説明

接着シートロール及び半導体装置

【課題】接着剤層に巻き跡が転写されることを抑制し、被着体に接着剤層を貼り付ける際に空気の巻き込みによるボイドの発生を十分に抑制することが可能な接着シートロールを提供すること。
【解決手段】巻き芯11と、巻き芯11の外周面に巻きつけられ、剥離基材1と剥離基材1の表面に部分的に設けられた接着剤層2とを含んで構成された接着シート100と、を有し、非形成領域5の少なくとも一部に対応する巻き芯11の外径が、最長形成部4に対応する巻き芯11の外径よりも大きい、接着シートロール110である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着シートロール及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子と半導体素子搭載用の支持部材との接合には銀ペーストが主に使用されている。しかし、近年の半導体素子の小型化・高性能化に伴い、使用される支持部材にも小型化・細密化が要求されるようになってきている。こうした要求に対して、銀ペーストでは、はみ出しや半導体素子の傾きに起因するワイヤボンディング時における不具合の発生、銀ペーストからなる接着剤層の膜厚の制御困難性、及び接着剤層のボイド発生などにより上記要求に対処しきれなくなってきている。
【0003】
そのため、上記要求に対処するべく、近年、フィルム状の接着剤が使用されるようになってきた。このフィルム状接着剤は、個片貼付け方式あるいはウェハ裏面貼付け方式において使用されている。フィルム状接着剤を用いて個片貼付け方式により半導体装置を作製する場合には、まず、ロール状(リール状)に巻き取られたフィルム状接着剤をカッティング又はパンチングによって任意のサイズに切り出し、フィルム状接着剤の個片を得る。この個片を、半導体素子搭載用の支持部材に貼り付け、フィルム状接着剤付き支持部材を得る。その後、ダイシング工程によって個片化した半導体素子をフィルム状接着剤付き支持部材に接合(ダイボンド)して半導体素子付き支持部材を作製する。更に、必要に応じてワイヤボンド工程、封止工程等を経ることにより半導体装置を作製する。
【0004】
しかし、個片貼付け方式においてフィルム状接着剤を用いる場合には、フィルム状接着剤を切り出して支持部材に接着するための専用の組立装置が必要であるため、銀ペーストを使用する方法に比べて製造コストが高くなるという問題があった。
【0005】
一方、フィルム状接着剤を用いてウェハ裏面貼付け方式により半導体装置を作製する場合には、まず、半導体ウェハの回路面とは反対側の面(裏面)にフィルム状接着剤を貼付け、更にフィルム状接着剤の半導体ウェハ側と反対側の面にダイシングテープを貼り合わせる。次に、ダイシングによって半導体ウェハ及びフィルム状接着剤を個片化し、フィルム状接着剤付き半導体素子を得る。得られたフィルム状接着剤付き半導体素子をピックアップし、それを半導体素子搭載用の支持部材に接合(ダイボンド)する。その後、加熱、硬化、ワイヤボンド等の工程を経ることにより半導体装置を作製する。
【0006】
このフィルム状接着剤を用いたウェハ裏面貼付け方式は、フィルム状接着剤付き半導体素子を支持部材に接合するため、フィルム状接着剤を個片化するための専用の装置を必要とせず、従来の銀ペースト用の組立装置をそのまま又は熱盤を付加するなどの装置の一部を改良することにより使用できる。そのため、フィルム状接着剤を用いた半導体装置の組立方法の中で製造コストが比較的安く抑えられる方法として注目されている。
【0007】
しかし、フィルム状接着剤を用いた上記のウェハ裏面貼付け方式においては、半導体ウェハのダイシングを行うまでに、フィルム状接着剤を半導体ウェハに貼付する工程とダイシングテープをフィルム状接着剤に貼付する工程との2つの貼付工程が必要である。そこで、このプロセスを簡略化するために、フィルム状接着剤とダイシングテープとを貼り合わせ、一枚で両方の機能を併せ持つ接着シート(ダイボンドダイシングシート)が開発されている(例えば、特許文献1参照)。このような接着シートは、例えば、剥離基材/接着剤層/粘着フィルムの三層構造を有している。
【0008】
また、このような接着シートを、半導体素子を構成するウェハの形状にあらかじめ加工しておく方法(いわゆるプリカット加工)が知られている(例えば特許文献2参照)。かかるプリカット加工は、使用されるウェハの形状に合わせて樹脂層(接着剤層及び粘着フィルム)を打ち抜き、ウェハを貼り付ける部分以外の樹脂層を剥離しておく方法である。
【0009】
プリカット加工が施された接着シートは、例えば、図6(a)に示すような構造を有している。また、図6(b)は図6(a)の接着シート200のX−X端面図であり、剥離基材1上に接着剤層2が積層され、その上にさらに粘着フィルム層3が、剥離基材1側が粘着性を有する面となるようにして積層されている。なお、粘着フィルム層3は接着剤層2を覆い、且つ、接着剤層2の周囲で剥離基材1に接するように積層されており、これにより、半導体ウェハのダイシングを行う際に、半導体ウェハの外周部のウェハリングに粘着フィルム層3を貼り付けて接着シート200を固定することができるようになっている。
【0010】
かかるプリカット加工を施す場合、上記の接着シートは一般的に、フィルム状接着剤において接着剤層をウェハ形状に合わせてプリカット加工し、それとダイシングテープとを貼り合わせた後、このダイシングテープに対してウェハリング形状に合わせたプリカット加工を施すか、又は、あらかじめウェハリング形状にプリカット加工したダイシングテープを、プリカット加工したフィルム状接着剤と貼り合わせることによって作製される。
【0011】
上記プリカット加工が施された接着シート200は、通常、例えば図7に示すような外径が一定な円筒状の巻き芯211に巻きつけられ、図8に示すように、ロール状の接着シートロール210として提供される。このような、接着シートを巻き芯に巻きつけた接着シートロールとしては、例えば、巻き芯211の接着シート200に対する接触面積を大きくすることを目的として、所定の直径を有する巻き芯を用いた接着シートロールが開示されている(例えば特許文献3等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平7−45557号公報
【特許文献2】実公平6−18383号公報
【特許文献3】国際公開2010/064376号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記のように、図6に示す接着シート200のようなプリカット加工が施された接着シートを、上記巻き芯211等の外径が一定な従来の円筒状の巻き芯に巻きつけた接着シートロールでは、以下のような不具合が生じることを本発明者らは見出した。すなわち、上記プリカット加工が施された接着シート200においては、図6(b)に示すように、部分的に接着剤層2と粘着フィルム層3とを積層するため、接着剤層2と粘着フィルム層3との積層部分が他の部分よりも厚くなる。そのため、接着シートロールの直径が大きくなったり、巻き取り時の張力が高くなったりした場合、図9(a)に示すように、接着剤層2の部分に他の接着剤層2の巻き跡12が転写され、図9(a)のY−Y端面図である図9(b)に示すように、フィルムの平滑性が損なわれることがある。また、接着剤層2の厚みが厚くなった場合、巻き跡12が更に転写されやすくなる。これら巻き跡12の転写により接着シート200に平滑性の欠陥があると、接着シート200を半導体ウェハへ貼り付けた時に半導体ウェハと接着剤層2との間に空気を巻き込み、半導体装置組み立て方法上、不具合が生じることがある。
【0014】
なお、接着シートとしては、図10(a)及び図10(a)のZ−Z端面図である図10(b)に示すように、ウェハ形状に合わせてプリカット加工された接着剤層2及び粘着フィルム層3の外方にも粘着フィルム層が形成された接着シート220、及び接着シート220が巻き芯211に巻きつけられた接着シートロール230も知られているが、この場合にも、上記と同様に、接着シート220が従来の巻き芯211に巻きつけられると、接着剤層2に巻き跡12が転写され、半導体装置組み立て方法上の不具合が生じることがある。
