説明

接着層用塗料およびこれを用いた転写用ハードコート膜、並びに、転写用ハードコート膜を備えたハードコート膜付基材

【課題】 プライマー層を設けることなく、プラスチック基材とハードコート層との高い密着性を得るとともに、接着層の屈折率を調整可能とすることにより、ハードコート層が転写されたプラスチック基材の表面に生じる干渉ムラを抑制することができる接着層用塗料およびこれを用いた転写用ハードコート膜、並びに、転写用ハードコート膜を備えたハードコート膜付基材を提供する。
【解決手段】 本発明の接着層用塗料は、紫外線硬化型樹脂を5重量%以上かつ50重量%以下含有し、残部が熱可塑性樹脂であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着層用塗料およびこれを用いた転写用ハードコート膜、並びに、転写用ハードコート膜を備えたハードコート膜付基材に関し、さらに詳しくは、液晶ディスプレイなどの各種ディスプレイ、屋外表示板などの建材などからなる被転写体に対して、耐擦傷性、耐汚染性などを付与するとともに、干渉ムラを抑制し、被転写体の外観を損なうことなく表面保護層を形成するための接着層用塗料およびこれを用いた転写用ハードコート膜、並びに、転写用ハードコート膜を備えたハードコート膜付基材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチック基材などの表面に、耐擦傷性、耐汚染性などのハードコート性を付与する方法としては、シリカ粒子などの微粒子を、耐擦傷性を有するバインダーなどと共に塗料化し、その塗料をプラスチック基材の表面に塗布する方法、あるいは、ハードコート層と、このハードコート層上に形成された接着層とを備え、ハードコート層と接着層との高い密着性を得るために、これらの二層間にプライマー層が設けられたハードコート転写フィルムをプラスチック基材の表面に転写する方法がある(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−71653号公報
【特許文献2】特開2001−71694号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、プラスチック基材の表面に直接、ハードコート性を付与する塗料を塗布する方法では、プラスチック基材の形状や大きさなどに応じて塗工に要する装置が異なるため、大掛かりな装置が必要となり、その結果として、設備投資が高くなるという問題があった。また、塗料が収容されている容器を一旦開封すると、保存可能な期間が限られてしまうため、無駄が生じ、塗料の使用効率が悪いという問題があった。
【0004】
一方、ハードコート転写フィルムをプラスチック基材の表面に転写する方法では、プラスチック基材とハードコート転写フィルムとの高い密着性を得るために、ハードコート層と接着層との間にプライマー層が設けられているが、ハードコート転写フィルムの製造時に形成される層の数が多いため、製造コストが高くなるという問題があった。
【0005】
さらに、ハードコート転写フィルムを構成する各層の屈折率が異なることや、ハードコート転写フィルムを構成する層の数が多いため、各層の屈折率を整合させることが難しいことから、ハードコート層が転写されたプラスチック基材の表面に干渉ムラが生じ、プラスチック基材の外観が損なわれるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであって、プライマー層を設けることなく、プラスチック基材とハードコート層との高い密着性を得るとともに、接着層の屈折率を調整可能とすることにより、ハードコート層が転写されたプラスチック基材の表面に生じる干渉ムラを抑制することができる接着層用塗料およびこれを用いた転写用ハードコート膜、並びに、転写用ハードコート膜を備えたハードコート膜付基材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、鋭意検討を行った結果、紫外線硬化型樹脂を5重量%以上かつ50重量%以下含有し、残部が熱可塑性樹脂である接着層用塗料を用いて接着層を形成することにより、プライマー層を設けることなく、プラスチック基材とハードコート層との高い密着性を得るとともに、接着層の屈折率を調整可能とすることにより、ハードコート層が転写されたプラスチック基材の表面に生じる干渉ムラを抑制することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の接着層用塗料は、紫外線硬化型樹脂を5重量%以上かつ50重量%以下含有し、残部が熱可塑性樹脂であることを特徴とする。
