説明

接線方向製造装置

【構成】
工作物から材料を放出および/または基板への材料の付加によって成形製品を製造する方法である。遠心機上で工作物を回転させる。加工時、工作物の表面は全体として遠心機軸線に対して対向しかつ離れている。表面材料が放出されると、工作物回転路から離れている接線方向路に従って移動し、表面から排出される。レーザーなどのエネルギービームや材料のジェット流を使用して、材料の一部を放出させ、工作物から遊離させる。工作物の回転時、短パルスのビームまたはジェット流を使用して工作物の特定部位から材料を放出させる。工作物の回転に対してビーム/ジェット流の向きを変え、そしてビーム/ジェット流を制御すると、放出される材料の位置が変わる。ビーム/ジェット流の照射強度および時間を変更すると、放出される材料の量が変わる。工作物から材料を繰り返し放出させると、ある一定の形になる。コンピュータ制御を利用して向き、時間を制御し、ビーム/ジェット流の照射強度および時間を調節することによって工作物を目的の形に成形する。表面から放出された材料を基板に向ける。各種の制御システムを利用して、例えば放出材料を荷電しこれを磁気ヨークまたは荷電プレートに通過させることによって、基板上に材料を所定の形で堆積させる。これは、工作物の回転と同時に行うことができる。工作物からの放出材料を同時に別な製品の製造に利用しない場合には、リサイクルに回す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械加工方法および装置、特に固体材料の切削、成形および仕上げ加工にレーザーを用いる機械加工方法および装置に関する。本発明は、特に、遠心機上で回転する固体工作物のハイパワー加工するさいに、材料の選択的除去を通じて工作物を同時に成形し、かつ工作物から接線方向に出る材料から二次製品を蓄積/形成することを容易にする方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
機械加工にレーザーを利用することはよく知られている。さらに、工作物に加工装置を当てながら工作物を高速回転させることによって工作物を成形、切削、仕上げ加工することもよく知られている。このような役割をする装置の例として一般的なのが旋盤である。また、切削力または成形加工力としてハイパワーのパルス化放射線を利用する旋盤も各種知られている。いくつかの特許公報には、工作物に対して回転する、あるいは逆のレーザーを利用することが開示されている。例えば、奥田を発明者とするUSP4,170,726には、レーザービームを工作物に対してシフトさせながら、適当な許容範囲で回転路に対して接線方向に回転工作物にレーザービームを照射することによって工作物を成形、平滑加工する方法が開示されている。工作物の照射部分が溶融するため、この溶融材料をガス、エア、またはジェット流によって除去する。溝加工表面をレーザーによって加熱処理し、デブリを除去した後、この表面を加工するために加工装置を使用する。
【0003】
Binderなどを発明者とするUSP4,687,901には、レーザービームを発光する2つのCOレーザーおよびレーザービームを加工物に照射する案内/再配向装置をもつレーザー切削溶接装置を開示している。加工物を固定し、この加工物を中心にしてレーザーを回転する。デブリ除去手段については記載も開示もない。
【0004】
Galelを発明者とするUSP5,442,565には、インプロセスデータをリアルタイムで得て、材料の異種層間の界面の輪郭および位置を求める切削装置が開示されている。界面の求めた輪郭および位置に基づいて、制御システムを自動プログラミングし、線形動作装置を用いて、通常の動作制御システムを介して切削装置を自動的に制御する。
【0005】
Amiguetなどを発明者とするUSP6,173,213には、車輪加工物を確認、配向する車輪スタイル認識システムが開示されている。このシステムの場合、レーザーを使用して、車輪上の確認/加工開始点マークを検出する。また、このシステムは、車輪スタイル認識ステーション、車輪加工物を車輪スタイル認識ステーションに搬送するコンベヤ、および車輪スタイル認識ステーション上の車輪加工物の半径方向を検出し、半径方向信号を発信する車輪方向センサからなる。車輪マッピングセンサが車輪加工物を走査し、車輪加工物が一定の回転速度で回転している間に、車輪スタイルマッピング信号パターンを発生する。制御装置が、少なくとも一つの基準車輪スタイルマッピング信号パターンを用いて車輪スタイルマッピング信号パターンをこれと比較する。
【0006】
Masseeを発明者とするUSP6,195,595には、回転軸を中心としてキャリヤを回転させる駆動手段、および工作物を加工する加工装置からなる工作物の加工装置が開示されている。この装置は、さらに、駆動手段に対してx方向およびy方向に加工装置を移動させる加工装置移動手段、および加工装置が工作物を加工する一つかそれ以上の所望の加工路に従って加工するように、制御プログラムに従って移動手段を制御する一つかそれ以上の制御プログラムを記憶するメモリからなる制御装置を備えている。工作物を走査/測定するためにはレーザービームが用いられる。記憶されている装置パラメータと実測されたパラメータとが違っている場合には、加工装置が目的の加工路に従って加工を行うように各制御プログラムが制御を行う。
【0007】
Tenagliaなどを発明者とする米国特許出願第20050045607号明細書には、固体材料に衝撃波を照射することによって固体材料の特性を改善する方法および装置が開示されている。レーザー衝撃加工を利用して、衝撃波を発生する。この方法の場合、透明な水の層を上層とすることによって耐食性かつ耐溶解性にするとともに、固体材料の表面に乾燥付着しないように処理したエネルギー吸収性液体層を上層として使用し、固体材料の被覆部分に透明層を上層として使用する。可干渉性のレーザーエネルギーのパルスを固体材料の被覆部分に照射して、衝撃波を発生する。利用されないエネルギー吸収上層の少なくとも一部については、次のレーザー処理にそのまま使用でき、および/または後で使用するために回収することができる。
【0008】
以上の特許公報、明細書は、本発明者が現在認識している技術水準を反映するものである。これら特許公報、明細書について言及し、かつ概略を説明したのは、本願特許請求の範囲の審査に適切と思われる情報を開示するさいに、出願人の認識している開示義務を免れるためである。なお、以上の特許公報、明細書は、単独でも、また組み合わせて考慮した場合にも、本明細書に記載し、かつ特許請求の範囲に記載した本発明を開示するものではなく、また教示するものではなく、いわんや示唆するものでもなく、また示すものでもなく、さらに自明にするものでもない。具体的には、従来技術および/または従来文献などはいずれも、以下の発明の要約および詳細な説明に記載されているプロセスによって固体材料を成形、切削、および仕上げ加工する方法を開示するものではない。
【特許文献1】USP4,170,726
【特許文献2】USP4,687,901
【特許文献3】USP5,442,565
【特許文献4】USP6,173,213
【特許文献5】USP6,195,595
