説明

搬送制御装置および搬送制御方法

【課題】生産設備の状態変動に応じたロット搬送を実施できる、搬送制御装置および搬送制御方法を提供する。
【解決手段】生産スケジューラ11は、生産計画にしたがって、各生産設備4に投入されたロットの処理終了概算時刻を算出する。当該処理終了概算時刻に基づいて処理終了間近の生産設備4が特定される。搬送制御部15は、処理終了間近の生産設備4から処理済のロットを搬出するための搬送台車6を予約する。また、設備情報収集部13は、当該生産設備4において、処理時間を変動させる要因となる処理情報を収集する。終了時刻補正部14は、処理情報に基づいて処理終了補正時刻を算出する。搬送シミュレータ12は、現在時刻から処理終了補正時刻までの間の、全搬送台車の動作を模擬再現し、予約搬送台車が生産設備4に到達するまでの所要時間を取得する。当該所要時間に基づいて、搬送制御部15が搬送開始を予約搬送台車に指示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路装置や液晶パネル等の生産ラインにおいて、生産ラインを構成する生産設備間で製品を搬送する自動搬送システムを制御する搬送制御装置および搬送制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路装置の高集積化、高機能化および動作速度の高速化にともなって、製造工程数が増加している。そのため、生産ラインを構成する生産設備間で製品(以下ロットという。)を搬送する搬送経路が複雑化するとともに、ロットの搬送回数も増加している。このような生産ラインでは、ロットの搬送のために、自動搬送システムが設けられている。
【0003】
自動搬送システムは、例えば、生産ラインが設置されるクリーンルームの天井に吊架され縦、横および斜めに交叉して配置されたレール(搬送路)、および当該レールに沿って走行する搬送台車を備える。搬送台車は、搬送制御装置からの制御信号によって、上記レールの最短もしくはそれに近い搬送ルートを選択して自走する。このように、搬送台車が、レールの最短もしくはそれに近い搬送ルートを選択して自走するため、搬送能率が向上し、多数のロットを頻繁に搬送することが可能となる。
【0004】
しかしながら、搬送距離のみを考慮して搬送ルートを選択する構成では、最短時間でロットを搬送できるとは限らない。例えば、選択された搬送ルートに、搬送台車が停止する、停止ステーションや移載ステーション等が存在する場合、搬送時間には停止時間が含まれる。すなわち、搬送距離が短くても、搬送時間が長い搬送ルートが存在する。したがって、搬送距離のみを考慮して搬送ルートを選択する構成では、搬送距離は短いが、搬送時間が長い搬送ルートを選択することがある。この場合、ロットを効率的に搬送することができない。
【0005】
この対策として、自動搬送システムの現在の搬送負荷状況や搬送ルート上の異常を検知し、渋滞しているルートや搬送不可能なルートを回避して、搬送時間が最短になるように搬送経路を選択する搬送制御方法が提案されている(例えば、特許文献1等参照。)。特許文献1に開示された自動搬送システムは、搬送距離、搬送時間、搬送路のトラブル状況、搬送路の渋滞状況を考慮して搬送ルートを選択する。また、搬送台車が、レールの分岐点に設置された分岐ステーションに到達する都度、搬送ルートを再設定する。したがって、ロットを効率的に搬送できるとともに、選択された搬送ルート上に、トラブルや渋滞が発生した場合にも、これらを反映させた搬送ルートを再設定できる。このため、ロットを効率的に搬送することができるとされている。
【特許文献1】特開2004−207335号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、搬送ルート選択時に、各搬送路を通過した搬送台車の台数と予め設定された台数とを比較することにより、渋滞を検知している。すなわち、各搬送ルートにおける搬送台車通過数の実績値に基づいて渋滞状況を判断している。そのため、搬送ルートを指示した後、搬送ルートの再選択を行うまでの間の搬送路の状況変化に対応することができない。
【0007】
例えば、生産設備において処理が終了したり、生産設備に処理開始が指示されたりした場合、当該生産設備からのロット搬出、あるいは当該生産設備へのロット搬入のため、当該生産設備が配置されている搬送路に搬送台車が集中することがある。搬送台車が搬送ルートを再選択するまでの搬送ルート中の生産設備がこのような状態になると、指示を受けた搬送台車は渋滞に巻き込まれることになる。また、搬送ルート選択時に渋滞しており、搬送台車へ指示する搬送ルートとして選択されなかった搬送路であっても、数分後には渋滞が解消する場合もある。この場合、渋滞が解消された搬送ルートを選択した方が、結果的に搬送時間が短くなる場合もある。したがって、特許文献1に開示された技術を適用した場合であっても、生産設備への搬送台車の到着が遅れる可能性がある。その結果、ロットの生産リードタイムが増大する状況が発生しうる。すなわち、この観点では、特許文献1に開示された従来技術は、不十分な技術であるといえる。
【0008】
本発明は、上記従来の事情を鑑みて提案されたものであって、生産設備の状態変動に応じたロット搬送を実施できる、搬送制御装置および搬送制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明は以下の技術的手段を採用している。まず、本発明は、複数の生産設備により構成される生産ライン内で複数枚の半導体ウエハからなるロットを格納する収納容器を搬送するための軌道レールと、収納容器を搭載して軌道レールに沿って走行する複数の搬送台車とを備える自動搬送システムの搬送制御方法を前提としている。そして、本発明に係る搬送制御方法は、まず、生産計画にしたがって、生産ラインを構成する各生産設備に投入されたロットの処理終了概算時刻を算出する。次いで、算出された処理終了概算時刻により特定される処理終了予定の生産設備にて処理中のロットを、処理終了後に当該生産設備から搬出するための搬送台車を予約する。また、算出された処理終了概算時刻により特定される処理終了予定の生産設備にて処理中のロットに対する処理について、当該処理の処理時間を変動させる要因となる処理情報を収集する。当該収集された処理情報に基づいて、処理時間の変動を反映した処理終了補正時刻を算出する。さらに、現在時刻以降の全搬送台車の動作をシミュレーションすることにより、予約された搬送台車が、指定された生産設備に到達するまでの所要時間を算出する。そして、上記所要時間に基づいて、予約された搬送台車が指定された生産設備に処理終了までに到達するように、当該搬送台車に指定された生産設備への移動開始を指示する。
