説明

排気駆動式過給機の軸流タービンの案内羽根装置

【課題】静翼ホルダ(3)に回動可能に配置された多数の静翼(2)を有し、各静翼に付属された調整レバー(5)と、調整レバー(5)全部と協働する調整リング(6)と、調整リングを静翼ホルダに対して相対的に回動させるために前記調整リングに作用する調整装置とによって、すべての静翼に対して静翼(2)の角度位置が一緒に調整される軸流タービンの案内羽根装置において、調整リングの円周にわたる対称的な力導入により調整リングの精密な支持を省くことができるようにする。
【解決手段】調整リング(6)に作用する調整装置が、調整リングの円周に対称的に分布して配置され連結された複数の連結装置(7、8、9)を有し、各連結装置がそれぞれ調整リングに相対して設けられたアクチュエータ(10)によって動かされ、これらのアクチュエータが、稼動中に案内羽根装置において調整リングの自律的な調心が行われるように互いに同期される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求の範囲の請求項1の前文に記載の、特に重油燃料の往復動内燃機関における排気駆動式過給機の軸流タービンの案内羽根装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ターボチャージャ(排気駆動過給機)における排気ガスタービンの静翼(案内羽根)は、アクチュエータと機械的伝動機構を介して、運転状態に関係して調整される。可調整案内羽根装置は、それぞれ回動軸線を中心として回動可能な多数の静翼から成る静翼輪(静翼列)を備えている。その各静翼は、ロータ軸線の周りに同心的に配置され、一般に、調整リングによって調整される。かかる調整リングは連結装置を介してアクチュエータに連結され、そのアクチュエータはエンジンの運転状態に応じて制御して調整される。
【0003】
即ち、例えば特許文献1に、特に重油燃料の往復動内燃機関における排気駆動式過給機の軸流タービンの案内羽根装置が示されている。その案内羽根装置は、タービン車室内に配置され排気ガス流量を制御するために調整装置により調整できる翼を備えている。従って、そのターボチャージャはタービンの可変な幾何学形状を有し、静翼ホルダに回動可能に配置された多数の静翼にそれぞれ調整レバーが付属され、これらの調整レバーと協働する調整リングが設けられ、その調整リングと静翼ホルダとの相対回転によって、静翼の排気ガス流れ方向に対する角度位置が、すべての静翼に対して一緒に調整される。
【0004】
タービンランナおよび案内羽根装置の静翼ホルダは、ターボチャージャの車室内に互いに同心的に支持されている。案内羽根装置の静翼ホルダにおいて、タービンランナを取り囲む多数の静翼の各軸は、回動可能に支持されている。それらの軸は、半径方向に向けられた作用輪郭面を有する調整レバーを備えている。その作用輪郭面は、調整リングにおける内向き案内溝に回動可能に係合している。さらに調整リングは、ターボチャージャ車室内に静翼ホルダに対して同心的に回動可能に支持されている。調整リングは調整装置に機械的に連結され、例えばアクチュエータによって調整装置により動かされる。調整リングが静翼ホルダに対して相対回転されると、調整レバーおよび従って静翼が回動される。
【0005】
調整装置が調整リングの円周に調整力を与えることによって、調整リングの円周に非対称的な力導入が行われる。そのため、一般に、調整リングは、案内羽根装置に、ないしは、静翼ホルダとタービン車室との間に、精密に支持されねばならず、従って、調整リングは、熱的影響(熱膨張)のために、その支持装置に場合により固着してしまうことがある。
【特許文献1】独国特許出願公開第10311205号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、冒頭に述べた形式の案内羽根装置を、調整リングの円周にわたる対称的な力導入によって、調整リングの精密な支持を省くことができるように形成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、本発明に基づいて、調整リングに作用する調整装置が、調整リングの円周に対称的に分布して配置され連結された複数の連結装置を有し、各連結装置がそれぞれ調整リングに相対して設けられたアクチュエータによって動かされ、これらのアクチュエータが、稼動中に案内羽根装置において調整リングの自律的な調心が行われる、ように互いに同期される、ことによって解決される。
