説明

搬送動作ティーチング方法

【課題】実物のワークが無くても、搬送装置に対してティーチングを行うことができ、多種類のワークを対象とする場合でも簡便にティーチングを行うことができ、ワークの把持位置を正確にティーチングすることができ、把持機構の部品を交換した場合の再ティーチングを簡単に行うことができる搬送動作ティーチング方法を提供する。
【解決手段】搬送動作ティーチング方法は、ワーク12を載置するためのパレット14上にある任意の箇所(基準部52)を、ワーク12を搬送する軌跡の基準点として設定する基準点設定工程と、予め、搬送装置10を動作させるための動作情報であって、基準点を原点とした座標系にて、基準点を基準に所定の軌跡に沿ってワーク12を搬送する動作を指示する動作情報を作成する動作情報作成工程と、動作情報に従って動作する搬送装置10に、実際のパレット14上にある基準点をティーチングするティーチング工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを搬送するための搬送装置に、ワークを搬送する軌跡をティーチングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークをある位置から別の位置に移動させるために搬送装置が用いられる。このような搬送装置は、ワークを把持する把持機構と、把持機構を移動させる少なくとも2つの移動軸(駆動軸)をもつ移動機構とを備えるものであり、パレット上に載置されたワークを把持機構で把持して、ワークを把持した把持機構を移動機構により移動させることでワークの搬送を行うものである。
【0003】
このような搬送装置において、パレット上に載置されたワークを正確に把持するためには、予め、パレット上に載置されたワークを把持する位置を搬送装置にティーチングする必要がある。従来、このティーチングの際、実物のワークを使用して、ティーチングを行っていた。すなわち、搬送装置を操作盤(コントローラ)で操作することにより、パレット上に載置されたワークを搬送装置の把持機構で実際に把持して把持位置を調整し、操作盤に表示された座標を、搬送装置の制御ユニット(制御機器)に入力してティーチングを行っていた。
【0004】
なお、搬送装置等の産業ロボットに対するティーチングに関する先行技術を開示する文献としては、例えば、下記特許文献1、2が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−15589号公報
【特許文献2】特開平7−114408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した従来のティーチング方法では、パレット上に載置されたワークを実際に把持してティーチングを行うため、実物のワークが無いとティーチングをすることができない。また、実物のワークを用いてティーチングを行うため、搬送対象となる全ての種類のワークに対してティーチングを行う必要があり、多種類のワークを対象とする場合には、ティーチング作業が煩雑であり、多大な時間を要する。また、実物のワーク及び搬送装置の把持機構を目視で確認してティーチングを行うため、ティーチングした把持位置が適切な位置であるか否かを確認することが難しい。また、把持機構を構成するチャック部品の磨耗や破損が発生した場合、全てのティーチングをやり直す必要がある。
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、実物のワークが無くても、搬送装置に対してティーチングを行うことができ、多種類のワークを対象とする場合でも簡便にティーチングを行うことができ、ワークの把持位置を正確にティーチングすることができ、把持機構の部品を交換した場合の再ティーチングを簡単に行うことができる搬送動作ティーチング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明は、ワークを把持する把持機構と、少なくとも交差する2つの移動軸をもち前記把持機構を移動させる移動機構とを備えた搬送装置に、前記ワークを搬送する軌跡をティーチングする方法において、前記ワークを載置するためのパレット上にある任意の箇所を、前記ワークを搬送する軌跡の基準点として設定する基準点設定工程と、予め、前記搬送装置を動作させるための動作情報であって、前記基準点を原点とした座標系にて、前記基準点を基準に所定の軌跡に沿って前記ワークを搬送する動作を指示する動作情報を作成する動作情報作成工程と、前記動作情報に従って動作する前記搬送装置に、実際のパレット上にある前記基準点をティーチングするティーチング工程とを有する、ことを特徴とする。
【0009】
