説明

接続構造体の製造方法及び接続構造体

【課題】電極間の導通信頼性を高めることができる接続構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る接続構造体1の製造方法は、電極2aを上面2に有する第1の接続対象部材2上に、導電性粒子5を含む異方性導電材料を用いた異方性導電材料層を配置する工程と、上記異方性導電材料層の上面から光を照射又は熱を付与し、上記異方性導電材料層の硬化を進行させて、上記異方性導電材料層をBステージ化する工程と、Bステージ化された異方性導電材料層の上面に、電極4bを下面4aに有する第2の接続対象部材4を積層する工程と、上記Bステージ化された異方性導電材料層を硬化させて、硬化物層3を形成する工程とを備える。第1の接続対象部材2側における上記硬化物層部分3aと、第2の接続対象部材4側における硬化物層部分3bとで、硬化物層3の硬化度を異ならせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の導電性粒子を含む異方性導電材料を用いた接続構造体の製造方法に関し、例えば、フレキシブルプリント基板、ガラス基板及び半導体チップなどの様々な接続対象部材の電極間を、導電性粒子を介して電気的に接続する接続構造体の製造方法、並びに接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
ペースト状又はフィルム状の異方性導電材料が広く知られている。該異方性導電材料では、バインダー樹脂中に複数の導電性粒子が分散されている。
【0003】
上記異方性導電材料は、例えば、フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続(FOG(Film on Glass))、半導体チップとフレキシブルプリント基板との接続(COF(Chip on Film))、並びに半導体チップとガラス基板との接続(COG(Chip on Glass))等に使用されている。
【0004】
上記異方性導電材料により、例えば、半導体チップの電極とガラス基板の電極とを電気的に接続する際には、半導体チップの電極とガラス基板の電極との間に異方性導電材料を配置した後、加熱及び加圧する。これにより、異方性導電材料を硬化させて、かつ導電性粒子を介して電極間を電気的に接続し、接続構造体を得る。
【0005】
また、上記接続構造体の製造方法の他の例として、下記の特許文献1には、第一の接続端子を有する第一の回路部材上に接着材組成物を配置し、接着材組成物の上方から光照射を行った後、第二の接続端子を有する第二の回路部材を対向して配置し、加熱しながら加圧して対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子とを電気的に接続させる接続構造体の製造方法が開示されている。特許文献1では、上記接着材組成物として、(A)エポキシ樹脂、(B)分子内に1つ以上のエステル結合を持つチオール化合物、(C)光照射によって塩基を発生する光塩基発生剤、及び(D)導電性粒子を含有する接着材組成物が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−77382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の接続構造体の製造方法では、ガラス基板などの接続対象部材上に配置された異方性導電材料層が硬化前に意図しない領域まで濡れ広がることがある。このため、得られる接続構造体において、硬化物層が意図しない領域に配置され、硬化物層による汚染が生じることがある。
【0008】
さらに、接続対象部材上に配置された異方性導電層に含まれている導電性粒子が、硬化段階で大きく流動することがある。従って、導電性粒子を特定の領域に配置できないこともある。具体的には、接続されるべき上下の電極間に導電性粒子を配置できなかったり、接続されてはならない隣接する電極間が複数の導電性粒子を介して電気的に接続されたりすることがある。このため、得られる接続構造体における電極間の導通信頼性が低いことがある。また、特許文献2に記載のように、単に、第一の回路部材上の接着材組成物の上方から光照射を行った後に、該接着材組成物を熱硬化させただけでは、導電性粒子を精度よく配置できず、得られる接続構造体における電極間の導通信頼性が低くなることがある。
【0009】
本発明の目的は、電極間の導通信頼性を高めることができる接続構造体の製造方法を提供することである。本発明の他の目的は、電極間の導通信頼性が高い接続構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の広い局面によれば、電極を上面に有する第1の接続対象部材上に、導電性粒子を含む異方性導電材料を用いた異方性導電材料層を配置する工程と、該異方性導電材料層の上面から光を照射又は熱を付与し、上記異方性導電材料層の硬化を進行させて、上記異方性導電材料層をBステージ化する工程と、Bステージ化された異方性導電材料層の上面に、電極を下面に有する第2の接続対象部材を積層する工程と、上記Bステージ化された異方性導電材料層を硬化させて、硬化物層を形成する工程とを備え、上記第1の接続対象部材側における上記硬化物層部分と、上記第2の接続対象部材側における上記硬化物層部分とで、上記硬化物層の硬化度を異ならせる、接続構造体の製造方法が提供される。
【0011】
本発明に係る接続構造体の製造方法のある特定の局面では、上記第1の接続対象部材側における上記硬化物層部分における硬化度が、上記第2の接続対象部材側における上記硬化物層部分の硬化度よりも高くされる。
【0012】
本発明に係る接続構造体の製造方法の他の特定の局面では、上記異方性導電材料として異方性導電ペーストが用いられる。
【0013】
本発明に係る接続構造体の製造方法のさらに他の特定の局面では、上記異方性導電材料として、熱硬化性化合物と熱硬化剤と光硬化性化合物と光硬化開始剤と導電性粒子とを含む異方性導電材料が用いられる。
【0014】
本発明に係る接続構造体の製造方法の別の特定の局面では、上記熱硬化性化合物としてエポキシ基又はチイラン基を有する化合物が用いられ、かつ上記光硬化性化合物として(メタ)アクリロイル基を有する化合物が用いられ、上記第1の接続対象部材側における上記硬化物層部分において、上記エポキシ基又はチイラン基を有する化合物の硬化物成分と上記(メタ)アクリロイル基を有する化合物の硬化物成分とが非相溶にされる。
【0015】
本発明に係る接続構造体の製造方法の他の特定の局面では、上記第1の接続対象部材側における上記硬化物層部分と、上記第2の接続対象部材側における上記硬化物層部分とで、上記硬化物層は層分離される。
【0016】
本発明に係る接続構造体の製造方法のさらに他の特定の局面では、上記第1の接続対象部材側における上記硬化物層部分と、上記第2の接続対象部材側における上記硬化物層部分とが、1つの異方性導電材料を用いて形成される。
【0017】