【0010】
本構成によれば、生産設備で現在処理中のロットの処理終了時刻に合わせて、処理が完了したロットを回収するための搬送台車が搬送される。したがって、処理済のロットを生産設備から速やかに搬出することができる。そして、搬出直後に、次処理ロットを搬入することにより、生産設備の稼動率を向上することができるとともに、ロットの生産リードタイムを短縮することができる。
【0011】
上記搬送制御方法は、さらに、処理終了補正時刻に基づいて、将来の搬送台車集中箇所を検出し、当該検出された搬送台車集中箇所への搬送台車の進行を制限することが好ましい。これにより、生産設備の状態変動により刻々と変動する搬送負荷を予測し、事前に渋滞経路を回避することや渋滞発生を回避することが可能となる。
【0012】
処理終了概算時刻は、例えば、各生産設備について処理レシピごとに設定されたウエハ枚数と処理時間との関係式とに基づいて算出することができる。また、上記処理終了予定の生産設備がバッチ式炉を備える設備である場合、バッチ炉の昇温を開始した時点からバッチ炉内の温度が所定の処理温度に到達する時点までの昇温時間を処理情報として収集することができる。さらに、上記処理終了予定の生産設備が枚葉式減圧チャンバを備える設備である場合、減圧チャンバの減圧を開始した時点から減圧チャンバ内の圧力が所定の処理圧力に到達する時点までの減圧時間を処理情報として収集することができる。これにより、生産設備の処理終了補正時刻を精度よく求めることができる。
【0013】
また、処理終了補正時刻までの残余時間が上記所要時間と等しくなったときに、指定された生産設備への移動開始が、予約された搬送台車に指示されることが好ましい。この場合、予約された搬送台車は、生産設備でのロット処理が終了する時刻に、当該生産設備に到達する。
【0014】
さらに、上記全搬送台車の動作シミュレーションは、現実の搬送台車の機器性能、搬送台車の大きさ、および生産ラインレイアウトを擬似的に再現することにより実施されることが好ましい。これにより、搬送台車の現在の走行位置から搬送先までの正確な搬送所要時間をより正確に求めることができる。加えて、上記搬送台車の予約は、搬送台車の動作シミュレーションにより予測される将来の搬送台車の位置に基づいて行ってもよい。
【0015】
一方、他の観点では、本発明は、複数の生産設備により構成される生産ライン内で複数枚の半導体ウエハからなるロットを格納する収納容器を搬送するための軌道レールと、前記収納容器を搭載して前記軌道レールに沿って走行する複数の搬送台車とを備える自動搬送システムの搬送制御装置を提供することができる。本発明に係る搬送制御装置は、生産スケジューラ、搬送シミュレータ、設備情報取得部、終了時刻補正部、および搬送制御部を備える。生産スケジューラは、生産計画にしたがって、生産ラインを構成する各生産設備に投入されたロットの処理終了概算時刻を算出する。搬送制御部は、生産スケジューラにより算出された処理終了概算時刻により特定される処理終了予定の生産設備にて処理中のロットを、処理終了後に当該生産設備から搬出するための搬送台車を予約する。設備情報収集部は、生産スケジューラにより算出された処理終了概算時刻により特定される処理終了予定の生産設備にて処理中のロットに対する処理について、当該処理の処理時間を変動させる要因となる処理情報を収集する。終了時刻補正部は、設備情報収集部によって収集された処理情報に基づいて、処理時間の変動を反映した処理終了補正時刻を算出する。搬送シミュレータは、現在時刻以降の全搬送台車の動作をシミュレーションすることにより、上記予約された搬送台車が、指定された生産設備に到達するまでの所要時間を算出する。搬送制御部は、搬送シミュレータにより算出された所要時間に基づいて、予約された搬送台車が指定された生産設備に処理終了までに到達するように、当該搬送台車に指定された生産設備への移動開始を指示する。
【0016】
上記構成において、搬送制御部は、処理終了補正時刻に基づいて、将来の搬送台車集中箇所を検出し、検出された搬送台車集中箇所への搬送台車の進行を制限することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、全搬送台車の将来の動作状況を再現することにより、生産設備から処理済のロットを搬出するための搬送台車が生産設備へ到達するまでの所要時間を算出する。そして、当該所要時間に基づいて搬送開始を指示する。このため、生産設備において処理が終了する時刻に合わせて確実に搬送台車を到達させることができる。その結果、生産設備の稼動率を向上することができるとともに、ロットの生産リードタイムを短縮することができる。また、将来的に渋滞が発生する搬送路を回避したり、渋滞の発生を緩和したりすることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態では、半導体集積回路装置の生産ラインに配置された自動搬送システムの搬送制御装置および搬送制御方法として本発明を具体化している。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態における搬送制御装置および搬送制御方法が適用される半導体集積回路装置の生産ラインの一例を示す概略レイアウト図である。図1に示すように、生産ライン100は、異なる処理を行う複数種の生産設備4により構成されている。生産ライン100は、同一工程の処理を実施する、複数台の同種の設備からなる複数の生産設備群4a〜4rにより構成されている。図1では、各生産設備群4a〜4rは、それぞれ7台の生産設備4により構成されており、それぞれ同種の設備が一列に配列されている。その設備列の一端には、自動保管庫5がそれぞれ配置されている。自動保管庫5は、次工程の処理を実施する生産設備4への搬入待ロットを保管する。本実施形態では、ロットは複数枚の半導体基板(以下、ウエハという。)からなり、各ロットは、それぞれカセットやFOUP(Front Opening Unified Pod)等の収容容器に格納された状態で、生産設備4と生産設備4との間、あるいは生産設備4と自動保管庫5との間を搬送される。
【0020】
生産ライン100が設置された部屋(クリーンルーム)の天井には、上記収納容器を搬送する自動搬送システムの軌道レール7(7a、7b)が配設されている。例えば、図1では、生産設備群4bの設備列と生産設備群4cの設備列とが、各生産設備4のロット搬入ポート(ロードポート)が対向する状態で、間隔をおいて配置されている。そして、両設備列の間の天井に、生産設備群4b、4cの全ロードポートを周回する内部軌道レール7aが配設されている。このような内部軌道レール7aが対向する設備列の間に配設され、各内部軌道レール7aの両端に、各内部軌道レール7aを連結する外部軌道レール7bが配設されている。また、本実施形態では、外部軌道レール7bは、図1に示すように、周回距離の異なる複数の周回軌道を有している。
