説明

接点部材連結体とその製造方法、接点部材、および遮断器

【課題】耐熱性非酸化物と金属材料との複合材料からなり緻密性に優れた接点部材を生産性良く、かつ少ないエネルギーで製造できる接点部材連結体およびその製造方法と、前記特性に優れた接点部材と、前記接点部材を用いた遮断器とを提供する。
【解決手段】接点部材連結体1は、前記複合材料によって、複数個の接点部材2と1個の末端部材4とを連結部3を介して列をなすように連結した形状に一体に形成し、接点部材2は、連結部3を破断することにより、複数の側面のうち少なくとも1つの側面において破断面が露呈させる。連結部3を有する連結体を一体にプレス成形し、次いで前記列の先端側から末端側へ向けて順次、昇温、降温して末端部材内に気孔を寄せ集める製法により、個々の接点部材2の密度を97%以上とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば遮断器等において、固定側または可動側の接点に組み込んで用いられる接点部材の前駆体としての接点部材連結体およびその製造方法と、前記接点部材と、前記接点部材を用いた遮断器とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時、例えば配線用遮断器、漏電遮断器などの遮断器(サーキットブレーカ)等において、固定側および可動側の接点に組み込む接点部材として、W、Mo、およびこれらの炭化物等の耐熱性非酸化物(耐火物、以下「第一成分」と略称する場合がある。)と、Ag、Cu等の高い導電性を有する金属材料(以下「第二成分」と略称する場合がある。)とを所定の割合で含む複合材料からなるものを用いることが一般化しつつある。
【0003】
前記複合材料からなる接点部材は、前記第一成分を含むことにより、回路の開閉時に発生するアーク放電によって欠損したりしない耐アーク性、前記アーク放電や自身の発熱等によって溶着したりしない耐溶着性、そして耐摩耗性等が、例えば第二成分単独からなるものに比べて改善されており、比較的大電力の遮断に用いる遮断器等の接点として適している。
【0004】
前記複合材料からなる接点部材は、一般に粉末冶金法によって製造される。すなわち、前記第一および第二成分の粉末を所定の割合で含む混合物を圧縮成形して圧縮成形体を形成したのち、前記圧縮成形体を常圧下、第二成分の融点付近の所定の焼成温度で焼成して接点部材が製造される。
接点部材の製造に粉末冶金法が採用されるのは、前記第二成分を加熱して溶融させた状態での、第一成分に対する濡れ性が十分でないためである。そのため、例えば加熱して溶融させた第二成分を第一成分からなる多孔質体中に含浸させる、あるいは両成分の混合物を加熱して第二成分を溶融させた状態で型に流し込む、といった溶解法では、両成分が均一に分布した接点部材を製造するのは困難である。
【0005】
しかし、粉末冶金法で製造した従来の接点部材は前記両成分の粉末の焼結体であって、個々の粉末間の隙間に起因する多数の気孔を内包する。すなわち、前記隙間内のガス(主に空気)の大半は、圧縮成形体を焼成する初期の段階で、互いに連通する前記隙間を通って圧縮成形体外に排出される。しかし前記ガスの残部は、第二成分が半溶融状態となって隙間が塞がれることで、圧縮成形体→焼結体の内部に気孔として取り残されるため、理論密度比、すなわち接点部材を形成する第一および第二成分の比重および両成分の配合割合から求められる理論密度に対する、前記焼結体の実際の密度の比率が小さくなる傾向がある。
【0006】
そのため、接点部材の緻密性が低下して第二成分による導電ネットワークの形成が不十分となり、前記接点部材の電気伝導度が低くなって、例えば遮断器の遮断時等に高温に発熱したりしやすくなる。その結果、先に説明した耐溶着性や耐磨耗性等が、第一成分の配合割合に基づいて想定される所定値に達しないという問題を生じる。
かかる問題が生じるのを抑制して、粉末冶金法によって、第一成分の配合割合に見合う所定の耐溶着性や耐摩耗性等を有する接点部材を製造するためには、前記接点部材の緻密性を向上しなければならない。
【0007】
そこで特許文献1では、複合材料からなる焼成後の接点部材を再加圧して緻密性を高めることが提案されている。また特許文献2においては、複合材料からなる圧縮成形体を常圧下で焼成するのではなく、圧力100MPa以上、温度500℃未満の条件下で温間プレス加工することによって、製造される接点部材の緻密性を高めることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭58−11753号公報
【特許文献2】特開2005−146412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、特許文献1に記載された焼成後の接点部材を再加圧する方法では、前記再加圧時に接点部材が不均一、不規則に変形したりするのを防止するために、前記接点部材の全周を隙間なく拘束しながら再加圧をしなければならない。そのためには、個々の接点部材の形状に対応したプレス型に接点部材を1つずつセットして再加圧を行なう必要がある。
【0010】
したがって、再加圧の工程が増加することそれ自体と相まって、接点部材の生産性が低下したり、1つの接点部材を製造するのに要するエネルギーが増大したりするといった問題を生じる。
しかも特許文献1の実施例には、前記再加圧を行うことによって気孔率が殆どゼロの接点部材を製造できた旨の記載があるが、前記実施例で製造された接点部材の理論密度比を発明者が確認したところ97%に達しておらず、緻密性が十分でないことが明らかとなった。
【0011】
一方、特許文献2に記載された温間プレス加工によれば、例えばその実施例に記載されているように理論密度比が97%以上である緻密な接点部材を製造できる。しかし、接点部材のもとになる圧縮成形体を、個々の接点部材の形状に対応したプレス型に1つずつセットして温間プレス加工を行なわなければならない。
そのため、熱容量の大きいプレス型ごと圧縮成形体を高温に加熱して温間プレス加工をするのに多大なエネルギーを要すること、プレス型の加熱に時間を要すること等と相まって、やはり接点部材の生産性が低下したり、1つの接点部材を製造するのに要するエネルギーが増大したりするといった問題を生じる。
【0012】
本発明の目的は、前記の複合材料からなり、しかも緻密性に優れた接点部材を生産性良く、かつできるだけ少ないエネルギーで製造できる接点部材連結体およびその製造方法と、前記特性に優れた接点部材と、前記接点部材を用いた遮断器とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、W、Mo、およびこれらの炭化物からなる群より選ばれた少なくとも1種の第一成分と、Ag、およびCuからなる群より選ばれた少なくとも1種の第二成分とを含む複合材料により、平板状の接点部材を複数個、それぞれの側面において前記接点部材より厚みの小さい連結部を介して少なくとも一列の列をなすように互いに連結し、かつ前記列の最末端に、前記連結部を介して平板状の末端部材を連結した形状に一体に形成され、個々の接点部材の理論密度比が97%以上であることを特徴とする接点部材連結体である。
【0014】
前記接点部材連結体は、複合材料からなる従来の接点部材と同様に、前記両成分の粉末を含む混合物を圧縮成形してそのもとになる圧縮成形体を作製したのち、前記圧縮成形体を焼成して製造でき、一度の圧縮成形および焼成によって、一体に連結された複数の接点部材を同時に製造できる。また、例えば前記接点部材連結体を手で折り曲げる等して接点部材より厚みの小さい連結部を破断させるだけで、個々の接点部材を1つずつ分離できる。そのため接点部材の生産性を向上し、かつ消費エネルギーをできるだけ少なくできる。
【0015】
しかも前記接点部材連結体は、個々の接点部材の理論密度比が97%以上に設定され、ている。そのため前記接点部材は緻密性に優れ、電気伝導度が高いため、例えば遮断器の遮断時等に高温に発熱したりせず、第一成分の配合割合に見合う所定の耐溶着性や耐摩耗性等を有している。
本発明は、前記複合材料からなり、平板状で、かつ理論密度比が97%以上であると共に、複数の側面のうち少なくとも1つの側面において破断面が露呈し、表面、および裏面において破断のない面が露呈していることを特徴とする接点部材である。
【0016】
前記接点部材は、先に説明したように接点部材連結体を手で折り曲げる等して連結部を破断させることで、個別に分離して得ることができる。前記分離のためにはスライサーやダイサー等の切断刃により切断する切断機を用いる必要がなく、そのような切断機を用いて接点部材を切り離す際に生じるバリ等が発生するおそれもない。
そのため接点部材は、前記のように複数の側面のうち少なくとも1つの側面において前記連結部の破断面が露呈するが、相手側の接点部材との接触面である表面および裏面においては破断やバリ等のない面を露呈できる。
【0017】
したがって分離後の接点部材は、破断面の仕上げやバリ取り等の加工をしなくても遮断器等に組み込んで使用でき、接点部材の準備から遮断器等の組立までに要する工程数を削減して、前記遮断器等の生産性を向上し、かつ消費エネルギーをできるだけ少なくできる。なお前記表面や裏面等には、必要に応じて研磨加工をしたり、例えばAg等の薄膜で被覆したりする仕上げ加工を施しても構わない。
【0018】
