排気ガス浄化装置
【課題】この排気ガス浄化装置は,排気ガスに含まれる粒子状物質等の有害物質を捕集消失させる担体を波板状帯体を巻き上げ,排気ガス通路に担体を2個直列に配設し,2種類の浄化機能を持たせる。
【解決手段】フィルタ20は,金網を幅方向に延びる稜線7と溝6から成る波板状帯体3に成形し,それを螺旋状に巻き上げた又は積層した柱状体4の担体1に構成されている。担体1の柱状体4には,一端面9から他端面10へと重なった帯体8間の溝6に沿ってハニカム通路5の屈折路16及び/又は平行路17が多数形成される。排気ガス通路19内の上流側の担体1AにはNOX 還元触媒が担持され,下流側の担体1Bには酸化触媒又はNOX 触媒が担持されている。
【解決手段】フィルタ20は,金網を幅方向に延びる稜線7と溝6から成る波板状帯体3に成形し,それを螺旋状に巻き上げた又は積層した柱状体4の担体1に構成されている。担体1の柱状体4には,一端面9から他端面10へと重なった帯体8間の溝6に沿ってハニカム通路5の屈折路16及び/又は平行路17が多数形成される。排気ガス通路19内の上流側の担体1AにはNOX 還元触媒が担持され,下流側の担体1Bには酸化触媒又はNOX 触媒が担持されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,エンジン,バーナ,ガス発生源等からの排気ガスを排気ガス通路に配設したフィルタに通し,排気ガスに含まれる粒子状物質,スート,HC,NOX 等の有害物質を触媒等の助けで燃焼させ又は酸化・還元反応て消失させ,排気ガスを浄化する排気ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来,ディーゼルエンジンは,その熱効率が高いことからトラック,船等に多く用いられており,近年,CO2 の排出量の最も少ない原動機として見直され,乗用車にも採用が増え続けている。最近では,ディーゼルパティキュレートフイルタ(以下,DPFという)は多くの車両に搭載され,DPFのコージライトや炭化珪素のセラミックハニカムに粒子状物質(以下,PMという)を捕集して触媒の助けで低温燃焼させて焼却し,排気ガスを浄化するようになった。また,排気ガス中に含まれるPMについて,その組成のほとんどが未燃焼のカーボン又は重質油の炭化水素であるので,DPFを用いて未燃焼の燃料を完全に燃焼させさえすれば,微粒子として排出されることがない。通常,フィルタに担持された触媒は,300℃前後から煤を燃焼させるか,又は排気ガス中のNOをNO2 に酸化させ, そのNO2 を活用するものであり,300℃以下でPMを燃焼させる技術等が最も低温で煤を燃焼させるものであると言われている。
【0003】
一方,都市部の大気をクリンにするためには,新車は勿論であるが,既に市販された自動車の排気ガスを浄化することが不可欠となり,そのような観点からDPFを自動車に搭載することが積極的に進められている。しかしながら,現在使用されている既存車で,DPFを導入する場合,コモンレール等の排気温度を容易に制御できる装置を適用することができないこと,また,最新の新車にDPFを用いる場合に,エンジン駆動と関連して総合的に制御できないためDPFが正常に作動しない場合が多い。排気ガス浄化の用途に用いることのできるフィルタとして,近年,金属製薄板と金属製不織布を複合させたものが使われ始めている。該フィルタは,金属製薄板のガイドで排気ガスを金属不織布に衝突させてPMを捕集しており,フィルタの構造が複雑であり,製造費用が高いこと,PM低減率が40〜50%が限度であってそれ以上高くできない難点があった。
【0004】
また,従来の排気ガス浄化装置は,ディーゼルエンジンから排出される排気ガスに含まれる煤状粒子の排出物を低減又は除去するものであり,NOをNO2 に酸化するのに有効な第1触媒,及び炭化水素,一酸化炭素,揮発性有機物成分を酸化させるのに有効な第2触媒を有し,各々の触媒がハニカム型の流通モノリス上に担持され,第2触媒モノリスの上又は中に捕獲された煤状粒子が第1触媒からのNO2 含有ガスの中で燃焼され,第1触媒の担体として使用されるモノリスは煤状粒子の捕集を最小限度に抑えるものである(例えば,特許文献1参照)。
【0005】
また,ディーゼルエンジンの排ガスを浄化する排ガスフィルタとして,1つの帯状フィルタ層から成るものが知られており,該排ガスフィルタは,少なくとも部分的に流体が貫流できる材料から成る少なくとも1つのフィルタ部を備えた帯状フィルタ層と金属箔とからなり,フィルタ層が排ガスの気体成分を転換するための触媒活性被覆を備えた少なくとも1つの接触部と排ガスから粒子を濾過除去するためのフィルタ部とを備えている(例えば,特許文献2参照)。
【0006】
また,加熱要素付きの排気ガス浄化装置としては,外被管内に配置されて排気ガスで貫流されるハニカム構造の触媒担体と電気加熱要素とを有し,加熱要素が両端に電気接続端子を有し,加熱要素内に電気絶縁用の隙間によって曲がりくねった流路が規定されており,加熱要素がハニカム体であり,ハニカム体が電気絶縁支持要素により触媒単体に固定され,ハニカム体が排気ガスの流れ方向において触媒担体の下流に配置されている(例えば,特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平10―159552号公報
【特許文献2】特表2005−534487号公報
【特許文献3】特表2003−509620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで,ディーゼルエンジンは,圧縮着火エンジンであるため,NOX や粒子状物質(PM)が排気ガスに含まれている。ディーゼルエンジンでは,NOX とPMとの浄化はトレードオフ関係にあり,両者の低減は難しく,また,ディーゼルエンジンは,排気ガス中の酸素濃度が高いため,ガソリンエンジンで有効な三元触媒によるNOX の低減が難しい。更に,PMの主成分である煤は,酸化温度が高いため特殊な低減装置が必要になる。また,NOをNO2 に酸化させることを活用する排ガス浄化装置は,NOX の排出量の絶対値が減少してきている状況においては,生成するNO2 量が減少することになり,その効果も制限されてきた。また,DPFとしては,コージライトセラミックス,炭化珪素セラミックスのハニカムを用いてPMを濾過し,フィルタに堆積したPMをフィルタに担持した触媒により低温で燃焼させるものが有効であり,多くの車両に搭載されるようになった。DPFには,コージライト製ハニカム,金属製ハニカム等にアルミナ等をコーティングし,酸化触媒を担持したり,NOX 還元触媒を担持して用いている。勿論,担体は,表面積が大きい方が排気ガスとの接触が多くなり高い性能が得られる。従来のコージライトが安価であるので,多く用いられているが,最近では,20〜30ミクロンのステンレススチールを波板状に折り曲げ,平板と交互に重ねて巻き上げた金属ハニカムが,板圧がコージライトに比較して薄いので,圧力損失が小さいということで用いられるようになった。更に,金属ハニカムには,その表面に段付きとして乱流を起こし,排気ガスとの接触機会を増やし,性能向上を図るものが知られている。金属ハニカムは,平板と波板とを交互に重ねて巻き上げるが,金属製薄板を素材として用いているため,絞りの入るような複雑な折り曲げは成形が困難であり,排気ガスに乱れを起こす場合でも,一部を切欠き邪魔板の役割をさせる程度であり,乱れを起こすのも限度がある。
【0008】
また,担体に担持させる触媒として,軽油,尿素等を還元剤とするNOX 選択還元触媒は,NOX 還元触媒の上流で軽油,尿素水を霧状に噴射し,排気ガスと混合し,NOX 還元触媒にてNOX を還元浄化するが,自動車に搭載する場合に,スペースが狭く,その結果,還元剤と排気ガスを完全に混合させることが極めて難しく,還元剤の分布が不均一になり,理論上のNOX 還元率より低下してしまうという問題がある。従来の排気ガス浄化装置では,PMの主成分である煤は,フィルタにより濾過されて燃焼するが,DPFを搭載した車両が渋滞路等で連続的に走行する場合に,エンジンの排気ガス温度は触媒によるPMの燃焼温度に達する頻度が極めて少なくなり,結果的に煤によりフィルタが閉塞し,それが排気管の閉塞となって車両が走行できなくなる可能性がある。更に,フィルタに堆積した煤が車両の走行状態により煤の燃焼温度を上回った時に,PMが急激に爆発的に燃焼し,DPFを破損したり,フィルタを溶損させたり,火災に発展する恐れがある。
【0009】
この発明の目的は,上記の問題を解決するため,排気ガス通路に異なる触媒を担持させた2個の担体を直列に配設し,高温から低温までの排気ガスに含まれるNOX を還元消失させ,また,担体に形成されるハニカム通路そのものを従来の構造と根本的に改良し,排気ガスがコージライトの壁面を横切って通過する又はコージライト,金属薄板で形成されたハニカム状通路に平行に流れるのではなく,金網を波板状帯体に成形した溝に沿って延びる屈折路又は平行路で形成されたハニカム通路に排気ガスを流し,排気ガスをハニカム通路の壁面に沿って接触させつつ通過させ,それによって排気ガス中のPM等の有害物質でフィルタの目詰まりや閉塞する現象を避け,PMがハニカム通路の壁面に衝突しつつ接触して壁面に捕集され,エンジン排気温度が上昇した時のエンジン排気熱でPMを加熱焼却又は触媒の助けで酸化・還元して消失させ,又はPMを屈折路に滞留又は捕集した位置でエンジン排気熱で燃焼又は触媒の助けで酸化還元消失させ,排気ガス中のPMの高い削減率を確保する排気ガス浄化装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は,排気ガス通路を形成するケース内に配設された担体を備えたフィルタに排気ガスを通して前記排気ガス中の粒子状物質,スート,NOX ,HC等の有害物質を燃焼や酸化・還元によって消失させて前記排気ガスを浄化する排気ガス浄化装置において,
前記担体が前記ケース内の排気ガス流れ方向に少なくとも2個直列に配設され,前記担体の上流には還元剤を前記排気ガス通路に供給する還元剤供給手段が設けられ,前記担体が金網を波板状に折り曲げて成形した波板状帯体を筒状に巻き上げて形成された柱状体から構成され,前記波板状帯体が前記柱状体の軸方向に対してジグザグな傾き状又はストレート状に平行に延びる多数の稜線と該稜線間の溝とを備えており,前記柱状体には前記溝に沿って多数のハニカム通路が形成されていることを特徴とする排気ガス浄化装置に関する。
【0011】
この排気ガス浄化装置は,前記フィルタにおける上流側の前記柱状体を構成する前記担体にはNOX 還元触媒が担持されており,下流側の前記柱状体を構成する前記担体には酸化触媒又はNOX 触媒が担持されている。更に,この排気ガス浄化装置は,前記フィルタにおける上流側の前記柱状体を構成する前記担体に担持された前記触媒として少なくとも銀を用い,下流側の前記柱状体を構成する前記担体に担持された前記触媒として少なくとも白金を用いている。
【0012】
この排気ガス浄化装置は,前記フィルタにおける下流側の前記柱状体を構成する前記担体は,前記稜線が前記柱状体の軸方向に傾き状に延びて前記排気ガス中の前記粒子状物質を捕集して焼却するものである。
【0013】
この排気ガス浄化装置において,前記柱状体は,前記稜線の傾き方向が互いに異なる状態に前記波板状帯体を重ね合わせて巻き上げるか,又は前記波板状帯体と前記金網を平らに成形した平板状帯体とを重ね合わせて巻き上げて形成されている。
