説明

搬送装置、画像読取装置及び画像記録装置

【課題】搬送異常の発生及びその原因を早期に判定することのできる搬送装置、画像読取装置及び画像記録装置を提供する。
【解決手段】搬送対象物を搬送するリニアモータ4と、リニアモータ4に対して駆動電流を供給するモータ駆動部34と、リニアモータ4の搬送状態を検出するロータリエンコーダ20と、ロータリエンコーダ20による検出結果に基づいてモータ駆動部34をフィードバック制御する搬送制御部と、ロータリエンコーダ20による検出結果に基づいて搬送異常の判定を行う異常判定部36と、異常判定部36による判定結果を出力する表示部38と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置、画像読取装置及び画像記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、OA機器である画像記録装置や各種医療機器等の搬送手段として、ネジ部をサーボモータやステッピングモータ等により回転させるボールネジ機構を用いた搬送手段が用いられている。
【0003】
また、最近では、例えば、画像記録装置の印字ヘッド又は露光ヘッド等や各種医療機器における露光走査手段、放射線画像情報の読取装置等のように直線移動精度が要求される部位には、搬送手段としてリニアモータを利用することが提案されている。リニアモータを用いた搬送手段は、磁石で構成される固定子と電磁コイルを有し固定子に沿って移動する可動子とを備えるものであり、可動子に搬送対象物を固定し、可動子に電流を流すことにより可動子の電磁コイルと固定子の磁石との間に生じる吸引力及び反発力を利用して搬送対象物を搬送するようになっている。
【0004】
このようにリニアモータを搬送手段として利用する場合については、リニアモータに供給される電流値を測定して、これが所定の基準電流値よりも大きいと判定された場合には、リニアモータに供給される電流値を基準電流値以下とするように電流供給の制御を行い、モータが焼損するのを防止することも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
これら搬送手段において、何らかの原因により搬送異常が発生すると、搬送手段を搭載した画像読取装置、画像記録装置において、搬送むらに起因する画質の低下を生じる。
【0006】
従来、このような搬送むらの発生は、画像読み取り後、又は画像記録後に、画像をフィルムや紙等に出力して画質の低下(出力された画像の異常)を発見することにより、事後的に検出されるに過ぎなかった。
【特許文献1】特開2005−73021号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えば、放射線画像情報の読取装置の場合には、画像の記録された輝尽性蛍光体プレートに励起光を照射すると、励起光を照射した部分の保持エネルギーが低下するか又は消去されてしまうため、一旦画像の読み取りを行うと再度読み取ることができない。このため、搬送むらによる画質の低下があった場合には、画像を取り直さなければならなくなるおそれがある。
また、画像記録装置の場合、搬送異常が生じている状態で画像記録を行うと高精細な画像は得られないことから、再度画像記録をやり直さなければならず、記録媒体(記録対象)を無駄にしてしまうとの問題がある。
このため、搬送異常による画像むら(画質の低下)を生じるおそれがある場合には、画像の読み取り、画像記録等を行う前にこれを検出し、搬送異常を解消してから画像の読み取り、画像記録等を行う必要がある。
【0008】
また、従来のように画像をフィルムや紙等に出力して画質の低下の有無を確認するまでは搬送異常を検出することができないとすると、出力された画像に画像むら(画質の低下)がある場合に、それが搬送異常に起因するのか画像の読み取りを行った輝尽性蛍光体プレートや、画像の出力を行った記録媒体等の異常に起因するのかを判別することができず、次に画像むら(画質の低下)を生じないためにはどのような対処を行えばいいのかの判断ができないという問題がある。
【0009】
また、搬送異常を生じる原因は様々であり、例えば搬送手段としてリニアモータを使用する場合には、装置内にゴミ等が入ることにより、モータのシャフト磁石部分にゴミが付着してモータが動かなくなったり、突発的な搬送異常を生じるおそれがあり、搬送むらに起因する画像むらが発生して画質が低下するとの問題がある。
また、例えば搬送位置等を検出するエンコーダを構成するプーリとワイヤとの間にゴミが挟まると、周期的な搬送むらが発生し、これに起因する画像むらによる画質の低下を招く。
さらに、何らかの外部的な振動や衝撃等によって一時的な搬送異常を生じることもある。
そして、搬送異常が生じた場合には、これら各原因ごとに対処方法も異なることから、如何なる原因で搬送異常を生じているのかをできるだけ早く判断可能とする必要がある。
【0010】
そこで、本発明は以上のような課題を解決するためになされたものであり、搬送異常の発生及びその原因を早期に判定することのできる搬送装置、画像読取装置及び画像記録装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような問題を解決するため、請求項1に記載されている搬送装置は、
搬送対象物を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段に対して駆動電流を供給する駆動手段と、
