説明

搬送用車両

【課題】負荷走行時、積載荷重の一部を駆動輪に負荷して輪荷重を増やし、走行に必要な摩擦力が得られる構成でありながら、駆動輪換向形式にも容易に採用でき、構造を簡単かつ整然とした搬送用車両を提供する。
【解決手段】車体5の中間下部の複数箇所に荷重支持用車輪装置10を設け、車体5の前後下部にそれぞれ走行駆動用車輪装置20を設けた。車体5の上部に被搬送物3の支持体50を昇降自在に設け、支持体50を昇降させる前後一対の昇降手段55を車体5側に設けた。走行駆動用車輪装置20を車体5側に対して換向自在かつ昇降自在に設けるとともに、下降付勢する付勢手段47を設けた。支持体50により被搬送物3を支持したときに昇降手段55に掛かる荷重負荷に応じて走行駆動用車輪装置20に下降力を付加しかつ換向を許容する連動手段60を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば屋内外において走行させることで被搬送物の搬送を行う無人式や有人式の搬送用車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のものとしては、車体の下部前後両側に設けられた複数の支持車輪により走行路面に対して走行自在に支持するとともに、車体両側中央位置に配置されて車体に対して上下動自在な一対の駆動輪を、独立して走行路面に押し付けて走行駆動する自走台車の駆動輪サスペンション機構がある。ここで駆動輪サスペンション機構は、サスペンションアームとバネユニットとジャッキ機構とを備えている。
【0003】
すなわちサスペンションアームは、駆動輪を支持し、車体に対して上下動自在に取り付けられている。またバネユニットは、一方の連結部が車体側のバネ支持アームに連結され、他方の連結部がサスペンションアーム揺動端側のバネ受け部に連結されるとともに、これら連結部間に、主圧縮バネと、主圧縮バネよりもバネ定数の小さな補助圧縮バネが介装され、両連結部どうしの接近によって補助圧縮バネが所定量圧縮された後、補助圧縮バネとともに主圧縮バネが圧縮されて、両連結部どうしの接近変位に抗するバネ力を発生させるように構成されている。さらにジャッキ機構は、車体側に取り付けられて、バネ支持アームを上下動させて全ての支持車輪が着地した状態に調整するように構成されている。
【0004】
かかる従来構成によると、駆動輪と全ての支持車輪が平坦な走行路面上に着地しているときは、主圧縮バネと補助圧縮バネがともに圧縮されて、駆動輪が両方の圧縮バネ力でサスペンションアームを介して平坦な走行路面に押し付けられる。そして、駆動輪が凹凸のある走行路面の凹みに落ち込んで支持車輪のレベルよりも下方に変位したときは、両連結部間が離間して主圧縮バネのバネ力が消失しても、駆動輪が補助圧縮バネのバネ力で走行路面に押し付けられることになる(たとえば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特許第3314008号公報(第1−3頁、第1−3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記した従来構成によると、両駆動輪は車体に対して上下動するが換向動しないものであり、曲線走行は、左右の駆動輪間に回転速度差を生じさせて行っている。すなわち、主圧縮バネや補助圧縮バネなどからなるバネユニットは、定位置に配設される構成であることから、駆動輪換向形式には採用できない。また、2種類のバネを配置することなどから、周辺を含めて構造が複雑かつ繁雑になり易い。
【0006】