【発明の効果】
【0008】
調整装置の連結装置の連結部の対称的分布によって、複数のアクチュエータが同期して回転する場合に、調整リングが自律的に心出しされる。これにより調整リングの精密な支持が不要となり、熱膨張が、固着ないしヒステリシスを生じさせることはない。即ち、連結部の対称的な分布によって、案内羽根装置の軸線に関して調整リングの同心的回転中心が常に保証される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下図を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。
【実施例1】
【0010】
通常、タービンは、軸線を中心として回転可能なロータと、タービン車室1と、案内羽根装置とを有している。そのロータはタービンランナおよびこれに取り付けられた動翼を備え、案内羽根装置は、ロータ(タービン軸線A)に対して軸対称に静翼ホルダ3に配置された多数の調節可能な静翼(案内羽根)2から成る静翼輪(静翼列)を備えている。各静翼2は、半径方向に延びる軸線4を中心とした回転によって、2つの終端位置の間で任意の角度位置に回動できる。
【0011】
案内羽根装置は、公知のように、タービンにおける排気ガス入口室と排気室との間でタービン車室1に保持されている(図2参照)。
【0012】
各静翼2に設けられた調整レバー5は、流路から半径方向外側に案内されている。調整レバー5はその外側に案内された部位が回動軸線を中心として回転可能に支持されている。その回転運動は、流路の外側に配置されタービン軸線Aを中心として回転可能な調整リング6と、この調整リング6のトルクを各静翼2の調整レバー5に伝達する調整要素によって導かれる。
【0013】
調整リング6は静翼ホルダ3に関して回動可能に支持され、その調整リング6と静翼ホルダ3との相対的な回動は、各調整レバー5のそれらの軸線を中心とした回動を引き起こす。その調整レバー5によって、各静翼2もそれらの軸線を中心として回動される。排気ガス流れ方向における静翼2の位置に応じて、圧力ないし圧縮能力が制御される。これにより、内燃機関の種々の運転点において、調整リング6の回動によって、排気駆動式過給機の図示されていない圧縮機側において、空気質量流量および過給圧力の制御が行われ、その場合、静翼2によって、タービン(発生出力/回転数)およびこのタービン(軸)を介して圧縮機が、それぞれ制御される。調整リング6の回動は、連結装置7、8、9の形をした外部調整装置とアクチュエータ10によって行われる。
【0014】
即ち、調整リング6に作用する調整装置は、調整リング6の円周に対称的に分布して配置され連結された複数の連結装置(7、8、9)を有し、これらの連結装置はそれぞれ、タービン車室1に調整リング6に相対して設けられたアクチュエータ10によって動かされる。それらのアクチュエータ10は、稼動中、即ち、アクチュエータ10の駆動状態において、案内羽根装置において調整リング6の自律的な調心が行われるように互いに同期され、即ち、調整リング6に作用する調整力が、案内羽根装置の軸線に関して調整リング6の同心的回転点が常に保証されるように、調整リング6の円周に一様に分布される。
【0015】
この実施例の場合、調整装置は、調整リング6の円周に互いに180°の円周角をずらして配置され連結された2個の連結装置(7、8、9)を有し、これらの連結装置(7、8、9)は、互いに同期されたそれら固有のアクチュエータ10で動かされる。
【0016】
その両アクチュエータ10は、調整力および力の方向に関して、静翼ホルダ3において調整リング6の回動可能な支持が保証されるように互いに同期して作動される。
【0017】
アクチュエータ10は、空気圧式あるいは液圧式調整シリンダとして、あるいは電動機として形成される。
【0018】
本発明の対象として、勿論、他の有利な実施例も考えられる。その実施例の場合、調整装置は、調整リング6の円周に互いに120°の円周角をずらして配置され連結された3個の連結装置(7、8、9)を有し、これらの連結装置(7、8、9)も互いに同期されたそれら固有のアクチュエータ10で動かされる。ここでも同様に、調整リング6の同心的回転点並びにその静翼ホルダ3における回動可能な支持が保証される。