【0009】
前記紫外線硬化型樹脂および前記熱可塑性樹脂からなる樹脂成分100重量部に対して、無機フィラーが2重量部以上かつ67重量部以下の割合で含まれることが好ましい。
前記無機フィラーの平均一次粒子径は5nm以上かつ100nm以下であることが好ましい。
【0010】
本発明の転写用ハードコート膜は、ハードコート層と、該ハードコート層の一主面上に前記の接着層用塗料を用いて形成された接着層とを備えてなることを特徴とする。
【0011】
前記ハードコート層の他の一主面上に形成された離型層を備えてなるものであってもよい。
【0012】
本発明のハードコート膜付基材は、基材と、該基材の一主面に形成された前記の転写用ハードコート膜とを備えてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の接着層用塗料によれば、紫外線硬化型樹脂を5重量%以上かつ50重量%以下含有し、残部を熱可塑性樹脂としたので、この接着層用塗料を用いて接着層を形成することにより、プライマー層を設けることなく、プラスチック基材とハードコート層との密着性が高い転写用ハードコート膜を形成することができる。また、接着層の屈折率が調整可能となるから、ハードコート層が転写されたプラスチック基材の表面に生じる干渉ムラを抑制し、外観の良好なハードコート層付のプラスチック基材を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の接着層用塗料およびこれを用いた転写用ハードコート膜、並びに、転写用ハードコート膜を備えたハードコート膜付基材を実施するための最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0015】
「接着層用塗料」
本発明の接着層用塗料は、紫外線硬化型樹脂を5重量%以上かつ50重量%以下含有し、残部が熱可塑性樹脂である塗料である。
【0016】
紫外線硬化型樹脂としては、例えば、アクリルウレタン樹脂、ポリエステルアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂などが挙げられるが、特にアクリレート系の官能基を有する樹脂が好ましい。
【0017】
熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニル系樹脂、アルキド樹脂などが挙げられるが、特にアクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂が好ましい。
【0018】
また、本発明の接着層用塗料は、紫外線硬化型樹脂を5重量%以上かつ50重量%以下含有し、残部が熱可塑性樹脂である必要があり、紫外線硬化型樹脂の含有量が20重量%、熱可塑性樹脂の含有量が80重量%であることが好ましい。その理由は、紫外線硬化型樹脂の含有量が5重量%未満では、転写用ハードコート膜をプラスチック基材などの被転写材に転写した時にハードコート層と接着層との間で密着不良が発生しやすくなるからである。一方、紫外線硬化型樹脂の含有量が50重量%を超えると、接着層と被転写材との間で密着不良を発生しやすくなるからである。
【0019】
また、紫外線硬化型樹脂および熱可塑性樹脂からなる樹脂成分100重量部に対して、無機フィラーが2重量部以上かつ67重量部以下の割合で含まれることが好ましい。
無機フィラーの含有量を上記の範囲内とすることにより、本発明の接着層用塗料を用いて形成した接着層の屈折率をハードコート層の屈折率に応じて制御することが可能となる。その結果として、本発明の接着層用塗料を用いて形成した接着層を備えてなる転写用ハードコート膜が転写された被転写材の表面の干渉ムラを抑制することができ、被転写材の外観を損ねることがない。
【0020】
