説明

排気浄化装置

【課題】排気浄化装置としての高い機能を確保しながら、車両への搭載性を向上させる。
【解決手段】DPFを第一ケーシング11内に備えた上流側排気浄化装置10と、SCRを第二ケーシング21内に備えた下流側排気浄化装置20と、還元剤添加ノズル18とを備えた排気浄化装置1において、両ケーシング11,21は、いずれも車両の前後方向に延設されるサイドメンバ2よりも車両の一方の外側であっていずれの軸線も車両の車幅方向に向くように配置され、両ケーシング11,21の排気上流端がいずれも車両内側に位置し、両ケーシング11,21の排気下流端がいずれも車両外側に位置するように配置され、第一ケーシング11は、第二ケーシング21に対して車両の側面視において斜め上方に配置される。中間パイプ19は、その主要部が第二ケーシング21の上方に位置し、第一ケーシング11の排気出口と第二ケーシング21の排気入口とを連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの排気浄化装置に関し、特に排気中のパティキュレート及び窒素酸化物を除去する排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン、中でもディーゼルエンジンの排気中には、大気汚染物質である粒子状物質(Particulate Matter、以下、PMと略称する)や窒素酸化物(以下、NOxという)等が含まれている。そこで、エンジンの排気通路に、PMを捕集するためのパティキュレートフィルタ(Diesel Particulate Filter、以下、DPFと略称する)を設置し、大気中にPMが放出されないようにした技術が知られている。
【0003】
また、エンジンの排気通路に、NOxを除去するための選択還元型触媒(Selective Catalytic Reduction、以下、SCRと略称する)を設置し、還元剤としての尿素水をSCRに流入する排気中に添加することにより、SCRにおいて排気中のNOxを還元して排気を浄化するようにした技術が知られている。このようなPMの捕集及びNOxの還元を効率的に行うため、DPF及びSCRを組み合わせ、排気浄化装置として用いるようにしたものが、例えば特許文献1及び2などに提案されている。
【0004】
特許文献1に記載の排気浄化装置は、酸化触媒及びフィルタが収容された排気上流側の第1の筐体と、還元触媒及びアンモニア酸化触媒が収容された排気下流側の第2の筐体とが、互いの軸線が略平行となるように近接配置され、両筐体の遠端部どうしが連通管により連結されて構成されている。
また、特許文献2に記載の排気浄化装置は、酸化触媒及びパティキュレートフィルタが抱持されたケーシングと、選択還元型触媒及びアンモニア低減触媒が抱持されたケーシングとが並列配置され、両ケーシングが尿素水添加手段を備えたS字構造の連絡流路により接続されて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4286888号公報
【特許文献2】特開2010−196523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このような排気浄化装置は、エンジンとの位置関係や排気の排出位置から、ラダーフレームを有する車両ではフレーム近辺に配置されることが多い。しかし、フレーム近辺には、排気浄化装置以外にスペアタイヤ等の様々な架装物が搭載されており、これらの架装物との位置関係も考慮して配置する必要がある。また、排気浄化装置は、適切に排気中のPM捕集及びNOx浄化を行うために、DPF及びSCRの容積を確保する必要がある。
【0007】
しかしながら、上記の特許文献1及び2に記載の排気浄化装置は、車両への配置や他の架装物との位置関係が明確ではなく、どのようにして車体への搭載性及び排気浄化装置としての機能を高い次元で両立するかが不明である。
本発明はこのような課題に鑑み案出されたもので、排気浄化装置としての高い機能を確保しながら、車両への搭載性を向上させた排気浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の排気浄化装置は、粒子状物質捕集フィルタ(DPF)を筒状の第一ケーシング内に備えた上流側排気浄化装置と、選択還元型触媒(SCR)を前記第一ケーシングとは別個の筒状の第二ケーシング内に備えた下流側排気浄化装置と、前記第一ケーシングと前記第二ケーシングとを連通する中間パイプと、前記SCRに流入する排気中に還元剤を添加する還元剤添加ノズルと、を備える。
【0009】
