説明

接着性積層フィルム

【課題】 耐熱性、高周波対応、フレキシブル性をより高いレベルで具備し、かつ一定厚さ以下の厚さを有するポリイミドを絶縁層として用いて絶縁性の信頼性と軽少(軽薄)化をも達成し得る接着性積層フィルム提供すること。
【解決手段】 引張弾性率が6GPa以上、ガラス転移温度が150℃以上、厚さが1〜10μmの高分子フィルムの少なくとも片面に厚みが5μm以下の接着剤層を形成してなることを特徴とする接着性積層フィルムであり、好ましくは高分子フィルムがポリイミドベンゾオキサゾールフィルムである接着性積層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板などにおいて絶縁層を形成するために使用される接着性積層フィルム、あるいは薄い絶縁層を積層することで多層構成とした多層プリント配線板の製造に使用される接着性積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板などにおいて絶縁層を形成するために接着性フィルムを使用する場合、ガラスファイバーの布に未硬化エポキシ樹脂などを含浸せしめた所謂プレプリグが使用されてきた。またガラスファイバー布の代わりにアラミド繊維の布帛を使用したものも使用されている。これらのプレプリグは布の厚みが厚く近年要求される軽少化に沿いかねるものであった。
近年、電子機器の高機能化、高性能化、小軽化が進んでおり、それらに伴って用いられる電子部品に対する小型化、軽量化が求められている。そのため、多層プリント配線板や半導体素子パッケージ方法やそれらを実装する配線材料または配線部品も、より高密度、高機能かつ高性能なものが求められるようになっている。半導体パッケージ、COLおよびLOCパッケージ、MCMなどの高密度実装材料や多層フレキシブルプリント配線板等のFPC材料として好適に用いることのできる、耐熱性、電気信頼性、接着性、絶縁性に優れた材料が求められている。
プリント配線板などにおいて絶縁層を形成し、かつその絶縁層を形成した結果軽少(軽薄)化を達成するためにするため種々の提案がなされている。
比較的耐熱性に優れた種々のエポキシ樹脂を絶縁層として使用することが知られているが、不均一フローなどによる絶縁層の不均一性や樹脂汚染などさらに誘電正接が大きい意からの絶縁性の信頼性欠如の課題を有する。
【0003】
前記課題を解決せんとして、シリコーン共重合ポリイミド樹脂とエポキシ樹脂からの樹脂を接着剤層厚みが50μmで仮支持体に設けた接着性フィルムが提案されている(特許文献1参照)。この方法においても、回路(導体)間への浸透性において優れてはいるが、前記の課題が全面的に解決しうるものではなく、絶縁層の一定厚み保障が得られるものではなく、特性インピーダンスの厳密保障が必要な高周波回路基盤などの絶縁層形成には課題を有する。
また、熱可塑性ポリイミド樹脂を使用することも提案されている(特許文献2、3、4参照)。
さらに、ポリイミドフィルムの少なくとも片面に熱可塑性ポリイミドと熱硬化性樹とからなる接着剤層を設けたフィルムも提案されている(特許文献5参照)。
【特許文献1】特開2003−089784号公報
【特許文献2】特開2000−143981号公報
【特許文献3】特開2000−144092号公報
【特許文献4】特開2003−306649号公報
【特許文献5】特開2003−011308号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の特許文献2から特許文献5などにおいて接着剤層としての厚さおよびフィルムの厚さに対する考慮がなされておらず、軽少(軽薄)化を達成するための課題を解決せんとすることを掲げてあっても、ポリイミドフィルムの厚さおよび接着剤層の厚みを限定するものではない。
接着性積層フィルムを作製する際、フィルムの片面または両面に接着剤層を形成する基材フィルムが薄いフィルムの場合には、フィルムの取り扱いが極めて困難となる。薄くても取り扱いが可能なフィルムとしては、機械的物性が重要であり特に引張弾性率が重要となる。本発明は、耐熱性、高周波対応、フレキシブル性をより高いレベルで具備し、かつ一定厚さ以下の厚さを有するポリイミドを絶縁層として用いて絶縁性の信頼性と軽少(軽薄)化をも達成した接着性積層フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意検討した結果、特定物性を有する一定厚さ以下のポリイミドフィルムに一定厚さ以下の接着剤層を積層することによって、耐熱性、高周波対応、フレキシブル性をより高いレベルで具備し、かつ一定厚さ以下の厚さを有するポリイミドを絶縁層として用いて絶縁性の信頼性と軽少(軽薄)化をも達成した接着性積層フィルムを提供せんとするものである。
すなわち本発明は、引張弾性率が6GPa以上、ガラス転移温度が150℃以上、厚みが1μm以上10μm以下の高分子フィルムの少なくとも片面に厚みが5μm以下の接着剤層を形成してなることを特徴とする接着性積層フィルムであり、また高分子フィルムがポリイミドフィルムである前記の接着性積層フィルムであり、また高分子フィルムがポリベンゾオキサゾールフィルムである前記の接着性積層フィルムであり、また総厚みが15μm以下である前記の接着性積層フィルムである。