【特許文献6】米国特許出願第20050045607号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、(例えば10,000〜45,000rpmかそれ以上の)高速で工作物を回転し、工作物に力を加えて固体材料の一部を放出し、これによって回転する工作物に対して接線方向にある加工路上の放出された材料を排出し、そして望む場合には、排出材料の蓄積プロセスを通じて二次製品を形成する特定の構造体に排出材料を送り出す装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明装置には多くの作用効果および新規特徴がある。即ち、高速加工であること、各種の材料を簡単に成形できること、軽量な機械の使用が可能であること、精度が高いこと、工具を使用する必要が無いことである。本発明の接線方向製造について次に説明するが、最初に加工プロセスを説明してから、加工プロセスを実施する各構成成分について説明することにする。
【0011】
粒子放出プロセス:外観
【0012】
工作物をその回転路に維持する力は、求心力である。この求心力が、材料粒子を工作物表面に結合している結合力以上になると、材料の粒子が“遊離”し、回転に対して接線方向にその慣性路に従って離脱することになる。材料の粒子を遊離させるためには、求心力と放出剤が加えるエネルギーの合成力が、材料を工作物に保持している結合力より大きくなる必要がある。従って、回転速度が大きくなり、そして工作物表面が回転軸に接近するほど、即ち、求心力が大きくなるほど、材料を表面から放出させるために放出材が必要とするエネルギーが小さくなる。ニュートンの法則は、求心力が半径に反比例し、かつ回転速度の二乗に従って変化する様子を記述している。
【0013】
粒子の主放出プロセス:物理的、化学的および熱的プロセス
【0014】
物理的プロセス
放出プロセスには主として三つの放出プロセスがある。物理的プロセスは、材料のジェット流が、工作物を照射通過するプロセスである。この場合、材料のジェット流が表面に衝突し、表面の一部を引き剥がす。ジェット流の物質としては気体または液体を使用でき、またこのジェット流には、固体材料が含まれる。実例を挙げれば、ドライアイスなどの凍結ガス、サンドブラスト処理などの無機物質、ショットブラスト処理などの金属、ビーズブラスト処理などのプラスチックである。これら物質はいずれもジェット流の形で気体流れに担持することができる。(時には水ジェット流と呼ばれることもある)液体ジェット流には、添加剤を加えることもできる。例えば、これら添加剤は表面張力を高めるため、ジェット口から目標の材料にいたるさいに流れが一体化する。
【0015】
化学的プロセス
第2放出剤は、化学的放出剤である。苛性化学剤を工作物表面に加えると、工作物材料表面との化学的反応により、材料を保持する結合が破れる。例えば、4種類の化学的方法がある。第1は、溶解ジェット流を工作物に噴霧する方法である。このタイプの溶液の代表例は、水およびオイルをベースとする溶剤である。他の化学剤も使用でき、酸性溶液、アルカリ性溶液、または酵素溶液である。これら化学剤それぞれは、加圧ジェット流によって噴霧する。また、この噴霧は、“インクジェット”法を使用して実施してもよく、液滴サイズはきわめて小さい。
【0016】
熱的プロセス
第3の放出剤プロセスは、熱的プロセスである。固体工作物材料の一部を加熱すると、状態が変化し、液体または気体になる。高温材料の加圧ジェット流またはレーザービームや電子ビームなどのエネルギービームはこれに熱エネルギーを加えることできる。興味のあるものは、熱的状態の高い材料である。例えば、液体または気体が表面から飛び出すと、残る固体材料は低温状態にある。
【0017】
工作物に熱を加える別な方法は、燃焼であり、これは化学的プロセスと熱的プロセスをクロスさせるものである。適当な雰囲気と組み合わせて点火(熱エネルギー)源を使用すると、発熱化学反応として工作物が点火し、燃焼する。この燃焼プロセスが熱だけでなく、初期点火源を与え、工作物の一部が放出する。
【0018】
放出および排出
工作物から脱離した材料を放出、排出させるために、4つの主な方法がある。即ち、接線方向プロセス、電気放電、気体膨脹、加圧ジェット流の4つである。
【0019】
接線方向プロセス
このプロセスにおける主な方法は、工作物の回転運動の変化を続けるタンジェントを使用する方法である。接線方向運動速度は、表面材料が放出される半径における回転速度に依存するものである。排出状態にある材料の半径が遠心力を受けている工作物の全半径の約40%未満になると、接線方向速度が不十分になり、材料が非常に狭い孔から抜け出せなくなる。この問題は、工作物マウントを保持する保持体を全半径の40%以上にすると、解決できる。なお、ここで“放出”という用語を使用する理由は、力を作用させる代わりに、求心力を排除するためである。
【0020】
電荷
この放出に加えて、工作物は電圧で荷電できる。工作物の小さな部分が放出されると、材料の小さな領域の電荷が工作物と同じになる。同様な電荷同士は相互に反発するため、放出された材料が工作物表面から排出されることになる。
【0021】
気体膨脹
デブリを排出する別な方法では、気体の熱膨張を利用する。工作物を加熱すると、材料に隣接し、および/または材料内部にある気体が膨張する。デブリ材料および工作物の後で間にある気体がデブリ材料に圧力を加え、工作物からデブリを排出できる。
【0022】
加圧ジェット流
デブリ除去を促進するために、気体ジェット流または液体ジェット流を工作物表面に作用させることができる。
【0023】
工作物から除去する材料の量については、多数の方法で求めることができる。一つの方法は、遠心機への取り付け時に力センサとしてひずみ計を使用する方法である。求心力は、固定された半径および一定の回転速度での質量に直接関連して変化する。レーザー三角法またはレーザー式干渉計で力の低下を測定し、かつ半径の低下を測定することによって、質量変化を求めることができる。
【0024】
粒子の蓄積プロセス
材料粒子が工作物から放出され、排出されると、粒子は、全体として工作物の回転路に対して接線方向に飛ぶ。この回転路に基板を設定すると、放出された粒子をここに受けることができる。基板には多数の粒子を受け取ることができるため、衝突位置および配置を制御して、所望の形状を構成することができる。
【0025】
粒子の軌跡を制御する多数の方法がある。一つの方法は、接線方向路の開始点を制御し、粒子を特定の領域に着地させる方法である。より精密に制御するためには、粒子を工作物内で荷電すればよい。これら荷電粒子は、一つかそれ以上の磁気ヨークを通り、荷電粒子軌跡がブラウン管、陰極線管(CRT)においてコイルヨークに流れる電流を変更することによって調節される場合と同様に、粒子軌跡を変更調節できる。別な方法は、荷電粒子を電気的に荷電したプレートに送り、軌跡を変更する方法である。磁気ヨークおよび/または荷電プレートについては、粒子路に影響するように細かく制御すればよい。
【0026】
また、粒子を吹き飛ばすことによって粒子の軌跡を変更するために、気体ジェット流または液体ジェット流も使用できる。
【0027】
