説明

接着剤組成物、及びそれを用いた有機繊維とゴムとの接着方法

【課題】作製時及び接着処理時のホルムアルデヒドを削減して作業環境を改善することができる上、有機繊維とゴムとの接着における長時間耐熱性を向上させることが可能な接着剤組成物を提供する。
【解決手段】レゾルシンとメラミン系化合物との初期縮合物と、ノボラック型のレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物と、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン系共重合体ゴムラテックスとを含んでなり、前記ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン系共重合体ゴムラテックスの固形分100質量部に対して、前記レゾルシンとホルムアルデヒドとの初期縮合物を25〜130質量部含むことを特徴とする接着剤組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物、及び該接着剤組成物を用いた有機繊維とゴムとの接着方法に関し、特にポリエステル繊維とゴムとの接着における長時間耐熱性を向上させることが可能な接着剤組成物及びそれを用いた接着方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤ等のゴム物品においては、レゾルシン又はノボラック型のレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物とホルムアルデヒドとゴムラテックスとからなる接着剤組成物(所謂、RFL液)を有機繊維に含浸付着せしめた後、熱処理した有機繊維を未加硫ゴムに埋設し、該未加硫ゴムを加硫して有機繊維とゴムとを一体化する技術が知られている。ここで、RFL液等のレゾルシノール樹脂接着系は、一般に長時間耐久性が高いことが知られている(非特許文献1参照)。
【0003】
一方、近年のホルムアルデヒドを削減した接着剤組成物へのニーズの高まりから、レゾルシン又はノボラック型のレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物と、特定のメラミン系化合物と、ゴムラテックスとからなる接着液が注目されている(下記特許文献1参照)。該接着液においては、特定のメラミン系化合物が、メチレンドナーとしてのホルムアルデヒドの役割を代替できるため、ホルムアルデヒドの使用量を削減することができ、その結果として、作業環境を改善することができる。
【0004】
【非特許文献1】接着,高分子刊行会,V0149,No10,2005
【特許文献1】特開2000−160108号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者が検討したところ、特開2000−160108号公報に記載のメラミン系化合物を含む接着液は、長時間耐熱性が低く、特にゴム物品の補強材としてポリエステルコードを使用した場合、該ポリエステルは分子構造的に緻密で且つ官能基が少ないため、この傾向が顕著に現れることが分かった。そのため、RFL液を上記のメラミン系化合物が縮合された樹脂系で代替して製造したゴム物品は、長時間耐久性に優れたレゾルシノール樹脂接着系を用いて製造したゴム物品に比べ、製品寿命が短く、特にゴム物品を高歪・高温下で使用した場合、有機繊維とゴムとの接着強度が劣化する不具合が有ることが分かった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、作製時及び接着処理時のホルムアルデヒドを削減して作業環境を改善することができる上、有機繊維とゴムとの接着における長時間耐熱性を向上させることが可能な接着剤組成物を提供することにある。また、本発明の他の目的は、かかる接着剤組成物を用いた、作業環境を改善することが可能な有機繊維とゴムとの接着方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、レゾルシンと特定のメラミン系化合物との初期縮合物及びビニルピリジン−スチレン−ブタジエン系共重合体ゴムラテックスと共に、ノボラック型のレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物を含む接着剤組成物が、有機繊維とゴムとの接着における長時間耐熱性を大幅に改善できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明の接着剤組成物は、
レゾルシンと下記一般式(I):
【化1】

[式中、Rは、それぞれ独立して水素、メチロール基、メトキシメチル基又はエトキシメチル基である]で表わされるメラミン系化合物との初期縮合物と、
ノボラック型のレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物と、
ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン系共重合体ゴムラテックスとを含んでなり、
