説明

接合膜付き回路基板、接合膜付き回路基板の接合方法、電子デバイスおよび電子機器

【課題】高温下に晒すことなく、2つの回路基板が備える導体部同士を接合膜を介して物理的かつ電気的に接続し得る接合膜付き回路基板、この接合膜付き回路基板を回路基板に接続し得る接合膜付き回路基板の接合方法、信頼性に優れた電子デバイスおよび高い信頼性が得られる電子機器を提供すること。
【解決手段】本発明の接合膜付き回路基板は、導体ポスト42に電気的に接続して設けられた接合膜80を有している。接合膜80は、導体ポスト42に金属錯体を含有する液状材料を供給し、該液状材料を乾燥焼成することにより設けられ、金属原子と、有機成分で構成される脱離基とを含むものであり、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与したことにより、接合膜80の表面付近に存在する脱離基が接合膜80から脱離することにより、接合膜80の表面に、端子600との接着性が発現し、端子600と導体ポスト42とを物理的かつ電気的に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合膜付き回路基板、接合膜付き回路基板の接合方法、電子デバイスおよび電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2つの基板にそれぞれ設けられた端子同士を物理的かつ電気的に接続する方法として、ロウ材で構成されたボール状の端子(半田ボール)を溶融・再固化する方法が広く用いられている。
かかる方法は、例えば、半導体パッケージを回路基板に実装する際に、半導体パッケージおよび回路基板にそれぞれ設けられた端子同士を接続する際に適用される(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
具体的には、このような半導体パッケージの回路基板への実装は、例えば、以下のようにして行われる。
まず、図9に示すような半導体パッケージ900を用意する。
この半導体パッケージ900は、貫通孔(ビア)901が形成されたインターポーザー902と、インターポーザー902の一方の面(図9中、上面)に設けられた配線パターン903と、インターポーザー902のビア901内に設けられ、配線パターン903の一部と電気的に接続された導体ポスト(端子)904と、インターポーザー902の他方の面(図9中、下面)に臨む導体ポスト904の端面(以下、「接合面904a」と言う。)に接合され、この面から突出するバンプ905と、配線パターン903の上面にその縁部が露出するように設けられた接合層907とを有している。
【0004】
また、半導体パッケージ900は、インターポーザー902の上側に、配線パターン903と電気的に接続された半導体チップ906が、接合層907を介して、載置されている。
かかる構成の半導体パッケージにおいて、バンプ905が上述した半田ボールで構成されている。
【0005】
次に、半導体パッケージ900を実装すべき端子を備える回路基板を用意し、回路基板の端子とバンプ905とが接触するように、回路基板上に半導体パッケージ900を載置する。
次に、これらを加熱してバンプ905を溶融させた後に、冷却して再固化させる半田リフロー工程を経ることにより、バンプ905の再固化物を介して、回路基板の端子と導体ポスト904とが物理的かつ電気的に接合され、これにより、半導体パッケージが回路基板上に実装される。
【0006】
以上のようなバンプ905を溶融・再固化させる半田リフロー工程では、バンプ(半田ボール)905を溶融するために、半導体パッケージ900が高温下(260℃程度)に晒される。かかる高温下に半導体パッケージ900が晒されると、インターポーザー902と半導体チップ906とを接合する接合層907に剥離が生じ、これを起因として、半導体パッケージ900にクラックが生じるという問題がある。
そのため、半導体パッケージ900を高温下に晒すことなく、2つの基板にそれぞれ設けられた端子同士を物理的かつ電気的に接続し得る接続方法が求められている。
【特許文献1】特開2004−6682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、高温下に晒すことなく、2つの回路基板がそれぞれ備える導体部同士を接合膜を介して物理的かつ電気的に確実に接続し得る接合膜付き回路基板、かかる接合膜付き回路基板を回路基板に接続し得る接合膜付き回路基板の接合方法、かかる接合膜付き回路基板を備える信頼性に優れた電子デバイス、および、かかる電子デバイスを備える高い信頼性が得られる電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の接合膜付き回路基板は、第1の導体部を備える回路基板に接続して用いられ、
基板と、該基板に設けられた第2の導体部と、該第2の導体部に電気的に接続して設けられた導電性を有する接合膜とを有し、
前記接合膜は、前記第2の導体部に金属錯体を含有する液状材料を供給し、該液状材料を乾燥・焼成することにより設けられ、前記金属錯体に含まれる金属原子と、有機成分で構成される脱離基とを含み、
前記接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与したことにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が当該接合膜から脱離することにより、前記接合膜の表面の前記領域に、前記第1の導体部との接着性が発現し、前記第1の導体部と前記第2の導体部とを物理的かつ電気的に接続するものであることを特徴とする。
これにより、高温下に晒すことなく、接合膜を介して、接合膜付き回路基板が有する第2の導体部と、回路基板が有する第1の導体部とを、物理的かつ電気的に接続し得る、信頼性に優れた接合膜付き回路基板とすることができる。
【0009】
本発明の接合膜付き回路基板では、前記脱離基は、前記液状材料を乾燥させた後、焼成した際に、前記金属錯体に含まれる有機物の一部が残存したものであることが好ましい。
このように成膜した際に膜中に残存する残存物を脱離基として用いる構成とすることにより、形成された金属膜中に脱離基を導入する必要がなく、比較的簡単な工程で接合膜を形成することができる。
【0010】
本発明の接合膜付き回路基板では、前記焼成の際の焼成温度は、70〜200℃であることが好ましい。
かかる範囲内に設定することにより、金属錯体に含まれる有機物が、その一部を残存させた状態で、金属錯体中から確実に除去されるため、その表面にエネルギーを付与することにより接着性が好適に発現する接合膜を確実に形成することができる。
【0011】
本発明の接合膜付き回路基板では、前記焼成は、不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。
これにより、第2の導体部上に純粋な金属膜が形成されることなく、金属錯体中に含まれる有機物の一部を残存させた状態で接合膜を形成することができる。その結果、接合膜および金属膜としての双方の特性に優れた接合膜を形成することができる。
【0012】
本発明の接合膜付き回路基板では、前記焼成は、減圧下で行われることが好ましい。
これにより、形成される接合膜の膜密度が緻密化して、接合膜をより優れた膜強度を有するものとすることができる。
本発明の接合膜付き回路基板では、前記脱離基は、炭素原子を必須成分とし、水素原子、窒素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子およびハロゲン原子のうちの少なくとも1種を含む原子団で構成されることが好ましい。
これらの脱離基は、エネルギーの付与による結合/脱離の選択性に比較的優れている。このため、エネルギーを付与することによって比較的簡単に、かつ均一に脱離する脱離基が得られることとなり、接合膜の接着性をより高度化することができる。
【0013】
本発明の接合膜付き回路基板では、前記脱離基は、アルキル基を含むことが好ましい。
アルキル基を含む脱離基は、化学的な安定性が高いため、脱離基としてアルキル基を備える接合膜は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなる。
本発明の接合膜付き回路基板では、前記金属原子は、銅、アルミニウム、亜鉛、鉄、インジウムおよびルテニウムのうちの少なくとも1種であることが好ましい。
接合膜を、これらの金属原子を含むものとすることにより、接合膜は、特に優れた導電性を発揮するものとなる。
【0014】
本発明の接合膜付き回路基板では、前記接合膜は、少なくとも2種の前記金属原子を含有し、前記金属原子のうち融点が低い方の金属原子は、その融点が260℃未満であることが好ましい。
これにより、接合膜付き回路基板を回路基板に接続する際に、接合膜と第1の導体部とを接合した後、融点が低い方の金属原子を溶融させれば、接合膜にエネルギーを付与することにより発現した接着性により接合膜と第1の導体部との接合強度をより向上させることができる。
【0015】
本発明の接合膜付き回路基板では、前記融点が低い方の金属原子は、インジウム、セレンおよびリチウムのうちの少なくとも1種であることが好ましい。
このような金属原子を選択すれば、接合膜と第1の導体部との接合強度を向上させつつ、接合膜付き回路基板を、回路基板に対してより高い信頼性をもって接続し得るものとすることができる。
【0016】
本発明の接合膜付き回路基板では、前記接合膜中の金属原子と炭素原子との存在比は、3:7〜7:3であることが好ましい。
金属原子と炭素原子の存在比を前記範囲内になるよう設定することにより、接合膜の安定性が高くなり、接合膜を第1の導体部に対してより確実に接合することができる。また、接合膜をより優れた導電性を発揮するものとすることができる。
【0017】
本発明の接合膜付き回路基板では、前記液状材料は、前記第2の導体部に液滴吐出法を用いて選択的に供給されることが好ましい。
これにより、接合膜を基板上に形成することなく、第2の導体部上に選択的に形成することができる。
本発明の接合膜付き回路基板では、前記接合膜は、その少なくとも表面付近に存在する前記脱離基が、当該接合膜から脱離した後に、活性手が生じることが好ましい。
これにより、第1の導体部に対して、化学的結合に基づいて強固に接合可能な接合膜とすることができる。
【0018】
本発明の接合膜付き回路基板では、前記活性手は、未結合手または水酸基であることが好ましい。
これにより、接合膜は、第1の導体部に対して、特に強固な接合が可能なものとなる。
本発明の接合膜付き回路基板では、前記接合膜の平均厚さは、50〜1000nmであることが好ましい。
これにより、接合膜の寸法精度が著しく低下するのを防止して、接合膜を第1の導体部に対してより確実に接合することができる。