放出粒子は例えばきわめて小さいため、地上環境では重力の影響が作用する。地上のよるように重力場があるなかでの粒子軌跡については、制御プロセスの一環として重力を考えにいれて調節する必要がある。さらに、工作物の荷電状態で遠心機を回転させると、仮想電流、即ち移動電荷が発生する。移動する電荷は、磁場を作り出す。この誘導された磁場は、その磁極を遠心機の軸線にもつ。この磁場についても、粒子軌跡を計算、かつ制御する際に考えにいれる必要がある。
【0028】
粒子が着地する基板については、多くの適当な材料から構成できる。基板は固体材料でもよく、またゲルなどの半固体材料でもよい。また、基板材料については、固定された方向に保持する必要はない。この基板は、一つかそれ以上の軸を中心にして回転する、および/または一つかそれ以上の方向に並進できる工作物保持体に取り付けることができる。このプロセスを使用すると、三次元構造体を構成することができる。
【0029】
粒子の蓄積プロセスには異なるタイプの放出材料を使用できる。遠心機に異なる材料を使用すると、金属、プラスチック、ガラス、または無機物質からなる複合体を蓄積できる。
【0030】
この蓄積プロセスを促進するために、基板の近接周囲にある雰囲気を制御すると、蓄積プロセスを適正化できる。基板を荷電粒子とは逆に荷電すると、基板により粒子が集まることになる。また、基板の一部をマスクすると、粒子が基板の特定部位に集まることになる。さらに、雰囲気に、接着を促進する気体を配合することも可能であり、基板に、他の材料源から他の材料を同時に付着させてもよい。また、基板チャンバには、製造プロセスの異なる時点で温度を一定に保持するか、あるいは温度を変動させる温度制御装置を組み込んでもよい。また、基板の機械的環境を空にする必要はない。この環境については、各種の外部支持体を組み込んでもよく、あるいはゲルまたはフォームで充填してもよい。
【0031】
一つの工作物から材料を取り出し、これを別な製品に配合するプロセスは、射出成型用鋳型などの鋳型の製造にきわめて有用なプロセスである。
【0032】
プロセスの環境制御
チャンバについては、工作物が回転するように構成するのが好ましい。放出剤システムはこのチャンバの外側に配設してもよいが、アクセスできるように設定する。チャンバの雰囲気については、制御するのが好ましい。制御できるものには、制限する意図はないが、気体の選択的存在、磁場、電荷、および温度がある。
【0033】
チャンバ気体
チャンバについては、内部の空気を遠心機および工作物によって取り出してもよく、あるいは指向性ブロワによって制御してもよい。ブロワは、速度および方向が可変である。気体状の雰囲気については、燃焼を促進する酸素などの特定の気体を内部に含んでいてもよい。酸化を抑制するためには、アルゴンやヘリウムなどの不活性気体を導入してもよく、雰囲気には反応性気体を導入してもよい。また、チャンバには真空を部分的に引いてもよく、あるいは完全に引いてもよい。
【0034】
チャンバの磁場および電気特性
チャンバ内には、コイルその他の手段で制御することができる磁気雰囲気があってもよい。また、荷電プレートやワイヤで制御する電気的環境があってもよい。
【0035】
チャンバ温度
チャンバ内部の温度については、一定に保持してもよく、あるいは可変にしてもよい。チャンバ内の温度変化は均一変化にしてもよく、あるいはチャンバ内の異なるゾーンに異なる温度を導入してもよい。
【0036】
比較的遅い回転速度では、材料取り出し以外のプロセスを使用して、工作物を処理できる。例えば、工作物から材料を取り出す前に、洗浄または噴霧処理してクリーン化することができる。材料取り出し後は、工作物にアニーリングやテンパリングなどの熱処理を行うことができる。熱処理としては、レーザー、電子ビームその他の加熱手段を始めとする、異なる熱源を使用できる。工作物を加熱するために、遠心機に加熱要素を組み込んでもよい。また、工作物には、化学的または粉末コーティングや湿式塗料コーティングなどのコーティングを噴霧してもよい。回転工作物には、インクジェットスタイルのコーティングを適用できる。この場合には、チャンバの温度を制御して、表面に塗布した材料を乾燥またはベーキングすればよい。
【0037】
システムの作用効果
本発明には多数の作用効果がある。特に顕著な特徴は、工具を使用する必要がないことである。従来の機械加工の場合には、例えば、刃先や鋭い先端などの形に形成した硬化処理材料から工具を構成し、工作物の表面に当て、この表面の一部をチッピング、スコアリング、ゴウジングその他の切削手段で切削加工する。表面の切削加工形状は、一部は、工具の形状や硬度に依存する。さらに、各被加工物は、表面を有効に切削加工するために、異なる工具形状を使用する必要がある。従って、代表的な機械加工の場合、目的の形状を得るために、定期的に工具を変更する必要がある。工具の変更毎に時間が必要である。
【0038】
本発明システムの場合、硬化処理工具の代わりに、エネルギービームまたはジェット流を使用して、工作物表面から材料を放出する。このビーム/ジェット流の形状については、制御システムの一環として(本質的に同時に)調節するため、工具の変更は必要ない。このため時間、工具コストを節約できるだけでなく、工具の保管および目録作成も必要ない。さらに、このシステムの場合、金属や無機材料からガラス、プラスチック、複合体にいたる各種タイプの材料を成形できる。
【0039】
従来の機械加工では、工具が工作物表面から材料を切削するさいに熱が発生する。この熱のため、工作物が熱膨張し、一部が歪むことになる。除熱するために、外部源からおよび/または切削工具内部の流路から工作物に冷却流体または気体をジェット流として作用させる。付加的方法には、熱媒体として切削残渣を使用する方法があるが、この場合には、切削工具の形状だけでなく、高速切削プロセスも注意深く制御する必要がある。
【0040】
本発明の接線方向製造システムプロセスでは、最も高温の材料を放出し、これを表面から排出するため、工作物の温度が低くなる。このシステムでは、放出された材料が工作物に接触したままにならないため、熱の影響を受けた領域も減少する。
【0041】
さらに、従来の機械加工の場合、切削工具が、機械加工プロセス時に、工作物に振動を与える。このような振動が発生すると、工具と工作物の位置関係が変化し、これら変化は、代償および/または調節しない限り、機械加工プロセスにエラーを引き起こす。最も普通の方法では、振動を抑えるために、工具を工作物に強く固定するには機械装置はあまりにも質量が大きい構造体である。
【0042】
本発明システムの使用においては、工作物の回転時に材料を工作物の表面から接線方向に除去する場合、反応力が遠心機の軸線方向に作用する。この力は、質量の低下量、回転速度の二乗、および除去される材料の半径の逆元に直接関係する。この半径方向力に加えて、質量が減少する。これら両効果が振動を引き起こし、遠心機のバランスが崩れる。従って、工作物を遠心機の両側に設けて同時に加工し、上記の力をゼロネット効果について相殺する。こうすると、振動を最小限に抑制することができる。遠心機のバランスを維持する他の方法も使用することができる。
【0043】