前記ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン系共重合体ゴムラテックスの固形分100質量部に対して、前記レゾルシンとホルムアルデヒドとの初期縮合物を25〜130質量部含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の接着剤組成物において、前記ノボラック型のレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ分析(GPC)において、レゾルシン核が2〜4個連結している成分の面積比が40%以上であることが好ましい。
【0010】
本発明の接着剤組成物において、前記レゾルシンとメラミン系化合物との初期縮合物は、前記レゾルシン(R)と前記メラミン系化合物(M)との質量比(R/M)が10/35〜30/10であることが好ましい。
【0011】
本発明の接着剤組成物の好適例においては、前記レゾルシンとメラミン系化合物との初期縮合物の配合量が、上記ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン系共重合体ゴムラテックスの固形分100質量部に対して20〜65質量部である。
【0012】
また、本発明の有機繊維とゴムとの接着方法は、
上記の接着剤組成物を有機繊維に含浸付着させる工程と、
前記接着剤組成物が付着した有機繊維を未加硫ゴムに埋設する工程と、
前記接着剤組成物が付着した有機繊維及び前記未加硫ゴムを加硫処理して、有機繊維とゴムとを一体化する工程と
を含むことを特徴とする。ここで、前記有機繊維としては、ポリエステル繊維が好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、レゾルシンと特定のメラミン系化合物との初期縮合物及びビニルピリジン−スチレン−ブタジエン系共重合体ゴムラテックスと共に、ノボラック型のレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物を含み、接着剤組成物作製時のホルムアルデヒドを削減して作業環境を改善することができる上、有機繊維とゴムとの接着における長時間耐熱性を向上させることが可能な接着剤組成物を提供することができる。また、該接着剤組成物を有機繊維とゴムとの接着処理に用いることで、接着処理時のホルムアルデヒドを削減して作業環境を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明の接着剤組成物は、レゾルシンと上記一般式(I)で表わされるメラミン系化合物との初期縮合物と、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン系共重合体ゴムラテックスと、ノボラック型のレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物とを含んでなり、前記ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン系共重合体ゴムラテックスの固形分100質量部に対して、前記レゾルシンとホルムアルデヒドとの初期縮合物を25〜130質量部含むことを特徴とする。
【0015】
本発明の接着剤組成物においては、式(I)のメラミン系化合物が、メチレンドナーとしてのホルムアルデヒドの役割を代替できるため、ホルムアルデヒドの使用量を削減することができ、その結果、接着剤組成物の作製時及び接着処理時の作業環境を改善することができる。
【0016】
また、本発明の接着剤組成物においては、ノボラック型のレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物を上記ラテックスの固形分100質量部に対して25質量部以上配合することで、有機繊維表面に付着する接着剤組成物の樹脂比率が高くなる結果、有機繊維に対する接着性が相対的に低いゴムラテックス成分の比率が相対的に低下するため、接着剤組成物と有機繊維表面との接着性が向上する。
【0017】
更に、本発明の接着剤組成物においては、ノボラック型のレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物の配合量が上記ラテックスの固形分100質量部に対して130質量部以下であれば、ラテックスがノボラック型のレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物に幾何学的に埋没することがないため、接着剤組成物中のラテックス成分と被着ゴムとが十分に接触して、接着剤組成物と被着ゴムとの接着性が向上する。
【0018】
本発明の接着剤組成物に用いるビニルピリジン−スチレン−ブタジエン系共重合体ゴムラテックスは、ピリジン環含有ビニル化合物と、未置換・置換スチレンと、共役ジエン化合物との共重合体粒子を含むラテックスであり、市販品を利用することができる。ここで、ピリジン環含有ビニル化合物としては、2-ビニルピリジン、3-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、2-メチル-5-ビニルピリジン、5-エチル-2-ビニルピリジン等が挙げられ、これらの中でも、2-ビニルピリジンが好ましい。また、未置換・置換スチレンとしては、スチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、4-t-ブチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン等が挙げられ、これらの中でも、スチレンが好ましい。更に、共役ジエン化合物としては、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン等の脂肪族共役ジエン化合物系モノマーが挙げられ、これらの中でも、1,3-ブタジエンが好ましい。なお、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン系共重合体における各モノマーの組成比は、特に限定されない。