上記の工程を有する本発明によれば、パレット上にある任意の箇所を、ワークを搬送する軌跡の基準点として設定し、予め、ワークを搬送する軌跡を指示する動作情報を作成するので、この動作情報を記憶した制御ユニットを有する搬送装置に、実際のパレット上にある基準点をティーチングすれば、ワークの搬送動作のティーチングが完了する。従って、実際のワークが無くてもティーチングを行うことができる。ティーチング操作は基準点をティーチングする際の一回のみでよく、ティーチングを非常に簡便に行うことができる。把持位置は、パレット及びワークの図面上の寸法から正確に求められるので、常に正確な位置を把持することができる。把持機構を構成する部品(チャック部品等)に磨耗や破損が発生する等の理由により当該部品を交換した場合でも、再度、原点位置をティーチングするだけで、ワークの全機種についてティーチングポイント(把持位置)が修正されるため、部品交換時の対応が容易である。
【0010】
また、上記の搬送動作ティーチング方法において、前記基準点設定工程において、前記パレットに設けた基準部の位置を前記基準点として設定し、前記ティーチング工程において、前記把持機構で前記基準部を把持することで、前記搬送装置に前記基準部の位置をティーチングする、ことを特徴とする。
【0011】
このように、パレットに基準部を設け、この基準部の位置を、ワークを搬送する軌跡の基準点として設定するようにすれば、搬送装置に基準点をティーチングする際には、搬送装置の把持機構により基準部を把持させることで、基準点を容易にティーチングすることができる。
【0012】
また、上記の搬送動作ティーチング方法において、前記基準部は、前記パレットの複数箇所に設けられている、ことを特徴とする。
【0013】
このように、基準部を複数設けることで、基準点のティーチングを高精度に行うことができる。
【0014】
また、上記の搬送動作ティーチング方法において、前記基準部は、前記パレットの外周縁部に設けられている、ことを特徴とする。
【0015】
このように、基準部がパレットの外周縁部に設けられることで、把持機構で基準部を把持させ易く、基準点のティーチングを容易に行うことが可能となる。
【0016】
また、上記の搬送動作ティーチング方法において、前記基準部は、ピン形状に形成された基準ピンとして構成されている、ことを特徴とする。
【0017】
このように基準部を基準ピンとして構成することで、把持機構で基準部を把持させ易く、基準点のティーチングを容易に行うことが可能となる。
【0018】
また、上記の搬送動作ティーチング方法において、前記把持機構は、前記ワークに係合する係合部を有し、前記ティーチング工程において、前記パレットに設けられた前記基準ピンが、前記把持機構の前記係合部に設けたピン挿入穴に挿入されるように、前記把持機構を動作させる、ことを特徴とする。
【0019】
このように、基準ピンが挿入されるピン挿入穴が、把持機構の係合部に設けられているので、搬送装置を操作する際に、基準ピンがピン挿入穴に挿入される様子を目視で確認しやすく、オペレータによる基準点のティーチング操作が容易である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、実物のワークが無くてもティーチングを行うことができ、多種類のワークを対象とする場合でも簡便にティーチングを行うことができ、ワークの把持位置を正確にティーチングすることができ、把持機構の部品を交換した場合の再ティーチングを簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る搬送動作ティーチング方法の実施に用いられる一構成例に係る搬送装置及びワークを載置した状態の一構成例に係るパレットを示す一部省略斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る搬送動作ティーチング方法の実施に用いられる一構成例に係る搬送装置により、ワークを把持して持ち上げた状態を示す一部省略斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る搬送動作ティーチング方法の実施に用いられる一構成例に係る搬送装置により、一構成例に係るパレットを把持した状態を示す全体斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る搬送動作ティーチング方法のフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態に係る搬送動作ティーチング方法の実施に用いられる別の構成例に係る搬送装置及び別の構成例に係るパレットを示す全体斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る搬送動作ティーチング方法ついて好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係る搬送動作ティーチング方法の実施に用いられる一構成例に係る搬送装置10及びワーク12を載置した状態の一構成例に係るパレット14を示す一部省略斜視図である。