【0019】
本発明の接合膜付き回路基板では、前記接合膜は、流動性を有さない固体状をなしていることが好ましい。
これにより、接合膜自体が寸法精度の高いもの、すなわち、第2の導体部に対応するように設けられた接合膜の高さをほぼ均一なものとすることができる。
本発明の接合膜付き回路基板では、前記第2の導体部の前記接合膜と接している面には、予め、前記接合膜との密着性を高める表面処理が施されていることが好ましい。
これにより、第2の導体部の表面を清浄化および活性化し、接合膜と第2の導体部との接合強度を高めることができる。
【0020】
本発明の接合膜付き回路基板では、前記表面処理は、プラズマ処理であることが好ましい。
これにより、接合膜を形成するために、第2の導体部の表面を特に最適化することができる。
本発明の接合膜付き回路基板の接合方法は、本発明の接合膜付き回路基板を用意し、前記接合膜に前記エネルギーを付与して接着性を発現させる工程と、
前記第1の導体部を備える第1の回路基板を用意し、前記接合膜付き回路基板と前記回路基板とを重ね合わせることにより、前記接合膜に発現した接着性により、前記接合膜を介して前記第1の導体部と前記第2の導体部とを物理的かつ電気的に接続する工程とを有することを特徴とする。
これにより、高温下に晒すことなく、接合膜付き回路基板が有する第2の導体部と、回路基板が有する第1の導体部とを接合膜を介して物理的かつ電気的に接続した状態で、接合膜付き回路基板と回路基板とを接合することができる。
【0021】
本発明の接合膜付き回路基板の接合方法は、本発明の接合膜付き回路基板と、前記第1の導体部を備える回路基板とを用意し、前記第1の導体部と前記接合膜とが当接するように、前記接合膜付き回路基板と前記回路基板とを重ね合わせる工程と、
前記接合膜に前記エネルギーを付与して接着性を発現させることにより、前記接合膜を介して前記第1の導体部と前記第2の導体部とを物理的かつ電気的に接続する工程とを有することを特徴とする。
これにより、高温下に晒すことなく、接合膜付き回路基板が有する第2の導体部と、回路基板が有する第1の導体部とを接合膜を介して物理的かつ電気的に接続した状態で、接合膜付き回路基板と回路基板とを接合することができる。
【0022】
本発明の接合膜付き回路基板の接合方法では、前記エネルギーの付与は、前記接合膜にエネルギー線を照射する方法、前記接合膜を加熱する方法、および前記接合膜に圧縮力を付与する方法のうちの少なくとも1つの方法により行われることが好ましい。
これにより、接合膜に対して比較的簡単に効率よくエネルギーを付与することができる。
【0023】
本発明の接合膜付き回路基板の接合方法では、前記エネルギー線は、波長126〜300nmの紫外線であることが好ましい。
これにより、接合膜に付与されるエネルギー量が最適化されるので、接合膜中の脱離基を確実に脱離させることができる。その結果、接合膜の特性(機械的特性、化学的特性等)が低下するのを防止しつつ、接合膜に接着性を発現させることができる。
【0024】
本発明の接合膜付き回路基板の接合方法では、前記加熱の温度は、25〜100℃であることが好ましい。
これにより、接合体が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合強度を確実に高めることができる。
本発明の接合膜付き回路基板の接合方法では、前記圧縮力は、0.2〜10MPaであることが好ましい。
これにより、圧力が高すぎて接合膜付き回路基板や回路基板に損傷等が生じるのを防止しつつ、接合体の接合強度を確実に高めることができる。
【0025】
本発明の接合膜付き回路基板の接合方法では、前記エネルギーの付与は、大気雰囲気中で行われることが好ましい。
これにより、雰囲気を制御することに手間やコストをかける必要がなくなり、エネルギーの付与をより簡単に行うことができる。
本発明の電子デバイスは、本発明の接合膜付き回路基板を備えることを特徴とする。
これにより、高温下に晒すことなく、回路基板に対して接続し得る信頼性に優れた電子デバイスとすることができる。
【0026】
本発明の電子機器は、本発明の電子デバイスと、該電子デバイスを搭載する前記回路基板とを有し、前記電子デバイスが備える前記第2の導体部と、前記回路基板が備える前記第1の導体部とが前記接合膜を介して物理的かつ電気的に接続されていることを特徴とする。
これにより、第1の導体部と第2の導体部とが接合膜を介して高い寸法精度で強固に接合してなる信頼性の高い電子機器が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の接合膜付き回路基板、接合膜付き回路基板の接合方法、電子デバイスおよび電子機器を、添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<半導体装置>
まず、本発明の電子デバイスを半導体装置に適用した場合の実施形態について説明する。
【0028】
図1は、本発明の電子デバイスを半導体装置に適用した場合の実施形態を示す縦断面図、図2は、図1に示す半導体装置が備える接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図、図3は、図1に示す半導体装置が備える接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図である。なお、以下では、説明の都合上、図1〜図3中の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言う。
【0029】
図1に示す半導体装置(半導体パッケージ)10は、CSP(Chip Size Package)型の半導体パッケージであり、半導体チップ(半導体素子)20と、インターポーザー(基板)30と、配線パターン41と、複数の導体ポスト(第2の導体部)42と、導体ポスト42に対応して複数設けられた接合膜80とを有している。
インターポーザー(支持台)30は、絶縁基板であり、例えばポリイミド等の各種樹脂材料で構成されている。このインターポーザー30の平面視形状は、通常、正方形、長方形等の四角形とされる。
【0030】
インターポーザー30の上面(一方の面)31には、例えば銅等の導電性金属材料で構成される配線パターン41が、所定形状で設けられている。
また、インターポーザー30には、その厚さ方向に貫通して、複数のビア(スルーホール:貫通孔)33が形成されている。このビア内には、導電性材料で構成される導体ポスト(第2の導体部)42が設けられている。
【0031】
導体ポスト42は、その一端(インターポーザー30の上面に臨む端面)が、配線パターン41の一部に電気的に接続されている。また、導体ポスト42の他端(インターポーザー30の下面に臨む端面:以下、「接合面43」と言う。)には、導電性を有する接合膜80が、後述する実装方法において、回路基板が備える端子(第1の導体部)と物理的かつ電気的に接続し得るように設けられている。これにより、接合膜80は、導体ポスト42を介して、配線パターン41の一部に電気的に接続されている。
【0032】
導体ポスト42の構成材料(導電性材料)としては、それぞれ、例えば、Au、Ag、Cu、または、これらを含む合金のような金属系材料、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、アンチモン錫酸化物(ATO)、フッ素含有インジウム錫酸化物(FTO)、酸化亜鉛(ZnO)、二酸化チタン(TiO)のような金属酸化物系材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。さらには、ポリチオフェン、ポリアセチレンのような導電性高分子材料も用いることができる。
【0033】
また、インターポーザー30上には、配線パターン41の一部(本実施形態では、辺縁部を除いた領域)を覆うように、例えばエポキシ系樹脂等の各種樹脂材料で構成される接合層60が設けられ、この接合層60を介して半導体チップ20がインターポーザー30上に支持・固定(設置)されている。
この半導体チップ(半導体素子)20は、これが有する電極パッド21と配線パターン41のうち接合層60で覆われていない部分が、導電性ワイヤー22で電気的に接続されている。これにより、半導体チップ20と各端子602とが電気的に接続されている。
【0034】
そして、インターポーザー30の上面31側に設けられた各部材は、例えばエポキシ系樹脂等の各種樹脂材料で構成されるモールド部50により封止されている。
かかる構成の半導体装置10において、接合膜80は、インターポーザー30の下面(他方の面)32側で接合面43、すなわち、導体ポスト42の下面32側の端部に設けられている。
【0035】
この接合膜80が、本発明では、後述する実装方法において半導体装置10を回路基板600に実装する際に、回路基板600が備える端子602に物理的に接合する接合膜(接着層)としての機能を発揮するとともに、半導体装置10と回路基板600とが電気的に接続する端子としての機能も発揮する。
このように、接合膜として優れた接着性を発揮し、かつ、端子として優れた導電性を発揮する接合膜80は、以下のような構成となっている。
【0036】
接合膜80は、導体ポスト42の接合面43に設けることにより、導体ポスト42と電気的に接続されており、金属錯体に含まれる金属原子と、有機成分で構成される脱離基803とを含むものであり(図2参照。)、後述するように、導体ポスト42に金属錯体を含有する液状材料を供給し、この液状材料を乾燥・焼成することにより形成される。
このような接合膜80は、エネルギーが付与されると、脱離基803が接合膜80の少なくとも表面85付近から脱離し、図3に示すように、接合膜80の少なくとも表面85付近に、活性手804が生じるものである。そして、これにより、接合膜80の表面に接着性が発現する。かかる接着性が発現すると、接合膜80は、後述する回路基板600が備える端子(第1の導体部)602に対して、強固に効率よく接合可能なものとなる。
【0037】
この接合膜80と端子602との接合は、後述するように、半田ボールで構成された半田バンプを用いて行う場合とは異なり、260℃程度の高温下に晒すことなく行い得ることから、接合層60が剥離すること、ひいては、半導体装置10にクラックが生じることが確実に防止される。
また、接合膜80は、金属錯体に含まれる金属原子と、有機成分で構成される脱離基803とを含むものであることから、変形し難い強固な膜となる。さらに、接合膜80は、流動性を有さない固体状をなすものである。これらのため、接合膜80自体が寸法精度の高いもの、すなわち、導体ポスト42に対応するように設けられた各接合膜80の高さをほぼ均一なものとすることができる。そのため、半導体装置10は、後述する実装方法において、半導体装置10を回路基板600に実装する際に、各接合膜80と、これに対応する端子602との接合を確実に行い得るものとなる。その結果、接合膜80を介した導体ポスト42と端子602との接合を、物理的かつ電気的に行うことができる。