個々の接点部材の理論密度比が97%以上とされた本発明の接点部材連結体を製造するには、本発明の製造方法が採用される。
すなわち本発明は、前記両成分の粉末を含む混合物を圧縮成形して、平板状の接点部材を複数個、それぞれの側面において前記接点部材より厚みの小さい連結部を介して少なくとも一列の列をなすように互いに連結し、かつ前記列の最末端に、前記連結部を介して平板状の末端部材を連結した形状の圧縮成形体を作製する圧縮成形工程と、前記圧縮成形体を、前記第二成分の融点付近の所定の焼成温度で所定時間加熱する焼成過程、および前記焼成過程を経た圧縮成形体を、前記列の末端部材を連結した末端側と反対側(以下「先端側」と記載することがある)から前記末端側へ向けて順次、所定の降温速度で降温させる降温過程を経て焼結させる焼結工程とを含むことを特徴とする接点部材連結体の製造方法である。
【0019】
前記製造方法によれば、焼結工程のうち焼成過程で第二成分を半溶融状態としたのち、降温過程で、前記のように先端側から末端側へ向けて順次、所定の降温速度で降温させることにより、焼成前の圧縮成形体中に広く分布して残留していた、粉末間の隙間に起因する気孔を、前記先端側から末端側への第二成分の冷却固化の進行に伴って末端側へ順次移動させて、前記末端側に連結された末端部材内に集めることができる。そのため、接点部材中に残留する気孔の数を少なくして、個々の接点部材の理論密度比をいずれも97%以上とすることができる。
【0020】
なお半溶融状態とは、圧縮成形体の外形はほぼ維持するが、内部の気孔が移動できる程度に第二成分が軟化した状態を指す。
従来の粉末冶金法では、焼結体の全体を同時に加熱し、冷却していたため、前記半溶融状態→冷却固化によって焼結体、すなわち接点部材の内部に気孔が閉じ込められて、前記接点部材の理論密度比が小さくなっていた。これに対し本発明では、前記のメカニズムによって第二成分が半溶融状態にある間に気孔を移動させて除去することができ、接点部材の理論密度比を向上できる。
【0021】
本発明の遮断器は、前記本発明の接点部材を有することを特徴とするものであり、前記接点部材の耐アーク性、耐溶着性、および耐摩耗性に優れた遮断器を、生産性良くコスト安価に製造できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、W、Mo、およびこれらの炭化物からなる群より選ばれた少なくとも1種の第一成分と、Ag、およびCuからなる群より選ばれた少なくとも1種の第二成分とを含む複合材料からなり、しかも緻密性に優れた接点部材を生産性良く、かつできるだけ少ないエネルギーで製造できる接点部材連結体およびその製造方法と、前記特性に優れた接点部材と、前記接点部材を用いた遮断器とを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の接点部材連結体の、実施の形態の一例を示す斜視図である。
【図2】図1の例の接点部材連結体のうち、接点部材間を連結部で繋いだ箇所を拡大して示す側面図である。
【図3】図1の例の接点部材連結体の連結部における、列の長さ方向と直交する方向の断面積が最小値を示す位置を模式的に説明すると共に、前記位置での連結部の断面積と、接点部材の同方向の断面積との関係を模式的に説明する斜視図である。
【図4】本発明の接点部材の、実施の形態の一例を示す斜視図である。
【図5】本発明の接点部材の、実施の形態の他の例を示す斜視図である。
【図6】図1の例の接点部材連結体を製造するための本発明の製造方法の一例のうち、圧縮成形工程を模式的に説明する断面図である。
【図7】前記製造方法の一例のうち、焼結工程における温度の推移を説明するグラフである。
【図8】前記焼結工程のうち焼成過程から降温過程への移行時の状態を模式的に説明する側面図である。
【図9】焼結工程のうち焼成過程において半溶融状態にある接点部材の内部を模式的に示す断面図である。
【図10】焼結工程のうち焼成過程から降温過程に移行した降温途中の接点部材の内部を模式的に示す断面図である。
【図11】焼結工程のうち降温過程の最終段階における末端部材の内部を模式的に示す断面図である。
【図12】本発明の接点部材を接点として組み込む遮断器の内部構造の一例を模式的に示す側面図である。
【図13】前記遮断器において回路を遮断した状態を模式的に示す側面図である。
【図14】実施例で作製した接点部材連結体のうち、接点部材間を連結部で繋いだ箇所を拡大して示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〈接点部材連結体および接点部材〉
図1は、本発明の接点部材連結体の、実施の形態の一例を示す斜視図である。また図2は、図1の例の接点部材連結体のうち、接点部材間を連結部で繋いだ箇所を拡大して示す側面図である。
図1、図2を参照して、この例の接点部材連結体1は、矩形平板状の接点部材2を4個、それぞれの側面において前記接点部材2より厚みの小さい連結部3を介して一列の列をなすように互いに連結し、かつ前記列の最末端に、同じ連結部3を介して矩形平板状の末端部材4を連結した形状に一体に形成されている。
【0025】
詳しくは、前記列の先端側(図1において列の奥側)の接点部材2は、前記接点部材2を矩形に区画する4つの側面のうち列の手前側の1つの側面において、隣り合う接点部材2と連結部3を介して連結されている。
また前記列の末端側(図1において列の手前側)の末端部材4は、前記末端部材4を矩形に区画する4つの側面のうち列の奥側の1つの側面において、隣り合う接点部材2と連結部3を介して連結されている。
【0026】
さらに、前記先端側の接点部材2と末端部材4との間の3つの接点部材2は、それぞれの接点部材2を矩形に区画する4つの側面のうち列の手前側と奥側の互いに平行な2つの側面において、隣り合う接点部材2または末端部材4と連結部3を介して連結されている。
また、各接点部材2および末端部材4は厚みが同一とされ、それぞれの表面5および裏面6が、いずれも同一平面となるように互いに連結されている。また、各接点部材2および末端部材4は列の長さ方向と直交する方向の幅も同一とされ、それぞれの、列の両側の互いに平行な2つの側面7、8がいずれも同一平面となるように互いに連結されている。
【0027】
連結部3は、接点部材連結体1の表裏両面から、その厚み方向内方に凹入させて、それぞれ列の長さ方向と直交する幅方向に伸びる凹溝9、10を設けて、前記凹溝9、10で挟まれた領域の厚みを接点部材2や末端部材4よりも小さくすることによって構成されている。
凹溝9、10は、いずれも接点部材連結体1の、前記幅方向の全幅に亘って形成されている。また凹溝9、10で挟まれた各連結部3は、列の長さ方向と直交する方向の幅が、接点部材2、末端部材4の同方向の幅と同一とされ、かつそれぞれの列の両側の側面が、前記接点部材2および末端部材4の両側の側面7、8と同一平面とされている。
【0028】
図2を参照して、凹溝9、10は、接点部材連結体1の表裏両面の、列の長さ方向の同一の位置に設けられている。また凹溝9、10は、列の長さ方向の幅、および接点部材連結体1の厚み方向の深さが同一で、かつ断面形状が同一に形成されている。
図2の例では凹溝9、10の断面形状を略U字状としているが、例えば略V字状その他の断面形状としてもよい。
【0029】
前記各部を備えたこの例の接点部材連結体1は、W、Mo、およびこれらの炭化物からなる群より選ばれた少なくとも1種の第一成分と、Ag、およびCuからなる群より選ばれた少なくとも1種の第二成分とを含む複合材料によって一体に形成されている。
前記接点部材連結体1は、例えば前記両成分の粉末を含む混合物を圧縮成形してそのもとになる圧縮成形体を作製したのち、例えば常圧下で前記圧縮成形体を焼成して製造でき、一度の圧縮成形および焼成によって、一体に連結された複数の接点部材2を同時に製造できる。また前記接点部材連結体1を手で折り曲げる等して連結部3の位置で選択的に破断させるだけで、個々の接点部材2を1つずつ分離できる。そのため接点部材2の生産性を向上し、かつ消費エネルギーをできるだけ少なくできる。
【0030】
また、前記接点部材連結体1において、個々の接点部材2は、いずれも理論密度比が97%以上に設定されている。そのため、前記接点部材2は緻密性に優れ、電気伝導度が高いため、例えば遮断器の遮断時等に高温に発熱したりせず、第一成分の配合割合に見合う所定の耐溶着性や耐摩耗性等を有している。
図2を参照して、連結部3は、凹溝9、10のそれぞれ最深点P、Pを通る、一点鎖線で示す位置の厚みが最も小さい。したがって前記位置での、前記一点鎖線を含みかつ列の長さ方向と直交する方向の断面の断面積が、同方向の断面積の最小値を示す。
【0031】
図3は、図1の例の接点部材連結体1の連結部3における、列の長さ方向と直交する方向の断面積が最小値を示す前記位置を模式的に説明すると共に、前記位置での連結部3の断面積Sと、接点部材2の同方向の断面積Sとの関係を模式的に説明する斜視図である。
図3を参照して、前記断面積Sは断面積Sの33%以上、67%以下、特に33%以上、50%以下であるのが好ましい。
【0032】
連結部3の断面積Sが前記範囲未満では、前記連結部3が接点部材2に比べて薄く、あるいは小さくなりすぎる。そのため接点部材連結体1を取り扱う際等に、前記接点部材連結体1が、それ自体の重み等によって連結部3において勝手に破断して折れたりしやすくなり、取り扱い性が低下するおそれがある。