【0021】
軌道レール7上には、軌道レール7に沿って自走する複数台の搬送台車6が配置されている。各搬送台車6は、指示された搬送ルートに沿って自走し、収納容器を生産設備4や自動保管庫5へ搬送する。収納容器の搬送指示を受けていない搬送台車6は、例えば、周回軌道レール7b上の所定ルートを巡回しながら待機している。
【0022】
図2は、図1に示した自動搬送システムを備えた生産ライン100の制御系を示す概略ブロック図である。生産ライン100は、搬送制御装置1および生産管理装置2を備えている。ここで、搬送制御装置1は、搬送台車6の搬送制御および自動保管庫5の入出庫制御を行う。生産管理装置2は、生産ライン100に投入されているロット、および生産ライン100への投入が予定されているロットの生産管理を行う。
【0023】
まず、生産管理装置2について説明する。図2に示すように、生産管理装置2は、生産計画管理部21、生産進捗管理部22、製品引当部23および設備制御部24を備える。生産管理装置2は、各生産設備4で処理すべきロットの処理順を決定するとともに、各生産設備4へ、処理条件(処理レシピ)を通知する。
【0024】
生産進捗管理部22には、生産ライン100に投入されている全ロットの工程フローが登録されている。また、工程フローを構成する各工程には、各工程で使用する生産設備群および処理レシピが関連づけて記録されている。図2の例では、各生産設備4に対するロットの搬入搬出状況および各生産設備4におけるロットの処理状況が、各生産設備4の動作を制御する設備制御部24および搬送制御装置1から生産進捗管理部22へ随時入力されている。生産進捗管理部22は、入力された情報に基づいて、各ロットの工程進捗状況を更新する。特に限定されないが、ここでは、生産進捗管理部22は、ロットごとに作成された工程フローと、「処理済」、「処理中」等の各工程の処理状況とを関連づけたテーブルにより、ロットの工程進捗状況を管理している。なお、本実施形態では、各工程の処理状況は、ロットに属するウエハごとに記録される。また、生産進捗管理部22は、設備制御部24を通じて、各生産設備4の稼働状況(処理中、搬入中、待機中、処理不可等)を逐次取得し、各生産設備を特定する情報である設備IDと稼働状況とを関連づけて記録している。
【0025】
図3は、生産管理装置2が実施する、投入ロット選択処理を示すフロー図である。図3に示すように、生産計画管理部21は、所定のタイミング(例えば、1日に1回)で、生産進捗管理部22が管理する各ロットの工程進捗状況を取得する(ステップS31)。工程進捗状況を取得した生産計画管理部21は、予め登録されている各ロットの納期(完成期日)に基づいて、納期に対して進捗が遅れているロットの有無を確認する(ステップS32)。進捗遅れのロットが存在した場合、生産計画管理部21は、当該ロットに高い優先度を設定する(ステップS32Yes、S33)。また、進捗遅れのロットが存在しない場合、全ロットの優先度は同一となる(ステップS32No)。なお、優先度は、進捗遅れの程度に応じて、多段階で設定されることが好ましい。
【0026】
進捗遅れに応じた優先度の設定が完了すると、生産計画管理部21は、優先度を考慮して、生産ライン100に投入されているロットおよび投入予定のロットの生産計画を立案する(ステップS34)。ここで、生産計画とは、例えば、各生産設備群4a〜4rへそれぞれ投入する予定のロットのリストである。生産計画管理部21は、立案した生産計画を製品引当部23に通知し、処理を終了する(ステップS35)。
【0027】
製品引当部23は、生産計画にしたがって、各生産設備4で次に処理するロットを自動的に選択し割り当てる。このとき、製品引当部23は、生産進捗管理部22から、各生産設備4の稼働状況を取得し、次ロットを投入可能な生産設備4に、生産計画にしたがってロットを割り当てる。このとき、高い優先度が設定されているロットは、優先度の低い他のロットよりも優先的に生産設備4に割り当てられる。ここで、次ロットを投入可能な生産設備4とは、稼動状態が待機中である生産設備4、および後述の手法により特定される、処理が終了間近の生産設備4である。
【0028】
以上のようにして、生産設備4に割り当てられたロットは、搬送制御装置1に通知される。搬送制御装置1は、通知された情報に基づいて、該当ロットを指定された生産設備4に搬送するための処理を開始する。このとき、製品引当部23から通知される情報は、例えば、搬入先の生産設備4を特定するための情報である設備IDと、ロットを特定するための情報であるロットIDを含む。
【0029】
図2に示すように、搬送制御装置1は、生産スケジューラ11、搬送シミュレータ12、設備情報収集部13、終了時刻補正部14および搬送制御部15を備える。製品引当部23からの情報は、生産スケジューラ11に入力される。生産スケジューラ11は、まず、入力された設備IDおよびロットIDを搬送制御部15に通知する。当該通知を受信した搬送制御部15は、通知されたロットの位置を特定するとともに、当該ロットを通知された生産装置4へ搬送するための搬送台車6を予約する。このとき、搬送制御部15は、通知された生産設備4の稼働状況を生産進捗管理部22から取得し、待機中である場合には予約した搬送台車6へ搬送開始を指示する。また、通知された生産設備4の稼働状況が処理中である場合には、後で詳述するタイミングで、搬入開始を指示する。
【0030】
本実施形態では、搬送制御部15は、収納容器を特定するための情報である容器IDと、搬送容器の位置を特定するための情報である設備IDまたは台車IDを、ロットIDと対応づけたロット位置テーブルを記録している。搬送制御部15は、ロット位置テーブルと入力されたロットIDとに基づいて、当該ロットの位置を特定する。そして、搬送容器を搭載しておらず、予約もされていない待機中の搬送台車6を検索し、例えば、当該ロットを最も短時間で搭載できる位置にある搬送台車6を特定して予約する。本実施形態では、搬送制御部15が、搬送台車6を特定するための情報である台車IDと、当該搬送台車6の状態(搬送中、予約中、待機中等)を関連づけて記録する台車テーブルを有し、当該台車テーブルにより、搬送容器を搭載していない搬送台車6を特定する構成になっている。また、搬送制御部15は、搬送台車6と常時通信を行うことにより、搬送台車6の現在の走行位置を特定している。なお、搬送制御部15が保持するロット位置テーブルおよび台車テーブルは、搬送容器が搬送される都度、すなわち、搬送容器の位置が変わる都度、更新される。特に限定されないが、搬送制御部15は、例えば、自動保管庫5および各搬送台車6と無線通信や軌道レール7内に配設された信号線を介した通信により制御信号や位置情報等のデータの授受を行っている。