【0038】
さらに、金属錯体に含まれる金属原子と、有機成分で構成される接合膜80は、優れた導電性を有している。これにより、接合膜80を介した導体ポスト42と端子602との電気的な接続が、特に低抵抗率なものとなる。
以上のような接合膜80としての機能が好適に発揮されるように、金属錯体に含まれる金属原子および脱離基803が選択される。
【0039】
具体的には、金属原子としては、例えば、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、各種ランタノイド元素、各種アクチノイド元素のような遷移金属元素、Li、Be、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ga、Rb、Sr、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、Tl、Pd、Bi、Poのような典型金属元素等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
ここで、遷移金属元素は、各遷移金属元素間で、最外殻電子の数が異なることのみの差異であるため、物性が類似している。そして、遷移金属は、一般に、硬度や融点が高く、電気伝導性および熱伝導性が高い。このため、金属原子として遷移金属元素を用いた場合、接合膜80に発現する接着性をより高めることができる。また、それとともに、接合膜80の導電性をより高めることができる。
【0041】
また、金属原子として、Cu、Al、Zn、Fe、InおよびRuのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いた場合、接合膜80は、特に、優れた導電性を発揮するものとなる。また、金属錯体を含有する液状材料を乾燥・焼成して接合膜80を得る際に、これらの金属原子を含む金属錯体を原材料として用いることにより、比較的容易にかつ均一な膜厚の接合膜80を成膜することができる。
【0042】
さらに、金属原子として、少なくとも2種の金属原子を組み合わせて用いる場合には、これらの金属原子のうち融点が低い方の金属原子は、その融点が260℃未満であるのが好ましい。これにより、接合膜80と端子602とを接合した後に、融点が低い方の金属原子を溶融させれば、接合膜80にエネルギーを付与することにより発現した接着性により接合膜80と端子602との接合強度をより向上させることができる。
【0043】
このことは、融点が低い方の金属原子を溶融状態とすることにより、融点が低い方の金属原子が接合膜80中を拡散し、融点が高い方の金属原子の周りを取り囲むように配置し、その結果、融点が低い方の金属原子と融点が低い方の金属原子との接触面積が増大することによるものと考えられる。
また、融点が低い方の金属原子として、その融点が260℃未満であるものを選択すれば、接合膜80を加熱する温度を、半田ボールで構成された半田バンプを用いて行う場合よりも低く設定することができるので、半導体装置10にクラックが生じてしまうのを的確に防止または抑制することができる。そのため、半導体装置10は、回路基板600に対してより高い信頼性をもって接続し得るものとなる。
【0044】
かかる観点から、融点が低い方の金属原子の融点は260℃未満であればよいが、140〜180℃程度であるのが好ましい。これにより、接合膜80と端子602との接合強度を向上させつつ、半導体装置10にクラックが生じてしまうのをより的確に防止または抑制することができる。
このような融点が140〜180℃程度である金属原子としては、例えば、インジウム、セレンおよびリチウム等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの金属原子を用いれば、前述したような効果を確実に得ることができる。
【0045】
また、脱離基803は、前述したように、接合膜80から脱離することにより、接合膜80に活性手を生じさせるよう振る舞うものである。したがって、脱離基803には、エネルギーを付与されることによって、比較的簡単に、かつ均一に脱離するものの、エネルギーが付与されないときには、脱離しないよう接合膜80に確実に結合しているものが好適に選択される。
【0046】
具体的には、脱離基803としては、炭素原子を必須成分とし、水素原子、窒素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子およびハロゲン原子のうちの少なくとも1種を含む原子団が好適に選択される。かかる脱離基803は、エネルギーの付与による結合/脱離の選択性に比較的優れている。このため、このような脱離基803は、上記のような必要性を十分に満足し得るものとなり、接合膜80の接着性をより高度なものとすることができる。
【0047】
より具体的には、原子団(基)としては、例えば、メチル基、エチル基のようなアルキル基、メトキシ基、エトキシ基のようなアルコキシ基、カルボキシル基の他、前記アルキル基の末端がイソシアネート基、アミノ基およびスルホン酸基等で終端しているもの等が挙げられる。
以上のような原子団の中でも、脱離基803は、特に、アルキル基を含むのが好ましい。アルキル基を含む脱離基803は、化学的な安定性が高いため、脱離基803としてアルキル基を備える接合膜80は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなる。
【0048】
また、かかる構成の接合膜80において、金属原子と酸素原子の存在比は、3:7〜7:3程度であるのが好ましく、4:6〜6:4程度であるのがより好ましい。金属原子と炭素原子の存在比を前記範囲内になるよう設定することにより、接合膜80の安定性が高くなり、接合膜80を端子602に対してより確実に接合することができる。また、接合膜80をより優れた導電性を発揮するものとすることができる。
【0049】
また、接合膜80の平均厚さは、50〜1000nm程度であるのが好ましく、100〜800nm程度であるのがより好ましい。接合膜80の平均厚さを前記範囲内とすることにより、接合膜80の寸法精度が著しく低下するのを防止して、接合膜80を端子602に対してより確実に接合することができる。
すなわち、接合膜80の平均厚さが前記下限値を下回った場合は、十分な接合強度が得られず、端子602との接合が行われないおそれがある。一方、接合膜80の平均厚さが前記上限値を上回った場合は、接合膜80の寸法精度が著しく低下するおそれがある。
【0050】
さらに、接合膜80の平均厚さが前記範囲内であれば、接合膜80にある程度の形状追従性が確保される。このため、例えば、導体ポスト42の接合面43(接合膜80に隣接する面)に凹凸が存在している場合でも、その凹凸の高さにもよるが、凹凸の形状に追従するように接合膜80を接合させることができる。その結果、接合膜80は、凹凸を吸収して、その表面に生じる凹凸の高さを緩和することができる。そして、半導体装置10を回路基板600に実装する際に、接合膜80の端子602に対する密着性を高めることができる。
【0051】
なお、上記のような形状追従性の程度は、接合膜80の厚さが厚いほど顕著になる。したがって、形状追従性を十分に確保するためには、前記範囲内で、接合膜80の厚さをできるだけ厚くすればよい。
以上説明したような導体ポスト42に接合して設けられた接合膜80は、本発明では、導体ポスト42に、金属錯体を含有する液状材料を供給し、この液状材料を乾燥・焼成することにより形成される。
【0052】
以下、このような金属錯体を含有する液状材料を用いた接合膜80の形成方法について説明する。
[1A]まず、金属錯体を含有する液状材料を、導体ポスト42上に対して選択的に供給し、この液状材料中に含まれる溶媒を除去し乾燥させることにより、導体ポスト42上に乾燥被膜を形成する。
【0053】
液状材料を導体ポスト42上に供給する方法としては、導体ポスト42上に対して選択的に供給し得るものであれば、特に限定されないが、特に、液滴吐出法を用いるのが好ましい。液滴吐出法によれば、液状材料を液滴として導体ポスト42の表面に供給することができるため、たとえ導体ポスト42の形状が微細なものであったとしても、液状材料を導体ポスト42の形状に対応して確実に供給することができる。
【0054】
液滴吐出法としては、特に限定されないが、圧電素子による振動を利用して液状材料を吐出する構成のインクジェット法が好適に用いられる。インクジェット法によれば、目的とする領域(位置)に、液状材料を液滴として、優れた位置精度で供給することができる。また、圧電素子の振動数および液状材料の粘度等を適宜設定することにより、液滴のサイズ(大きさ)を、比較的容易に調整できることから、液滴のサイズを小さくすれば、導体ポスト42の形状に対応してより確実に液状材料を供給することができる。
【0055】
液状材料の粘度(25℃)は、通常、3〜10mPa・s程度であるのが好ましく、4〜8mPa・s程度であるのがより好ましい。液状材料の粘度をかかる範囲とすることにより、液滴の吐出をより安定的に行うことができるとともに、導体ポスト42の形状に対応して描画し得る大きさの液滴を吐出することができる。さらに、この液状材料を乾燥・焼成させた際に、接合膜80を形成するのに十分な量の金属錯体を液状材料中に含有したものとすることができる。
【0056】
また、液状材料の粘度をかかる範囲内とすれば、具体的には、液滴の量(液状材料の1滴の量)を、平均で、0.1〜40pL程度に、より現実的には1〜30pL程度に設定し得る。これにより、導体ポスト42上に供給された際の液滴の着弾径が小さなものとなることから、導体ポスト42が微細な形状のものであったとしても、この形状に対応した接合膜80を確実に形成することができる。
【0057】
さらに、導体ポスト42に供給する液滴の供給量を適宜設定することにより、形成される接合膜80の厚さの制御を比較的容易に行うことができる。
なお、液滴吐出法としては、インクジェット法に限定されず、電気熱変換素子による材料の熱膨張を利用してインクを吐出するバブルジェット法(「バブルジェット」は登録商標)を液滴吐出法として用いるようにしてもよい。バブルジェット法によってもインクジェット法と同様の効果が得られる。
【0058】
液状材料は、前述のように金属錯体を含有し、この金属錯体を材料中に溶解または分散するための溶媒または分散剤を含有するものである。