また連結部3の断面積Sが前記範囲を超える場合には、前記連結部3が接点部材2に比べて十分に薄くなく、あるいは小さくなくなりすぎる。そのため、接点部材連結体1を折り曲げる等して連結部3を破断させて個々の接点部材2に分離させるために大きな応力を要するようになったり、接点部材連結体1が連結部3以外の部分、すなわち接点部材2の領域内で破断したりしやすくなり、前記破断の作業性が低下するおそれがある。また、接点部材2の歩留まりや生産性が低下するおそれもある。
【0033】
図4は、本発明の接点部材の、実施の形態の一例を示す斜視図である。
図4を参照して、この例の接点部材2は矩形平板状に形成され、前記接点部材2を矩形に区画する4つの側面のうち、図において手前側の1つの側面において破断面11が露呈したものである。前記接点部材2の表面5、裏面6、前記4つの側面のうち前記破断面11が露呈した側面と直交する互いに平行な2つの側面7、8、ならびに前記破断面11が露呈した側面と平行な1つの側面12においては破断のない面が露呈している。
【0034】
前記接点部材2は、例えば図1の接点部材連結体1を手で折り曲げる等して、先端側の1つの接点部材2を、連結部3を破断させることで前記接点部材連結体1から分離させて得ることができる。破断面11は、連結部3を破断させた破断面に相当する。
また図5は、本発明の接点部材の、実施の形態の他の例を示す斜視図である。
図5を参照して、この例の接点部材2は、やはり矩形平板状に形成され、前記接点部材2を矩形に区画する4つの側面のうち互いに平行な2つの側面において破断面11、13が露呈したものである。前記接点部材2の表面5、裏面6、および前記4つの側面のうち前記破断面11、13が露呈した側面と直交する互いに平行な2つの側面7、8においては破断のない面が露呈している。
【0035】
前記接点部材2は、例えば図1の接点部材連結体1を手で折り曲げる等して、先端側の1つを除く残り3つの接点部材2を、連結部3を破断させることで前記接点部材連結体1から分離させて得ることができる。破断面11、13は、連結部3を破断させた破断面に相当する。
前記図4、図5の接点部材2は、いずれもその理論密度比が97%以上に設定されている。そのため、前記接点部材2は緻密性に優れ、電気伝導度が高いため、例えば遮断器の遮断時等に高温に発熱したりせず、第一成分の配合割合に見合う所定の耐溶着性や耐摩耗性等を有している。
【0036】
なお接点部材2の理論密度比は、前記接点部材2の緻密性、及び電気伝導度をさらに向上して、耐溶着性や耐摩耗性等をさらに向上することを考慮すると、前記範囲内でも98%以上、特に99%以上であるのが好ましい。
理論密度比の上限は、先の定義からも明らかなように100%であり、接点部材2の理論密度比は100%であるのが最も好ましい。しかし理論密度比が前記の範囲内であれば、接点部材2に、十分に実用性に優れた耐溶着性や耐摩耗性等を付与できる。しかも、先に説明した焼結工程において気孔を完全に取り除いて理論密度比を100%に調整する場合よりも、前記焼結工程の各過程の条件に融通性を持たせて、接点部材連結体1および接点部材2の生産性を向上できる。
【0037】
なお接点部材2の理論密度比を求めるもとになる前記接点部材2の実際の密度は、日本工業規格JIS A8807−1976「固体比重測定方法」に所載の測定方法によって測定した値でもって表すこととする。
前記接点部材2は、いずれもJIS Z2511:2006「金属粉−抗折試験による圧粉体強さ測定方法」に所載の測定方法によって測定される厚み方向の抗折力が0.8GPa以上、1.6GPa以下、特に1.1GPa以上、1.5GPa以下であるのが好ましい。
【0038】
抗折力が前記範囲未満では、接点部材2が著しく消耗しやすくなって、短期間で使用寿命に達するおそれがある。これに対し本発明では、接点部材2の理論密度比を97%以上として高密度化することにより、前記接点部材2の抗折力を前記範囲内として消耗を抑制し、接点部材2の長寿命化を図ることができる。
なお個々の接点部材2の抗折力が前記範囲を超える接点部材連結体1を、先に説明した圧縮成形、および焼成を経て製造するのは実質的に困難である。また、たとえ製造できたとしても、前記接点部材連結体1を手で折り曲げる等して連結部3を破断させて個々の接点部材2を分離させるのが容易でなくなるおそれがある。そのため抗折力は前記範囲以下であるのが好ましい。
【0039】
前記接点部材2は、いずれも前記のように表面5、および裏面6において破断のない面が露呈している。そのため、破断面の仕上げやバリ取り等の加工をしなくても遮断器等に組み込んで使用でき、接点部材の準備から遮断器等の組立までに要する工程数を削減して、前記遮断器等の生産性を向上し、かつ消費エネルギーをできるだけ少なくできる。
また前記接点部材2は、いずれも前記のように互いに平行な2つの側面7、8において破断のない面が露呈している。そのため、前記両側面7、8を把持面として、例えばチャック等によって正確に位置決めをしながら個々の接点部材2を把持させることができ、前記把持をさせた状態で接点部材2を搬送したり、あるいは遮断器等に組み込みんだりする作業等を容易に行なうことができる。そのため、遮断器等の生産性をさらに向上できる。
【0040】
前記表面5、または裏面6の表面粗さは、該当する面を相手側の接点部材との接触面として利用する場合、JIS B0601:2001「製品の幾何特性仕様(GPS)−表面性状:輪郭曲線方式−用語,定義及び表面性状パラメータ」において規定された輪郭曲線の算術平均粗さRaで表して8μm以上、25μm以下、特に8μm以上、18μm以下であるのが好ましい。
【0041】
前記接触面の算術平均粗さRaが前記範囲を超える場合には、相手側の接点部材との接触時に十分な接触面積を確保できないため、例えば遮断器の遮断時等に高温に発熱したりしやすくなるおそれがある。
また、発熱を防止するためには前記接触面を、輪郭曲線の算術平均粗さRaが前記範囲を満足するように研磨加工をしたり、例えばAg等の薄膜で被覆したりする仕上げ加工をする必要があり、その分だけ工程数が増加して接点部材2の生産性が低下するおそれがある。
【0042】
一方、接触面の算術平均粗さRaが前記範囲未満である表面平滑性に優れた接点部材連結体1を、先に説明した圧縮成形、および焼成を経て製造するのは実質的に困難である。しかも接触面の算術平均粗さRaは、前記範囲内であれば、相手側の接点部材との接触時に十分な接触面積を確保でき、例えば遮断器の遮断時等に高温に発熱したりしにくくできるため、前記接点部材連結体1や接点部材2の生産性等を考慮すると、それ以上、算術平均粗さRaを小さくする必要はない。
【0043】
また表面5、または裏面6の平面度は、該当する面を相手側の接点部材との接触面として利用する場合、JIS B0621−1984「幾何偏差の定義及び表示」に規定された、前記接触面を幾何学的平行二平面で挟んだとき、前記平行二平面の間隔が最小となる場合の、前記平行二平面間の間隔で表される平面度が1μm以上、200μm以下、特に10μm以上、100μm以下であるのが好ましい。
【0044】
さらに両面5、6間の平行度は、前記JIS B0621−1984「幾何偏差の定義及び表示」に規定された、前記両面のうち一方の面と平行な幾何学的平行二平面でもう一方の面を挟んだとき、前記平行二平面の間隔が最小となる場合の、前記平行二平面間の間隔で表される平行度が1μm以上、150μm以下、特に10μm以上、100μm以下であるのが好ましい。
【0045】
平面度および平行度がいずれか一方でも前記範囲を超える場合には、相手側の接点部材との接触時に十分な接触面積を確保できないため、例えば遮断器の遮断時等に高温に発熱したりしやすくなるおそれがある。
また、発熱を防止するためには前記接触面を、平面度および平行度がいずれも前記範囲を満足するように研磨加工をしたり、例えばAg等の薄膜で被覆したりする仕上げ加工をする必要があり、その分だけ工程数が増加して接点部材2の生産性が低下するおそれがある。
【0046】
一方、平面度または平行度が前記範囲未満である平面性や平行性に優れた接点部材連結体1を、先に説明した圧縮成形、および焼成を経て製造するのは実質的に困難である。しかも平面度や平行度は、前記範囲内であれば、相手側の接点部材との接触時に十分な接触面積を確保でき、例えば遮断器の遮断時等に高温に発熱したりしにくくできるため、前記接点部材連結体1や接点部材2の生産性等を考慮すると、それ以上、平面度や平行度を小さくする必要はない。
【0047】
ただし本発明は、前記仕上げ加工を排除するものではない。前記表面5、裏面6、両側面7、8等の破断のない面には、必要に応じて研磨加工をしたり、例えばAg等の薄膜で被覆したりする仕上げ加工を施しても構わない。
先に説明したように前記接点部材2、およびそのもとになる接点部材連結体1は、第一および第二成分を含む複合材料によって形成される。前記第一成分としてはW、Mo、およびこれらの炭化物(WC等)からなる群より選ばれた少なくとも1種の耐熱性非酸化物が挙げられる。また第二成分としてはAg、およびCuからなる群より選ばれた少なくとも1種の高い導電性を有する金属材料が挙げられる。
【0048】
第一成分の含有割合は、前記第一成分と第二成分の総量中の0.1質量%以上、60質量%以下、特に35質量%以上、50質量%以下であるのが好ましい。
