説明

接点基板の製造方法及び電気メッキ装置

【課題】 特に接触子の表面にメッキ層を形成するときに、予め、接触子とともに前記接触子間を連結する連結部を形成しておかなくても、簡単な手法によって前記メッキ層をメッキ形成できる接続基板の製造方法及び電気メッキ装置を提供することを目的としている。
【解決手段】 各スパイラル接触子33を、シート部材32に取り付けるとき、従来のように各接触子を連結部によってつなげた状態で前記シート部材に取り付けず、各々分離した状態で前記シート部材に取付けている。そして、前記シート部材32の両側面に陰極導電板53,54を対向させ、各接触子間を前記導電板53,54を介して導通状態にしている。これにより上記した連結部の形成無しに前記接触子に適切にメッキ層をメッキ形成できる。よって従来のように連結部を除去する工程が不要になり製造工程の簡素化を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば複数の接触子(接点)が絶縁基板に固定保持された接点基板の製造方法に係わり、特に、前記接触子の表面にメッキ層を形成するときに、従来に比べて、簡単な手法によって前記メッキ層をメッキ形成できる接点基板の製造方法及び電気メッキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されている半導体検査装置は、半導体を外部の回路基板などに電気的に仮接続させるものである。半導体の背面側には格子状またはマトリックス状に配置された多数の球状接触子が設けられており、これに対向する絶縁基板上には多数の凹部が設けられ、この凹部内にスパイラル接触子が対向配置されている。
【0003】
前記半導体の背面側を前記絶縁基板に向けて押圧すると、前記球状接触子の外表面に前記スパイラル接触子が螺旋状に巻き付くように接触するため、個々の球状接触子と個々のスパイラル接触子との間の電気的接続が確実に行われるようになっている。
【特許文献1】特開2002−175859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところでこの特許文献1には、スパイラル状接触子2の形成方法について簡単な説明がある。
【0005】
例えばこの公報の図38では、絶縁基板63の上面に銅箔4′を貼付け、さらに前記銅箔4′上にフォトリソグラフィ技術を用いてスパイラル接触子2形状のニッケルメッキ29を施し、その後、不要な銅箔4′をエッチングにて除去している。
【0006】
しかし上記の手法であると、不要な銅箔4′をあとでエッチング処理する工程が必要となる。特に銅箔4′はニッケルメッキ29に比べてかなり厚い膜厚であるため、前記銅箔4′をエッチングで抜くにも時間がかかり、しかもエッチング時に前記ニッケルメッキ29もエッチングの影響を受けてメッキ膜厚が薄くなる可能性もある。
【0007】
あるいは図11に示すように、前記銅箔を予め複数のスパイラル接触子10に形成し、その後、各スパイラル接触子10上にメッキ層を形成する場合、各スパイラル接触子10間を連結部11によって繋いでおかないといけない。すなわち前記銅箔をスパイラル接触子10と連結部11とのパターンで残しておくことが必要であった。このようにスパイラル接触子10の形成時に連結部11を設けておくことで、前記連結部11が電気メッキ時の導電路となる。この結果、各スパイラル接触子10及び連結部11が電気メッキ時の陰極として適切に機能し、各スパイラル接触子10の表面に所定厚でメッキ層をメッキ形成することが可能になる。
【0008】
しかし図11における従来の方法では、前記メッキ層の形成後、前記連結部11を除去する作業が必要になる。しかも前記メッキ層の形成時、前記連結部11上にもメッキ層が形成されてしまうから前記連結部11上にメッキ層が形成されないように前記連結部11上をレジストなどで覆っておく必要性があるなど、前記メッキ層の形成過程が煩雑化した。
【0009】
よって、銅箔等を前記スパイラル接触子10の形状に形成するとき、連結部11を形成すること無しに、各スパイラル接触子10上に適切にメッキ層をメッキ形成できる手法が求められた。
【0010】