そこで本発明の請求項1記載の発明は、負荷走行時、積載荷重の一部を駆動輪に負荷して輪荷重を増やし、走行に必要な摩擦力が得られる構成でありながら、駆動輪換向形式にも容易に採用し得、また構造を簡単かつ整然とし得る搬送用車両を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明の請求項1記載の搬送用車両は、車体の中間下部の複数箇所には荷重支持用車輪装置が設けられるとともに、車体の前後下部にはそれぞれ走行駆動用車輪装置が設けられ、車体の上部には被搬送物の支持体が昇降自在に設けられるとともに、この支持体を昇降させる前後一対の昇降手段が車体側に設けられ、前記走行駆動用車輪装置は車体側に対して換向自在かつ昇降自在に設けられるとともに、下降付勢する付勢手段が設けられ、前記支持体により被搬送物を支持したときに昇降手段に掛かる荷重負荷に応じて走行駆動用車輪装置に下降力を付加しかつ換向を許容する連動手段が設けられていることを特徴としたものである。
【0008】
したがって請求項1の発明によると、被搬送物を支持していない空のときには、両昇降手段は支持体を下降させており、そして車体側の荷重を荷重支持用車輪装置群により支持している。したがって、走行駆動用車輪装置を駆動回転させることで、空の搬送用車両を走行し得、このとき走行駆動用車輪装置を正逆に換向させることで、カーブ経路を含めて好適に行える。その際に走行駆動用車輪装置は、付勢手段の付勢力により車体側に対して下降しており、以て付勢手段により、負荷、無負荷に関係なく走行駆動用車輪装置に一定荷重を負荷している。これにより走行駆動用車輪装置を、付勢手段の付勢力で走行面上に圧接させて、空の走行に必要な摩擦力を得ている。
【0009】
また、両支持体間で被搬送物を支持している実のときには、両昇降手段により支持体を上昇させており、被搬送物の重量を含めた車体側の荷重を荷重支持用車輪装置群により支持している。すなわち、被搬送物の荷重(重量)は前後の支持体に分割され、それぞれ支持体を介して昇降手段に伝達されたのち、連動手段を介して車体側に受け止められ、以て被搬送物の重量を含めた車体側の荷重を荷重支持用車輪装置群により支持することになる。
【0010】
そして、連動手段へと伝達された荷重の一部を、走行駆動用車輪装置により受け止め得る。このとき走行駆動用車輪装置は、前述したように付勢手段の付勢力により下降しているが、この走行駆動用車輪装置に、荷重によって付勢力以上の押し下げ力が作用することになり、以て走行駆動用車輪装置を、荷重に見合う押し下げ力で走行面上に圧接させて、実の走行に必要な好適な摩擦力を得ている。すなわち、昇降手段にかかる荷重に比例して走行駆動用車輪装置に荷重を負荷させることになる。その際に、換向を許容する連動手段であることから、走行駆動用車輪装置が換向自在な駆動輪換向形式であっても採用し得る。
【0011】
また本発明の請求項2記載の搬送用車両は、上記した請求項1記載の構成において、走行駆動用車輪装置は車体にリンク機構を介して昇降自在に設けられるとともに、リンク機構と車体側との間に付勢手段が設けられ、連動手段は、車体側に対して横方向軸を介して上下揺動自在に設けられたリンク体と、このリンク体の遊端に設けられ前記走行駆動用車輪装置における本体側の上向き面に当接自在な当接体とから構成されるとともに、前記リンク体の中間部に昇降手段の下部が連結され、前記リンク体における昇降手段の連結位置から横方向軸までの荷重伝達距離と、連結位置から当接体までの連動作用距離とのリンク比によって、昇降手段に掛かる被搬送物の荷重負荷に応じて走行駆動用車輪装置の車輪接地圧を設定するように構成されていることを特徴としたものである。
【0012】
したがって請求項2の発明によると、空の搬送用車両を走行させる際に走行駆動用車輪装置では、付勢手段の付勢力により車体側に対してリンク機構を、その遊端側が下降するように揺動させて、遊端に連結した本体を下降させており、以て付勢手段により、負荷、無負荷に関係なく走行駆動用車輪装置に一定荷重を負荷している。
【0013】