また、本発明の広い局面によれば、電極を上面に有する第1の接続対象部材と、電極を下面に有する第2の接続対象部材と、上記第1の接続対象部材の上面と上記第2の接続対象部材の下面との間に配置されており、導電性粒子を含む異方性導電材料により形成された硬化物層とを備え、上記第1の接続対象部材側における上記硬化物層部分と、上記第2の接続対象部材側における上記硬化物層部分とで、上記硬化物層の硬化度が異なる、接続構造体が提供される。
【0018】
本発明に係る接続構造体のある特定の局面では、上記第1の接続対象部材上の上記異方性導電材料を用いた異方性導電材料層の上面から光を照射又は熱を付与し、上記異方性導電材料層の硬化を進行させて、上記異方性導電材料層をBステージ化した後、Bステージ化された異方性導電材料層の上面に、第2の接続対象部材をさらに積層し、更に上記Bステージ化された異方性導電材料層を硬化させることにより、上記硬化物層が形成されており、上記第1の接続対象部材側における上記硬化物層部分における硬化度が、上記第2の接続対象部材側における上記硬化物層部分の硬化度よりも高い。
【0019】
本発明に係る接続構造体の他の特定の局面では、上記異方性導電材料は異方性導電ペーストである。
【0020】
本発明に係る接続構造体のさらに他の特定の局面では、上記異方性導電材料は、熱硬化性化合物と熱硬化剤と光硬化性化合物と光硬化開始剤と導電性粒子とを含む。
【0021】
本発明に係る接続構造体の別の特定の局面では、上記熱硬化性化合物がエポキシ基又はチイラン基を有する化合物であり、かつ上記光硬化性化合物が(メタ)アクリロイル基を有する化合物であり、上記第1の接続対象部材側における上記硬化物層部分において、上記エポキシ基又はチイラン基を有する化合物の硬化物成分と上記(メタ)アクリロイル基を有する化合物の硬化物成分とが非相溶である。
【0022】
本発明に係る接続構造体のさらに別の特定の局面では、上記第1の接続対象部材側における上記硬化物層部分と、上記第2の接続対象部材側における上記硬化物層部分とで、上記硬化物層が層分離している。
【0023】
本発明に係る接続構造体の他の特定の局面では、上記第1の接続対象部材側における上記硬化物層部分と、上記第2の接続対象部材側における上記硬化物層部分とが、1つの異方性導電材料を用いて形成されている。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る接続構造体の製造方法では、上記第1の接続対象部材上の上記異方性導電材料を用いた異方性導電材料層の上面から光を照射又は熱を付与し、上記異方性導電材料層の硬化を進行させて、上記異方性導電材料層をBステージ化した後、Bステージ化された異方性導電材料層の上面に、第2の接続対象部材をさらに積層し、更に上記Bステージ化された異方性導電材料層を硬化させることにより、上記硬化物層を形成するので、更に上記第1の接続対象部材側における上記硬化物層部分における硬化度を、上記第2の接続対象部材側における上記硬化物層部分の硬化度と異ならせるので、電極間の導通信頼性を高めることができる。
【0025】
本発明に係る接続構造体では、電極を上面に有する第1の接続対象部材と電極を下面に有する第2の接続対象部材との間に配置されており、導電性粒子を含む異方性導電材料により形成された硬化物層を備えているので、更に上記第1の接続対象部材側における上記硬化物層部分と、上記第2の接続対象部材側における上記硬化物層部分とで、上記硬化物層の硬化度が異なるので、電極間の導通信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る接続構造体を模式的に示す部分切欠正面断面図である。
【図2】図2(a)〜(c)は、本発明の一実施形態に係る接続構造体を得る各工程を説明するための部分切欠正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しつつ本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0028】
図1に、本発明の一実施形態に係る接続構造体の一例を模式的に部分切欠正面断面図で示す。
【0029】
図1に示す接続構造体1は、第1の接続対象部材2と、第2の接続対象部材4と、第1,第2の接続対象部材2,4を接続している硬化物層3とを備える。硬化物層3は、導電性粒子5を含む異方性導電材料を硬化させることにより形成されている。
【0030】
第1の接続対象部材2の上面2aには、複数の電極2bが設けられている。第2の接続対象部材4の下面4aには、複数の電極4bが設けられている。電極2bと電極4bとが、1つ又は複数の導電性粒子5により電気的に接続されている。
【0031】
硬化物層3は、第1の接続対象部材2側における第1の硬化物層部分3aと、第2の接続対象部材4側における第2の硬化物層部分3bとで硬化度が異なる。ここでは、第1の接続対象部材2側における第1の硬化物層部分3aの硬化度が、第2の接続対象部材4側における第2の硬化物層部分3bの硬化度よりも高い。第2の硬化物層部分3bの硬化度が、第1の硬化物層部分3aの硬化度よりも高くてもよい。
【0032】
接続構造体1では、硬化物層3は、導電性粒子を含む異方性導電材料を用いて形成されている。ここでは、硬化物層3は、異方性導電ペーストを用いて形成されている。該異方性導電ペーストは、熱硬化性化合物と熱硬化剤と光硬化性化合物と光硬化開始剤とを含む異方性導電材料である。また、該異方性導電ペーストは、熱硬化性化合物であるエポキシ基又はチイラン基を有する化合物と、熱硬化剤と、光硬化性化合物である(メタ)アクリロイル基を有する化合物と、光硬化開始剤と、導電性粒子とを含む異方性導電材料である。また、接続構造体1では、第1の接続対象部材2側における第1の硬化物層部分3aおいて、エポキシ基又はチイラン基を有する化合物の硬化物成分と(メタ)アクリロイル基を有する化合物の硬化物成分とを含む。さらに、接続構造体1では、第1の接続対象部材2側における第1の硬化物層部分3aと、第2の接続対象部材4側における第2の硬化物層部分3bとで、硬化物層3が層分離している。接続構造体1では、第1の接続対象部材2側における第1の硬化物層部分3aにおいて、上記エポキシ基又はチイラン基を有する化合物の硬化物成分と上記(メタ)アクリロイル基を有する化合物の硬化物成分とが非相溶である。また、第1の接続対象部材2側における第1の硬化物層部分3aと、第2の接続対象部材4側における第2の硬化物層部分3bとは、1つの異方性導電材料を用いて形成されている。
【0033】
接続構造体1では、第1の接続対象部材2としてガラス基板が用いられており、第2の接続対象部材4として半導体チップが用いられている。第1,第2の接続対象部材は、特に限定されない。第1,第2の接続対象部材としては、具体的には、半導体チップ、コンデンサ及びダイオード等の電子部品、並びにプリント基板、フレキシブルプリント基板及びガラス基板等の回路基板等が挙げられる。
【0034】