前記範囲より第一成分が少ない場合には、前記第一成分を併用したことによる、先に説明した、接点部材2の耐アーク性、耐溶着性、耐摩耗性等を向上する効果が十分に得られないおそれがある。
【0049】
また、前記範囲より第一成分が多い場合には、相対的に第二成分が少なくなって、前記第二成分による導電ネットワークの形成が不十分となり、接点部材2の電気伝導度が低くなって、例えば遮断器の遮断時等に高温に発熱したりしやすくなるおそれがある。また、先に説明したように焼結工程において半溶融状態となったのち冷却固化する際に気泡を移動させる働きをする第二成分の量が不足して、接点部材2の理論密度比を97%以上に向上できないおそれもある。
【0050】
複合材料は、前記両成分に加えて、両成分を併用したことによる、接点部材の良好な導電性を維持しながら耐アーク性、耐溶着性、耐摩耗性等を向上する効果を損なわない範囲で、何らかの必要に応じてさらに他の成分(以下「第三成分」と略称する場合がある。)を、複合材料の全量、すなわち第一ないし第三成分の総量中の5質量%以下(第一および第二成分の合計の含有割合は95質量%以上)の範囲で含んでいてもよい。
【0051】
第三成分の含有割合の下限は0質量%(第一および第二成分の合計の含有割合の上限は100質量%)である。
前記第三成分としては、例えばNi、Fe、Cr、Co、Zn、Sn等の金属材料や、あるいはグラファイト、カーボン等の炭素材料等が挙げられる。
接点部材連結体1は、図1の例のように複数の接点部材2が一列の列をなしたものには限られない。例えば2列以上の列をなすように複数の接点部材2が列の長さ方向および幅方向にそれぞれ連結部3を介して連結されていてもよい。
【0052】
ただしその場合、連結部3を破断させて分離した個々の接点部材2は、図4、図5に示したように破断のない互いに平行な2側面7、8を有し得ない。そのためチャック等を用いた搬送や遮断器等への組み込みを行なえないおそれがある。
したがって接点部材連結体1は複数の接点部材2が一列の列をなしたものであるのが好ましい。
【0053】
接点部材2は、例えば遮断器の接点として用いる場合、表面5と裏面6との間の厚みが1mm以上、4mm以下で、かつ両側面7、8間の幅、および前記幅と直交する接点部材連結体1の列の長さ方向の長さが、それぞれ3mm以上、20mm以下であるのが好ましい。
また接点部材連結体1は、接点部材2の生産性を向上することを考慮すると、前記接点部材2を2個以上、特に3個以上列の長さ方向に連結しているのが好ましい。
【0054】
〈接点部材連結体の製造方法〉
図6は、図1の例の接点部材連結体1を製造するための本発明の製造方法の一例のうち、圧縮成形工程を模式的に説明する断面図である。
図1および図6を参照して、圧縮成形工程では、まず製造する接点部材連結体1の裏面の立体形状に対応する上面14を有する下パンチ15と、前記上面14を囲む、前記接点部材連結体1の側面の立体形状に対応する内周面16を有するダイ17とを含むプレス型18を用意する。
【0055】
前記下パンチ15の上面14は、具体的には個々の接点部材2、および末端部材4の裏面6に対応する複数面(図では5面)の平面19間に、凹溝10に対応する凸条20を配列した立体形状に形成されている。
またダイ17の内周面16は、前記個々の接点部材2、および末端部材4の両側面7、8、前記両側面7、8と同一平面とされた連結部3の両側面、先端側の接点部材2の先端側の側面12(図4参照)、ならびに符号を付していないが末端部材4の末端側の側面に対応した立体形状に形成されている。
【0056】
次に、前記プレス型18の、前記上面14と内周面16で囲まれた領域21内に、少なくとも第一および第二成分の粉末を含む混合物22を充填する。
そして前記領域21に、上方の開口から、図中に白抜きの矢印で示すように、製造する接点部材連結体1の表面の立体形状に対応する下面23を有する上パンチ24を挿入する。
【0057】
前記上パンチ24の下面23は、具体的には個々の接点部材2、および末端部材4の表面5に対応する複数面(図では5面)の平面25間に、凹溝9に対応する凸条26を配列した立体形状に形成されている。
このあと、図示していないが上パンチ24の下面23を混合物22上に当接させた状態で、前記上パンチ24を下パンチ15の方向に押し込むことにより混合物22を厚み方向に圧縮成形して、図1に示す接点部材連結体1のもとになる圧縮成形体27を得る。
【0058】
言うまでもないことであるが圧縮成形体27は、焼結工程を経て製造される接点部材連結体1と同一形状とされる。すなわち図1を参照して、この例では圧縮成形体27は、平板状の接点部材2を4個、それぞれの側面において前記接点部材2より厚みの小さい連結部3を介して一列の列をなすように互いに連結し、かつ前記列の最末端に、前記連結部3を介して平板状の末端部材4を連結した形状とされる。
【0059】
図7は、前記製造方法の一例のうち、先の圧縮成形工程で得た圧縮成形体27を焼結させる焼結工程における温度の推移を説明するグラフである。図8は、前記焼結工程のうち焼成過程から降温過程への移行時の状態を模式的に説明する側面図である。
図1、図7を参照して、焼結工程は、圧縮成形体27を、室温付近の温度から第二成分の融点付近の所定の焼成温度まで所定の昇温速度で昇温させる昇温過程と、前記所定の焼成温度で所定時間加熱する焼成過程と、前記焼成過程を経た圧縮成形体27を、先端側(図1において奥側)から、末端部材4を連結した末端側(図1において手前側)へ向けて順次、所定の降温速度で降温させる降温過程とを含んでいる。
【0060】
前記焼結工程は、例えば圧縮成形体27を、前記先端側を搬送方向前方、末端側を搬送方向後方に設定して列の長さ方向に所定の速度で搬送しながら昇温領域、焼成領域、および降温領域を順に通過させることで、図7に示す温度の推移をもって焼成処理できるベルト炉、トンネル炉等の連続炉を用いて実施することができる。
すなわち図8を参照して、前記連続炉を用いて、圧縮成形体27を所定の搬送速度で図中に黒矢印で示す方向に搬送しながら、焼成領域を通過させて降温領域に移行させることにより、前記圧縮成形体27を先端側から末端側へ向けて順次、所定の降温速度で降温させることができる。
【0061】
また連続炉を用いることにより、複数の圧縮成形体27を連続的に搬送しながら焼成処理できるため、接点部材連結体1、および接点部材2の生産性も向上できる。
焼成は、接点部材連結体1を構成する複合材料を過度に酸化させないために、例えばH等の還元性雰囲気や、N、Ar等の不活性雰囲気等の非酸化性雰囲気中で行なうのが好ましい。
【0062】
前記のうち昇温領域では、炉内の温度が、圧縮成形体27の搬送方向に所定の温度勾配を持たせて徐々に上昇するように設定される。また焼成領域では、炉内の温度が、第二成分の融点付近の所定の焼成温度に設定される。さらに降温領域では、炉内の温度が、圧縮成形体27の搬送方向に所定の温度勾配を持たせて徐々に下降するように設定される。
図7を参照して、この例では昇温過程での昇温速度を、室温から途中の温度までの第一段階での昇温速度よりも、前記途中の温度から第二成分の融点付近の所定の焼成温度までの第二段階での昇温速度が小さくなるように設定している。昇温速度を前記2段階としているのは、下記の理由による。
【0063】
すなわち、昇温後半の第二段階での昇温速度が大きいと第二成分が急速に軟化を開始するため、圧縮成形体27中の粉末間の隙間中に含まれるガスが十分に排出されず、前記第二成分が半溶融状態となった後に気孔として取り残される量が増加する。その結果、昇温過程後半の第二段階ないし次の焼成過程で第二成分が半溶融状態となった際に前記気孔が大きく体積膨張することにより、製造される接点部材2の理論密度比が低下したり、圧縮成形体に亀裂や発泡等の変形が生じたりするおそれがある。そのため、第二段階での昇温速度はあまり大きくないことが望ましい。
【0064】
しかし昇温過程の全体で昇温速度を小さくすると昇温に長時間を要することになり、接点部材連結体1、ならびに接点部材2の生産性が低下する。これに対し、昇温過程を前記第一および第二段階の2段階として、第二成分の軟化が始まらない低温の第一段階での昇温速度を第二段階での昇温速度より大きくすれば、昇温過程の全体での昇温に要する時間を短縮できる。
【0065】
なお、第二段階での昇温速度は3℃/分以上、10℃/分以下であるのが好ましい。昇温速度が前記範囲未満では、たとえ第一段階での昇温速度を大きくしたとしても、昇温に長時間を要することになり、接点部材連結体1、ならびに接点部材2の生産性が低下するおそれがある。また昇温速度が前記範囲を超える場合には、先に説明した気孔の量の増加と、それに伴う理論密度比の低下を生じるおそれがある。
【0066】
また第一段階の昇温速度は第二段階より大きければよいが、昇温に要する時間をより効果的に短縮することを考慮すると5℃/分以上、20℃/分以下、特に8℃/分以上、15℃/分以下で、かつ第二段階の昇温速度より大きいのが好ましい。
また、第一段階から第二段階への切り替えは、焼成過程で設定される所定の焼成温度よりおよそ50℃以上、200℃以下、特に100℃程度低い温度で行なうようにするのが、先に説明した昇温を2段階で行なうことによる効果の点で好ましい。
【0067】