また、両支持体間で被搬送物を支持している実のとき、被搬送物の荷重(重量)は前後の支持体に分割され、それぞれ支持体を介して昇降手段に伝達されたのち、リンク体における連結位置の部分に達している。そして連結位置に掛かる荷重を、荷重伝達距離と連動作用距離とのリンク比に基づいて、横方向軸側と当接体側とに分割し得る。そのうち、リンク体における荷重伝達距離の部分を介して横方向軸側へと伝達された分割荷重は、この横方向軸を介して車体側で受け止め得、以て被搬送物の重量を含めた車体側の荷重を荷重支持用車輪装置群により支持し得る。また、連動作用距離の部分を介して当接体側へと伝達された分割荷重は、走行駆動用車輪装置の本体で受け止め得る。その際に、当接体側へと伝達された分割荷重を本体側の上向き面で受け止めることによって、走行駆動用車輪装置が換向自在な駆動輪換向形式であっても採用し得る。なお、荷重伝達距離と連動作用距離との設定、すなわちリンク比は、取り扱う被搬送物の荷重に基づいて任意に設定し得る。
【発明の効果】
【0014】
上記した本発明の請求項1によると、被搬送物を支持していない空のときには、両昇降手段は支持体を下降させており、そして車体側の荷重を荷重支持用車輪装置群により支持している。したがって、走行駆動用車輪装置を駆動回転させることで、空の搬送用車両を走行でき、このとき走行駆動用車輪装置を正逆に換向させることで、カーブ経路を含めて好適に行うことができる。その際に走行駆動用車輪装置は、付勢手段の付勢力により車体側に対して下降しており、以て付勢手段により、負荷、無負荷に関係なく走行駆動用車輪装置に一定荷重を負荷できる。これにより走行駆動用車輪装置を、付勢手段の付勢力で走行面上に圧接させて、空の走行に必要な摩擦力を得ることができる。
【0015】
また、両支持体間で被搬送物を支持している実のときには、両昇降手段により支持体を上昇させており、被搬送物の荷重(重量)を前後の支持体に分割でき、それぞれ支持体を介して昇降手段に伝達したのち、連動手段を介して車体側に受け止めることができ、以て被搬送物の重量を含めた車体側の荷重を荷重支持用車輪装置群により支持することができる。
【0016】
そして、連動手段へと伝達された荷重の一部を、走行駆動用車輪装置により受け止めることができる。このとき、前述したように付勢手段の付勢力により下降している走行駆動用車輪装置に、荷重によって付勢力以上の押し下げ力が作用することになり、以て走行駆動用車輪装置を、荷重に見合う押し下げ力で走行面上に圧接できて、実の走行に必要な好適な摩擦力を得ることができる。すなわち、昇降手段にかかる荷重に比例して走行駆動用車輪装置に荷重を負荷できることになる。その際に、換向を許容する連動手段であることから、走行駆動用車輪装置が換向自在な駆動輪換向形式であっても容易に採用できる。
【0017】
このように、負荷走行時、積載荷重の一部を走行駆動用車輪装置に負荷して輪荷重を増やし、走行に必要な摩擦力を得ることができる構成でありながら、駆動輪換向形式にも容易に採用でき、また構造を簡単かつ整然とした搬送用車両を提供することができる。
【0018】
また上記した本発明の請求項2によると、空の搬送用車両を走行させる際に走行駆動用車輪装置では、付勢手段の付勢力により車体側に対してリンク機構を、その遊端側が下降するように揺動させて本体を下降させており、以て付勢手段により、負荷、無負荷に関係なく走行駆動用車輪装置に一定荷重を負荷できる。
【0019】
また、両支持体間で被搬送物を支持している実のとき、被搬送物の荷重(重量)を前後の支持体に分割でき、それぞれ支持体を介して昇降手段に伝達したのち、リンク体における連結位置の部分に達している。そして連結位置に掛かる荷重を、荷重伝達距離と連動作用距離とのリンク比に基づいて、横方向軸側と当接体側とに分割できる。そのうち、リンク体における荷重伝達距離の部分を介して横方向軸側へと伝達された分割荷重は、この横方向軸を介して車体側で受け止めることができ、以て被搬送物の重量を含めた車体側の荷重を荷重支持用車輪装置群により支持できる。また、連動作用距離の部分を介して当接体側へと伝達された分割荷重は、走行駆動用車輪装置の本体で受け止めることができ、その際に、当接体側へと伝達された分割荷重を本体側の上向き面で受け止めることによって、走行駆動用車輪装置が換向自在な駆動輪換向形式であっても容易に採用できる。
