説明

接着用エポキシ樹脂組成物及び積層体

【解決手段】芳香核上のアルキル基置換されたジヒドロキシベンゼン類とエピハロヒドリンとの重縮合物であるエポキシ樹脂からなることを特徴とするフィルム接着用エポキシ樹脂組成物で、一液型加熱硬化であり、また、これら接着用エポキシ樹脂組成物を用いて、接着硬化されることを特徴とするポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、或いはポリイミドフィルムのいずれかフィルムの積層体。
【効果】ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリイミドフィルムに対して有効な接着力を持ち、積層物は耐久性があるものとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未処理フィルムの接着用エポキシ樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルムの接着は、その難接着性からフィルム表面を改質(コロナ処理、プライマー処理)することが一般的で、表面未処理フィルムを十分な強度で接着できるエポキシ樹脂接着剤がなかった。
【0003】
基材、プライマー層、接着剤層およびシーラント層がこの順に積層されたラミネートフィルムであって、該接着剤層を形成する接着剤がエポキシ樹脂およびエポキシ樹脂硬化剤からなるエポキシ樹脂組成物を主成分とするものでありかつ該エポキシ樹脂組成物が硬化して得られるエポキシ樹脂硬化物中にキシリレンジアミンに由来する骨格構造が40重量%以上含有され、該プライマー層がポリエステル系樹脂からなるものでありかつ該ポリエステル系樹脂のTg(ガラス転移温度)が−20℃以上100℃以下であることを特徴とするラミネートフィルムが優れたラミネート強度とガスバリア性を有することが開示されている。(特許文献1)
【0004】
(1)エポキシ樹脂、(2)硬化剤、(3)無機フィラーおよび(4)ゴム成分を必須成分として含む組成物であって、該ゴム成分が、(5)エチレン・アクリルゴムおよび(6)カルボキシル基含有ニトリルブタジエンゴムを、重量比[(5)/(6)]90/10〜20/80の割合で含むものである接着剤組成物で接着強度、半田耐熱性、保存安定性、しみ出し制御性に優れることが開示されている。(特許文献2)
【0005】
(A)数平均分子量が4,000〜40,000の範囲内にある水酸基含有ポリエステル樹脂100重量部に対し、(B)ブロック化ポリイソシアネート化合物5〜100重量部及び(C)リン酸基[−OPO(OH)(R1)、ここでR1は水酸基、フェニル基または炭素数1〜20のアルキル基である]含有樹脂1〜20重量部を含有することを特徴とするポリエステルフィルムラミネート缶用熱硬化型接着剤で、缶用素材に対する密着性だけではなく、フィルムにオーバーコートされた被膜に対しても高い密着性を有することが開示されている。(特許文献3)
【0006】
4−t−ブチルカテコールのジグリシジルエーテルと、ポリアミド樹脂、及び、ミネラルスピリットとを含有で、脂肪族炭化水素を主成分とする溶剤を用いた場合の相溶性に優れ、安全性や塗料用途における耐リフティング性が良好であると共に、硬化物の耐衝撃性及び耐食性に著しく優れる共に、更に低温硬化性にも著しく優れるエポキシ樹脂組成物が開示されている。(特許文献4)
【0007】
これらは有機溶剤を使用しているもの、ドライラミネートのもの、金属とフィルムに関するもので、無溶剤、低粘度、フィルム積層に関するものはなかった。
【0008】
【特許文献1】特開2007−136732号公報
【特許文献2】特開2003−277711号公報
【特許文献3】特開2002−256247号公報
【特許文献4】特開平11−217422号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
解決しようとする課題は、ポリエステル系、ポリイミド系未処理フィルムで高い接着力が得られるエポキシ組成物である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、フィルム接着用エポキシ樹脂組成物であって、芳香核上のアルキル基置換されたジヒドロキシベンゼン類とエピハロヒドリンとの重縮合物であるエポキシ樹脂からなることを特徴とする接着用エポキシ樹脂組成物で、難接着フィルムに対する接着力が得られる。
【0011】