前記搬送手段の搬送状態を検出する搬送状態検出手段と、
前記搬送状態検出手段による検出結果に基づいて前記駆動手段をフィードバック制御する搬送制御手段と、
前記搬送状態検出手段による検出結果に基づいて搬送異常の判定を行う異常判定手段と、
前記異常判定手段による判定結果を出力する判定結果出力手段と、
を備えることを特徴としている。
【0012】
このような構成を有する請求項1に記載の発明は、搬送状態検出手段による検出結果に基づいて、搬送手段に対して駆動電流を供給する駆動手段を搬送制御手段がフィードバック制御し、搬送状態検出手段による検出結果に基づいて異常判定手段が搬送異常の判定を行い、当該判定結果を判定結果出力手段から出力するようになっている。
【0013】
請求項2に記載されている発明は、請求項1に記載の搬送装置において、
前記駆動手段の駆動状態を検出する駆動状態検出手段をさらに備え、
前記異常判定手段は、前記搬送状態検出手段による検出結果と、前記駆動状態検出手段による検出結果と、に基づいて搬送異常の判定を行うことを特徴としている。
【0014】
このような構成を有する請求項2に記載の発明は、搬送状態検出手段による検出結果と、駆動状態検出手段による検出結果と、に基づいて、異常判定手段が搬送異常の判定を行うようになっている。
【0015】
請求項3に記載されている発明は、請求項1又は請求項2に記載の搬送装置において、
前記搬送手段の動作状態を検出する動作状態検出手段をさらに備え、
前記異常判定手段は、前記搬送状態検出手段による検出結果と、前記動作状態検出手段による検出結果と、に基づいて搬送異常の判定を行うことを特徴としている。
【0016】
このような構成を有する請求項3に記載の発明は、搬送状態検出手段による検出結果と、動作状態検出手段による検出結果と、に基づいて、異常判定手段が搬送異常の判定を行うようになっている。
【0017】
請求項4に記載されている発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の搬送装置において、
前記異常判定手段は、搬送異常の周期性を判定することにより、搬送異常の有無及び搬送異常の発生原因を判断することを特徴としている。
【0018】
このような構成を有する請求項4に記載の発明は、搬送異常の周期性を判定することにより、異常判定手段が、搬送異常が発生しているか否か及び搬送異常が発生している場合にはその発生原因を判断するようになっている。
【0019】
請求項5に記載されている発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の搬送装置において、
前記異常判定手段は、搬送異常の再現性を判定することにより、搬送異常の有無及び搬送異常の発生原因を判断することを特徴としている。
【0020】
このような構成を有する請求項5に記載の発明は、搬送異常の再現性を判定することにより、異常判定手段が、搬送異常が発生しているか否か及び搬送異常が発生している場合にはその発生原因を判断するようになっている。
【0021】
請求項6に記載されている発明は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の搬送装置において、
前記搬送手段は、複数の磁石を備える固定子と、電磁コイルを備え前記固定子に沿って移動可能に配設された可動子とを備えるリニアモータであることを特徴としている。
【0022】
このような構成を有する請求項6に記載の発明は、複数の磁石を備える固定子と、電磁コイルを備え固定子に沿って移動可能な可動子とを備えるリニアモータによって搬送対象物を搬送するようになっている。
【0023】
請求項7に記載されている画像読取装置は、
画像が記録された記録媒体と、
前記記録媒体に記録された画像を読み取る読取手段と、
前記記録媒体と前記読取手段とが相対的に移動するように前記記録媒体及び前記読取手段のうち少なくともいずれか一方を搬送する請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の搬送装置と、
を備えることを特徴としている。
【0024】
このような構成を有する請求項7に記載の発明は、異常判定手段が搬送異常の判定を行い、判定結果出力手段により当該判定結果を出力する搬送装置により、記録媒体又は読取手段のうち少なくともいずれか一方を搬送して記録媒体と読取手段とが相対的に移動するようになっている。
【0025】
請求項8に記載されている発明は、請求項7に記載の画像読取装置において、
前記搬送装置は、画像の読み取り動作時以外に、搬送異常の判定を行うための搬送を行うことを特徴としている。
【0026】
このような構成を有する請求項8に記載の発明は、搬送装置が、画像の読み取り動作時以外に、搬送異常の判定を行うための搬送を行うようになっている。
【0027】
請求項9に記載されている画像記録装置は、
画像を記録する記録対象と、
前記記録対象に画像を記録する記録手段と、
前記記録対象と前記記録手段とが相対的に移動するように前記記録対象及び前記記録手段のうち少なくともいずれか一方を搬送する請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の搬送装置と、
を備えることを特徴としている。
【0028】