【0031】
また、生産スケジューラ11は、設備IDおよびロットIDが入力されたとき、通知された生産設備4において当該ロットの処理が完了する時刻の概算値(処理終了概算時刻)を算出する。図4は、生産スケジューラ11が実行する終了時刻算出処理を示すフロー図である。図4に示すように、製品引当部23から設備IDおよびロットIDを通知された生産スケジューラ11は、生産進捗管理部22から、通知されたロットに属するウエハの枚数(以下、ロットサイズという。)および通知された生産設備4での処理レシピを取得する(ステップS41)。次いで、取得したロットサイズおよび処理レシピに基づいて、通知された生産設備4における当該ロットの処理に要する時間(以下、標準処理時間という。)を算出する(ステップS42)。
【0032】
処理時間の算出には、生産スケジューラ11に予め設定されている処理時間算出式が使用される。当該処理算出式は、ロットサイズと処理時間との対応関係を示す関係式であり、生産設備4の構造に応じて設定される。
【0033】
例えば、生産装置4がバッチ式炉を備える熱処理装置である場合、処理時間は、ロットサイズ(バッチサイズ)に関わらずほぼ一定になる。すなわち、処理時間Yと、ロットサイズXとの間には、Y=bの関係式が成立する。ここで、定数bは、1ロットの処理に要する標準処理時間である。定数bは、生産設備4の構造および処理レシピに応じて定まる定数であり、実験等により予め取得することができる。
【0034】
また、生産設備4が、1つまたは複数の減圧チャンバにおいて、ウエハを1枚ずつ処理する枚葉式設備である場合、処理時間とロットサイズとは、ほぼ一次関数の関係になる。すなわち、処理時間YとロットサイズXとの間には、Y=cX+dの関係式が成り立つ。ここで、定数cは、当該生産設備4において、1枚のウエハの処理に要する処理時間であり、定数dは、当該生産設備4において、1枚目のウエハに対する処理を開始するまでに要する処理時間である。定数cおよび定数dは、生産設備4の構造および処理レシピに応じて定まる定数であり、実験等により予め取得することができる。なお、本実施形態では、生産設備4ごとに処理時間算出式が設定されており、製品引当部23から通知された設備IDにより、使用する処理時間算出式を特定している。
【0035】
生産スケジューラ11は、標準処理時間の算出が完了したとき、通知されたロットが、指定された生産設備4へ搬入されたか否かを確認する(ステップS43)。生産設備4への搬入が完了していない場合、生産スケジューラ11は、搬入が完了するまで待機する(ステップS43No)。本実施形態では、通知されたロットの搬入が完了したときに、搬送制御部15が生産スケジューラ11に搬入時刻を通知する構成になっている。生産スケジューラ11は、搬入時刻を取得すると、当該搬入時刻と算出した処理時間とを加算することにより、処理終了概算時刻を算出する(ステップS44、S45)。一方、標準処理時間の算出が完了したときに、通知されたロットが、指定された生産設備4へ既に搬入された場合、生産スケジューラ11は、通知されている搬入時刻を用いて、直ちに処理終了概算時刻を算出する(ステップS43Yes、S44、S45)。処理終了概算時刻を算出した生産スケジューラ11は、当該処理終了概算時刻、ロットIDおよび設備IDを関連づけて、自身が管理する終了予定リストに記録する(ステップS46)。なお、処理終了概算時刻の算出は、製品引当部23からロットIDと設備IDとが通知される都度実施される。すなわち、製品割当部23により指示された全ロットに対して実施される。
【0036】
また、生産スケジューラ11は、予め指定された所定の時間間隔で、間近(例えば10分以内)に処理が終了する設備IDを終了予定リストから抽出する。そして、抽出した設備IDを搬送シミュレータ12、設備情報収集部13、および搬送制御部15に通知する。また、生産スケジューラ11は、抽出した設備IDを製品引当部23にも通知する。製品引当部23は、当該設備IDにより特定される生産設備4を、上述の処理が終了間近の生産設備4と認識する。
【0037】
図5は、間近に処理が終了する生産設備4の設備IDが通知されたときに、搬送制御部15が実行する台車予約処理を示すフロー図である。図5に示すように、搬送制御部15は、まず、上述の台車テーブルから、待機中の搬送台車6を検索し、例えば、通知された生産設備4付近の搬送台車6を特定する(ステップS51)。次いで、特定した搬送台車6を、通知された生産設備4からロットを搬出するための搬送台車6として予約する(ステップS52)。この予約により、台車テーブルの当該搬送台車6の状態は、搬送容器を搭載していないが、用途が決まっている状態(予約中)になる。このとき、搬送制御部15は、予約した搬送台車6が目標生産設備に到達するまでの搬送ルートも、各搬送台車6の現在位置に基づいて、例えば、最も短時間で目標生産設備に到達できる経路を選択することにより決定する。
【0038】
さて、本実施形態では、生産スケジューラ11が算出した処理終了概算時刻の精度をより向上させるため、終了予定時刻の補正を行っている。当該補正は、設備情報収集部13および終了時刻補正部14が行う。生産スケジューラ11が算出する処理終了概算時刻は、生産設備4ごとの標準的な処理時間であり、処理ごとの処理時間の差異は反映されていない。現実の処理では、各ロット間のロットサイズの差異等に起因して、処理時間が標準処理時間と異なることがある。
【0039】
図6は、バッチ式炉を備える設備において発生する処理時間の差異を説明する模式図である。図6では、横軸がロットサイズに対応し、縦軸が処理時間に対応する。図6において、実線で示す直線61は標準処理時間である。また、破線で示す直線62は、標準処理時間を算出した算出式に対応する処理条件で実施された、1つの現実の処理データから求めた補正処理時間である。なお、現実の処理データは1点のデータであるが、ここでは、ロットサイズ以外の他の条件が完全に同一であると仮定して、補正処理時間のロットサイズ依存性を図示している。
【0040】
図6に示すように、バッチ式炉を備える設備では、同一の設備で処理を行う場合であっても、バッチ炉内に搬入されたロットサイズXに応じて処理時間が変化する。図6の例では、ロットサイズXの増大にともなって、処理時間Yが増大している。これは、炉内温度を所定の処理温度まで上昇させる昇温時間がロットサイズXに応じて変化するためである。このような現象は、炉内温度を比較的短時間で変動させる設備において特に顕著になる。図6の例では、処理時間YとロットサイズXとは、Y=a(X−A)+bの関係式を満たす。ここで、定数aは、定数bと同様に生産設備4の構成および処理レシピに応じて定まる定数である。また、定数Aは、標準処理時間bを定めた際のロットサイズである。