そこで本発明は上記従来の課題を解決するためのものであり、特に、接触子の表面にメッキ層を形成するときに、予め、接触子とともに前記接触子間を連結する連結部を形成しなくても、簡単な手法によって前記メッキ層をメッキ形成できる接続基板の製造方法及び電気メッキ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、接触子とシート部材とを有して成る接続基板の製造方法において、以下の工程を有することを特徴とするものである。
(a) 金属材料からなる複数の接点を、各々分離した状態で絶縁基板に取り付ける工程と、
(b) 少なくとも前記絶縁基板の一方の面に導電板を対向させ、各接点間を前記導電板を介して導通状態にする工程と、
(c) 各接点にメッキ層を形成する工程。
【0012】
本発明では、前記(a)工程のように、各接点を、絶縁基板に取り付けるとき、従来のように各接点を連結部によってつなげた状態で前記絶縁基板に取り付けず、各々分離した状態で前記シート部材に取付けている。そして本発明では、前記絶縁基板の一方の面に導電板を対向させ、各接点間を前記導電板を介して導通状態にしている。これによって前記接点の一方の面にメッキ層をメッキ形成するときに、各接点間が導通状態になっているから各接点を陰極として作用させることができ、上記した連結部の形成無しに前記接点に適切にメッキ層をメッキ形成できる。よって従来のように連結部を除去する工程が不要になり製造工程の簡素化を実現できる。
【0013】
本発明では、前記導電板には前記接点と対向する位置に窓部が形成されていることが好ましい。前記窓部を通して各接点の一方の面上にまで適切に電解液中に含まれる金属イオンを泳動等させることができ、適切に前記接点の一方の面上にメッキ層をメッキ形成することが出来る。
【0014】
また本発明では、導電板には、導通接続部が設けられており、前記(b)工程時、前記導通接続部を前記接点の一部に当接させることで、各接点間を導通状態にすることが好ましい。これによって適切に各接触子間を導通状態に出来る。
【0015】
また本発明では、前記接点は、絶縁基板の表面側及び裏面側の双方に露出した状態にあり、前記(b)工程時、前記絶縁基板の両側を、導電板で挟み、絶縁基板の表面側に露出する前記接点間を、一方の導電板で、絶縁基板の裏面側に露出する前記接点間を、他方の導電板で、それぞれ導通状態にし、前記(c)工程時、絶縁基板の表面側及び裏面側に露出する接点にそれぞれメッキ層を形成してもよい。
【0016】
本発明における電気メッキ装置は、
浴槽と、陽極と、陰極とを有し、前記陰極は陰極導電板を有して構成され、前記陰極導電板には、絶縁基板に取り付けられた複数の接点と相対向する位置に設けられた窓部と、各接点間を導通接続させるための導通接続部とを有して構成されることを特徴とするものである。
【0017】
上記した電気メッキ装置では、前記窓部と導通接続部を有する陰極導電板が設けられ、前記絶縁基板を前記導電板に保持することで、前記絶縁基板に各々分離して取り付けられた複数の接触子の表面に適切にメッキ層をメッキ形成できる。
【0018】
本発明では、前記陰極は、陰極導電板と、支持板とを有し、前記絶縁基板は前記陰極導電板と支持板に挟まれて固定保持されることが好ましい。また前記支持板は、陰極導電板であり、前記シート部材の両側が前記陰極導電板により挟まれる構成であってもよい。かかる場合、前記絶縁基板の表面側及び裏面側から前記接点の少なくとも一部が露出した状態にあるとき、露出する前記接点の表面側及び裏面の双方にメッキ層をメッキ形成することが出来る。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、各接点を、絶縁基板に取り付けるとき、従来のように各接点を連結部によってつなげた状態で前記絶縁基板に取り付けず、各々分離した状態で前記シート部材に取付けている。そして本発明では、前記絶縁基板の一方の面に導電板を対向させ、各接点間を前記導電板を介して導通状態にしている。これによって前記接点の一方の面にメッキ層をメッキ形成するときに、各接点間が導通状態になっているから各接点を陰極として作用させることができ、上記した連結部の形成無しに前記接点に適切にメッキ層をメッキ形成できる。