このような構成を有する請求項9に記載の発明は、異常判定手段が搬送異常の判定を行い、判定結果出力手段により当該判定結果を出力する搬送装置により、記録対象又は記録手段のうち少なくともいずれか一方を搬送して記録対象と記録手段とが相対的に移動するようになっている。
【0029】
請求項10に記載されている発明は、請求項9に記載の画像記録装置において、
前記搬送装置は、画像の記録動作時以外に、搬送異常の判定を行うための搬送を行うことを特徴としている。
【0030】
このような構成を有する請求項10に記載の発明は、搬送装置が、画像の記録動作時以外に、搬送異常の判定を行うための搬送を行うようになっている。
【発明の効果】
【0031】
請求項1に記載された発明によれば、搬送状態検出手段によって検出された検出結果に基づいて搬送装置の搬送異常を判定する異常判定手段が設けられているので、搬送対象物を搬送中や、搬送対象物を搬送する前に搬送手段を試しに空運転する際等に、搬送異常を判定することができる。このため、早期に搬送異常の有無や搬送異常の原因が何であるかを検出することができる。
【0032】
また、搬送異常と判定したときは、判定結果出力手段から判定結果を出力するので、ユーザが搬送異常の発生、搬送異常の原因を容易に確認することができる。これにより早期に適切な対処を行い、搬送異常を解消して、高精度の搬送を行うことができるとの効果を奏する。
【0033】
請求項2に記載された発明によれば、搬送状態検出手段によって検出された検出結果に加え、駆動状態検出手段によって検出された検出結果をも加味して搬送装置の搬送異常を検出するため、より精度よく搬送異常の発生、搬送異常の原因の判定を行うことができるとの効果を奏する。
【0034】
請求項3に記載された発明によれば、搬送状態検出手段によって検出された検出結果に加え、動作状態検出手段によって検出された検出結果をも加味して搬送装置の搬送異常を検出するため、より精度よく搬送異常の発生、搬送異常の原因の判定を行うことができるとの効果を奏する。
【0035】
請求項4に記載された発明によれば、異常判定手段は、搬送異常の周期性を判定するので、搬送異常と他の原因による異常との切り分けや搬送異常の発生原因の判定を精度よく行うことができるとの効果を奏する。
【0036】
請求項5に記載された発明によれば、異常判定手段は、搬送異常の再現性を判定するので、搬送異常と他の原因による異常との切り分けや搬送異常の発生原因の判定を精度よく行うことができるとの効果を奏する。
【0037】
請求項6に記載された発明によれば、搬送対象物をリニアモータによって搬送するので、ボールネジ機構等を用いた場合に比べて円滑で精度の高い搬送を行うことができる。また、搬送装置の搬送異常を判定する異常判定手段が設けられているので、マグネット等で構成され、ゴミ等の異物を引き付けやすい固定子を備えるリニアモータを搬送手段として用いる場合でも、搬送異常の有無や搬送異常の原因を早期に判定し、搬送異常を解消するための適切な対処を行うことができるとの効果を奏する。
【0038】
請求項7に記載された発明によれば、搬送対象物を搬送中等に、搬送装置の搬送異常を判定する異常判定手段を備えているので、画像が記録された輝尽性蛍光体プレート等の記録媒体から画像を読み取る画像読み取り動作中に異常が発生した場合に、それが搬送異常によるものかの判定、搬送異常である場合にはその発生原因を判定することができるので、フィルム等に画像を出力する前に搬送異常を検出して速やかに再度画像の記録を行うよう促すことができる。また、このように画像読み取り動作中に搬送異常の判定を行う場合には、事前の空運転動作によって搬送異常の有無、搬送異常の原因を確認する時間が必要ないため、1回の画像読取処理における処理時間を短縮することができるとの効果を奏する。
【0039】
請求項8に記載された発明によれば、搬送対象物を搬送する前に搬送手段を試しに空運転する際等に、搬送装置の搬送異常を判定するので、画像が記録された輝尽性蛍光体プレート等の記録媒体から画像を読み取る前、すなわち、輝尽性蛍光体プレートを画像読取装置内に引き込む前又は輝尽性蛍光体プレートを引き込んだ後カセッテから中に収納されたシートを取り出す前に、空運転動作を行うことにより、読み取り動作前に搬送異常を検出することができる。
放射線画像情報の読取装置においては、画像の記録された輝尽性蛍光体プレートに励起光を照射して輝尽発光光を検出するため、微少な搬送むらがあっても画質に影響を受けやすいが、このように読み取り動作前に搬送異常を検出することができるため、搬送異常を生じたまま画像の読み取りが行われるのを防ぐことができ、画像読み取りの失敗をなくすことができるので、再度放射線画像を記録する(被曝する)事態を低減することができるとの効果を奏する。
【0040】
請求項9に記載された発明によれば、搬送対象物を搬送中等に、搬送装置の搬送異常を判定する異常判定手段を備えているので、画像記録中に搬送異常の発生、搬送異常の原因を判定することができ、最後まで記録媒体に画像を出力する前に搬送異常を検出して速やかに再度画像の記録を行うよう促すことができる。また、この場合には事前の空運転動作によって搬送異常の有無、搬送異常の原因を確認する時間が必要ないため、1回の画像記録処理における処理時間を短縮することができるとの効果を奏する。
【0041】