金属錯体を溶解または分散するための溶媒または分散媒としては、特に限定されず、例えば、アンモニア、水、過酸化水素、四塩化炭素、エチレンカーボネイト等の無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソブタノール等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル系溶媒、ブチルアミン、ドデシルアミンのようなアミン系溶媒、メチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等の硫黄化合物系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル等のニトリル系溶媒、ギ酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸系溶媒のような各種有機溶媒、または、これらを含む混合溶媒等を用いることができる。
【0059】
金属錯体は、液状材料中に含まれ、本工程において、この液状材料を乾燥させることにより形成される乾燥被膜の主材料として構成する。
この金属錯体としては、形成すべき接合膜80の種類に応じて適宜選択され、特に限定されるものではないが、例えば、ビス(2,6−ジメチル−2−(トリメチルシリロキシ)−3,5−ヘプタジオナト)銅(II)(Cu(SOPD);C2446CuOSi)、2,4−ペンタジオネート−銅(II)、Cu(ヘキサフルオロアセチルアセトネート)(ビニルトリメチルシラン)[Cu(hfac)(VTMS)]、Cu(ヘキサフルオロアセチルアセトネート)(2−メチル−1−ヘキセン−3−エン)[Cu(hfac)(MHY)]、Cu(パーフルオロアセチルアセトネート)(ビニルトリメチルシラン)[Cu(pfac)(VTMS)]、Cu(パーフルオロアセチルアセトネート)(2−メチル−1−ヘキセン−3−エン)[Cu(pfac)(MHY)]、ビス(ジピバロイルメタナイト)銅[Cu(DPM)、DMP:C1119]、ビス(ジピバロイルメタナイト)インジウム[In(DPM)]、トリス(ジピバロイルメタナイト)イリジウム[Ir(DPM)]、トリス(ジピバロイルメタナイト)イットリウム[Y(DPM)]、トリス(ジピバロイルメタナイト)ガドリニウム[Gd(DPM)]、ビス(イソブチルピバロイルメタナイト)銅[Cu(IBPM)、IBMP:C1017]トリス(イソブチルピバロイルメタナイト)ルテニウム[Ru(IBPM)]、ビス(ジイソブチリルメタナイト)銅[Cu(DIBM)、DIBM:C15]のようなβジケトン系錯体、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq)、トリス(4−メチル−8キノリノレート)アルミニウム(III)(Almq)、(8−ヒドロキシキノリン)亜鉛(Znq)のようなキノリノール系錯体、銅フタロシアニンのようなフタロシアニン系錯体、トリフルオロ酢酸銅、トリフルオロ酢酸イットリウム、テレフタル酸銅錯体のようなカルボン酸塩系錯体および下記一般式(1)で表わされるギ酸銅錯体等が挙げられる。これらの中でも、βジケトン系錯体を用いるのが好ましい。βジケトン系錯体は、比較的各種溶媒に対して高い溶解性を示すものが多いので、βジケトン系錯体および溶媒の組み合わせを適宜選択することにより、目的とする膜厚を有する接合膜80を形成するのに十分な量のβジケトン系錯体を溶媒中に溶解させることができる。
【0060】
【化1】

[上記一般式(1)中、Cuは2価の銅、RおよびRはそれぞれ置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基を示す。]
【0061】
なお、一般式(1)中のRおよびRのそれぞれの脂肪族炭化水素基は、飽和の脂肪族炭化水素基または不飽和の脂肪族炭化水素基が挙げられる。
飽和の脂肪族炭化水素基としては、アルキル基が挙げられる。例えば、アルキル基として、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、ノナデシル基などの直鎖アルキル基、イソブチル基、1−メチルヘキシル基、1−メチルオクチル基、1−メチルデシル基、1−メチルドデシル基、1−エチルドデシル基、1−メチルヘキサデシル基、1−メチルノナデシル基、tert−ブチル基、1,1−ジメチルヘキシル基、1,1−ジメチルオクチル基、1,1−ジメチルデシル基、1,1−ジメチルドデシル基、1,1−ジメチルヘキサデシル基、1,1−ジメチルノナデシル基などの分岐アルキル基が挙げられる。
【0062】
不飽和の脂肪族炭化水素基としては、アルケニル基またはアルキニル基が挙げられる。 例えば、アルケニル基として、1−ブテニル基、1−ヘキセニル基、1−オクテニル基、1−デセニル基、1−ドデセニル基、1−ヘキサデセニル基、1−ノナデセニル基などの直鎖アルケニル基、イソブテニル基、1−メチル−1−ヘキセニル基、1−メチル−1−オクテニル基、1−メチル−1−デセニル基、1−メチル−1−ドデセニル基、1−メチル−1−ヘキサデセニル基、sec−ブテニル基、1,1−ジメチル−2−ヘキセニル基、1,1−ジメチル−3−オクテニル基、1,1−ジメチル−4−デセニル基、1,1−ジメチル−5−ドデセニル基、1,1−ジメチル−6−ヘキサデセニル基などの分岐アルケニル基が挙げられる。
【0063】
例えば、アルキニル基として、2−ブチニル基、2−ヘキシニル基、2−オクチニル基、2−デシニル基、2−ドデシニル基、2−ヘキサデシニル基、2−ノナデシニル基などの直鎖アルキニル基、イソブチニル基、1−メチル−2−ヘキシニル基、1−メチル−2−オクチニル基、1−メチル−2−デシニル基、1−メチル−2−ドデシニル基、1−メチル−2−ヘキサデシニル基、1,1−ジメチル−2−ヘキシニル基、1,1−ジメチル−3−オクチニル基、1,1−ジメチル−4−デシニル基、1,1−ジメチル−5−ドデシニル基、1,1−ジメチル−6−ヘキサデシニル基などの分岐アルキニル基などが挙げられる。
【0064】
上記のような金属錯体を用いることにより、次工程[2A]において、乾燥被膜を焼成して接合膜80を形成する際に、金属錯体中に含まれる有機物を、その一部を接合膜80中に残存させつつ、金属錯体中から除去する(脱離させる)ことができる。
また、液状材料を乾燥させる際の温度は、金属錯体の種類、および、液状材料に含まれる溶媒または分散剤の種類によっても若干異なるが、25〜100℃程度であるのが好ましく、25〜75℃程度であるのがより好ましい。
液状材料を乾燥させる時間は、0.5〜48時間程度であるのが好ましく、15〜30時間程度であるのがより好ましい。
【0065】
さらに、液状材料を乾燥させる際の雰囲気の圧力は、大気圧下であってもよいが、減圧下であるのがより好ましい。減圧雰囲気下とする場合、減圧の程度は、1×10−7〜1×10−4Torr程度であるのが好ましく、1×10−6〜1×10−5Torr程度であるのがより好ましい。
液状材料を乾燥させる際の条件を上記のように設定することにより、液状材料中から溶媒または分散媒を除去して、主として金属錯体で構成される乾燥被膜を導体ポスト42上に確実に形成することができる。
【0066】
[2A]次に、導体ポスト42上に設けられた乾燥被膜を焼成する。
これにより、乾燥被膜中の金属錯体に含まれる有機物が、その一部を残存させた状態で、金属錯体中から除去される。その結果、金属原子と、有機成分で構成される脱離基とを含む接合膜80がインターポーザー30上に形成されることなく導体ポスト42上に選択的に形成される。
【0067】
このように金属錯体を含む乾燥被膜を焼成して接合膜80を得る方法では、乾燥被膜を焼成した際に、接合膜80中で残存している前記有機物の一部が脱離基803として機能する。このように、本発明では、接合膜80を成膜する際に膜中に残存する有機物の一部(残存物)を脱離基803として用いる構成となっているので、形成した金属膜等に脱離基を導入する必要がなく、金属錯体を含有する液状材料を乾燥・焼成するという比較的簡単な工程で接合膜80を成膜することができる。
【0068】
なお、金属錯体を用いて形成された接合膜80に残存する前記有機物の一部は、その全てが脱離基803として機能するものであってもよいし、その一部が脱離基803として機能するものであってもよい。
また、乾燥被膜を焼成する際の温度は、金属錯体の種類によっても若干異なるが、70〜200℃程度であるのが好ましく、100〜150℃程度であるのがより好ましい。
【0069】
乾燥被膜を焼成する時間は、0.5〜48時間程度であるのが好ましく、15〜30時間程度であるのがより好ましい。
かかる条件で乾燥被膜を焼成することにより、金属錯体に含まれる有機物が、その一部を残存させた状態で、金属錯体中から確実に除去されるため、その表面にエネルギーを付与することにより接着性が好適に発現する接合膜80を確実に形成することができる。
【0070】
さらに、乾燥被膜を焼成する際の雰囲気の圧力は、大気圧下であってもよいが、減圧下であるのがより好ましい。減圧雰囲気下とする場合、減圧の程度は、1×10−7〜1×10−4Torr程度であるのが好ましく、1×10−6〜1×10−5Torr程度であるのがより好ましい。これにより、接合膜80の膜密度が緻密化して、接合膜80をより優れた膜強度を有するものとすることができる。
【0071】
また、乾燥被膜を焼成する際の雰囲気は、特に限定されないが、窒素、アルゴン、ヘリウムのような不活性ガス雰囲気であるのが好ましい。これにより、金属錯体中に含まれる有機物のほぼ全てが除去されることなく、すなわち、導体ポスト42上に純粋な金属膜が形成されることなく、金属錯体中に含まれる有機物の一部を残存させた状態で接合膜80を形成することができる。その結果、接合膜および導電膜としての双方の特性に優れた接合膜80を形成することができる。
【0072】
なお、金属錯体として、2,4−ペンタジオネート−銅(II)や[Cu(hfac)(VTMS)]等のように分子構造中に酸素原子を含有するものを用いる場合には、雰囲気中に、水素ガスを添加するのが好ましい。これにより、酸素原子に対する還元性を向上させることができ、接合膜80に過度の酸素原子が残存することなく、接合膜80を成膜することができる。その結果、この接合膜80は、膜中における金属酸化物の存在率が低いものとなり、優れた導電性を発揮することとなる。
【0073】
以上のようにして、導体ポスト42の接合面43に対して導電性を有する接合膜80を電気的に接続した状態で形成することができる。
なお、導体ポスト42の接合面43には、上記の方法により接合膜80を形成するのに先立って、導体ポスト42の構成材料に応じて、あらかじめ、導体ポスト42と接合膜80との密着性を高める表面処理を施すのが好ましい。
【0074】