【0015】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、接着剤層への巻き跡の転写が抑制され、被着体に接着剤層を貼り付ける際に空気の巻き込みによるボイドの発生が抑制される接着シートロール、及びこれを用いた半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明は、巻き芯と、 前記巻き芯の外周面に巻きつけられ、剥離基材と前記剥離基材の表面に部分的に設けられた接着剤層とを含んで構成された接着シートと、を有し、前記接着シートは、前記接着シートの長手方向における前記接着剤層の長さの総和が最も長くなる最長形成部と、前記最長形成部の両側に前記接着剤層が設けられていない非形成領域と、を有し、前記接着シートが前記巻き芯に巻きつけられたときに、前記非形成領域の少なくとも一部に対応する巻き芯の外径が、前記最長形成部に対応する巻き芯の外径よりも大きい、接着シートロールを提供する。
【0017】
また本発明は、前記巻き芯が、巻き芯基材と、支持部材と、を含んで構成され、前記支持部材は、前記接着シートが前記巻き芯に巻きつけられたときに前記非形成領域の少なくとも一部に対応する位置において、前記巻き芯基材の外周面に巻きつけられてなる、請求項1に記載の接着シートロールを提供する。
【0018】
また本発明は、前記接着シートは、前記接着剤層を覆い、且つ、前記接着剤層が形成された領域の周囲で前記剥離基材に接するように形成された粘着フィルム層を含む、請求項1又は請求項2に記載の接着シートロールを提供する。
【0019】
本発明はまた、上記本発明の接着シートロールを用いて製造された半導体装置を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、接着剤層への巻き跡の転写が抑制され、被着体に接着剤層を貼り付ける際に空気の巻き込みによるボイドの発生が抑制される接着シートロール、及びこれを用いた半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態における接着シートロールを模式的に示す斜視図である。
【図2】図1の接着シートロールに用いられた巻き芯を模式的に示す(a)斜視図及び(b)2B−2B断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態における接着シートロールに用いられた巻き芯を模式的に示す(a)斜視図及び(b)3B−3B断面図である。
【図4】本発明の第3実施形態における接着シートロールに用いられた巻き芯を模式的に示す(a)斜視図及び(b)4B−4B断面図である。
【図5】本発明の半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。
【図6】(a)は、従来の接着シートの一例を模式的に示す平面図であり、(b)は、(a)のX−X端面図である。
【図7】従来の巻き芯を示す模式図である。
【図8】図6に示す接着シート200を円筒状の巻き芯に巻きつけてなる接着シートロールを示す模式図である。
【図9】(a)は、図6に示す接着シート200に巻き跡が転写されている様子を示す模式図であり、(b)は、(a)のY−Y端面図である。
【図10】(a)は、従来の接着シートの他の一例を模式的に示す平面図であり、(b)は、(a)のZ−Z端面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、その前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を示すものとする。
また本明細書において「工程」との用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
【0023】
(接着シートロール)
本発明の接着シートロールは、巻き芯と、巻き芯の外周面に巻きつけられた接着シートと、を有し、接着シートは、剥離基材と、前記剥離基材の表面に部分的に設けられた接着剤層と、を含んで構成されている。
また接着シートは、接着シートの長手方向における接着剤層の長さの総和が最も長くなる最長形成部を有し、その最長形成部の両側には、接着剤層が設けられていない非形成領域を有している。
そして接着シートが巻き芯に巻きつけられたときに、非形成領域の少なくとも一部に対応する巻き芯の外径は、最長形成部に対応する巻き芯の外径よりも大きいものとなっている。
【0024】
ここで「接着シートの長手方向」とは、接着シートが巻き芯に巻きつけられる方向であり、接着シートが巻き芯に巻きつけられたときに重なって巻きつけられる方向である。また「接着シートの短手方向」は、前記接着シートの長手方向と垂直な方向であり、巻き芯の軸と平行な方向である。以下、接着シートの長手方向及び接着シートの短手方向を、それぞれ、単に「長手方向」及び「短手方向」と称する場合がある。
【0025】
本発明の接着シートロールは、上記構成であることにより、接着剤層への巻き跡の転写が抑制され、被着体に接着剤層を貼り付ける際に空気の巻き込みによるボイドの発生が抑制される。
具体的には、本発明の接着シートロールに用いられた接着シートは、上記の通り、剥離基材の表面に部分的に接着剤層が設けられており、最長形成部と非形成領域とを有している。そして、そのような接着シートを巻き芯に巻きつけてロール状にすると、最長形成部においては接着剤層が最も長く形成されているため他の部分に比べて厚くなるのに対し、非形成領域では接着剤層が形成されていないため、接着剤層の厚みの分、剥離基材間に隙間が生じることになる。そのため、例えば従来のように、外径が軸方向において一定な巻き芯を用いた場合は、他の部分に比べて厚く積層された最長形成部に巻取りの圧力が集中すると考えられる。そして、前記最長形成部に圧力が集中すると、前記長手方向における接着剤層の端部の段差が、他の接着剤層に食い込んで転写され、巻き跡が発生すると考えられる。
【0026】
これに対して本発明では、非形成領域の少なくとも一部に対応する巻き芯の外径が、最長形成部に対応する巻き芯の外径よりも大きくなっている。すなわち、巻き芯における最長形成部に対応する位置の両側に、相対的に巻き芯の外径の大きい領域(以下、「大外径領域」と称する場合がある)が存在するため、大外径領域に巻取りの圧力がかかることで、最長形成部にかかる巻取りの圧力が軽減されると考えられる。そのため、上記巻き跡が生じにくくなり、接着シートの接着剤層を半導体ウェハ等の被着体に貼り付ける際に、空気の巻き込みによるボイド等が発生することを十分に抑制することができる。
【0027】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0028】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態における接着シートロールを示す模式図である。また図2(a)は、図1の接着シートロールに用いられる巻き芯を模式的に示す斜視図であり、図2(b)は図2(a)の2B−2B断面図である。
図1に示す接着シートロール110は、例えば、円筒状の巻き芯11と、巻き芯11の外周面に巻きつけられた接着シート100と、で構成されている。
【0029】
図1の接着シートロール110に用いられた巻き芯11は、図2に示すように、外径が一定の円筒状である巻き芯基材22と、巻き芯基材22の軸方向における両端部側の外周面に設けられた、一定の膜厚を有する2つの支持部材24及び26と、で構成されている。そして、巻き芯基材22の軸方向中央部28には支持部材が設けられていないため、巻き芯11の軸方向中央部28は、巻き芯11の軸方向両端部よりも、外径が小さくなっている。すなわち、巻き芯11全体としては、円筒状であり、かつ、軸方向両端部の外径に比べて軸方向中央部の外径が小さいものとなっている。
【0030】
そして図1の接着シートロールに用いられた接着シート100は、例えば、剥離基材1と、剥離基材1の表面に部分的に設けられた接着剤層2と、接着剤層2を覆い、且つ、接着剤層2の周囲で剥離基材1に接するように形成された粘着フィルム層3と、含んで構成されている。
具体的には、接着剤層2は、図1に示すように、剥離基材1の長手方向に沿って複数設けられている。またそれぞれの接着剤層2は、円形であり、かつ、前記短手方向における剥離基材1の中央部に形成されている。そのため図1の接着シートロール110では、接着シート100の前記短手方向における中心が最長形成部4となり、前記短手方向における接着剤層2の両端部から剥離基材1の両端部までの領域が非形成領域5となる。
【0031】
また粘着フィルム層3は、接着剤層2よりも大きな円形であり、接着剤層2をすべて覆うように積層されるとともに、接着剤層2が形成された領域の周囲において剥離基材1と直接接触するように設けられている。そのため本実施形態では、前記短手方向の中心に位置する最長形成部4において、接着剤層2だけでなく粘着フィルム層3も、前記長手方向に最も長く形成されている。一方、前記短手方向における粘着フィルム層3の両端部から剥離基材1の両端部までの領域には、接着剤層2も粘着フィルム層3も形成されていない
【0032】