【0024】
搬送装置10は、ワーク12をある位置から別の位置に移動させるための装置であり、図1に示すように、ワーク12を把持する把持機構16と、把持機構16を移動させる少なくとも2つの移動軸(駆動軸)をもつ移動機構18と、把持機構16及び移動機構18を制御する制御ユニット20とを備える。
【0025】
ここで、ワーク12は、半製品(例えば、シリンダブロック等のエンジン用部品)又は完成品である。ワーク12は、前工程が終了した後に、パレット14上に載置された状態で、例えば、ベルトコンベア等の適宜の移動手段により所定のピックアップ位置に移動させられ、自動制御される搬送装置10により、次工程が行われる別の位置に搬送される。
【0026】
図1に示すように、移動機構18は、把持機構16を上下方向(図中Z方向)に移動させる昇降機構22と、この昇降機構22を水平搬送方向(図中Y方向)に移動させる走行機構24とを有する。昇降機構22の構成としては、例えば、シリンダ装置やリニアモータなどの直動アクチュエータや、ボールネジ機構、ラックアンドピニオン機構、チェーン機構又はベルト機構等と回転モータとを組み合わせたものが挙げられる。
【0027】
走行機構24は、搬送方向(Y方向)に延在する走行レール26と、この走行レール26に沿って移動する走行体28とを有する。走行体28を走行レール26に沿って移動させる構成としては、リニアモータなどの直動アクチュエータや、ボールネジ機構、ラックアンドピニオン機構、チェーン機構又はベルト機構等と回転モータとを組み合わせたものが挙げられる。
【0028】
把持機構16は、複数(図示例では2本)のアーム30、32を備える。アーム30、32は、走行体28の走行方向に直交する水平方向(図中X方向)に離間して配置されている。各アーム30、32は、アーム駆動装置38、39によって、互いに近接及び離間する方向に移動するように構成されている。
【0029】
また、各アーム30、32は、昇降機構22の下部に連結されたベース部29に懸架され上下方向に延在するアーム本体34と、アーム本体34の先端(下端)から搬送装置10の幅方向(X方向)の中央側に向かって延びる係合部36とを有する。
【0030】
各アーム本体34は、ベース部29に設けられたガイド部によって水平方向に移動可能に構成されており、前述したアーム30、32駆動装置によって水平方向に駆動される。係合部36は、ワーク12を把持して持ち上げることができるようにワーク12に引っ掛かる部分であり、図示例では、ワーク12を下面から支持するように構成されている(図2参照)。また、各係合部36において、搬送装置10の幅方向(X方向)の中央側の側面には、ピン挿入穴44が1つ設けられている。
【0031】
上記のように構成された搬送装置10によりワーク12を搬送する際には、制御ユニット20の制御作用下に、アーム30、32間にワーク12が入るようにアーム30、32の間隔を広げた状態にして、移動機構18の昇降機構22及び走行機構24を動作させて把持機構16を所定の把持位置に位置させる。図1の構成例では、ワーク12とパレット14の間の高さに、把持機構16の係合部36を位置させる。そして、その位置で各アーム30、32を互いに近接する方向に移動させ、ワーク12に係合部36を係合させることで、図2に示すように、把持機構16でワーク12を把持する。ワーク12を把持したら、移動機構18の昇降機構22により把持機構16を上昇させることでワーク12を持ち上げ、走行機構24により把持機構16を水平方向に移動させる。これにより、ワーク12の搬送がなされる。
【0032】
次に、ワーク12を載置するためのパレット14の構成について説明する。図3は、前述した搬送装置10によりパレット14を把持した状態を示す一部省略斜視図である。図3に示すように、パレット14は、ベースプレート46と、ベースプレート46の上面に設けられた複数の支持突起48a〜48f及び位置決めピン50a、50bとを有している。図示例のベースプレート46は、全体として略方形であるが、載置対象のワーク12の形状に応じて、例えば、その他の多角形や、円形であってもよい。
【0033】