しかしながら、バッチ式炉内に搬入されるロットは、例えば、ウエハ上に成膜されている膜の膜厚等が完全に同一ではなく、ロットごとに異なっている。すなわち、ロットサイズ以外の条件も処理ごとに異なる。このため、定数aは処理ごとに異なる値となり、定数aを固定値として定めることは困難である。しかしながら、処理ごとの標準処理時間と現実の処理時間との差異は、バッチ式炉内で昇温を開始してから、所定の処理温度に到達するまでの昇温時間の差異として求めることができる。
【0041】
また、図7は、減圧チャンバを備える枚葉式設備において発生する処理時間の差異を説明する模式図である。図7では、横軸がロットサイズに対応し、左縦軸が処理時間に対応する。また、右縦軸は減圧時間に対応する。図7において、実線で示す直線71は標準処理時間である。破線で示す直線72は、標準処理時間を算出した算出式に対応する処理条件で実施された、1つの現実の処理データから求めた補正処理時間である。なお、現実の処理データは1点のデータであるが、ここでは、ロットサイズ以外の他の条件が完全に同一であると仮定して、補正処理時間のロットサイズ依存性を図示している。
【0042】
減圧チャンバを備える枚葉式設備では、図6に示したバッチ式炉を備える設備とは異なり、処理時間は、標準処理時間が全体的にシフトした状態になる。このような現象は、主として、減圧チャンバ内を規定の圧力まで減圧するために要する減圧時間が処理ごとに異なることに起因して発生する。図7の例では、処理時間YとロットサイズXとは、Y=cX+d+eの関係式を満たす。ここで、定数c、dは、標準処理時間を算出する算出式中の定数c、dと同一である。そして、標準処理時間からのシフト量が、定数eにより表現されている。
【0043】
図7には、処理時間中の減圧時間のみを示すグラフを併記している。図7に実線で示す直線73は標準処理時間中の減圧時間を示している。また、図7に破線で示す直線74は、補正処理時間中の減圧時間を示している。定数eは、直線74の直線73からのシフト量に一致する。しかしながら、現実の減圧チャンバを備えた枚葉式設備では、同一ロットに属するウエハであっても、各ウエハの処理は別々に実施される。特に、複数の減圧チャンバを備えるマルチチャンバ型の設備では、ロット中に異なる減圧チャンバで処理されたウエハが混在する。このため、定数eは、厳密には、ウエハごとに異なる値になり、定数eを固定値として定めることは困難である。しかしながら、処理ごとの標準処理時間と現実の処理時間との差異は、枚葉式減圧チャンバ内で減圧を開始してから、減圧チャンバ内が所定の処理圧力に到達するまでの減圧時間の差異として求めることができる。
【0044】
図8は、枚葉式減圧チャンバを備える設備において処理されたロット内の、各ウエハの減圧時間の一例を示す図である。図8(a)は、同一ロットに属する5枚のウエハを直列で処理した事例での減圧時間および処理時間を示している。また、図8(b)は、各ウエハに対する現実の減圧時間と、減圧時間以外の処理時間を示す模式図である。ここでは、ウエハ1枚の標準処理時間が5分00秒であるとする。標準処理時間中、減圧時間は1分30秒であり、他の処理時間は3分30秒である。図8(a)の例では、1枚目のウエハ(ウエハ1)から5枚目のウエハ(ウエハ5)に対する、それぞれの減圧時間は、1分30秒、1分00秒、1分45秒、1分25秒、2分00秒になっている。また、各ウエハに対する他の処理時間は、全て3分30秒になっている。この場合、現実の総処理時間は、7分40秒+17分30秒=25分10秒となる。したがって、当該5枚のウエハの処理に要した時間は、標準処理時間(25分00秒)よりも10秒長くなる。
【0045】
以上のような標準処理時間からの処理時間のずれを補正するため、設備情報収集部13は、設備制御部24を通じて、各生産設備4から、処理時間の変動要因となる処理情報を収集する。そして、通知された生産設備4の処理情報を取得した設備情報収集部13は、取得した処理情報を終了時刻補正部15に入力する。本実施形態では、各生産設備4が処理履歴を記録する構成とし、当該処理履歴から処理情報を収集する構成を採用している。また、本実施形態では、バッチ式炉を備える生産設備4の昇温時間、および枚葉式生産設備4の各ウエハ処理時の減圧時間を、処理時間の変動要因となる処理情報として収集しているが、処理時間の変動要因となる他の処理情報も取得して良いことは勿論である。
【0046】
図9は、設備情報収集部13が、設備IDを通知された際に実施する処理情報収集処理を示すフロー図である。設備IDが通知されると、設備情報収集部13は、まず、通知された生産設備4がバッチ式炉を備える設備であるか否かを判定する(ステップS91)。通知された生産設備4がバッチ式炉を備えていれば、当該生産設備4において現在実施中の処理の処理履歴から、昇温時間を処理情報として読み出す(ステップS91Yes、S92)。そして、取得した処理情報を、当該処理情報が昇温時間であることを示す情報とともに終了時刻補正部14に通知して処理を終了する(ステップS93)。また、通知された生産設備4がバッチ式炉を備えていなければ、次いで、枚葉式減圧チャンバを備える設備であるか否かを判定する(ステップS91No、S94)。通知された生産設備4が枚葉式減圧チャンバを備える設備であれば、当該生産設備4において現在実施中の処理の処理履歴から、ウエハ枚数と減圧時間とを処理情報として読み出す(ステップS94Yes、S95)。そして、取得した処理情報を、当該処理情報がウエハ枚数と各ウエハの減圧時間であることを示す情報とともに終了時刻補正部14に通知して処理を終了する(ステップS93)。一方、通知された生産設備4が枚葉式減圧チャンバを備えた設備でなければ、取得すべき処理情報がなかったことを示す情報のみを終了時刻補正部14に通知して処理を終了する(ステップS94No)。なお、通知された生産設備4がバッチ式炉を備える設備であるか否かの判断、および通知された生産設備4が枚葉式減圧チャンバを備える設備であるか否かの判断は、設備情報収集部13に予め登録された該当設備の設備IDと、通知された設備IDとが一致するか否かにより行うことができる。また、上記処理情報は、生産スケジューラ11から通知された全生産設備について取得され、終了時刻補正部14に、設備IDとともに通知される。
【0047】