【発明の効果】
【0014】
この排気ガス浄化装置は,上記のように構成されているので,排気ガスのハニカム通路と粒子状物質(以下,PMという)等の捕集部分とが区割され,担体がPM等で閉塞することがなく,PM捕集率として40%〜80%程度を常に確保することができ,また,ハニカム通路が屈折して金網自身がガス流に乱れを起こすため酸化・還元性能が良好に行われ,スート,HC,NOX 等の有害物質を触媒の助けで酸化・還元によって消失させることができる。ハニカム通路は金網であるので,排気ガスが隣り合うセルを若干通過し合うので,HC系の還元触媒が流入側で分布に濃淡があっても担体を通過するに従って混合が良好に行われ,濃淡が解消され,一層反応が促進されて浄化される。また,この排気ガス浄化装置は,上流側の担体には,金網に銀を主体とするNOX 触媒を担持することによって,400℃をピークにしたNOX を浄化でき,更に,下流側の担体には,金網に屈曲路を持つハニカム通路に形成してPM捕集機能を持つフィルタに構成するため,金網のメッシュ数を増やしたり,複数枚の金網を用いるものに構成できる。下流側の担体には,金網に白金を主体とした触媒を担持させることによって,捕集したPMの燃焼を促進させることができる。また,フィルタを構成する下流側の担体が白金系のNOX 還元触媒が担持されているので,PMの燃焼も促進できると共にNOX の還元も可能になる。特に,白金系のNOX 還元触媒は,200℃程度が還元率がピークであるため,上流側の担体に担持させた400℃ピークの銀系のNOX 還元触媒と組み合わせることで,200℃から500℃の範囲の高い範囲でNOX 還元性能を発揮させることができる。下流側の担体は,PM浄化も可能であるため,NOX とPMとの浄化を極めてコンパクトな触媒構成で達成できる。また,この排気ガス浄化装置は,従来の尿素を還元剤に用いるものではなく,システム構成がシンプルな炭化水素系還元剤を用いて低温から高温までのNOX 還元が可能になり,PMの捕集焼却が可能になり,担体を少なくとも2種類だけの触媒でシンプルにコンパクトに構成できる。
【0015】
この排気ガス浄化装置は,少なくとも波板状帯体が巻き上げられた柱状体に,溝によって形成したハニカム通路がジグザク状の屈折路や平行路に形成され,通路壁面が金網又は同等の金属製不織布によって凹凸状になっているので,排気ガスを凹凸壁に接触させて衝突させながら流し,排気ガス流れに細かい乱れを発生させ,排気ガスと壁面表面との接触が増大し,PM等の有害物質の捕集が有効になり,PMを捕捉してもハニカム通路は閉塞することなく,排気ガスを通過させることができる。帯体の金網のメッシュの仕様(線径,メッシュ数,枚数)を変更したり,波板状帯体に形成されるハニカム通路の断面形状,ジグザグ状の形状を変えることにより,PMの補修率を調整することができる。即ち,フィルタは,排気ガス中のPM等の有害物質が屈折路又は平行路の通路壁面に接触しつつ流れて加熱燃焼又は酸化・還元され,たとえ有害物質のうちPMが直ちに加熱燃焼や酸化燃焼せずにPMが壁面に滞留して捕集された状態であっても,通路壁面であってフィルタのハニカム通路そのものが閉塞することがなく,捕集されたPMが時間経過に従って加熱燃焼や酸化燃焼して消失し,PMの排気ガスからの除去率を40〜80%達成でき,排気ガスは常に長時間にわたってスムーズに通路を流れ,エンジン等の運転状態に悪影響を及ぼすことがない。この排気ガス浄化装置は,フィルタに屈折路や平行路が形成されて,ハニカム通路とPMの捕集部分とが別々であるため,ハニカム通路が閉塞することがなく,捕集されたPMは時間経過と共に触媒の助けで徐々に酸化燃焼消失,又はエンジン排気温度が高くなって排気熱により加熱燃焼又はNO2 により酸化消失することになり,排気ガス中のPMの捕集効率を向上させることができる。また,フィルタは,帯体を一対の凹凸成形具を通したり又は押圧成形のみで,簡単に稜線と該稜線間の溝とを成形することができ,波板状帯体の製造が容易であって安価であり,帯体は互いに絡み合っているので,必ずしも帯体同士を接合する必要がなくなる。しかも,この排気ガス浄化装置は,従来のようなステンレススチール製の薄板の代わりに,金網又は金属製不織布の帯体を用いてフィルタを形成するので,成形が容易であり,成形の自由度が大幅に改善される。例えば,フィルタを構成する従来の20〜30μmの薄板では伸び等はほとんど期待できないが,金網又は金属製不織布では自由度が高くなり,成形を簡単で安価に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
この発明による排気ガス浄化装置は,エンジン,バーナ,燃焼装置等から排気される排気ガスに含まれる粒子状物質(以下,PM),スート,HC,NOX 等の有害物質を燃焼,酸化還元反応させて消失除去して浄化するのに適したものである。この排気ガス浄化装置は,例えば,排気ガスに含まれるPMを酸化反応させ,又はエンジン排気温度が高温になった時にエンジン排気熱で加熱燃焼させて排気ガスを浄化するのに適している。
【0017】
以下,図面を参照して,この発明による排気ガス浄化装置について説明する。この排気ガス浄化装置は,排気ガス通路19を形成するケース2内に配設されたフィルタ20(総称)に排気ガスGを通して排気ガス中のPM,スート,NOX ,HC等の有害物質を燃焼や酸化・還元によって消失させて排気ガスを浄化するものであり,特に,フィルタ20が金網を波板状に折り曲げて成形された波板状帯体3を筒状に巻き上げ又は積層して構成された柱状体4から構成され,柱状体4の担体1がケース2内の排気ガス流れ方向に少なくとも2個直列に配設され,波板状帯体3が柱状体4の軸方向に傾き状又はストレート状に平行に延びる多数の稜線7と該稜線7間の溝6から構成され,柱状体4には溝6に沿って多数のハニカム通路5が形成されている。更に,この排気ガス浄化装置は,フィルタ20の上流にはHC系の還元剤を排気ガス通路19に供給する還元剤供給手段30が配置されている。この排気ガス浄化装置は,排気ガスGが帯体8間の溝6に沿って形成されたハニカム通路5を通過する際に,排気ガスG中の有害物質が帯体8に接触しつつ乱れとなって流れて燃焼或いは酸化・還元反応して,水,二酸化炭素,窒素へ変換され消失させることを特徴としている。
【0018】
この排気ガス浄化装置において,担体1(総称)は,図6〜図8に示すように,金網から成る帯体8を成形した波板状帯体3と平板状帯体13とを交互に配置して渦巻き状即ち螺旋状に巻き上げ又は積層して形成した構造の柱状体4に構成するか,又は,図9〜図14に示すように,波板状帯体3同士を稜線7の傾き方向が互いに異なる状態に波板状帯体3を重ね合わせて渦巻き状即ち螺旋状に巻き上げ又は積層して形成した構造の柱状体4に構成することができる。或いは,柱状体4は,波板状帯体3単独を渦巻き状即ち螺旋状に巻き上げ又は積層して形成した構造に構成することができる。いずれのタイプの柱状体4でも,波板状帯体3の溝6に沿って柱状体4の一端面の流入口9から他端面の流出口10へ連通した多数のハニカム通路5が形成されている。柱状体4は,全体として,円筒,角筒等の筒体に形成されている。ハニカム通路5は,端部が封止されておらず,一端面の流入口9から他端面の流出口10へ連通してストレート又はジグザグに延びる多数のハニカム構造に形成されている。この排気ガス浄化装置では,図1又は図2に示すストレートなハニカム通路5を備えた担体1Aは,HC,NOX 等の有害物質を浄化するのに適しており,また,図1〜図4に示すジグザグに屈折したハニカム通路5を備えた担体1Bは,HC,NOX に加えてPM18等の有害物質を浄化するのに適している。
【0019】
この排気ガス浄化装置は,図1と図2の排気ガス通路19の上流側には,担体1Aを構成する柱状体4がケース2内に配設され,下流側には,担体1Bを構成する柱状体4がケース2内に配設されている。ケース2は,例えば,排気管の途中に配設されるものであり,ケース2の端部を排気管にケース2を連結して配設することができる。また,図3と図4には,排気ガス通路19の上下流に担体1Bを構成する柱状体4がケース2内に配設されている。担体1Aは,波板状帯体3に成形された稜線7を柱状体4の軸に対して平行に延びて形成されており,波板状帯体3の溝6に沿って形成されるハニカム通路5がストレートな平行路17に形成される。また,担体1Bは,波板状帯体3に成形された稜線7を柱状体4の軸に対して傾きを持って形成されており,波板状帯体3の溝6に沿って形成されるハニカム通路5は傾斜した屈折路16に形成されている。
【0020】
図1には,第1実施例である排気管に配設される2種類の担体1A,1Bで構成されたフィルタ20Aが示されている。フィルタ20Aは,排気管の排気ガスGの流れ方向に担体1Aと担体1Bとが流れに直列に配設されて組み込まれる。フィルタ20Aは,ケース2,ケース2内に配設された2個の柱状体4,及び柱状体4の上流に配設されたHC系の還元剤を前記排気ガス通路に供給するHC供給手段30から構成されている。フィルタ20Aは,排気ガス通路19の上流側にストレートガス通路14に形成された担体1Aが配設され,下流側に一端面の流入口9から他端面の流出口10へ貫通してジグザグガス通路15に形成された担体1Bが配設されている。また,担体1Aと担体1Bとを構成する柱状体4をケース2にそれぞれ固定するため,ケース2内の上下流側に位置する柱状体4の端面に,係止部材11をケース2に溶着することによって柱状体4をケース2内にそれぞれ固定することができる。また,図2には,第2実施例である排気管に配設される担体1A,1Bで構成されたフィルタ20Bが示されている。フィルタ20Bは,排気管の排気ガスGの流れ方向に直列に担体1A,1Bがそれぞれ配設されて組み込まれる。フィルタ20Bは,フィルタ20Aと同様に,ケース2,ケース2内に配設された2個の柱状体4,及び柱状体4の上流に配設されたHC系の還元剤を前記排気ガス通路に供給するHC供給手段30から構成され,排気ガス通路19の上流側にストレートガス通路14に形成された担体1Aが配設され,下流側にジグザグガス通路15に形成された担体1Bが配設されている。図3には,第3実施例である排気管に配設される2個の担体1Bで構成されたフィルタ20Cが示されている。フィルタ20Cは,排気管の排気ガスGの流れ方向に配設されて組み込まれる。フィルタ20Cは,ケース2,ケース2内に配設された2個の柱状体4,及び柱状体4の上流に配設されたHC系の還元剤を前記排気ガス通路に供給するHC供給手段30から構成されている。フィルタ20Cは,排気ガス通路19の上流側と下流側にジグザグガス通路15に形成されたジグザグガス通路15の担体1Bが配設されている。フィルタ20Cは,2個の柱状体4をケース2に固定するため,ケース2内の上下流側に位置する柱状体4の端面に,係止部材11をケース2に溶着することによって柱状体4をケース2内に固定することができる。また,図4には,第4実施例である排気管に配設される2個の担体1Bで構成されたフィルタ20Dが示されている。フィルタ20Dは,フィルタ20Cと同様に,ケース2,ケース2内に配設された2個の柱状体4,及び柱状体4の上流に配設されたHC系の還元剤を前記排気ガス通路に供給するHC供給手段30から構成されている。フィルタ20Dは,一端面の流入口9から他端面の流出口10へ貫通してジグザグガス通路15に形成される。フィルタ20Dは,2個の柱状体4をケース2に固定するため,柱状体4が位置するケース2の外周面を変形させて凹部12を形成してケース2に柱状体4を固定することができる。