よって従来のように連結部を除去する工程が不要になり製造工程の簡素化を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は電子部品の動作を確認するための試験に用いられる検査装置を示す斜視図、図2は本発明における接点基板の構成部材を分解して示した分解斜視図、図3は、接点基板の拡大平面図であり、特にスパイラル接触子の平面形状を説明するための説明図、図4は図3に示すI−I線から切断し矢印方向から見た前記接点基板の部分断面図、図5は、本発明における接点基板の製造方法の一工程を説明するための一工程図(斜視図)、図6は、本発明における電気メッキ装置を構成する陰極の部分斜視図、図7は、図6に示す陰極を矢印方向から見たときの前記陰極の部分拡大側面図、図8は、図7に示す陰極をII−II線から切断し矢印方向から見た前記陰極の部分断面図、図9は図7に示す陰極をIII−III線から切断し矢印方向から見た前記陰極の部分断面図であり、特に接触子にメッキ層がメッキ形成された状態を示す前記陰極の部分断面図、図10は本発明における電解メッキ装置の部分断面図、である。
【0021】
図1に示すように、検査装置20はソケット21と、このソケット21の一方の縁部に設けられたひんじ部13を介して回動自在に支持された蓋体12とで構成されている。前記ソケット21および蓋体12は絶縁性の樹脂材料などで形成されており、前記ソケット21の中心部には図示Z2方向に凹となる装填領域21Aが形成されている。そして、前記装填領域21A内に半導体などの電子部品1が装着できるようになっている。またソケット21の他方の縁部には、被ロック部14が形成されている。また蓋12の縁部にはロック部15が形成されている。
【0022】
前記装填領域21Aには、図2に示す接点基板30が設けられている。前記接点基板30は、シート部材32と多数のスパイラル接触子33とを有して構成される。前記シート部材32はポリイミド等の絶縁性の樹脂シートで形成されている。
【0023】
図2に示すように前記シート部材32には、個々のスパイラル接触子33と対向する位置に貫通孔32aが形成されている。図2に示すように前記スパイラル接触子33は、X1−X2方向及びY1−Y2方向に所定の間隔を有してマトリックス状に多数設けられている。前記スパイラル接触子33は、弾性接点として機能し、図3に示すように、前記スパイラル接触子33の固定部33aは、前記シート部材32に形成された貫通孔32aの周囲の一部に導電性接着剤等を介して接合され、前記スパイラル接触子33の螺旋状部分(変形部)33bは前記貫通孔32a上に延出して設けられている。
【0024】
図4に示すように前記スパイラル接触子33の変形部33bは巻き始端33b1から巻き終端33b2にかけて徐々に上方に向けて(図示Z1方向へ向けて)高さが高くなるように螺旋階段状に立体フォーミングされている。図4に示すように前記スパイラル接触子33は、銅箔41等で形成され、前記銅箔41の上にNiメッキ層42及びAuメッキ層43がメッキ形成されている。前記銅箔41は、スパイラル接触子33の形状にエッチング等で形成されている。銅箔41以外のほかの箔体等を使用して前記スパイラル接触子33を形成してもよい。また前記Niメッキ層42は前記銅箔41の表面をメッキ下地層としてメッキ形成されたものである。Niメッキ層42はばね性に優れたメッキ層であり、前記Niメッキ層42を形成することで前記スパイラル接触子33の弾性力を向上させることが出来る。前記Niメッキ層42には、他の元素が添加されていてもよい。またAuメッキ層43は前記Niメッキ層42の表面をメッキ下地層としてメッキ形成されたものであり、特にスパイラル接触子33の電気伝導性を良好にするための層である。Auに代えて貴金属などで形成されたメッキ層を前記Niメッキ層42上にメッキ形成してもよいし、あるいはAuと貴金属とを混在させたメッキ層であってもよい。前記銅箔41の上に形成されたメッキ層42,43は3層以上であってもよいし、1層のみであってもよい。
【0025】
前記検査装置20の装填領域21Aに電子部品1を組み込むと、電子部品1の接続端子等が前記スパイラル接触子33の変形部33b上に当接し、前記スパイラル接触子33を図示下方向へ押圧する。前記スパイラル接触子33の前記変形部33bは弾性力があるため前記押圧によって下方向へ弾性変形できる。このとき前記変形部33bは前記電子部品1の接続端子を包むように変形できるため、前記電子部品1の接続端子と前記変形部33b間の導通接続が良好なものとなる。