かかる表面処理としては、例えば、スパッタリング処理、ブラスト処理のような物理的表面処理、酸素プラズマ、窒素プラズマ等を用いたプラズマ処理、コロナ放電処理、エッチング処理、電子線照射処理、紫外線照射処理、オゾン暴露処理のような化学的表面処理、または、これらを組み合わせた処理等が挙げられる。このような処理を施すことにより、導体ポスト42の接合面43を清浄化するとともに、該領域を活性化させることができる。これにより、接合膜80と導体ポスト42との接合を確実に行うことができる。
【0075】
また、これらの各表面処理の中でもプラズマ処理を用いることにより、接合膜80を形成するために、インターポーザー30の表面を特に最適化することができる。
なお、表面処理を施す接合面43が、導電性高分子材料で構成されている場合には、特に、コロナ放電処理、窒素プラズマ処理等が好適に用いられる。
また、導体ポスト42の構成材料によっては、上記のような表面処理を施さなくても、接合膜80の接合強度が十分に高くなるものがある。このような効果が得られる導体ポスト42の構成材料としては、例えば、前述したような各種金属酸化物系材料等を主材料とするものが挙げられる。
【0076】
このような材料で構成された導体ポスト42は、接合面43が酸化膜で覆われており、この酸化膜の表面には、比較的活性の高い水酸基が結合している。したがって、このような材料で構成された導体ポスト42を用いると、上記のような表面処理を施さなくても、導体ポスト42と端子602とを接合膜80を介して強固に接合することができる。
なお、この場合、導体ポスト42の全体が上記のような材料で構成されていなくてもよく、少なくとも接合面43の表面付近が上記のような材料で構成されていればよい。
【0077】
以上のようにして、導体ポスト42の接合面43に接合膜80を設けることができる。
なお、上記では、接合膜80を導体ポスト42の接合面43に設ける構成について説明したが、接合膜80は、端子602に設けるようにしてもよい。この場合、端子602の表面に、予め、前述したような表面処理を設けるようにすれば、前述したような効果が同様に得られる。
【0078】
なお、かかる構成の半導体装置10において、インターポーザー(基板)30と、導体ポスト(第2の導体部)と、導電性を有する接合膜80とにより本発明の接合膜付き回路基板が構成される。
さらに、接合膜80は、導体ポスト42と端子602の双方に設けるようにしてもよい。なお、この場合、表面処理は、導体ポスト42と端子602の双方に行ってもよく、いずれか一方に選択的に行うようにしてもよい。
【0079】
次に、上述した半導体装置の製造方法(接合膜80を介した導体ポスト42と端子602との接合方法)について説明する。
図4および図5は、それぞれ、図1に示す半導体装置の製造方法(製造工程)を説明するための図である。なお、以下では説明の都合上、図4および図5中の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言う。
【0080】
[1B]まず、インターポーザー30となる基板を用意し、ビア33を形成することにより、インターポーザー30を得る(図4(a)参照)。
ビア33は、基板の上面に、ビア33に対応する領域に窓部を有するレジストマスクを形成し、このレジストマスクを介して、基板をエッチングすることにより形成することができる。
エッチング方法としては、例えば、プラズマエッチング、リアクティブイオンエッチング、ビームエッチング、光アシストエッチング等のうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0081】
[2B]次に、前記工程[1B]で得られたインターポーザー30のビア33内に導体ポスト42を形成し、次いで、インターポーザー30の一方の面に、配線パターン41を形成する(図4(b)参照)。
導体ポスト42は、例えば、導電性材料を含有する液状導電材料(ペースト)を、ビア33内に供給した後、乾燥さらには必要に応じて焼成することにより形成することができる。
【0082】
なお、前記液状導電材料としては、例えば、銀ペースト、ITO粒子のような金属酸化物粒子の分散液等を用いることができる。
また、前記液状導電材料をビア33内に供給する方法としては、例えば、液滴吐出法(インクジェット法)、スピンコート法、マイクロコンタクトプリンティング法のような各種塗布法等が挙げられるが、特に、インクジェット法を用いるのが好ましい。インクジェット法によれば、液状導電材料を容易かつ確実にビア33内に供給することができる。
【0083】
なお、導体ポスト42は、かかる形成方法の他、気相成膜法を用いて形成することも可能である。
また、配線パターン41は、インターポーザー30の上面全体に、導電膜を形成した後、この導電膜上に配線パターン41に対応するマスクを形成し、このマスクを介して、導電膜の不要部分を除去することによって形成することができる。
【0084】
導電膜を形成する方法としては、例えば、プラズマCVD、熱CVD、レーザーCVDのような化学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリング(低温スパッタリング)、イオンプレーティング等の乾式メッキ法、電解メッキ、浸漬メッキ、無電解メッキ等の湿式メッキ法、溶射法、ゾル・ゲル法、MOD法、金属箔の接合等が挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、導電膜の除去には、例えば、プラズマエッチング、リアクティブイオンエッチング、ビームエッチング、光アシストエッチング等の物理的エッチング法、ウェットエッチング等の化学的エッチング法等のうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0085】
[3B]次に、導体ポスト42の接合面43に電気的に接続するように、前述したような接合膜の形成方法を用いて、接合膜80を形成する(図4(c)参照)。
[4B]次に、インターポーザー30の配線パターン41を形成した上面31に、その辺縁部を除いて接合層60を形成する(図4(d)参照)。
接合層60は、インターポーザー30の上面に、辺縁部を覆うようにマスクを形成し、そして、このマスクを介して、例えば樹脂接着剤を供給することによって形成した後、マスクを除去することにより得ることができる。
樹脂接着剤の供給方法としては、例えば、前述の液状導電材料の供給方法と同様の方法を挙げることができる。
【0086】
[5B]次に、接合層60に、半導体チップ20を固着し、半導体チップ20に設けられた電極パッド21と、配線パターン41とを電気的に接続する(図5(e)参照)。
半導体チップ20の固着は、例えば、接合層60の上に、半導体チップ20を載置し、接合層60を硬化することにより行われる。
また、電極パッド21と配線パターン41との電気的な接続は、半導体チップ20の電極パッド21と、接合層60から露出する配線パターン41とを導電性ワイヤー22で接続(ワイヤボンディング)することにより行われる。
【0087】
[6B]次に、インターポーザー30上に、上面31側に設けられた各部材を覆うようにモールド部50を形成する(図5(f)参照)。
モールド部50は、例えば、インターポーザー30が搬入された成型金型内に、溶融状態の樹脂を充填し、仮硬化した後、成型金型からインターポーザー30を取り出し、樹脂を完全に硬化させることによって形成することができる。
以上のようにして、本発明の電子デバイスが適用された半導体装置10すなわち本発明の接合膜付き回路基板を備える半導体装置10を得ることができる。
【0088】
<実装方法>
次に、上述した半導体装置10を、導体部を備える回路基板に、本発明の接合膜付き回路基板の接合方法を用いて、実装(接続)する方法について説明する。
<<第1実装方法>>
まず、半導体装置10の第1実装方法について説明する。
図6は、図1に示す半導体装置を回路基板に実装する第1実装方法を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下では、説明の都合上、図6中の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言う。
【0089】
[S1]まず、本発明の接合膜付き回路基板を備える半導体装置10を用意し、接合膜80の表面85に対して(インターポーザー30の他方の面32全体にわたって)、エネルギーを付与する。
ここで、接合膜80にエネルギーを付与すると、接合膜80では、脱離基803の結合手が切れて接合膜80の表面85付近から脱離し、脱離基803が脱離した後には、活性手が接合膜80の表面85付近に生じる。これにより、接合膜80の表面85に、端子602との接着性が発現する。
【0090】
このような状態の接合膜80は、後工程[S3]において、化学的結合に基づいて、端子602と強固に接合可能なものとなる。
ここで、接合膜80に付与するエネルギーは、いかなる方法を用いて付与されるものであってもよいが、例えば、接合膜80にエネルギー線を照射する方法、接合膜80を加熱する方法、接合膜80に圧縮力(物理的エネルギー)を付与する方法、接合膜80をプラズマに曝す(プラズマエネルギーを付与する)方法、接合膜80をオゾンガスに曝す(化学的エネルギーを付与する)方法等が挙げられる。中でも、本実施形態では、接合膜80にエネルギーを付与する方法として、特に、接合膜80にエネルギー線を照射する方法を用いるのが好ましい。かかる方法は、接合膜80に対して比較的簡単に効率よくエネルギーを付与することができるので、エネルギーを付与する方法として好適に用いられる。
【0091】
このうち、エネルギー線としては、例えば、紫外線、レーザ光のような光、X線、γ線、電子線、イオンビームのような粒子線等や、またはこれらのエネルギー線を2種以上組み合わせたものが挙げられる。
これらのエネルギー線の中でも、特に、波長126〜300nm程度の紫外線を用いるのが好ましい(図6(a)参照)。かかる範囲内の紫外線によれば、付与されるエネルギー量が最適化されるので、接合膜80中の脱離基803を確実に脱離させることができる。これにより、接合膜80の特性(機械的特性、化学的特性等)が低下するのを防止しつつ、接合膜80に接着性を確実に発現させることができる。
【0092】
また、紫外線によれば、広い範囲をムラなく短時間に処理することができるので、脱離基803の脱離を効率よく行わせることができる。さらに、紫外線には、例えば、UVランプ等の簡単な設備で発生させることができるという利点もある。
なお、紫外線の波長は、より好ましくは、126〜200nm程度とされる。
また、UVランプを用いる場合、その出力は、接合膜80の面積に応じて異なるが、1mW/cm〜1W/cm程度であるのが好ましく、5mW/cm〜50mW/cm程度であるのがより好ましい。なお、この場合、UVランプと接合膜80との離間距離は、3〜3000mm程度とするのが好ましく、10〜1000mm程度とするのがより好ましい。