【0020】
なお、荷重伝達距離と連動作用距離との設定、すなわちリンク比は、取り扱うに被搬送物の荷重に基づいて任意に設定でき、走行駆動用車輪装置における摩擦力を、常に好適な状態にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
[実施の形態]
以下に、本発明の実施の形態を、走行面(床面)1側の誘導線を複数の誘導センサ(いずれも後述する。)で検出しながら一定経路2で自動走行する無人台車式の搬送用車両に採用した状態として、図に基づいて説明する。
【0022】
図1〜図3において、車体5は長方形の平枠状からなり、その中間下部の前後2箇所でかつ左右2箇所の合計4箇所(複数箇所)には、それぞれ荷重支持用車輪装置10が設けられるとともに、車体5の前後下部でかつ左右中央部にはそれぞれ走行駆動用車輪装置20が設けられている。
【0023】
すなわち、各荷重支持用車輪装置10は、車体5に対して縦軸心11の周りに正逆回転自在に設けられた回転体(回転テーブル)12と、各回転体12の下部3箇所(単数または複数箇所)に設けられたキャスター車輪13などからなり、キャスター車輪13の遊転車輪14群によって実または空の車体5側の荷重を支持するように構成されている。
【0024】
図4〜図6において、両走行駆動用車輪装置20は、車体5側に対して、換向自在かつリンク機構40を介して昇降自在に設けられるとともに、下降付勢する付勢手段(後述する。)がリンク機構40と車体5側との間に設けられている。
【0025】
すなわち走行駆動用車輪装置20の本体21は、昇降部22と換向部23とからなり、昇降部22は車体5側の支持部材6に対して、リンク機構40を介して昇降自在に設けられている。また換向部23は昇降部22に対して、軸受部24を介して縦軸心25の周りに正逆換向自在に設けられるとともに、換向を行わせる換向装置30が昇降部22との間に設けられている。そして換向部23には、横方向の車輪軸26を介して駆動車輪27が設けられるとともに、車輪軸26に連動する回転駆動装置28が設けられている。
【0026】
前記換向装置30は、換向部23の上部に固定された受動歯輪31と、昇降部22側から連設されたブラケット32に軸受33を介して回転自在に支持された縦方向の駆動軸34と、この駆動軸34の上端に固定された駆動歯輪35と、前記ブラケット32に遊転自在に支持されたテンション歯輪36と、各歯輪31,35,36間に巻回された無端チェーン37と、駆動軸34に連動すべくブラケット32側に取り付けられた駆動部(減速機付きモータなど)38などにより、その一例が構成されている。
【0027】
前記リンク機構40は、上下一対の平行リンク41を左右両側に配設することで構成され、これら平行リンク41の後端(基端)が本体21側の支持部材6に、左右方向ピン42を介して上下揺動自在に連結されるとともに、平行リンク41の前端(遊端)が昇降部22側に、左右方向ピン43を介して相対揺動自在に連結されている。これにより走行駆動用車輪装置20は、車体5側に対して、リンク機構40を介して昇降自在に設けられる。なお換向部23における前後端の外方には、走行面1側に敷設した誘導線4を検出可能な誘導センサ44が設けられている。以上の21〜44などにより走行駆動用車輪装置20の一例が構成される。
【0028】
そして、上位の平行リンク41の後端(基端)間から後方へ可動ブラケット45が連設されるとともに、この可動ブラケット45の下方に位置するように支持部材6側に定置ブラケット46が連設され、これらブラケット45,46間に圧縮ばね(付勢手段の一例)47群が介在されている。これにより、圧縮ばね47の弾性力によって、車体5側に対して平行リンク41を前端(遊端)が下降するように揺動させて、走行駆動用車輪装置20を下降付勢することになり、以て駆動車輪27を走行面1上に圧接させて圧縮ばね47の弾性力に見合う摩擦力が得られる。