そして図1の接着シートロール110では、接着シート100における短手方向の幅と、巻き芯11における軸方向の長さと、が同じであり、接着シート100の両端部と巻き芯11の両端部とが揃うように、巻き芯11に接着シート100が巻きつけられている。そのため図1の接着シートロール110では、巻き芯11の軸方向中央部における外径が「最長形成部4に対応する巻き芯の外径」である。そして、巻き芯11の最長形成部4に対応する位置においては、支持部材24及び26が設けられていない支持部材非設領域となっているため、支持部材24又は26が設けられた位置に比べて外径が小さくなっている。
【0033】
また図1の接着シートロール110では、支持部材非設領域の軸方向における長さが、接着シート100における接着剤層2の直径よりも大きく、かつ、粘着フィルム層3の直径よりも小さい。そのため接着シートロール110においては、接着シート100の接着剤層2が、巻き芯11の支持部材24及び26と重ならず、接着剤層2の全領域が支持部材非設領域に対応するように巻きつけられている。また前記短手方向における粘着フィルム層3の両端部は、巻き芯11の支持部材24及び26と一部重なるように巻きつけられている。すなわち、巻き芯11における非形成領域5に対応する領域のうち、支持部材24及び26が設けられた領域の巻き芯11の外径は、上記最長形成部4に対応する巻き芯の外径よりも大きい。
【0034】
以上説明したように、図1の接着シートロール110では、最長形成部4の両側における非形成領域5の少なくとも一部に対応する巻き芯11の外径が、最長形成部4に対応する巻き芯の外径よりも大きいため、従来の巻き芯211を用いた場合に比べて、図9に示すような巻き跡の転写が抑制される。そして、図1の接着シートロール110を用いれば、半導体ウェハ等の被着体に接着剤層2を貼り付ける際に、空気の巻き込みによるボイド等の発生を十分に抑制することができる。
【0035】
図1の接着シートロール110では、最長形成部4に対応する巻き芯11の外径と、支持部材24又は26が形成された領域(以下、「支持部材形成領域」と称する場合がある)である巻き芯11の外径と、の差(以下、「外径差」と称する場合がある)の大きさは特に限定されないが、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは10μm以上である。上記外径差が5μm以上であることにより、最長形成部4において巻き芯11と接着シート100との間の空間に余裕ができ、接着シートへの巻き跡の転写がより抑制される。一方、上記外径差の上限としては特に制限はないが、巻き取り時の張力による最長形成部の変形の可能性の観点から、例えば5mm以下が挙げられ、3mm以下がより好ましい。
【0036】
図1の接着シートロール110では、上記の通り、支持部材非設領域の軸方向における長さが、接着剤層2の直径よりも大きく、かつ、粘着フィルム層3の直径よりも小さいが、これに限られず、接着シート100の構成(例えば、接着剤層2及び粘着フィルム層3の形状・位置等)や厚み等に応じて選択される。具体的には、支持部材非設領域の軸方向における長さが接着剤層2の直径より小さくてもよく、逆に粘着フィルム層3の直径より大きくてもよい。
【0037】
特に、例えば上記のように接着剤層2が円形であり、かつ、剥離基材1の短手方向中央部に形成されている場合、巻き跡を効率的に抑制する観点からは、少なくとも最長形成部4に対応する位置から軸方向端部に向かって、それぞれ接着剤層2の半径の1/3までの領域は、支持部材非設領域に対応していることが好ましい。また、前記長手方向における接着剤層2の長さの総和が、最長形成部4の前記長手方向における接着剤層2の長さ総和の0.94倍以上1.0倍以下である領域がすべて、支持部材非設領域に対応していることが望ましい。さらに、本実施形態のように接着剤層2に対応する領域全体が支持部材非設領域であることがより好ましい。
また、支持部材非設領域の軸方向における長さは、巻き芯11の軸方向における長さ全体の2/5以上4/5以下であることが好ましく、上記範囲であることにより、軸方向中央部における空間に余裕ができやすく、接着剤層2への巻き跡の転写がより抑制される。
【0038】
図1の接着シートロール110では、接着剤層2の形状が円形であるが、これに限られず、接着剤層2を貼り付ける被着体の形状に応じて適宜選択される。具体的には、例えば、円形、ウェハ形状(円の外周の一部が直線である形状)、四角形、五角形、六角形、八角形などが挙げられる。
なお、接着剤層2の形状によって、また接着剤層2が円形以外の形状を有する場合はその向きによって、上記「接着剤層2の長さが最長形成部の0.94倍以上1.0倍以下である領域」は変わる。例えば、接着剤層2の形状が正方形であり、一辺が前記長手方向に平行であれば、接着剤層2に対応する領域全体が、上記「接着剤層2の長さが最長形成部の0.94倍以上1.0倍以下である領域」に相当する。
【0039】
また、粘着フィルム層3の形状についても、ウェハリングと密着させることが可能な形状であれば特に制限はなく、円形のほか、四角形、五角形、六角形、八角形、菱形形状、星型などが挙げられる。現在のウェハリングの形状及び半導体素子の形状を考慮すると、粘着フィルム層3の平面形状は、円形もしくは円形に順ずる形状であることが好ましい。更に、半導体素子との貼付けを考慮すると、接着剤層2の平面形状と似た平面形状であることが好ましい。
【0040】
図1の接着シートロール110では、支持部材形成領域と支持部材非設領域との境界で外径が変化し、段を形成しているが、この形態に限定されるものではない。具体的には、たとえば、上記支持部材形成領域が、支持部材非設領域との境界から軸方向端部に向かって、連続的に支持部材24又は26の厚みが増し、なだらかに外径が大きくなっていてもよく、多段階に外径が変化するものであってもよい。また、支持部材非設領域においても、本実施形態のように外径が一定である形態に限定されず、連続的に外径が変化した形態でもよいし、段階的に外径が変化した形態でもよい。
【0041】
図1の接着シートロール110では、軸方向の中心が最長形成部4であるが、これに限られない。例えば、前記短手方向における剥離基材1の中心からずれた位置に接着剤層2が設けられた形態では、最長形成部が軸方向の中心からずれた位置にある。また例えば、剥離基材1の短手方向に複数列の接着剤層2が設けられた形態も考えられ、その場合は最長形成部が複数存在することも考えられる。さらに、接着剤層2が前記短手方向における剥離基材1の中心に設けられている場合でも、巻き芯11の軸方向の中心と、巻き芯に巻きつけられた接着シート100における短手方向の中心とが、ずれている形態も考えられる。その場合は、巻き芯11の軸方向の中心ではなく、接着シート100の短手方向の中心が、最長形成部となる。
【0042】
図1の接着シートロール110では、上記の通り、非形成領域5の少なくとも一部に対応する巻き芯11の外径が、最長形成部4に対応する巻き芯11の外径よりも大きいため、粘着フィルム層3を有する接着シート100を用いることで、接着剤層2の端部における段差に加えて、粘着フィルム層3の端部における段差についても、接着剤層2に転写して巻き跡が形成されることが抑制される。
ただし本発明では、図1のように粘着フィルム層3を用いた形態に限定されず、剥離基材1上に接着剤層2が形成され、粘着フィルム層3が形成されていない接着シートを用いてもよい。
また図1の接着シートロール110では、上記の通り、剥離基材1上に接着剤層2及び粘着フィルム層3を形成した接着シート100を用いているが、これに限られず、接着剤層2に加えて、さらに剥離基材1の短手方向両端部に支持層を設けた接着シートを用いたものであってもよい。
【0043】
<第2実施形態>
第2実施形態における接着シートロールは、巻き芯11の代わりに、図3に示す巻き芯31を用いた以外は、第1実施形態の接着シートロールと同じ構成である。
図3(a)に、本発明の第2実施形態における接着シートロールに用いられる巻き芯を模式的に示す斜視図を示し、図3(b)に図3(a)の3B−3B断面図を示す。
図3に示す巻き芯31は、支持部材を用いず、巻き芯基材32の軸方向中央部に窪みを形成すること等により、巻き芯基材32そのものの外径が、軸方向両端部に比べて軸方向中央部において小さいものを用いている。そして図3に示す巻き芯31は、上記のような巻き芯基材32からなる一体型の巻き芯であること以外は、第1実施形態の巻き芯11と同様である。
図3に示す巻き芯31を用いた第2実施形態の接着シートロールにおいても、接着シートにおける非形成領域の少なくとも一部に対応する巻き芯31の外径が、最長形成部に対応する巻き芯31の外径よりも大きいため、接着剤層への巻き跡の転写が抑制される。
【0044】