紫外線硬化型樹脂および熱可塑性樹脂からなる樹脂成分100重量部に対する無機フィラーの含有量を2重量部以上かつ67重量部以下とした理由は、無機フィラーの含有量が5重量部未満では、接着層が光の干渉を防止する効果が極めて小さいからであり、一方、無機フィラーの含有量が67重量部を超えると、接着層の透過率が低くなるからである。
【0021】
この無機フィラーの平均一次粒子径は5nm以上かつ100nm以下であることが好ましい。
無機フィラーの平均一次粒子径を上記の範囲内とすることにより、本発明の接着層用塗料を用いて形成した接着層の屈折率をハードコート層の屈折率に応じて制御することが可能となる。
【0022】
無機フィラーの平均一次粒子径を5nm以上かつ100nm以下とした理由は、無機フィラーの平均一次粒子径が5nm未満では、凝集が起こり、分散性が悪化する可能性が大きくなり、一方、無機フィラーの平均一次粒子径が100nmを超えると、光散乱により塗膜が白化し、透明性が失われるからである。
【0023】
無機フィラーとしては、例えば、ジルコニア、チタニア、イットリア、セリア、アルミナ、シリカなどが挙げられる。
【0024】
本発明の接着層用塗料は、上述の紫外線硬化型樹脂、熱可塑性樹脂、および、無機フィラーを溶剤に溶かして、所定の粘度となるように調製されて用いられる。
【0025】
接着層用塗料に用いられる溶剤としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、β−オキシエチルメチルエーテル(メチルセロソルブ)、β−オキシエチルエーテル(エチルセロソルブ)、ブチル−β−オキシエチルエーテル(ブチルセロソルブ)、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエチレングリコールのモノエーテル類(セロソルブ類)、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのエステル類が好適に用いられる。
【0026】
「転写用ハードコート膜」
本発明の転写用ハードコート膜は、ハードコート層と、このハードコート層上に上述の接着層用塗料を用いて形成された接着層とを備えてなるものである。
【0027】
図1は、本発明の第一の実施形態の転写用ハードコート膜を示す概略断面図である。
この例の転写用ハードコート膜1は、ハードコート層2と、このハードコート層2上に上述の接着層用塗料を用いて形成された接着層3とから概略構成されている。
【0028】
ハードコート層2をなす樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリシロキサン樹脂などの熱硬化型樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂などの紫外線硬化型樹脂などが挙げられる。
【0029】
ハードコート層2の厚みは特に制限されないが、通常1.0μm〜10μm程度の厚みから適宜選択される。
ハードコート層2の厚みを1.0μm〜10μm程度とする理由は、ハードコート層2の厚みが1.0μm未満では、ハードコート層2をなす樹脂が紫外線硬化型樹脂である場合、紫外線照射時の硬化不良が発生し易いからであり、一方、ハードコート層2の厚みが10μmを超えると、転写用ハードコート膜1や、これを備えてなるハードコート膜付基材がカールしてしまい、しわの原因となることがあるからである。
【0030】
接着層3の厚みは特に制限されないが、0.3μm〜5μmが好ましく、0.5μm〜2μmがより好ましい。
接着層3の厚みを0.3μm〜5μmとする理由は、接着層3の厚みが0.3μm未満では、接着層3の接着力が不十分であるからであり、一方、接着層3の厚みが5μmを超えると、接着層3の形成時に、転写用ハードコート膜1がカールしてしまい、しわの原因となることがあるからである。
【0031】
また、本発明の第二の実施形態の転写用ハードコート膜は、図2に示すように、ハードコート層2の接着層3が形成されている面とは反対の面上に離型層4が形成されていてもよい。
【0032】