【0019】
本発明の接着剤組成物に用いるレゾルシンとメラミン系化合物との初期縮合物は、レゾルシンとメラミン系化合物とを混合して、熟成することで調製することができる。ここで、該レゾルシンとメラミン系化合物との初期縮合物において、レゾルシン(R)とメラミン系化合物(M)との質量比(R/M)は、10/35〜30/10の範囲が好ましい。レゾルシンの量に対しメラミン系化合物の量が少な過ぎると、レゾルシン架橋による剛性が不足する。一方、メラミン系化合物は、レゾルシンより熱分解温度が低い化合物であるので、添加量が多くなると、接着剤組成物の耐熱性が低下する傾向がみられるようになる。そのため、本発明の接着剤組成物では、R/Mは10/35〜30/10の範囲が好ましい。
【0020】
上記レゾルシンとメラミン系化合物との初期縮合物の合成に使用するメラミン系化合物は、上記一般式(I)で表わされ、式(I)中のRは、水素(−H)、メチロール基(−CH2OH)、メトキシメチル基(−CH2OCH3)又はエトキシメチル基(−CH2OC25)であり、各Rは、同一でも、異なってもよい。式(I)のメラミン系化合物は、メチレンドナーとしてのホルムアルデヒドの役割を代替できるため、式(I)のメラミン系化合物を用いることで、ホルムアルデヒドの使用量を削減することができる。
【0021】
上記レゾルシンとメラミン系化合物との初期縮合物の配合量は、上記ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン系共重合体ゴムラテックスの固形分100質量部に対して20〜65質量部の範囲が好ましい。レゾルシンとメラミン系化合物との初期縮合物の配合量がビニルピリジン−スチレン−ブタジエン系共重合体ゴムラテックスの固形分100質量部に対して20質量部未満では、接着処理において、ゴムラテックス付着による汚染発生により清掃性が低下し、一方、65質量部を超えると、幾何学的にラテックスが樹脂に埋没するため、ラテックス成分と被着ゴムとが接触し難くなり、加硫しても被着ゴムと接着剤組成物とが接着し難くなる。
【0022】
本発明の接着剤組成物において、ノボラック型のレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物としては、市販品[例えば、インドスペック社製:商品名ペナコライトR50、住友化学株式会社製:商品名スミカノール700(s)]や、レゾルシンを水に溶解し、ホルムアルデヒドを添加後、100〜110℃の温度範囲内の一定温度で6〜8時間の範囲内の一定時間熱処理を行って得られた反応物等の合成品を用いることができる。ここで、該ノボラック型のレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物において、ホルムアルデヒド(F)とレゾルシン(R)との質量比(F/R)は、0.5〜0.6の範囲が最適である。
【0023】
上記ノボラック型のレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物の配合量は、上記ゴムラテックスの固形分100質量部に対して25〜130質量部の範囲である。ノボラック型のレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物の配合量が上記ゴムラテックスの固形分100質量部に対して25質量部未満では、長時間加硫後の接着力を十分に向上させることができず、一方、130質量部を超えると、ノボラック型のレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物にラテックスが幾何学的に埋没して、ラテックス成分と被着ゴムとが接触し難くなり、加硫しても被着ゴムと接着剤組成物とが接着し難くなる。
【0024】
上記ノボラック型のレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ分析(GPC)におけるレゾルシン核が2〜4個連結している成分の面積比が40%以上であることが好ましい。レゾルシン核が2〜4個連結している成分は、比較的低分子であるため、ゴム物品に加工する際の加硫工程において温度を140〜190℃程度に昇温すると、流動する性質を示す。一般に、ノボラック型のレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物を接着剤組成物に配合すると、上述のように接着剤組成物と有機繊維表面との接着性が向上するものの、接着剤組成物中のラテックスの比率が低下するため、被着ゴムと接着剤組成物との間の接着性は低下する。特に、ノボラック型のレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物の配合量が多くなり、幾何学的にラテックスがノボラック型のレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物に埋没すると、ラテックス成分と被着ゴムとが接触し難くなり、加硫しても被着ゴムと接着剤組成物とが接着し難くなり、例えば、接着剤組成物中のラテックスの比率が20%以下になると、被着ゴムと接着剤組成物との接着性が著しく低下する。しかしながら、ゲルパーミエーションクロマトグラフ分析(GPC)においてレゾルシン核が2〜4個連結している成分の面積比が40%以上であるノボラック型のレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物は、上述のように熱により流動性を示すため、接着剤組成物中のラテックスと被着ゴムとが接触し、ラテックス成分と被着ゴムとが共加硫することで、接着剤組成物と被着ゴムとが十分に接着する。