支持突起48a〜48fは、ワーク12の所定箇所を支持するようにベースプレート46上に配置されている。位置決めピン50a、50bは、ワーク12がパレット14に載置されたとき、その先端がワーク12の下面に設けられた穴に挿入されるように配置されている。このため、ワーク12がパレット14上に載置されると、ワーク12はパレット14に対して所定位置に位置決めされる。また支持突起48a〜48fの高さは、パレット14上にワーク12を載置した状態でワーク12とパレット14との間に、アーム30、32の係合部36を挿入可能な隙間が形成されるように設定されている。
【0034】
また、パレット14には、基準部52が設けられている。図示例において、基準部52は、ピン形状に形成された基準ピン52aであり、一構成例に係るパレット14では、X方向側の両端部にそれぞれ1つずつX方向に突出して設けられている。基準ピン52aは、アーム30、32の係合部36に設けられたピン挿入穴44に挿入可能な大きさに構成されている。
【0035】
パレット14は、所定のピックアップ位置に位置決めされ、少なくとも、搬送装置10によりワーク12を把持する際には、パレット14は、搬送装置10に対して所定位置に静置された状態となる。
【0036】
上記のように構成された搬送装置10にワーク12の搬送動作をティーチングするには、図4に示すように、基準点設定工程S1と、動作情報作成工程S2と、ティーチング工程S3とを実施する。以下、上記の各工程について説明する。
【0037】
基準点設定工程S1では、ワーク12を載置するためのパレット14上にある任意の箇所を、ワーク12を搬送する軌跡の基準点として設定する。本実施の形態において、前記「パレット14上にある任意の箇所」は、基準部52が設けられた箇所であり、従って、パレット14に設けられた基準部52が、ワーク12を搬送する軌跡の基準点として設定される。
【0038】
動作情報作成工程S2では、予め、搬送装置10を動作させるための動作情報であって、前記基準点を原点とした座標系にて、前記基準点を基準に所定の軌跡に沿ってワーク12を搬送する動作を指示する動作情報として、NCプログラムを作成する。すなわち、前記基準点を原点とする座標系(XYZ直交座標系)を設定し、この座標系の中で、搬送装置10の把持機構16が、ワーク12をその種類に応じた把持位置で把持するとともに、所望の軌跡に沿って移動するように、搬送装置10を数値制御するためのNCプログラムを作成する。
【0039】
作成されたNCプログラムは、搬送装置10の制御ユニット20の記憶部に入力及び記憶され、ワーク12の搬送時に制御ユニット20にてNCプログラムが実行されることで、制御ユニット20の制御作用下に、搬送装置10がワーク12の搬送を行う。なお、NCプログラムは、搬送装置10とは別のコンピュータを用いて、ディスプレイ上に表示した作業対象のモデルを見ながら作成することができる。なお、搬送装置10を動作させる軌跡は、ワーク12ごとに異なるものとして設定することも可能である。
【0040】
ワーク12は、その種類ごとに適切な把持位置が異なるため、把持機構16は、ワーク12の種類に応じた適切な位置でワーク12を把持することが必要である。このため、予め、ワーク12の種類ごとに、図面あるいは設計データから求めたワーク12の各部の寸法を、制御ユニット20に入力及び記憶しておく。制御ユニット20は、ワーク12の種類ごとに、寸法データを参照しながら、NCプログラムに従って、最適な把持位置でワーク12を把持するように搬送装置10を制御する。
【0041】
なお、ワーク12の種類ごとに、図面あるいは設計データから抽出した寸法を、予め電子データ化し、制御ユニット20に接続したコンピュータから、有線又は無線の適宜の通信手段を介して、各電子データを一括して制御ユニット20に転送することも可能である。
【0042】
ティーチング工程S3では、搬送装置10に、実際のパレット14上にある前記基準点をティーチングする。本実施の形態では、図3に示すように、搬送装置10の把持機構16により基準部52を把持させることで、前記基準点を搬送装置10(具体的には、制御ユニット20)にティーチングすることができる。
【0043】
本実施の形態の場合、具体的には、制御ユニット20に接続された操作盤(コントローラ)56をオペレータが操作することにより、把持機構16の係合部36に設けられたピン挿入穴44に、パレット14に設けられた基準ピン52aが挿入されるように搬送装置10を動作させる。そして、ピン挿入穴44に基準ピン52aが挿入された状態をオペレータが目視で確認したら、この状態の搬送装置10の前記座標系における位置座標を、前記基準点として入力(登録)する。この入力(登録)は、操作盤56を操作することにより行うことができる。これにより、パレット14に設けられた基準ピン52aの実際の位置が、搬送装置10の座標系の原点である前記基準点として制御ユニット20に入力される。