図1に示す接続構造体1は、例えば、以下のようにして得ることができる。
【0035】
図2(a)に示すように、電極2bを上面2aに有する第1の接続対象部材2を用意する。また、導電性粒子5を含む異方性導電材料を用意する。ここでは、熱硬化性化合物と光硬化性化合物と熱硬化剤と光硬化開始剤と導電性粒子5とを含む異方性導電ペーストを用いている。また、ここでは、熱硬化性化合物として、エポキシ基又はチイラン基を有する化合物を用いており、光硬化性化合物として(メタ)アクリロイル基を有する化合物を用いている。但し、異方性導電材料は、熱硬化のみを行う場合には光硬化性化合物と光硬化開始剤とを用いなくてもよく、光硬化のみを行う場合には熱硬化性化合物と熱硬化剤とを用いなくてもよい。次に、第1の接続対象部材2の上面2aに、複数の導電性粒子5を含む異方性導電材料を配置し、第1の接続対象部材2の上面2aに異方性導電材料層3Aを形成して配置する。このとき、電極2b上に、1つ又は複数の導電性粒子5が配置されていることが好ましい。ここでは、上記異方性導電材料として、異方性導電ペーストを用いているので、異方性導電ペーストの積層は、異方性導電ペーストの塗布により行われている。また、異方性導電材料層3Aは異方性導電ペースト層である。
【0036】
次に、異方性導電材料層3Aに光を照射又は熱を付与することにより、異方性導電材料層3Aの硬化を進行させる。異方性導電材料層3Aの硬化を進行させて、異方性導電材料層3AをBステージ化する。ここでは、異方性導電材料層3Aに光を照射して、異方性導電材料層3Aの硬化を進行させて、異方性導電材料層3AをBステージ化している。図2(b)に示すように、異方性導電材料層3AのBステージ化により、第1の接続対象部材2の上面2aに、Bステージ化された異方性導電材料層3Bを形成する。Bステージ化された異方性導電材料層3Bは、Bステージ化された異方性導電ペースト層である。本実施形態において、異方性導電材料層3Bでは、第1の接続対象部材2側における第1の異方性導電材料層部分3Ba(異方性導電ペースト層部分)と、第2の接続対象部材4が積層される側における第2の異方性導電材料層部分3Bb(異方性導電ペースト層部分)とで、硬化度が異なる。第1の異方性導電材料層部分3Baと第2の異方性導電材料層部分3Bbとは層分離している。異方性導電材料層3Bでは、第1の接続対象部材2側における第1の異方性導電材料層部分3Baの硬化度を、第2の接続対象部材4が積層される側における第2の異方性導電材料層部分3Bbの硬化度よりも高くしている。第2の異方性導電材料層部分3Bbの硬化度を、第1の異方性導電材料層部分3Baの硬化度よりも高くしてもよい。但し、導電性粒子5の配置精度をより一層高める観点からは、第1の接続対象部材2側における第1の異方性導電材料層部分3Baの硬化度を、第2の接続対象部材4が積層される側における第2の異方性導電材料層部分3Bbの硬化度よりも高くすることが好ましい。
【0037】
第1の異方性導電材料層部分3Baの硬化度を、第2の異方性導電材料層部分3Bbの硬化度よりも高くすることによって、異方性導電層3Bに含まれている導電性粒子5が、硬化段階でより一層流動し難くなる。このため、導電性粒子5を電極2b,4b間により一層精度良く配置でき、接続されてはならない隣接する電極2b,2b間又は電極4b,4b間が複数の導電性粒子を介して電気的に接続されるのを抑制できる。さらに、異方性導電材料層3B全体の濡れ広がりを抑制でき、濡れ広がった異方性導電材料層3Bによる汚染を抑制できる。
【0038】
異方性導電材料層3Aの硬化を適度に進行させるために、光を照射する際の光照射強度は、0.1〜100mW/cmの範囲内であることが好ましい。光を照射する際に用いる光源は特に限定されない。該光源としては、例えば、波長420nm以下に充分な発光分布を有する光源等が挙げられる。また、光源の具体例としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、及びメタルハライドランプ等が挙げられる。
【0039】
第1の接続対象部材2の上面2aに、異方性導電材料を塗布しながら、異方性導電材料層3Aに光を照射することが好ましい。さらに、第1の接続対象部材2の上面2aへの異方性導電材料の塗布と同時に、又は塗布の直後に、異方性導電材料層3Aに光を照射することも好ましい。塗布と光の照射とが上記のように行われた場合には、異方性導電材料層の流動をより一層抑制できる。このため、接続構造体1における電極2b,4b間の導通信頼性をより一層高めることができる。第1の接続対象部材2の上面2aに異方性導電材料を塗布してから光を照射するまでの時間は、0秒以上、好ましくは3秒以下、より好ましくは2秒以下である。
【0040】
また、異方性導電材料層3AをBステージ化するために、異方性導電材料層3Aに熱を付与して、硬化を進行させて、異方性導電材料層3AをBステージ化してもよい。
【0041】
熱の付与により異方性導電材料層3AをBステージ化する際の加熱温度は、好ましくは200℃以下、より好ましくは170℃以下、さらに好ましくは160℃以下である。
【0042】
なお、第1の接続対象部材2の上面2a上で光の照射又は熱の付与により異方性導電材料層3AをBステージ化せずに、予めBステージ化された異方性導電材料層3Bを第1の接続対象部材2の上面2aに配置してもよい。さらに、第1の接続対象部材2の上面2aに、異方性導電フィルムを配置してもよい。
【0043】
次に、図2(c)に示すように、Bステージ化された異方性導電材料層3Bの上面3cに、第2の接続対象部材4を積層する。第2の異方性導電材料層部分3Bbの上面に、第2の接続対象部材4を積層する。第1の接続対象部材2の上面2aの電極2bと、第2の接続対象部材4の下面4aの電極4bとが対向するように、第2の接続対象部材4を積層する。
【0044】
さらに、第2の接続対象部材4の積層の際に、異方性導電材料層3Bに熱を付与することにより、異方性導電材料層3Bをさらに硬化させ、硬化物層3を形成する。ただし、第2の接続対象部材4の積層の前に、異方性導電材料層3Bに熱を付与してもよい。さらに、第2の接続対象部材4の積層の後に、異方性導電材料層3Bに熱を付与し完全に硬化させることが好ましい。
【0045】
熱の付与により異方性導電材料層3Bを硬化させる場合には、異方性導電材料層3Bを充分に硬化させるための加熱温度は、好ましくは160℃以上、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下である。
【0046】
異方性導電材料層3Bを硬化させる際に、加圧することが好ましい。加圧によって電極2bと電極4bとで導電性粒子5を圧縮することにより、電極2b,4bと導電性粒子5との接触面積を大きくすることができる。このため、導通信頼性を高めることができる。
【0047】
異方性導電材料層3Bを硬化させることにより、第1の接続対象部材2と第2の接続対象部材4とが、硬化物層3を介して接続される。また、電極2bと電極4bとが、導電性粒子5を介して電気的に接続される。