設備情報収集部13から処理情報を受信した終了時刻補正部14は、入力された処理情報に基づいて、現実の処理状況を反映した終了予定時刻(処理終了補正時刻)を算出する。本実施形態では、生産設備4がバッチ式炉を備える設備、あるいは枚葉式減圧チャンバを備える設備である場合に、処理終了補正時刻が算出される。図10は、設備情報収集部13から処理情報が通知された際に、終了時刻補正部14が実施する補正処理を示すフロー図である。終了時刻補正部14は、処理情報が通知されると、通知された処理情報種に応じて処理終了補正時刻を算出する(ステップS101)。例えば、受信した処理情報が昇温時間であった場合、終了時刻補正部14は、通知された昇温時間と、標準処理時間中の昇温時間との差を算出し、当該差分に応じて生産スケジューラ11から通知された処理終了概算時刻を補正する(図6参照)。また、受信した処理情報がウエハ枚数と減圧時間であった場合、終了時刻補正部14は、通知され減圧時間と、標準処理時間中の減圧時間との差を算出し、当該差分に応じて生産スケジューラ11から通知された処理終了概算時刻を補正する。なお、設備情報収集部13から、入力された情報が、取得すべき処理情報がなかったことを示す情報であった場合、終了時刻補正部14は、生産スケジューラ11から通知された処理終了概算時刻を処理終了補正時刻とする。終了時刻補正部14は、処理終了補正時刻を、搬送シミュレータ12および搬送制御部15に通知し、処理を終了する(ステップS102)。なお、上記処理終了補正時刻は、設備情報収集部13から通知された全生産設備について算出され、搬送シミュレータ12および搬送制御部15に、設備IDとともに通知される。
【0048】
一方、搬送シミュレータ12は、終了時刻補正部14から処理終了補正時刻が入力されると、入力された処理終了補正時刻に基づいて、現在時刻以降の、軌道レール7上の全搬送台車6の動作をシミュレーションする。そして、当該生産設備4のために予約されたロット搬出用の搬送台車6(以下、予約台車という。)の現在走行位置から目標の生産設備4までの所要時間を取得する。
【0049】
搬送シミュレータ12は、例えば、現実の搬送システムの軌道レール7や生産設備4のレイアウトをCADデータ等に基づいてコンピュータ上で精密に再現したモデル上において、現実の速度や加速度等の機器性能をおよび台数を設定した搬送台車6を走行させ、将来の全搬送台車6の動作を予測する。このように、コンピュータ上で生産ラインレイアウトを擬似的に再現することにより、将来の搬送台車6の位置を正確に予測することができ、将来の、各内部軌道レール7a上の搬送台車6の台数や、予約台車の所要時間を正確に把握することができる。図11は、処理終了補正時刻が入力された際に、搬送シミュレータ12が実施する所要時間取得処理を示すフロー図である。
【0050】
図11に示すように、搬送シミュレータ12は、まず、現在時刻以降(例えば、現在時刻から処理終了補正時刻までの間)の、軌道レール7上の全搬送台車6の動作をシミュレーションする(ステップS111)。このとき、搬送シミュレータ12は、各内部軌道レール7a上の搬送台車6の数を所定の時間間隔で計数するとともに、予約台車の現在走行位置から目標生産設備4までの所要時間を取得する(ステップS112)。搬送シミュレータ12は、取得した各時刻における各内部軌道レール7a上の搬送台車数および予約台車の到達所要時間を搬送制御部15に通知し、処理を終了する(ステップS113)。なお、上記到達所要時間は、終了時刻補正部14から通知された全生産設備について取得され、搬送制御部15に、設備IDとともに通知される。また、終了時刻補正部14から複数の生産設備の処理終了補正時刻が入力された場合、搬送シミュレータ12は、例えば、現在時刻から最も遅い処理終了補正時刻までの間の、全搬送台車6の動きを再現する。そして、通知された各処理終了補正時刻に対応する生産設備4ごとに、予約台車の到達所要時間を算出する。
【0051】
一方、図12は、終了時刻補正部14から処理終了補正時刻が入力されたときに、搬送制御部15が実施する搬送指示処理を示すフロー図である。図12に示すように、搬送制御部15は、まず、終了時刻補正部14から処理終了補正時刻が通知されると、通知された設備IDおよび処理終了補正時刻に基づいて、各内部軌道レール7aにおける現在および将来の搬送台車数に基づいて、渋滞状況を判定する。本実施形態では、搬送制御部15は、各搬送台車6の現在の走行位置に基づいて、各内部軌道レール7a上を走行中の搬送台車6の台数を取得する。また、搬送制御部15は、搬送シミュレータ12から入力された各時刻における各内部軌道レール7a上の搬送台車数を取得する(ステップS121)。そして、取得した各内部軌道レール7a上の搬送台車6の台数と、予め設定されている閾値とを比較する。このとき、搬送制御部15は、取得した現在の搬送台車数が閾値以上であれば、その内部軌道レール7aを渋滞中と判定する。また、取得した現在の搬送台車数が閾値未満であれば、渋滞なしと判定する。また、取得した将来の搬送台車数が閾値以上であれば、その内部軌道レール7aを渋滞継続と判定する。また、取得した将来の搬送台車数が閾値未満であれば、渋滞解消と判定する(ステップS122)。
【0052】
搬送制御部15は、予約台車の搬送ルートに渋滞が発生しない、あるいは現在渋滞していても、将来的(例えば、予約台車が現在の渋滞箇所に到達したとき)に渋滞が解消していると判定した場合、現在時刻から処理終了補正時刻までの残余時間を算出する(ステップS122No、S123)。次いで、搬送制御部15は、算出した残余時間と、搬送シミュレータ12から入力された到達所要時間とを比較する(ステップS124)。そして、残余時間が到達所要時間と一致したとき(あるいは、残余時間が到達所要時間以下であったとき)に、予約台車に搬送開始を指示する(ステップS124Yes、S125)。なお、残余時間の方が到達所要時間よりも大きい場合、搬送制御部15は、搬送シミュレータ12に再度のシミュレーション実行を指示し、処理を終了する(ステップS124No、S128)。このとき、搬送シミュレータ12は、再度、全搬送台車6の動作をシミュレーションする。搬送制御部15は、新たに通知された、各内部軌道レール7a上の搬送台車数および予約台車の到達所要時間に基づいて、上述の搬送指示処理を実行する。
【0053】