両段階での昇温速度を、それぞれ前記範囲内に調整するためには、例えば昇温領域のうち、それぞれの段階を実施する領域の長さ、および両領域での昇温の温度勾配、さらには圧縮成形体27の搬送速度等を調整すればよい。
このうち搬送速度は、昇温領域での温度勾配にもよるが50mm/分以下、特に30mm/分以下であるのが好ましい。
【0068】
前記範囲より搬送速度が大きい場合には、第二成分が急速に軟化を開始するため、圧縮成形体27中の粉末間の隙間中に含まれるガスが十分に排出されず、前記第二成分が半溶融状態となった後に気孔として取り残される量が増加する。その結果、昇温過程後半の第二段階ないし次の焼成過程で第二成分が半溶融状態となった際に前記気孔が大きく体積膨張することにより、製造される接点部材2の理論密度比が低下したり、圧縮成形体に亀裂や発泡等の変形が生じたりするおそれがある。
【0069】
次に焼成過程では、昇温過程で第二成分の融点付近の所定の焼成温度まで昇温された圧縮成形体を前記所定の焼成温度を維持しながら所定時間加熱する。これにより、圧縮成形体27中の第二成分が半溶融状態となる。
図9は、焼結工程のうち焼成過程において半溶融状態にある接点部材2の内部を模式的に示す断面図である。
【0070】
図9を参照して、焼成過程で一定時間加熱して第二成分を半溶融状態とした接点部材2の内部には、昇温過程で逃げ切れずに取り残された複数の気孔28が広く分布している。
前記焼成過程での焼成温度は、先に説明したように第二成分の融点付近の所定の温度とされる。その具体的な範囲は特に限定されないが980℃以上、1250℃以下、特に1030℃以上、1200℃以下であるのが好ましい。
【0071】
また焼成時間は2時間以上、4時間以下であるのが好ましい。
焼成温度および/または焼成時間が前記範囲未満では、焼成過程で第二成分を十分に軟化できないおそれがある。また焼成温度および/または焼成時間が前記範囲を超える場合には加熱が過剰となり、接点部材2中の気孔28が大きく体積膨張して発泡等が生じたりすることにより、製造される接点部材2の理論密度比が低下するおそれがある。
【0072】
そのためこのいずれの場合にも、理論密度比が97%以上である緻密な接点部材2を製造できないおそれがある。
また焼成温度および/または焼成時間が前記範囲を超える場合には、第二成分の流動性が過度に高くなり、圧縮成形体がその外形を維持できなくなって、製造される接点部材に変形が生じるおそれもある。
【0073】
焼成時間を前記範囲内に調整するためには、例えば焼成領域の長さや圧縮成形体27の搬送速度等を調整すればよい。
図8を参照して、焼成領域で所定時間の加熱をした圧縮成形体27は、次いで図中に黒矢印で示す搬送方向に所定の搬送速度で搬送しながら、先端側(図において右側)から末端側(図において左側)へ向けて順次、降温領域に移行される。そして降温領域において設定された所定の降温速度で、前記先端側から順に降温が開始される。
【0074】
図10は、焼結工程のうち焼成過程から降温過程に移行した降温途中の接点部材の内部を模式的に示す断面図である。また図11は、焼結工程のうち降温過程の最終段階における末端部材の内部を模式的に示す断面図である。
図10を参照して、前記降温過程において、圧縮成形体27を所定の降温速度で先端側から順に降温させて行くと、前記先端側から順に第二成分が冷却固化を開始する。
【0075】
そして第二成分が半溶融状態にある領域と冷却固化した領域との境界線29が、図中に黒矢印で示す圧縮成形体27の搬送に伴って、同図中に実線の矢印で示すように前記圧縮成形体27の先端側から末端側へ向けて徐々に移動する。
そうすると、この移動に伴って個々の接点部材2中の気孔28が、同図中に短い矢印で示すように末端側へ順次移動される。気孔28の移動は、連結部3を介して接点部材連結体1の略全長に亘って進行し、移動された気孔28は、図11に示す降温過程の最終段階で、末端に連結された末端部材4中に集められる。
【0076】
その結果、前記末端部材4より進行方向前方側の各接点部材2中に残留する気孔28の数が著しく少なくなって、それぞれの接点部材2は、理論密度比が97%以上である緻密な状態とされる。
したがって前記製造方法によれば、複数の接点部材2が連結部3を介して列をなすように連結されていると共に、個々の接点部材2の理論密度比がいずれも97%以上である接点部材連結体1を製造できる。
【0077】
なお図11では、末端部材4の、さらに末端側の側面30の近傍まで複数の気孔28が移動された状態を示している。しかし接点部材2から移動された気孔28が、連結部3を通過して末端部材4に入ってさえいればよい。
前記降温過程での降温速度は5℃/分以上、20℃/分以下、特に10℃/分以上、20℃/分以下であるのが好ましい。
【0078】
降温速度が前記範囲未満では、降温に要する時間が必要以上に長くかかりすぎることになるため、接点部材連結体1や接点部材2の生産性が低下するおそれがある。また降温速度が前記範囲を超える場合には、例えば1つの接点部材2中での気孔28の移動が完了する前に第二成分の冷却固化が完了して、前記接点部材2中に残留する気孔28の量が多くなってしまい、理論密度比が97%以上である緻密な接点部材2を製造できないおそれがある。
【0079】
降温速度を前記範囲内に調整するためには、例えば降温領域の長さ、および降温領域での降温の温度勾配、さらには圧縮成形体27の搬送速度等を調整すればよい。
このうち搬送速度は、降温領域での温度勾配にもよるが10mm/分以上、特に20mm/分以上であるのが好ましい。
前記範囲より搬送速度が小さい場合には、降温に要する時間が必要以上に長くかかりすぎることになるため、接点部材連結体1や接点部材2の生産性が低下するおそれがある。
【0080】
前記製造方法のうち圧縮成形工程において形成される圧縮成形体27は、先に説明したように焼結工程を経て製造される接点部材連結体1と同一形状とされる。そのため、焼結による多少の寸法変化はあるものの、製造する接点部材連結体1の形状や寸法を見越して、圧縮成形体27の形状ならびに寸法を設定すればよい。
例えば連結部3は、先に説明したように接点部材連結体1の取扱性等を考慮して、図3で説明した断面積S、Sの比を33%以上、67%以下に設定すればよい。ただし圧縮成形体27の連結部3における前記断面積S、Sの比は、下記の理由からも33%以上に設定するのが好ましい。
【0081】
すなわち連結部3における、列の長さ方向と直交する方向の断面積の最小値Sが、接点部材2の同方向の断面積Sの33%未満では、先に説明したように気孔28を、前記連結部3を通して圧縮成形体27の先端側から末端側までスムースに移動できないおそれがある。
そのため、それぞれの接点部材2中に気孔28が残留して、理論密度比が97%以上である緻密な接点部材2を製造できないおそれがある。また、一度の焼成によって形成されるそれぞれの接点部材2の理論密度比のばらつきが大きくなるおそれもある。
【0082】
また、焼成前の圧縮成形体27が、それ自体の重み等によって連結部3において勝手に破断して折れたりしやすくなり、取り扱い性が低下するおそれがある。さらに焼結工程において圧縮成形体27を加熱した際の熱膨張の応力が連結部3に集中して、焼成途中で連結部3が破断したりするおそれもある。
圧縮成形体27の列の長さ方向の長さは、個々の接点部材2の大きさや、1つの接点部材連結体1において連結する接点部材2の個数等によっても異なるものの100mm以下であるのが好ましい。
【0083】
例えば多数の接点部材2を連結した形状として、圧縮成形体27の長さが前記範囲を超える場合には、焼結工程において、前記圧縮成形体27中に残留した気孔を、前記圧縮成形体27の先端側から末端側までスムースに移動できないおそれがある。
そのため、それぞれの接点部材2中に気孔28が残留して、理論密度比が97%以上である緻密な接点部材2を製造できないおそれがある。また、一度の焼成によって形成されるそれぞれの接点部材2の理論密度比のばらつきが大きくなるおそれもある。
【0084】
圧縮成形体27の搬送速度を小さくすれば、前記範囲を超える長い圧縮成形体27であっても、気孔28を先端側から末端側までスムースに移動できる可能性はある。しかし1つの接点部材連結体1を製造するのに要する時間が長くかかりすぎることになるため、多数の接点部材2を連結した形状として前記接点部材2の生産性を向上しようとする意図に反して、接点部材連結体1や接点部材2の生産性が低下するおそれがある。
【0085】
圧縮成形体27の密度は8.0g/cm以上、10.0g/cm以下であるのが好ましい。
密度が前記範囲未満では、圧縮成形体27中に多数の隙間が存在することになるため、たとえ前記焼結工程を経たとしても、焼結後の接点部材2中に多数の気孔28が残留してしまい、理論密度比が97%以上である緻密な接点部材2を製造できないおそれがある。
【0086】
また密度が前記範囲を超える場合には、いわゆるスプリングバックにより接点部材2の内部に亀裂を生じるおそれがある。
圧縮成形体27のもとになる第一成分の粉末は、できるだけ隙間の小さい緻密な圧縮成形体27、ならびに理論密度比の高い接点部材2を製造することを考慮すると平均粒径が0.2μm以上、5μm以下であるのが好ましい。
【0087】
また第二成分の粉末は、同様にできるだけ隙間の小さい緻密な圧縮成形体27、ならびに理論密度比の高い接点部材2を製造することや、前記接点部材2中に良好な導電ネットワークを形成すること等を考慮すると平均粒径が0.5μm以上、5μm以下であるのが好ましい。