さらにまた、高分子フィルムが、該高分子フィルム厚みの10分の1以下の体積平均粒子径を有する滑剤を含む高分子フィルムである前記の接着性積層フィルムであり、また高分子フィルムが、線膨張係数(CTE)10ppm/℃以下である高分子フィルムである前記の接着性積層フィルムであり、また高分子フィルムが、吸水率2.5%以下である高分子フィルムである前記の接着性積層フィルムである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の接着性積層フィルムは、特定の機械的物性を持つ薄い高分子フィルム好ましくはポリイミドフィルムを使用することで、接着剤層を少なくとも片面に形成する際の取り扱い性にも優れ効率よく生産ができ、接着剤層によって回路間への浸透充填も達成し得て、特定物性高分子フィルム好ましくはポリイミドフィルムを使用しているので、絶縁層形成時の加圧加熱成型時においてもこれらの高分子フィルムの変形が抑制されかつ接着剤層への加圧均等性が向上して前記接着剤層の回路間への浸透が効率よく達成でき、高分子フィルムの一定厚さによる絶縁層厚さの保障による耐熱性絶縁保障が可能な、しかも総厚さが極めて小さいために多層プリント配線板などの層間絶縁に使用した場合に得られる多層プリント配線板などの軽少(軽薄)化を達成しうるものであり、電子機器の高機能化、高性能化、軽小化に有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の高分子フィルムは前記の引張弾性率が6GPa以上、ガラス転移温度が150℃以上、厚みが10μm以下1μm以上の特性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば全芳香族ポリアミドフィルム、全芳香族ポリエステルフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリイミドフィルムなどが挙げられる。中でも電気絶縁性、製造のし易さ、高引張弾性率、150℃以上のガラス転移温度、一定厚さのフィルムを同時に満足し得る点から、ポリイミドフィルムが好ましく、ポリイミドベンゾオキサゾールフィルムが最も好ましい。
本発明における高分子フィルムは、厚みが10μm以下で1μm以上の必要があり、1μmに満たない場合は、製造の困難さと取り扱いの困難さと絶縁性保障の点から課題が多い。また10μmを超える場合は軽少化に効果が少なく、絶縁層として本発明の接着性積層フィルムを加圧加熱成型する際に、回路形成されるなどした例えばプリント配線板の凹凸に順応し得なくなるなどの致命的欠点を保有することになる。
【0008】
本発明の高分子フィルムは、ガラス転移温度が150℃以上である必要があり、好ましくは210℃以上、さらに好ましくは270℃以上または明確なガラス転移温度を高温においても示さないものである。150℃に満たないガラス転移温度を有する場合には、絶縁層として本発明の接着性積層フィルムを加圧加熱成型する際にかかる温度によって熱可塑性接着剤層と同様挙動を示して絶縁性保障のための所定絶縁層厚さを維持し得なくなる。
ガラス転移温度が150℃以上であることで、絶縁層として本発明の接着性積層フィルムを加圧成型する際に、例えばプリント配線板の凹凸に順応し得、しかも凸面(主として導体部や回路部)においても高分子フィルム厚みだけの絶縁層厚みを保障しうる接着性積層フィルムとなり得る。
本発明の高分子フィルムは、引張弾性率が6GPa以上であることが必須であり、所定範囲の薄いフィルムを製造し、接着剤層を積層する工程などでの取り扱うなどの点からして6GPaに満たない場合は、製造、取り扱いともに困難となる。
本発明における高分子フィルムの引張弾性率は、6GPa以上が必須であり好ましくは7GPa以上さらに好ましくは8GPa以上である。本発明における高分子フィルムの引張弾性率の上限は特に限定されるものではないが、取り扱い上最低限の柔軟性を維持しておく点から30GPa程度である。
【0009】
本発明で好ましく使用されるポリイミドフィルムは、好ましくは芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸無水物類とを反応させて得られるポリイミドからなるものである。
溶媒中で芳香族ジアミン類と芳香族テトラカルボン酸無水物類とを開環重付加反応に供してポリアミド酸溶液を得て、次いで、このポリアミド酸溶液からグリーンフィルムを成形した後に脱水縮合(イミド化)することによりポリイミドフィルムを得ることができる。
本発明においては、特にこれら芳香族ジアミン類の中でベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類が好適なジアミンであり、引張弾性率が6GPa以上、ガラス転移温度が150℃以上、厚みが1μm以上10μm以下のフィルムを得ることが容易となる。
本発明で特に好適に用いられるベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類としては、具体的には以下のものが挙げられる。
【0010】
【化1】