【0044】
このように、基準点設定工程S1、動作情報作成工程S2及びティーチング工程S3を実施することにより、搬送装置10に対するティーチングが完了する。
【0045】
なお、ティーチング工程S3は、パレット14上に基準点を設定した後であれば行うことができる。従って、図4では、動作情報作成工程S2の後に、ティーチング工程S3を実施する場合を示しているが、両工程の順序を逆にし、ティーチング工程S3を動作情報作成工程S2の前に実施してもよい。
【0046】
把持機構16を構成する部品(例えば、チャック部品等)に磨耗や破損が発生したことにより当該部品を交換した場合であって、ワーク12を把持するときの前記基準点を基準とした把持機構16の最適な位置座標が、部品交換によって変更される場合には、再度、原点位置をティーチングすればよい。これにより、ワーク12の全種類についてティーチングポイント(把持位置)が修正される。
【0047】
以上のように、本実施の形態に係る搬送動作ティーチング方法によれば、パレット14上にある任意の箇所を、ワーク12を搬送する軌跡の基準点として設定し、予め、ワーク12を搬送する軌跡を指示するNCプログラム(動作情報)を作成するので、このNCプログラムを記憶した制御ユニット20を有する搬送装置10に、実際のパレット14上にある基準点をティーチングすれば、ワーク12の搬送動作のティーチングが完了する。従って、実際のワーク12が無くてもティーチングを行うことができる。
【0048】
搬送装置10を実際に動作させて行うティーチング操作は、基本的には、基準点をティーチングする際の一回のみでよく、ティーチングを非常に簡便に行うことができる。また、把持位置は、パレット14及びワーク12の図面(あるいは設計データ)上の寸法から正確に求められるので、常に正確な位置を把持することができる。
【0049】
把持機構16を構成する部品(チャック部品等)に磨耗や破損が発生する等の理由により当該部品を交換した場合でも、再度、原点位置をティーチングするだけで、ワーク12の全種類についてティーチングポイント(把持位置)が修正されるため、部品交換時の対応が容易である。
【0050】
また、ワーク12の種類ごとに、図面あるいは設計データから抽出した寸法を、予め電子データ化し、制御ユニット20に接続したコンピュータから、有線又は無線の適宜の通信手段を介して、各電子データを一括して制御ユニット20に転送することも可能であるので、ワーク12の種類が多数ある場合でもティーチング作業を比較的簡便且つ短時間に行うことが可能となる。
【0051】
なお、ワーク12を搬送する動作を指示するために、搬送装置10を動作させるための動作情報としてNCプログラム(所定の軌跡を通過させるために、通過すべき点を3次元座標の点郡で規定したもの)の例を示したが、モーションコントロール(予め、所定の軌跡をする動作(モーション)が定義されており、その始点と終点とが更に定義されており、複数のモーションの組み合わせで規定したもの)や、ラダー(予め、所定の軌跡をする動作(直線運動や円弧運動)が定義されており、その始点が更に定義されていて、移動距離や移動角度を指示することにより規定したもの)等のようのなものでもよい。
【0052】
上述したように、本実施の形態によれば、パレット14に基準部52を設け、この基準部52の位置を、ワーク12を搬送する軌跡の基準点として設定する。このため、搬送装置10に基準部52の位置を基準点としてティーチングする際には、搬送装置10の把持機構16により基準部52を把持させることで、基準点を容易にティーチングすることができる。
【0053】
本実施の形態によれば、基準部52がパレット14の外周縁部に設けられることで、把持機構16で基準部52を把持させ易く、基準点のティーチングを容易に行うことが可能となる。さらにまた、基準部52が、ピン形状に形成された基準ピン52aとして構成されることで、把持機構16で基準ピン52aを把持させ易く、基準点のティーチングを容易に行うことが可能となる。
【0054】
また、基準ピン52aが挿入されるピン挿入穴44が、把持機構16の係合部36に設けられているので、搬送装置10を操作する際に、基準ピン52aがピン挿入穴44に挿入される様子を目視で確認しやすく、オペレータによる基準点のティーチング操作が容易である。
【0055】
上述した本実施の形態では、パレット14のX方向の両側にそれぞれ1つずつ基準ピン52aを設ける場合を説明したが、片側のみに基準ピン52aを1つ設けるようにしてもよい。