<第3実施形態>
第3実施形態における接着シートロールは、巻き芯11の代わりに、図4に示す巻き芯41を用いた以外は、第1実施形態の接着シートロールと同じ構成である。
図4(a)に、本発明の第3実施形態における接着シートロールに用いられる巻き芯を模式的に示す斜視図を示し、図4(b)に図4(a)の4B−4B断面図を示す。
図4に示す巻き芯41は、図2に示す巻き芯11と同様に、外径が一定の円筒状である巻き芯基材42と、巻き芯基材42の外周面に設けられた一定の膜厚を有する2つの支持部材44及び46と、で構成されている。そして巻き芯41は、巻き芯基材42の軸方向両端部に、支持部材44及び46が設けられていない領域を有する点で異なる以外は、巻き芯11と同様の構成となっている。
図4に示す巻き芯41を用いた第3実施形態の接着シートロールにおいても、接着シートにおける非形成領域の少なくとも一部に対応する巻き芯41の外径が、最長形成部に対応する巻き芯41の外径よりも大きいため、接着剤層への巻き跡の転写が抑制される。
なお、巻き芯基材42の軸方向両端部の外径は特に限定されず、巻き芯基材42の軸方向中央部の外径と同じでもよく、より小さくてもよい。
【0045】
以下、本発明の接着シートロールのうち、代表して第1実施形態の接着シートロールの各構成要素について詳細に説明する。
【0046】
<巻き芯>
巻き芯11に用いる材料は、接着シート100を巻きつけることが可能であれば特に限定されない。巻き芯基材22としては、例えば、金属製のもの、プラスチック製のもの等が挙げられる。また支持部材24及び26としては、例えば、紙製、布製、プラスチック製などのテープ等が挙げられる。
【0047】
巻き芯基材22の形状は、軸方向に垂直な断面が円形である円筒状に限定されず、例えば前記断面が楕円形であってもよく、多角形であってもよい。また軸方向にそって前記断面が一様である必要は無く、巻き芯基材22の軸方向端部と軸方向中央部とで形状が異なっていてもよい。ただし、接着シート100を長手方向全体にわたって均一に巻きつけ、かつ、巻き跡を抑制する観点から、巻き芯11の軸方向に垂直な断面が円形であることが望ましい。
なお、前記断面が円形以外の形状である場合、「外径」とは、前記断面を円に換算したときの径(すなわち、前記断面と同じ面積の円の直径)を意味する。
【0048】
巻き芯基材22の外径としては特に限定されないが、例えば7.5cm以上10cm以下の範囲が挙げられ、巻き芯基材22の厚みとしては、例えば巻き芯の耐久性の観点から2mm以上の範囲が挙げられる。
一方、巻き芯11の内径については、特に限定されないが、接着シートロール110をセットする際の取り扱いの利便性という観点から、巻き芯11の軸方向端部の内径と軸方向中央部の内径とが同じであることが望ましい。
【0049】
<剥離基材>
次に、剥離基材1について説明するが、これらに限定されない。
剥離基材1は、接着シートの使用時にキャリアフィルムとしての役割を果たすものであり、かかる剥離基材1としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどのポリエステル系フィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリビニルアセテートフィルムなどのポリオレフィン系フィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリイミドフィルムなどのプラスチックフィルム等を使用することができる。また、紙、不織布、金属箔等も使用することができる。
【0050】
また、剥離基材1の接着剤層2と接する側の面は、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、長鎖アルキルアクリレート系剥離剤等の離型剤で表面処理されていてもよい。
【0051】
剥離基材1の厚さは、使用時の作業性を損なわない範囲で適宜選択することができるが、10〜500μmであることが好ましく、25〜100μmであることがより好ましく、30〜50μmであることが特に好ましい。
【0052】
<接着剤層>
接着剤層2の材料としては、特に制限されないが、例えば、熱硬化性接着剤、光硬化性接着剤、熱可塑性接着剤、及び、酸素反応性接着剤等を含んで構成される。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができるが、接着剤として半導体素子の固定に使用されることを考慮すると、接着剤層2は熱硬化性接着剤を含んで構成されていることが好ましい。
【0053】
熱硬化性接着剤としては、熱により硬化するものであれば特に制限はなく、グリシジル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、水酸基、カルボキシル基、イソジアヌレート基、アミノ基、アミド基等の官能基を持つ熱重合性成分を含むものが挙げられる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができるが、接着シートとしての耐熱性及び熱硬化による接着力を考慮すると、上記の熱重合性成分と熱可塑性樹脂とを含有してなる熱硬化性接着剤を用いることが好ましい。上記の熱重合性成分と熱可塑性樹脂とを含有してなる熱硬化性接着剤を用いることにより、かかる接着剤層を介して半導体素子を半導体素子搭載用の支持部材あるいは別の半導体素子に十分に固定することができる。
【0054】
ここで、熱可塑性樹脂としては、熱可塑性を有する樹脂、または少なくとも未硬化状態において熱可塑性を有し、加熱後に架橋構造を形成する樹脂であれば特に制限されないが、熱可塑性樹脂(A)としてTg(ガラス転移温度)が10〜100℃であり、且つ、重量平均分子量が5000〜200000であるもの、又は熱可塑性樹脂(B)としてTgが−50℃〜10℃であり、且つ、重量平均分子量100000以上が好ましい。
【0055】
前者の熱可塑性樹脂(A)としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルイミド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂などが挙げられる。これらの中でもポリイミド樹脂を用いることが好ましい。
【0056】
後者の熱可塑性樹脂(B)としては、官能性モノマーに由来する構造単位を含む重合体を使用することが好ましく、この重合体の官能性モノマーの官能基としてはグリシジル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、水酸基、カルボキシル基、イソシアヌレート基、アミノ基、アミド基などが挙げられ、中でもグリシジル基が好ましい。より具体的には、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレートなどの官能基モノマーに由来する構造単位を含むグリシジル基含有(メタ)アクリル共重合体などが好ましく、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂と非相溶であることがより好ましい。
【0057】
上記熱可塑性樹脂(B)のうち、官能性モノマーに由来する構造単位を含む重合体としては、例えば、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレート等の官能性モノマーに由来する構造単位を含有し、かつ重量平均分子量が10万以上であるグリシジル基含有(メタ)アクリル共重合体等が挙げられ、それらの中でもエポキシ樹脂と非相溶であるものが好ましい。グリシジル基含有(メタ)アクリル共重合体の具体例としては、例えば、ナガセケムテックス(株)製のHTR−860P−3(商品名)等が挙げられる。
【0058】
上記グリシジル基含有(メタ)アクリル共重合体としては、例えば、(メタ)アクリルエステル共重合体、アクリルゴム等を使用することができ、アクリルゴムがより好ましい。アクリルゴムは、アクリル酸エステルを主成分とし、主として、ブチルアクリレートとアクリロニトリル等の共重合体や、エチルアクリレートとアクリロニトリル等の共重合体等からなるゴムである。
【0059】
上記グリシジル基含有(メタ)アクリル共重合体を構成する、上記グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有モノマー単位の量は、モノマー全量を基準として0.5〜6.0質量%が好ましく、0.5〜5.0質量%がより好ましく、0.8〜5.0質量%が特に好ましい。グリシジル基含有モノマー単位の量がこの範囲にあると、十分な接着力が確保できるとともに、ゲル化を防止することができる。
グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート以外のモノマーとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。なお、本発明において、エチル(メタ)アクリレートとは、エチルアクリレートとエチルメタクリレートの両方を示す。官能性モノマーを組み合わせて使用する場合の混合比率は、グリシジル基含有(メタ)アクリル共重合体のTgを考慮して決定することができ、Tgが−10℃以上となるようにすることが好ましい。Tgが−10℃以上であると、Bステージ状態での接着剤層2のタック性が適当であり、取り扱い性が良好なものとなる傾向にある。
【0060】
上記モノマーを重合させて、官能性モノマーに由来する構造単位を含む重量平均分子量が10万以上である重合体を製造する場合、その重合方法としては特に制限はなく、例えば、パール重合、溶液重合等の方法を使用することができる。
【0061】
官能性モノマーに由来する構造単位を含む重合体の重量平均分子量は、10万以上が好ましく、30万〜300万であることが好ましく、50万〜200万であることがより好ましい。重量平均分子量がこの範囲にあると、シート状又はフィルム状としたときの強度、可とう性、及びタック性が適当であり、また、フロー性が適当であるため、配線の回路充填性が確保できる傾向にある。すなわち、半導体装置作製における作業環境下でフィルム形状を維持し、取り扱い易いフィルムにすることができる。また、分子量が10万以上あることで室温でのフィルムの硬さが巻き取り時の圧力による転写を防ぐことができる。仮に何らかの原因で転写があった場合も、熱可塑性樹脂であることで、半導体ウェハとの貼り付け時の熱により変形し、ボイドを低減する事ができる。
なお、本発明において、重量平均分子量とは、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィーで測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて換算した値を示す。
【0062】
また、官能性モノマーに由来する構造単位を含む重量平均分子量が10万以上である重合体の使用量は、熱重合性成分100質量部に対して、10〜400質量部が好ましい。この範囲にあると、貯蔵弾性率及び成型時のフロー性抑制が確保でき、また高温での取り扱い性が良好なものとなる傾向にある。また、重合体の使用量は、熱重合性成分100質量部に対して、15〜350質量部がより好ましく、20〜300質量部が特に好ましい。
【0063】
また、熱重合性成分としては、熱により重合するものであれば特に制限は無く、例えば、グリシジル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、水酸基、カルボキシル基、イソシアヌレート基、アミノ基、アミド基等の官能基を持つ化合物が挙げられ、これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせても、使用することができるが、接着シートとしての耐熱性を考慮すると、熱によって硬化し接着作用を及ぼす熱硬化性樹脂を使用することが好ましい。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、熱硬化型ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂等が挙げられ、特に、耐熱性、作業性、信頼性に優れるダイボンドダイシングシートが得られる点でエポキシ樹脂を使用することが最も好ましい。熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を使用する場合には、エポキシ樹脂硬化剤を合わせて使用することが好ましい。
【0064】
上記エポキシ樹脂としては、硬化して接着作用を有するものであれば特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂などの二官能エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂等を使用することができる。また、多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環含有エポキシ樹脂又は脂環式エポキシ樹脂など、一般に知られているものを使用することができる。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0065】
上記エポキシ樹脂として、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコートシリーズ(エピコート807、エピコート815、エピコート825、エピコート827、エピコート828、エピコート834、エピコート1001、エピコート1004、エピコート1007、エピコート1009)、ダウケミカル社製のDER−330、DER−301、DER−361、及び、東都化成(株)製のYD8125、YDF8170等が挙げられる。フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコート152、エピコート154、日本化薬(株)製のEPPN−201、ダウケミカル社製のDEN−438等が挙げられる。更に、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、日本化薬(株)製のEOCN−102S、EOCN−103S、EOCN−104S、EOCN−1012、EOCN−1025、EOCN−1027、東都化成(株)製のYDCN701、YDCN702、YDCN703、YDCN704等が挙げられる。
【0066】
多官能エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン(株)製のEpon 1031S、チバスペシャリティーケミカルズ社製のアラルダイト0163、ナガセケムテックス(株)製のデナコールEX−611、EX−614、EX−614B、EX−622、EX−512、EX−521、EX−421、EX−411、EX−321等が挙げられる。
【0067】
アミン型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコート604、東都化成(株)製のYH−434、三菱ガス化学(株)製のTETRAD−X及びTETRAD−C、住友化学(株)製のELM−120等が挙げられる。複素環含有エポキシ樹脂としては、チバスペシャリティーケミカルズ社製のアラルダイトPT810、UCC社製のERL4234、ERL4299、ERL4221、ERL4206等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0068】
なお、熱重合性成分が、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤を含有してなるものであることにより、半導体装置作製後、半導体素子と支持部材あるいは別の半導体素子に十分に固定することができ、半導体装置の使用される環境下で半導体装置の破損や故障を防ぐことができる。
【0069】
エポキシ樹脂を使用する場合には、エポキシ樹脂硬化剤を使用することが好ましい。エポキシ樹脂硬化剤としては、通常用いられている公知の硬化剤を使用することができ、例えば、アミン類、ポリアミド、酸無水物、ポリスルフィド、三フッ化ホウ素、ジシアンジアミド、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSのようなフェノール性水酸基を1分子中に2個以上有するビスフェノール類、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂又はクレゾールノボラック樹脂等のフェノール樹脂などが挙げられる。これらの中でも、特に吸湿時の耐電食性に優れる点で、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂及びクレゾールノボラック樹脂などのフェノール樹脂が好ましい。これらのエポキシ樹脂硬化剤は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0070】
上記フェノール樹脂硬化剤の中で好ましいものとしては、例えば、大日本インキ化学工業(株)製、商品名:フェノライトLF2882、フェノライトLF2822、フェノライトTD−2090、フェノライトTD−2149、フェノライトVH−4150、フェノライトVH4170、明和化成(株)製、商品名:H−1、ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名:エピキュアMP402FPY、エピキュアYL6065、エピキュアYLH129B65、及び、三井化学(株)製、商品名:ミレックスXL、ミレックスXLC、ミレックスRN、ミレックスRS、ミレックスVR等が挙げられる。