前記両成分、もしくは両成分に第三成分を加えた三成分を、例えばメタノール、エタノール、アセトン等の溶剤を加えて湿式ボールミル、アトライタ、振動ミル等を用いて混合して混合物22が調製される。
【0088】
圧縮成形体27の密度を前記範囲内とするためには、前記各成分の粒径を調整したり圧縮成形の圧力を調整したりすればよい。このうち圧縮成形の圧力は150MPa以上、500MPa以下、特に250MPa以上、350MPa以下であるのが好ましい。
末端部材4の厚み、幅および長さは接点部材2と同程度でよい。ただし末端部材4の長さは5mm以上、15mm以下であるのが好ましい。
【0089】
末端部材4の長さが前記範囲未満では、接点部材2から移動してきた気孔を前記末端部材4内に十分に収容することができず、特に末端部材4に隣接する接点部材2の理論密度比が低下するおそれがある。一方、末端部材4の長さが前記範囲を超えても材料の無駄になるだけである。
前記製造方法によれば、末端部材4に気孔が集まるため、前記末端部材4の理論密度比は接点部材2よりも低くなる傾向がある。末端部材4の理論密度比は、一般的には97%未満、特に89%以上、95%以下程度である。
【0090】
〈遮断器〉
本発明の接点部材2は、例えば各種開閉器、継電器、遮断器等の、比較的大電力の回路の開閉用の接点部材として好適に用いられる。特に、先に説明した第一および第二成分を含む複合材料によって形成したことによる良好な耐アーク性、耐溶着性、および耐摩耗性等を活かして遮断器用の接点として好適に用いることができる。
【0091】
図12は、本発明の接点部材を接点として組み込む遮断器の内部構造の一例を模式的に示す側面図である。図13は、前記遮断器において回路を遮断した状態を模式的に示す側面図である。
両図を参照して、この例の遮断器31は、固定側接点32と可動側接点33とを備えている。
【0092】
このうち固定側接点32は、遮断器31のケーシング34に固定された台金35と、前記台金35の一端に、例えばロウ付け等によって固定された平板状の接点部材36とを備えている。
また可動側接点33は、前記ケーシング34に対して軸37を中心として回転自在に設けられた台金38と、前記台金38の一端に、例えばロウ付け等によって固定された平板状の接点部材39とを備えている。
【0093】
図13を参照して、前記固定側接点32と可動側接点33とは、それぞれの台金35、38の一端に固定された接点部材36、39の表面40、41を互いに対向させた状態で配設されている。
図12を参照して、前記可動側接点33を、軸37を中心として回動させて、両接点部材36、39の表面40、41を互いに接触される。図示していないが、遮断器31の外部スイッチをONにすると図12に示す状態が維持される。
【0094】
回路に過大な電流が流れると、図示しない引き外し機構が動作して可動側接点33が軸37を中心として回動されて、図13に示すように両接点部材36、39の表面40、41が互いに離間されて回路が遮断される。また外部スイッチが中立またはOFFの状態とされる。
引き外し機構としては、電磁コイルを用いた電磁式や、バイメタルを用いた熱動式等の種々の引き外し機構が用いられる。また回路の開閉時にアーク放電が発生するのを防止するため、遮断器には消弧装置を組み込んでもよい。
【0095】
本発明では、前記遮断器31の2つの接点部材36、39のうちの少なくとも一方、好ましくは両方として、本発明の接点部材2を用いることができる。
前記本発明の接点部材2を用いることで、先に説明したように耐アーク性、耐溶着性、および耐摩耗性等を向上して遮断器31の耐久性を向上できる。
また本発明の接点部材2は、前記表面40、41となる表面5または裏面6を仕上げたりバリ取りしたりせずに遮断器31に組み込むことができる上、本発明の接点部材連結体1から形成されるため生産性に優れている。
【0096】
したがって本発明によれば、接点部材2の準備から遮断器31の組立までに要する工程数を削減して生産性を向上し、かつ消費エネルギーをできるだけ少なくすることができ、前記各特性に優れた遮断器31を、生産性良くコスト安価に製造できる。
【実施例】
【0097】
《実施例1》
図1に示す立体形状を有し、列の長さ方向の全長が35mm、前記長さ方向と直交する方向の幅が9mm、厚みが3mmで、かつ前記長さ方向に4つの接点部材2と1つの末端部材4とが連結部3を介して一列に連結された接点部材連結体1を製造することとして、下記の各種材料、およびプレス型18等を用意した。
【0098】
〈複合材料のもとになる混合物22〉
第一成分としてのWC粉末(平均粒径1μm)40質量部と、第二成分としてのAg粉末(平均粒径3μm)60質量部とを配合して混合物22を調製した。
〈プレス型18〉
図6に示すように、製造する接点部材連結体1の裏面の立体形状に対応する上面14を有する下パンチ15と、前記上面14を囲む、前記接点部材連結体1の側面の立体形状に対応する内周面16を有するダイ17と、製造する接点部材連結体1の表面の立体形状に対応する下面23を有する上パンチ24とを、それぞれステンレス鋼によって別体に形成した。
【0099】
なお実施例では、図14に示すように断面略V字状で、かつV字の内角θが20°、深さdが0.75mmである凹溝9、10を接点部材連結体1の表裏両面に設けて連結部3を形成することとして、前記下パンチ15の上面14、および上パンチ24の下面23に、それぞれ前記凹溝9、10に対応する断面形状を有する凸条20、26を一体に形成した。
【0100】
〈圧縮成形工程〉
前記プレス型18の、前記上面14と内周面16とで囲まれた領域21内に8gの混合物22を充填した後、前記領域21に上パンチ24を挿入して、その下面23を混合物22上に当接させた状態で、前記上パンチ24を下パンチ15の方向に押し込むことにより混合物22を厚み方向に圧縮成形して圧縮成形体27を作製した。作製した圧縮成形体27の密度を前出のJIS A8807−1976「固体比重測定方法」に所載の測定方法によって3回測定した密度の平均値を求めたところ9.0g/cmであった。
【0101】
圧縮成形の圧力は300MPa、作業温度は23±1℃とし、プレス型18は加熱しなかった。
〈焼結工程〉
圧縮成形工程で得た圧縮成形体27をH雰囲気中で、ベルト炉を用いて、末端部材4を連結した末端側と反対側(先端側)を搬送方向前方、前記末端側を搬送方向後方に設定して列の長さ方向に所定の速度で搬送しながら、図7に示す温度の推移を経て焼成して接点部材連結体1を製造した。焼成の条件は下記のとおりとした。
【0102】
(搬送速度)
25mm/分
(昇温過程:第一段階)
温度範囲:室温→950℃
昇温速度:10℃/分
(昇温過程:第二段階)
温度範囲:950℃→1050℃
昇温速度:5℃/分
(焼成過程)
焼成温度:1050℃
焼成時間:2時間
(降温過程)
温度範囲:1050℃→室温
降温速度:13℃/分
前記接点部材連結体1における連結部3の断面積の最小値Sは、接点部材2の断面積Sの50%であった。
【0103】
〈接点部材2の形成〉
前記で製造した接点部材連結体1の厚み方向に、1つずつの接点部材2ごとに表面側または裏面側から20Nの力を加えて連結部3を破断させることで接点部材2を端から順に分離させて計4つの接点部材2を得た。
《実施例2》
焼結工程の条件のうち昇温過程での第一段階と第二段階の切り替え温度を880℃、焼成過程での焼成温度を980℃としたこと以外は実施例1と同様にして接点部材連結体1を製造し、4つの接点部材2を形成した。
【0104】
《実施例3》
焼結工程の条件のうち昇温過程での第一段階と第二段階の切り替え温度を900℃、焼成過程での焼成温度を1000℃としたこと以外は実施例1と同様にして接点部材連結体1を製造し、4つの接点部材2を形成した。
《実施例4》
焼結工程の条件のうち昇温過程での第一段階と第二段階の切り替え温度を920℃、焼成過程での焼成温度を1020℃としたこと以外は実施例1と同様にして接点部材連結体1を製造し、4つの接点部材2を形成した。
【0105】
《実施例5》
焼結工程の条件のうち昇温過程での第一段階と第二段階の切り替え温度を930℃、焼成過程での焼成温度を1030℃としたこと以外は実施例1と同様にして接点部材連結体1を製造し、4つの接点部材2を形成した。
《実施例6》
焼結工程の条件のうち昇温過程での第一段階と第二段階の切り替え温度を1020℃、焼成過程での焼成温度を1120℃としたこと以外は実施例1と同様にして接点部材連結体1を製造し、4つの接点部材2を形成した。
【0106】
《実施例7》
焼結工程の条件のうち昇温過程での第一段階と第二段階の切り替え温度を1080℃、焼成過程での焼成温度を1180℃としたこと以外は実施例1と同様にして接点部材連結体1を製造し、4つの接点部材2を形成した。
《実施例8》
焼結工程の条件のうち昇温過程での第一段階と第二段階の切り替え温度を1120℃、焼成過程での焼成温度を1220℃としたこと以外は実施例1と同様にして接点部材連結体1を製造し、4つの接点部材2を形成した。
【0107】
《理論密度比の算出》
各実施例で得た最も末端部材4に近い末端側の接点部材2について、前出のJIS A8807−1976「固体比重測定方法」に所載の測定方法によって3回ずつ測定した密度の平均値を求め、前記平均値から理論密度比を求めた。