請求項10に記載された発明によれば、搬送対象物を搬送する前に搬送手段を試しに空運転する際等に、搬送装置の搬送異常を判定するので、記録対象に画像を記録する前に、空運転動作を行うことにより、記録動作前に搬送異常を検出することができる。これにより、搬送異常を生じたまま画像記録が行われるのを防ぐことができ、画像記録の失敗をなくすことができるので、記録対象(記録媒体)を無駄にすることがなく、また、再度画像記録動作をやり直す時間を省いて全体の処理時間を短縮することができるとの効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。なお、本欄における説明は、定義的又は断定的な表現もあるが、これらは発明のベストモードを特定するものであり、本発明の範囲を限定したり、特許請求項の範囲に記載された用語の意義を特定したりするものではない。
[第1の実施の形態]
【0043】
以下、図1から図11を参照しつつ、本発明に係る搬送装置の一実施形態について説明する。ただし、本発明の範囲は図示例に限定されない。
【0044】
図1は、本実施形態における搬送装置1の斜視図であり、図2は、図1における搬送装置1の平面図、図3は、図1に示す搬送装置1の正面図、図4は、図1に示す搬送装置1の側面図、図5は、本実施形態における搬送装置1の制御構成を示す要部ブロック図である。
【0045】
図1から図4に示すように、搬送装置1には各部材を固定する板状の装置架台2が設けられている。また、装置架台2と搬送装置1の設置面(床面)との間には、振動を低減するための防振部材3a,3b,3c,3dが設けられている。この防振部材3a,3b,3c,3dは、防振ゴムやゲル状部材等の緩衝材等から構成されており、当該緩衝材が有する弾性により外部から装置架台2に係る振動(衝撃)を低減するようになっている。
【0046】
装置架台2の上には、リニアモータ4(図5参照)を構成する固定子として長尺なシャフト状のマグネット部5が装置架台2の長手方向(搬送方向A)に沿って延在するように設けられている。マグネット部5は、ほぼ断面円形状の永久磁石(図示せず)をN極同士あるいはS極同士が互いに対向するように規則的に複数連結することでシャフト状に形成されている。マグネット部5の両端は、装置架台2に固定されたシャフト保持部材6によって支持されている。
【0047】
マグネット部5を構成する永久磁石は磁束密度の大きい希土類磁石が好ましく、特に、希土類磁石としてネオジム系磁石、例えば、ネオジム-鉄-ボロン磁石(Nd-Fe-B磁石)等が好適に用いられる。このような希土類磁石リニアモータ4のマグネット部5に用いる場合は、他の磁石を用いる場合と比べて高い推力を得ることができる。なお、永久磁石は、ここに例示したものに限定されず、他の磁石を用いることもできる。
【0048】
また、マグネット部5には、リニアモータ4を構成する可動子として可動コイル7が設けられている。可動コイル7は円筒状に形成された電磁コイル(図示せず)を有しており、電磁コイルは例えば箱状のカバー部材(図示せず)により覆われている。電磁コイルは、複数の相、例えば3相からなるコイル群であるが、電磁コイルの構成はここに例示したものに限定されない。
【0049】
リニアモータ4は可動コイル7のほぼ中心をマグネット部5が貫通するように構成されており、可動コイル7は、マグネット部5に沿って装置架台2の長手方向(搬送方向A)に移動可能となっている。
【0050】
可動コイル7の一面であって装置架台2と対向する面の反対側の面には、図示しない搬送対象物を取り付ける搬送板8が設けられている。
【0051】
また、装置架台2の上面には、長尺な板状のレール支持部材10が、搬送方向Aに延在しマグネット部5とほぼ平行となるように固定されている。レール支持部材10の上面には、搬送板8を搬送方向Aにほぼ水平に案内するガイドレール11が設けられている。ガイドレール11は断面視略矩形状の棒状部材であって、図4に示すように、ガイドレール11にはガイドレール11に案内される断面視略コ字状の被ガイド部材12が係合している。被ガイド部材12は搬送板8の下面に取り付けられており、搬送板8は、レール支持部材10、ガイドレール11、被ガイド部材12等によって支持され、前記可動コイル7がマグネット部5に沿って移動することにより装置架台2上を搬送方向Aに移動可能となっている。
【0052】
さらに、装置架台2の上面であって、マグネット部5の側方には、マグネット部5及び支持部材10と平行して搬送方向Aに延在する長尺な板状のエンコーダ支持部材15が装置架台2に対してほぼ水平となるように固定されている。エンコーダ支持部材15の上面の長手方向両端部には、図1に示すように、断面視略L字型の固定部材16a、16bがそれぞれ設けられている。これら固定部材16aと固定部材16bとの間には、ワイヤ17が張設されており、ワイヤ17の両端部は、それぞれ固定部材16a,16bに固定されている。また、ワイヤ17にはエンコーダユニット18が連結されている。
【0053】
エンコーダユニット18は、搬送板8に固定されて搬送板8とともに移動可能な支持台19と、支持台19上に設けられたロータリエンコーダ20と、ロータリエンコーダ20の回転軸(図示せず)に連結されて支持台19の下面に取り付けられたプーリ21(図3参照)とを備えている。
【0054】