離型層4をなす樹脂としては、剥離性を有する樹脂であれば特に制限されないが、例えば、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などの単独または混合物からなる熱硬化性樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂などの単独または混合物からなる紫外線硬化型樹脂などが挙げられる。
【0033】
離型層4の厚みは特に制限されないが、0.3μm〜5μmが好ましく、0.5μm〜2μmがより好ましい。
離型層4の厚みを0.3μm〜5μmとする理由は、離型層4の厚みが0.3μm未満では、転写用ハードコート膜1を被転写材に転写したときに転写不良の原因となるからであり、一方、離型層4の厚みが5μmを超えると、離型層4の形成時に、転写用ハードコート膜1がカールしてしまい、しわの原因となることがあるからである。
【0034】
「ハードコート膜付基材」
本発明のハードコート膜付基材は、基材と、この基材の一主面に形成された上述の転写用ハードコート膜とを備えてなるものである。
【0035】
図3は、本発明の第三の実施形態のハードコート膜付基材を示す概略断面図である。
この例のハードコート膜付基材10は、基材6と、この基材6の一主面6aに形成された上述のハードコート層2、接着層3および離型層4からなる転写用ハードコート膜5とから概略構成されている。
【0036】
基材6の素材は特に制限されず、十分な強度があり、安価な通常の転写フィルムに使用される基材であれば如何なるものでも用いることができる。基材6の素材としては、例えば、ポリエステルテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、アクリルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリエチレンフィルム、セルロースアセテートフィルムなどが挙げられる。
【0037】
基材6の厚みは特に制限されないが、通常5μm〜188μm程度であり、18μm〜75μmであることが好ましい。
厚みが上記の範囲内の基材6を用いれば、ハードコート膜付基材10には、しわが発生し難い。また、ハードコート膜付基材10は被転写材に転写される時に必要以上に伸びないため、ハードコート膜付基材10は破断することもない。
【0038】
次に、本発明のハードコート膜付基材の製造方法を説明する。
ハードコート層2、接着層3、離型層4のそれぞれをなす樹脂を溶剤に溶かして塗料化し、ハードコート層用塗料、接着層用塗料、離型層用塗料を調製する。接着層3を形成するための接着層用塗料には、所定量の無機フィラーを適宜添加する。
溶剤としては、上述の接着層用塗料に用いられる溶剤と同様のものが用いられる。
【0039】
本発明のハードコート膜付基材を製造するには、まず、グラビアコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法、ナイフコータ法、リバースロールコータ法、キスコータ法などの塗布方法により、基材6の一主面6aに離型層用塗料を塗布し、その後、例えば、ドライヤーやエアブローによる乾燥、室温(25℃)放置による乾燥などにより離型層4を形成する。
【0040】
次いで、グラビアコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法、ナイフコータ法、リバースロールコータ法、キスコータ法などの塗布方法により、離型層4の上にハードコート層用塗料を塗布し、その後、例えば、ドライヤーやエアブローによる乾燥、室温(25℃)放置による乾燥などによりハードコート層2を形成する。
【0041】
次いで、グラビアコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法、ナイフコータ法、リバースロールコータ法、キスコータ法などの塗布方法により、ハードコート層2の上に接着層用塗料を塗布し、その後、例えば、ドライヤーやエアブローによる乾燥、室温(25℃)放置による乾燥などにより接着層3を形成し、ハードコート膜付基材10を得る。
【0042】
なお、得られたハードコート膜付基材10の接着面(被転写材に接着される面)には、この接着面を保護するために、剥離シートなどからなる保護材を貼付してもよい。
【0043】