本システムの特徴が完全に製造必要条件に一致する特別な状況がある。即ち、重力がゼロの宇宙空間における製造である。材料を宇宙空間にもってくるコストは、非常に高い。全ての工具および大形の機械装置すべてを備えた完成状態の機械工場を宇宙空間に設置することはコストの面からみてできない相談である。本発明システムを使用すると、材料へのアクセスおよび構成部品のコンピュータデスクリプションを前提にすれば、単一の機械が、事実上、宇宙で必要となる任意の構成部品を作ることできる。スペースステーションや長期滞在のスペースシップのためには、特に損傷を受けた部品の修理または交換においてこれはきわめて有用である。
【0044】
即ち、本発明の目的は、固体工作物を高速回転し、この工作物に力を加え、これによって溶融状態または半溶融状態にある工作物の一部を回転する工作物に対して接線方向に接線路に放出かつ排出する新規かつ改良接線方向製造システムを提供することである。
【0045】
本発明の別な目的は、回転する工作物から排出された材料を基板に向けて送り出し、材料の蓄積または堆積プロセスを利用して新規な物品を製造する新規かつ改良接線方向製造システムを提供することである。
【0046】
本発明のさらに別な目的は、従来の機械加工プロセスより効率のよい材料切削および材料取り込みプロセスを実現する新規かつ改良接線方向製造システムを提供することである。
【0047】
構成および操作方法に関する本発明の上記以外の新規特徴、および上記以外の目的および作用効果は、例示のみを目的とする本発明の好適な実施態様を示す添付図面にそくして以下の説明を読めばよく理解できるはずである。なお、図面はいずれも説明のみを目的とし、発明の範囲を制限するものではない。本発明の新規な特徴は、本明細書の一環として記載する特許請求の範囲に具体的に記載されている。本発明は、これら特徴のそれぞれ単独からなるものではなく、むしろ具体的に記載した機能の構造すべての具体的な組み合わせにある。
【0048】
以下の詳しい説明により本発明の理解が容易になるはずであり、また上記以外の目的も理解できるはずである。次に、添付図面について本発明を説明することにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
同じ参照符号が同じ構成部材を示す図1〜図14fについて説明すると、本発明の新規かつ改良接線方向製造システムは全体として100で示す。
【0050】
具体的に図1および図2について説明する。本発明の接線方向製造システム100は、いくつかの本質的な構成部材からなる。即ち、一つか複数の工作物110、工作物保持装置(手段)120、ベース部分140および軸150を有する遠心機130などの回転装置、好ましくはレーザー源などの放出システム160、封じ込み構造体170、制御システム(公知なシステムなので、図示省略)、および遠心機を機械的に駆動するモータ(公知なモータなので図示省略)からなる。なお、“遠心機”は、広くは、軸の回転軸線を中心にして回転する材料に強力な遠心力を作用させる回転装置を指す用語である。また、本発明システムは、蓄積用基材180を有する材料蓄積システムを有する。
【0051】
操作時、放出システムがエネルギーまたは固体粒子の合焦ビーム190を工作物の表面に照射して表面材料の結合を弱くし、遠心機の半径方向運動によって誘導された遠心力と連動して、表面材料の結合を壊し、蓄積用基板に向けられた粒子路200に材料を排出する。
【0052】
即ち、本発明がその最も作用効果を発揮する態様では、操作上および構造上、工作物保持装置が工作物を遠心機に取り付け、放出システムがエネルギーを付加して工作物から材料を放出し、封じ込み構造体が制御された環境を作り出し、材料および気体が汚染不純物としてプロセス領域に流入するか、あるいは封じ込み構造体から危険不純物として流出することを防止し、蓄積システムが蓄積プロセスおよび蓄積用基板を制御し、そして制御システムが加工装置の各構成部材の動作を一括制御する。
【0053】
図2に示す本発明システムの第1の好適な実施態様の場合、接線方向製造システムは遠心機および封じ込み構造体の外部に一つの放出手段を設け、エネルギーまたは材料の高粉末化ビームを照射する。図3〜図5に、好適な第2実施態様200を示す。この実施態様では、封じ込みシステムの外部に3つのエネルギー源を設け、複数の工作物が回転してビームの照射路に進入するさいに、それぞれが工作物に制御された形で可干渉性エネルギーの合焦ビームを照射する。
【0054】
図6〜図8に、本発明システムの第3の好適な実施態様を示す。外周に一つのレーザー源160を配設し、複数のビームまたは拡散のより強いビーム域195を複数のほぼ立方体状の工作物110に照射する。なお、各工作物は、アーム122およびアームの法線方向にあるフィンガー124からなり、工作物を取り込み、保持する手段になる工作物保持装置120に固定する。ステンシル式デザイン128のマスク126を、レーザー源と工作物表面との間に介在させる。この構成では、マスクを被せた工作物が、工作物の全面領域を有効にカバーするエネルギー源を通過すると、このエネルギーはステンシル部分のみを透過し、残りのエネルギーはマスク材料によって反射されるか、あるいは吸収される。遠心機のサイクル毎に、工作物表面をカバーするエネルギー源が一層の表面材料を取り込む。取り込まれる工作物材料の量は、回転速度×通過回数によって決定される照射時間に依存する。マスクを調節するか、あるいは異なるマスクを使用すると、複数の材料層を異なる深さで取り込むことができる。
【0055】
図9〜図11に本システムの第4の好適な実施態様400を示す。この場合、一つのレーザー源160を遠心機の軸150のすぐ真上に設ける。最初に軸開口を通過したビーム190を、軸150内に軸線方向に設けた近位ミラー410、412によって発散ビーム192、194に分離する。これら分離ビームは対向配置の導光アーム430、440を半径方向に通過して、導光アームの遠位部分432、442に配設した一組の上部遠位ミラー414、416に導かれる。この点で、ビームは向きを下に変更し、一組の下方遠位ミラー418、420に導かれる。ここで再度ビームが反射されるが、今度は、軸150の回転軸線152に向かって内側に導かれる。ミラー410、430を保持する構造体は、例えば、中空であるため、合焦ビームが通過できる。
【0056】
工作物110は、ハブ490から半径方向に走る回動可能なアーム470、480の外側部分に設けた角度のあるマウント450、460に回動自在に取り付ける。角度のあるマウントは、所定の範囲だけ回転して工作物の表面をビームに対して回動する、回動プラットフォーム454、464を取り付けた第2の軸点452、462を有する。
【0057】
図12および図13に、2つのレーザー源を導光アーム510、520の上に設けた、本発明システムの第5の好適な実施態様500を示す。これらレーザー源が、2つの別なビーム192、194を外側に一組の上部遠位ミラー530、540に照射し、これらミラーがビームを下向きに一組の遠位ミラー550、560に反射し、これらミラーがビームを再び内側に軸150の回転軸線に反射する。角度のあるマウント570、580をx軸線572、582に回動自在に取り付け、そしてy軸線プラットフォーム590、600をy軸線592、602において角度のあるマウントに回動自在に取り付ける。工作物設定システム全体については、固定式または回転式ハブ620上に軸方向に配設できる選択的に着脱できるカセット610上に展開配置する。