【0048】
このようにして、図1に示す接続構造体1を得ることができる。本実施形態では、光硬化と熱硬化とが併用されているため、異方性導電材料を短時間で硬化させることができる。接続構造体1を得る際に、異方性導電材料層3Aに光を照射し、Bステージ化された異方性導電材料層3Bを形成した後、Bステージ化された異方性導電材料層3Bに熱を付与することが好ましい。
【0049】
硬化物層3における第1の接続対象部材2側における第1の硬化物層部分3aは、第1の接続対象部材2側における第1の異方性導電材料層部分3Baが硬化することにより形成されている。硬化物層3における第2の接続対象部材4側における第2の硬化物層部分3bは、第2の接続対象部材4側における第2の異方性導電材料層部分3Bbが硬化することにより形成されている。前述のように、第1の異方性導電材料層部分3Baと第2の異方性導電材料層部分3Bbとは硬化度が異なり、第1の異方性導電材料層部分3Baの硬化度が第2の異方性導電材料層部分3Bbの硬化度よりも高い。このため、硬化物層3における第1の硬化物層部分3aと第2の硬化物層部分3bとの硬化度を異ならせることができ、第1の硬化物層部分3aの硬化度を第2の硬化物層部分3bの硬化度よりも高くすることができる。
【0050】
上記のようにして、接続構造体1を作製することで、導電性粒子5を電極2b,4b間により一層精度良く配置でき、接続されてはならない隣接する電極2b,2b間又は電極4b,4b間が複数の導電性粒子を介して電気的に接続されるのを抑制できる。さらに、異方性導電材料層が意図しない領域に濡れ広がった後に硬化した硬化物層部分の形成を抑制でき、異方性導電材料層の濡れ広がりによる硬化物層部分による汚染を抑制できる。
【0051】
本発明に係る接続構造体の製造方法は、例えば、フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続(FOG(Film on Glass))、半導体チップとフレキシブルプリント基板との接続(COF(Chip on Film))、又は半導体チップとガラス基板との接続(COG(Chip on Glass))等に使用できる。なかでも、本発明に係る続構造体の製造方法は、COG用途に好適である。本発明に係る接続構造体の製造方法では、上記第1の接続対象部材と上記第2の接続対象部材として、半導体チップとガラス基板とを用いることが好ましい。
【0052】
COG用途では、特に、半導体チップとガラス基板との電極間を、異方性導電材料の導電性粒子により確実に接続することが困難なことが多い。例えば、COG用途の場合には、半導体チップの隣り合う電極間、及びガラス基板の隣り合う電極間の間隔が10〜20μm程度であることがあり、微細な配線が形成されていることが多い。微細な配線が形成されていても、本発明に係る接続構造体の製造方法及び本発明に係る接続構造体により、導電性粒子を電極間に精度よく配置することができることから、半導体チップとガラス基板との電極間を高精度に接続することができ、導通信頼性を高めることができる。
【0053】
本発明に係る接続構造体の製造方法及び本発明に係る接続構造体では、導電性粒子を含む異方性導電材料が用いられる。
【0054】
上記異方性導電材料は、異方性導電ペーストであることが好ましい。異方性導電材料では、塗布が容易で凹凸追従性が高い一方で、異方性導電材料が濡れ広がりやすく、異方性導電材料中に含まれている導電性粒子が流動しやすいという問題がある。これに対して、本発明のように硬化物層における硬化度を制御することによって、異方性導電材料の濡れ広がりを抑制し、更に異方性導電材料中に含まれている導電性粒子の流動を抑制できる。従って、導電性粒子を精度よく配置できる。
【0055】
上記異方性導電材料として、熱硬化性化合物と熱硬化剤と光硬化性化合物と光硬化開始剤と導電性粒子とを含む異方性導電材料を用いることが好ましい。この場合には、硬化度を制御することが容易であり、第1の接続対象部材側における第1の硬化物層部分の硬化度を第2の接続対象部材側における第2の硬化物層部分の硬化度よりも高くすることが容易である。
【0056】
上記熱硬化性化合物はエポキシ基又はチイラン基を有する化合物であることが好ましい。また、上記光硬化性化合物は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることが好ましい。このような好ましい熱硬化性化合物や光硬化性化合物を用いることにより、硬化度の制御がより一層容易になり、更に第1の接続対象部材側における第1の硬化物層部分の硬化度を第2の接続対象部材側における第2の硬化物層部分の硬化度よりも高くすることがより一層容易になる。
【0057】
第1の接続対象部材側における上記第1の硬化物層部分において、上記エポキシ基又はチイラン基を有する化合物の硬化物成分と上記(メタ)アクリロイル基を有する化合物の硬化物成分とが非相溶であることが好ましい。このような第1の硬化物層部分を有する硬化物層を形成することで、異方性導電材料の濡れ広がりによる汚染の抑制と、導電性粒子の配置精度とをより一層高いレベルで両立することができる。
【0058】
第1の接続対象部材側における上記第1の硬化物層部分と、上記第2の接続対象部材側における上記第2の硬化物層部分とで、上記硬化物層は層分離していることが好ましい。このような第1,第2の硬化物層部分を有する硬化物層を形成することで、異方性導電材料の濡れ広がりによる汚染の抑制と、導電性粒子の配置精度とをさらに一層高いレベルで両立することができる。
【0059】
上記第1の接続対象部材側における上記第1の硬化物層部分と、上記第2の接続対象部材側における上記第2の硬化物層部分とは、1つの異方性導電材料を用いて形成されていることが好ましい。この場合には、複数の異方性導電材料を用意する必要がなく、更に接続構造体の製造効率を高めることができる。本発明に係る接続構造体の製造方法及び本発明に係る接続構造体では、異方性導電材料は、多層異方性導電フィルムではないことが好ましい。異方性導電材料が異方性導電フィルムである場合には、異方性導電材料は、単層の異方性導電フィルムであることが好ましい。
【0060】
第1の接続対象部材側における第1の硬化物層部分の硬化度を第2の接続対象部材側における第2の硬化物層部分の硬化度よりも高くする方法としては、(1)酸素が多い雰囲気や空気下で酸素による硬化阻害によって硬化が進行し難い異方性導電材料を用いて、硬化段階で第1の接続対象部材の上面に配置された異方性導電材料層の上面を酸素が多い雰囲気や空気下で、異方性導電材料層に光を照射又は熱を付与し、異方性導電材料層を光硬化又は熱硬化させる方法、並びに(2)水分濃度やアミン等の塩基濃度の高い条件下で硬化阻害によって硬化が進行し難い異方性導電材料を用いて、硬化段階で第1の接続対象部材の上面に配置された異方性導電材料層の上面を水分濃度やアミン等の塩基濃度の高い条件下で、異方性導電材料層に光を照射又は熱を付与し、異方性導電材料層を光硬化又は熱硬化させる方法等が挙げられる。