前記ワイヤ17は、このプーリ21に巻き付けられており、搬送板8の移動に連動してプーリ21を回転させるようになっている。ワイヤ17及びプーリ21は、リニアモータ4による搬送板8の直線的な移動を回転運動に変換するようになっている。ロータリエンコーダ20は、ワイヤ17の移動により回転するプーリ21及びロータリエンコーダ20の回転軸の回転位置を検出して位置信号(エンコーダ信号)として出力する搬送状態検出手段として機能する。
【0055】
具体的には、ロータリエンコーダ20は、前記回転軸に備えられ数百から数千からなる複数のスリットを有するスリット円板、該スリット円板に光を当てる発光ダイオード、及びスリット円板のスリットからの透過光を検出するフォトトランジスタ等(いずれも図示せず)を備えて構成されており、回転角度に対応したフォトトランジスタによるパルス信号を後述する速度演算部31及び検出結果演算部35に出力するようになっている。
【0056】
ロータリエンコーダ20から出力されるパルス信号は、1/4周期(90度)の位相差をもつ2相のパルス信号(A相パルス信号、B相パルス信号)であり、ロータリエンコーダ20は、このA相、B相のパルス信号をプーリ21及びロータリエンコーダ20の回転位置を表すエンコーダ信号(4逓倍)として出力する。このエンコーダ信号はリニアモータの可動子である可動コイル7及びこれに固定されている搬送板8の位置を示す位置信号である。なお、スリット数や位相差の幅はここに例示したものに限定するものではない。
【0057】
また、本実施形態においては、搬送手段であるリニアモータ4の搬送状態を検出する搬送状態検出手段としてロータリエンコーダ20を用いる場合を例として説明したが、搬送状態検出手段はこれに限定されず、スリットを直線上に配したリニアスケールと、リニアスケールのパターンを検出する検出部等を備えるリニアエンコーダであってもよい。
なお、本実施形態に示すように搬送手段としてリニアモータ4を使用し、検出手段としてロータリエンコーダ20を使用する場合には、リニアモータ4のマグネット部5の磁極の位置周期とロータリエンコーダ20の1回転の回転位置周期とが異なるように構成することが好ましい。このように構成することにより、異常が発生した場合に、それが搬送手段の異常か検出手段の異常かを迅速かつ容易に判断することが可能となる。
【0058】
また、搬送装置1は、各種のメッセージや装置の動作状況等を表示する表示部38(図5参照)を備えている。後述するように、本実施形態において搬送装置1に搬送異常が発生しているか否か及び搬送異常が発生している場合にはその発生原因等が随時判定されるようになっており、表示部38は、この判定結果をユーザに認識可能となるように出力する判定結果出力手段として機能する。
なお、判定結果出力手段は判定結果をユーザに認識可能となるように出力できるものであればよく、表示部38に限定されない。例えば、音声出力により判定結果を出力する手段や、ランプ等の点灯によって判定結果を出力する手段を判定結果出力手段として備えていてもよい。
【0059】
次に、図5を参照しつつ、本実施形態における搬送装置1の制御構成について説明する。
【0060】
図5に示すように、搬送装置1は、例えばCPU(Central Processing Unit)、各種の処理プログラム等を格納するROM(Read Only Memory)、各種データ等を一時記憶するRAM(Random Access Memory)等(いずれも図示せず)を備えて装置全体を総括的に制御する制御部30を有している。
【0061】
まず、搬送装置1の搬送速度制御を行うための構成として、搬送装置1は、リニアモータ4の搬送速度を演算する速度演算部31と、リニアモータ4の搬送速度と搬送装置1の目標速度との差分を算出する加算部(差分出力器)32と、リニアモータ4の搬送を制御する搬送制御部33と、搬送制御部33の制御に従ってリニアモータ4に駆動電流を供給するモータ駆動部34と、を備えている。
【0062】
速度演算部31は、例えばロータリエンコーダ20による検出結果であるエンコーダ信号の値(リニアモータ4の可動コイル7の位置信号の値)を時間微分することによってリニアモータ4の搬送速度の値に換算するものである。
【0063】
加算部(差分出力器)32は、速度演算部31によって算出された搬送速度(測定値)と、搬送装置1の目標速度(目標値)との差分(速度誤差)を算出し、この差分に応じた差分信号(速度誤差信号)を出力するものである。なお、本実施形態において、リニアモータ4による搬送の目標速度(目標値)は制御部30のRAM等に記憶されており、制御部30はこの目標速度(目標値)を速度指令信号として加算部32に出力するようになっている。
制御部30が加算部32に出力する目標速度(目標値)は、ロータリエンコーダ20で検出された位置信号に応じて対応する目標速度(目標値)をRAMから参照してもよいし、時間を計時して経過時間を算出しこの経過時間に対応する目標速度(目標値)をRAMから参照してもよい。
【0064】
搬送制御部33は、加算部32から出力された差分信号(速度誤差信号)に基づいてPID(比例積分微分)制御演算等を行ない、駆動手段であるモータ駆動部34に出力するトルク指令値を求めて、モータ駆動部34にこのトルク指令値に応じた速度制御信号を出力する搬送制御手段である。
このように搬送制御部33は、搬送状態検出手段であるロータリエンコーダ20の検出結果であるエンコーダ信号(位置信号)に基づいて算出された搬送速度(測定値)と目標速度(目標値)との差分に基づいて駆動手段であるモータ駆動部34をフィードバック制御するようになっている。
【0065】