【0025】
本発明の有機繊維とゴムとの接着方法は、上述した接着剤組成物を有機繊維に含浸付着させる工程と、前記接着剤組成物が付着した有機繊維を未加硫ゴムに埋設する工程と、前記接着剤組成物が付着した有機繊維及び前記未加硫ゴムを加硫処理して、有機繊維とゴムとを一体化する工程とを含むことを特徴とし、接着処理時のホルムアルデヒドを削減して、作業環境を改善することができる。
【0026】
本発明の接着方法においては、例えば、接着剤組成物液に有機繊維を浸漬して、接着剤組成物液を有機繊維に含浸付着させ、該接着剤組成物液が付着した有機繊維を接着剤組成物液から取り出して、乾燥及び熱処理した後、未加硫ゴムに埋設し、常法に従って、接着剤組成物が付着した有機繊維及び未加硫ゴムを加硫処理することで、有機繊維とゴムとを一体化することができる。
【0027】
上記有機繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンナフタレート繊維等のポリエステル繊維、6-ナイロン繊維、6,6-ナイロン繊維、4,6-ナイロン繊維等の脂肪族ポリアミド繊維の他、レーヨン繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリビニルアルコール繊維等を用いることができる。これらの中でも、ポリエステル繊維を用いた場合、本発明の効果が顕著に現れる。
【0028】
また、上記未加硫ゴムとしては、特に限定はなく、例えば、天然ゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム等のゴム成分に対して、カーボンブラック、硫黄等の配合剤を配合して調製した未加硫ゴム組成物を用いることができる。
【実施例】
【0029】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0030】
(1)レゾルシンとメラミン系化合物との初期縮合物と、ゴムラテックスからなる組成物の調製
ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス[日本エイアンドエル株式会社製, ピラテックス(商品名), ブタジエン70質量%とスチレン15質量%と2-ビニルピリジン15質量%とを乳化重合させて得た共重合物の41質量%分散液]250質量部と、レゾルシン20質量部と、トリス(メトキシメチル)メラミン25質量部とを混合し、最低24時間熟成し、ゴムラテックス、及びレゾルシンとメラミン化合物との初期縮合物を含む組成物を調製した。
【0031】
(2)レゾルシンとホルムアルデヒドとの初期縮合物の調製
温度計、撹拌機、還流冷却器、滴下ロートを備えた反応装置に、レゾルシンを100質量部、水を16.3質量部仕込み、室温で溶解後、110℃で撹拌しながら37%ホルマリン97.7質量部を0.5時間かけて滴下し、更に6.0時間撹拌を続けた後、90℃まで冷却したところで、反応を抑止するため、pH調整剤として1Nのアンモニア溶液1.3質量部を加えてpHを約4に調整し、室温まで冷却し、ノボラック型縮合物を得た。
【0032】
次に、上記縮合反応により得られたノボラック型縮合物から、モノマー及び低分子成分をトルエンで抽出する。なお、抽出効率を上げる目的で、上記縮合反応により得られたノボラック型縮合物を下記のように、濃縮(共沸蒸留)後、温度106℃で抽出した。
【0033】
即ち、温度計、撹拌機、Dean−Stark型トラップ、リービッヒ冷却管、還流冷却器を備えた共沸蒸留/抽出装置に、上記縮合反応物水溶液100質量部とトルエン200質量部とを仕込み、90℃まで昇温後、共沸蒸留でノボラック型縮合物水溶液より水を留去し、共沸温度が106℃になるまで濃縮する。その後、温度106℃を維持して60分撹拌した後、5分間静置するとトルエン層と水層が分離するので、デカンテーションにより、レゾルシンモノマーや低分子量レゾルシン−ホルムアルデヒド縮合物を抽出しているトルエン約195質量部を取り除く。次に、再度、トルエン100質量部を加え、106℃で60分撹拌後、5分静置し、トルエン抽出層をデカンテーションにより取り除く。
【0034】
上記のようにして得たノボラック型のレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物の分子量分布を、ゲルパーミエーションクロマトグラフ測定機[TOSOH社 商品名:HLC−8020]を用い、国際公開97/13818号に記載の方法で測定したところ、モノマーの面積が14.3%で、2核体の面積が18.2%で、3核体の面積が15.4%で、4核体の面積が13.3%で、5核体以上の面積が38.8%であった。
