】
その際、ECU29は、空燃比センサ24の出力に基づいて排出ガスの空燃比を検出し、その検出空燃比が目標空燃比に一致するように燃料噴射量等をフィードバック制御する。また、空燃比センサ24は、センサ素子の温度(以下「素子温度」という)が活性温度(例えば750℃)まで昇温しないと検出精度が悪いため、ECU29は、センサ素子の抵抗値(以下「素子抵抗値」という)に基づいて素子温度を検出し、その素子温度が活性温度になるようにヒータの通電を制御してセンサ素子を加熱する。
【0022】
ところで、エンジン始動後に排気管23内を流れる排出ガスの熱によって排気管23と空燃比センサ24のセンサ素子とが加熱されて排気管23の温度とセンサ素子の温度とが同じように上昇し、このセンサ素子の温度上昇に応じてその素子抵抗値が変化するため、素子抵抗値は排気管23の温度を反映した情報となる。従って、素子抵抗値を監視すれば、排気管23の温度が排気管23内で水分が結露しない水分不発生状態となる温度まで昇温されたか否かを精度良く判定することができる。
【0023】
この点に着目して、ECU29は、後述する図2のヒータ制御プログラムを実行することで、空燃比センサ24の素子抵抗値Rが所定値R0 以下であるか否かによって、排気管23の温度が排気管23内で水分が結露しない水分不発生状態となる温度まで昇温されたか否かを判定する。一般に、空燃比センサ24は、図3に示すように、素子温度が高くなるほど素子抵抗値が低くなるという特性があるため、素子抵抗値Rが所定値R0 以下であるか否か(つまり素子温度が所定温度以上であるか否か)によって、排気管23の温度が水分不発生状態となる温度まで昇温されたか否かを判定することができる。
【0024】
そして、図4のタイムチャートに示すように、エンジン始動直後で空燃比センサ24の素子抵抗値Rが所定値R0 よりも大きい期間、つまり、排気管23の温度が水分不発生状態となる温度まで昇温されていない期間(排気管23内で水分が結露する期間)は、ヒータの通電を禁止する。これにより、ヒータによるセンサ素子の加熱を禁止して、排気管23内の水分の付着による空燃比センサ24の素子割れを防止する。更に、エンジン11の点火時期を遅角して筒内混合気の燃焼タイミングを遅くして排気バルブの開弁タイミングに近付けることで排出ガスの温度を強制的に上昇させる。これにより、排出ガスの熱で速やかに排気管23の温度を昇温させて排気管23内の結露水を蒸発させると共に、排気管23内で水分が結露しない水分不発生状態になるまでの時間を短縮する。
【0025】
その後、空燃比センサ24の素子抵抗値Rが所定値R0 以下になった時点t1 、つまり、排気管23の温度が水分不発生状態となる温度まで昇温した時点で、ヒータへの通電を開始して、素子温度を活性温度まで速やかに昇温させるようにヒータの通電を制御すると共に、点火時期の遅角制御を終了して、点火時期を通常値に戻す。
【0026】
以下、ECU29が実行する図2のヒータ制御プログラムの処理内容を説明する。図2に示すヒータ制御プログラムは、ECU29の電源オン中に所定周期で実行され、特許請求の範囲でいうヒータ制御手段としての役割を果たす。
【0027】
本プログラムが起動されると、まず、ステップ101で、空燃比センサ24の素子抵抗値Rが所定値R0 以下であるか否かによって、排気管23の温度が水分不発生状態となる温度まで昇温されたか否かを判定する。ここで、所定値R0 は、水分不発生状態となるのに必要な排気管23の最低温度又はそれよりも少し高い温度に相当する素子抵抗値に設定されている。このステップ101の処理が特許請求の範囲でいう判定手段としての役割を果たす。
【0028】
このステップ101で、空燃比センサ24の素子抵抗値が所定値R0 よりも大きい、つまり、水分不発生状態ではない(排気管23内で水分が結露する状態である)と判定された場合には、ステップ102に進み、ヒータの通電を禁止してヒータによるセンサ素子の加熱を禁止することで、排気管23内の水分の付着による空燃比センサ24の素子割れを防止する。このステップ102の処理が特許請求の範囲でいうヒータ禁止手段としての役割を果たす。
【0029】
この後、ステップ103に進み、エンジン11の点火時期を遅角して排出ガスの温度を強制的に上昇させる。これにより、排出ガスの熱で速やかに排気管23の温度を昇温させて排気管23内の結露水を蒸発させると共に、排気管23内で水分が結露しない水分不発生状態になるまでの時間を短縮する。このステップ103の処理が特許請求の範囲でいう排出ガス温度上昇制御手段としての役割を果たす。
【0030】
その後、上記ステップ101で、空燃比センサ24の素子抵抗値Rが所定値R0 以下である、つまり、水分不発生状態であると判定されたときに、ステップ104に進み、ヒータの通電を許可して、素子温度を活性温度まで速やかに昇温させるようにヒータの通電を制御する。この後、ステップ105に進み、点火時期の遅角制御を終了して、点火時期を通常値に戻す。
【0031】
以上説明した本実施例では、エンジン始動直後で排気管23の温度が低くて排気管23内で水分が結露する状態のときに、エンジン11の排出ガスの温度を点火時期の遅角制御により強制的に上昇させるようにしたので、排出ガスの熱で速やかに排気管23の温度を昇温させて排気管23内の結露水を速やかに蒸発させることができると共に、排気管23内で水分が結露しない水分不発生状態になるまでの時間を短縮することができる。そして、水分不発生状態であると判定されたときに、ヒータへの通電を開始して、素子温度を活性温度まで速やかに昇温させるようにヒータを制御するため、排気管23内の水分の付着による空燃比センサ24の素子割れを防止しながら、素子温度を活性温度まで昇温させるヒータ制御を従来よりも早く開始することができ、空燃比センサを早期に活性化して早期に空燃比フィードバック制御を開始することができ、排気エミッションを向上させることができる。
【0032】