前記第一ケーシング及び前記第二ケーシングは、いずれも車両の前後方向に延設されるサイドメンバよりも前記車両の一方の外側であっていずれの軸線も前記車両の車幅方向に向くように配置され、前記第一ケーシング及び前記第二ケーシングの排気上流端がいずれも前記車両内側に位置し、前記第一ケーシング及び前記第二ケーシングの排気下流端がいずれも前記車両外側に位置するように配置される。
【0010】
そして、前記第一ケーシングは、前記第二ケーシングに対して前記車両の側面視において斜め上方に配置され、前記排気下流端に設けられ前記第一ケーシング内を流通した排気が排出される排気出口を有し、前記第二ケーシングは、前記排気上流端に設けられ前記第二ケーシング内に前記排気が流入する排気入口を有し、前記中間パイプは、その主要部が前記第二ケーシングの上方に位置し、前記排気出口と前記排気入口とを連結することを特徴としている。
【0011】
前記排気出口は、前記第一ケーシングの前記排気上流端の周壁に設けられ、前記還元剤添加ノズルは、前記排気出口に対向する前記第一ケーシングの前記周壁に設けられ、前記中間パイプは、その排気上流端部が前記第一ケーシングの前記排気出口から前記還元剤添加ノズルに向けて前記第一ケーシング内に延設されることが好ましい。
また、前記第一ケーシングは、前記第二ケーシングよりも前記車両の後方に配置されることが好ましい。
【0012】
また、前記第二ケーシング内を流通した前記排気が排出されるテールパイプをさらに備え、前記テールパイプは、その上流端が前記第二ケーシングの前記排気下流端に設けられた排出口に接続され、その下流端が前記車両外側に向けて設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の排気浄化装置によれば、DPFを内蔵した第一ケーシングとSCRを内蔵した第二ケーシングとがいずれの軸線も車幅方向に向くように(すなわち、略平行になるように)配置され、さらに第一ケーシングが第二ケーシングの斜め上方に配置されるため、車両の上下方向のスペースを効率的に利用して、車両の前後方向寸法をコンパクトにすることができる。これにより、車両への搭載性が向上するため、DPFやSCRの容積を確保しながら他の架装物の搭載スペースを確保することができる。
【0014】
また、第一ケーシングが第二ケーシングよりも上方に位置しているため、車両の前方に位置するエンジンと第一ケーシングとを接続するパイプの長さを短くすることができる。また、第二ケーシングの排気下流端が車両外側に位置しているため、第二ケーシング内を流通した排気を車両の外部に排出するテールパイプの長さを短くすることができる。これらパイプの長さを短くできる分、排気浄化装置全体の重量及びコストを低減することができる。また、第二ケーシングが第一ケーシングよりも下方に位置しているため、テールパイプから排出される高温の排気による車載機器類への熱害を回避することができる。
【0015】
また、第一ケーシングに設けられる排気出口は車両外側に位置し、第二ケーシングに設けられる排気入口は車両内側に位置するため、排気出口及び排気入口の軸方向への離隔を利用して、これら排気出口と排気入口とを連結する中間パイプの長さを確保することができる。これにより、SCRに流入する排気中に添加された還元剤の混合経路を長くすることができ、還元剤の混合を促進することができるため、NOx浄化率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態にかかる排気浄化装置の車両への搭載を説明する模式図であり、図1(a)は車両側面図、図1(b)は車両底面図(下方から見た図)である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる排気浄化装置を、車両の右側上方且つ前方から見た模式的な斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる排気浄化装置の模式図であり、図3(a)はその平面図、図3(b)はその側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[1.構成]
[1−1.全体構成]
以下、図面により実施の形態について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。
【0018】
本実施形態にかかる排気浄化装置は、車両の前後方向に延設されるサイドメンバを有する車両に適用可能であり、ここでは、トレーラ車両を牽引するトラクタに適用した例で説明する。なお、以下、車両の進行方向を前方とし、前方を基準に左右を定め、重力の方向を下方とし、その逆を上方として説明する。また、車両の中心に向かう側を内側、その逆を外側として説明する。