【0093】
また、紫外線を照射する時間は、接合膜80の表面85付近の脱離基803を脱離し得る程度の時間、すなわち、接合膜80に必要以上に紫外線が照射されない程度の時間とするのが好ましい。これにより、接合膜80が変質・劣化するのを効果的に防止することができる。具体的には、紫外線の光量、接合膜80の構成材料等に応じて若干異なるものの、0.5〜30分程度であるのが好ましく、1〜10分程度であるのがより好ましい。
【0094】
また、紫外線は、時間的に連続して照射されてもよいが、間欠的(パルス状)に照射されてもよい。
一方、レーザ光としては、例えば、エキシマレーザのようなパルス発振レーザ(パルスレーザ)、炭酸ガスレーザ、半導体レーザのような連続発振レーザ等が挙げられる。中でも、パルスレーザが好ましく用いられる。パルスレーザでは、接合膜80のレーザ光が照射された部分に経時的に熱が蓄積され難いので、蓄積された熱による接合膜80の変質・劣化を確実に防止することができる。すなわち、パルスレーザによれば、接合膜80の内部にまで蓄積された熱の影響がおよぶのを、防止することができる。
【0095】
また、パルスレーザのパルス幅は、熱の影響を考慮した場合、できるだけ短い方が好ましい。具体的には、パルス幅が1ps(ピコ秒)以下であるのが好ましく、500fs(フェムト秒)以下であるのがより好ましい。パルス幅を前記範囲内にすれば、レーザ光照射に伴って接合膜80に生じる熱の影響を、的確に抑制することができる。なお、パルス幅が前記範囲内程度に小さいパルスレーザは、「フェムト秒レーザ」と呼ばれる。
【0096】
また、レーザ光の波長は、特に限定されないが、例えば、200〜1200nm程度であるのが好ましく、400〜1000nm程度であるのがより好ましい。
また、レーザ光のピーク出力は、パルスレーザの場合、パルス幅によって異なるが、0.1〜10W程度であるのが好ましく、1〜5W程度であるのがより好ましい。
さらに、パルスレーザの繰り返し周波数は、0.1〜100kHz程度であるのが好ましく、1〜10kHz程度であるのがより好ましい。パルスレーザの周波数を前記範囲内に設定することにより、レーザ光を照射した部分の温度が著しく上昇して、脱離基803を接合膜80の表面85付近から確実に切断することができる。
【0097】
なお、このようなレーザ光の各種条件は、レーザ光を照射された部分の温度が、好ましくは常温(室温)〜600℃程度、より好ましくは200〜600℃程度、さらに好ましくは300〜400℃程度になるように適宜調整されるのが好ましい。これにより、レーザ光を照射した部分の温度が著しく上昇して、脱離基803を接合膜80から確実に切断することができる。
【0098】
また、接合膜80に照射するレーザ光は、その焦点を、接合膜80の表面85に合わせた状態で、この表面85に沿って走査されるようにするのが好ましい。これにより、レーザ光の照射によって発生した熱が、表面85付近に局所的に蓄積されることとなる。その結果、接合膜80の表面85に存在する脱離基803を選択的に脱離させることができる。
【0099】
また、接合膜80に対するエネルギー線の照射は、いかなる雰囲気中で行うようにしてもよく、具体的には、大気、酸素のような酸化性ガス雰囲気、水素のような還元性ガス雰囲気、窒素、アルゴンのような不活性ガス雰囲気、またはこれらの雰囲気を減圧した減圧(真空)雰囲気等が挙げられるが、中でも、特に、大気雰囲気中で行うのが好ましい。これにより、雰囲気を制御することに手間やコストをかける必要がなくなり、エネルギー線の照射をより簡単に行うことができる。
【0100】
このように、エネルギー線を照射する方法によれば、接合膜80の表面85付近に対して選択的にエネルギーを付与することが容易に行える。そのため、ろう材で構成される半田ボールを用いて端子と接合する場合のように半導体装置10を高温下(260℃程度)に晒す必要がないため、インターポーザー30および接合膜80の変質・劣化、さらには、接合層60における剥離の発生が確実に防止され、ひいては、得られる半導体装置10におけるクラックの発生等に起因する変質・劣化が確実に防止される。
【0101】
また、エネルギー線を照射する方法によれば、付与するエネルギーの大きさを、精度よく簡単に調整することができる。このため、接合膜80から脱離する脱離基803の脱離量を調整することが可能となる。このように脱離基803の脱離量を調整することにより、接合膜80と端子602との間の接合強度を容易に制御することができる。
すなわち、脱離基803の脱離量を多くすることにより、接合膜80の表面85付近に、より多くの活性手が生じるため、接合膜80に発現する接着性をより高めることができる。一方、脱離基803の脱離量を少なくすることにより、接合膜80の表面85付近に生じる活性手を少なくし、接合膜80に発現する接着性を抑えることができる。
【0102】
なお、付与するエネルギーの大きさを調整するためには、例えば、エネルギー線の種類、エネルギー線の出力、エネルギー線の照射時間等の条件を調整すればよい。
さらに、エネルギー線を照射する方法によれば、短時間で大きなエネルギーを付与することができるので、エネルギーの付与をより効率よく行うことができる。
【0103】
ここで、エネルギーが付与される前の接合膜80は、図2に示すように、その表面85付近に脱離基803を有している。かかる接合膜80にエネルギーを付与すると、脱離基803(図2では、メチル基)が接合膜80から脱離する。これにより、図3に示すように、接合膜80の表面85に活性手804が生じ、活性化される。その結果、接合膜80の表面に接着性が発現する。
【0104】
ここで、本明細書中において、接合膜80が「活性化された」状態とは、上述のように接合膜80の表面85および内部の脱離基803が脱離して、接合膜80の構成原子において終端化されていない結合手(以下、「未結合手」または「ダングリングボンド」とも言う。)が生じた状態の他、この未結合手が水酸基(OH基)によって終端化された状態、さらに、これらの状態が混在した状態を含めて、接合膜80が「活性化された」状態と言うこととする。
【0105】
したがって、活性手804とは、図3に示すように、未結合手(ダングリングボンド)、または未結合手が水酸基によって終端化されたもののことを言う。このような活性手804が存在するようにすれば、接合膜80に対して、端子602をより確実に接合することが可能となる。
なお、後者の状態(未結合手が水酸基によって終端化された状態)は、例えば、接合膜80に対して大気雰囲気中でエネルギー線を照射することにより、大気中の水分が未結合手を終端化することによって、容易に生成されることとなる。
【0106】
また、本実装方法では、接合膜80と端子602とを接着する(接合する)前に、予め、接合膜80に対してエネルギーを付与する場合について説明しているが、かかるエネルギーの付与は、接合膜80と端子602とを接合する(接合膜80上に端子602を搭載する)際、または貼り合わせた(接合膜80上に端子602を搭載する)後に行うようにしてもよい。なお、このような場合については、後述する第2実装方法において説明する。
【0107】
[S2]次に、図6(b)に示すような回路基板600を用意する。
本実施形態では、回路基板600は、配線パターン(図示せず)が形成された平板状の基体(基板)601と、配線パターンに接続された複数の端子(第1の導体部)602とを有している。
次いで、前記工程[S1]において、接合膜80に対してエネルギーを付与された半導体装置10を、図6(c)に示すように、活性化させた接合膜80と端子602の表面とが当接するようにして、半導体装置10と回路基板600とを重ね合わせることにより、接合膜80を端子602に接触させる。これにより、前記工程[S1]において、接合膜80が端子602に対する接着性が発現していることから、接合膜80と端子602とが化学的に結合することとなり、接合膜80が端子602に接着する。その結果、接合膜80を介して、導体ポスト42と端子602とが物理的かつ電気的に接続される。
【0108】
ここで、本工程において、接合膜80と端子602とを接合するメカニズムについて説明する。
例えば、端子602の接合膜80との接合に供される領域に、水酸基が露出していると、本工程において、接合膜80と端子602とが接触するように、接合膜80上に端子602を搭載したとき、接合膜80の表面85に存在する水酸基と、端子602に存在する水酸基とが、水素結合によって互いに引き合い、水酸基同士の間に引力が発生する。この引力によって、接合膜80と端子602とが接合されると推察される。
【0109】
また、この水素結合によって互いに引き合う水酸基同士は、温度条件等によって、脱水縮合を伴って表面から切断される。その結果、接合膜80と端子602との接触界面では、水酸基が結合していた結合手同士が結合する。これにより、接合膜80と端子602とが接合されると推察される。
以上のようにして、回路基板600上に半導体装置10が実装(搭載)される。
【0110】
なお、接合膜80中に、少なくとも2種の金属原子が含まれる場合には、接合膜80と端子602とを接続した後に、これらのうち融点が低い方の金属原子の融点付近の温度で接合膜80を加熱する。これにより、融点が低い方の金属原子と融点が低い方の金属原子との接触面積が増大することに起因して、接合膜80と端子602との接合強度をより向上させることができる。
【0111】
このようにして得られた半導体装置10が実装された回路基板600では、半田ボールと端子602との接合のように、物理的結合に基づく接着ではなく、共有結合のような短時間で生じる強固な化学的結合に基づいて、接合膜80と端子602とが接合されている。このため、半導体装置10を回路基板600上に短時間で実装することができ、かつ、接合膜80が端子602から極めて剥離し難く、接合ムラ等も生じ難いものとなる。
【0112】
さらに、半田ボールと端子602との接合のように、半導体装置10を高温下(260℃程度)に晒す必要がないため、インターポーザー30および接合膜80の変質・劣化、さらには、接合層60における剥離の発生が確実に防止され、ひいては、半導体装置10におけるクラックの発生等に起因する変質・劣化が確実に防止される。
また、接合膜80自体が、優れた導電性を有し、電導体(配線)としての機能も発揮するものであることから、絶縁性の接着剤を用いて接合した場合とは異なり、接着剤中に銀粒子等の導電体を含有させることなく、導体ポスト42および端子602間での導通を確実に得ることができる。
【0113】
さらに、接合膜80を介して導体ポスト42と端子602とを接合しているため、導体ポスト42や端子602の構成材料に制約がないという利点も得られ、導体ポスト42および端子602の各構成材料の選択の幅をそれぞれ広げることができる。