【0058】
図14に、第5の好適な実施態様の変形構成を示す。この構成では、一つか複数のアーム630、640をベース部分140に固定するとともに、ベース部部分140に片持ち式で固定する。各アームは、工作物の軸からの距離よりも長い遠心機軸の距離で、ベース部分670、680をそれぞれのアームに回動自在に取り付けた蓄積用基板650、660を支持する。従って、蓄積用基板は、工作物の回転速度に準じる速度で回転するため、排出される材料の排出路に直接かつ永久的に固定できる。さらに、レーザーは断続的ではなく連続的に作動するため、生産プロセスを促進できる。また、アームは着脱自在に取り付けることができるため、装置は、図12および図13に示す第5の好適な実施態様と同じ機能を発揮できる。操作すると、放出される材料は、遠心機の軸線から、材料が放出される工作物上の放出点にいたる半径方向直線から全体としてはほぼ60.3度の角度で放出される。この角度と軸線からの半径方向距離との交点に蓄積用基板を設けることによって、排出される材料を基板上の特定の位置に向けて排出できる。この構成の場合は、レーザービーム源を遠心機に配置した実施態様に最適である。
【0059】
図15に示す構成では、2つかそれ以上の遠心機800、810を並列配置し、逆方向に回転させて、遠心機間の排出材料路に配置した蓄積用基板850の両側に材料820、830を排出する。遠心機システムをこのように構成すると、製造プロセス時に取り扱うえる複数の材料流を作り出すことができる。材料が基板に蓄積し、そして製造中の製品の質量が大きくなると、基板の側部または側縁部が現れるまで、基板を回転させることができるため、蓄積材料を製造中の製品の側部に向けることができる。あるいはおよび/またはこれに加えて、一つかそれ以上の遠心機の位置を相互調節して、材料流を異なる角度で作り出す、製品のすべての蓄積表面を作り出すことができる。この場合には、上記のように構成した遠心機を使用すると、製造速度が増すことになることはいうまでもない。
【0060】
図16および図16a〜16fに、プロセスをセクション化して実施するために本発明システムを使用できる方法を示す。このプロセスの主目的は、材料断面のすべてを融解または溶融することなく、工作物の一断面を切り出すことである。このプロセスでは、エネルギー源を利用して、断面周囲に一連のカットを作り、断面が工作物に付着できなくする。例えば、工作物900(図16)から正方形立方体を切り出すためには、最初に、表面に露出している立方体の一面910を立方体深さまで切り込む(図16a)。次に、対向する側底部縁940まで上部の側縁部930から切断920(図16b)する。これによって、容積の半分を三角形楔の形で切り出すことになる。次に、対向する上部縁960から第1側部の低縁部970に走る直線にそって三回目の切断(図16c)950を行う。切り出された楔は、同様に残りの容積の半分である。そして上縁部から立方体の底部中心1000まで4回目、5回目の切断980、990(図16d)を行う。切り取られた形状は、端部が平坦なダイヤモンド形になり、同様に、残りの容積の半分である。セクション化による除去率が材料の溶融または融解率よりも小さくなるまで、一連の切断を行い、各切断によって残りの容積の約半分を除去するようにプロセスを連続実行する(図16e〜16f)。このプロセスでは、材料取り込み率を従来のレーザー材料取り込み率の約300倍にでき、(そして従来の高速ミリングの2〜7倍にすることができる)。
【0061】
工作物
液体または気体は、遠心機が与える回転力作用下で一体化を保つのに十分な表面張力または内部結合強度をもたないため、工作物は、固体材料でなければならない。機械加工に好適な固体材料には、金属、プラスチック、無機材料、ガラス、複合材料、有機材料、凍結気体や凍結液体がある。工作物の形状は、機械加工プロセスおよび工作物保持装置に合う形状に予め設定しておくことができ、例示すれば、ブロックの形、円筒体の形、多面体の形、プレートの形、リングの形がある。また、工作物は、複数の小さな部品のブランク材として使用することもできる。一つの方法の場合には、一つの小さな部品を形成し、次に工作物(着地領域が必要である)の回転時にこれを取り込む。あるいは、複数の部品を形成し、加工後にこれらを分離する。リング形の工作物の場合には、遠心機ハブに設置できる。この場合には、リング各断面を個々の部品として形成でき、またはリングを一つの部品として加工できる。また、工作物を可撓性材料から構成し、これを、角度のある力の作用で加工する必要のある構造形状になる工作物保持装置に保持することができる。
【0062】
工作物保持装置
工作物保持装置の目的は、工作物を遠心機に取り付け、これを固定することである。これは、ボルトまたはねじ取り付け装置などの一つの取り付け装置で構成できる。ねじ、ボルトや接着剤などの取り付け装置をもつプレート、円筒体、リングまたはボウルなどの一つの面を使用できる。フレームにクランプまたは万力を取り付けたものなどの複数表面も利用できる。取り付け操作を迅速化するために磁気プラテンも利用できる。工作物保持装置は、手動で工作物に取り付けることができ、あるいは自動締め付けまたは自動取り付けシステムを利用してもよい。
【0063】
一つの工作物保持装置(図1および図2)または複数の工作物保持装置(図3〜図13)を遠心機に装着できる。一対かそれ以上の対の工作物保持装置(図3〜図13)を利用すると、2つの工作物を同時に加工できる。遠心機軸線の両側に2つの工作物保持装置を設けると、遠心機上の質量および力のバランスを取ることができる。
【0064】
遠心機に対して所定関係で工作物保持装置を固定できる。このような場合、保持装置の半径方向運動の外側円弧に対して外側に対面する関係で工作物の固定部分を設定できる。
【0065】
あるいは、調節可能な軸線をもつターンテーブルに工作物保持装置を設置できる。これらの回転軸線数は一つでもよく、あるいは複数でもよい。例えば、ターンテーブル軸線が遠心機軸線に対してほぼ平行な場合には、ターンテーブル上で工作物を回転して工作物の側部全体を露出させることができる。遠心機の半径に対して垂直に回動する調節可能なアームにターンテーブルを載せると、工作物の上面だけでなく側面も成形できる。このため、複雑な三次元形状も製造できる。また、工作物保持装置は、遠心機に取り付けることもでき、従って一つの方向または複数の方向に並進運動を調節できる。
【0066】
工作物保持装置は、遠心機に直接取り付けてもよく、あるいはカセットに取り付けてもよい。工作物保持装置は、遠心機に永久部材として、あるいは着脱自在に取り付けることも可能である。工作物保持カセットシステムを利用すると、工作物を装置の外側で、カセットに装入できる。また、カセットシステムの場合、遠心機から装入済みカセットを交換することができる。また、遠心機が別のカセット群を処理している間、工作物をカセットに出し入れできる。カセットシステムの場合、カセットを一つずつ、あるいは複数を同時にトレーに装着することができる。一つのトレーに複数のカセットを載せる場合には、システムは、着脱式カセットを有するか、あるいはカセットトレーを交換することができる。平面カルーセル、上下スタックや上下カルーセルを始めとする、CDを操作する構成と類似した多数の構成でカセットトレーを扱うことができる。