【0019】
図1(a)及び(b)に示すように、本排気浄化装置1が適用されるトラクタは、一対のサイドメンバ2(ここでは右側のみ図示する)が車両の前後方向に延設され、サイドメンバ2の間をクロスメンバ6が接続することによりはしご状のラダーフレームが構成されている。サイドメンバ2には、車両前部に前輪4の前輪軸4S、車両後部に後輪5の後輪軸5Sがそれぞれ接続され、前輪軸4S及び後輪軸5Sには前輪ハブ4H及び後輪ハブ5Hがそれぞれ設けられている。また、前輪4及び後輪5には、それぞれフロントフェンダ4F及びリヤフェンダ5Fが設けられている。
【0020】
一対のサイドメンバ2の間には、エンジン3や図示しないトランスミッション等が配置されている。エンジン3は、車両の前部(ここでは、前輪4の前輪軸4Sの上方)に配置され、図示しないターボチャージャのタービンを介して連通パイプ9が接続されている。連通パイプ9は、その排気下流端が排気浄化装置1に接続され、エンジン3からの排気を排気浄化装置1へ送る。なお、連通パイプ9は、最も一般的な円筒状パイプである。
【0021】
排気浄化装置1は、右側のサイドメンバ2の外側であって、前輪4と後輪5と間の中心位置よりも前部に配置されている。すなわち、エンジン3のやや後方に配置されている。また、サイドメンバ2の下方であって前輪4と後輪5との間には、スペアタイヤ7等の架装物が搭載されている。
図1(a),(b)及び図2に示すように、排気浄化装置1は、排気上流側に設けられ連通パイプ9の下流端が接続された上流側排気浄化装置10と、上流側排気浄化装置10の排気下流側に設けられた下流側排気浄化装置20とを有して構成され、上流側排気浄化装置10と下流側排気浄化装置20とは、中間パイプ19により接続されて連通している。なお、上流側排気浄化装置10とスペアタイヤ7とは上下方向に部分的に重なり合っている。
【0022】
図3(a)及び(b)に示すように、上流側排気浄化装置10は、円筒状の筒状ケーシング(第一ケーシング)11内に、排気上流側に配置される前段酸化触媒12と、下流側に配置されるパティキュレートフィルタ(Diesel Particulate Filter、以下、DPFと略称する)13とが内蔵されて構成されている。なお、以下、上流側排気浄化装置10をDPF装置10といい、筒状ケーシング11をDPFケーシング11という。
【0023】
下流側排気浄化装置20は、DPFケーシング11とは別個の円筒状の筒状ケーシング(第二ケーシング)21内に、上流側に配置される選択還元型触媒(Selective Catalytic Reduction、以下、SCRと略称する)22と、下流側に配置される後段酸化触媒23とが内蔵されて構成されている。なお、以下、下流側排気浄化装置20をSCR装置20といい、筒状ケーシング21をSCRケーシング21という。
【0024】
また、DPF13の排気下流側であって、中間パイプ19の上流側には、還元剤としての尿素水を添加する添加ノズル(還元剤添加ノズル)18が設けられ、添加ノズル18は、図示しないタンクから圧送される尿素水をSCR装置20に向かう排気中に噴射し添加する。この尿素水の添加量や添加のタイミングは、図示しないコントローラにより制御される。
【0025】
コントローラ(ECU,Engine (electronic) Control Unit)は、エンジン制御や排気浄化制御等にかかる各種演算処理を実行するCPU、その制御に必要なプログラムやデータの記憶されたROM、CPUの演算結果等が一時的に記憶されるRAM、外部との間で信号を入出力するための入出力ポート等を備えて構成されている。
【0026】
[1−2.排気浄化装置の構成]
DPF装置10は、排気中に含まれる粒子状物質(Particulate Matter、以下、PMと略称する)を捕集する機能と、捕集したPMを連続的に酸化させて除去する機能とを併せ持つ。なお、PMとは、炭素からなる黒煙(すす)の周囲に燃え残った燃料や潤滑油の成分,硫黄化合物等が付着した粒子状の物質である。
【0027】
前段酸化触媒12は、排気中の成分に対する酸化性能を持った酸化触媒であり、金属,セラミックス等からなるハニカム状の担体に触媒物質を担持したものである。前段酸化触媒12によって酸化される排気中の成分には、NOや未燃燃料中の炭化水素等及び一酸化炭素が挙げられる。例えば、NOが前段酸化触媒12で酸化されるとNO2が生成される。
【0028】
DPF13は、PMを捕集する多孔質フィルタ(例えば、セラミックフィルタ)である。DPF13の内部は、多孔質の壁体によって排気の流通方向に沿って複数に分割されている。この壁体には、PMの微粒子に見合った大きさの多数の細孔が形成される。排気が壁体の近傍や内部を通過する際に壁体内,壁体表面にPMが捕集され、排気が濾過される。このようなDPF13の再生制御は、コントローラによって制御される。