【0061】
以下、上記異方性導電材料に含まれている各成分の詳細を説明する。
【0062】
(熱硬化性化合物)
上記熱硬化性化合物としては、エポキシ化合物、エピスルフィド化合物、(メタ)アクリル化合物、フェノール化合物、アミノ化合物、不飽和ポリエステル化合物、ポリウレタン化合物、シリコーン化合物及びポリイミド化合物等が挙げられる。上記熱硬化性化合物は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0063】
上記異方性導電材料の硬化を容易に制御したり、接続構造体の導通信頼性をより一層高めたりする観点からは、上記熱硬化性化合物は、エポキシ基又はチイラン基を有する熱硬化性化合物であることが好ましい。エポキシ基を有する化合物は、エポキシ化合物である。チイラン基を有する化合物は、エピスルフィド化合物である。熱硬化をより一層速やかに進行させる観点からは、上記熱硬化性化合物は、エピスルフィド化合物であることが好ましい。
【0064】
エピスルフィド化合物は、エポキシ基ではなくチイラン基を有するので、低温で速やかに硬化させることができる。すなわち、チイラン基を有するエピスルフィド化合物は、エポキシ基を有するエポキシ化合物と比較して、チイラン基に由来してより一層低い温度で硬化可能である。
【0065】
[光硬化性化合物]
上記異方性導電材料は、光の照射によって硬化するように、光硬化性化合物を含有していてもよい。光の照射により光硬化性化合物を半硬化させ、硬化性化合物の流動性を低下させることができる。
【0066】
上記光硬化性化合物としては特に限定されず、(メタ)アクリル樹脂及び環状エーテル基含有樹脂等が挙げられる。
【0067】
上記光硬化性化合物は、(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物であることが好ましい。上記(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物としては、エポキシ基及びチイラン基を有さず、かつ(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物、及びエポキシ基又はチイラン基を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物が挙げられる。
【0068】
上記(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物として、(メタ)アクリル酸と水酸基を有する化合物とを反応させて得られるエステル化合物、(メタ)アクリル酸とエポキシ化合物とを反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート、又はイソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート等が好適に用いられる。上記「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基とメタクリロイル基とを示す。上記「(メタ)アクリル」は、アクリルとメタクリルとを示す。上記「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートとを示す。
【0069】
上記(メタ)アクリル酸と水酸基を有する化合物とを反応させて得られるエステル化合物は特に限定されない。該エステル化合物として、単官能のエステル化合物、2官能のエステル化合物及び3官能以上のエステル化合物のいずれも用いることができる。
【0070】
上記エポキシ基又はチイラン基を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性化合物は、エポキシ基を2個以上又はチイラン基を2個以上有する化合物の一部のエポキシ基又は一部のチイラン基を、(メタ)アクリロイル基に変換することにより得られた光硬化性化合物であることが好ましい。このような光硬化性化合物は、部分(メタ)アクリレート化エポキシ化合物又は部分(メタ)アクリレート化エピスルフィド化合物である。
【0071】
光硬化性化合物は、エポキシ基を2個以上又はチイラン基を2個以上有する化合物と、(メタ)アクリル酸との反応物であることが好ましい。この反応物は、エポキシ基を2個以上又はチイラン基を2個以上有する化合物と(メタ)アクリル酸とを、常法に従って塩基性触媒の存在下で反応することにより得られる。エポキシ基又はチイラン基の20%以上が(メタ)アクリロイル基に変換(転化率)されていることが好ましい。該転化率は、より好ましくは30%以上、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下である。エポキシ基又はチイラン基の40%以上、60%以下が(メタ)アクリロイル基に変換されていることが最も好ましい。
【0072】
上記部分(メタ)アクリレート化エポキシ化合物としては、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、カルボン酸無水物変性エポキシ(メタ)アクリレート、及びフェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0073】
光硬化性化合物として、エポキシ基を2個以上又はチイラン基を2個以上有するフェノキシ樹脂の一部のエポキシ基又は一部のチイラン基を(メタ)アクリロイル基に変換した変性フェノキシ樹脂を用いてもよい。すなわち、エポキシ基又はチイラン基と(メタ)アクリロイル基とを有する変性フェノキシ樹脂を用いてもよい。
【0074】
また、上記光硬化性化合物は、架橋性化合物であってもよく、非架橋性化合物であってもよい。
【0075】
上記架橋性化合物の具体例としては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、グリセリンメタクリレートアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ビニル、ジビニルベンゼン、ポリエステル(メタ)アクリレート、及びウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0076】
上記非架橋性化合物の具体例としては、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート及びテトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0077】
光硬化性化合物と熱硬化性化合物とを併用する場合には、光硬化性化合物と熱硬化性化合物との配合比は、光硬化性化合物と熱硬化性化合物との種類に応じて適宜調整される。光硬化性化合物と熱硬化性化合物とを併用する場合には、上記異方性導電材料は、光硬化性化合物と熱硬化性化合物とを重量比で、1:99〜90:10で含むことが好ましく、5:95〜60:40で含むことがより好ましく、10:90〜40:60で含むことが更に好ましい。