【0011】
【化2】

【0012】
【化3】

【0013】
【化4】

【0014】
【化5】

【0015】
【化6】

【0016】
【化7】

【0017】
【化8】

【0018】
【化9】

【0019】
【化10】

【0020】
【化11】

【0021】
【化12】

【0022】
【化13】

【0023】
これらの中でも、合成のし易さの観点から、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールの各異性体が好ましい。ここで、「各異性体」とは、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールが有する2つアミノ基が配位位置に応じて定められる各異性体である(例;上記「化1」〜「化4」に記載の各化合物)。
これらのジアミンは、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。本発明においては、前記ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミンを70モル%以上使用することが好ましい。
【0024】
前記ジアミンに限定されず下記のジアミン類を使用することができる。これらのジアミン類としては、例えば、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、
【0025】
3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、
【0026】
1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノシ)フェニル]ブタン、2,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、
【0027】
1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、
【0028】
2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−トリフルオロメチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−フルオロフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−メチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−シアノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、
【0029】
3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−ビフェノキシベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、2,6−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾニトリルおよび上記芳香族ジアミンにおける芳香環上の水素原子の一部もしくは全てがハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基またはアルコキシル基、シアノ基、またはアルキル基またはアルコキシル基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基またはアルコキシル基で置換された芳香族ジアミン等が挙げられる。
【0030】
本発明の高分子フィルムとして好ましく使用されるポリイミドフィルムの製造に使用される酸性分として好ましいのは、テトラカルボン酸無水物であり、芳香族テトラカルボン酸無水物類である。
芳香族テトラカルボン酸無水物類としては、具体的には、以下のものが挙げられる。
【0031】
【化14】