【0029】
DPF装置10は、筒状のDPFケーシング11内に、その軸方向に直列に前段酸化触媒12とDPF13とが内蔵されて構成されている。DPFケーシング11には、前段酸化触媒12の排気上流側にDPF入口空間(排気上流端)14が設けられ、DPF13の排気下流側に混合室と称される空間(排気下流端)15が設けられている。DPF入口空間14には、連通パイプ9の後端が接続され、連通パイプ9からDPFケーシング11内へ排気が流入するための入口であるDPF入口16が形成され、混合室15には、DPFケーシング11内を流通した排気が流出するための出口であるDPF出口(排気出口)17が形成されている。なお、DPF入口16及びDPF出口17は、いずれもDPFケーシング11の車両前側の周壁に形成されている。
【0030】
添加ノズル18は、DPF出口17に対向するDPFケーシング11の周壁に設けられ、その先端を中間パイプ19の開口19aに向けて配設されている。
中間パイプ19は、DPF装置10のDPFケーシング11に接続される一端19S1が、DPFケーシング11の周壁に形成されたDPF出口17からDPFケーシング11内へ貫通して配設されており、DPFケーシング11の周壁に片持ち支持されるように、その開口19aを添加ノズル18に向けて延設されている。すなわち、中間パイプ19の排気上流端部19S1は、DPFケーシング11の周壁に形成されたDPF出口17から混合室15内に突出して設けられている。なお、中間パイプ19は、最も一般的な円筒状パイプである。
【0031】
SCR装置20におけるSCR22は、軸方向に互いに平行な微小な穴が複数連通したハニカム構造の担体に、触媒が担持されて構成された尿素添加型の窒素酸化物選択還元型触媒であり、上流側に設けられた添加ノズル18から供給される尿素水をアンモニアに加水分解するとともにアンモニアを吸着する機能を持ち、さらに吸着したアンモニアを還元剤として排気中のNOxをN2へと還元するものである。なお、SCR22に担持される触媒の種類は任意であり、例えばゼオライト系,バナジウム系等の触媒を用いることが考えられる。また、還元剤として尿素水以外を用いるものでもよい。
【0032】
後段酸化触媒23は、SCR22での還元反応における余剰分のアンモニアを除去するための酸化触媒である。
SCR装置20は、筒状のSCRケーシング21内に、その軸方向に直列にSCR22と後段酸化触媒23とが内蔵されて構成されている。SCRケーシング21には、SCR22の排気上流側にSCR入口空間(排気上流端)24が設けられ、後段酸化触媒23の排気下流側にSCR出口空間(排気下流端)25が設けられている。SCR入口空間24には、中間パイプ19からSCRケーシング21内へ排気が流入するための入口であるSCR入口(排気入口)26が形成され、SCR出口空間25には、SCRケーシング21内を流通した排気が流出するための出口であるSCR出口(排出口)27が形成されている。なお、SCR入口26はSCRケーシング21の上側の周壁に形成され、SCR出口27はSCRケーシング21の車両後側でやや下方の周壁に形成されている。SCR出口27には、SCR装置20を流通した排気を大気中に排出するテールパイプ29が接続されている。なお、テールパイプ29は、最も一般的な円筒状パイプである。
【0033】
本実施形態にかかる排気浄化装置1は、このように構成されたDPF装置10及びSCR装置20が、図1(a)及び(b)に示すように、DPFケーシング11及びSCRケーシング21のいずれの軸線も車両の車幅方向に向いて配置されている。すなわち、DPFケーシング11及びSCRケーシング21は、互いの軸線が略平行になるように並列に配置されている。なお、ここではDPFケーシング11とSCRケーシング21は、同形状(同サイズ)のケーシングで構成されている。
【0034】
DPFケーシング11は、DPF入口空間14が車両の内側に位置し、混合室15が車両の外側に位置するように配置される。また、SCRケーシング21も同様に、SCR入口空間24が車両の内側に位置し、SCR出口空間25が車両の外側に位置するように配置される。すなわち、DPFケーシング11及びSCRケーシング21内を流通する排気は、いずれも車両の内側から外側に向かって流れる。
【0035】