【0021】
帯体8は,金網を各種の構成に織ったり,又は同等の機能を有する金属製不織布でもよいものである。波板状帯体3は,平らな帯体8を歯車状等の成形具によって幅方向に稜線7と稜線7間の溝6とに成形することによって形成でき,また,平板状帯体13は,帯体8を平らに成形して形成できる。また,柱状体4を形成する帯体8は,その表面に有害物質を酸化・還元させて消失させる触媒を担持しているが,機能によっては触媒を担持させないこともできる。帯体8は,金網で成形されて表面に多数の凹凸が形成され,凹凸表面に触媒が担持されているので,帯体8から成る担体1は,排気ガスGが帯体表面に接触する機会が増え,排気ガスGの高い浄化性能を発揮できる。排気ガスGは,担体1の帯体壁面の接触流れによって乱れ即ち乱流を起こし,排気ガスGと触媒との接触チャンスや接触時間が増大され,有害物質の酸化・還元が促進されることになる。担体1を構成する帯体8は,常時,低温と高温の繰り返しの熱応力を受けており,その上,温度分布も帯体8の場所によって異なっている。金網は,それぞれ非常に細いワイヤで構成されているため,熱分布による変形を柔軟に許容することができ,局部的な塑性変形等が起きないので,表面にコーティングされているセラミックス等は剥がれず耐久性も優れている。担体1は,排気ガスGの流れに乱れを起こすことにより,担体1の表面にコーティング等で担持された触媒との接触が大幅に増大され,担体1に担持された触媒の種類に無関係に浄化性能をアップでき,或いは従来のものと同等の浄化性能を得るのであれば,本発明は大幅に小型化することができる。
【0022】
また,波板状帯体3は,図示していないが,ジグザグの凹凸状の一対のロール型のプレス機等の成形具に通されるだけで,又はロール間で押圧されるのみで,稜線7と稜線7間の溝6とから成る波状に成形される。波板状帯体3の稜線7は,平行に延びる形状に,又は柱状体4の軸に対して傾きを持つ形状,具体的には,柱状体4の軸に対して流入口9から流出口10へとジグザグに成形具で成形されている。従って,担体1は,波板状帯体3の稜線7が平行に延びて溝6に沿って多数の平行路17を備えたもの,或いは波板状帯体3の稜線7が屈折して延びて溝6に沿って多数の屈折路16を備えたものに形成されている。また,柱状体4は,図16に示すように,稜線7の傾きが逆向きに延びるように互いにクロス即ち交差して重ねられた少なくとも2枚の波板状帯体3をセットとして螺旋状に巻き上げられている。図16には,2枚の金網帯3を積層した状態が示され,一方の波板状帯体3を実線で示し,他方の波板状帯体3を点線で示され,波板状帯体3の稜線7が互いに交差状態に積層された状態が示されている。或いは,図示していないが,波板状帯体3に成形された稜線7は,柱状体4の軸に対して所定の長さだけ傾きを持つ部分と所定の長さだけ平行に延びる部分とが交互に繰り返して形成することもできる。
【0023】
担体1を構成する波板状帯体3に形成した屈折路16では,図12に示すように,排気ガスGが矢印で示す方向に流れる。担体1は,図12〜図14に示されるように,排気ガスGが波板状帯体3間に形成された屈折路16を通過する際に,排気ガス中のPM18は,波板状帯体3に接触しつつ流れ又は稜線7間の溝6で形成される屈折路16の屈折部分等の領域で一旦滞留し,そこで徐々にPM18が酸化燃焼して焼却される。排気ガスGに含まれたPM18は,排気ガスGと共に屈折路16を流れるに従って波板状帯体3の帯体壁面に接触しつつ流れて帯体8の金網に担持されている触媒の助けで消失されるが,PM18の一部は屈折路16の屈折部分等の領域で一旦滞留し,そこで,排気ガス温度が高くなって排気熱で加熱焼却又はNO2 により酸化消失し,或いは,徐々に触媒の助けで酸化燃焼して焼却されることになり,屈折路16は,PM18で閉塞されることなく,排気ガスGが常にスムーズに流れるように連通している。
【0024】
この排気ガス浄化装置は,図15では,(A)の(a)が断面図,(b)が平面図であり,ガス流速が遅い場合の排気ガスGの流れを示している。また,図15では,(B)の(a)は断面図,(b)は平面図であり,ガス流速が速い場合の排気ガスGの流れを示している。図15に示すように,排気ガスGの流速が速いほど,排気ガスGはフィルタ20の筒内に平行に流れようとするので,排気ガスGの流れに僅かな角度即ち屈折路16を与えることにより,排気ガスGに含まれるPMをハニカム通路5を形成する金網の壁面に付着させながら流れるからであり,ガス流速が速い場合は遅い場合よりはるかに筒内で平行して流れる特性が強くなり,その結果,ハニカム通路5の壁を構成する金網を突き抜けて流れ,PMを壁に付着させてPMを除去する特性が弱まり,PM浄化率が小さくなるからである。同様に,ガス流速が小さい場合にはガス流速が高い場合の逆の特性になる。この排気ガス浄化装置では,波板状帯体3の稜線7は,柱状体4の軸に対してジグザグの傾きの角度が同一又は異なっており,その範囲は柱状体4の軸に対してほぼ10°〜50°の角度に傾いて,ハニカム通路5の傾斜路である屈折路16に形成されている。また,柱状体4は,筒状ケース2内に複数個直列に配設され,柱状体4の波板状帯体3の稜線7の傾き角度は,排気ガスGの上流側と下流側とで同一又は異なっているものである。ハニカム通路5での排気ガスGの流れを考慮すると,稜線7の傾き角度は10°〜50°であることが好ましい。
【0025】
担体1に担持させた触媒は,三元触媒,酸化触媒,NOX 還元触媒(NOX 選択還元触媒)を用いることができる。本発明は,三元触媒,酸化触媒,NOX 還元触媒のいずれの触媒を用いても,浄化性能を大幅に向上させることができ,従来の担体と同等の浄化性能を確保するのであれば,大幅に小形化でき,低コストに製造することができる。担体1に担持させる触媒について,図5に示すように,白金系のNOX 還元触媒は,200℃程度が還元率がピークであるため,上流側の担体に担持させた400℃ピークの銀系のNOX 還元触媒と組み合わせることで,200℃から400℃の範囲の高い範囲でNOX 還元性能を発揮させることができる。また,HCの還元剤を用いるNOX 還元触媒は,排気ガスGと排気ガスGに混合された還元剤を均一に混合することが極めて重要である。車両に搭載する浄化システムの場合は,極めて狭いスペースにおいて排気ガスGと還元剤を均一に分散,混合させる必要がある。従来の担体では排気ガスGに対する還元剤の濃淡が生じて困難なことであるが,本発明のフィルタ20は金網で作製されているので,分散混合がスムーズに達成される。この排気ガス浄化装置は,PMを捕集することを目的の1つに構成しているが,その他,NOX 還元触媒をフィルタ20に担持することもできる。軽油を還元剤として用いるNOX 還元触媒は,触媒として白金,銀等を用いる場合が多い。これらの場合には,PMを燃焼させる効果を有するので,フィルタ20にNOX 還元触媒を担持することで,PMを捕集燃焼させて浄化することと同時に,NOX 浄化を行い,それによって,この排気ガス浄化装置をNOX ,PMを同時に浄化する機能を持たせることができる。この排気ガス浄化装置は,フィルタ20にゼオライト等を用いたNOX 還元触媒を担持することもでき,この場合もNOX 浄化とPM捕集浄化を同時に同じフィルタ20で行うことができ,装置そのものを小形化し,低コスト化が達成できる。また,従来のセラミックスハニカムやメタルハニカムの担体は,排気ガスの入口から入った排気ガスがいずれか1つのセルの中を流れ,隣のセルの排気ガスとは混ざることがなく,担体の出口に到達する。しかしながら,本発明の担体1は,1つのセルは流入口9から流出口10までストレートに延びると共に,セルと隣接するセルとは金網の多孔を通じて連通しているので,排気ガスGが混合しながら流れて混合が促進され,それによって担体1の流入口9での還元剤の均一性が多少悪くても,排気ガスGが担体1を流れる間に排気ガスGと還元剤との混合が継続され,結果として,極めて高い浄化率を得ることができる。
【0026】
また,帯体8を構成する金網は,ステンレス鋼又は鉄クロムアルミ合金のワイヤから構成されている。また,帯体8を構成する金網のワイヤの線径は,0.03mm〜0.25mmであることが好ましく,また,波板状帯体3と平板状帯体13を構成する金網のメッシュは30〜200メッシュであることが好ましい。更に,担体1即ちフィルタ20は,少なくとも2枚の帯体8をセットとして波板状を成形する場合に,内側の帯体8の金網のメッシュを細かくし,外側の帯体8の金網のメッシュを粗くしたものである。帯体8の金網のメッシュは,帯体8の縦線と横線とのメッシュ数が異なっており,帯体8の縦線のメッシュ数が帯体8の横線のメッシュ数より多くなっている。この実施例では,帯体8の縦線のメッシュ数が30〜100メッシュであり,帯体8の横線のメッシュ数が60〜200メッシュになるように設定されている。言い換えれば,帯体8の縦線とは,帯体8の長手方向に延びるワイヤであり,帯体8の横線とは,帯体8の幅方向に延びるワイヤである。一般に,帯体8を形成する金網は,縦線と横線とで織り上げるが,金網を織るスピードは,横線のメッシュ数によって拘束される。横線のメッシュ数が多い場合には,織機で1回で織られる速度が遅くなり,即ち,織りの所要時間が長くなり,その結果,金網を織るための作業コストは高くなる。しかしながら,縦線のメッシュ数が多い場合には縦線を織機にセットする作業が若干多くなるが,横線のメッシュ数が少なくて済み,そのため,織りの所要時間が大幅に短くなり,織り作業効率が上がる。従って,金網の製造コストを低減するには,織機によって織る速度が速くなるように横線のメッシュ数を減らすことが有効である。一方,単位面積当たりの表面積は,例えば,縦糸が80メッシュと横糸が80メッシュから成る金網と,縦糸が120メッシュと横糸が40メッシュから成る金網とは,等しくなって担体1の性能も同様になる。
【0027】
また,図7に示すように,波板状帯体3の稜線7と溝6とのサイズについて,稜線7間の即ち凸凹のピッチPは,1mm〜6mmに設定されることが好ましいものであり,ピッチPが1mm以下であるとハニカム通路5が狭過ぎてPM等が詰まる傾向になり,また,6mm以上であるとハニカム通路5が広過ぎて排気ガスGの触媒への接触が十分でなくなる。また,担体1の稜線7間のピッチPの大きさは,長手方向において同一又は変更することによってハニカム通路5の幅サイズを変更でき,排気ガスGの流れに好ましい乱れを発生させることができる。例えば,波板状帯体3について,ピッチPの大きさは,図示していないが,流れの上流側を大きく下流側を小さくなるものと逆にしたものとを交互に形成したり,又は長手方向に同一の大きさに形成することができる。波板状帯体3の稜線7のピッチを小さく形成するほどPMの捕集割合は高くなるが,一方,稜線7のピッチが小さすぎると,PMによるフィルタ20の詰まりが生じる場合がある。従って,この排気ガス浄化装置では,高い捕集率を得るためには,波板状帯体3を比較的にピッチの小さいものに作製し,部分的にピッチの大きいものを巻き込むことが有効になる。走行する上で,長時間にわたってPMが燃焼せずに,フィルタに堆積する場合でも,ピッチの大きな部分は閉塞することが無いので,多少エンジン出力は低下するが,走行に支障は発生しない。フィルタ20における波板状帯体3の稜線7のピッチを,上流側を大きく下流側を小さく形成したフィルタ壁と,上流側のピッチを小さく下流側のピッチを大きく形成したフィルタ壁とを交互に組み合わせると,排気ガスGの流れに対して排気ガスGの一部がフィルタ壁を通過する量を適切に調整することができ,PM捕集率を調整することができる。更に,波板状帯体3は,稜線7と溝6との波板の凸凹の高さHは,0.5mm〜5mmであることが好ましいものであり,高さHが0.5mm以下であるとハニカム通路5が低過ぎてPM等が詰まる傾向になり,また,5mm以上であるとハニカム通路5が高過ぎて排気ガスGの触媒への接触が十分でなくなる。フィルタ20は,稜線7間のピッチP及び稜線7と溝6との凸凹の高さHを調整することによって,屈折路16又は平行路17の大きさを調節することができ,排気ガスGの流れを調節できるものであり,エンジンの大きさや性能に対応してこれらのサイズを決定すればよい。