【0029】
図1〜図7において、前記車体5の上部には、被搬送物3の支持体50が昇降自在に設けられるとともに、この支持体50を昇降させる前後一対の昇降手段(後述する。)が車体5側に設けられている。そして、前記支持体50により被搬送物3を支持したときに昇降手段に掛かる荷重負荷に応じて、走行駆動用車輪装置20に下降力を付加しかつ換向を許容する連動手段60が設けられている。
【0030】
すなわち、車体5の上部で前後端部にはそれぞれ昇降ガイド部材51が設けられ、これら昇降ガイド部材51に嵌合案内されて、板状の支持体50が昇降自在に設けられている。なお支持体50の上部には被搬送物3を係合保持するための凹部50Aが形成されている。そしてシリンダー装置(昇降手段の一例)55の上向きピストンロッド56が前後方向ピン58を介して支持体53に連結されるとともに、シリンダー本体57の下部が連動手段60に連結されている。
【0031】
前記連動手段60は、車体5側に対して横方向軸61を介して上下揺動自在に設けられたリンク体62と、このリンク体62の遊端(内端)に設けられ前記走行駆動用車輪装置20における昇降部22の上向き面22aに当接自在な当接体などから構成されている。
【0032】
すなわち、左右一対のリンク体62の外端部分(前端部分)が、車体5側の受け部材7に対して左右方向の横方向軸61を介して上下揺動自在に連結されている。そして両リンク体62の遊端部分(内端部分)間に、上向き面22aに上方から当接自在なローラ(当接体の一例)63が遊転自在に設けられている。さらに、前記リンク体62の中間部に前記シリンダー本体57の下部が左右方向ピン64を介して連結され、以て左右方向ピン64により、リンク体62に対するシリンダー装置(昇降手段)55の連結位置65が決定されている。
【0033】
その際に、前記リンク体62におけるシリンダー装置(昇降手段)55の連結位置65から横方向軸61までの荷重伝達距離Laと、連結位置65からローラ(当接体)63までの連動作用距離Lbとのリンク比によって、シリンダー装置(昇降手段)55に掛かる被搬送物3の荷重負荷に応じて走行駆動用車輪装置20の車輪接地圧を設定するように構成されている。ここで左右方向ピン64は、受け部材7の上方でかつ横方向軸61よりも上位に位置されており、また荷重伝達距離Laは連動作用距離Lbよりも短く、すなわちLa<Lbに設定されている。以上の61〜65などにより、走行駆動用車輪装置20の換向を許容する連動手段60の一例が構成される。
【0034】
なお、70はコントロールパネル、71は前後各2個の非常停止スイッチ、72は前後各1個の一時停止スイッチ、73は前後各1個の無線機アンテナ、74は前後各1個の回転警告灯、75は前後各1セットのバンパ、76は前後各1個の障害物センサ、77は前側のみの自動充電接触子、78は前側のみの停止位置検出センサ、79は左右各1セットのバンパ、80は左右一対の障害物センサ、81は左側のみの昇降用ステップをそれぞれ示す。
【0035】
以下に、上記した実施の形態における作用を説明する。
図8に示されるように、被搬送物3を支持していない空のときには、両シリンダー装置55は収縮動して支持体50を下降させており、そして車体5側の荷重を各荷重支持用車輪装置10のキャスター車輪13群により支持している。したがって、走行駆動用車輪装置20の駆動車輪27を回転駆動装置28により駆動回転させることで、誘導センサ44により誘導線4を検出しながら、空の搬送用車両を一定経路2上で走行し得る。
【0036】
このような一定経路2上での走行は、換向装置30により昇降部22に対して換向部23を正逆に換向回転させることで、キャスター車輪13群を追従換向させながら、カーブ経路を含めて好適に行える。すなわち、駆動部38の正逆駆動によって駆動歯輪35を正逆回転させ、無端チェーン37などを介して受動歯輪31を正逆回転させることで、換向部23を正逆に換向回転し得る。