【0032】
【化15】

【0033】
【化16】

【0034】
【化17】

【0035】
【化18】

【0036】
【化19】

【0037】
これらのテトラカルボン酸二無水物は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
本発明においては、全テトラカルボン酸二無水物の30モル%未満であれば下記に例示される非芳香族のテトラカルボン酸二無水物類を一種または二種以上、適宜併用してもよい。
非芳香族のテトラカルボン酸二無水物類としては、例えば、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ペンタン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサ−1−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−エチルシクロヘキサン−1−(1,2),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、
【0038】
ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらのテトラカルボン酸二無水物は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0039】
芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸無水物類とを重合してポリアミド酸を得るときに用いる溶媒は、原料となるモノマーおよび生成するポリアミド酸のいずれをも溶解するものであれば特に限定されないが、極性有機溶媒が好ましく、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックアミド、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、スルホラン、ハロゲン化フェノール類等があげられる。
【0040】
重合反応によって得られるポリアミド酸溶液に占めるポリアミド酸の濃度は、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%であり、前記溶液の粘度はブルックフィールド粘度計による測定(25℃)で、送液の安定性の点から、好ましくは10〜2000Pa・sであり、より好ましくは100〜1000Pa・sである。
本発明におけるポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)は、特に限定するものではないが、引張弾性率、引張破断強度、引張破断伸度を向上するために3.0以上が好ましく、4.0以上がさらに好ましく、なおさらに5.0以上が好ましい。
【0041】
本発明における高分子フィルムにおいては、そのフィルム中に滑剤を添加・含有せしめて、フィルム表面に微細な凹凸を付与しフィルムの接着性などを改善することが好ましい。滑剤としては、無機や有機の0.03μm〜3μm程度の平均粒子径を有する微粒子が使用でき、具体例として、酸化チタン、アルミナ、シリカ、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、燐酸水素カルシウム、ピロ燐酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、粘土鉱物などが挙げられる。
これらの微粒子はフィルムに対して好ましくは、0.20〜2.0質量%の範囲で含有させることが必要である。微粒子の含有量が0.20質量%未満であるときは、接着性の向上がそれほどなく好ましくない。一方2.0質量%を超えると表面凹凸が大きくなり過ぎ接着性の向上が見られても平滑性の低下を招くなどによる課題を残し好ましくない。
【0042】
重合反応により得られるポリアミド酸溶液から、ポリイミドフィルムを形成する方法としては、ポリアミド酸溶液を支持体上に塗布して乾燥するなどによりグリーンフィルムを得て、次いで、グリーンフィルムを熱処理に供することでイミド化反応させる方法が挙げられる。
ポリアミド酸溶液を塗布する支持体は、ポリアミド酸溶液をフィルム状に成形するに足る程度の平滑性、剛性を有していればよく、表面が金属、プラスチック、ガラス、磁器などであるドラムまたはベルト状回転体などが挙げられる。中でも、支持体の表面は好ましくは金属であり、より好ましくは錆びなくて耐腐食に優れるステンレスである。支持体の表面にはCr、Ni、Snなどの金属メッキを施してもよい。支持体表面は必要に応じて鏡面にする、あるいは梨地状に加工することができる。またポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムなどの高分子フィルムを支持体として用いることも可能である。
支持体へのポリアミド酸溶液の塗布は、スリット付き口金からの流延、押出機による押出し、スキージコーティング、リバースコーティング、ダイコーティング、アプリケータコーティング、ワイヤーバーコーティング等を含むが、これらに限られず、従来公知の溶液の塗布手段を適宜用いることができる。
【0043】
ポリアミド酸溶液をフィルム状に成形して前駆体フィルム(グリーンフィルム)を得て、これをイミド化して、ポリイミドフィルムを得る。その具体的なイミド化方法としては、従来公知のイミド化反応を適宜用いることが可能である。例えば、閉環触媒や脱水剤を含まないポリアミド酸溶液を用いて、加熱処理に供することでイミド化反応を進行させる方法(所謂、熱閉環法)やポリアミド酸溶液に閉環触媒および脱水剤を含有させておいて、上記閉環触媒および脱水剤の作用によってイミド化反応を行わせる、化学閉環法を挙げることができるが、ポリイミドフィルム表裏面の表面面配向度の差が小さいポリイミドフィルムを得るためには、熱閉環法が好ましい。