次に、図4を参照して、本発明のハードコート膜付基材を用いて、転写用ハードコート膜を熱転写し、プラスチック基材などの被転写材の一主面にハードコート層を形成する方法について説明する。
【0044】
まず、図4(a)に示すように、上述のハードコート膜付基材10を、接着層3の接着面がプラスチック基材20の一主面20aに接するように、プラスチック基材20の一主面20a上に配する。このとき、接着層3はタック感がなくなるまで硬化している。
プラスチック基材20としては、プラスチック製であれば特に限定されないが、例えば、液晶ディスプレイなどの各種ディスプレイ、屋外表示板などの建材などが挙げられる。プラスチック基材20の材質としては、例えば、アクリル樹脂などが挙げられる。
【0045】
次いで、熱ローラーなどを用いて、ハードコート膜付基材10をプラスチック基材20の一主面20aに熱転写すると、接着層3が軟化し、ハードコート膜付基材10がプラスチック基材20に接着する。
次いで、基材6を剥離すると、図4(b)に示すように、離型層4がハードコート層2から離脱して、転写用ハードコート膜1がプラスチック基材20の一主面20a上に転写される。すなわち、接着層3を介してプラスチック基材20の一主面20a上に、ハードコート層2が形成される。
【0046】
上述のように本発明のハードコート膜付基材を用いることによって、プラスチック基材の一主面上に、耐擦傷性、耐汚染性などを付与するとともに、干渉ムラを抑制し、プラスチック基材の外観を損なうことなく、ハードコート層を形成することができる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例1〜5および比較例1により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0048】
「剥離性シートの調製」
厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(T−60、東レ(株)社製)に、バーコーターを用いて、エポキシ系樹脂剥離剤を塗布して離型層を形成し、剥離性を有するシートを得た。
【0049】
「実施例1」
紫外線硬化型樹脂 50.0g
ジアセトンアルコール 10.0g
メチルエチルケトン 40.0g
を配合し、攪拌混合してハードコート層用塗料とした。紫外線硬化型樹脂としては、アロニックスUV−3701、東亜合成(株)社製を使用した。
次いで、剥離性シートの離型層上に、バーコーターを用いて、ハードコート層用塗料を塗布し、このハードコート層用塗料を100℃で予備乾燥後、紫外線照射して硬化させ、ハードコート層を形成した。
次いで、紫外線硬化型樹脂と熱可塑性樹脂の重量比が20:80となるように、
紫外線硬化型樹脂 6.0g
熱可塑性樹脂 53.3g
ジアセトンアルコール 15.0g
メチルエチルケトン 25.7g
を配合し、攪拌混合して接着層用塗料とした。紫外線硬化型樹脂としては、アロニックスUV−3701、東亜合成(株)社製を使用した。また、熱可塑性樹脂としては、LR−1065、固形分45%、三菱レイヨン(株)社製を使用した。
次いで、ハードコート層上に、バーコーターを用いて、この接着層用塗料を塗布し、この接着層用塗料を100℃で予備乾燥後、紫外線照射して硬化させ、接着層を形成し、ハードコート膜付基材を得た。
このようにして作製したハードコート膜付基材を、ロール転写機を用いてアクリル板(PMMA板、屈折率1.49)に熱転写し、アクリル板の表面にハードコート層を形成した。
【0050】
「実施例2」
紫外線硬化型樹脂 50.0g
ジアセトンアルコール 10.0g
メチルエチルケトン 40.0g
を配合し、攪拌混合してハードコート層用塗料とした。紫外線硬化型樹脂としては、アロニックスUV−3701、東亜合成(株)社製を使用した。
次いで、剥離性シートの離型層上に、バーコーターを用いて、ハードコート層用塗料を塗布し、このハードコート層用塗料を100℃で予備乾燥後、紫外線照射して硬化させ、ハードコート層を形成した。
次いで、紫外線硬化型樹脂と熱可塑性樹脂の重量比が50:50、紫外線硬化型樹脂および熱可塑性樹脂からなる樹脂成分100重量部に対してシリカが2重量部含まれるように、
紫外線硬化型樹脂 15.0g
熱可塑性樹脂 33.3g
30%コロイダルシリカ 2.0g