また、前記工程[S1]で活性化された接合膜80の表面は、その活性状態が経時的に緩和してしまう。このため、前記工程[S1]の終了後、できるだけ早く本工程[S2]を行うようにするのが好ましい。具体的には、前記工程[S1]の終了後、60分以内に本工程[S2]を行うようにするのが好ましく、5分以内に行うのがより好ましい。かかる時間内であれば、接合膜80の表面が十分な活性状態を維持しているので、本工程で接合膜80上に端子602を搭載したとき、これらの間に十分な接合強度を得ることができる。
【0114】
換言すれば、活性化させる前の接合膜80は、脱離基803を備えた状態で化学的に比較的安定な膜であり、耐候性に優れている。このため、活性化させる前の接合膜80は、長期にわたる保存に適したものとなる。したがって、そのような接合膜80が形成された半導体装置10を多量に製造または購入して保存しておき、本実装方法を行う直前に、必要な個数のみに前記工程[S1]に記載したエネルギーの付与を行う構成とすることは、半導体装置10の保存上の観点から現実的である。
【0115】
なお、以上説明したような回路基板600が備える端子602には、導体ポスト42と同様に、端子602の構成材料に応じて、接合を行う前に、あらかじめ、端子602と接合膜80との密着性を高める表面処理を施すのが好ましい。これにより、接合膜80と端子602との接合強度をより高めることができる。
また、表面処理としては、導体ポスト42に対して施す前述したような表面処理と同様の処理を適用することができる。
さらに、端子602を接合する際、または、端子602を接合した後に、必要に応じ、以下の2つの工程([S3A]および[S3B])のうちの少なくとも一方の工程(導体ポスト42と端子602との接合をより確実にするための工程)を行うようにしてもよい。これにより、導体ポスト42と端子602との接合がより確実なものなる。
【0116】
[S3A] 本工程では、前記工程[S2]で得られた、半導体装置10が実装された回路基板600を、導体ポスト42と端子602とが互いに近づく方向に加圧する。
これにより、導体ポスト42の表面および端子602の表面に、それぞれ接合膜80の表面がより近接し、接合膜80を介した導体ポスト42と端子602との接合をより確実なものとすることができる。
【0117】
また、半導体装置10が実装された回路基板600を加圧することにより、接合膜80との接合界面に残存していた隙間を押し潰して、接合面積をさらに広げることができる。これにより、接合膜80を介した導体ポスト42と端子602との接合をより確実なものとすることができる。
このとき、半導体装置10が実装された回路基板600を加圧する際の圧力は、半導体装置10および回路基板600が損傷を受けない程度の圧力で、できるだけ高い方が好ましい。これにより、この圧力に比例して、接合膜80を介した導体ポスト42と端子602との接合がより確実なものとなる。
【0118】
なお、この圧力は、導体ポスト42および端子602の各構成材料、接合装置等の条件に応じて、適宜調整すればよい。具体的には、導体ポスト42および端子602の各構成材料等に応じて若干異なるものの、0.2〜10MPa程度であるのが好ましく、1〜5MPa程度であるのがより好ましい。これにより、接合膜80を介した導体ポスト42と端子602との接合がより確実なものとなる。なお、この圧力が前記上限値を上回っても構わないが、導体ポスト42、端子602および半導体チップ20等の各構成材料によっては、導体ポスト42、端子602および半導体チップ20等に損傷等が生じるおそれがある。
また、加圧する時間は、特に限定されないが、10秒〜30分程度であるのが好ましい。なお、加圧する時間は、加圧する際の圧力に応じて適宜変更すればよい。具体的には、半導体装置10が実装された回路基板600を加圧する際の圧力が高いほど、加圧する時間を短くしても、接合強度の向上を図ることができる。
【0119】
[S3B] 本工程では、前記工程[S2]で得られた、半導体装置10が実装された回路基板600を加熱する。
これにより、接合膜80を介した導体ポスト42と端子602との接合をより確実なものとすることができる。
このとき、半導体装置10が実装された回路基板600を加熱する際の温度は、特に限定されないが、好ましくは25〜100℃程度に設定され、より好ましくは50〜100℃程度に設定される。かかる範囲の低温度での加熱であれば、半導体装置10中で接合層60に剥離が生じるのが確実に防止される。また、接合膜80を介した導体ポスト42と端子602との接合をより確実なものとすることができる。
【0120】
さらに、加熱時間は、特に限定されないが、1〜30分程度であるのが好ましい。
また、前記工程[S3A]、[S3B]の双方を行う場合、これらを同時に行うのが好ましい。すなわち、半導体装置10が実装された回路基板600を加圧しつつ、加熱するのが好ましい。これにより、加圧による効果と、加熱による効果とが相乗的に発揮され、接合膜80を介した導体ポスト42と端子602との接合をさらに確実なものとすることができる。
【0121】
以上のような工程を行うことにより、半導体装置10が実装された回路基板600における接合膜80の接合強度のさらなる向上を容易に図ることができる。
なお、本実装方法で説明した、回路基板600は、基体601上に配線パターンが形成されているものとしたが、これには限定されず、半導体チップ20のように半導体基板上に半導体回路が形成されているものであってもよい。
【0122】
<<第2実装方法>>
次に、半導体装置10の第2実装方法について説明する。
図7は、図1に示す半導体装置の第2実装方法(製造工程)を説明するための図である。なお、以下では、説明の都合上、図7中の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言う。
【0123】
以下、第2実装方法について説明するが、前記第1実装方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
第2実装方法では、接合膜80と端子602とが接触するように、回路基板600上に半導体装置10を載置した後に、接合膜80にエネルギーを付与して、接合膜80に端子602を接合するようにした以外は、前記第1実装方法と同様である。
【0124】
すなわち、本実装方法では、半導体装置10が備える接合膜80の表面と、回路基板600が備える端子602の表面とが密着するように、回路基板600上に半導体装置10を載置した後、接合膜80に対してエネルギーを付与して接合膜80を活性化させて、接合膜80と端子602とを接合させることにより、回路基板600上に半導体装置10を実装する。
【0125】
以下、半導体装置10の第2実装方法について説明する。
[S1’]まず、半導体装置10と、回路基板600を用意し、その後、接合膜80と端子602とが当接するように、回路基板600と、半導体装置10とを重ね合わせる(図7(a)参照。)。
[S2’]次に、図7(b)に示すように、接合膜80に対してエネルギーを付与する。接合膜80にエネルギーが付与されると、接合膜80に、端子602との接着性が発現する。これにより、接合膜80を介して導体ポスト42と端子602とが物理的かつ電気的に接続され、その結果、回路基板600上に半導体装置10が実装される。
【0126】
ここで、接合膜80に付与するエネルギーは、いかなる方法で付与されてもよいが、例えば、前記第1実装方法で挙げたような方法で付与される。
また、本実装方法では、接合膜80にエネルギーを付与する方法としては、特に、接合膜80を加熱する方法、および接合膜80に圧縮力(物理的エネルギー)を付与する方法のうちの少なくとも一方を用いるのが好ましい。これらの方法は、接合膜80に対して比較的簡単に効率よくエネルギーを付与することができるので、エネルギー付与方法として好適である。
【0127】
一方、接合膜80を加熱することにより、接合膜80に対してエネルギーを付与する場合には、加熱温度を25〜100℃程度に設定するのが好ましく、50〜100℃程度に設定するのがより好ましい。かかる範囲の低温度での加熱であれば、半導体装置10中で接合層60に剥離が生じるのが確実に防止される。また、接合膜80を確実に活性化させることができる。
【0128】
また、加熱時間は、接合膜80の脱離基803を脱離し得る程度の時間とすればよく、具体的には、加熱温度が前記範囲内であれば、1〜30分程度であるのが好ましい。
また、接合膜80は、いかなる方法で加熱されてもよいが、例えば、ヒータを用いる方法、赤外線を照射する方法等の各種方法で加熱することができる。
なお、赤外線を照射する方法を用いる場合には、導体ポスト42または端子602は、光吸収性を有する材料で構成されているのが好ましい。これにより、赤外線を照射された導体ポスト42または端子602は、効率よく発熱する。その結果、接合膜80を効率よく加熱することができる。
【0129】
また、ヒータを用いる方法を用いる場合には、導体ポスト42または端子602のうちヒータを接触させる側の部材は、熱伝導性に優れた材料で構成されているのが好ましい。これにより、導体ポスト42または端子602を介して、接合膜80に対して効率よく熱を伝えることができ、接合膜80を効率よく加熱することができる。
また、接合膜80に圧縮力を付与することにより、接合膜80に対してエネルギーを付与する場合には、導体ポスト42と端子602とが互いに近づく方向に、0.2〜10MPa程度の圧力で圧縮するのが好ましく、1〜5MPa程度の圧力で圧縮するのがより好ましい。これにより、単に圧縮するのみで、接合膜80に対して適度なエネルギーを簡単に付与することができ、接合膜80に、端子602との十分な接着性が発現する。なお、この圧力が前記上限値を上回っても構わないが、導体ポスト42、端子602および半導体チップ20等の各構成材料によっては、導体ポスト42、端子602および半導体チップ20等に損傷等が生じるおそれがある。
【0130】
また、圧縮力を付与する時間は、特に限定されないが、10秒〜30分程度であるのが好ましい。なお、圧縮力を付与する時間は、圧縮力の大きさに応じて適宜変更すればよい。具体的には、圧縮力の大きさが大きいほど、圧縮力を付与する時間を短くすることができる。
以上のようにして、半導体装置10を回路基板600に実装(接続)することができる。
【0131】
なお、本実施形態では、本発明の電子デバイスを半導体装置に適用し、本発明の接合方法を用いて、この半導体装置を回路基板上に実装(接続)する場合について説明したが、このような場合に限定されず、本発明の電子デバイスは、有機エレクトロルミネッセンス素子、発光ダイオード、半導体レーザーのような発光素子、コンデンサー、ダイオード、チップコイルのような電子部品および等に適用でき、これらを本発明の接合方法を用いて、回路基板上に接続することができる。