熱閉環法の加熱最高温度は、100〜500℃が例示され、好ましくは200〜480℃である。加熱最高温度がこの範囲より低いと充分に閉環されづらくなり、またこの範囲より高いと劣化が進行し、フィルムが脆くなりやすくなる。より好ましい態様としては、150〜250℃で3〜20分間処理した後に350〜500℃で3〜20分間処理する2段階熱処理が挙げられる。
化学閉環法では、ポリアミド酸溶液を支持体に塗布した後、イミド化反応を一部進行させて自己支持性を有するフィルムを形成した後に、加熱によってイミド化を完全に行わせることができる。この場合、イミド化反応を一部進行させる条件としては、好ましくは100〜200℃による3〜20分間の熱処理であり、イミド化反応を完全に行わせるための条件は、好ましくは200〜400℃による3〜20分間の熱処理である。
【0044】
本発明における高分子フィルムの線膨張係数は、好ましくは10ppm/℃以下、さらに好ましくは8ppm/℃以下、なお好ましくは7ppm/℃以下である。線膨張係数がこの範囲を超えると積層基板の寸法安定性が低下する。線膨張係数の下限は−20ppm/℃程度である。線膨張係数が下限より小さい場合には、位置合わせが困難になる。
本発明における高分子フィルムの吸水率は好ましくは2.5質量%以下であり、さらに好ましくは2.0質量%以下である。吸水率は150℃にて1時間以上乾燥させたフィルムを、25℃の純水にフィルムを24時間浸績し、その前後の重量増加より求めるものである。吸水率はこの範囲を超えると積層加工時に気泡が発生する場合がある。また吸水率の下限は特に限定されず、理論的には0.0質量%であることが望まれる。
【0045】
本発明における接着剤層としては、その厚みが5μm以下であって、絶縁性において特に難点を有さないものであれば、限定されるものではないが、好ましくは熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられ、またこれら樹脂の一種以上の樹脂ブレンドが挙げられる。接着剤層には必要に応じて有機、無機のフィラー、難燃剤などを添加することが出来る。
【0046】
本発明の接着性積層フィルムにおいては、基材である高分子フィルムに接着剤層を積層するものであるが、接着剤層が極めて薄いためにその積層や、基材フィルムへの塗布が困難であることもある、この場合においてポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に離形剤を塗布したフィルムなどの離形性フィルムに接着剤層をまず形成し、その接着剤層上に基材高分子フィルムを積層し、さらにその接着剤層と積層されていない面に接着剤層を形成するかまたは離形性フィルムに接着剤層を形成した接着剤層面を積層するなどの手段を採用してもよい。これらの接着性積層フィルムは使用時に、離形性フィルムを適宜剥離すればよい。
【実施例】
【0047】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例における物性の評価方法は以下の通りである。
1.ポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)
ポリマー濃度が0.2g/dlとなるようにN−メチル−2−ピロリドンに溶解した溶液をウベローデ型の粘度管により30℃で測定した。
【0048】
2.高分子フィルムの厚さ
マイクロメーター(ファインリューフ社製、ミリトロン1245D)を用いて測定した。
【0049】
3.高分子フィルムの引張弾性率、引張破断強度および引張破断伸度
測定対象の高分子フィルムを、流れ方向(MD方向)および幅方向(TD方向)にそれぞれ100mm×10mmの短冊状に切り出したものを試験片とした。引張試験機(島津製作所製、オートグラフ(R) 機種名AG−5000A)を用い、引張速度50mm/分、チャック間距離40mmの条件で、MD方向、TD方向それぞれについて、引張弾性率、引張破断強度及び引張破断伸度を測定した。
【0050】
5.高分子フィルムの融点、ガラス転移温度
測定対象の高分子フィルムについて、下記条件で示差走査熱量測定(DSC)を行い、融点(融解ピーク温度Tpm)とガラス転移点(Tmg)をJIS K 7121に準拠して求めた。
装置名 ; MACサイエンス社製DSC3100S
パン ; アルミパン(非気密型)
試料重量 ; 4mg
昇温開始温度 ; 30℃
昇温終了温度 ; 600℃
昇温速度 ; 20℃/min
雰囲気 ; アルゴン
雰囲気 ; アルゴン
【0051】
4.高分子フィルムの線膨張係数(CTE)
測定対象の高分子フィルムについて、下記条件にてMD方向およびTD方向の伸縮率を測定し、30℃〜45℃、45℃〜60℃、…と15℃の間隔での伸縮率/温度を測定し、この測定を300℃まで行い、全測定値の平均値をCTEとして算出した。MD方向は縦方向、TD方向は幅方向を意味する。
装置名 ; MACサイエンス社製TMA4000S
試料長さ ; 20mm
試料幅 ; 2mm
昇温開始温度 ; 25℃
昇温終了温度 ; 400℃
昇温速度 ; 5℃/min
雰囲気 ; アルゴン
【0052】
5.高分子フィルムの吸水率
高分子フィルムを約10cm×10cmにカットして試験とした。まず試験片を150℃のドライオーブンにて1時間乾燥し、直後にその質量を測定し初期値とし、ついで25℃のイオン交換水に試験片を24時間入れ、その後に表面の水滴を十分に拭き取って再秤量し吸水値とした。下記式より吸水率を求めた。
吸水率 =100×( 吸水値 − 初期値 )/(初期値) [wt%]
【0053】
実施例1