また、DPFケーシング11は、SCRケーシング21よりも車両後方に配置され、車両の側面視において、SCRケーシング21に対して斜め上方に配置されている。すなわち、DPFケーシング11及びSCRケーシング21は、上下方向にシフトして並列配置されており、同一な水平面上に両ケーシング11,21を並列配置した場合に比べ、水平方向(すなわち、車両の前後方向)の長さが短くなっている。なお、ここでは、DPFケーシング11及びSCRケーシング21は、いずれもサイドメンバ2の上面よりも下方に配置されている。
【0036】
連通パイプ9は、車両前部に位置するエンジン3から延び、SCRケーシング21の上方を通ってDPFケーシング11の前側の周壁に形成されたDPF入口16に接続されている。なお、連通パイプ9の下流端は、図1(a)及び図1(b)に示すように、他の架装物との位置関係から、DPFケーシング11に対してやや斜めに接続されているが、この角度については適宜変更可能であり、図2及び図3(a)では、DPFケーシング11の軸方向に対して直交する角度で設けられた例を示している。
【0037】
中間パイプ19は、その上流端19S1がDPFケーシング11に形成された車両外側に位置するDPF出口17からDPFケーシング11内に延設され、その下流端19R2がSCRケーシング21に形成された車両内側に位置するSCR入口26に接続され、その主要部がSCRケーシング21の上方において部分的に湾曲している。すなわち、中間パイプ19は、DPF出口17とSCR入口26とを接続し、その中間部分が、直線部分19Sと曲線部分19Rとが組み合わされて構成されている。
【0038】
換言すると、中間パイプ19は、DPFケーシング11内に延設された排気上流端部19S1が直線部分で構成され、DPF出口17の直下流及びSCR入口26の直上流はそれぞれ曲線部分19R1及び19R2で構成され、これら曲線部分19R1及び19R2の間はDPFケーシング11及びSCRケーシング21の軸線と略平行な直線部分19S2で構成されており、中間パイプ19全体で見ると三次元的に湾曲している。このとき、直線部分19S2の長さを短くすることにより、曲線部分19R1及び19R2の半径を大きくすることができ、排気の流動抵抗を小さくすることができる。
【0039】
テールパイプ29は、その上流端がSCRケーシング21に形成された車両外側に位置するSCR出口27に接続され、その下流端が車両の外側で下方に向けて設けられている。すなわち、テールパイプ29は、車両側面視において、SCRケーシング21の周壁からやや斜め下方に向けて延びる短い直線状のパイプである。
【0040】
[2.作用,効果]
本実施形態にかかる排気浄化装置1は、上述のように構成されているので、以下のようにして排気は浄化される。
【0041】
エンジン3の運転中において、エンジン3から排出された排気は、連通パイプ9を経てDPF装置10内に導入され、前段酸化触媒12及びDPF13を通過した後に混合室15内に移送され、中間パイプ19内に導入される。このとき、中間パイプ19の上流側に設けられた添加ノズル18から、還元剤としての尿素水がSCR装置20に向かう排気中に添加される。
【0042】
添加された尿素水は、中間パイプ19内で排気と混合されながら、排気熱により加水分解されてアンモニアを生じ、中間パイプ19の内部を流通してSCR入口26からSCR入口空間24に導入され、SCR22及び後段酸化触媒23を通過した後にSCR出口27からテールパイプ29を通過し大気中に排出される。このとき、DPF13では排気中のPMが捕集され、SCR22では排気中のNOxが還元され、これらの作用により大気中への有害成分の排出が防止される。
【0043】
したがって、本実施形態にかかる排気浄化装置1によれば、DPF13を内蔵したDPFケーシング11とSCR22を内蔵したSCRケーシング21とが、いずれの軸線も車幅方向に向くように(すなわち、略平行になるように)配置され、さらにDPFケーシング11がSCRケーシング21の斜め上方に配置されるため、車両の上下方向のスペースを効率的に利用して、車両の前後方向寸法をコンパクトにすることができる。これにより、排気浄化装置1の車両への搭載性が向上し、DPF13やSCR22の容積を確保しながら、スペアタイヤ7等の架装物の搭載スペースを確保することができる。
【0044】
また、DPFケーシング11がSCRケーシング21よりも上方に位置しているため、車両の前方に位置するエンジン3とDPFケーシング11とを接続する連通パイプ9の長さを短くすることができる。また、SCRケーシング21のSCR出口空間25が車両外側に位置しているため、SCRケーシング21を流通した排気を車両の外部に排出するテールパイプ29の長さを短くすることができる。連通パイプ9及びテールパイプ29の長さを短くできる分、排気浄化装置1全体の重量及びコストを低減することができる。また、SCRケーシング21がDPFケーシング11よりも下方に位置しているため、テールパイプ29から排出される高温の排気による車載機器類への熱害を回避することができる。