【0037】
その際に、走行駆動用車輪装置20では、圧縮ばね47群の弾性力により定置ブラケット46に対して可動ブラケット45を押し上げることで、車体5側の支持部材6に対して平行リンク41を、その前端(遊端)側が下降するように揺動させて、平行リンク41の遊端に連結された本体21を下降させており、以て圧縮ばね47により、負荷、無負荷に関係なく走行駆動用車輪装置20に一定荷重を負荷している。これにより駆動車輪27を、圧縮ばね47の弾性力に見合う付勢力で走行面1上に圧接させて、空の走行に必要な摩擦力を得ている。
【0038】
図1〜図3、図7に示されるように、両支持体50間で被搬送物3を支持している実のときには、両シリンダー装置55は伸展動して支持体50を上昇させており、被搬送物3の重量を含めた車体5側の荷重を、各荷重支持用車輪装置10のキャスター車輪13群により支持している。すなわち、被搬送物3の荷重(重量)は前後の支持体50に分割され、それぞれ支持体50を介してシリンダー装置55に伝達されたのち、リンク体62における連結位置65の部分に達している。そして連結位置65に掛かる荷重を、荷重伝達距離Laと連動作用距離Lbとのリンク比に基づいて、横方向軸61側とローラ63側とに分割し得る。
【0039】
そのうち、リンク体62における荷重伝達距離Laの部分を介して横方向軸61側へと伝達された分割荷重は、この横方向軸61を介して車体5側の受け部材7により受け止められ、以て被搬送物3の重量を含めた車体5側の荷重を、各荷重支持用車輪装置10のキャスター車輪13群により支持することになる。
【0040】
また、リンク体62における連動作用距離Lbの部分を介してローラ63側へと伝達された分割荷重は、走行駆動用車輪装置20の本体21に受け止められる。このとき走行駆動用車輪装置20では、前述したように圧縮ばね47の弾性力により本体21を下降させているが、この本体21には、分割荷重によって弾性力以上の押し下げ力が作用することになり、以て駆動車輪27を、分割荷重に見合う押し下げ力で走行面1上に圧接させて、実の走行に必要な好適な摩擦力を得ている。すなわち、シリンダー装置55にかかる荷重に比例して走行駆動用車輪装置20に荷重を負荷させることになる。
【0041】
その際に、ローラ63側へと伝達された分割荷重が昇降部22の上向き面22aに受け止められることで、すなわち換向を許容する連動手段60であることから、走行駆動用車輪装置20が換向自在な駆動輪換向形式であっても容易に採用し得る。
【0042】
なお、通常、荷重伝達距離Laは連動作用距離Lbよりも短く設定されているが、そのリンク比は、取り扱うに被搬送物3の荷重に基づいて任意に設定されるものである。
上記した実施の形態では、無人台車式の搬送用車両が示されており、この場合、たとえば車体5は車長約4000mm、車幅約2000mm、全体の重量約4000kg、最大荷重約10000kgであるが、その数値は使用目的、機種によって種々である。
【0043】
上記した実施の形態では、付勢手段として圧縮ばね47を採用した形式としているが、これは引っ張りばねにより下降付勢する形式や、ウエイトにより下降付勢する形式などであってもよい。
【0044】
上記した実施の形態では、支持体50として、前後一対の板状物でかつ上部に凹部50Aを形成した形式が示されているが、これは上部を被搬送物3の形状に合わせて形成した形式や、被搬送物3の形状に応じて、たとえば被搬送物3を載置可能な前後方向材を前後の支持体50間に設けて、両支持体50を一体化した形式などであってもよい。
【0045】
上記した実施の形態では、昇降手段としてシリンダー装置55の形式が示されており、この場合に電動式や油圧式や空圧式などが採用される。
上記した実施の形態では、連動手段としてリンク体62とローラ63などからなる形式が示されているが、これはリンク体62をロッド体やレール体に変更した形式、ローラ(当接体)63を球状突起やボール体に変更した形式などであってもよい。