《抗折力の測定》
各実施例で得た最も末端部材4に近い末端側の接点部材2について、前出のJIS Z2511:2006「金属粉−抗折試験による圧粉体強さ測定方法」に所載の測定方法によって3回ずつ測定した厚み方向の抗折力の平均値を求めた。
【0108】
《生産性の評価》
1つの圧縮成形体27をベルト炉に供給して、昇温過程、焼成過程および降温過程を経て接点部材連結体1を製造するまでに要した時間を計測して生産性を評価した。
《破断しやすさの評価》
製造した接点部材連結体1の連結部3を前記条件で破断させて、個々の接点部材2に分離させる際に破断しやすかったか否かを判定すると共に、接点部材連結体1が連結部3以外の部分、すなわち接点部材2の領域内で破断したか否かを判定して、下記の基準で破断しやすさを評価した。
【0109】
○:個々の接点部材2ごとに分離させるのが容易で、しかも接点部材連結体1は連結部3のみで破断した。
△:基本的には連結部3に沿って判断しているが、連結部3の長さの1/2以下の範囲において、接点部材2の領域内での破断が生じ、分離させた個々の接点部材2に、前記破断による欠けが発生した。
【0110】
×:個々の接点部材2ごとに分離させることができなかったり、連結部3の長さの1/2を超える範囲において、接点部材2の領域内での破断が生じたりした。
《消耗率の測定》
各実施例で得た最も末端部材4に近い末端側の接点部材2を2つ用意し、定格電流値が150Aである図12に示す遮断器31に、それぞれ固定側接点32用の接点部材36、および可動側接点33用の接点部材39として組み込んで短絡遮断試験をした。
【0111】
短絡遮断試験としては、遮断器31の外部スイッチをONにした状態で回路に遮断電流(負荷電圧220V、5000A)を流して電流を遮断させるO責務を1回行なった後、前記外部スイッチをOFFにした状態で回路に前記遮断電流を流しながら強制的に外部スイッチをONにして瞬時に電流を遮断させるCO責務を2回行う規格試験1回と、前記規格試験後にさらにCO責務を2回行う余力試験1回とを1セットとして3セット繰り返し行なった。
【0112】
そして、前記短絡試験後に取り外した接点部材2の質量を秤量して、元の質量に対する減量の百分率を求めて消耗率とした。
以上の結果を表1に示す。
【0113】
【表1】

【0114】
表1より、焼成過程での焼成温度を980℃以上、1250℃以下、特に1030℃以上、1200℃以下としたとき、特に理論密度比が高く、抗折力が大きい上、消耗率が小さい接点部材2を生産性良く製造できることが判った。
《実施例9〜13》
焼結工程の条件のうち搬送速度を10mm/分(実施例9)、20mm/分(実施例10)、30mm/分(実施例11)、40mm/分(実施例12)、および50mm/分(実施例13)としたこと以外は実施例1と同様にして接点部材連結体1を製造し、4つの接点部材2を形成した。
【0115】
各実施例で得た最も末端部材4に近い末端側の接点部材について、前記各試験を行なってその特性を評価した。結果を、実施例1の結果と合わせて表2に示す。
【0116】
【表2】

【0117】
表2より、焼成工程での圧縮成形体27の搬送速度を10mm/分以上、50mm/分以下、特に20mm/分以上、30mm/分以下としたとき、特に理論密度比が高く、抗折力が大きい上、消耗率が小さい接点部材2を生産性良く製造できることが判った。
《実施例14〜17》
圧縮成形体27における凹溝9、10の深さを調整して、接点部材連結体1における連結部3の断面積の最小値Sを、接点部材2の同方向の断面積Sの35%(実施例14)、45%(実施例15)、55%(実施例16)、および65%(実施例17)としたこと以外は実施例1と同様にして接点部材連結体1を製造し、4つの接点部材2を形成した。
【0118】
各実施例で得た最も末端部材4に近い末端側の接点部材について、前記各試験を行なってその特性を評価した。結果を、実施例1の結果と合わせて表3に示す。
【0119】
【表3】

【0120】
表3より、連結部3の断面積の最小値Sを、接点部材2の同方向の断面積Sの33%以上、67%以下、特に33%以上、50%以下としたとき、接点部材連結体1から接点部材2を作業性よく分離できること、特に理論密度比が高く、抗折力が大きい上、消耗率が小さい接点部材2を生産性良く製造できることが判った。
《実施例18》
複合材料のもとになる混合物22として、第一成分としてのWC粉末(平均粒径1μm)10質量部と、第二成分としてのAg粉末(平均粒径3μm)90質量部とを配合したものを用いたこと以外は実施例1と同様にして接点部材連結体1を製造し、4つの接点部材2を形成した。
【0121】
《実施例19》
複合材料のもとになる混合物22として、第一成分としてのWC粉末(平均粒径1μm)20質量部と、第二成分としてのAg粉末(平均粒径3μm)80質量部とを配合したものを用いたこと以外は実施例1と同様にして接点部材連結体1を製造し、4つの接点部材2を形成した。
【0122】
《実施例20》
複合材料のもとになる混合物22として、第一成分としてのWC粉末(平均粒径1μm)30質量部と、第二成分としてのAg粉末(平均粒径3μm)70質量部とを配合したものを用いたこと以外は実施例1と同様にして接点部材連結体1を製造し、4つの接点部材2を形成した。
【0123】
《実施例21》
複合材料のもとになる混合物22として、第一成分としてのWC粉末(平均粒径1μm)50質量部と、第二成分としてのAg粉末(平均粒径3μm)50質量部とを配合したものを用いたこと以外は実施例1と同様にして接点部材連結体1を製造し、4つの接点部材2を形成した。
【0124】
《実施例22》
複合材料のもとになる混合物22として、第一成分としてのWC粉末(平均粒径1μm)60質量部と、第二成分としてのAg粉末(平均粒径3μm)40質量部とを配合したものを用いたこと以外は実施例1と同様にして接点部材連結体1を製造し、4つの接点部材2を形成した。
【0125】
《実施例23》
複合材料のもとになる混合物22として、第一成分としてのWC粉末(平均粒径1μm)80質量部と、第二成分としてのAg粉末(平均粒径3μm)20質量部とを配合したものを用いたこと以外は実施例1と同様にして接点部材連結体1を製造し、4つの接点部材2を形成した。
【0126】
《実施例24》
複合材料のもとになる混合物22として、第一成分としてのWC粉末(平均粒径1μm)30質量部と、第二成分としてのAg粉末(平均粒径3μm)70質量部とを配合したものを用い、圧縮成形体27における凹溝9、10の深さを調整して、接点部材連結体1における連結部3の断面積の最小値Sを、接点部材2の同方向の断面積Sの55%とし、かつ焼結工程の条件のうち圧縮成形体27の搬送速度を40mm/分とし、昇温過程での第一段階と第二段階の切り替え温度を900℃、焼成過程での焼成温度を1000℃としたこと以外は実施例1と同様にして接点部材連結体1を製造し、4つの接点部材2を形成した。
【0127】
各実施例で得た最も末端部材4に近い末端側の接点部材について、前記と同様にして理論密度比と抗折力とを求めた。結果を、実施例1の結果と合わせて表4に示す。
【0128】
【表4】

【0129】
表4の実施例1、18〜23の結果より、第一成分としてのWCの割合が両成分総量の0.1質量%以上、60質量%以下、特に35質量%以上、50質量%以下であるとき、特に理論密度比が高く、抗折力が大きい上、消耗率が小さい接点部材2を生産性良く製造できることが判った。
また実施例24と、前記各表の実施例1〜23の結果より、圧縮成形体における連結部3の断面積の最小値Sが小さく、かつ焼成過程での焼成温度、および焼成工程での圧縮成形体27の搬送速度が、いずれもそれぞれの好ましい範囲内ではあるがより好ましい範囲外である場合であっても、理論密度比97%以上の範囲は確保できるものの、やはり各パラメータをそれぞれのより好ましい範囲内とするのが望ましいことが判った。
【0130】
《実施例25》
複合材料のもとになる混合物22として、第一成分としてのW粉末(平均粒径2μm)20質量部と、第二成分としてのCu粉末(平均粒径3μm)80質量部とを配合したものを用い、焼結工程の条件のうち昇温過程での第一段階と第二段階の切り替え温度を1100℃、焼成過程での焼成温度を1200℃としたこと以外は実施例1と同様にして接点部材連結体1を製造し、4つの接点部材2を形成した。
【0131】
《実施例26》
複合材料のもとになる混合物22として、第一成分としてのMo粉末(平均粒径2μm)5質量部と、第二成分としてのCu粉末(平均粒径3μm)95質量部とを配合したものを用いたこと以外は実施例25と同様にして接点部材連結体1を製造し、4つの接点部材2を形成した。
【0132】
《実施例27》
複合材料のもとになる混合物22として、第一成分としてのWC粉末(平均粒径1μm)39質量部と、第二成分としてのAg粉末(平均粒径3μm)60質量部と、第三成分としてのFe粉末(平均粒径4μm)1質量部とを配合したものを用いたこと以外は実施例1と同様にして接点部材連結体1を製造し、4つの接点部材2を形成した。
【0133】
《実施例28》
複合材料のもとになる混合物22として、第一成分としてのWC粉末(平均粒径1μm)37質量部と、第二成分としてのAg粉末(平均粒径3μm)60質量部と、第三成分としてのNi粉末(平均粒径4μm)3質量部とを配合したものを用いたこと以外は実施例1と同様にして接点部材連結体1を製造し、4つの接点部材2を形成した。