【0071】
接着剤層2は、25℃での硬化前の貯蔵弾性率が10〜10000MPaであることが好ましい。ここで、本発明における貯蔵弾性率は、強制振動非共振法による引張り試験によって求めることができる。また接着剤層2は、260℃での硬化後の貯蔵弾性率が0.5〜30MPaであることが好ましい。接着剤層2が上記範囲の貯蔵弾性率を有することにより、半導体素子と半導体素子搭載用の支持部材間の応力を緩和し、幅広い温度域で十分な接着力を確保できる。これにより半導体装置作製の作業中あるいは半導体装置が使用される環境下で、半導体装置の破損や故障を防ぐことができる。
ここで、接着剤層2の貯蔵弾性率を大きくする方法として、例えば、エポキシ樹脂の使用量を増やす方法、グリシジル基濃度の高いエポキシ樹脂又は水酸基濃度の高いフェノール樹脂を使用する等してポリマー全体の架橋密度を上げる方法、フィラーを添加する方法等が挙げられる。
【0072】
上記接着剤層2が熱重合性成分を含む場合、接着剤層2には更に硬化促進剤を添加してもよい。硬化促進剤としては、特に制限はなく、例えば、イミダゾール類等が挙げられる。具体的には、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート等が挙げられ、これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0073】
この硬化促進剤の添加量は、熱重合性成分の総量100質量部に対して5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましい。この添加量が5質量部を超えると保存安定性が低下する傾向がある。
【0074】
接着剤層2には、可とう性や耐リフロークラック性を向上させる目的で、熱重合性成分と相溶性がある高分子量樹脂を添加することができる。このような高分子量樹脂としては、特に限定されず、たとえばフェノキシ樹脂、高分子量熱重合性成分、超高分子量熱重合性成分などが挙げられる。これらは、単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用することもできる。
【0075】
熱重合性成分と相溶性がある高分子量樹脂の使用量は、接着剤層が熱重合性成分を含む場合、熱重合性成分の総量100質量部に対して、40質量部以下とすることが好ましい。この範囲であると、接着剤層2のTgを確保することができる。
【0076】
また、接着剤層2には、その取り扱い性向上、熱伝導性向上、溶融粘度の調整およびチキソトロピック性付与などを目的として、無機フィラーを添加することもできる。無機フィラーとしては、特に制限はなく、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ほう酸アルミウイスカ、窒化ほう素、結晶性シリカ、非晶性シリカ等が挙げられる。また、フィラーの形状は特に制限されるものではない。これらのフィラーは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、熱伝導性向上の観点からは、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ほう素、結晶性シリカ、非晶性シリカが好ましい。また、溶融粘度の調整やチキソトロピック性の付与の観点からは、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、結晶性シリカ、非晶性シリカが好ましい。
【0077】
無機フィラーの添加量は、接着剤層2の総量を基準として1〜20質量%が好ましい。添加量が1質量%未満であると添加効果が十分に得られない傾向があり、20質量%を超えると、接着剤層2の粘接着性の低下、ボイド残存による電気特性の低下等の問題を起こす傾向がある。
【0078】
また、接着剤層2には、異種材料間の界面結合を良くするために、各種カップリング剤を添加することもできる。カップリング剤としては、例えば、シラン系、チタン系、アルミニウム系等が挙げられ、中でも効果が高い点でシラン系カップリング剤が好ましい。
【0079】
上記カップリング剤の使用量は、その効果や耐熱性及びコストの面から、接着剤層2全量を基準として0.01〜10質量%とするのが好ましい。
【0080】
更に、接着剤層2には、イオン性不純物を吸着して、吸湿時の絶縁信頼性を向上させるために、イオン捕捉剤を添加することもできる。このようなイオン捕捉剤としては特に制限はなく、例えば、トリアジンチオール化合物、ビスフェノール系還元剤等の、銅がイオン化して溶け出すのを防止するため銅害防止剤として知られる化合物、ジルコニウム系、アンチモンビスマス系マグネシウムアルミニウム化合物等の無機イオン吸着剤などが挙げられる。
【0081】
上記イオン捕捉剤の使用量は、添加による効果や耐熱性、コスト等の点から、接着剤層2全量を基準として0.1〜10質量%が好ましい。
【0082】
接着剤層2の厚さは、2〜200μmであることが好ましく、5〜120μmであることが特に好ましい。厚さが2μm以上であることにより、接着剤として十分な接着力が確保される傾向があり、200μm以下であることにより、半導体装置が肉薄になり、半導体装置の使用用途が広がる傾向がある。
【0083】
接着剤層2の形状は、上記の通り、被着体の形状に応じて適宜選択される。具体的には、例えば、被着体を貼り付ける部分以外の部分は無駄になるため、被着体として円形の平面形状を有する一般的な半導体ウェハを用いる場合には、接着剤層2の形状を、円形の平面形状又は半導体ウェハの平面形状に合致する平面形状(半導体ウェハ形状)としてもよい。半導体ウェハの平面形状に合致する平面形状を接着剤層2が有していることにより、半導体ウェハをダイシングする工程が容易となる傾向がある。
ただし、接着剤層の平面形状は、半導体ウェハの平面形状に完全に一致している必要はなく、例えば、半導体ウェハの平面形状よりもやや大きい平面形状であってもよい。また、一般的に半導体ウェハは円の外周の一部が直線である平面形状を有しているため、接着シートの平面形状が円形形状である場合でも、一般的な半導体ウェハへの接着剤層の貼り付け、及び、半導体ウェハのダイシングを容易に行うことが可能となる傾向にある。また、接着剤層2の外周の一部が粘着フィルム層3の外周の一部の近傍にあるようにするために、接着剤層2の外周の一部に凸部を有していてもよい。
【0084】
<粘着フィルム>
以下、粘着フィルム層3に用いられる粘着フィルムについて説明する。
粘着フィルムとしては、基材フィルムに粘着剤層を設けたものが好ましい。この場合、粘着フィルム層3における接着剤層2と接する側の層が上記粘着剤層となっている。
【0085】
粘着フィルムに使用する基材フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル系フィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリビニルアセテートフィルム等のポリオレフィン系フィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリイミドフィルムなどのプラスチックフィルム等が挙げられる。
【0086】
また、上記基材フィルムは異なる2種類以上のフィルムを積層したものであっても良い。この場合、粘着剤層が形成される側のフィルムは、半導体素子のピックアップ作業性が向上する点で、25℃での引張弾性率が2000MPa以上であることが好ましく、2200MPa以上であることがより好ましく、2400MPa以上であることが特に好ましい。
【0087】
また、粘着剤層が形成される側と反対側のフィルムは、フィルムの伸びが大きく、エキスパンド工程での作業性がよい点で、25℃での引張弾性率が1000MPa以下であることが好ましく、800MPa以下であることがより好ましく、600MPa以下であることが特に好ましい。この引張弾性率は、JIS K7113号に準じて測定されるものである。
【0088】
基材フィルムが2種以上のフィルムを積層したものである場合、その積層方法としては特に制限はなく、別々に作製したフィルムをラミネートする方法、一方のフィルム上に他方のフィルムを押出しラミネートする方法、2種類以上のフィルムを押出し塗工しながら貼り合せる方法、一方のフィルムの原料となるポリマーを溶剤に溶解あるいは分散してワニスとし、他方のフィルム上に塗布、加熱し溶剤を除去する方法、及び、接着剤を用いて2種以上のフィルムを貼り合わせる方法等、公知の方法を使用することができる。