【0078】
(熱硬化剤)
上記熱硬化剤は特に限定されない。上記熱硬化剤として、従来公知の熱硬化剤を用いることができる。上記熱硬化剤としては、イミダゾール硬化剤、アミン硬化剤、フェノール硬化剤、ポリチオール硬化剤及び酸無水物等が挙げられる。上記熱硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0079】
異方性導電材料を低温でより一層速やかに硬化させることができるので、上記熱硬化剤は、イミダゾール硬化剤、ポリチオール硬化剤又はアミン硬化剤であることが好ましい。また、異方性導電材料の保存安定性を高めることができるので、潜在性の硬化剤が好ましい。該潜在性の硬化剤は、潜在性イミダゾール硬化剤、潜在性ポリチオール硬化剤又は潜在性アミン硬化剤であることが好ましい。上記熱硬化剤は、ポリウレタン樹脂又はポリエステル樹脂等の高分子物質で被覆されていてもよい。
【0080】
上記イミダゾール硬化剤としては、特に限定されず、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン及び2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物等が挙げられる。
【0081】
上記ポリチオール硬化剤としては、特に限定されず、トリメチロールプロパン トリス−3−メルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトール テトラキス−3−メルカプトプロピオネート及びジペンタエリスリトール ヘキサ−3−メルカプトプロピオネート等が挙げられる。
【0082】
上記アミン硬化剤としては、特に限定されず、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラスピロ[5.5]ウンデカン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、メタフェニレンジアミン及びジアミノジフェニルスルホン等が挙げられる。
【0083】
上記熱硬化剤の含有量は特に限定されない。上記熱硬化性化合物100重量部に対して、上記熱硬化剤の含有量は、好ましくは5重量部以上、より好ましくは10重量部以上、好ましくは40重量部以下、より好ましくは30重量部以下、更に好ましくは20重量部以下である。上記熱硬化剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、異方性導電材料を充分に熱硬化させることができる。
【0084】
(光硬化開始剤)
上記光硬化開始剤は特に限定されない。上記光硬化開始剤として、従来公知の光硬化開始剤を用いることができる。上記光硬化開始剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0085】
上記光硬化開始剤としては、特に限定されず、アセトフェノン光硬化開始剤、ベンゾフェノン光硬化開始剤、チオキサントン、ケタール光硬化開始剤、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド及びアシルホスフォナート等が挙げられる。
【0086】
上記アセトフェノン光硬化開始剤の具体例としては、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、及び2−ヒドロキシ−2−シクロヘキシルアセトフェノン等が挙げられる。上記ケタール光硬化開始剤の具体例としては、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
【0087】
酸素が多い雰囲気下又は空気下で重合が阻害されることから、硬化物層における硬化度を部分的に異ならせることが容易であるので、上記光硬化開始剤は、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(チバ・スペシャリティ社製「Irg819」)又は2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(チバ・スペシャリティ社製「TPO」)であることが好ましい。
【0088】
上記光硬化開始剤の含有量は特に限定されない。上記光硬化性化合物100重量部に対して、上記光硬化開始剤の含有量は、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.2重量部以上、好ましくは40重量部以下、より好ましくは30重量部以下、更に好ましくは20重量部以下、特に好ましくは10重量部以下である。上記光硬化開始剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、異方性導電材料を適度に光硬化させることができる。異方性導電材料に光を照射し、Bステージ化することにより、異方性導電材料の流動を抑制できる。
【0089】
(導電性粒子)
上記異方性導電材料に含まれている導電性粒子は、第1,第2の接続対象部材の電極間を電気的に接続する。上記導電性粒子は、導電性を有する粒子であれば特に限定されない。導電性粒子の導電層の表面が絶縁層により被覆されていてもよい。この場合には、接続対象部材の接続時に、導電層と電極との間の絶縁層が排除される。上記導電性粒子としては、例えば、有機粒子、無機粒子、有機無機ハイブリッド粒子もしくは金属粒子等の表面を金属層で被覆した導電性粒子、並びに実質的に金属のみで構成される金属粒子等が挙げられる。上記金属層は特に限定されない。上記金属層としては、金層、銀層、銅層、ニッケル層、パラジウム層及び錫を含有する金属層等が挙げられる。
【0090】
電極間の導通信頼性をより一層高める観点からは、上記導電性粒子は、樹脂粒子と、該樹脂粒子の表面上に設けられた導電層とを有することが好ましい。
【0091】
導電性粒子の平均粒子径は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、好ましくは100μm以下、より好ましくは20μm以下、更に好ましくは15μm以下である。
【0092】
導電性粒子の「平均粒子径」は、数平均粒子径を示す。導電性粒子の平均粒子径は、任意の導電性粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、平均値を算出することにより求められる。
【0093】
上記導電性粒子の含有量は特に限定されない。異方性導電材料100重量%中、上記導電性粒子の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下である。上記導電性粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、接続されるべき上下の電極間に導電性粒子を容易に配置できる。さらに、接続されてはならない隣接する電極間が複数の導電性粒子を介して電気的に接続され難くなる。すなわち、隣り合う電極間の短絡をより一層防止できる。