【0028】
担体1を構成する帯体8の金網には,アルミナ(Al2 O3 ),シリカ(SiO2 ),ジルコニア(ZrO2 ),セリア(CeO2 ),チタニア(TiO2 )の少なくとも1種以上のセラミックスがコーティングされている。即ち,担体1を構成する担体基材には,シリカ,アルミナ,セリア,チタニア,ジルコニアのいずれか一種又はそれらの少なくとも1種類を含む複合酸化物粉末が予め被覆されている。更に,帯体8の基材を被覆したセラミックスのコーティング層の表面には,白金(Pt),銀(Ag),カリウム(K),パラジウム(Pd),イリジウム(Ir),鉄(Fe),銅(Cu),バリウム(Ba),ルテニウム(Ru),ロジウム(Rh)の少なくとも1種類以上の酸化・還元触媒が担持されているものである。
【0029】
また,図17に示すように,担体1から成るフィルタ20は,過大な振動等の外力が負荷される環境,又は大きな熱応力を受ける環境で使用される場合には,フィルタ20を構成する波板状帯体3と平板状帯体13又は波板状帯体3同士は,分解や変形を阻止するためニッケルを主体としたロウ材で互いに接合することができる。フィルタ20は,600℃以上の高温下で使用される場合,波板状帯体3及び/又は平板状帯体13の帯体8同士をロウ材で接合することが,フィルタ20の帯体8の熱変形が抑制されて好ましいものである。例えば,フィルタ20の一方の端面25又は両端面25は,ロウ材で接合線23(総称は23)で互いに接合されている。具体的には,ロウ接部は,図17の(A)又は(B)に示すように,予め決められた幅を持って放射曲線状に延びる間欠的な線状の接合線23A,23B,又は図17の(C)に示すように,外周側に広くなった幅を持って放射曲線状に延びる接合線23Cになっている。図17の(A)では,帯体8の端面に付与する結合力を均等にするため外周側になるに従って接合線23Aを増大させた構成,即ち,最外周部には12本の接合線23A,中間部には8本の接合線23A,最内周部には4本の接合線23Aで接合されている。図17の(B)では,ロウ材の接合線23に不要な外力がかからない構成,即ち,接合線23Bにカット部24を形成して接合されている。更に,図17の(C)では,帯体8の端面に接合線23で付与する結合力を均等にするため,外周側になるに従って接合線23Cの太さ即ち幅を大きく形成している。更に,フィルタ20は,波板状帯体3の巻き上げ時に,重なる波板状帯体3の稜線7と帯体8とが接する予め決められた領域の部位にロウ材を塗布又はロウ材箔を配設して帯体8同士がロウ接されている。更に,帯体8同士がロウ接される予め決められた領域の部位は,フィルタ20を構成する隣接する帯体8間で柱状体4の軸方向で互いに位置ずれしていることが好ましい。
【0030】
本発明品の金網を用いた担体1から成るフィルタ20は,その柱状体4の筒体の両端面25をロウ付けするだけで熱応力に強い強度を得ることができる。金網は,ワイヤに着目するとあらゆる方向に対して柔軟であるため,接合部を両端のみとしても,機会応力,熱応力を受け難くなり,十分な強度のフィルタ20を得ることができる。即ち,担体1は,常時低温と高温とを繰り返し受けているが,更に温度分布も担体1の場所により異なっているが,フィルタ20は金網で作製されており,非常に細いワイヤで構成されているので,熱分布による変形を非常に柔軟に受け止めることができ,塑性変形等が起きない。従って,ロウ接合でも,接合部を分散させることで,担体の優れた特性を活かすことができる。フィルタ20の端面25をロウ付けする場合には,接合線23を担体筒体中心軸を通る放射曲線状に延ばすと,担体1がそのロウ接部分の剛性を高くするので,その放射曲線状のロウ接合部で拘束され,柔軟性が損なわれる。そこで,接合線23を放射曲線状に延ばす場合に,渦巻き状等の曲状に延ばすことにより外圧に対する抵抗力を弱めることができ,その場合に接合線23を所々で接合せずにカット部24を設けることによって一段と高い柔軟性を得ることができる。また,接合線23の面積を増大させることで,フィルタ20の強度が高くなる。触媒付きフィルタ20は,通常その前後で圧力が異なるため,所定の力を受けている。担体1は,該所定の力によってかかる担体1の剪断は,半径に比例して外周部の方が高くなるので,フィルタ20の端面25をロウ接合する場合は,外周ほど接合面積を増やすことが好ましい。また,波板状帯体3の金網は,完成時の柱状体4の軸方向に斜めに傾いて稜線7が存在しているので,帯体8を巻き上げた時に,ロウ材を塗布又はロウ箔を挟むには,帯体8同士が接する領域にロウ材又はロウ箔が位置するようにする。しかしながら,帯体8同士の接する領域は,常に変化するので,ロウ材を有効に機能させるためには,ジグザグ状の稜線7を画像で読み込み,帯体8を巻き上げた時に,帯体8同士が接する領域に適切にロウ材を位置させることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
この発明による排気ガス浄化装置は,エンジン,バーナ,ガス発生源等からの排気ガスを排気通路に配設したフィルタに通し,排気ガスに含まれる粒子状物質,スート,HC,NOX 等の有害物質を触媒の助けで燃焼させ,又は酸化・還元によって変換して消失させる排気ガスを浄化するもの,例えば,新車又は既存車のエンジン,特に,ディーゼルエンジンからの排気ガスを排出する排気管に配設されるフィルタに適用して好ましいものである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明による排気ガス浄化装置の第1実施例を示し,ケース内に担体の柱状体を直列に2個配設した状態で柱状体の両側端を係止部材でケースに固定した状態を示す説明図である。
【図2】この発明による排気ガス浄化装置の第2実施例を示し,ケース内に担体の柱状体を直列に2個配設した状態でケースが凹部で柱状体をケースに固定した状態を示す説明図である。
【図3】この発明による排気ガス浄化装置の第3実施例を示し,ケース内に担体の柱状体を直列に2個配設した状態で柱状体の両側端を係止部材でケースに固定した状態を示す説明図である。
【図4】この発明による排気ガス浄化装置の第4実施例を示し,ケース内に担体の柱状体を直列に2個配設した状態でケースが凹部で柱状体をケースに固定した状態を示す説明図である。
【図5】この排気ガス浄化装置における触媒について温度に対する効果のピーク時を示すグラフである。
【図6】この発明による排気ガス浄化装置における担体の一例であって,波板状帯体と平板状帯体とを重ね合わせて巻き上げて形成する工程を示す説明図である。
【図7】図6の担体を構成する波板状帯体と平板状帯体との重ね状態を示す正面図である。
【図8】図7の重ね帯体を螺旋状に巻き上げて形成した柱状体を示す正面図である。
【図9】この発明による排気ガス浄化装置における担体の別の例であって,稜線の傾き方向を互いに異なる方向に重ね合わせた波板状帯体を巻き上げて柱状体を形成する工程を示す斜視図である。
【図10】図9の波板状帯体を巻き上げた柱状体を示す正面図である。
【図11】図10の柱状体を示す側面図である。
【図12】図9の柱状体を構成する2枚の波板状帯体の稜線を交差状態に配設した状態を示す説明図である。
【図13】図12の柱状体のA−A断面を示す断面図である。
【図14】図12のB−B断面を示す断面図である。
【図15】柱状体の溝に沿って形成されたハニカム通路を排気ガスが流れる時の状態を示し,(A)は排気ガスの流速が遅い時の状態を示し,(B)は排気ガスの流速が速い時の状態を示す説明図である。
【図16】フィルタの柱状体を構成する2枚の帯体の稜線を交差して配設した状態を示す説明図である。
【図17】フィルタの端面において,帯体をロウ材で接合する状態を示し,(A)はフィルタの通路断面積に比例して数の箇所で接合した状態を示し,(B)はフィルタの中心部から外周部へ延びる接合部を分断した状態を示し,(C)はフィルタの中心部から外周部へ延びる接合部の接合面を増大させた状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0033】
1,1A,1B 担体
2 ケース
3 波板状帯体
4 柱状体
5 ハニカム通路
6 溝
7 稜線
8 帯体
9 流入口
10 流出口
11 係止部材
12 凹部
13 平板状帯体
14 ストレートガス通路
15 ジグザグガス通路
16 屈折路
17 平行路
18 粒子状物質(PM)
19 排気ガス通路
20,20A,20B,20C,20D フィルタ
30 還元剤供給手段
【技術分野】
【0001】
この発明は,エンジン,バーナ,ガス発生源等からの排気ガスを排気ガス通路に配設したフィルタに通し,排気ガスに含まれる粒子状物質,スート,HC,NOX 等の有害物質を触媒等の助けで燃焼させ又は酸化・還元反応て消失させ,排気ガスを浄化する排気ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来,ディーゼルエンジンは,その熱効率が高いことからトラック,船等に多く用いられており,近年,CO2 の排出量の最も少ない原動機として見直され,乗用車にも採用が増え続けている。最近では,ディーゼルパティキュレートフイルタ(以下,DPFという)は多くの車両に搭載され,DPFのコージライトや炭化珪素のセラミックハニカムに粒子状物質(以下,PMという)を捕集して触媒の助けで低温燃焼させて焼却し,排気ガスを浄化するようになった。また,排気ガス中に含まれるPMについて,その組成のほとんどが未燃焼のカーボン又は重質油の炭化水素であるので,DPFを用いて未燃焼の燃料を完全に燃焼させさえすれば,微粒子として排出されることがない。通常,フィルタに担持された触媒は,300℃前後から煤を燃焼させるか,又は排気ガス中のNOをNO2 に酸化させ, そのNO2 を活用するものであり,300℃以下でPMを燃焼させる技術等が最も低温で煤を燃焼させるものであると言われている。
【0003】
一方,都市部の大気をクリンにするためには,新車は勿論であるが,既に市販された自動車の排気ガスを浄化することが不可欠となり,そのような観点からDPFを自動車に搭載することが積極的に進められている。しかしながら,現在使用されている既存車で,DPFを導入する場合,コモンレール等の排気温度を容易に制御できる装置を適用することができないこと,また,最新の新車にDPFを用いる場合に,エンジン駆動と関連して総合的に制御できないためDPFが正常に作動しない場合が多い。排気ガス浄化の用途に用いることのできるフィルタとして,近年,金属製薄板と金属製不織布を複合させたものが使われ始めている。該フィルタは,金属製薄板のガイドで排気ガスを金属不織布に衝突させてPMを捕集しており,フィルタの構造が複雑であり,製造費用が高いこと,PM低減率が40〜50%が限度であってそれ以上高くできない難点があった。