なお、搬送制御部33の構成はここに例示したものに限定されず、例えば加算部32がロータリエンコーダ20から送られたエンコーダ信号(位置信号)に基づいて、この位置信号と搬送装置1における可動コイル7の目標位置(目標値)との差である位置誤差(差分)を求め位置誤差信号(差分信号)を出力するものである場合には、この位置誤差信号(差分信号)をPID演算することによりトルク指令値を求めて駆動手段であるモータ駆動部34をフィードバック制御する制御構成としてもよい。また、搬送制御部33は、速度誤差演算ループの外側に位置演算誤差ループを配置した2重のフィードバックループを構成するものであってもよい。また、搬送制御部33は、駆動手段であるモータ駆動部34にフィードバック制御する手段であれば、ここに例示したものに限定されない。すなわち、搬送制御部33は、PID制御演算である古典制御を行うものに限定されず、例えば、現代制御やH∞制御等を行うもので構成してもよく、また、フィードバックループの他に、フィードフォワードするループを加えたフィードフォワード制御を追加した構成としてもよい。
【0066】
モータ駆動部34は、搬送制御部33から出力された速度制御信号に基づいてリニアモータ4の可動コイル7に対して駆動電流を供給する駆動手段である。
モータ駆動部34は、例えば搬送手段である三相モータのリニアモータ4に駆動電流を供給するアナログ変調方式の三相モータ駆動回路であってもよいし、PWM(パルス幅変調)方式の三相モータ駆動回路であってもよい。
【0067】
なお、搬送装置1の搬送制御を行う構成はここに例示したものに限定されず、例えば、各種要因による搬送誤差(速度誤差、位置誤差)を補正する図示しない補正手段を備えていてもよい。この場合には、補正手段は、例えばロータリエンコーダ20等による検出結果に基づいて補正値を算出し、この補正値を搬送制御部33に送るようにする。そして、搬送制御部33は、加算部32から出力された差分信号(速度誤差信号)について、補正手段から送られた補正値に基づく補正を行った上で、駆動手段であるモータ駆動部34に対してトルク指令値に基づく速度制御信号を出力する。
【0068】
次に、搬送装置1の搬送異常を判定するための構成として、搬送装置1は、リニアモータ4の搬送速度(測定値)と搬送装置の目標速度(目標値)との誤差を求める検出結果演算部35と、検出結果演算部35の演算結果に基づいて搬送異常の有無及び搬送異常の原因を判定する異常判定部(異常判定手段)36と、搬送異常を判定するために必要な各種データ等を格納する判定情報記憶部37と、を備えている。
【0069】
検出結果演算部35は、例えばロータリエンコーダ20による検出結果であるエンコーダ信号の値(リニアモータ4の可動コイル7の位置信号の値)を時間微分することによってリニアモータ4の搬送速度の値に換算する。
【0070】
また、検出結果演算部35は、算出された搬送速度(測定値)と搬送装置1の目標速度(目標値)との誤差を演算して、速度誤差信号を生成する。なお、リニアモータ4による搬送の目標速度(目標値)の格納場所は特に限定されない。
例えば目標速度(目標値)が判定情報記憶部37に記憶され、検出結果演算部35は、判定情報記憶部37からこの目標値を読み出して測定値との誤差を演算するようにしてもよいし、例えば検出結果演算部35が前記制御部30のRAM等に記憶されている目標値を参照することにより、算出された搬送速度(測定値)と目標値との誤差を演算するようにしてもよい。
また、前記加算部32により算出された搬送速度(測定値)と搬送装置の目標速度(目標値)との差分に基づく差分信号が速度誤差信号として検出結果演算部35に入力されるようにしてもよい。
演算結果である速度誤差信号は異常判定部36に出力されるようになっている。
なお、搬送速度(測定値)と目標値との誤差の演算を行わずに、搬送速度(測定値)と目標値との比を求めて、求めた比が所定の範囲に入っていることにより搬送異常の判定を行うように構成してもよい。また、測定値と目標値との対応関係を規定するLUT(ルックアップテーブル)を備え、搬送状態検出手段であるロータリエンコーダ20による検出結果と搬送状態の目標値とをLUTに入力することによって搬送異常の判定を行うように構成してもよい。その他、搬送異常の判定の手法は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0071】
なお、微弱な搬送異常を検出するために、例えば、検出結果演算部35において速度誤差信号の値を位置ごとに平均化処理することが好ましい。平均化処理を行う場合、平均化処理の手法としては、例えば、図6に示すように、前回の検出結果から得られた前回の速度誤差信号の値(搬送むら)と今回の検出結果から得られた今回の速度誤差信号の値(搬送むら)との平均値を求める手法が考えられる。このように、複数回の速度誤差信号の値を平均化することによって、ノイズ(速度演算誤差)に埋もれた微弱な搬送異常の検出が容易になる。また、平均化処理の手法はこれに限定されず、例えば、デジタルフィルタ演算を行うことにより、前回の演算結果と今回の検出結果とに基づいて今回の演算結果を算出してもよい。
また、異常発生の周期性の有無を判定するために、周期的な位置(例えば50mm周期)ごとに検出した信号を平均化処理することが好ましい。
上記のような平均化処理を行った場合には、平均化処理された演算結果が異常判定部36に出力される。