【0094】
(他の成分)
上記異方性導電材料は、フィラーを含むことが好ましい。フィラーの使用により、異方性導電材料の硬化物の潜熱膨張を抑制できる。上記フィラーの具体例としては、シリカ、窒化アルミニウム及びアルミナ等が挙げられる。フィラーは1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0095】
上記フィラーの含有量は特に限定されない。上記硬化性化合物の合計100重量部に対して、上記フィラーの含有量の好ましくは5重量部以上、より好ましくは15重量部以上、好ましくは300重量部以下、より好ましくは200重量部以下である。上記フィラーの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、異方性導電材料の硬化物の潜熱膨張を充分に抑制でき、更に異方性導電材料中にフィラーを充分に分散させることができる。
【0096】
上記異方性導電材料は、硬化促進剤をさらに含むことが好ましい。硬化促進剤の使用により、硬化速度をより一層速くすることができる。硬化促進剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0097】
上記硬化促進剤の具体例としては、イミダゾール硬化促進剤及びアミン硬化促進剤等が挙げられる。なかでも、イミダゾール硬化促進剤が好ましい。なお、イミダゾール硬化促進剤又はアミン硬化促進剤は、イミダゾール硬化剤又はアミン硬化剤としても用いることができる。
【0098】
上記異方性導電材料は、溶剤を含んでいてもよい。該溶剤の使用により、異方性導電材料の粘度を容易に調整できる。上記溶剤としては、例えば、酢酸エチル、メチルセロソルブ、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、テトラヒドロフラン及びジエチルエーテル等が挙げられる。
【0099】
以下、本発明について、実施例および比較例を挙げて具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0100】
(実施例1)
(1)異方性導電ペーストの作製
熱硬化性化合物であるエピコート828(三菱化学社製「ビスフェノールA型エポキシ樹脂」)100重量部と、光硬化性化合物であるジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)10重量部と、熱硬化性と光硬化性とを有するEBECRYL3702(ダイセルサイテック社製「エポキシアクリレート」)10重量部と、熱硬化剤であるアミノアダクト(味の素ファインテクノ社製「PN−23」」)10重量部と、硬化促進剤である2,4−ジアミノ−6−[2−エチル−4−メチルイミダゾリル−(1)]−エチル−s−トリアジン(2E4MZ−A)0.5重量部と、光硬化開始剤である光ラジカル開始剤(チバスペシャリティ社製「Irg819」)0.5重量部と、フィラーであるシリカ(平均粒子径0.25μm)50重量部と、フィラーであるアルミナ(平均粒子径0.5μm)50重量部とを配合し、さらに平均粒子径3μmの導電性粒子20重量部を添加した後、遊星式攪拌機を用いて2000rpmで5分間攪拌することにより、異方性導電ペーストを得た。
【0101】
なお、用いた上記導電性粒子は、ジビニルベンゼン樹脂粒子の表面にニッケルめっき層が形成されており、かつ該ニッケルめっき層の表面に金めっき層が形成されている金属層を有する導電性粒子である。
【0102】
(2)接続構造体の作製
L/Sが30μm/30μmのITO電極パターンが上面に形成された透明ガラス基板を用意した。また、L/Sが30μm/30μmの金電極パターンが下面に形成された半導体チップを用意した。
【0103】
上記透明ガラス基板上に、得られた異方性導電ペーストを厚さ30μmとなるように塗工し、異方性導電ペースト層を形成した。異方性導電ペーストの塗布後すぐに、空気下ですなわち異方性導電ペースト層の上面付近の雰囲気が空気である状態で、紫外線照射ランプを用いて異方性導電ペースト層に紫外線を照射し、光重合によって異方性導電ペースト層を半硬化(Bステージ化)させた。次に、異方性導電ペースト層上に上記半導体チップを、電極同士が対向するように積層した。その後、異方性導電ペースト層の温度が210℃となるようにヘッドの温度を調整しながら、半導体チップの上面に加圧加熱ヘッドを載せ、10kg/cmの圧力をかけて異方性導電ペースト層を硬化させ、接続構造体を得た。
【0104】
(比較例1)
実施例1で得られた異方性導電ペーストを用意した。
【0105】
実施例1と同様に、透明ガラス基板上に、得られた異方性導電ペーストを厚さ30μmとなるように塗工し、異方性導電ペースト層を形成した。異方性導電ペーストの塗布後すぐに、紫外線照射ランプを用いて紫外照射を行わずに、異方性導電ペースト層上に上記半導体チップを、電極同士が対向するように積層した。その後、異方性導電ペースト層の温度が210℃となるようにヘッドの温度を調整しながら、半導体チップの上面に加圧加熱ヘッドを載せ、10kg/cmの圧力をかけて異方性導電ペースト層を硬化させ、接続構造体を得た。
【0106】
(比較例2)
実施例1で得られた異方性導電ペーストを用意した。
【0107】
実施例1と同様に、透明ガラス基板上に、得られた異方性導電ペーストを厚さ30μmとなるように塗工し、異方性導電ペースト層を形成した。異方性導電ペーストの塗布後すぐに、窒素パージ下ですなわち異方性導電ペースト層の上面近傍の雰囲気が窒素である状態で、紫外線照射ランプを用いて異方性導電ペースト層に紫外線を照射し、光重合によって異方性導電ペースト層を半硬化させた。次に、異方性導電ペースト層上に上記半導体チップを、電極同士が対向するように積層した。その後、異方性導電ペースト層の温度が210℃となるようにヘッドの温度を調整しながら、半導体チップの上面に3mm幅の加圧加熱ヘッドを載せ、10kg/cmの圧力をかけて異方性導電ペースト層を硬化させ、接続構造体を得た。
【0108】
(評価)
(1)硬化物層の状態1
得られた接続構造体を切削し、電極接続部分の断面を露出させた。露出した電極接続部分の断面を、電子顕微鏡にて観察した。硬化物層の状態を下記の判定基準で判定した。
【0109】
[硬化物層の状態1の判定基準]
A:半導体チップ側と透明ガラス基板側とで、2層に分離しており、半導体チップ側における硬化物層部分よりも透明ガラス基板側における硬化物層部分の方が硬化度が高い
B:硬化物層が層分離していない
【0110】
(2)硬化物層の状態2
半導体チップ側における硬化物層部分において、用いた熱硬化性化合物の硬化物成分と用いた光硬化性化合物の硬化物成分とが相溶しているか否かを評価した。非相溶である場合を「A」、相溶している場合を「B」として結果を下記の表1に示した。
【0111】