(無機粒子の予備分散)
アモルファスシリカの球状粒子シーホスターKE−P30(日本触媒株式会社製)を2.23質量部、N−メチル−2−ピロリドン1000質量部を容器に入れ、ホモジナイザーT−25ベイシック(IKA Labor technik社製)にて、回転数10000回転/分で1分間攪拌し予備分散液を得た。予備分散液中の平均粒子径は0.38μm、標準偏差0.032μm、CV値8.4%、であり、球形度0.98であった。
(ポリアミド酸溶液の調製)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、500質量部の十分に乾燥した5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾールを入れた。次いで、9000質量部のN−メチル−2−ピロリドンを加えて完全に溶解させてから、上述の無機粒子を分散してなる予備分散液を1000質量部加え、さらに485質量部のピロメリット酸二無水物を加えて、25℃にて48時間攪拌すると、褐色の粘調なポリアミド酸溶液が得られた。この還元粘度(ηsp/C)は5.2であった。
【0054】
(ポリイミドフィルムの作製)
得られたポリアミド酸溶液をステンレスベルトにコーティングし(スキージ/ベルト間のギャップは、100μm)、90℃にて60分間乾燥した。乾燥後に自己支持性となったポリアミド酸フィルムをステンレスベルトから剥離して、厚さ15μmのグリーンフィルムを得た。
得られたグリーンフィルムを、窒素置換された連続式の熱処理炉に通し、第1段が180℃で3分、昇温速度4℃/秒で昇温して第2段として460℃で5分の条件で2段階の加熱を施して、イミド化反応を進行させた。その後、5分間で室温にまで冷却することで、褐色を呈する実施例1のポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムの厚みが10μm、MD方向引張弾性率が7.9GPa、ガラス転移温度が270℃以上であって測定不能であり、吸水率は1.9%、CTEは4ppm/℃であった。
(接着剤層の積層)
有機極性溶媒としてのN,N−ジメチルアセトアミド、ジアミン化合物として1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンと3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニルとをモル比で9:1、エステルテトラカルボン酸として3,3’,4,4’−エチレングリコールベンゾエートテトラカルボン酸二無水物を使用してポリアミド酸重合体の溶液を得た。
このポリアミド酸重合体溶液を減圧加熱し、熱可塑性ポリイミドを得た。この熱可塑性ポリイミドを8g、熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂)としてのエピコート1032H60を10g、硬化剤としての4,4’−ジアミノジフェニルエーテル3.0gを、有機溶媒としてのジオキソラン91.0gに添加し、攪拌して溶解させた。これにより、接着剤溶液を得た。
得られた溶液を片面に離形層を形成した12.5μm厚さの離形性ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面上に流延し、60℃で2分間乾燥し厚さ2.5μmの接着剤層を形成した、この得られたフィルム2枚を接着剤層と、前記で得られたポリイミドフィルムの両面とを重ね合わせ積層して接着性積層フィルムを得た。この積層時においてポリイミドフィルムの取り扱いにおいてなんら問題が発生しなかった。
得られた接着性積層フィルムの高分子フィルムと接着剤層との総厚みは15μmであった。
【0055】
実施例2
(ポリイミドフィルムの作製)
実施例1と同様にして厚み5μmのポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルのMD方向引張弾性率が9.2GPa、ガラス転移温度が270℃以上であって測定不能であり、吸水率は1.9%、CTEは1ppm/℃であった。
(接着剤層の積層)
テレフタル酸ジメチル;78質量部、イソフタル酸ジメチル;68質量部、アジピン酸;34質量部、2−メチル−1,3−プロパンジオール;99質量部、1,4−ブタンジオール;99質量部、からなる共重合ポリエステル樹脂(a)を得た。得られた共重合ポリエステル樹脂の数平均分子量は15000、酸価150m当量/kgであった。
ポリエステル(a);100質量部、2,2−ジメチロールブタン酸(DMBA);9質量部、ヘキサメチレンジイソシアネート;8質量部から、メチルエチルケトン、トルエンを使用し固形分濃度を30質量%に調整し、ポリエステル・ポリウレタン樹脂(1)の溶液を得た。得られたポリエステル・ポリウレタン樹脂の酸価は520m当量/kg、数平均分子量は16000、分子量5000以下の低分子量成分は全体の5.6質量%、ガラス転位温度は11℃であった。
得られたポリエステル・ポリウレタン樹脂の30質量%溶液100質量部に東都化成(株)製クレゾールノボラック型エポキシ樹脂YDCN703を15質量部加え、十分に混合し接着剤(A)溶液とした。
得られた溶液を片面に離形層を形成した12.5μm厚さの離形性ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面上に流延し、80℃で12分間乾燥し厚さ2.5μmの接着剤層を形成した、この得られたフィルム2枚それぞれを、接着剤層と、前記で得られたポリイミドフィルムの両面とを重ね合わせ積層して接着性積層フィルムを得た。この積層時においてポリイミドフィルムの取り扱いにおいてなんら問題が発生しなかった。得られた接着性積層フィルムの高分子フィルムと接着剤層との総厚みは10μmであった。