ジアセトンアルコール 15.0g
メチルエチルケトン 36.7g
を配合し、攪拌混合して接着層用塗料とした。紫外線硬化型樹脂としては、アロニックスUV−3701、東亜合成(株)社製を使用した。また、熱可塑性樹脂としては、LR−1065、固形分45%、三菱レイヨン(株)社製を使用した。
次いで、ハードコート層上に、バーコーターを用いて、この接着層用塗料を塗布し、この接着層用塗料を100℃で予備乾燥後、紫外線照射して硬化させ、接着層を形成し、ハードコート膜付基材を得た。
このようにして作製したハードコート膜付基材を、ロール転写機を用いてアクリル板(PMMA板、屈折率1.49)に熱転写し、アクリル板の表面にハードコート層を形成した。
【0051】
「実施例3」
紫外線硬化型樹脂 50.0g
ジアセトンアルコール 10.0g
メチルエチルケトン 40.0g
を配合し、攪拌混合してハードコート層用塗料とした。紫外線硬化型樹脂としては、アロニックスUV−3701、東亜合成(株)社製を使用した。
次いで、剥離性シートの離型層上に、バーコーターを用いて、ハードコート層用塗料を塗布し、このハードコート層用塗料を100℃で予備乾燥後、紫外線照射して硬化させ、ハードコート層を形成した。
次いで、紫外線硬化型樹脂と熱可塑性樹脂の重量比が20:80、紫外線硬化型樹脂および熱可塑性樹脂からなる樹脂成分100重量部に対してジルコニアが2重量部含まれるように、
高屈折率の紫外線硬化型樹脂 12.0g
熱可塑性樹脂 53.3g
光開始剤 0.6g
30%ジルコニア分散液 2.0g
ジアセトンアルコール 15.0g
メチルエチルケトン 19.1g
を配合し、攪拌混合して接着層用塗料とした。高屈折率の紫外線硬化型樹脂としては、紫光UT−3519、固形分50%、日本合成化学工業(株)社製を使用した。また、熱可塑性樹脂としては、LR−1065、固形分45%、三菱レイヨン(株)社製を使用した。また、光開始剤としては、イルガキュア184、チバスペシャリティーケミカルズ(株)社製を使用した。
次いで、ハードコート層上に、バーコーターを用いて、この接着層用塗料を塗布し、この接着層用塗料を100℃で予備乾燥後、紫外線照射して硬化させ、接着層を形成し、ハードコート膜付基材を得た。
このようにして作製したハードコート膜付基材を、ロール転写機を用いてメチルメタクリレート−スチレン共重合樹脂板(MS樹脂板、屈折率1.53)に熱転写し、メチルメタクリレート−スチレン共重合樹脂板の表面にハードコート層を形成した。
【0052】
「実施例4」
紫外線硬化型樹脂 26.0g
30%ジルコニア分散液 46.7g
ジアセトンアルコール 10.0g
メチルエチルケトン 17.3g
を配合し、攪拌混合してハードコート層用塗料とした。紫外線硬化型樹脂としては、アロニックスUV−3701、東亜合成(株)社製を使用した。
次いで、剥離性シートの離型層上に、バーコーターを用いて、ハードコート層用塗料を塗布し、このハードコート層用塗料を100℃で予備乾燥後、紫外線照射して硬化させ、ハードコート層を形成した。
次いで、紫外線硬化型樹脂と熱可塑性樹脂の重量比が20:80、紫外線硬化型樹脂および熱可塑性樹脂からなる樹脂成分100重量部に対してジルコニアが54重量部含まれるように、
紫外線硬化型樹脂 3.9g
熱可塑性樹脂 34.6g
30%ジルコニア分散液 35.0g
ジアセトンアルコール 15.0g
メチルエチルケトン 11.5g
を配合し、攪拌混合して接着層用塗料とした。紫外線硬化型樹脂としては、アロニックスUV−3701、東亜合成(株)社製を使用した。また、熱可塑性樹脂としては、LR−1065、固形分45%、三菱レイヨン(株)社製を使用した。
次いで、ハードコート層上に、バーコーターを用いて、この接着層用塗料を塗布し、この接着層用塗料を100℃で予備乾燥後、紫外線照射して硬化させ、接着層を形成し、ハードコート膜付基材を得た。
このようにして作製したハードコート膜付基材を、ロール転写機を用いてポリカーボネート板(PC板、屈折率1.58)に熱転写し、ポリカーボネート板の表面にハードコート層を形成した。
【0053】
「実施例5」