請求項2の発明は、エポキシ樹脂組成物が一液型加熱硬化であることを特徴とする請求項1に記載の接着用エポキシ樹脂組成物で、難接着フィルムに対する接着力が得られる。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1に記載のフィルムが、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、或いはポリイミドフィルムであることを特徴とする請求項1乃至2いずれか記載の接着用エポキシ樹脂組成物で、接着力が得られる。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1乃至3いずれか記載の接着用エポキシ樹脂組成物を用いて、接着硬化されることを特徴とするポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、或いはポリイミドフィルムのいずれかフィルムの積層体で、高い接着力から耐久性のある積層体となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、難接着フィルムとされる未処理ポリエステル系フィルム、ポリイミド系フィルムでも接着力が高い特徴を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は低粘度であり、接着改質処理がなされていない難接着フィルムでも無溶剤一液でラミネートすることができるエポキシ樹脂組成物及びその積層物に関するものである。
【0016】
主成分
本発明に用いる芳香核上のアルキル基置換されたジヒドロキシベンゼン類とエピハロヒドリンとの重縮合物であるエポキシ樹脂(DHAEと略す)はベンゼン環上に2個の水酸基とアルキル基を有する化合物とエピハロヒドリンとの重縮合物で、代表例にブチルカテコールとエピクロルヒドリンの重縮合物であるエピクロンHP820(大日本インキ化学工業(株)、商品名)がある。
含有率40重量%以上が好ましく、さらに好ましくは70重量%以上で顕著な接着力向上が得られる。
【0017】
その他エポキシ配合物
ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ノボラック型、脂環型、グリシジルアミン型、水添ビスフェノールA型などのエポキシ樹脂、また、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6ヘキサンジオール、トリメチロールプロパンなどのグリシジルエーテルである反応性希釈剤を前記エポキシ樹脂と混合して用いることもできる。
【0018】
硬化剤
ジシアンジアミドの他、ルイス酸錯体、イミダゾール化合物、有機酸ヒドラジド、ジアミノマレオニトリル、メラミンおよびその誘導体、ポリアミン塩、アミンイミド化合物、マイクロカプセル化硬化剤などを用いることができる。
【0019】
添加剤
塗布或いは接着力発現に至るまで、接着剤厚み維持、流失防止、塗布平滑性等に揺変剤、界面活性剤、減粘剤、減粘及び表面濡れ改質に溶剤等を含むことができる。充填剤として、例えば、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、タルク、水酸化マグネシウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛、酸化チタン等があり単独もしくは2種以上併用して用いることができる。
【0020】
実施例・比較例を示し、詳細に説明する。結果を表1に記した。
【実施例1】
【0021】
DHAEとしてエピクロンHP−820(大日本インキ工業株式会社(株)、商品名)100部、潜在性硬化剤としてアミキュアPN−23J(味の素ファインテクノ(株)、商品名、アミンアダクト系)を17.3部、アエロジル#200(日本アエロジル(株)、商品名)3部を混合撹拌し、実施例1のエポキシ樹脂組成物とした。
【実施例2】
【0022】
実施例1の潜在性硬化剤をフジキュアーFXR−1020(富士化成工業(株)、商品名、変性アミン系固形)とした以外同じに行い、実施例2のエポキシ樹脂組成物とした。
【実施例3】
【0023】
実施例1のDHAEを一部置き換えエピクロンHP−820を70重量部、jER828(ジャパンエポキシレジン(株)、商品名、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂)30重量部とし、アミキュアPN−23Jを18.1重量部とした以外同じに行い、実施例3のエポキシ樹脂組成物とした。
【実施例4】
【0024】
実施例3のjER828をjER807(ジャパンエポキシレジン(株)、商品名、ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂)とした以外同じに行い、実施例4のエポキシ樹脂組成物とした。
【実施例5】
【0025】
実施例3のエピクロンHP−820を60重量部、jER828を40重量部、アミキュアPN−23Jを18.4重量部とした以外同じに行い、実施例5のエポキシ樹脂組成物とした。
【実施例6】
【0026】