なお、微弱な搬送異常を検出するために、検出結果演算部35において、例えば、デジタルフィルタを通して、特定の周波数成分の速度誤差を強調する処理等、速度誤差信号の値についてデジタル信号処理を加えてもよい。
【0072】
異常判定部36は、検出結果演算部35の演算結果に基づいて搬送異常の有無及び搬送異常の原因を判定するものであり、具体的には、以下のような処理を行うものである。
【0073】
異常判定部36は、例えば検出結果演算部35から演算結果として速度誤差信号が送られると、当該速度誤差信号の値(誤差範囲)が所定の閾値範囲(以下単に「所定値」と称する。)から外れているか否かを判断する。そして、判断の結果、速度誤差信号の値(誤差範囲)が所定値を外れている場合には、異常判定部36は搬送異常が発生していると判断するようになっている。
【0074】
すなわち、例えば所定値が、±1mm/sである場合、異常判定部36は、速度誤差信号の値が当該所定値から外れているか否かを判断し、速度誤差信号の値が所定値を外れている位置がある場合(速度誤差信号の値が−1未満である場合又は+1を超えている場合)には、異常判定部36は、当該位置を異常発生位置と判定して判定情報記憶部37に記憶させる。なお、所定値から外れている場合には、+側に外れているか−側に外れているかという符号も含めて判定を行い、+側又は−側の符号も含めた判定結果を判定情報記憶部37に記憶させることが好ましい。
【0075】
なお、所定値をどの程度の値とするかは、予め設定されていてもよいし、ユーザが任意に設定できるようにしてもよい。
本実施形態においては、所定値は予め判定情報記憶部37に記憶されており、異常判定部36は判定情報記憶部37から所定値を読み出して演算結果である速度誤差信号の値との比較を行うようになっている。
【0076】
なお、判定情報記憶部37に記憶されている所定値は1つに限定されない。例えば判定情報記憶部37に、誤差の大きさレベルの異なる複数の所定値(例えば、±3mm/s、±2mm/s、±1mm/s等、複数レベルの所定値)が記憶されていることが好ましい。
このように判定情報記憶部に複数の所定値が記憶されている場合には、異常判定部は、当該誤差の大きさレベル(以下「異常レベル」と称する。)と+側に外れているか−側に外れているかという符号とを判定し、例えば、+3mm/s以上であれば「異常レベル+2」、+1mm/s以上+3mm/s未満であれば「異常レベル+1」、−3mm/s以下であれば「異常レベル−2」、−1mm/s以下−3mm/s未満であれば「異常レベル−1」というように、判定結果を異常レベル及び+側か−側かの符号も含めて判定情報記憶部に記憶させることが好ましい。このように、判定結果を異常レベル及び+側か−側かの符号も含めて記憶させておくことによって、搬送異常と判定された場合に行われる異常発生原因の判定処理をより精度高く行うことができる。
【0077】
搬送異常と判定された場合には、異常判定部36によって異常発生原因の判定処理が行われるようになっている。異常発生原因の判定を行う場合には、まず、異常判定部36において速度誤差信号の値を位置ごとに平均化処理を行う。なお、前述ように、検出結果演算部35において事前に周期的な位置ごとに検出した速度誤差信号について平均化処理を行っている場合には、異常判定部36において繰返し平均化処理を行う必要はない。
【0078】
平均化処理を行った結果、異常判定部36は速度誤差信号の値と所定値との比較を行い、異常が現われる周期及び異常の再現性の特徴を分析することにより異常発生原因を判定するようになっている。すなわち、異常判定部36はリニアモータ4を駆動させた場合に、異常の発生に周期性があるか、周期性がある場合にはどのような周期で異常(所定値を超えるような誤差、搬送むら)が発生しているかを判断する。また、ある位置で異常が発生した場合には、リニアモータ4による搬送の往路及び復路等、複数回にわたって測定を行った結果について、それぞれ異常の発生箇所を確認し、異常に再現性があるかを判断する。
例えば前記判定情報記憶部37には、リニアモータ4のマグネット部5を構成する磁石(磁極)の周期に関するデータ、ロータリエンコーダ20の回転周期に関するデータ、防振部材3a,3b,3c,3dを介して伝わる振動の周期に関するデータ等が記憶されており、異常判定部36は、これらのデータを適宜参照することにより、異常が現われる周期及び異常の再現性の特徴がどの原因によるものかを分析することにより異常発生原因を判定するようになっている。
【0079】
具体的には、異常判定部36は異常が現われる周期がリニアモータ4の磁石(磁極)の周期と一致するか否かを判断する。そして、異常が現われる周期がリニアモータ4の磁石(磁極)の周期とほぼ一致している場合には、異常判定部36は搬送異常がマグネット部5にゴミ等の異物が付着している等、リニアモータ4の異常に起因するものであると判定する。
【0080】
また、異常判定部36は異常が現われる周期がロータリエンコーダ20の1回転周期と一致するか否かを判断する。そして、異常が現われる周期がロータリエンコーダ20の1回転周期とほぼ一致している場合には、異常判定部36は搬送異常がロータリエンコーダ20の異常に起因するものであると判定する。
【0081】
また、異常判定部36は防振部材3a,3b,3c,3dを介して伝わる振動の周期(振動の周波数と搬送速度から位置周期を求める)と一致するか否かを判断し、異常が現われる周期が防振部材3a,3b,3c,3dを介して伝わる振動の周期とほぼ一致している場合には、外部振動による異常と判断する。