【0004】
また,従来の排気ガス浄化装置は,ディーゼルエンジンから排出される排気ガスに含まれる煤状粒子の排出物を低減又は除去するものであり,NOをNO2 に酸化するのに有効な第1触媒,及び炭化水素,一酸化炭素,揮発性有機物成分を酸化させるのに有効な第2触媒を有し,各々の触媒がハニカム型の流通モノリス上に担持され,第2触媒モノリスの上又は中に捕獲された煤状粒子が第1触媒からのNO2 含有ガスの中で燃焼され,第1触媒の担体として使用されるモノリスは煤状粒子の捕集を最小限度に抑えるものである(例えば,特許文献1参照)。
【0005】
また,ディーゼルエンジンの排ガスを浄化する排ガスフィルタとして,1つの帯状フィルタ層から成るものが知られており,該排ガスフィルタは,少なくとも部分的に流体が貫流できる材料から成る少なくとも1つのフィルタ部を備えた帯状フィルタ層と金属箔とからなり,フィルタ層が排ガスの気体成分を転換するための触媒活性被覆を備えた少なくとも1つの接触部と排ガスから粒子を濾過除去するためのフィルタ部とを備えている(例えば,特許文献2参照)。
【0006】
また,加熱要素付きの排気ガス浄化装置としては,外被管内に配置されて排気ガスで貫流されるハニカム構造の触媒担体と電気加熱要素とを有し,加熱要素が両端に電気接続端子を有し,加熱要素内に電気絶縁用の隙間によって曲がりくねった流路が規定されており,加熱要素がハニカム体であり,ハニカム体が電気絶縁支持要素により触媒単体に固定され,ハニカム体が排気ガスの流れ方向において触媒担体の下流に配置されている(例えば,特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平10―159552号公報
【特許文献2】特表2005−534487号公報
【特許文献3】特表2003−509620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで,ディーゼルエンジンは,圧縮着火エンジンであるため,NOX や粒子状物質(PM)が排気ガスに含まれている。ディーゼルエンジンでは,NOX とPMとの浄化はトレードオフ関係にあり,両者の低減は難しく,また,ディーゼルエンジンは,排気ガス中の酸素濃度が高いため,ガソリンエンジンで有効な三元触媒によるNOX の低減が難しい。更に,PMの主成分である煤は,酸化温度が高いため特殊な低減装置が必要になる。また,NOをNO2 に酸化させることを活用する排ガス浄化装置は,NOX の排出量の絶対値が減少してきている状況においては,生成するNO2 量が減少することになり,その効果も制限されてきた。また,DPFとしては,コージライトセラミックス,炭化珪素セラミックスのハニカムを用いてPMを濾過し,フィルタに堆積したPMをフィルタに担持した触媒により低温で燃焼させるものが有効であり,多くの車両に搭載されるようになった。DPFには,コージライト製ハニカム,金属製ハニカム等にアルミナ等をコーティングし,酸化触媒を担持したり,NOX 還元触媒を担持して用いている。勿論,担体は,表面積が大きい方が排気ガスとの接触が多くなり高い性能が得られる。従来のコージライトが安価であるので,多く用いられているが,最近では,20〜30ミクロンのステンレススチールを波板状に折り曲げ,平板と交互に重ねて巻き上げた金属ハニカムが,板圧がコージライトに比較して薄いので,圧力損失が小さいということで用いられるようになった。更に,金属ハニカムには,その表面に段付きとして乱流を起こし,排気ガスとの接触機会を増やし,性能向上を図るものが知られている。金属ハニカムは,平板と波板とを交互に重ねて巻き上げるが,金属製薄板を素材として用いているため,絞りの入るような複雑な折り曲げは成形が困難であり,排気ガスに乱れを起こす場合でも,一部を切欠き邪魔板の役割をさせる程度であり,乱れを起こすのも限度がある。
【0008】
また,担体に担持させる触媒として,軽油,尿素等を還元剤とするNOX 選択還元触媒は,NOX 還元触媒の上流で軽油,尿素水を霧状に噴射し,排気ガスと混合し,NOX 還元触媒にてNOX を還元浄化するが,自動車に搭載する場合に,スペースが狭く,その結果,還元剤と排気ガスを完全に混合させることが極めて難しく,還元剤の分布が不均一になり,理論上のNOX 還元率より低下してしまうという問題がある。従来の排気ガス浄化装置では,PMの主成分である煤は,フィルタにより濾過されて燃焼するが,DPFを搭載した車両が渋滞路等で連続的に走行する場合に,エンジンの排気ガス温度は触媒によるPMの燃焼温度に達する頻度が極めて少なくなり,結果的に煤によりフィルタが閉塞し,それが排気管の閉塞となって車両が走行できなくなる可能性がある。更に,フィルタに堆積した煤が車両の走行状態により煤の燃焼温度を上回った時に,PMが急激に爆発的に燃焼し,DPFを破損したり,フィルタを溶損させたり,火災に発展する恐れがある。
【0009】
この発明の目的は,上記の問題を解決するため,排気ガス通路に異なる触媒を担持させた2個の担体を直列に配設し,高温から低温までの排気ガスに含まれるNOX を還元消失させ,また,担体に形成されるハニカム通路そのものを従来の構造と根本的に改良し,排気ガスがコージライトの壁面を横切って通過する又はコージライト,金属薄板で形成されたハニカム状通路に平行に流れるのではなく,金網を波板状帯体に成形した溝に沿って延びる屈折路又は平行路で形成されたハニカム通路に排気ガスを流し,排気ガスをハニカム通路の壁面に沿って接触させつつ通過させ,それによって排気ガス中のPM等の有害物質でフィルタの目詰まりや閉塞する現象を避け,PMがハニカム通路の壁面に衝突しつつ接触して壁面に捕集され,エンジン排気温度が上昇した時のエンジン排気熱でPMを加熱焼却又は触媒の助けで酸化・還元して消失させ,又はPMを屈折路に滞留又は捕集した位置でエンジン排気熱で燃焼又は触媒の助けで酸化還元消失させ,排気ガス中のPMの高い削減率を確保する排気ガス浄化装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は,排気ガス通路を形成するケース内に配設された担体を備えたフィルタに排気ガスを通して前記排気ガス中の粒子状物質,スート,NOX ,HC等の有害物質を燃焼や酸化・還元によって消失させて前記排気ガスを浄化する排気ガス浄化装置において,
前記担体が前記ケース内の排気ガス流れ方向に少なくとも2個直列に配設され,前記担体の上流には還元剤を前記排気ガス通路に供給する還元剤供給手段が設けられ,前記担体が金網を波板状に折り曲げて成形した波板状帯体を筒状に巻き上げて形成された柱状体から構成され,前記波板状帯体が前記柱状体の軸方向に対してジグザグな傾き状又はストレート状に平行に延びる多数の稜線と該稜線間の溝とを備えており,前記柱状体には前記溝に沿って多数のハニカム通路が形成されていることを特徴とする排気ガス浄化装置に関する。
【0011】
この排気ガス浄化装置は,前記フィルタにおける上流側の前記柱状体を構成する前記担体にはNOX 還元触媒が担持されており,下流側の前記柱状体を構成する前記担体には酸化触媒又はNOX 触媒が担持されている。更に,この排気ガス浄化装置は,前記フィルタにおける上流側の前記柱状体を構成する前記担体に担持された前記触媒として少なくとも銀を用い,下流側の前記柱状体を構成する前記担体に担持された前記触媒として少なくとも白金を用いている。
【0012】
この排気ガス浄化装置は,前記フィルタにおける下流側の前記柱状体を構成する前記担体は,前記稜線が前記柱状体の軸方向に傾き状に延びて前記排気ガス中の前記粒子状物質を捕集して焼却するものである。
【0013】
この排気ガス浄化装置において,前記柱状体は,前記稜線の傾き方向が互いに異なる状態に前記波板状帯体を重ね合わせて巻き上げるか,又は前記波板状帯体と前記金網を平らに成形した平板状帯体とを重ね合わせて巻き上げて形成されている。
【発明の効果】
【0014】
この排気ガス浄化装置は,上記のように構成されているので,排気ガスのハニカム通路と粒子状物質(以下,PMという)等の捕集部分とが区割され,担体がPM等で閉塞することがなく,PM捕集率として40%〜80%程度を常に確保することができ,また,ハニカム通路が屈折して金網自身がガス流に乱れを起こすため酸化・還元性能が良好に行われ,スート,HC,NOX 等の有害物質を触媒の助けで酸化・還元によって消失させることができる。ハニカム通路は金網であるので,排気ガスが隣り合うセルを若干通過し合うので,HC系の還元触媒が流入側で分布に濃淡があっても担体を通過するに従って混合が良好に行われ,濃淡が解消され,一層反応が促進されて浄化される。また,この排気ガス浄化装置は,上流側の担体には,金網に銀を主体とするNOX 触媒を担持することによって,400℃をピークにしたNOX を浄化でき,更に,下流側の担体には,金網に屈曲路を持つハニカム通路に形成してPM捕集機能を持つフィルタに構成するため,金網のメッシュ数を増やしたり,複数枚の金網を用いるものに構成できる。下流側の担体には,金網に白金を主体とした触媒を担持させることによって,捕集したPMの燃焼を促進させることができる。また,フィルタを構成する下流側の担体が白金系のNOX 還元触媒が担持されているので,PMの燃焼も促進できると共にNOX の還元も可能になる。特に,白金系のNOX 還元触媒は,200℃程度が還元率がピークであるため,上流側の担体に担持させた400℃ピークの銀系のNOX 還元触媒と組み合わせることで,200℃から500℃の範囲の高い範囲でNOX 還元性能を発揮させることができる。下流側の担体は,PM浄化も可能であるため,NOX とPMとの浄化を極めてコンパクトな触媒構成で達成できる。また,この排気ガス浄化装置は,従来の尿素を還元剤に用いるものではなく,システム構成がシンプルな炭化水素系還元剤を用いて低温から高温までのNOX 還元が可能になり,PMの捕集焼却が可能になり,担体を少なくとも2種類だけの触媒でシンプルにコンパクトに構成できる。
【0015】