【0026】
以下、図2ないし図4に示すスパイラル接触子33とシート部材32とを有してなる接点基板30の製造方法について説明する。
【0027】
図5に示す符号41は、銅箔である。前記銅箔41は例えば幅方向(図示X1−X2方向)の両端から長さ方向(図示Y1−Y2方向)に垂直に延び、所定の膜厚を有する略長方形状である。前記銅箔41の膜厚は例えば、10μm〜50μm程度である。
【0028】
符号32はシート部材である。前記シート部材32は、ポリイミド等の電気的絶縁性に優れた樹脂などで形成される。図5に示すように前記シート部材32には、複数の貫通孔32aが設けられている。前記貫通孔32aの平面形状は円形状であるが、前記円形状に限るものではない。
【0029】
前記銅箔41と前記シート部材32とを重ね、導電性接着剤等によって両者を接合する。
【0030】
次に前記銅箔41上のスパイラル接触子33となるべき部分に図示しないレジスト層を形成し、前記レジスト層に覆われていない銅箔41を選択的にウエットエッチング法等にて除去する。このとき、前記シート部材32は前記ウエットエッチング法で除去されない。この工程により前記シート部材32上にはスパイラル接触子33の形状の銅箔41のみが残される。
【0031】
図7に示すように、前記スパイラル接触子33(銅箔41)は、固定部33a(41a)と、及び前記固定部33a(41a)から螺旋形状にて、前記シート部材32に形成された貫通孔32a上へ延出する変形部33b(41b)とを有して残される。
【0032】
上記の工程を経ることで、図6に示すようにシート部材32の表面32bに多数の銅箔41で形成されたスパイラル接触子33が各々分離された状態で形成される。なお図6には前記シート部材32上にスパイラル接触子33が3つだけ図示されているが実際には前記シート部材32上に多数の前記スパイラル接触子33が銅箔41にて形成されている。このように前記銅箔41から多数のスパイラル接触子33を形成するときに、隣り合う前記スパイラル接触子33どうしを連結するための連結部の形成を行なわず、各スパイラル接触子33は完全に分離された状態で前記シート部材32上に取り付けられている。
【0033】
次に、前記シート部材32に取り付けられた個々のスパイラル接触子33に対し、図4で説明したNiメッキ層42やAuメッキ層43等をメッキ形成する。各スパイラル接触子33はメッキ浴中で陰極となるべき箇所であるが、各スパイラル接触子33は従来のように連結部によって繋がっていないため、このままの状態では、電解メッキの最中に各スパイラル接触子33に対し電流を流すことが出来ない。よって各スパイラル接触子33にメッキ層をメッキ形成できない。そこで本発明では陰極の構成を以下のように工夫する。
【0034】
図10に示すように、浴槽50と、陽極51と陰極52とを用意する。図6,図10に示すように前記シート部材32の表面32b側と裏面32c側にそれぞれ陰極導電板53,54を対向させる。前記陰極52は、シート部材32に固定支持された銅箔41からなる多数のスパイラル接触子33、及び陰極導電板53,54で構成される。なお以下、陰極導電板53を第1の陰極導電板と、陰極導電板54を第2の陰極導電板と称する。
【0035】
図6に示すように前記第1の陰極導電板53及び第2の陰極導電板54には、それぞれ前記スパイラル接触子33と対向する位置に窓部(貫通孔)53a,54aが形成されている。図7に示すように、前記第1の陰極導電板53に形成された前記窓部53aは、前記シート部材32に形成された貫通孔32aよりも大きく形成されることが好ましい。これによって前記スパイラル接触子33のうち、前記窓部53aを通してスパイラル接触子33の変形部33b全てが露出する。同様に、前記第2の陰極導電板54に形成された窓部54aは、前記シート部材32に形成された貫通孔32aよりも大きく形成されることが好ましく、これによって前記シート部材32に形成された貫通孔32a上に延出するスパイラル接触子33の変形部33b全てが窓部54aを通して露出する。
【0036】