一方、搬送制御部15は、予約台車の搬送ルートに将来的に渋滞が発生すると判定した場合、渋滞発生箇所への搬送台車の進行を制限する。本実施形態では、搬送台車の進行を制限する手法として、搬送ルートの変更と、搬送台車の搬送停止とを採用している。すなわち、搬送制御部15は、予約台車の搬送ルートに渋滞が発生すると判定した場合、まず、搬送ルート変更の可否を判定する(ステップS122Yes、S126)。例えば、搬送制御部15は、予約台車が、渋滞発生箇所を迂回して進行しても、処理終了補正時刻までに到着できる場合や、処理終了補正時刻までに未だ猶予がある場合等の、予め設定された特定の条件を満足する場合に、搬送ルートを再設定する(ステップS126Yes、S127)。なお、搬送ルートの変更には、搬送台車6として、異なる搬送台車を予約することも含まれる。また、渋滞部を通過する以外の他の搬送ルートがない場合等、上記特定の条件を満足しない場合、搬送制御部15は、一部の搬送台車6の搬送指示を解除する(ステップS126No、S129)。ここでは、予約台車の搬送ルートに含まれる内部軌道レール7aの渋滞発生に関与する搬送台車6のうち、生産スケジューラ11の終了リストの下位に記録されている生産設備4へのロットの搬入搬出を目的とする搬送台車6への搬送指示を解除する。なお、解除台数は、例えば、上記閾値を超えた台数分とすることができる。
【0054】
以上のような、渋滞発生箇所への搬送台車の進行を制限する処理が完了すると、搬送制御部15は、搬送台車の進行を制限するために実行した処理を搬送シミュレータ12に通知するとともに、再度のシミュレーション実行を指示し、処理を終了する(ステップS128)。このとき、搬送シミュレータ12は、搬送制御部15から通知された情報を反映した条件で、再度、全搬送台車6の動作をシミュレーションする。搬送制御部15は、新たに通知された、各内部軌道レール7a上の搬送台車数および予約台車の到達所要時間に基づいて、上述の搬送指示処理を実行する。
【0055】
以上のような処理は、製品引当部23がロットを引き当てる限り、すなわち、生産進捗管理部22に記録されているロットの処理が終了するまで継続される。
【0056】
これにより、予約台車は目標生産設備で処理が終了する時刻に、目標生産設備に到達し、処理が終了したロットを速やかに回収することができる。
【0057】
ところで、予約台車に搬送開始を指示した搬送制御部15は、上述した、当該予約台車の目標生産設備へのロット搬入用に予約されている搬送台車6に搬送開始を指示する。これにより、搬入指示を受けた搬送台車6は、ロットが回収された生産装置4に次ロットを速やかに搬入することができる。本実施形態では、上述の全搬送台車6の動作シミュレーションにおいて、搬送シミュレータ12が、搬入予定のロットを自動保管庫5から生産設備4まで搬送するのに要する時間を算出する構成を採用している。そして、搬送制御部15は、図12により説明した同様の手法により、搬出用搬送台車が指定された生産設備4に到着した直後に、次ロット搬入用搬送台車が当該生産設備4に到達するタイミング(搬入所要時間と残余時間とが一致したとき)で、次ロット搬入用の搬送台車6にロットに搬入を指示する。このため、本実施形態では、搬出用の搬送台車6が処理済のロットを搬出した直後に、次処理ロットを搬入することができる。この結果、生産設備4の稼動率を向上することができるとともに、ロットの生産リードタイムを短縮することもできる。
【0058】
なお、上述の構成において、搬送制御装置1の各部および生産管理装置2の各部は、例えば、専用の演算回路や、プロセッサとRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等のメモリとを備えたハードウエア、および当該メモリに格納され、プロセッサ上で動作するソフトウエア等として実現することができる。
【0059】
以上説明したように、本発明では、全搬送台車の将来の動作状況を再現して、生産設備から処理済のロットを搬出するための搬送台車が、生産設備への到達に要する時間を算出する。そして、当該所要時間に基づいて、予約台車に搬送開始を指示する。このため、生産設備において処理が完了する時刻に合わせて、正確に搬送台車を到達させることができる。その結果、生産設備の稼動率を向上することができるとともに、ロットの生産リードタイムを短縮することができる。また、将来的に渋滞が発生する搬送路を回避することに可能である。
【0060】
なお、本発明は、以上で説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において、種々の変形および応用が可能である。例えば、上記実施形態では、特に好ましい形態として、渋滞の発生を検出した場合、渋滞を解消する構成とした。しかしながら、予約台車の到達所要時間は、渋滞が発生した状況下で取得されている。このため、渋滞を解消しない構成であっても、処理が完了したロットは、速やかに生産設備から搬出されるため、ロットの生産リードタイムが増大することはない。
【0061】
また、上記実施形態では、生産装置4へロットを搬入するための搬送台車6の予約、および生産装置4から処理済のロットを搬出するための搬送台車6の予約を、設備ID等が通知された時点での搬送台車6の走行位置に基づいて行う構成とした。しかしながら、これらの搬送台車6の予約は、搬送シミュレータ12の動作シミュレーションの結果として得られる、搬送台車6の将来の走行位置に基づいて行う構成とすることが好ましい。これにより、設備ID等が通知された時点では、収納容器を搭載しているが、その後、収納容器を生産設備4や自動保管庫5に収納容器を移送して待機状態となる搬送台車6を含めた状態で搬送台車6の予約を行うことが可能となる。これにより、ロットの搬出および搬入により最適な搬送台車6を予約することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、生産設備の稼動率を向上することができるとともに、ロットの生産リードタイムを短縮することができるという効果を有し、搬送制御装置および搬送制御方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施形態における生産ラインの一例を示す概略レイアウト図
【図2】本発明の一実施形態における制御系を示す概略ブロック図
【図3】本発明の一実施形態における投入ロット選択処理を示すフロー図
【図4】本発明の一実施形態における終了時刻算出処理を示すフロー図
【図5】本発明の一実施形態における台車予約処理を示すフロー図
【図6】バッチ式炉を備える設備において発生する処理時間の差異を説明する模式図
【図7】枚葉式減圧チャンバを備える設備において発生する処理時間の差異を説明する模式図
【図8】枚葉式減圧チャンバを備える設備においてウエハごとに異なる減圧時間の一例を示す図である。
【図9】本発明の一実施形態における処理情報収集処理を示すフロー図
【図10】本発明の一実施形態における補正処理を示すフロー図
【図11】本発明の一実施形態における所要時間取得処理を示すフロー図
【図12】本発明の一実施形態における搬送指示処理を示すフロー図
【符号の説明】