【0035】
(3)接着剤組成物
上記(1)で得られたゴムラテックス、及びレゾルシンとメラミン化合物との初期縮合物を含む組成物と、上記(2)で得られたノボラック型のレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物の水溶液(固形分濃度50質量%)とを、ノボラック型のレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物とゴムラテックスの固形分質量比が表1に示す比になるように配合した後、軟水を加えて、固形分濃度を20質量%に調製し、接着剤組成物を調製した。
【0036】
【表1】

【0037】
(4)接着剤組成物処理コードの作製
コード材料として、撚構造1670dtex/2、上撚数40回/10cm、下撚数40回/10cmのポリエステルタイヤコードを用い、上記(3)で得た接着剤組成物に浸漬し、次に、160℃で1分間乾燥後、240℃に保った雰囲気下で2分間処理して、接着剤組成物処理コードを作製した。
【0038】
(5)長時間加硫
上記(4)で得た接着剤組成物処理コードを、天然ゴム 80重量部、スチレンブタジエン共重合ゴム 20重量部、カーボンブラック 40重量部、ステアリン酸 2重量部、石油系軟化剤 10重量部、バインタール 4重量部、亜鉛華 5重量部、N−フェニル−β−ナフチルアミン 1.5重量部、2−ベンゾチアジルジスルフィド 0.75重量部、ジフェニルグアニジン 0.75重量部及び硫黄 2.5重量部からなる配合の未加硫ゴム組成物に埋め込み、170℃で120分間、20kgf/cm2の加圧下で加硫した。
【0039】
(6)長時間加硫後の接着力
上記(5)で得た加硫物からコードを掘り起こし、30cm/分の速度でコードを加硫物から剥離する時の抗力を測定し、これを長時間加硫後の接着力とした。結果を表2に示す。
【0040】
【表2】

【0041】
表2から明らかなように、レゾルシンと特定のメラミン系化合物との初期縮合物及びビニルピリジン−スチレン−ブタジエン系共重合体ゴムラテックスと共に、ノボラック型のレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物を含む接着剤組成物を用いてポリエステル繊維コードを処理することで、コードと被着ゴムとの長時間加硫後の接着力を大幅に向上させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レゾルシンと下記一般式(I):
【化1】

[式中、Rは、それぞれ独立して水素、メチロール基、メトキシメチル基又はエトキシメチル基である]で表わされるメラミン系化合物との初期縮合物と、
ノボラック型のレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物と、
ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン系共重合体ゴムラテックスとを含んでなり、
前記ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン系共重合体ゴムラテックスの固形分100質量部に対して、前記レゾルシンとホルムアルデヒドとの初期縮合物を25〜130質量部含むことを特徴とする接着剤組成物。
【請求項2】
前記ノボラック型のレゾルシン・ホルムアルデヒド初期縮合物は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ分析(GPC)において、レゾルシン核が2〜4個連結している成分の面積比が40%以上であることを特徴とする請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記レゾルシンとメラミン系化合物との初期縮合物は、前記レゾルシン(R)と前記メラミン系化合物(M)との質量比(R/M)が10/35〜30/10であることを特徴とする請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
前記レゾルシンとメラミン系化合物との初期縮合物の配合量が、上記ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン系共重合体ゴムラテックスの固形分100質量部に対して20〜65質量部であることを特徴とする請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
有機繊維とゴムとの接着方法であって、
請求項1〜4のいずれかに記載の接着剤組成物を有機繊維に含浸付着させる工程と、
前記接着剤組成物が付着した有機繊維を未加硫ゴムに埋設する工程と、
前記接着剤組成物が付着した有機繊維及び前記未加硫ゴムを加硫処理して、有機繊維とゴムとを一体化する工程と
を含む有機繊維とゴムとの接着方法。
【請求項6】
前記有機繊維がポリエステル繊維であることを特徴とする請求項5に記載の接着方法。

【公開番号】特開2008−260860(P2008−260860A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−104933(P2007−104933)
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】