【0045】
また、DPFケーシング11に設けられるDPF出口17は車両外側に位置し、SCRケーシング21に設けられるSCR入口26は車両内側に位置するため、DPF出口17及びSCR入口26の軸方向への離隔を利用して、これらDPF出口17とSCR入口26とを連結する中間パイプ19の長さを確保することができる。すなわち、SCR22に流入する排気中に添加された尿素水の混合経路を長くすることができるため、尿素水の混合を促進することができ、NOx浄化率を向上させることができる。
【0046】
また、DPFケーシング11の周壁に添加ノズル18が設けられ、中間パイプ19の排気上流端部が、DPF出口17から添加ノズル18に向けてDPFケーシング11内に延設されているため、中間パイプ19の長さをより長くすることができ、尿素水の混合経路をより長く確保することができる。これにより、尿素水の排気中への拡散効果をより促進することができるため、NOx浄化率をより高めることができる。
【0047】
また、DPFケーシング11がSCRケーシング21よりも車両後方に配置されているため、連通パイプ9をSCRケーシング21の上方に位置するように配置でき、テールパイプ29をDPFケーシング11の下方に位置するように配置できる。そのため、排気浄化装置1の車両の前後方向寸法をよりコンパクトにすることができる。
また、車両外側に位置するSCRケーシング21のSCR出口空間25に形成されたSCR出口27にテールパイプ29の上流端が接続され、テールパイプ29の下流端が車両外側に向けて設けられているため、テールパイプ29から排出される高温の排気による車載機器類への熱害をより確実に回避することができる。
【0048】
また、ここでは、DPFケーシング11及びSCRケーシング21がいずれもサイドメンバ2の上面よりも下方に配置されているため、サイドメンバ2上方の部品等に影響を与えず、フレーム下のスペースを効率良く利用し、フレーム下の配置効率を向上させることができる。
【0049】
[3.その他]
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
【0050】
上記実施形態では、中間パイプ19の排気上流端部19S1がDPFケーシング11内に延設されて設けられているが、中間パイプ19のDPFケーシング11への接続はこれに限られない。例えば、中間パイプ19がDPF出口17からDPF出口17の対向する周壁まで延設され、中間パイプ19の混合室15内への露出部分(挿入部分)に、中間パイプ19の内外を連通させる孔部が複数貫設され、これらの孔部を介して混合室15内と中間パイプ19内とを相互に連通する構成であってもよい。また、中間パイプ19がDPFケーシング11内に延設されて設けられていなくてもよく、中間パイプ19の排気上流端部19S1に中間パイプ19よりも径の小さいパイプを連結し、二重管の構成にしてもよい。また、中間パイプ19の直線部分19S及び曲線部分19Rの構成は上記したものに限られない。
【0051】
また、上記実施形態では、DPFケーシング11がSCRケーシング21よりも車両後方に配置されているが、DPFケーシング11及びSCRケーシング21の配置はこれに限られず、DPFケーシング11がSCRケーシング21よりも車両前方に配置されていてもよい。この場合、DPF入口空間14に形成されるDPF入口16は車両前側の周壁に設けられ、混合室15に形成されるDPF出口17は車両後側の周壁に設けられる。また、SCRケーシング21に設けられるSCR入口26及びSCR出口27は、上記実施形態と同様に設けることができる。
【0052】
この場合であっても、中間パイプ19は上記実施形態と同様の長さを確保することができるとともに、SCRケーシング21の上方に配置することができるため、上下方向のスペースを効率的に利用することができる。なお、連通パイプ9及びテールパイプ29はDPFケーシング11及びSCRケーシング21の上下スペースに配置することができないが、本排気浄化装置が適用される車両が例えば一般的なトラックやバス等であれば、ホイールベースの制約がトラクタほど厳しくなく車両前後方向の寸法に余裕があるため、充分適用可能である。
【0053】