しかも、空燃比センサ24の素子抵抗値に基づいて水分不発生状態であるか否かを判定するようにしたので、排気管温度を検出する温度センサを新たに設ける必要がなく、抵コスト化できると共に、排気管温度を算出するための複雑な演算処理を行う必要もなく、ECU29の演算負荷を軽減することができるという利点もある。
【0033】
ところで、本発明は、エンジン始動から水分不発生状態になるまでの期間に、水分の付着による素子割れが発生しない温度範囲内でヒータに通電してセンサ素子を予熱するようにしても良いが、センサ素子をヒータで予熱する場合は、センサ素子の温度がヒータによる予熱分だけ排気通路の温度よりも高くなって、排気管23の温度と空燃比センサ24の素子抵抗値(センサ素子の温度)との関係がずれてしまうため、素子抵抗値に基づく水分不発生状態の判定精度が低下する。この場合でも、素子抵抗値の検出値をヒータによる予熱分に応じて素子抵抗値の検出値R又は判定値R0 を補正すれば、素子抵抗値に基づく水分不発生状態の判定精度を確保できるが、ヒータによる予熱分の補正処理が必要になってくる。
【0034】
この点を考慮して、本実施例では、素子抵抗値に基づいて水分不発生状態であると判定されるまでヒータによるセンサ素子の加熱を禁止するようにしたので、素子抵抗値に基づいて水分不発生状態であると判定される前に、ヒータによるセンサ素子の加熱によって排気管23の温度と素子抵抗値(素子温度)との関係がずれることを防止できて、素子抵抗値に基づいて水分不発生状態であるか否かを精度良く判定することができると共に、ヒータによる予熱分の補正処理が不要で、演算負荷を軽減できる利点がある。しかも、水分不発生状態であると判定されるまでヒータによるセンサ素子の加熱を禁止することで、水分の付着による空燃比センサ23の素子割れをより確実に防止することができる。
【0035】
また、上記実施例では、エンジン始動時に、空燃比センサ24の素子抵抗値に基づいて水分不発生状態ではない(排気管23内で水分が結露する状態である)と判定されたときに排出ガスの温度を上昇させるようにしたが、冷却水温、油温、吸気温、外気温等のうちの少なくとも1つの温度情報に基づいて水分不発生状態ではない(排気管23内で水分が結露する状態である)と判定されたときに排出ガスの温度を上昇させるようにしても良い。
【0036】
また、上記実施例では、エンジン始動から水分不発生状態になるまでの期間に、点火時期を遅角制御して排出ガスの温度を上昇させるようにしたが、燃料噴射量、空燃比、排気管に導入される二次空気導入量等を制御して排気管を流れる排出ガスの温度を上昇させるようにしても良い。
【0037】
その他、本発明の適用範囲は、排出ガスの空燃比を検出する空燃比センサのヒータ制御に限定されず、例えば、排出ガスのリッチ/リーンを検出する酸素センサ等、他の排出ガスセンサのヒータ制御に本発明を適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施例におけるエンジン制御システム全体の概略構成図である。
【図2】ヒータ制御プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】空燃比センサの素子温度と素子抵抗値との関係を示す特性図である。
【図4】ヒータ制御の実行例を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0039】
11…エンジン(内燃機関)、12…吸気管、16…スロットルバルブ、21…燃料噴射弁、22…点火プラグ、23…排気管(排気通路)、24…空燃比センサ(排出ガスセンサ)、29…ECU(排出ガス温度上昇制御手段,判定手段,ヒータ制御手段,ヒータ禁止手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に設けられた排出ガスセンサのセンサ素子を加熱するヒータを制御して該センサ素子の温度を制御する排出ガスセンサのヒータ制御装置において、
前記排気通路内で水分が結露する状態のときに内燃機関の排出ガスの温度を上昇させる排出ガス温度上昇制御手段と、
前記センサ素子の抵抗値に基づいて前記排気通路内で水分が結露しない状態(以下「水分不発生状態」という)であるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記水分不発生状態であると判定されたときに前記センサ素子の温度を活性温度まで昇温させるように前記ヒータを制御するヒータ制御手段と
を備えていることを特徴とする排出ガスセンサのヒータ制御装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記センサ素子の抵抗値または該抵抗値から変換された温度に基づいて前記水分不発生状態であるか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の排出ガスセンサのヒータ制御装置。
【請求項3】
前記判定手段により前記水分不発生状態であると判定されるまで前記ヒータによる前記センサ素子の加熱を禁止するヒータ禁止手段を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の排出ガスセンサのヒータ制御装置。
【請求項4】
前記排出ガス温度上昇制御手段は、内燃機関の点火時期を遅角して排出ガスの温度を上昇させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の排出ガスセンサのヒータ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−113920(P2007−113920A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−302436(P2005−302436)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】