【0134】
《実施例29》
複合材料のもとになる混合物22として、第一成分としてのWC粉末(平均粒径1μm)35質量部と、第二成分としてのAg粉末(平均粒径3μm)60質量部と、第三成分としてのCo粉末(平均粒径3μm)5質量部とを配合したものを用いたこと以外は実施例1と同様にして接点部材連結体1を製造し、4つの接点部材2を形成した。
【0135】
《実施例30》
複合材料のもとになる混合物22として、第一成分としてのWC粉末(平均粒径1μm)19質量部と、第二成分としてのAg粉末(平均粒径3μm)80質量部と、第三成分としてのCr粉末(平均粒径3μm)1質量部とを配合したものを用いたこと以外は実施例1と同様にして接点部材連結体1を製造し、4つの接点部材2を形成した。
【0136】
《実施例31》
複合材料のもとになる混合物22として、第一成分としてのWC粉末(平均粒径1μm)14.8質量部と、第二成分としてのAg粉末(平均粒径3μm)85質量部と、第三成分としてのグラファイト粉末(Gr、平均粒径6μm)0.2質量部とを配合したものを用いたこと以外は実施例1と同様にして接点部材連結体1を製造し、4つの接点部材2を形成した。
【0137】
《実施例32》
複合材料のもとになる混合物22として、第一成分としてのWC粉末(平均粒径1μm)20.8質量部と、第二成分としてのAg粉末(平均粒径3μm)79質量部と、第三成分としてのグラファイト粉末(Gr、平均粒径6μm)0.2質量部とを配合したものを用いたこと以外は実施例1と同様にして接点部材連結体1を製造し、4つの接点部材2を形成した。
【0138】
各実施例で得た最も末端部材4に近い末端側の接点部材について、前記と同様にして理論密度比と抗折力とを求めた。結果を表5に示す。
【0139】
【表5】

【0140】
表5より、複合材料が第一成分としてのWやMoと第二成分としてのCuとからなる系や、第一成分としてのWCと第二成分としてのAgと各種の第三成分とからなる系でも、同様に理論密度比が高く、抗折力が大きい上、消耗率が小さい接点部材2を生産性良く製造できることが判った。
《比較例1》
特許文献1の接点部材を再現するため、実施例1で使用したのと同じ混合物22を、1個の接点部材を成形するためのプレス型内に充填し、接点部材2の厚み方向に圧縮成形して、前記1個の接点部材2に対応する圧縮成形体を作製した。圧縮成形の圧力は300MPa、作業温度は23±1℃とし、プレス型は加熱しなかった。
【0141】
作製した圧縮成形体27の密度を前出のJIS A8807−1976「固体比重測定方法」に所載の測定方法によって3回測定した密度の平均値を求めたところ9.0g/cmであった。
次いで前記圧縮成形体をH雰囲気中で、バッチ式の炉を用いて、焼成温度1100℃、昇温開始から降温終了までのトータルの焼結時間6時間、前記1100℃での焼成時間2時間の条件で焼結させた。
【0142】
次いで、前記焼結体を再びプレス型内に収容して厚み方向に再加圧して接点部材を製造した。再加圧の圧力は500MPa、作業温度は23±1℃とし、プレス型は加熱しなかった。
前記接点部材について、前出のJIS A8807−1976「固体比重測定方法」に所載の測定方法によって3回測定した密度の平均値を求め、前記平均値から理論密度比を求めたところ96%であって97%に達していないことが判った。
【0143】
また前記接点部材について、前出のJIS Z2511:2006「金属粉−抗折試験による圧粉体強さ測定方法」に所載の測定方法によって3回ずつ測定した厚み方向の抗折力の平均値を求めたところ0.6GPaであって、強度が不十分であることが判った。
【符号の説明】
【0144】
1 接点部材連結体
2 接点部材
3 連結部
4 末端部材
5 表面
6 裏面
7、8、12、30 側面
9、10 凹溝
11、13 破断面
14 上面
15 下パンチ
16 内周面
17 ダイ
18 プレス型
19、25 平面
20、26 凸条
21 領域
22 混合物
23 下面
24 上パンチ
27 圧縮成形体
28 気孔
29 境界線
31 遮断器
32 固定側接点
33 可動側接点
34 ケーシング
35、38 台金
36 接点部材
36、39 両接点部材
36 接点部材
37 軸
40、41 表面
、P 最深点
、S 断面積
θ 内角
d 深さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
W、Mo、およびこれらの炭化物からなる群より選ばれた少なくとも1種の第一成分と、Ag、およびCuからなる群より選ばれた少なくとも1種の第二成分とを含む複合材料により、平板状の接点部材を複数個、それぞれの側面において前記接点部材より厚みの小さい連結部を介して少なくとも一列の列をなすように互いに連結し、かつ前記列の最末端に、前記連結部を介して平板状の末端部材を連結した形状に一体に形成され、個々の接点部材の理論密度比が97%以上であることを特徴とする接点部材連結体。
【請求項2】
連結部における、列の長さ方向と直交する方向の断面積の最小値が、接点部材の同方向の断面積の33%以上、67%以下である請求項1に記載の接点部材連結体。
【請求項3】
W、Mo、およびこれらの炭化物からなる群より選ばれた少なくとも1種の第一成分と、Ag、およびCuからなる群より選ばれた少なくとも1種の第二成分とを含む複合材料からなり、平板状で、かつ理論密度比が97%以上であると共に、複数の側面のうち少なくとも1つの側面において破断面が露呈し、表面、および裏面において破断のない面が露呈していることを特徴とする接点部材。
【請求項4】
第一成分と第二成分の総量中に占める前記第一成分の割合が0.1質量%以上、60質量%以下である請求項3に記載の接点部材。
【請求項5】
複合材料の全量に対する、第一成分と第二成分の合計の割合が95質量%以上である請求項3または4に記載の接点部材。
【請求項6】
厚み方向の抗折力が0.8GPa以上である請求項3ないし5のいずれか1つに記載の接点部材。
【請求項7】
矩形平板状に形成され、4つの側面のうち少なくとも互いに平行な2つの側面において破断のない面が露呈している請求項3ないし6のいずれか1つに記載の接点部材。
【請求項8】
矩形平板状の接点部材を複数個、それぞれの側面において連結部を介して一列の列をなすように互いに連結し、かつ前記列の最末端に、前記連結部を介して平板状の末端部材を連結した形状に一体に形成された接点部材連結体を、前記連結部において破断させて形成されている請求項7に記載の接点部材。
【請求項9】
W、Mo、およびこれらの炭化物からなる群より選ばれた少なくとも1種の第一成分の粉末と、Ag、およびCuからなる群より選ばれた少なくとも1種の第二成分の粉末とを含む混合物を圧縮成形して、平板状の接点部材を複数個、それぞれの側面において前記接点部材より厚みの小さい連結部を介して少なくとも一列の列をなすように互いに連結し、かつ前記列の最末端に、前記連結部を介して平板状の末端部材を連結した形状の圧縮成形体を作製する圧縮成形工程と、
前記圧縮成形体を、前記第二成分の融点付近の所定の焼成温度で所定時間加熱する焼成過程、および前記焼成過程を経た圧縮成形体を、前記列の末端部材を連結した末端側と反対側から前記末端側へ向けて順次、所定の降温速度で降温させる降温過程を経て焼結させる焼結工程と、
を含むことを特徴とする接点部材連結体の製造方法。
【請求項10】
圧縮成形工程において作製される圧縮成形体の連結部の、列の長さ方向と直交する方向の断面積の最小値が、接点部材の同方向の断面積の33%以上、67%以下である請求項9に記載の接点部材連結体の製造方法。
【請求項11】
圧縮成形体を、焼結工程のうち焼成過程において980℃以上、1250℃以下の焼成温度で所定時間焼成する請求項9または10に記載の接点部材連結体の製造方法。
【請求項12】
圧縮成形体を、末端部材を連結した末端側と反対側を搬送方向前方、前記末端側を搬送方向後方に設定して列の長さ方向に所定の速度で搬送しながら、前記搬送方向に所定の温度勾配を持たせて徐々に温度が上昇するように設定した昇温領域を通過させることで、第二成分の融点付近の所定の焼成温度まで昇温させ、次いで前記所定の焼成温度に加熱した所定長の焼成領域を通過させることで、焼結工程のうち焼成過程を実施し、さらに前記搬送方向に所定の温度勾配を持たせて徐々に温度が下降するように設定した降温領域を通過させることで、前記焼結工程のうち降温過程を実施すると共に、前記搬送速度を10mm/分以上、50mm/分以下に設定する請求項9ないし11のいずれか1つに記載の接点部材連結体の製造方法。
【請求項13】
請求項3ないし8のいずれか1つに記載の接点部材を備えることを特徴とする遮断器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−236045(P2010−236045A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86916(P2009−86916)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000220103)株式会社アライドマテリアル (192)
【Fターム(参考)】