剥離性シートの離型層上に、バーコーターを用いて、帯電防止付ハードコート層用塗料として、紫外線硬化型樹脂(スミセファインR−310、住友大阪セメント(株)社製)を塗布し、この帯電防止付ハードコート層用塗料を60℃で予備乾燥後、紫外線照射して硬化させ、ハードコート層を形成した。
次いで、紫外線硬化型樹脂と熱可塑性樹脂の重量比が30:70、紫外線硬化型樹脂および熱可塑性樹脂からなる樹脂成分100重量部に対してジルコニアが2重量部含まれるように、
高屈折率の紫外線硬化型樹脂 18.0g
熱可塑性樹脂 46.7g
光開始剤 0.9g
30%ジルコニア分散液 2.0g
ジアセトンアルコール 15.0g
メチルエチルケトン 19.4g
を配合し、攪拌混合して接着層用塗料とした。高屈折率の紫外線硬化型樹脂としては、紫光UT−3519、固形分50%、日本合成化学工業(株)社製を使用した。また、熱可塑性樹脂としては、LR−1065、固形分45%、三菱レイヨン(株)社製を使用した。また、光開始剤としては、イルガキュア184、チバスペシャリティーケミカルズ(株)社製を使用した。
次いで、ハードコート層上に、バーコーターを用いて、この接着層用塗料を塗布し、この接着層用塗料を100℃で予備乾燥後、紫外線照射して硬化させ、接着層を形成し、ハードコート膜付基材を得た。
このようにして作製したハードコート膜付基材を、ロール転写機を用いてメチルメタクリレート−スチレン共重合樹脂板(MS樹脂板、屈折率1.53)に熱転写し、メチルメタクリレート−スチレン共重合樹脂板の表面にハードコート層を形成した。
【0054】
「比較例1」
剥離性シートの離型層上に、バーコーターを用いて、帯電防止付ハードコート層用塗料として、紫外線硬化型樹脂(スミセファインR−308、住友大阪セメント(株)社製)を塗布し、この帯電防止付ハードコート層用塗料を60℃で予備乾燥後、紫外線照射して硬化させ、ハードコート層を形成した。
次いで、ハードコート層上に、バーコーターを用いて、アクリル樹脂とイソシアネート樹脂の混合物を塗布し、プライマー層を形成した。
次いで、プライマー層上に、バーコーターを用いて、熱可塑性樹脂(LR−1065、固形分45%、三菱レイヨン(株)社製、)30gをメチルエチルケトン70gに溶解して調製した接着層用塗料を塗布し、この接着層用塗料を100℃で乾燥、硬化させ、接着層を形成し、ハードコート膜付基材を得た。
このようにして作製したハードコート膜付基材を、ロール転写機を用いてポリカーボネート板(PC板、屈折率1.58)に熱転写し、ポリカーボネート板の表面にハードコート層を形成した。
【0055】
「評価」
以上により得られた実施例1〜5および比較例1それぞれのハードコート層が形成されたプラスチック基材の密着性、外観、全光線透過率、へーズ値、表面抵抗率、鉛筆硬度の各評価項目について、次の方法を用いて評価した。
(1)密着性
日本工業規格JIS K 5600「塗料一般試験方法」の碁盤目剥離法の操作に準拠して、ハードコート層の表面にカッターナイフで1mm間隔の線を縦6本、横6本引き、合計25個の升目を形成し、その上に24mm幅のセロハンテープを密着させ、素早くこのセロハンテープを60度方向に強制剥離した。
【0056】
(2)外観
ハードコート層が形成されたプラスチック基材の外観を目視により観察し、干渉ムラの有無により外観の評価を行った。評価の基準を次のように三段階とした。干渉ムラがほとんどない場合を○、干渉ムラが多い場合を×とした。
【0057】
(3)全光線透過率
日本工業規格JIS K 7105「プラスチックの光学的特性試験方法」に準拠して、ハードコート層が形成されたプラスチック基材の全光線透過率を測定した。
(4)ヘーズ値
日本工業規格JIS K 7105「プラスチックの光学的特性試験方法」に準拠して、ハードコート層が形成されたプラスチック基材のヘーズ値を測定した。
【0058】
(5)表面抵抗率
日本工業規格JIS K 6911「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に準拠して、ハードコート層が形成されたプラスチック基材の表面抵抗率を測定した。
(6)鉛筆硬度
日本工業規格JIS K 5600「塗料一般試験方法」に準拠して、プラスチック基材、および、ハードコート層が形成されたプラスチック基材の鉛筆硬度を測定した。