この排気ガス浄化装置は,少なくとも波板状帯体が巻き上げられた柱状体に,溝によって形成したハニカム通路がジグザク状の屈折路や平行路に形成され,通路壁面が金網又は同等の金属製不織布によって凹凸状になっているので,排気ガスを凹凸壁に接触させて衝突させながら流し,排気ガス流れに細かい乱れを発生させ,排気ガスと壁面表面との接触が増大し,PM等の有害物質の捕集が有効になり,PMを捕捉してもハニカム通路は閉塞することなく,排気ガスを通過させることができる。帯体の金網のメッシュの仕様(線径,メッシュ数,枚数)を変更したり,波板状帯体に形成されるハニカム通路の断面形状,ジグザグ状の形状を変えることにより,PMの補修率を調整することができる。即ち,フィルタは,排気ガス中のPM等の有害物質が屈折路又は平行路の通路壁面に接触しつつ流れて加熱燃焼又は酸化・還元され,たとえ有害物質のうちPMが直ちに加熱燃焼や酸化燃焼せずにPMが壁面に滞留して捕集された状態であっても,通路壁面であってフィルタのハニカム通路そのものが閉塞することがなく,捕集されたPMが時間経過に従って加熱燃焼や酸化燃焼して消失し,PMの排気ガスからの除去率を40〜80%達成でき,排気ガスは常に長時間にわたってスムーズに通路を流れ,エンジン等の運転状態に悪影響を及ぼすことがない。この排気ガス浄化装置は,フィルタに屈折路や平行路が形成されて,ハニカム通路とPMの捕集部分とが別々であるため,ハニカム通路が閉塞することがなく,捕集されたPMは時間経過と共に触媒の助けで徐々に酸化燃焼消失,又はエンジン排気温度が高くなって排気熱により加熱燃焼又はNO2 により酸化消失することになり,排気ガス中のPMの捕集効率を向上させることができる。また,フィルタは,帯体を一対の凹凸成形具を通したり又は押圧成形のみで,簡単に稜線と該稜線間の溝とを成形することができ,波板状帯体の製造が容易であって安価であり,帯体は互いに絡み合っているので,必ずしも帯体同士を接合する必要がなくなる。しかも,この排気ガス浄化装置は,従来のようなステンレススチール製の薄板の代わりに,金網又は金属製不織布の帯体を用いてフィルタを形成するので,成形が容易であり,成形の自由度が大幅に改善される。例えば,フィルタを構成する従来の20〜30μmの薄板では伸び等はほとんど期待できないが,金網又は金属製不織布では自由度が高くなり,成形を簡単で安価に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
この発明による排気ガス浄化装置は,エンジン,バーナ,燃焼装置等から排気される排気ガスに含まれる粒子状物質(以下,PM),スート,HC,NOX 等の有害物質を燃焼,酸化還元反応させて消失除去して浄化するのに適したものである。この排気ガス浄化装置は,例えば,排気ガスに含まれるPMを酸化反応させ,又はエンジン排気温度が高温になった時にエンジン排気熱で加熱燃焼させて排気ガスを浄化するのに適している。
【0017】
以下,図面を参照して,この発明による排気ガス浄化装置について説明する。この排気ガス浄化装置は,排気ガス通路19を形成するケース2内に配設されたフィルタ20(総称)に排気ガスGを通して排気ガス中のPM,スート,NOX ,HC等の有害物質を燃焼や酸化・還元によって消失させて排気ガスを浄化するものであり,特に,フィルタ20が金網を波板状に折り曲げて成形された波板状帯体3を筒状に巻き上げ又は積層して構成された柱状体4から構成され,柱状体4の担体1がケース2内の排気ガス流れ方向に少なくとも2個直列に配設され,波板状帯体3が柱状体4の軸方向に傾き状又はストレート状に平行に延びる多数の稜線7と該稜線7間の溝6から構成され,柱状体4には溝6に沿って多数のハニカム通路5が形成されている。更に,この排気ガス浄化装置は,フィルタ20の上流にはHC系の還元剤を排気ガス通路19に供給する還元剤供給手段30が配置されている。この排気ガス浄化装置は,排気ガスGが帯体8間の溝6に沿って形成されたハニカム通路5を通過する際に,排気ガスG中の有害物質が帯体8に接触しつつ乱れとなって流れて燃焼或いは酸化・還元反応して,水,二酸化炭素,窒素へ変換され消失させることを特徴としている。
【0018】
この排気ガス浄化装置において,担体1(総称)は,図6〜図8に示すように,金網から成る帯体8を成形した波板状帯体3と平板状帯体13とを交互に配置して渦巻き状即ち螺旋状に巻き上げ又は積層して形成した構造の柱状体4に構成するか,又は,図9〜図14に示すように,波板状帯体3同士を稜線7の傾き方向が互いに異なる状態に波板状帯体3を重ね合わせて渦巻き状即ち螺旋状に巻き上げ又は積層して形成した構造の柱状体4に構成することができる。或いは,柱状体4は,波板状帯体3単独を渦巻き状即ち螺旋状に巻き上げ又は積層して形成した構造に構成することができる。いずれのタイプの柱状体4でも,波板状帯体3の溝6に沿って柱状体4の一端面の流入口9から他端面の流出口10へ連通した多数のハニカム通路5が形成されている。柱状体4は,全体として,円筒,角筒等の筒体に形成されている。ハニカム通路5は,端部が封止されておらず,一端面の流入口9から他端面の流出口10へ連通してストレート又はジグザグに延びる多数のハニカム構造に形成されている。この排気ガス浄化装置では,図1又は図2に示すストレートなハニカム通路5を備えた担体1Aは,HC,NOX 等の有害物質を浄化するのに適しており,また,図1〜図4に示すジグザグに屈折したハニカム通路5を備えた担体1Bは,HC,NOX に加えてPM18等の有害物質を浄化するのに適している。
【0019】
この排気ガス浄化装置は,図1と図2の排気ガス通路19の上流側には,担体1Aを構成する柱状体4がケース2内に配設され,下流側には,担体1Bを構成する柱状体4がケース2内に配設されている。ケース2は,例えば,排気管の途中に配設されるものであり,ケース2の端部を排気管にケース2を連結して配設することができる。また,図3と図4には,排気ガス通路19の上下流に担体1Bを構成する柱状体4がケース2内に配設されている。担体1Aは,波板状帯体3に成形された稜線7を柱状体4の軸に対して平行に延びて形成されており,波板状帯体3の溝6に沿って形成されるハニカム通路5がストレートな平行路17に形成される。また,担体1Bは,波板状帯体3に成形された稜線7を柱状体4の軸に対して傾きを持って形成されており,波板状帯体3の溝6に沿って形成されるハニカム通路5は傾斜した屈折路16に形成されている。
【0020】
図1には,第1実施例である排気管に配設される2種類の担体1A,1Bで構成されたフィルタ20Aが示されている。フィルタ20Aは,排気管の排気ガスGの流れ方向に担体1Aと担体1Bとが流れに直列に配設されて組み込まれる。フィルタ20Aは,ケース2,ケース2内に配設された2個の柱状体4,及び柱状体4の上流に配設されたHC系の還元剤を前記排気ガス通路に供給するHC供給手段30から構成されている。フィルタ20Aは,排気ガス通路19の上流側にストレートガス通路14に形成された担体1Aが配設され,下流側に一端面の流入口9から他端面の流出口10へ貫通してジグザグガス通路15に形成された担体1Bが配設されている。また,担体1Aと担体1Bとを構成する柱状体4をケース2にそれぞれ固定するため,ケース2内の上下流側に位置する柱状体4の端面に,係止部材11をケース2に溶着することによって柱状体4をケース2内にそれぞれ固定することができる。また,図2には,第2実施例である排気管に配設される担体1A,1Bで構成されたフィルタ20Bが示されている。フィルタ20Bは,排気管の排気ガスGの流れ方向に直列に担体1A,1Bがそれぞれ配設されて組み込まれる。フィルタ20Bは,フィルタ20Aと同様に,ケース2,ケース2内に配設された2個の柱状体4,及び柱状体4の上流に配設されたHC系の還元剤を前記排気ガス通路に供給するHC供給手段30から構成され,排気ガス通路19の上流側にストレートガス通路14に形成された担体1Aが配設され,下流側にジグザグガス通路15に形成された担体1Bが配設されている。図3には,第3実施例である排気管に配設される2個の担体1Bで構成されたフィルタ20Cが示されている。フィルタ20Cは,排気管の排気ガスGの流れ方向に配設されて組み込まれる。フィルタ20Cは,ケース2,ケース2内に配設された2個の柱状体4,及び柱状体4の上流に配設されたHC系の還元剤を前記排気ガス通路に供給するHC供給手段30から構成されている。フィルタ20Cは,排気ガス通路19の上流側と下流側にジグザグガス通路15に形成されたジグザグガス通路15の担体1Bが配設されている。フィルタ20Cは,2個の柱状体4をケース2に固定するため,ケース2内の上下流側に位置する柱状体4の端面に,係止部材11をケース2に溶着することによって柱状体4をケース2内に固定することができる。また,図4には,第4実施例である排気管に配設される2個の担体1Bで構成されたフィルタ20Dが示されている。フィルタ20Dは,フィルタ20Cと同様に,ケース2,ケース2内に配設された2個の柱状体4,及び柱状体4の上流に配設されたHC系の還元剤を前記排気ガス通路に供給するHC供給手段30から構成されている。フィルタ20Dは,一端面の流入口9から他端面の流出口10へ貫通してジグザグガス通路15に形成される。フィルタ20Dは,2個の柱状体4をケース2に固定するため,柱状体4が位置するケース2の外周面を変形させて凹部12を形成してケース2に柱状体4を固定することができる。
【0021】
帯体8は,金網を各種の構成に織ったり,又は同等の機能を有する金属製不織布でもよいものである。波板状帯体3は,平らな帯体8を歯車状等の成形具によって幅方向に稜線7と稜線7間の溝6とに成形することによって形成でき,また,平板状帯体13は,帯体8を平らに成形して形成できる。また,柱状体4を形成する帯体8は,その表面に有害物質を酸化・還元させて消失させる触媒を担持しているが,機能によっては触媒を担持させないこともできる。帯体8は,金網で成形されて表面に多数の凹凸が形成され,凹凸表面に触媒が担持されているので,帯体8から成る担体1は,排気ガスGが帯体表面に接触する機会が増え,排気ガスGの高い浄化性能を発揮できる。排気ガスGは,担体1の帯体壁面の接触流れによって乱れ即ち乱流を起こし,排気ガスGと触媒との接触チャンスや接触時間が増大され,有害物質の酸化・還元が促進されることになる。担体1を構成する帯体8は,常時,低温と高温の繰り返しの熱応力を受けており,その上,温度分布も帯体8の場所によって異なっている。金網は,それぞれ非常に細いワイヤで構成されているため,熱分布による変形を柔軟に許容することができ,局部的な塑性変形等が起きないので,表面にコーティングされているセラミックス等は剥がれず耐久性も優れている。担体1は,排気ガスGの流れに乱れを起こすことにより,担体1の表面にコーティング等で担持された触媒との接触が大幅に増大され,担体1に担持された触媒の種類に無関係に浄化性能をアップでき,或いは従来のものと同等の浄化性能を得るのであれば,本発明は大幅に小型化することができる。
【0022】
また,波板状帯体3は,図示していないが,ジグザグの凹凸状の一対のロール型のプレス機等の成形具に通されるだけで,又はロール間で押圧されるのみで,稜線7と稜線7間の溝6とから成る波状に成形される。波板状帯体3の稜線7は,平行に延びる形状に,又は柱状体4の軸に対して傾きを持つ形状,具体的には,柱状体4の軸に対して流入口9から流出口10へとジグザグに成形具で成形されている。従って,担体1は,波板状帯体3の稜線7が平行に延びて溝6に沿って多数の平行路17を備えたもの,或いは波板状帯体3の稜線7が屈折して延びて溝6に沿って多数の屈折路16を備えたものに形成されている。また,柱状体4は,図16に示すように,稜線7の傾きが逆向きに延びるように互いにクロス即ち交差して重ねられた少なくとも2枚の波板状帯体3をセットとして螺旋状に巻き上げられている。図16には,2枚の金網帯3を積層した状態が示され,一方の波板状帯体3を実線で示し,他方の波板状帯体3を点線で示され,波板状帯体3の稜線7が互いに交差状態に積層された状態が示されている。或いは,図示していないが,波板状帯体3に成形された稜線7は,柱状体4の軸に対して所定の長さだけ傾きを持つ部分と所定の長さだけ平行に延びる部分とが交互に繰り返して形成することもできる。
【0023】