【0067】
遠心機
遠心機は工作物、工作物保持装置、カセットおよび回転キャリッジを有する。遠心機には、さらに多数の構成が可能である。遠心機のレベル数は一つでもよく、あるいは複数でもよい。さらに、床面に対して各種の方法で向きを変更できる。平面に垂直な遠心機軸線をもつ水平遠心機は、他の用途に利用されている遠心機の従来構成である。また、平面に平行な軸線をもつ垂直遠心機には、遠心機の重量を半径方向に位置が一致している同じベアリングによって支持でき、また遠心機支持構造体の両側にアクセスできるため、重量場においていくつかの利点がある。方向については、他の方向も利用でき、遠心機を一つの方向で操作してから、方向を変えて製品加工できるように、調節または回動できるようにしてもよい。
【0068】
遠心機構成の選択
遠心機サイズは使用目的に応じて変更できる。きわめて小さい製品を製造するさいには、小さな遠心機を利用できる。工作物サイズが大きくなると、回転を制御および拘束する必要条件も厳しくなり、サイズに制限がでてくる場合もある。なお、このサイズ制限は、きわめて大きい場合もある。
【0069】
遠心機の回転キャリッジは、工作物保持装置または保持カセットを保持するものである。これは、軸線を中心にして回転する。キャリッジは、内部に軸線を有していてもよく、軸線とともに回転してもよく、あるいは固定軸を中心として回転する別な構成体としてもよい。半径方向ベアリングおよび軸方向ベアリングを利用して、回転キャリッジをベース構造体に固定する。これら半径方向ベアリングは、回転軸線を中心とする力の伝達をスムーズにする。また、軸方向ベアリングは、回転軸線方向の力の伝達をスムーズにする。エアベアリングなどの任意のタイプのベアリングを利用できる。
【0070】
さらに、円形トラック上を移動する複数のキャリッジを利用することも可能である。このような場合、軸は離散的な構造をもつ必要はない。
【0071】
遠心機については、円形路をベアリングによって拘束した非バランスシステムでもよく、あるいはバランスの取れた遠心機を利用してもよい。遠心機のバランスは、手動もしくは自動でバランスをとってもよい。カセットの場合は、遠心機に装着する前に、バランスを取ることができる。
【0072】
遠心機の回転は、モータによって誘導する。モータとしては、(直接駆動されるか、あるいは伝道システムを介して駆動される)電気モータ、またはエアモータや油圧モータを利用すればよい。
【0073】
放出システム
放出システムは、工作物表面にエネルギーを加えて、表面材料の結合を弱める手段になる。放出システムは、一つのエネルギー源および、図2に示すように、エネルギー源から離散的な工作物にいたる一つの搬送路をもつか、あるいは図3〜図5に示すように、複数の工作物にエネルギーを照射する複数のエネルギー源をもつものである。エネルギー源を工作物に向ける方向は、実施するべき成形加工、切削加工、仕上げ加工その他の加工に応じて任意の角度に設定できる。放出された無機物質粒子が工作物から遊離するためには、接線方向路は工作物が邪魔しないように構成する必要がある。
【0074】
放出システムは、一つのエネルギー源および工作物にいたる複数の搬送路をもつものでもよい。例えば、レーザービームは多数の異なるミラーから反射し、遠心機の円周上にある複数の点に向かうように構成することができる。一つのエネルギー源および一つか複数の搬送路に加えて、放出システムは、複数のエネルギー源および複数の搬送路を備えていてもよい。異なるタイプのエネルギー源を一つの装置に組み込んでもよい。あるいは、複数の遠心機が、同じエネルギー源または複数のエネルギー源を利用できるようにしてもよい。
【0075】
例えば、複式遠心機システムの場合、各遠心機は、能動的でもよく、あるいはロード式または非ロード式でもよい。この例では、一つの遠心機が減速している場合に、減速エネルギーを利用して第2の遠心機を起動する。さらに、レーザーなどの一つのエネルギー源を利用する場合には、レーザーの作動をほぼ一定に設定することができ、ダウンタイムはほとんどない。
【0076】
エネルギービームのビーム照射路は、使用するエネルギー源に依存する。COレーザーの場合、ビームの波長がガラスによって吸収されるため、ビーム照射路は、空気中か真空中に存在し、照射方向はミラーで制御する。YAGレーザーの場合、ビームはガラスを通過するため、ビーム照射路は、光ファイバーケーブルを通り、ミラーで制御する。電子ビーム、マイクロ波、無線波などの他のエネルギー源には、それぞれ固有な制御方法がある。
【0077】
エネルギー源については、照射強度および照射時間を制御できる。また、短いパルス時に工作物に衝突するビームの強度は変更できる。必要な場合、あるいは望む場合、照射を一つの照射レベルで開始して照射領域を“軟化”し、次に別なレベルに切換え、工作物より多くの材料を放出する。エネルギービームについては、固定式、可変式、回転式、角度式または並進式のいずれかであればよいレンズおよびミラーで制御できる。例えば、遠心機に対して平行で、かつ遠心機と同じ周波数でしかも反対方向に回転する回転軸線上にある平坦ミラーにレーザービームを投射する場合、工作物が通過する多数の角度範囲にわたって工作物表面の特定の点にレーザービームを照射できる。あるいは、ミラーを固定した場合には、任意の照射時間、工作物表面にビームを照射すると、鋭い点の代わりに、工作物表面がビーム間で回転するときに線が発生する。
【0078】
エネルギービームの焦点についても、エネルギーの拡散域からきわめて小さい点にいたるまで制御できる。ビームのエネルギーパターンについては、ガウスビーム、または双峰ビームや四峰ビームなどの広いビームにおける尖細な円錐形キャビティなどのレーザー源キャビティによって決定できる。エネルギービームが反射してエネルギー源に戻ること、例えばビームの小さな角度の偏向を防ぎ、反射リターン路が発生することを防止するためには、従来の技術を利用できる。
【0079】
エネルギービームに加えて、噴霧ジェット流も利用できる。この場合には、加圧気体または液体を弁から管状搬送システムに送りこみ、ノズルから外に排出する。遠心機の外側にノズルを一つか複数設置できる。工作物に対するノズルの方向については、固定してもよく、あるいは調節できるように構成する。ノズルの角度の方向は制限されない。ノズルおよび圧力システムは、“インクジェット”などの一つのユニットに構成できる。
【0080】
合焦エネルギー源に加えて、非合焦エネルギー源を利用することも可能であり、遠心時に、工作物の状態を調節して材料を放出することができる。例えば、一つかそれ以上の工作物を装入したオーブン内でマスク法を実施することができる。オーブン温度が、工作物を溶融するのに十分高い温度に達すると、露出表面材料が放出し、遊離する。
【0081】
封じ込みシステム
封じ込みシステムには2つのレベルがあり、装置全体の封じ込みシステムと、作業エリア封じ込みシステムである。
【0082】
装置全体の封じ込み構造体
例えば、システム全体を完全に封じ込みなければならない場合がある。これは、レーザーを使用する場合、封じ込み構造体が損傷を与えるレーザー光を外に出さないことを確保するための安全システムを提供することを含む。