【0132】
<電子機器>
次に、上述した半導体装置10を備える本発明の電子機器について説明する。
なお、以下では、本発明の電子機器の一例として、携帯電話を代表に説明する。
図8は、本発明の電子機器が適用された携帯電話の実施形態を示す斜視図である。
図8に示す携帯電話は、表示部1001を備える携帯電話本体1000を有している。携帯電話本体1000には、例えば、上述した半導体装置10が、表示部1001が備える回路基板600に搭載された状態で内蔵されており、これは、表示部1001における画像の表示を制御する制御手段等として用いられる。
【0133】
なお、半導体装置10は、図8で説明した携帯電話の他に、種々の電子機器に対して適用できる。
例えば、テレビや、ビデオカメラ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニタ、電子双眼鏡、POS端末、タッチパネルを備えた機器(例えば金融機関のキャッシュディスペンサー、自動券売機)、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電表示装置、超音波診断装置、内視鏡用表示装置)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシュミレータ、その他各種モニタ類、プロジェクター等の投射型表示装置等にも適用できる。
【0134】
以上、本発明の接合膜付き回路基板、接合膜付き回路基板の接合方法、電子デバイスおよび電子機器を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。例えば、半導体装置(電子デバイス)を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。具体的には、前記実施形態では、半導体チップの配線パターンとがワイヤボンディングによって接続されているが、本発明の半導体装置は、半導体チップと配線パターンとがTAB(テープオートメイテッドボンディング)によって接合されたものであってもよい。
また、前記本実施形態では、回路基板が備える端子に接合膜を接合する場合について説明したが、接合膜を接合する部位は、回路基板が備える回路の一部、すなわち、導体部のいかなる部位であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】本発明の電子デバイスを半導体装置に適用した場合の実施形態を示す図(縦断面図)である。
【図2】図1に示す半導体装置が備える接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図である。
【図3】図1に示す半導体装置が備える接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図である。
【図4】図1に示す半導体装置の製造方法を説明するための図(縦断面図)である。
【図5】図1に示す半導体装置の製造方法を説明するための図(縦断面図)である。
【図6】図1に示す半導体装置を回路基板に実装する第1実装方法を説明するための図(縦断面図)である。
【図7】図1に示す半導体装置を回路基板に実装する第2実装方法を説明するための図(縦断面図)である。
【図8】本発明の電子機器が適用された携帯電話の実施形態を示す斜視図である。
【図9】半田ボールを備える半導体装置の一例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0136】
10……半導体装置 20……半導体チップ 21……電極パッド 22……導電性ワイヤー 30……インターポーザー 31……上面(一方の面) 32……下面(他方の面) 33……ビア 41……配線パターン 42……導体ポスト 43……接合面 50……モールド部 60……接合層 80……接合膜 803……脱離基 804……活性手 85……表面 600……回路基板 601……基体 602……端子 900……半導体パッケージ 901……貫通孔(ビア) 902……インターポーザー 903……配線パターン 904……導体ポスト 904a……接合面 905……バンプ 906……半導体チップ 907……接合層 1000……携帯電話本体 1001……表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導体部を備える回路基板に接続して用いられ、
基板と、該基板に設けられた第2の導体部と、該第2の導体部に電気的に接続して設けられた導電性を有する接合膜とを有し、
前記接合膜は、前記第2の導体部に金属錯体を含有する液状材料を供給し、該液状材料を乾燥・焼成することにより設けられ、前記金属錯体に含まれる金属原子と、有機成分で構成される脱離基とを含み、
前記接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与したことにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が当該接合膜から脱離することにより、前記接合膜の表面の前記領域に、前記第1の導体部との接着性が発現し、前記第1の導体部と前記第2の導体部とを物理的かつ電気的に接続するものであることを特徴とする接合膜付き回路基板。
【請求項2】
前記脱離基は、前記液状材料を乾燥させた後、焼成した際に、前記金属錯体に含まれる有機物の一部が残存したものである請求項1に記載の接合膜付き回路基板。
【請求項3】
前記焼成の際の焼成温度は、70〜200℃である請求項1または2に記載の接合膜付き回路基板。
【請求項4】
前記焼成は、不活性ガス雰囲気下で行われる請求項1ないし3のいずれかに記載の接合膜付き回路基板。
【請求項5】
前記焼成は、減圧下で行われる請求項1ないし4のいずれかに記載の接合膜付き回路基板。
【請求項6】
前記脱離基は、炭素原子を必須成分とし、水素原子、窒素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子およびハロゲン原子のうちの少なくとも1種を含む原子団で構成される請求項1ないし5のいずれかに記載の接合膜付き回路基板。
【請求項7】
前記脱離基は、アルキル基を含む請求項6に記載の接合膜付き回路基板。
【請求項8】
前記金属原子は、銅、アルミニウム、亜鉛、鉄、インジウムおよびルテニウムのうちの少なくとも1種である請求項1ないし7のいずれかに記載の接合膜付き回路基板。
【請求項9】
前記接合膜は、少なくとも2種の前記金属原子を含有し、前記金属原子のうち融点が低い方の金属原子は、その融点が260℃未満である請求項1ないし8のいずれかに記載の接合膜付き回路基板。
【請求項10】
前記融点が低い方の金属原子は、インジウム、セレンおよびリチウムのうちの少なくとも1種である請求項9に記載の接合膜付き回路基板。
【請求項11】
前記接合膜中の金属原子と炭素原子との存在比は、3:7〜7:3である請求項1ないし10のいずれかに記載の接合膜付き回路基板。
【請求項12】
前記液状材料は、前記第2の導体部に液滴吐出法を用いて選択的に供給される請求項1ないし11のいずれかに記載の接合膜付き回路基板。
【請求項13】
前記接合膜は、その少なくとも表面付近に存在する前記脱離基が、当該接合膜から脱離した後に、活性手が生じる請求項1ないし12のいずれかに記載の接合膜付き回路基板。
【請求項14】
前記活性手は、未結合手または水酸基である請求項13に記載の接合膜付き回路基板。
【請求項15】
前記接合膜の平均厚さは、50〜1000nmである請求項1ないし14のいずれかに記載の接合膜付き回路基板。
【請求項16】
前記接合膜は、流動性を有さない固体状をなしている請求項1ないし15のいずれかに記載の接合膜付き回路基板。
【請求項17】
前記第2の導体部の前記接合膜と接している面には、予め、前記接合膜との密着性を高める表面処理が施されている請求項1ないし16のいずれかに記載の接合膜付き回路基板。
【請求項18】
前記表面処理は、プラズマ処理である請求項17に記載の接合膜付き回路基板。
【請求項19】
請求項1ないし18のいずれかに記載の接合膜付き回路基板を用意し、前記接合膜に前記エネルギーを付与して接着性を発現させる工程と、
前記第1の導体部を備える第1の回路基板を用意し、前記接合膜付き回路基板と前記回路基板とを重ね合わせることにより、前記接合膜に発現した接着性により、前記接合膜を介して前記第1の導体部と前記第2の導体部とを物理的かつ電気的に接続する工程とを有することを特徴とする接合膜付き回路基板の接合方法。
【請求項20】
請求項1ないし18のいずれかに記載の接合膜付き回路基板と、前記第1の導体部を備える回路基板とを用意し、前記第1の導体部と前記接合膜とが当接するように、前記接合膜付き回路基板と前記回路基板とを重ね合わせる工程と、
前記接合膜に前記エネルギーを付与して接着性を発現させることにより、前記接合膜を介して前記第1の導体部と前記第2の導体部とを物理的かつ電気的に接続する工程とを有することを特徴とする接合膜付き回路基板の接合方法。
【請求項21】
前記エネルギーの付与は、前記接合膜にエネルギー線を照射する方法、前記接合膜を加熱する方法、および前記接合膜に圧縮力を付与する方法のうちの少なくとも1つの方法により行われる請求項1ないし18のいずれかに記載の接合膜付き回路基板の接合方法。
【請求項22】
前記エネルギー線は、波長126〜300nmの紫外線である請求項19に記載の接合膜付き回路基板の接合方法。
【請求項23】
前記加熱の温度は、25〜100℃である請求項19または20に記載の接合膜付き回路基板の接合方法。
【請求項24】
前記圧縮力は、0.2〜10MPaである請求項19ないし21のいずれかに記載の接合膜付き回路基板の接合方法。
【請求項25】
前記エネルギーの付与は、大気雰囲気中で行われる請求項19ないし22のいずれかに記載の接合膜付き回路基板の接合方法。
【請求項26】
請求項1ないし18のいずれかに記載の接合膜付き回路基板を備えることを特徴とする電子デバイス。
【請求項27】
請求項26に記載の電子デバイスと、該電子デバイスを搭載する前記回路基板とを有し、前記電子デバイスが備える前記第2の導体部と、前記回路基板が備える前記第1の導体部とが前記接合膜を介して物理的かつ電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−3854(P2010−3854A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−161044(P2008−161044)
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】