担体1を構成する波板状帯体3に形成した屈折路16では,図12に示すように,排気ガスGが矢印で示す方向に流れる。担体1は,図12〜図14に示されるように,排気ガスGが波板状帯体3間に形成された屈折路16を通過する際に,排気ガス中のPM18は,波板状帯体3に接触しつつ流れ又は稜線7間の溝6で形成される屈折路16の屈折部分等の領域で一旦滞留し,そこで徐々にPM18が酸化燃焼して焼却される。排気ガスGに含まれたPM18は,排気ガスGと共に屈折路16を流れるに従って波板状帯体3の帯体壁面に接触しつつ流れて帯体8の金網に担持されている触媒の助けで消失されるが,PM18の一部は屈折路16の屈折部分等の領域で一旦滞留し,そこで,排気ガス温度が高くなって排気熱で加熱焼却又はNO2 により酸化消失し,或いは,徐々に触媒の助けで酸化燃焼して焼却されることになり,屈折路16は,PM18で閉塞されることなく,排気ガスGが常にスムーズに流れるように連通している。
【0024】
この排気ガス浄化装置は,図15では,(A)の(a)が断面図,(b)が平面図であり,ガス流速が遅い場合の排気ガスGの流れを示している。また,図15では,(B)の(a)は断面図,(b)は平面図であり,ガス流速が速い場合の排気ガスGの流れを示している。図15に示すように,排気ガスGの流速が速いほど,排気ガスGはフィルタ20の筒内に平行に流れようとするので,排気ガスGの流れに僅かな角度即ち屈折路16を与えることにより,排気ガスGに含まれるPMをハニカム通路5を形成する金網の壁面に付着させながら流れるからであり,ガス流速が速い場合は遅い場合よりはるかに筒内で平行して流れる特性が強くなり,その結果,ハニカム通路5の壁を構成する金網を突き抜けて流れ,PMを壁に付着させてPMを除去する特性が弱まり,PM浄化率が小さくなるからである。同様に,ガス流速が小さい場合にはガス流速が高い場合の逆の特性になる。この排気ガス浄化装置では,波板状帯体3の稜線7は,柱状体4の軸に対してジグザグの傾きの角度が同一又は異なっており,その範囲は柱状体4の軸に対してほぼ10°〜50°の角度に傾いて,ハニカム通路5の傾斜路である屈折路16に形成されている。また,柱状体4は,筒状ケース2内に複数個直列に配設され,柱状体4の波板状帯体3の稜線7の傾き角度は,排気ガスGの上流側と下流側とで同一又は異なっているものである。ハニカム通路5での排気ガスGの流れを考慮すると,稜線7の傾き角度は10°〜50°であることが好ましい。
【0025】
担体1に担持させた触媒は,三元触媒,酸化触媒,NOX 還元触媒(NOX 選択還元触媒)を用いることができる。本発明は,三元触媒,酸化触媒,NOX 還元触媒のいずれの触媒を用いても,浄化性能を大幅に向上させることができ,従来の担体と同等の浄化性能を確保するのであれば,大幅に小形化でき,低コストに製造することができる。担体1に担持させる触媒について,図5に示すように,白金系のNOX 還元触媒は,200℃程度が還元率がピークであるため,上流側の担体に担持させた400℃ピークの銀系のNOX 還元触媒と組み合わせることで,200℃から400℃の範囲の高い範囲でNOX 還元性能を発揮させることができる。また,HCの還元剤を用いるNOX 還元触媒は,排気ガスGと排気ガスGに混合された還元剤を均一に混合することが極めて重要である。車両に搭載する浄化システムの場合は,極めて狭いスペースにおいて排気ガスGと還元剤を均一に分散,混合させる必要がある。従来の担体では排気ガスGに対する還元剤の濃淡が生じて困難なことであるが,本発明のフィルタ20は金網で作製されているので,分散混合がスムーズに達成される。この排気ガス浄化装置は,PMを捕集することを目的の1つに構成しているが,その他,NOX 還元触媒をフィルタ20に担持することもできる。軽油を還元剤として用いるNOX 還元触媒は,触媒として白金,銀等を用いる場合が多い。これらの場合には,PMを燃焼させる効果を有するので,フィルタ20にNOX 還元触媒を担持することで,PMを捕集燃焼させて浄化することと同時に,NOX 浄化を行い,それによって,この排気ガス浄化装置をNOX ,PMを同時に浄化する機能を持たせることができる。この排気ガス浄化装置は,フィルタ20にゼオライト等を用いたNOX 還元触媒を担持することもでき,この場合もNOX 浄化とPM捕集浄化を同時に同じフィルタ20で行うことができ,装置そのものを小形化し,低コスト化が達成できる。また,従来のセラミックスハニカムやメタルハニカムの担体は,排気ガスの入口から入った排気ガスがいずれか1つのセルの中を流れ,隣のセルの排気ガスとは混ざることがなく,担体の出口に到達する。しかしながら,本発明の担体1は,1つのセルは流入口9から流出口10までストレートに延びると共に,セルと隣接するセルとは金網の多孔を通じて連通しているので,排気ガスGが混合しながら流れて混合が促進され,それによって担体1の流入口9での還元剤の均一性が多少悪くても,排気ガスGが担体1を流れる間に排気ガスGと還元剤との混合が継続され,結果として,極めて高い浄化率を得ることができる。
【0026】
また,帯体8を構成する金網は,ステンレス鋼又は鉄クロムアルミ合金のワイヤから構成されている。また,帯体8を構成する金網のワイヤの線径は,0.03mm〜0.25mmであることが好ましく,また,波板状帯体3と平板状帯体13を構成する金網のメッシュは30〜200メッシュであることが好ましい。更に,担体1即ちフィルタ20は,少なくとも2枚の帯体8をセットとして波板状を成形する場合に,内側の帯体8の金網のメッシュを細かくし,外側の帯体8の金網のメッシュを粗くしたものである。帯体8の金網のメッシュは,帯体8の縦線と横線とのメッシュ数が異なっており,帯体8の縦線のメッシュ数が帯体8の横線のメッシュ数より多くなっている。この実施例では,帯体8の縦線のメッシュ数が30〜100メッシュであり,帯体8の横線のメッシュ数が60〜200メッシュになるように設定されている。言い換えれば,帯体8の縦線とは,帯体8の長手方向に延びるワイヤであり,帯体8の横線とは,帯体8の幅方向に延びるワイヤである。一般に,帯体8を形成する金網は,縦線と横線とで織り上げるが,金網を織るスピードは,横線のメッシュ数によって拘束される。横線のメッシュ数が多い場合には,織機で1回で織られる速度が遅くなり,即ち,織りの所要時間が長くなり,その結果,金網を織るための作業コストは高くなる。しかしながら,縦線のメッシュ数が多い場合には縦線を織機にセットする作業が若干多くなるが,横線のメッシュ数が少なくて済み,そのため,織りの所要時間が大幅に短くなり,織り作業効率が上がる。従って,金網の製造コストを低減するには,織機によって織る速度が速くなるように横線のメッシュ数を減らすことが有効である。一方,単位面積当たりの表面積は,例えば,縦糸が80メッシュと横糸が80メッシュから成る金網と,縦糸が120メッシュと横糸が40メッシュから成る金網とは,等しくなって担体1の性能も同様になる。
【0027】
また,図7に示すように,波板状帯体3の稜線7と溝6とのサイズについて,稜線7間の即ち凸凹のピッチPは,1mm〜6mmに設定されることが好ましいものであり,ピッチPが1mm以下であるとハニカム通路5が狭過ぎてPM等が詰まる傾向になり,また,6mm以上であるとハニカム通路5が広過ぎて排気ガスGの触媒への接触が十分でなくなる。また,担体1の稜線7間のピッチPの大きさは,長手方向において同一又は変更することによってハニカム通路5の幅サイズを変更でき,排気ガスGの流れに好ましい乱れを発生させることができる。例えば,波板状帯体3について,ピッチPの大きさは,図示していないが,流れの上流側を大きく下流側を小さくなるものと逆にしたものとを交互に形成したり,又は長手方向に同一の大きさに形成することができる。波板状帯体3の稜線7のピッチを小さく形成するほどPMの捕集割合は高くなるが,一方,稜線7のピッチが小さすぎると,PMによるフィルタ20の詰まりが生じる場合がある。従って,この排気ガス浄化装置では,高い捕集率を得るためには,波板状帯体3を比較的にピッチの小さいものに作製し,部分的にピッチの大きいものを巻き込むことが有効になる。走行する上で,長時間にわたってPMが燃焼せずに,フィルタに堆積する場合でも,ピッチの大きな部分は閉塞することが無いので,多少エンジン出力は低下するが,走行に支障は発生しない。フィルタ20における波板状帯体3の稜線7のピッチを,上流側を大きく下流側を小さく形成したフィルタ壁と,上流側のピッチを小さく下流側のピッチを大きく形成したフィルタ壁とを交互に組み合わせると,排気ガスGの流れに対して排気ガスGの一部がフィルタ壁を通過する量を適切に調整することができ,PM捕集率を調整することができる。更に,波板状帯体3は,稜線7と溝6との波板の凸凹の高さHは,0.5mm〜5mmであることが好ましいものであり,高さHが0.5mm以下であるとハニカム通路5が低過ぎてPM等が詰まる傾向になり,また,5mm以上であるとハニカム通路5が高過ぎて排気ガスGの触媒への接触が十分でなくなる。フィルタ20は,稜線7間のピッチP及び稜線7と溝6との凸凹の高さHを調整することによって,屈折路16又は平行路17の大きさを調節することができ,排気ガスGの流れを調節できるものであり,エンジンの大きさや性能に対応してこれらのサイズを決定すればよい。
【0028】
担体1を構成する帯体8の金網には,アルミナ(Al2 O3 ),シリカ(SiO2 ),ジルコニア(ZrO2 ),セリア(CeO2 ),チタニア(TiO2 )の少なくとも1種以上のセラミックスがコーティングされている。即ち,担体1を構成する担体基材には,シリカ,アルミナ,セリア,チタニア,ジルコニアのいずれか一種又はそれらの少なくとも1種類を含む複合酸化物粉末が予め被覆されている。更に,帯体8の基材を被覆したセラミックスのコーティング層の表面には,白金(Pt),銀(Ag),カリウム(K),パラジウム(Pd),イリジウム(Ir),鉄(Fe),銅(Cu),バリウム(Ba),ルテニウム(Ru),ロジウム(Rh)の少なくとも1種類以上の酸化・還元触媒が担持されているものである。
【0029】
また,図17に示すように,担体1から成るフィルタ20は,過大な振動等の外力が負荷される環境,又は大きな熱応力を受ける環境で使用される場合には,フィルタ20を構成する波板状帯体3と平板状帯体13又は波板状帯体3同士は,分解や変形を阻止するためニッケルを主体としたロウ材で互いに接合することができる。フィルタ20は,600℃以上の高温下で使用される場合,波板状帯体3及び/又は平板状帯体13の帯体8同士をロウ材で接合することが,フィルタ20の帯体8の熱変形が抑制されて好ましいものである。例えば,フィルタ20の一方の端面25又は両端面25は,ロウ材で接合線23(総称は23)で互いに接合されている。具体的には,ロウ接部は,図17の(A)又は(B)に示すように,予め決められた幅を持って放射曲線状に延びる間欠的な線状の接合線23A,23B,又は図17の(C)に示すように,外周側に広くなった幅を持って放射曲線状に延びる接合線23Cになっている。図17の(A)では,帯体8の端面に付与する結合力を均等にするため外周側になるに従って接合線23Aを増大させた構成,即ち,最外周部には12本の接合線23A,中間部には8本の接合線23A,最内周部には4本の接合線23Aで接合されている。図17の(B)では,ロウ材の接合線23に不要な外力がかからない構成,即ち,接合線23Bにカット部24を形成して接合されている。更に,図17の(C)では,帯体8の端面に接合線23で付与する結合力を均等にするため,外周側になるに従って接合線23Cの太さ即ち幅を大きく形成している。更に,フィルタ20は,波板状帯体3の巻き上げ時に,重なる波板状帯体3の稜線7と帯体8とが接する予め決められた領域の部位にロウ材を塗布又はロウ材箔を配設して帯体8同士がロウ接されている。更に,帯体8同士がロウ接される予め決められた領域の部位は,フィルタ20を構成する隣接する帯体8間で柱状体4の軸方向で互いに位置ずれしていることが好ましい。