図6,図7,図8に示すように、前記第1の陰極導電板53の前記シート部材32との対向面53bには、前記シート部材32の表面32b方向に向けて導通接続部53cが突出形成されている。前記導通接続部53cは、窓部53aの数と同じ数だけ形成されている。前記導通接続部53cは図6,図7に示すように各窓部53aの図示左側に一つづつ設けられている。前記導通接続部53cは前記第1の陰極導電板53と一体で形成されていても別体で形成されていてもどちらでもよい。
【0037】
図7に示すように前記導通接続部53cは前記スパイラル接触子33のうち固定部33aと対向する位置に形成されていることが好ましい。また前記第2の陰極導電板54の前記シート部材32との対向面54bにも前記シート部材32の裏面32c方向へ向けて突出する導通接続部54cが形成されているが、前記導通接続部54cも前記シート部材32に形成された貫通孔32aから露出する前記スパイラル接触子33の固定部33aと対向する位置に形成されていることが好ましい。なお前記シート部材32の裏面32cから貫通孔32aを通して見たとき、前記スパイラル接触子33の変形部33bのみが露出している場合は、前記導通接続部54cを前記変形部33bの一部と対向する位置に設ける。
【0038】
図6,図7,図8に示すように、前記シート部材32に取り付けられた各々のスパイラル接触子33の変形部33bの表面33c側に前記第1の陰極導電板53に形成された各々の窓部53aを対向させるとともに、前記各々のスパイラル接触子33の固定部33aの表面33c側に前記第1の陰極導電板53に形成された各々の導通接続部53cを対向させ、同様に、前記シート部材32に取り付けられた各々のスパイラル接触子33の変形部33bの裏面33d側に、前記シート部材32の貫通孔32aを介して前記第2の陰極導電板54に形成された各々の窓部54aを対向させるとともに、前記各々のスパイラル接触子33の固定部33a(前記固定部33aが露出していないときは変形部33b)の裏面33d側に、前記シート部材32の貫通孔32aを介して前記第2の陰極導電板54に形成された各々の導通接続部54cを対向させ、図8のように、前記シート部材32の表面32b側及び裏面32c側を前記陰極導電板53,54によって挟み込む。このとき、例えば前記第2の陰極導電板54には前記第1の陰極導電板53と係合可能なロック部54dが設けられており、前記ロック部54dによって前記第1の陰極導電板53と第2の陰極導電板54とを係合し、これによって前記シート部材32を前記両導電板53,54間に確実に固定保持する。このとき、図8のように、前記第1の陰極導電板53に形成された各々の導通接続部53cが各々のスパイラル接触子33の固定部33aの表面33cと接触するから、各スパイラル接触子33の表面33c間は、前記第1の陰極導電板53を介して導通接続された状態になる。同様に、前記第2の陰極導電板54に形成された各々の導通接続部54cが、前記シート部材32に形成された貫通孔32aを介して各々のスパイラル接触子33の固定部33aの裏面33dと接触するから、各スパイラル接触子33の貫通孔32aを通して露出する裏面33d間は、前記第2の陰極導電板54を介して導通接続された状態になる。
【0039】
図10に示すように浴槽50内を電解液55で満たし、前記電解液55内に前記陽極51と陰極52を入れる。そして所定の大きさの電流密度で直流電流あるいはパルス電流を流すと、前記スパイラル接触子33の表面33c側及び裏面33d側に金属層が析出される。
【0040】
図7及び図9に示すように、前記スパイラル接触子33の表面33c側と対向して設けられた第1の陰極導電板53には、各々のスパイラル接触子33と対向する位置に窓部53aが設けられ、しかも前記窓部53aは前記スパイラル接触子33の少なくとも変形部33bが前記窓部53aを通して露出する程度の大きさで形成されている。従ってメッキ浴中にて、電解液55中に含まれる金属イオンは前記窓部53aを通して適切に各スパイラル接触子33の表面33cにまで泳動等できる。図9に示すように、まず前記スパイラル接触子33の表面33cにばね性に優れたNiメッキ層42をメッキ形成した後、電気伝導性に優れたAuメッキ層43をメッキ形成する。このとき、図9に示すように、シート部材32に形成された貫通孔32aから露出する前記スパイラル接触子33の裏面33d側にもNiメッキ層42及びAuメッキ層43がメッキ形成される。