【0056】
実施例3
実施例1と同様にして厚み7μmのポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルの引張弾性率が8.1GPa、ガラス転移温度が270℃以上であって測定不能であり、吸水率は1.8%、CTEは2ppm/℃であった。
さらにこのポリイミドフィルムに実施例2と同様にして両面に接着剤層を積層した。この積層時においてポリイミドフィルムの取り扱いにおいてなんら問題が発生しなかった。得られた接着性積層フィルムの高分子フィルムと接着剤層との総厚みは12μmであった。
【0057】
比較例1
実施例1と同様にして厚み12.5μmのポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルの引張弾性率が6.8GPa、ガラス転移温度が270℃以上であって測定不能であり、吸水率は2.0%、CTEは7ppm/℃であった。
さらにこのポリイミドフィルムに実施例2と同様にして両面に接着剤層を積層した。この積層時においてポリイミドフィルムの取り扱いにおいてなんら問題が発生しなかった。得られた接着性積層フィルムの高分子フィルムと接着剤層との総厚みは17.5μmであった。
【0058】
比較例2
(ポリアミド酸溶液の調製)
ジアミンとして3,3’−ジアミノジフェニルエーテルを216質量部、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを216質量部、テトラカルボン酸としてピロメリット酸二無水物を436質量部、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン4340質量部を使用し、先に得た予備分散液を加えて、褐色の粘調なポリアミド酸溶液を得た。この還元粘度(ηsp/C)は2.5であった。
(ポリイミドフィルムの作製)
得られたポリアミド酸溶液をステンレスベルトにコーティングし(スキージ/ベルト間のギャップは、100μm)、110℃にて60分間乾燥した。乾燥後に自己支持性となったポリアミド酸フィルムをステンレスベルトから剥離して、厚さ11μmのグリーンフィルムを得た。
得られたグリーンフィルムを、窒素置換された連続式の熱処理炉に通し、第1段が180℃で3分、昇温速度4℃/秒で昇温して第2段として460℃で5分の条件で2段階の加熱を施して、イミド化反応を進行させた。その後、5分間で室温にまで冷却することで、褐色を呈する比較例2のポリイミドフィルムを得たが、イミド化過程においてしわの発生や捩れが発生した。得られたポリイミドフィルムの厚みが7μm、MD方向引張弾性率が3.6GPa、ガラス転移温度が270℃以上であって測定不能であり、吸水率は2.7%、CTEは35ppmであった。
(接着剤層の積層)
得られたポリイミドフィルムに実施例2と同様にして両面に接着剤層を積層した。この積層時においてポリイミドフィルムの取り扱いにおいてフィルムの捩れ、しわの発生などの問題が発生した。得られた接着性積層フィルムの高分子フィルムと接着剤層との総厚みは12μmであった。
【0059】
(接着性積層フィルムの評価)
実施例3で得た厚さ7μmのポリイミドフィルムの両面を、アルゴン/酸素=85:15(質量部比)のガス中でプラズマ処理し、各面全面にニッケル・クロム(80:20質量部比)を100Åの厚さでスパッタリングして形成し、次いで同じく銅を1000Åの厚さでその上にスパッタリングして形成し、両面導電化フィルムを作製した。
作製した両面導電化フィルムの片面に液状レジストを用いて膜厚6μmのネガレジストを形成し、電気鍍金で3μm厚みで銅を厚付けし、レジストを剥離し、フラッシュエッチングとニッケルリムーバーで導電化層を除去し、線間/線幅が10μm/10μmの微細線を含むLCDドライバ搭載用を想定した5cm×5cmのテスト用回路パターンを形成した。裏面には同様にして、5mm角の正方形パターンをパターン間0.5mmで格子状に形成し、テスト用回路基板を同様にして多数作製した。パターンの面積密度は表裏とも50%である
作製したテスト用回路基板を3枚用意し、各基板間と上下とに各実施例、比較例の接着性積層フィルムを挟み、ホットプレスにて積層を施し7層のテスト用多層基板を作製した。(図1、図2参照)
作製したテスト用多層基板を用いて接着強度などの次の評価を行った。
【0060】
1.接着強度
テスト用多層基板を2mm幅にスリットし、まず、端面より接着面が出るようにカッターナイフを用いて引張試験機でチャッキング可能な長さまで剥離した。剥離面が裏面(正方形パターン)になっている試験片を選別し、引張試験機(島津製作所製、オートグラフ(R)機種名AG−5000A)を用い、引張速度50mm/分にて90度剥離試験を行い、得られたチャートより銅箔面との接着強度、フィルム面との接着強度を読み分けた。
2.外観
定盤に乗せての観察、10倍の実体顕微鏡による拡大観察により、ソリ、歪みの有無、ならびにブリスターの発生有無、その他外観異常の観察を目視で行った。
【0061】
3.断面観察
テスト用多層基板を微細線パターンの幅方向の断面が出る方向に切断し、樹脂にて包埋し端面研磨した後に顕微鏡で拡大観察し、次の点を評価した。
(1)回路間の埋め込み性
線間100カ所についてボイドの有無を観察した。
(2)絶縁層厚みの均一性(銅箔部厚さ、フィルム部厚さ)
裏側の正方形パターンと接している側に置いて銅箔がある部分と、銅箔が無い部分の絶縁層厚みを、各10点測定し、その平均値を求めた、なお絶縁層とは、回路パターン側の高分子フィルム間の厚みとする。
(3)高分子フィルムの変形
図2に示したような高分子フィルムの変形が無いかを評価した。
その評価結果を下記表1に示す。
【0062】
【表1】