実施例5のjER828をjER807にした以外同じに行い、実施例6のエポキシ樹脂組成物とした。
【0027】
比較例1
実施例1のエピクロンHP−820をjER828にし、アミキュアPN−23Jを20重量部とした以外同じに行い比較例1のエポキシ樹脂組成物とした。
【0028】
比較例2
比較例1のjER828をjER807にした以外同じに行い比較例2のエポキシ樹脂組成物とした。
【0029】
なお、実施例・比較例は硬化性を合わせるために潜在性硬化剤の量を変えた。
【0030】
上記 実施例1〜6、比較例1〜2のエポキシ樹脂組成物を表面未処理のポリエチレンテレフタレート(PETと略す)フィルムとしてルミラーS10(東レ(株)、商品名、125μm厚)、ルミラーE20(東レ(株)、商品名、125μm厚)、ルミラーX30(東レ(株)、商品名、125μm厚)、ポリエチレンナフタレート(PENと略す)フィルムとしてテオネックスQ51(帝人デュポンフィルム(株)、商品名、125μm厚、)、ポリイミド(PIと略す)フィルムとしてカプトン300H(東レ・デュポン(株)、商品名、75μm厚)で、接着性の評価を行った。
【表1】

【0031】
粘度:E型粘度計東機産業(株) TVE−20H(JISZ8803 円すい平板回転粘度計)にて、コーン直径28mm、コーン角度3°、ずり速度10rpm、25℃での測定した値。
【0032】
表中の被着材フイルムの記号を下記に記す。
PET1:ルミラーS10(東レ(株)、商品名、125μm厚、標準品)
PET2:ルミラーE20(東レ(株)、商品名、125μm厚、白 標準品)
PET3:ルミラーX30(東レ(株)、商品名、125μm厚、黒 標準品)
PEN:テオネックスQ51(帝人デュポンフィルム(株)、商品名、125μm厚、標準品)
PI:カプトン300H(東レ・デュポン(株)、商品名、 75μm厚、標準品)
【0033】
<接着性評価>
被着材フィルムに実施例・比較例の樹脂組成物をアプリケーターを用いて20μm塗布し、未塗布のフィルムを重ねゴムローラーを用いて貼り合わせ、80℃で90分間加熱硬化させ、得られたフィルム積層体を25mm幅の短冊状に切り出し、JIS K6854−3に準拠し、引っ張り速度50mm/分ではく離接着強さ(T型はく離)試験により評価した。評価結果(はく離接着強さの平均値)を表1に示す。なお、表中の「材破」ははく離接着強さ試験においてフィルム基材が破断したことを表す。
【0034】
表1の結果として、実施例1〜4においては全フィルムに顕著な差が表れ、実施例5、6ではPIフィルム以外ポリエステル系フィルム(PET、PEN)で接着力が得られている。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の接着エポキシ組成物を使用することによりポリエステル系フィルムの積層では耐久性の優れたものが得られ、加熱履歴があるリライトカードなどにも使用できる。また、ポリイミド系フィルムの素材耐熱を活かす可能性がある。また、他のイソシアネートを使用した接着組成物に比べ水分等による発泡もなくより良い積層物となる。また、粘接着組成物に比べクリープ特性が高い接着剤となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム接着用エポキシ樹脂組成物であって、芳香核上のアルキル基置換されたジヒドロキシベンゼン類とエピハロヒドリンとの重縮合物であるエポキシ樹脂からなることを特徴とする接着用エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
上記エポキシ樹脂組成物が一液型加熱硬化であることを特徴とする請求項1に記載の接着用エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1に記載のフィルムが、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、或いはポリイミドフィルムであることを特徴とする請求項1乃至2いずれか記載の接着用エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれか記載の接着用エポキシ樹脂組成物を用いて、接着硬化されることを特徴とするポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、或いはポリイミドフィルムのいずれかフィルムの積層体。

【公開番号】特開2009−79107(P2009−79107A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−248665(P2007−248665)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】