なお図9では図示していないが前記第1の陰極導電板53の対向面53bと反対側の面53d、及び前記第2の陰極導電板54の対向面54bと反対側の面54eにも前記メッキ層42,43が形成されてしまうため、前記第1の陰極導電板53の対向面53bと反対側の面53d、及び前記第2の陰極導電板54の対向面54bと反対側の面54eに絶縁性の樹脂等をコーティングしておくことが好ましい。最も好ましくは前記導通接続部53c,54cの前記スパイラル接触子33との当接面以外の前記陰極導電板53,54の面に絶縁コートをしておくことである。
【0041】
上記したように、第1の陰極導電板53に形成された導通接続部53cは、スパイラル接触子33の固定部33a上に当接されている(図7を参照)。このためメッキ形成時、導通接続部53cが当接する前記固定部33a上に前記メッキ層が形成されにくい。しかしばね性に優れたNiメッキ層42及び電気伝導性に優れたAuメッキ層43は特に電子部品1の接続端子と当接するスパイラル接触子33の変形部33b上にメッキ形成されることが望ましいため、前記導通接続部53cは特に前記スパイラル接触子33の変形部33b上でなく固定部33a上で当接され、前記固定部33a上での当接位置にメッキ層が形成されなくても特に問題はない。第2の陰極導電板54に形成された導通接続部54cについても同様である。
【0042】
図9に示したメッキ層42,43をメッキ形成した後、陰極52を前記電解液55中から引き上げ、前記ロック部54dを外して前記接点基板30を、陰極導電板53,54から取り外す。
【0043】
本発明では、上記のように、シート部材32の表面32bに、多数のスパイラル接触子33を銅箔41にて形成したとき、前記銅箔41に各スパイラル接触子33間を連結する連結部を形成せず、各スパイラル接触子33を隣り合うスパイラル接触子33から完全に分離した状態にしておく。各スパイラル接触子33の表面33c(及び裏面33d)にメッキ層を形成するとき、各スパイラル接触子33間を通電させるための陰極導電板53,54を用い、陰極導電板53,54に形成された導通接続部53c,54cを介して各スパイラル接触子33間を通電させる。前記陰極導電板53,54には、各々のスパイラル接触子33と相対向する少なくとも一部の領域に窓部53a,54aを形成し、前記窓部53a,54aを通して前記スパイラル接触子33の表面33c(及び裏面33d)にまで電解液55中の金属イオンが適切に泳動等できるようにしておくことで、適切に前記スパイラル接触子33の表面33c(及び裏面33d)にメッキ層42,43をメッキ形成できる。以上のように本発明では、シート部材32の表面32bに、多数のスパイラル接触子33を銅箔41にて形成したとき、前記銅箔41に各スパイラル接触子33間を連結する連結部を形成しなくても、各スパイラル接触子33にメッキ層42,43を所定厚で適切にメッキ形成できるから、従来のように、メッキ層の形成後、前記連結部をエッチング等で除去するといった面倒な作業が必要なく、従来に比べて簡単な手法にて前記スパイラル接触子33にメッキ層42,43をメッキ形成できる。
【0044】
なお上記実施形態では、図6に示すように前記シート部材32の表面32b側及び裏面32c側の双方に陰極導電板53,54を設けているが、前記陰極導電板53,54は前記スパイラル接触子33に対してメッキ層を形成したい側の面(一方の面)にのみ設ければよい。かかる場合、シート部材32の他方の面には絶縁性でもよいので支持板を設けとき、前記支持板と前記陰極導電板とで前記シート部材32を挟み込み、前記支持板に形成されたロック部等により前記シート部材32を前記支持板と前記陰極導電板間に確実に固定保持できるようにしておくことが好ましい。
【0045】
上記の手法によって形成された接点基板30は例えば図1に示す検査装置20内に組み込まれるものであるが、図1に示すような検査装置20以外にも電子機器の様々なアプリケーションに本発明の接点基板30を使用することが可能である。また接点として機能する接触子はスパイラル形状以外の形状であってもよい。また前記スパイラル接触子33は実施形態ではシート部材32の片側面のみに形成されていたが、例えば前記シート部材32の両側面にそれぞれ形成されていてもかまわない。かかる場合、前記シート部材32の両側面に形成された各スパイラル接触子33のそれそれの表面にメッキ層42,43を適切にメッキ形成することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】電子部品の動作を確認するための試験に用いられる検査装置を示す斜視図、