【0056】
上述した本実施の形態では、パレット14のX方向の両側にそれぞれ1つずつ、計2つ基準部52(基準ピン52a)を設ける場合を説明したが、図5に示す別の構成例に係るパレット14aのように、パレット14aのX方向の両側に、それぞれX方向に離間して2つずつ基準部52(基準ピン52a)を設けてもよい。また、この場合、図5に示す搬送装置10aのように、各係合部36において、搬送装置10aの幅方向(X方向)の中央側の側面に、基準部52に対応するピン挿入穴44を2つずつ設けてもよい。このように、基準部52の数を増やすことで、基準点のティーチングを高精度に行うことができる。
【0057】
上述した実施の形態では、パレット14、14aにピン形状の基準部52を設け、把持機構16のアーム30、32にピン挿入穴44を設けた構成を説明したが、パレット14、14aに穴状の基準部52を儲け、把持機構16のアーム30、32に、穴状の基準部52に挿入可能なピンを設ける構成としてもよい。
【0058】
上述した実施の形態では、パレット14、14aの外周縁部から水平方向外側に突出するように基準ピン52aを設けたが、パレット14、14aのベースプレート46から上方に突出するように基準ピン52aを設けてもよい。この場合、ピン挿入穴44を係合部36の下面に設け、上述したティーチング工程S3の際には、係合部36の下面のピン挿入穴44に基準ピン52aが挿入されるように搬送装置10、10aを動作させればよい。
【0059】
上記において、本発明について好適な実施の形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0060】
10、10a…搬送装置 12…ワーク
14、14a…パレット 16…把持機構
18…移動機構 20…制御ユニット
36…係合部 44…ピン挿入穴
52…基準部 52a…基準ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを把持する把持機構と、少なくとも交差する2つの移動軸をもち前記把持機構を移動させる移動機構とを備えた搬送装置に、前記ワークを搬送する軌跡をティーチングする方法において、
前記ワークを載置するためのパレット上にある任意の箇所を、前記ワークを搬送する軌跡の基準点として設定する基準点設定工程と、
予め、前記搬送装置を動作させるための動作情報であって、前記基準点を原点とした座標系にて、前記基準点を基準に所定の軌跡に沿って前記ワークを搬送する動作を指示する動作情報を作成する動作情報作成工程と、
前記動作情報に従って動作する前記搬送装置に、実際のパレット上にある前記基準点をティーチングするティーチング工程とを有する、
ことを特徴とする搬送動作ティーチング方法。
【請求項2】
請求項1記載の搬送動作ティーチング方法において、
前記基準点設定工程において、前記パレットに設けた基準部の位置を前記基準点として設定し、
前記ティーチング工程において、前記把持機構で前記基準部を把持することで、前記搬送装置に前記基準部の位置をティーチングする、
ことを特徴とする搬送動作ティーチング方法。
【請求項3】
請求項2記載の搬送動作ティーチング方法において、
前記基準部は、前記パレットの複数箇所に設けられている、
ことを特徴とする搬送動作ティーチング方法。
【請求項4】
請求項2又は3記載の搬送動作ティーチング方法において、
前記基準部は、前記パレットの外周縁部に設けられている、
ことを特徴とする搬送動作ティーチング方法。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項に記載の搬送動作ティーチング方法において、
前記基準部は、ピン形状に形成された基準ピンとして構成されている、
ことを特徴とする搬送動作ティーチング方法。
【請求項6】
請求項5項記載の搬送動作ティーチング方法において、
前記把持機構は、前記ワークに係合する係合部を有し、
前記ティーチング工程において、前記パレットに設けられた前記基準ピンが、前記把持機構の前記係合部に設けたピン挿入穴に挿入されるように、前記把持機構を動作させる、
ことを特徴とする搬送動作ティーチング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−88248(P2011−88248A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−244051(P2009−244051)
【出願日】平成21年10月23日(2009.10.23)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】