【0083】
多くのタイプの材料、特にプラスチックは気体を放出し、燃焼するため、各種の有毒ガスを放出するが、これらは中和して封じ込める必要があり、またプロセスに使用する流体も封じ込み、中和し、ろ過処理する必要がある。さもなければ、作業域にいる作業員などが、本発明プロセスが発生する細かなダスト粒子を吸い込むことになる。これらダスト粒子サイズは、1μ程度である。即ち、これら粒子を原因とする疾病を未然に防止する手段が必要である。
【0084】
さらに、作業員が可動の構成部材に触れることがないように装置および作業員をバリヤで分離する必要がある。封じ込み構造体の別な目的は、遠心機または工作物が大事故で壊れた場合に、外部環境がダメージを受けることを未然に防止することである。
【0085】
装置封じ込み構造体は、装置自体が事故によって損傷することを防止するものである。
【0086】
作業域封じ込み構造体
作業域は、遠心機上で回転する工作物を取り囲む領域である。放出エネルギーがこの作業域を通過し、工作物に到達する。ここが、粒子が放出され、閉じ込められる場所である。この封じ込み構造体の目的は、粒子路を制限し、作業員および環境を保護することである。また、工作物の環境を制御することも目的である。さらに、この構造体は放出システムも保護するため、粒子によって汚染され、損傷されることもない。エネルギー源を作業域で利用するために、封じ込み構造体に開口や窓を設ける。合焦エネルギーが通過する部分を工作物により近接させるとともに、粒子路部分をさらに引き離すように、作業域封じ込み構造体を構成できる。
【0087】
この封じ込み構造体の一部にレーザー光に耐性をもつ窓を形成し、そして同期ストロボ光が、通過時に、工作物を照明するように構成することもできる。
【0088】
制御システム
システム制御については、専用のコンピュータシステムのソフトウェアで行うのが好ましい。コンピュータによって制御される主なシステムには、遠心機、放出剤(即ち、エネルギー源)、蓄積システム、環境制御、非常停止がある。これらシステムすべてにおいて、最適な制御はセンサフィードバックを含む。
【0089】
遠心機制御には、回転速度制御、回転タイミング制御、工作物保持装置制御、加熱、冷却および荷電処理などの工作物制御、自動バランスシステム制御、締め付けシステム制御、およびベアリング制御がある。
【0090】
エネルギー源/放出剤制御システムには、エネルギー源の照射強度および照射時間が含まれる。ビーム照射路制御には、ミラー制御、レンズ制御およびビーム環境制御がある。また、アライメンシステム制御も含まれる。ジェット流の場合は、流路制御には弁制御、オリフィス変更制御だけでなく圧力制御も含まれる。
【0091】
蓄積制御システムには基板の向きの制御、粒子路制御および蓄積環境制御が含まれる。
【0092】
環境制御には、内部の作業域気体、温度、電気、磁気環境制御だけでなく、副生成物である気体、流体および固体の処理制御がある。また、熱、冷気またはダストなどの外部源による内部環境を正規化する代償システムも含まれる。
【0093】
非常停止システムは、臨界的な構成部材をモニターするとともに、システム動作を制御し、破壊的な事故を防止するセンサを含むものである。
【0094】
以上の説明は、当業者ならば、過度な実験を行わずに本発明を実施するために十分なはずである。また、以上の説明は、本発明者が意図する発明の最良の形態を示すものである。
【0095】
以上詳細に説明してきた接線方向製造の具体的な装置および接線方向製造方法を利用すれば、本発明の目的および作用効果を実現できるが、以上は、本発明の現状での好適な実施態様を単に例示するもので、特許請求の範囲に記載した以外の構成およびデザインの細部を制限するものではない。従って、本発明の適正な範囲は、特許請求の範囲の最も広い解釈によってのみ決まるもので、添付図面に図示し、本明細書に開示したものと等価な変形例ならびに関係すべてを含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の接線方向製造システムの本質的な機能上の原理を説明する概略上面平面図である。
【図2】本発明の接線方向製造システムの第1の好適な実施態様を示す斜視図である。
【図3】本発明の接線方向製造システムの第2の好適な実施態様を示す斜視図である。
【図4】図3の側面正面図である。
【図5】図3の上面平面図である。
【図6】マスクプロセスで基板を成形する構成要素を含む、本発明の接線方向製造システムの第3の好適な実施態様の構成要素を示す斜視図である。
【図7】図6の上面平面図である。
【図8】図6の展開斜視図である。
【図9】本発明システムの第4の好適な実施態様の構成要素を示す斜視図である。
【図10】図9の側面正面図である。
【図11】図9の展開斜視図である。
【図12】本発明システムの第5の好適な実施態様の構成要素を示す斜視図である。
【図13】図9の側面正面図である。
【図14】第6の好適な実施態様を示す斜視図である。
【図15】並列配置した遠心機であって、逆方向に回転してこれら遠心機間に設けた蓄積用基板の両側に材料を排出する遠心機を示す概略上面平面図である。
【図16】図16及び図16a〜図16fは、本発明方法および装置を利用してセクション化加工されている状態の立方体工作物を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0097】
100:接線方向製造システム、
110:工作物、
120:工作物保持装置、
122:アーム、
124:フィンガー
126:マスク、
128:ステンシルデザイン、
130:遠心機、
140:ベース部分、
150:軸、
160:放出装置(レーザー源)
170:封じ込み構造体、
190:合焦ビーム、
200:粒子路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部分および回転軸線をもつ軸を有する遠心機、
上記遠心機を駆動する手段、
上記ベース部分に設けられ、工作物の質量中心が上記回転軸線上に位置しないように工作物を保持する工作物保持手段、
エネルギーを工作物の表面に照射する材料放出手段、および
上記材料放出手段を制御する制御手段からなることを特徴とする製造システム。
【請求項2】
さらに、上記遠心機を取り囲む封じ込み構造体を有する請求項1記載のシステム。
【請求項3】
上記材料放出手段がエネルギーの合焦ビームである請求項1記載のシステム。
【請求項4】
上記エネルギービームをレーザービームおよび粒子ビームからなる群から選択する請求項3記載のシステム。
【請求項5】
さらに、材料蓄積システムを有する請求項1記載のシステム。
【請求項6】
上記材料蓄積システムが蓄積用基板および基板保持手段を有する請求項5記載のシステム。
【請求項7】
上記制御手段が、上記材料放出システムおよび上記材料蓄積システムの動作を制御、統括する請求項6記載のシステム。
【請求項8】
ベース部分および回転軸線を持つ軸を有する少なくとも一つのモータ式遠心機、
上記遠心機それぞれの底部に設けられ、少なくとも一つの工作物をそれぞれの遠心機に取り付ける少なくとも一つの工作物保持構造体、