【0064】
1 搬送制御装置
2 生産管理装置
4 生産設備
5 自動保管庫
6 搬送台車
7 軌道レール
11 生産スケジューラ
12 搬送シミュレータ
13 設備情報収集部
14 終了時刻補正部
15 搬送制御部
21 生産計画管理部
22 生産スケジューラ
23 製品引当部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の生産設備により構成される生産ライン内で複数枚の半導体ウエハからなるロットを格納する収納容器を搬送するための軌道レールと、前記収納容器を搭載して前記軌道レールに沿って走行する複数の搬送台車とを備える自動搬送システムの搬送制御方法であって、
生産計画にしたがって、生産ラインを構成する各生産設備に投入されたロットの処理終了概算時刻を算出する工程と、
前記算出された処理終了概算時刻により特定される処理終了予定の生産設備にて処理中のロットを、処理終了後に当該生産設備から搬出するための搬送台車を予約する工程と、
前記算出された処理終了概算時刻により特定される処理終了予定の生産設備にて処理中のロットに対する処理について、当該処理の処理時間を変動させる要因となる処理情報を収集する工程と、
前記収集された処理情報に基づいて、処理時間の変動を反映した処理終了補正時刻を算出する工程と、
現在時刻以降の全搬送台車の動作をシミュレーションすることにより、前記予約された搬送台車が、指定された生産設備に到達するまでの所要時間を算出する工程と、
前記所要時間に基づいて、予約された搬送台車が指定された生産設備に処理終了までに到達するように、当該搬送台車に指定された生産設備への移動開始を指示する工程と、
を有することを特徴とする搬送制御方法。
【請求項2】
前記処理終了補正時刻に基づいて、将来の搬送台車集中箇所を検出する工程と、
前記検出された搬送台車集中箇所への搬送台車の進行を制限する工程と、
をさらに有する請求項1記載の搬送制御方法。
【請求項3】
前記処理終了概算時刻が、各生産設備について処理レシピごとに設定されたウエハ枚数と処理時間との関係式に基づいて算出される請求項1または2記載の搬送制御方法。
【請求項4】
前記処理終了予定の生産設備がバッチ式炉を備える設備である場合、バッチ炉の昇温を開始した時点からバッチ炉内の温度が所定の処理温度に到達する時点までの昇温時間を前記処理情報として収集する請求項1または2記載の搬送制御方法。
【請求項5】
前記処理終了予定の生産設備が枚葉式減圧チャンバを備える設備である場合、減圧チャンバの減圧を開始した時点から、減圧チャンバ内の圧力が所定の処理圧力に到達する時点までの減圧時間を前記処理情報として収集する請求項1または2記載の搬送制御方法。
【請求項6】
処理終了補正時刻までの残余時間が前記所要時間と等しくなったときに、前記予約された搬送台車に、指定された生産設備への移動開始を指示する請求項1または2記載の搬送制御方法。
【請求項7】
前記全搬送台車の動作シミュレーションが、現実の搬送台車の機器性能、搬送台車の大きさ、および生産ラインレイアウトを擬似的に再現することにより実施される請求項1または2記載の搬送制御方法。
【請求項8】
前記搬送台車の予約が、搬送台車の動作シミュレーションにより予測される将来の搬送台車の位置に基づいて行われる請求項1または2記載の搬送制御方法。
【請求項9】
複数の生産設備により構成される生産ライン内で複数枚の半導体ウエハからなるロットを格納する収納容器を搬送するための軌道レールと、前記収納容器を搭載して前記軌道レールに沿って走行する複数の搬送台車とを備える自動搬送システムの搬送制御装置であって、
生産計画にしたがって、生産ラインを構成する各生産設備に投入されたロットの処理終了概算時刻を算出する手段と、
前記算出された処理終了概算時刻により特定される処理終了予定の生産設備にて処理中のロットを、処理終了後に当該生産設備から搬出するための搬送台車を予約する手段と、
前記算出された処理終了概算時刻により特定される処理終了予定の生産設備にて処理中のロットに対する処理について、当該処理の処理時間を変動させる要因となる処理情報を収集する手段と、
前記収集された処理情報に基づいて、処理時間の変動を反映した処理終了補正時刻を算出する手段と、
現在時刻以降の全搬送台車の動作をシミュレーションすることにより、前記予約された搬送台車が、指定された生産設備に到達するまでの所要時間を算出する手段と、
前記所要時間に基づいて、予約された搬送台車が指定された生産設備に処理終了までに到達するように、当該搬送台車に指定された生産設備への移動開始を指示する手段と、
を備えたことを特徴とする搬送制御装置。
【請求項10】
前記処理終了補正時刻に基づいて、将来の搬送台車集中箇所を検出する手段と、
前記検出された搬送台車集中箇所への搬送台車の進行を制限する手段と、
をさらに備えた請求項9記載の搬送制御装置。
【請求項11】
前記処理終了概算時刻が、各生産設備について処理レシピごとに設定されたウエハ枚数と処理時間との関係式に基づいて算出される請求項9または10記載の搬送制御装置。
【請求項12】
前記処理終了予定の生産設備がバッチ式炉を備える設備である場合、バッチ炉の昇温を開始した時点からバッチ炉内の温度が所定の処理温度に到達する時点までの昇温時間を前記処理情報として収集する請求項9または10記載の搬送制御装置。
【請求項13】
前記処理終了予定の生産設備が枚葉式減圧チャンバを備える設備である場合、減圧チャンバの減圧を開始した時点から、減圧チャンバ内の圧力が所定の処理圧力に到達する時点までの減圧時間を前記処理情報として収集する請求項9または10記載の搬送制御装置。
【請求項14】
処理終了補正時刻までの残余時間が前記所要時間と等しくなったときに、前記予約された搬送台車に、指定された生産設備への移動開始を指示する請求項9または10記載の搬送制御装置。
【請求項15】
前記全搬送台車の動作シミュレーションが、現実の搬送台車の機器性能、搬送台車の大きさ、および生産ラインレイアウトを擬似的に再現することにより実施される請求項9または10記載の搬送制御装置。
【請求項16】
前記搬送台車の予約が、搬送台車の動作シミュレーションにより予測される将来の搬送台車の位置に基づいて行われる請求項9または10記載の搬送制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−310467(P2008−310467A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−156098(P2007−156098)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】