また、DPFケーシング11に形成されるDPF入口16及びDPF出口17は、DPF入口空間14及びDPF出口空間15に位置するように形成されていれば、周壁に設けられていなくてもよく、また、周壁であっても、上記実施形態に示した位置に限られず、種々変更可能である。同様に、SCRケーシング21に形成されるSCR入口26及びSCR出口27も、SCR入口空間24及びSCR出口空間25に位置するように形成されていれば、周壁に設けられていなくてもよく、また、周壁であっても上記した位置に限られない。
【0054】
また、DPFケーシング11及びSCRケーシング21は円筒状の筒状ケーシングに限られるものではなく、DPFケーシング11とSCRケーシング21は同形状のものでなくてもよい。また、連通パイプ9,中間パイプ19及びテールパイプ29は、一般的な円筒状パイプに限られず、その他の筒状のパイプであってもよい。また、全て同一径のパイプであってもよく、違う径のパイプであってもよい。また、連通パイプ9及びテールパイプ29は、直線状のパイプであっても曲線状のパイプであってもよい。
【0055】
また、他の架装物との位置関係から、DPFケーシング11がサイドメンバ2の上面より僅かに上方に位置するように配置されていてもよい。
また、本排気浄化装置1が適用されるのはトラクタに限られず、一般的なトラックやバス等、種々の車両に適用可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 排気浄化装置
2 サイドメンバ
3 エンジン
9 連通パイプ
10 DPF装置(上流側排気浄化装置)
11 DPFケーシング(第一ケーシング)
13 DPF(ディーゼルパティキュレートフィルタ,粒子状物質捕集フィルタ)
14 DPF入口空間(排気上流端)
15 混合室(排気下流端)
16 DPF入口
17 DPF出口(排気出口)
18 添加ノズル(還元剤添加ノズル)
19 中間パイプ
20 下流側排気浄化装置
21 SCRケーシング(第二ケーシング)
22 SCR(選択還元型触媒)
24 SCR入口空間(排気上流端)
25 SCR出口空間(排気下流端)
26 SCR入口(排気入口)
27 SCR出口(排出口)
29 テールパイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子状物質捕集フィルタ(DPF)を筒状の第一ケーシング内に備えた上流側排気浄化装置と、選択還元型触媒(SCR)を前記第一ケーシングとは別個の筒状の第二ケーシング内に備えた下流側排気浄化装置と、前記第一ケーシングと前記第二ケーシングとを連通する中間パイプと、前記SCRに流入する排気中に還元剤を添加する還元剤添加ノズルと、を備えた排気浄化装置において、
前記第一ケーシング及び前記第二ケーシングは、いずれも車両の前後方向に延設されるサイドメンバよりも前記車両の一方の外側であっていずれの軸線も前記車両の車幅方向に向くように配置され、前記第一ケーシング及び前記第二ケーシングの排気上流端がいずれも前記車両内側に位置し、前記第一ケーシング及び前記第二ケーシングの排気下流端がいずれも前記車両外側に位置するように配置され、
前記第一ケーシングは、前記第二ケーシングに対して前記車両の側面視において斜め上方に配置され、前記排気下流端に設けられ前記第一ケーシング内を流通した排気が排出される排気出口を有し、
前記第二ケーシングは、前記排気上流端に設けられ前記第二ケーシング内に前記排気が流入する排気入口を有し、
前記中間パイプは、その主要部が前記第二ケーシングの上方に位置し、前記排気出口と前記排気入口とを連結する
ことを特徴とする、排気浄化装置。
【請求項2】
前記排気出口は、前記第一ケーシングの前記排気上流端の周壁に設けられ、
前記還元剤添加ノズルは、前記排気出口に対向する前記第一ケーシングの前記周壁に設けられ、
前記中間パイプは、その排気上流端部が前記第一ケーシングの前記排気出口から前記還元剤添加ノズルに向けて前記第一ケーシング内に延設される
ことを特徴とする、請求項1記載の排気浄化装置。
【請求項3】
前記第一ケーシングは、前記第二ケーシングよりも前記車両の後方に配置される
ことを特徴とする、請求項1又は2記載の排気浄化装置。
【請求項4】
前記第二ケーシング内を流通した前記排気が排出されるテールパイプをさらに備え、
前記テールパイプは、その上流端が前記第二ケーシングの前記排気下流端に設けられた排出口に接続され、その下流端が前記車両外側に向けて設けられている
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−149535(P2012−149535A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7218(P2011−7218)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】