上記工作物保持構造体に保持された工作物の表面に十分なエネルギーを加えて、工作物から材料を放出させる材料放出システム、
上記遠心機を取り囲み、上記遠心機に隣接する製造環境を制御するとともに、望ましくない材料および気体が製造プロセスに干渉することを防止する封じ込み構造体、および
上記材料放出システムを少なくとも制御する制御システムからなることを特徴とする接線方向製造システム。
【請求項9】
上記材料放出手段が、上記遠心機および上記封じ込み構造体の外側に設けられた少なくとも一つのエネルギー源からなり、上記エネルギー源が、上記工作物保持構造体によって保持され、かつ上記遠心機によって回転してビーム照射路に進入する工作物の表面にエネルギーまたは材料のビームを照射できる請求項8記載のシステム。
【請求項10】
上記エネルギー源が、上記工作物保持構造体の円周上に配設されたレーザーである請求項8記載のシステム。
【請求項11】
上記工作物保持構造体が、ステンシル式デザインをもつマスクを有し、上記エネルギー源と工作物の表面との間にこれらマスクそれぞれを介在させた請求項8記載のシステム。
【請求項12】
上記遠心機の軸のすぐ真上からビームを照射できるように、上記エネルギー源を配置した請求項1記載のシステム。
【請求項13】
上記遠心機上で回転するように、上記エネルギー源を上記遠心機に配置した請求項12記載のシステム。
【請求項14】
上記エネルギー源が上記遠心機と一体で回転しない請求項12記載のシステム。
【請求項15】
さらに、少なくとも2つの導光アームを上記軸から半径方向に延設し、各導光アームが近位端部および遠位端部を有するとともに、上記エネルギー源からビームを工作物に照射する反射手段を有する請求項8記載のシステム。
【請求項16】
上記反射手段が、上下の遠位ミラーを上記遠位端部に設けたもので、しかも上記軸が中空構成で、上端に開口を有するとともに一つの近位ミラーを上記導光アームそれぞれの上記軸内に軸線方向に設け、上記ビームを上記軸の開口を介して照射した場合、上記近位ミラーによって発散ビームに分離し、上記導光アームそれぞれを介して上記遠位ミラーに半径方向に照射され、この点で上記発散ビームが向きを下に変えて上記下方遠位ミラーに照射し、これらミラーがビームを反射して工作物を照射する請求項15記載のシステム。
【請求項17】
上記ビームを上記反射手段によって内側に向きを変え、上記回転軸線方向に照射する請求項15記載のシステム。
【請求項18】
上記エネルギー源が少なくとも2つのレーザー源を有し、それぞれを上記導光アームの一つの上に設けるとともに、上記レーザーそれぞれによってビームを上記導光アームの上記遠位端部に向けて照射し、そして上記反射手段が、最終的にビームを内側にむけて上記回転軸線の方向に照射する請求項15記載のシステム。
【請求項19】
上記工作物保持手段が少なくとも一つの回転軸線をもち、工作物をエネルギーのビームに対して回動させる請求項8記載のシステム。
【請求項20】
上記軸上に軸線方向に配置できる、選択的に着脱できるカセット上に上記工作物保持手段を配置した請求項8記載のシステム。
【請求項21】
さらに、少なくとも一つのアームを、蓄積用基板を支持する上記ベース部分から延設し、工作物と同じ速度で上記蓄積用基板を回転させ、工作物から排出される材料の材料路に直接かつ永久的に固定できるように構成した請求項8記載のシステム。
【請求項22】
エネルギーを工作物に照射する材料放出手段を有する複数の遠心機を有し、工作物から材料を放出して、材料を蓄積用基板の両側に同時に与える複数の材料路を作り出すように構成した請求項8記載のシステム。
【請求項23】
さらに、蓄積用基板およびこの蓄積用基板を保持する手段を有する蓄積システムを有する請求項8記載のシステム。
【請求項24】
上記制御システムが、上記材料放出システムおよび上記蓄積システムの動作を制御、統括する請求項23記載のシステム。
【請求項25】
(a)固体工作物を保持する手段をもつ遠心機、工作物にエネルギーを作用させるエネルギー源を用意する工程、
(b)上記遠心機を高速回転する工程、および
(c)エネルギー源からエネルギーを照射して力を工作物に加え、これによって回転する工作物に対して接線方向にある放出路に工作物材料の部分を放出し排出する工程からなることを特徴とする製造方法。
【請求項26】
上記工程(c)において、気体ジェット流または液体ジェット流を工作物に作用させる請求項25記載の方法。
【請求項27】
上記工程(c)が、苛性化学剤を工作物表面に作用させることからなる請求項25記載の方法。
【請求項28】
上記工程(c)が、熱エネルギーを工作物表面に作用させることからなる請求項25記載の方法。
【請求項29】
上記工程(c)が、電子ビームを工作物表面に照射させることからなる請求項25記載の方法。
【請求項30】
さらに、電圧を工作物に印加して電荷を与え、これによって放出された粒子を工作物によって反発させる工程を有する請求項25記載の方法。
【請求項31】
(d)上記遠心機に近接して基板を配置する工程、および
(e)工作物から排出された材料を基板に向けて照射し、材料蓄積プロセスにより製品を形成する工程をさらに有する請求項25記載の方法。
【請求項32】
上記工程(e)が、排出された粒子の開始点を調節することからなる請求項25記載の方法。
【請求項33】
上記工程(e)が、粒子を荷電し、排出される粒子を磁場に通すことからなる請求項32記載の方法。
【請求項34】
上記粒子制御手段が粒子をガスジェット流または液体ジェット流でブローする請求項32記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図16a】
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【図16b】
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【図16c】
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【図16d】
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【図16e】
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【図16f】
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【公表番号】特表2009−502505(P2009−502505A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−522974(P2008−522974)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【国際出願番号】PCT/US2006/028262
【国際公開番号】WO2007/012056
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(508018222)
【氏名又は名称原語表記】HANSEN,Thomas,C.
【住所又は居所原語表記】P.O.Box 2238,Rohnert Park,CA 94928 USA
【Fターム(参考)】