【0019】
ここでは連結装置は、支持部(8)でタービン車室(1)の調整リング(6)に案内され、調整リング(6)に対してスピンドル駆動装置(9)と協働する軸(7)の形態を有している。
【0020】
調整リング6は、連結装置(7、8、9)の連結部の範囲で軸7に案内されているのが有利である。ここでは調整リング6の運動を可能にするために調整リング6は弾力的に形成されているのが有利である。そのために、調整リング6は、静翼2の調整レバー5の連結部の間にくびれ部を有している。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に基づく案内羽根装置の正面図。
【図2】タービン車室に設けられた状態の図1における本発明に基づく案内羽根装置の正面図。
【符号の説明】
【0022】
1 タービン車室
2 静翼(案内羽根)
3 静翼ホルダ
4 回転軸線
5 調整レバー
6 調整リング
7 連結要素
8 連結要素
9 連結要素
10 アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静翼ホルダ(3)に回動可能に配置された複数の静翼(2)を有し、各静翼(2)に付属された調整レバー(5)と、該調整レバー(5)全部と協働する調整リング(6)と、該調整リング(6)を静翼ホルダ(3)に対して相対回転させるために前記調整リング(6)に作用する調整装置とによって、すべての静翼(2)に対して静翼(2)の角度位置が一緒に調整される、特に重油燃料の往復動内燃機関における排気駆動式過給機の軸流タービンの案内羽根装置において、
調整リング(6)に作用する調整装置が、調整リング(6)の円周に対称的に分布して配置され連結された複数の連結装置(7、8、9)を有し、各連結装置(7、8、9)がそれぞれ、調整リング(6)に相対して設けられたアクチュエータ(10)によって動かされ、これらのアクチュエータ(10)が、稼動中に案内羽根装置において調整リング(6)の自律的な調心が行われるように互いに同期されることを特徴とする排気駆動式過給機の軸流タービンの案内羽根装置。
【請求項2】
調整装置が、調整リング(6)の円周に互いに180°の円周角をずらして配置され連結された2個の連結装置(7、8、9)を有し、各連結装置(7、8、9)が互いに同期されたそれら固有のアクチュエータ(10)で動かされることを特徴とする請求項1に記載の案内羽根装置。
【請求項3】
調整装置が、調整リング(6)の円周に互いに120°の円周角をずらして配置され連結された3個の連結装置(7、8、9)を有し、各連結装置(7、8、9)が互いに同期されたそれら固有のアクチュエータ(10)で動かされることを特徴とする請求項1に記載の案内羽根装置。
【請求項4】
アクチュエータ(10)が、空気圧式あるいは液圧式調整シリンダとして、あるいは電動機として形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の案内羽根装置。
【請求項5】
調整リング(6)が連結装置(7、8、9)の連結部の範囲で案内されていることを特徴とする請求項1に記載の案内羽根装置。
【請求項6】
調整リング(6)が弾力的に形成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の案内羽根装置。
【請求項7】
調整リング(6)が静翼(2)の調整レバー(5)の連結部の間にくびれ部を有していることを特徴とする請求項6に記載の案内羽根装置。
【請求項8】
各連結装置が、支持部(8)でタービン車室(1)の調整リング(6)に案内され、調整リング(6)に対してスピンドル駆動装置(9)と協働する軸(7)の形態を有していることを特徴とする請求項1に記載の案内羽根装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−309316(P2007−309316A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−120623(P2007−120623)
【出願日】平成19年5月1日(2007.5.1)
【出願人】(390041520)エムアーエヌ ディーゼル エスエー (59)
【Fターム(参考)】