MD:フィルム長手方向、 TD:フィルム幅方向
DAMBO:5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール
3DADE:3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、
4DADE:4,4’−ジアミノジフェニルエーテル
PMDA:ピロメリット酸二無水物
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の接着性積層フィルムは、絶縁層形成時の加圧加熱成型時において基材の高分子フィルムの変形が抑制され、かつ接着剤層への加圧均等性が向上して前記接着剤層の回路間への浸透が効率よく達成できる。高分子フィルムの一定厚さによる絶縁層厚さの保障による耐熱性絶縁保障が可能な、しかも総厚さが極めて薄いために多層プリント配線板などの層間絶縁に使用した場合に得られる多層プリント配線板などの軽少(軽薄)化を達成しうるものであり、電子機器の高機能化、高性能化、軽小化に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】積層前のテスト用回路基板の構成を模式的に表す図である。
【図2】積層後のテスト用回路基板の構成を模式的に表す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引張弾性率が6GPa以上、ガラス転移温度が150℃以上、厚さが1〜10μmの高分子フィルムの少なくとも片面に厚みが5μm以下の接着剤層を形成してなることを特徴とする接着性積層フィルム。
【請求項2】
高分子フィルムがポリイミドフィルムである請求項1記載の接着性積層フィルム。
【請求項3】
高分子フィルムがポリベンゾオキサゾールフィルムである請求項1記載の接着性積層フィルム。
【請求項4】
高分子フィルムと接着剤層との総厚みが15μm以下である請求項1〜3のいずれかに記載の接着性積層フィルム。
【請求項5】
高分子フィルムが、該高分子フィルム厚さの10分の1以下の体積平均粒子径を有する滑剤を含む高分子フィルムである請求項1〜4のいずれかに記載の接着性積層フィルム。
【請求項6】
高分子フィルムが、線膨張係数(CTE)10ppm/℃以下である高分子フィルムである請求項1〜5のいずれかに記載の接着性積層フィルム。
【請求項7】
高分子フィルムが、吸水率2.5%以下である高分子フィルムである請求項1〜6のいずれかに記載の接着性積層フィルム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−116738(P2006−116738A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−304465(P2004−304465)
【出願日】平成16年10月19日(2004.10.19)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】