実施例1〜5および比較例1のハードコート膜付基材の組成を表1に、評価結果を表2および表3に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
【表3】

【0062】
実施例1〜5は、紫外線硬化型樹脂20重量%以上かつ50重量%以下含有し、残部が熱可塑性樹脂である接着層用塗料を用いて形成した接着層を備えてなり、ハードコート層と接着層との間にプライマー層が形成されていないハードコート膜付基材を用いたので、密着性に優れるとともに、干渉ムラが生じることなく、外観が良好であった。また、プラスチック基材などの被転写材に対してハードコート層と接着層の屈折率をほぼ等しくすることができた。さらに、耐擦傷性、耐汚染性に優れたものであった。
【0063】
これに対して、比較例1は、接着層が熱可塑性樹脂からなり、ハードコート層と接着層との間にプライマー層が形成されてなるハードコート膜付基材を用いたので、密着性に優れるものの、干渉ムラが多く生じ、外観が不良であった。また、プラスチック基材などの被転写材に対してハードコート層と接着層の屈折率を等しくすることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の接着層用塗料は、紫外線硬化型樹脂を5重量%以上かつ50重量%以下含有し、残部が熱可塑性樹脂である接着層用塗料を用いて接着層を形成することにより、プライマー層を設けることなく、プラスチック基材とハードコート層との高い密着性を得るとともに、接着層の屈折率を調整可能とすることにより、ハードコート層が転写されたプラスチック基材の表面に生じる干渉ムラを抑制することができるから、液晶ディスプレイ(LCD)などの表示装置に適用可能であることはもちろんのこと、屋外表示板などの建材にも適用可能であり、その効果は大である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第一の実施形態の転写用ハードコート膜を示す概略断面図である。
【図2】本発明の第二の実施形態の転写用ハードコート膜を示す概略断面図である。
【図3】本発明の第三の実施形態のハードコート膜付基材を示す概略断面図である。
【図4】本発明の第三の実施形態のハードコート膜付基材を用いて、転写用ハードコート膜を熱転写し、プラスチック基材などの被転写材の一主面にハードコート層を形成する方法を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0066】
1,5 転写用ハードコート膜
2 ハードコート層
3 接着層
4 離型層
6 基材
10 ハードコート膜付基材
20 プラスチック基材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線硬化型樹脂を5重量%以上かつ50重量%以下含有し、残部が熱可塑性樹脂であることを特徴とする接着層用塗料。
【請求項2】
前記紫外線硬化型樹脂および前記熱可塑性樹脂からなる樹脂成分100重量部に対して、無機フィラーが2重量部以上かつ67重量部以下の割合で含まれることを特徴とする請求項1に記載の接着層用塗料。
【請求項3】
前記無機フィラーの平均一次粒子径は5nm以上かつ100nm以下であることを特徴とする請求項2に記載の接着層用塗料。
【請求項4】
ハードコート層と、該ハードコート層の一主面上に請求項1ないし3のいずれか1項に記載の接着層用塗料を用いて形成された接着層とを備えてなることを特徴とする転写用ハードコート膜。
【請求項5】
前記ハードコート層の他の一主面上に形成された離型層を備えてなることを特徴とする請求項4に記載の転写用ハードコート膜。
【請求項6】
基材と、該基材の一主面に形成された請求項4に記載の転写用ハードコート膜とを備えてなることを特徴とするハードコート膜付基材。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−182819(P2006−182819A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−375279(P2004−375279)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】