【0030】
本発明品の金網を用いた担体1から成るフィルタ20は,その柱状体4の筒体の両端面25をロウ付けするだけで熱応力に強い強度を得ることができる。金網は,ワイヤに着目するとあらゆる方向に対して柔軟であるため,接合部を両端のみとしても,機会応力,熱応力を受け難くなり,十分な強度のフィルタ20を得ることができる。即ち,担体1は,常時低温と高温とを繰り返し受けているが,更に温度分布も担体1の場所により異なっているが,フィルタ20は金網で作製されており,非常に細いワイヤで構成されているので,熱分布による変形を非常に柔軟に受け止めることができ,塑性変形等が起きない。従って,ロウ接合でも,接合部を分散させることで,担体の優れた特性を活かすことができる。フィルタ20の端面25をロウ付けする場合には,接合線23を担体筒体中心軸を通る放射曲線状に延ばすと,担体1がそのロウ接部分の剛性を高くするので,その放射曲線状のロウ接合部で拘束され,柔軟性が損なわれる。そこで,接合線23を放射曲線状に延ばす場合に,渦巻き状等の曲状に延ばすことにより外圧に対する抵抗力を弱めることができ,その場合に接合線23を所々で接合せずにカット部24を設けることによって一段と高い柔軟性を得ることができる。また,接合線23の面積を増大させることで,フィルタ20の強度が高くなる。触媒付きフィルタ20は,通常その前後で圧力が異なるため,所定の力を受けている。担体1は,該所定の力によってかかる担体1の剪断は,半径に比例して外周部の方が高くなるので,フィルタ20の端面25をロウ接合する場合は,外周ほど接合面積を増やすことが好ましい。また,波板状帯体3の金網は,完成時の柱状体4の軸方向に斜めに傾いて稜線7が存在しているので,帯体8を巻き上げた時に,ロウ材を塗布又はロウ箔を挟むには,帯体8同士が接する領域にロウ材又はロウ箔が位置するようにする。しかしながら,帯体8同士の接する領域は,常に変化するので,ロウ材を有効に機能させるためには,ジグザグ状の稜線7を画像で読み込み,帯体8を巻き上げた時に,帯体8同士が接する領域に適切にロウ材を位置させることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
この発明による排気ガス浄化装置は,エンジン,バーナ,ガス発生源等からの排気ガスを排気通路に配設したフィルタに通し,排気ガスに含まれる粒子状物質,スート,HC,NOX 等の有害物質を触媒の助けで燃焼させ,又は酸化・還元によって変換して消失させる排気ガスを浄化するもの,例えば,新車又は既存車のエンジン,特に,ディーゼルエンジンからの排気ガスを排出する排気管に配設されるフィルタに適用して好ましいものである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明による排気ガス浄化装置の第1実施例を示し,ケース内に担体の柱状体を直列に2個配設した状態で柱状体の両側端を係止部材でケースに固定した状態を示す説明図である。
【図2】この発明による排気ガス浄化装置の第2実施例を示し,ケース内に担体の柱状体を直列に2個配設した状態でケースが凹部で柱状体をケースに固定した状態を示す説明図である。
【図3】この発明による排気ガス浄化装置の第3実施例を示し,ケース内に担体の柱状体を直列に2個配設した状態で柱状体の両側端を係止部材でケースに固定した状態を示す説明図である。
【図4】この発明による排気ガス浄化装置の第4実施例を示し,ケース内に担体の柱状体を直列に2個配設した状態でケースが凹部で柱状体をケースに固定した状態を示す説明図である。
【図5】この排気ガス浄化装置における触媒について温度に対する効果のピーク時を示すグラフである。
【図6】この発明による排気ガス浄化装置における担体の一例であって,波板状帯体と平板状帯体とを重ね合わせて巻き上げて形成する工程を示す説明図である。
【図7】図6の担体を構成する波板状帯体と平板状帯体との重ね状態を示す正面図である。
【図8】図7の重ね帯体を螺旋状に巻き上げて形成した柱状体を示す正面図である。
【図9】この発明による排気ガス浄化装置における担体の別の例であって,稜線の傾き方向を互いに異なる方向に重ね合わせた波板状帯体を巻き上げて柱状体を形成する工程を示す斜視図である。
【図10】図9の波板状帯体を巻き上げた柱状体を示す正面図である。
【図11】図10の柱状体を示す側面図である。
【図12】図9の柱状体を構成する2枚の波板状帯体の稜線を交差状態に配設した状態を示す説明図である。
【図13】図12の柱状体のA−A断面を示す断面図である。
【図14】図12のB−B断面を示す断面図である。
【図15】柱状体の溝に沿って形成されたハニカム通路を排気ガスが流れる時の状態を示し,(A)は排気ガスの流速が遅い時の状態を示し,(B)は排気ガスの流速が速い時の状態を示す説明図である。
【図16】フィルタの柱状体を構成する2枚の帯体の稜線を交差して配設した状態を示す説明図である。
【図17】フィルタの端面において,帯体をロウ材で接合する状態を示し,(A)はフィルタの通路断面積に比例して数の箇所で接合した状態を示し,(B)はフィルタの中心部から外周部へ延びる接合部を分断した状態を示し,(C)はフィルタの中心部から外周部へ延びる接合部の接合面を増大させた状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0033】
1,1A,1B 担体
2 ケース
3 波板状帯体
4 柱状体
5 ハニカム通路
6 溝
7 稜線
8 帯体
9 流入口
10 流出口
11 係止部材
12 凹部
13 平板状帯体
14 ストレートガス通路
15 ジグザグガス通路
16 屈折路
17 平行路
18 粒子状物質(PM)
19 排気ガス通路
20,20A,20B,20C,20D フィルタ
30 還元剤供給手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガス通路を形成するケース内に配設された担体を備えたフィルタに排気ガスを通して前記排気ガス中の粒子状物質,スート,NOX ,HC等の有害物質を燃焼や酸化・還元によって消失させて前記排気ガスを浄化する排気ガス浄化装置において, 前記担体は前記ケース内の排気ガス流れ方向に少なくとも2個直列に配設され,前記担体の上流には還元剤を前記排気ガス通路に供給する還元剤供給手段が設けられ,前記担体は金網を波板状に折り曲げて成形した波板状帯体を筒状に巻き上げて形成された柱状体から構成され,前記波板状帯体は前記柱状体の軸方向に対してジグザグな傾き状又はストレート状に平行に延びる多数の稜線と該稜線間の溝とを備えており,前記柱状体は前記溝に沿って多数のハニカム通路が形成されていることを特徴とする排気ガス浄化装置。
【請求項2】
前記フィルタにおける上流側の前記柱状体を構成する前記担体にはNOX 還元触媒が担持されており,下流側の前記柱状体を構成する前記担体には酸化触媒又はNOX 触媒が担持されていることを特徴とする請求項1に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項3】
前記フィルタにおける上流側の前記柱状体を構成する前記担体に担持された前記触媒として少なくとも銀を用い,下流側の前記柱状体を構成する前記担体に担持された前記触媒として少なくとも白金を用いていることを特徴とする請求項1又は2に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項4】
前記フィルタにおける下流側の前記柱状体を構成する前記担体は,前記稜線が前記柱状体の軸方向に傾き状に延びて前記排気ガス中の前記粒子状物質を捕集して焼却することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項5】
前記柱状体は,前記稜線の傾き方向が互いに異なる状態に前記波板状帯体を重ね合わせて巻き上げるか,又は前記波板状帯体と前記金網を平らに成形した平板状帯体とを重ね合わせて巻き上げて形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項1】
排気ガス通路を形成するケース内に配設された担体を備えたフィルタに排気ガスを通して前記排気ガス中の粒子状物質,スート,NOX ,HC等の有害物質を燃焼や酸化・還元によって消失させて前記排気ガスを浄化する排気ガス浄化装置において, 前記担体は前記ケース内の排気ガス流れ方向に少なくとも2個直列に配設され,前記担体の上流には還元剤を前記排気ガス通路に供給する還元剤供給手段が設けられ,前記担体は金網を波板状に折り曲げて成形した波板状帯体を筒状に巻き上げて形成された柱状体から構成され,前記波板状帯体は前記柱状体の軸方向に対してジグザグな傾き状又はストレート状に平行に延びる多数の稜線と該稜線間の溝とを備えており,前記柱状体は前記溝に沿って多数のハニカム通路が形成されていることを特徴とする排気ガス浄化装置。
【請求項2】
前記フィルタにおける上流側の前記柱状体を構成する前記担体にはNOX 還元触媒が担持されており,下流側の前記柱状体を構成する前記担体には酸化触媒又はNOX 触媒が担持されていることを特徴とする請求項1に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項3】
前記フィルタにおける上流側の前記柱状体を構成する前記担体に担持された前記触媒として少なくとも銀を用い,下流側の前記柱状体を構成する前記担体に担持された前記触媒として少なくとも白金を用いていることを特徴とする請求項1又は2に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項4】
前記フィルタにおける下流側の前記柱状体を構成する前記担体は,前記稜線が前記柱状体の軸方向に傾き状に延びて前記排気ガス中の前記粒子状物質を捕集して焼却することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項5】
前記柱状体は,前記稜線の傾き方向が互いに異なる状態に前記波板状帯体を重ね合わせて巻き上げるか,又は前記波板状帯体と前記金網を平らに成形した平板状帯体とを重ね合わせて巻き上げて形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の排気ガス浄化装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−203921(P2009−203921A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−47952(P2008−47952)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(504059887)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(504059887)
【Fターム(参考)】
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