【0089】
粘着フィルムを構成する上記粘着剤層としては、高エネルギー線又は熱によって硬化する(すなわち、粘着力を制御できる)ものが好ましく、高エネルギー線によって硬化するものがより好ましく、紫外線によって硬化するものが特に好ましい。
ここで、高エネルギー線としては、例えば、紫外線等が挙げられる。
【0090】
かかる粘着剤層を構成する粘着剤としては、従来から種々のタイプが知られている。それらの中から、高エネルギー線の照射によって、接着剤層2に対する粘着力が低下するものを適宜選んで用いることが好ましい。
【0091】
上記粘着剤としては、特に制限されないが、例えば、ジオール基を有する化合物、イソシアネート化合物、ウレタン(メタ)アクリレート化合物、ジアミン化合物、尿素メタクリレート化合物、側鎖にエチレン性不飽和基を有する高エネルギー線重合性共重合体等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0092】
また、粘着剤層が熱により硬化する熱重合性成分を含む場合、粘着剤層には更に硬化促進剤を添加してもよい。硬化促進剤としては、特に制限はなく、例えば、イミダゾール類等が挙げられる。具体的には、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート等が挙げられ、これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0093】
硬化促進剤の添加量は、熱重合性成分の総量100質量部に対して5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましい。この添加量が5質量部を超えると保存安定性が低下する傾向がある。
【0094】
また、粘着剤層が高エネルギー線の照射により硬化する高エネルギー線重合性成分を含む場合、粘着剤層には、活性光線の照射によって遊離ラジカルを生成する光重合開始剤を添加することもできる。このような光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、N,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパノン−1、2,4−ジエチルチオキサントン、2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン等の芳香族ケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,4−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール二量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体などが挙げられる。これらは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0095】
上記光重合開始剤の使用量としては、特に制限はないが、高エネルギー線重合性成分の総量100質量部に対して通常0.01〜30質量部である。
【0096】
粘着フィルムにおいて、粘着剤層の厚さは、0.1〜40μmであることが好ましい。この厚さが0.1μm以上であることにより、十分な粘着力を確保することができる傾向があり、ダイシング時に半導体チップが飛散することが抑制され、40μm以下であることにより、経済的にも有利となる。
また粘着フィルム全体の厚さは、10μm以上300μm以下が好ましい。フィルム全体の厚さが10μm以上であることにより、ダイシング時の粘着フィルムの切断を抑制させることができる。また、300μm以下であることにより、経済的にも有利となる。
【0097】
<接着シートの製造方法>
【0098】
以上説明した本発明の接着シートは、接着剤層を形成する組成物を溶剤に溶解又は分散してワニスとし、剥離基材1上に塗布し、加熱により溶剤を除去することによって得ることができる。また上記粘着フィルムも同様に、粘着剤層を形成する組成物を溶剤に溶解又は分散してワニスとし、基材フィルム上に塗布し、加熱により溶剤を除去することによって得ることができる。
【0099】
ここで、上記のワニス化するための溶剤としては特に限定されないが、フィルム作製時の揮発性などを考慮すると、例えば、メタノール、エタノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレンなどの比較的低沸点の溶媒を使用することが好ましい。
【0100】
また、塗膜性を向上させるなどの目的で、例えば、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、シクロヘキサノンなどの比較的高沸点の溶媒を使用することもできる。これらの溶媒は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0101】
無機フィラーを添加した際のワニスの製造には、無機フィラーの分散性を考慮して、らいかい機、3本ロール、ボールミル及びビーズミルなどを使用することが好ましく、また、これらを組み合わせて使用することもできる。また、無機フィラーと低分子量の原料をあらかじめ混合した後、高分子量の原料を配合することによって、混合する時間を短縮することもできる。また、ワニスとした後、真空脱気等によってワニス中の気泡を除去することもできる。
【0102】
ここで、剥離基材1及び基材フィルムへのワニスの塗布方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、ナイフコート法、ロールコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、バーコート法、カーテンコート法等を用いることができる。
【0103】
また、本発明の接着シートは、例えば、接着剤層2を剥離基材1に塗布する際にあらかじめ部分的に接着剤層2を形成するためのワニス等の原材料を分布させておく方法や、剥離基材1にマスクをし、このマスク部以外の部分に上記のワニス等の原材料を塗布する方法等を用いて形成することができるが、作業の簡便さを考慮すると、あらかじめ剥離基材1の全面に接着剤層2を塗布法により形成し、打ち抜き加工を施して不要部分を取り除く方法が好ましい。また、粘着フィルム層3を部分的に形成する方法としても、上記と同様に打ち抜き加工を施して不要部分を取り除く方法が好ましい。
【0104】
以上説明したような構成の接着シートに放射線等の高エネルギー線を照射すると、照射後には接着剤層2と粘着フィルム層3との界面の粘着力が大きく低下し、半導体素子に接着剤層2を保持したまま粘着フィルム層3から容易にピックアップすることが可能となる。
【0105】
本発明の接着シートにおいて、接着剤層2と粘着フィルム層3との界面の粘着力を低下させる方法としては、放射線等の高エネルギー線の照射のみで粘着力を低下させる方法以外に、高エネルギー線の照射と同時に又は照射後に硬化反応を促進する目的で加熱を併用する方法が挙げられる。加熱を併用することにより、より低温短時間での粘着力の低下が可能となる。加熱温度は、接着剤層の分解点以下であれば特に制限は受けないが、50〜170℃の温度が好ましい。
【0106】
<接着シートロールの作製方法>
巻き芯11の外周面に、上記接着シート100を巻きつけることで、接着シートロール110が作製される。
具体的には、例えば、接着シート100の長手方向端部において、剥離基材1の接着剤層2及び粘着フィルム層3が形成された面を、巻き芯11の外周面に接触させ、接着剤層2が支持部材非設領域に位置するように、接着シート100を巻きつける。
接着シート100を巻き芯11に巻きつける力(巻取力)としては、例えば接着シート100の短手方向における幅が39cmである場合において、5N以上50N以下が挙げられる。
【0107】
(半導体装置の製造方法)
次に、本発明の接着シートロールを用いて半導体装置を製造する方法について説明する。
【0108】
接着剤層2及び粘着フィルム層3からなる積層体を半導体ウェハへ貼り付ける場合、自動化された工程で連続して行うことができる。このような半導体ウェハへの積層体の貼り付け作業を行う装置としては、例えば、リンテック(株)製のRAD−2500(商品名)等が挙げられる。
具体的には、接着シートロール110の接着シート100から、剥離基材1を剥離し、積層体の接着剤層2を半導体ウエハに貼り付ける。次に、上記の工程により得られた積層体付き半導体ウェハをダイシングし、必要な大きさの積層体付き半導体素子を得る。ここで更に、洗浄、乾燥等の工程を行ってもよい。このとき、接着剤層2及び粘着フィルム層3により半導体ウェハは積層体に十分に粘着保持されているので、上記各工程中に半導体ウェハが脱落することが抑制される。