(3)電極間における導電性粒子の捕捉率(導電性粒子の配置精度)
得られた接続構造体における対向する上下の電極間に存在する導電性粒子の数を光学顕微鏡にてカウントした。導電性粒子の捕捉率を下記の判定基準で判定した。
【0112】
[導電性粒子の捕捉率の判定基準]
○:各電極間に存在する粒子が10個以上
×:各電極間に存在する粒子が9個以下
【0113】
(4)導通性評価
得られた接続構造体を四端子法用にて、20箇所の抵抗値を4端子法にて評価した。導通信頼性を下記の判定基準で判定した。
【0114】
[導通信頼性の判定基準]
○:全ての箇所で抵抗値が3Ω以下である
△:抵抗値が3Ω以上の箇所が1箇所以上ある
×:全く導通していない箇所が1箇所以上ある
【0115】
(5)絶縁性評価
得られた接続構造体の隣り合う電極20個においてリークが生じているか否かを、テスターで測定した。絶縁性を下記の判定基準で判定した。
【0116】
[絶縁性の判定基準]
○:リーク箇所が全くない
×:リーク箇所がある
【0117】
結果を下記の表1に示す。下記の表1において、「−」は評価していないことを示す。
【0118】
【表1】

【符号の説明】
【0119】
1…接続構造体
2…第1の接続対象部材
2a…上面
2b…電極
3…硬化物層
3a…第1の硬化物層部分
3b…第2の硬化物層部分
3c…上面
3A…異方性導電材料層
3B…Bステージ化された異方性導電材料層
3Ba…第1の異方性導電材料層部分
3Bb…第2の異方性導電材料層部分
4…第2の接続対象部材
4a…下面
4b…電極
5…導電性粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極を上面に有する第1の接続対象部材上に、導電性粒子を含む異方性導電材料を用いた異方性導電材料層を配置する工程と、
前記異方性導電材料層の上面から光を照射又は熱を付与し、前記異方性導電材料層の硬化を進行させて、前記異方性導電材料層をBステージ化する工程と、
Bステージ化された異方性導電材料層の上面に、電極を下面に有する第2の接続対象部材を積層する工程と、
前記Bステージ化された異方性導電材料層を硬化させて、硬化物層を形成する工程とを備え、
前記第1の接続対象部材側における前記硬化物層部分と、前記第2の接続対象部材側における前記硬化物層部分とで、前記硬化物層の硬化度を異ならせる、接続構造体の製造方法。
【請求項2】
前記第1の接続対象部材側における前記硬化物層部分における硬化度を、前記第2の接続対象部材側における前記硬化物層部分の硬化度よりも高くする、請求項1に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項3】
前記異方性導電材料として異方性導電ペーストを用いる、請求項1又は2に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項4】
前記異方性導電材料として、熱硬化性化合物と熱硬化剤と光硬化性化合物と光硬化開始剤と導電性粒子とを含む異方性導電材料を用いる、1〜3のいずれか1項に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項5】
前記熱硬化性化合物としてエポキシ基又はチイラン基を有する化合物を用い、かつ前記光硬化性化合物として(メタ)アクリロイル基を有する化合物を用い、
前記第1の接続対象部材側における前記硬化物層部分において、前記エポキシ基又はチイラン基を有する化合物の硬化物成分と前記(メタ)アクリロイル基を有する化合物の硬化物成分とを非相溶にする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項6】
前記第1の接続対象部材側における前記硬化物層部分と、前記第2の接続対象部材側における前記硬化物層部分とで、前記硬化物層を層分離させる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項7】
前記第1の接続対象部材側における前記硬化物層部分と、前記第2の接続対象部材側における前記硬化物層部分とを、1つの異方性導電材料を用いて形成する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項8】
電極を上面に有する第1の接続対象部材と、
電極を下面に有する第2の接続対象部材と、
前記第1の接続対象部材の上面と前記第2の接続対象部材の下面との間に配置されており、導電性粒子を含む異方性導電材料により形成された硬化物層とを備え、
前記第1の接続対象部材側における前記硬化物層部分と、前記第2の接続対象部材側における前記硬化物層部分とで、前記硬化物層の硬化度が異なる、接続構造体。
【請求項9】
前記第1の接続対象部材上の前記異方性導電材料を用いた異方性導電材料層の上面から光を照射又は熱を付与し、前記異方性導電材料層の硬化を進行させて、前記異方性導電材料層をBステージ化した後、Bステージ化された異方性導電材料層の上面に、第2の接続対象部材をさらに積層し、更に前記Bステージ化された異方性導電材料層を硬化させることにより、前記硬化物層が形成されており、
前記第1の接続対象部材側における前記硬化物層部分における硬化度が、前記第2の接続対象部材側における前記硬化物層部分の硬化度よりも高い、請求項8に記載の接続構造体。
【請求項10】
前記異方性導電材料が異方性導電ペーストである、請求項8又は9に記載の接続構造体。
【請求項11】
前記異方性導電材料が、熱硬化性化合物と熱硬化剤と光硬化性化合物と光硬化開始剤と導電性粒子とを含む、8〜10のいずれか1項に記載の接続構造体。
【請求項12】
前記熱硬化性化合物がエポキシ基又はチイラン基を有する化合物であり、かつ前記光硬化性化合物が(メタ)アクリロイル基を有する化合物であり、
前記第1の接続対象部材側における前記硬化物層部分において、前記エポキシ基又はチイラン基を有する化合物の硬化物成分と前記(メタ)アクリロイル基を有する化合物の硬化物成分とが非相溶である、請求項8〜11のいずれか1項に記載の接続構造体。
【請求項13】
前記第1の接続対象部材側における前記硬化物層部分と、前記第2の接続対象部材側における前記硬化物層部分とで、前記硬化物層が層分離している、請求項8〜12のいずれか1項に記載の接続構造体。
【請求項14】
前記第1の接続対象部材側における前記硬化物層部分と、前記第2の接続対象部材側における前記硬化物層部分とが、1つの異方性導電材料を用いて形成されている、請求項8〜13のいずれか1項に記載の接続構造体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−155851(P2012−155851A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11124(P2011−11124)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】