【図2】本発明における接点基板の構成部材を分解して示した分解斜視図、
【図3】接点基板の拡大平面図であり、特にスパイラル接触子の平面形状を説明するための説明図、
【図4】図3に示すI−I線から切断し矢印方向から見た前記接点基板の部分断面図、
【図5】本発明における接点基板の製造方法の一工程を説明するための一工程図(斜視図)、
【図6】本発明における電気メッキ装置を構成する陰極の部分斜視図、
【図7】図6に示す陰極を矢印方向から見たときの前記陰極の部分拡大側面図、
【図8】図7に示す陰極をII−II線から切断し矢印方向から見た前記陰極の部分断面図、
【図9】図7に示す陰極をIII−III線から切断し矢印方向から見た前記陰極の部分断面図であり、特に接触子にメッキ層がメッキ形成された状態を示す前記陰極の部分断面図、
【図10】本発明における電解メッキ装置の部分断面図、
【図11】スパイラル接触子にメッキ層をメッキ形成するときの、従来の前記スパイラル接触子の形態を示す部分拡大平面図、
【符号の説明】
【0047】
1 電子部品
20 検査装置
30 接点基板
32 シート部材
32a 貫通孔
33 スパイラル接触子
33a 固定部
33b 変形部
41 銅箔
42 Niメッキ層
43 Auメッキ層
50 浴槽
51 陽極
52 陰極
53 第1の陰極導電板
53a、54a 窓部
53c、54c 導通接続部
54 第2の陰極導電板
55 電解液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接点と絶縁基板とを有して成る接点基板の製造方法において、以下の工程を有することを特徴とする接点基板の製造方法。
(a) 金属材料からなる複数の接点を、各々分離した状態で絶縁基板に取り付ける工程と、
(b) 少なくとも前記絶縁基板の一方の面に導電板を対向させ、各接点間を前記導電板を介して導通状態にする工程と、
(c) 各接点にメッキ層を形成する工程。
【請求項2】
前記導電板には前記接点と対向する位置に窓部が形成されている請求項1記載の接点基板の製造方法。
【請求項3】
導電板には、導通接続部が設けられており、前記(b)工程時、前記導通接続部を前記接点の一部に当接させることで、各接点間を導通状態にする請求項1または2に記載の接続基板の製造方法。
【請求項4】
前記接点は、絶縁基板の表面側及び裏面側の双方に露出した状態にあり、
前記(b)工程時、前記絶縁基板の両側を、導電板で挟み、絶縁基板の表面側に露出する前記接点間を、一方の導電板で、絶縁基板の裏面側に露出する前記接点間を、他方の導電板で、それぞれ導通状態にし、前記(c)工程時、絶縁基板の表面側及び裏面側に露出する接点にそれぞれメッキ層を形成する請求項1ないし3のいずれかに記載の接続基板の製造方法。
【請求項5】
浴槽と、陽極と、陰極とを有し、前記陰極は陰極導電板を有して構成され、前記陰極導電板には、絶縁基板に取り付けられた複数の接点と相対向する位置に設けられた窓部と、各接点間を導通接続させるための導通接続部とを有して構成されることを特徴とする電気メッキ装置。
【請求項6】
前記陰極は、陰極導電板と、支持板とを有し、前記絶縁基板は前記陰極導電板と支持板に挟まれて固定保持される請求項5記載の電気メッキ装置。
【請求項7】
前記支持板は、陰極導電板であり、前記シート部材の両側が前記陰極導電板により挟まれる請求項6記載の電気メッキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−164584(P2006−164584A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−350732(P2004−350732)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】