【0046】
上記した実施の形態では、一定経路2で自動走行する無人台車式の搬送用車両が示されているが、搬送用車両としては、任意な方向に操縦走行可能な有人台車式の搬送用車両などであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施の形態を示し、搬送用車両における被搬送物支持時の側面図である。
【図2】同搬送用車両の平面図である。
【図3】同搬送用車両における被搬送物支持時の正面図である。
【図4】同搬送用車両における走行駆動用車輪部分で、(a)は側面図、(b)は要部の拡大側面図である。
【図5】同搬送用車両における走行駆動用車輪部分の平面図である。
【図6】同搬送用車両における走行駆動用車輪部分の一部切り欠き正面図である。
【図7】同搬送用車両における昇降手段部分の正面図である。
【図8】同搬送用車両における空走行時の側面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 走行面
2 一定経路
3 被搬送物
4 誘導線
5 車体
10 荷重支持用車輪装置
12 回転体
13 キャスター車輪
14 遊転車輪
20 走行駆動用車輪装置
21 本体
22 昇降部
22a 上向き面
23 換向部
27 駆動車輪
28 回転駆動装置
30 換向装置
31 受動歯輪
35 駆動歯輪
37 無端チェーン
38 駆動部
40 リンク機構
41 平行リンク
44 誘導センサ
45 可動ブラケット
46 定置ブラケット
47 圧縮ばね(付勢手段)
50 支持体
50A 凹部
51 昇降ガイド部材
55 シリンダー装置(昇降手段)
56 上向きピストンロッド
57 シリンダー本体
60 連動手段
61 横方向軸
62 リンク体
63 ローラ(当接体)
64 左右方向ピン
65 連結位置
70 コントロールパネル
La 荷重伝達距離
Lb 連動作用距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の中間下部の複数箇所には荷重支持用車輪装置が設けられるとともに、車体の前後下部にはそれぞれ走行駆動用車輪装置が設けられ、車体の上部には被搬送物の支持体が昇降自在に設けられるとともに、この支持体を昇降させる前後一対の昇降手段が車体側に設けられ、前記走行駆動用車輪装置は車体側に対して換向自在かつ昇降自在に設けられるとともに、下降付勢する付勢手段が設けられ、前記支持体により被搬送物を支持したときに昇降手段に掛かる荷重負荷に応じて走行駆動用車輪装置に下降力を付加しかつ換向を許容する連動手段が設けられていることを特徴とする搬送用車両。
【請求項2】
走行駆動用車輪装置は車体にリンク機構を介して昇降自在に設けられるとともに、リンク機構と車体側との間に付勢手段が設けられ、連動手段は、車体側に対して横方向軸を介して上下揺動自在に設けられたリンク体と、このリンク体の遊端に設けられ前記走行駆動用車輪装置における本体側の上向き面に当接自在な当接体とから構成されるとともに、前記リンク体の中間部に昇降手段の下部が連結され、前記リンク体における昇降手段の連結位置から横方向軸までの荷重伝達距離と、連結位置から当接体までの連動作用距離とのリンク比によって、昇降手段に掛かる被搬送物の荷重負荷に応じて走行駆動用車輪装置の車輪接地圧を設定するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の搬送用車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−103514(P2006−103514A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−293151(P2004−293151)
【出願日】平成16年10月6日(2004.10.6)
【出願人】(000003241)TCM株式会社 (319)
【Fターム(参考)】