【0109】
次に、放射線等の高エネルギー線を積層体の粘着フィルム層3に照射し、粘着フィルム層3における粘着剤層の一部又は大部分を重合硬化せしめる。この際、高エネルギー線照射と同時に又は照射後に、硬化反応を促進する目的で更に加熱を行っても良い。
【0110】
粘着フィルム層3への高エネルギー線の照射は、基材フィルムの粘着剤層が設けられていない側の面から行う。したがって、高エネルギー線として紫外線を用いる場合には、基材フィルムは光透過性であることが必要である。なお、高エネルギー線として電子線を用いる場合には、基材フィルムは必ずしも光透過性である必要はない。
【0111】
高エネルギー線照射後、ピックアップすべき半導体素子を、例えば吸引コレットによりピックアップする。この際、ピックアップすべき半導体素子を基材フィルムの下面から、例えば針扞等により突き上げることもできる。粘着剤層を硬化させることにより、半導体素子と接着剤層2との間の粘着力は、接着剤層2と粘着剤層との間の粘着力よりも大きくなるため、半導体素子のピックアップを行うと、接着剤層2と粘着剤層との界面で剥離が生じ、接着剤層2が半導体素子の下面に付着した状態の接着剤層付き半導体素子がピックアップされることとなる。
【0112】
この接着剤層付き半導体素子を、接着剤層2を介して半導体素子搭載用の支持部材に載置し、加熱を行う。加熱により接着剤層2は接着力が発現し、半導体素子と半導体素子搭載用支持部材との接着が完了する。
その後、必要に応じてワイヤボンド工程や封止工程等を経て、半導体装置が製造される。
【0113】
なお、接着シート100が剥離基材1及び接着剤層2で構成され、粘着フィルム層3を有していない場合は、例えば、接着シート100の接着剤層2を覆うように粘着フィルムを貼り付けてから、上記と同様な方法で半導体装置を製造してもよい。また、接着シート100の接着剤層2を半導体ウェハに貼り付けた後に、剥離基材1を剥離し、半導体ウェハに貼り付けられた接着剤層2を覆うように粘着フィルムを貼り付け、上記と同様な方法で半導体装置を製造してもよい。
なお、半導体ウェハの厚さは特に限定されないが、上記半導体装置の製造方法は薄い半導体ウェハにも適した方法であり、例えば10μm以上100μm以下であってもよい。
【0114】
(半導体装置)
図5は、上述した半導体装置の製造方法により製造される本発明の半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。
【0115】
図5に示すように、半導体装置300は、半導体素子搭載用の支持部材となる有機基板70上に、接着剤層2及び半導体素子72からなる接着剤層付き半導体素子が2つ積層されている。また、有機基板70には、回路パターン74及び端子76が形成されており、この回路パターン74と2つの半導体素子72とが、ワイヤボンド78によってそれぞれ接続されている。そして、これらが封止材80により封止され、半導体装置300が形成されている。この半導体装置300は、上述した本発明の半導体装置の製造方法により、本発明の接着シート100を用いて製造されるものである。
【実施例】
【0116】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0117】
<実施例1>
接着シート100として、ダイシングダイボンディング一体型フィルム(日立化成工業社製、型番:FH−WP121T−60、剥離基材1の厚さ:38μm、剥離基材1の短手方向における幅:39cm、接着剤層2の厚さ:60μm、接着剤層2の形状:円形、接着剤層2の直径:32cm、粘着フィルム層3の厚さ:100μm、粘着フィルム層3の形状:円形、粘着フィルム層3の直径:37cm、粘着フィルム層3の間隔(粘着フィルム層3の中心とその隣に位置する粘着フィルム層3の中心との距離):37.8cm)を用いた。なお、上記ダイシングダイボンディング一体型フィルムにおいては、剥離基材1の前記短手方向中心部に、前記長手方向に沿って1列に、等間隔に接着剤層2及び粘着フィルム層3が形成されている。
【0118】
巻き芯としては、図1に示す巻き芯11(巻き芯基材22の外径が8.4cm、支持部材24及び26の厚みが1mm、支持部材非設領域の長さ:35cm)を用いて、FH−WP121T−60を、巻き取り装置を使用して、巻取力20Nで接着シート200枚分(すなわち、接着剤層2の200枚分に相当する分であり、前記長手方向における接着シートの長さが76m)を、接着剤層2の全領域が巻き芯の支持部材非設領域と重なるように巻き、ロール状の接着シートロールを得た。
【0119】
<実施例2>
巻き芯として、一体型の巻き芯(すなわち、巻き芯基材22自体が軸方向中央部と軸方向両端部とで外径差を有する巻き芯)を用いた以外は、実施例1と同様にして、接着シートロールを得た。具体的には、軸方向中央部における外径(小):8.3cm、軸方向両端部における外径(大):8.4cmであり、上記外径(小)の領域の長さが35cmの巻き芯を用いた。
【0120】
<比較例1>
巻き芯として、図7に示す外径が一定(8.4cm)の巻き芯211を用いた以外は、実施例1と同様にして、接着シートロールを得た。
【0121】
<評価方法>
得られた接着シートロールを、2週間放置した後、接着シートロールの外側から100枚目以降の接着剤層について、20枚おきに巻き跡の転写を確認し、180枚目以降は10枚おきに確認した。
確認方法としては、確認する接着剤層を粘着フィルム層とともに剥離基材から剥離し、400μm厚の半導体ウェハ(シリコンウェハ)を熱板温度70℃の条件でラミネートし、ラミネート後のウェハと接着シートの間に空気を巻き込んでいないものを○、空気を巻き込んでいるものを×として評価した。表1に評価結果を示す。
【0122】
【表1】

【0123】
表1に示されるように、比較例1は、160枚目までは巻き跡の転写は見られなかったが、180枚目以降では巻き跡の転写が見られ、またラミネート後のウェハと接着シートの間に空気の巻き込みが確認できた。これに対し、実施例1および2は、200枚目まで全てのシートで巻き跡の転写は見られず、またラミネート後のウェハと接着シートの間の空気の巻き込みも見られなかった。よって、本発明の接着シートロールは、従来の巻き芯を用いて巻いた接着シートロールに比較して、巻き跡の転写を抑え、ウェハと接着シートの間の空気の巻き込みを抑えることが確認された。
【符号の説明】
【0124】
1…剥離基材、2…接着剤層、3…粘着フィルム層、11…巻き芯、22…巻き芯基材、24,26…支持部材、72…半導体素子、100…接着シート、110…接着シートロール、300…半導体装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻き芯と、
前記巻き芯の外周面に巻きつけられ、剥離基材と前記剥離基材の表面に部分的に設けられた接着剤層とを含んで構成された接着シートと、を有し、
前記接着シートは、前記接着シートの長手方向における前記接着剤層の長さの総和が最も長くなる最長形成部と、前記最長形成部の両側に前記接着剤層が設けられていない非形成領域と、を有し、
前記接着シートが前記巻き芯に巻きつけられたときに、前記非形成領域の少なくとも一部に対応する巻き芯の外径が、前記最長形成部に対応する巻き芯の外径よりも大きい、接着シートロール。
【請求項2】
前記巻き芯は、巻き芯基材と、支持部材と、を含んで構成され、
前記支持部材は、前記接着シートが前記巻き芯に巻きつけられたときに前記非形成領域の少なくとも一部に対応する位置において、前記巻き芯基材の外周面に巻きつけられてなる、請求項1に記載の接着シートロール。
【請求項3】
前記接着シートは、前記接着剤層を覆い、且つ、前記接着剤層が形成された領域の周囲で前記剥離基材に接するように形成された粘着フィルム層を含む、請求項1又は請求項2に記載の接着シートロール。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のうちのいずれか一項に記載の接着シートロールを用いて製造された半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−164827(P2012−164827A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24255(P2011−24255)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】