【0082】
また、異常判定部36は、搬送異常の発生位置が、往路と復路との位置の比較で同じ位置で発生しているか、また、前回(又はそれ以前)と今回との位置の比較で同じ位置で発生しているか否か等、異常発生位置の再現性のある異常であるか否かを判断する。これにより、例えばロータリエンコーダ20のワイヤ17等に汚れ(ゴミの付着等)による異常が発生している可能性があると判定する。
なお、エンコーダとしてリニアエンコーダを使用している場合には、エンコーダスケールの汚れ(ゴミの付着等)による異常である場合に、異常発生位置の再現性のある異常が発生するため、異常発生位置の再現性のある異常の場合にはエンコーダスケールの汚れ(ゴミの付着等)に起因する異常と判定することができる。
【0083】
異常判定部36は、搬送異常が発生していると判断した場合には、その旨や異常発生原因の判定結果を制御部30に出力するようになっている。なお、搬送異常が発生しているとの判定が制御部30に送られたときには、異常判定の信頼性を上げるために、制御部30は、搬送制御部33等を制御してリニアモータ4を空運転動作させ、搬送状態検出手段であるロータリエンコーダ20による検出結果を複数取得することができるようにすることが好ましい。このようにすることより、異常判定部36による異常発生の周期性、異常発生位置の再現性の分析、判定をより詳細かつ高精度に行うことができる。
【0084】
また、制御部30は、異常判定部36から搬送異常が発生しているとの判定結果や異常発生原因の判定結果が送られると、表示部38にこれらを表示させるようになっており、表示部38にこれらが表示されることにより、異常判定部36による判定結果がユーザに認識可能となる。
【0085】
次に、本実施形態における搬送装置1の動作について説明する。
【0086】
まず、搬送装置1に図示しない電源が投入されると、搬送対象物の搬送動作を開始する前に、搬送異常の有無を判定するための空運転動作が行われる。すなわち、制御部30から加算部32に搬送の目標速度(目標値)が出力されると、加算部32は、この目標値と速度演算部31から送られる搬送速度(測定値)(停止状態の場合には搬送速度=0)とに基づいて差分信号を生成し、搬送制御部33に出力する。搬送制御部33はこの差分信号に基づいてリニアモータ4に出力するトルク指令値を導出し、トルク指令値に応じた速度制御信号をモータ駆動部34に対して出力する。モータ駆動部34はこの速度制御信号に応じた駆動電流をリニアモータ4に供給する。これによりリニアモータ4が動作し、可動コイル7及びこれに設けられた搬送板8がマグネット部5に沿って移動する。可動コイル7(及びこれに固定される搬送板8)の搬送位置は、随時ロータリエンコーダ20により検出され、このエンコーダ信号(位置信号)が速度演算部31及び検出結果演算部35に送られる。ロータリエンコーダ20からの位置信号は速度演算部31で搬送速度に換算され、演算結果が速度信号として加算部32に入力される。
【0087】
制御部30は、搬送装置1の目標速度(目標値)を速度指令信号として加算部32に出力する。加算部32は、制御部30から入力された速度指令信号と速度演算部31から入力された速度信号との差分に応じて差分信号を搬送制御部33に出力する。そして、搬送制御部33は、加算部32から入力された差分信号に基づいて、モータ駆動部34に出力するトルク指令値を導出し、このトルク指令値を速度制御信号としてモータ駆動部34に出力することによって、制御部30から指示された目標速度(目標値)となるよう、リニアモータ4により搬送される可動コイル7及びこれに設けられる搬送板8の搬送速度を制御する。
【0088】
他方、検出結果演算部35は、ロータリエンコーダ20からの位置信号を搬送速度に換算し、この搬送速度(測定値)と判定情報記憶部37に記憶された搬送装置1の目標速度(目標値)との誤差を演算する。そして、検出結果演算部35は、演算結果を速度誤差信号として異常判定部36に出力する。なお、演算結果を異常判定部36に送る前に検出結果演算部35において速度誤差信号の平均化処理を行うようにしてもよい。
【0089】
異常判定部36は、速度誤差信号が送られると、速度誤差信号の値(誤差範囲)が所定値を超えるか否かを判断する。所定値が複数設定されている場合には、異常判定部36はどの程度の異常レベルであるかも同時に判断する。速度誤差信号の値(誤差範囲)が所定値を超えている位置がある場合には、異常判定部36は当該位置に搬送異常が発生していると判断する。
【0090】
また、搬送異常がある場合、異常判定部36は当該異常が所定の周期で現われているか否か、異常発生の周期性を判断する。さらに、周期性がある場合には、異常判定部36はどのような周期で異常が発生しているかを判断し、当該周期で発生する異常がどのような原因によるものかを判定する。
また、搬送の往路、復路等、複数回の搬送における測定値が取得され、それぞれの測定値に基づく速度誤差信号の値が算出されている場合には、異常判定部36はこれらについてそれぞれ所定値との比較を行い、搬送異常の発生の有無を判定する。そして、異常判定部36は、複数回の搬送において、所定の位置で繰返し搬送異常が発生している等、異常発生位置の再現性があるか否かを判断する。
このように、異常判定部36は、搬送異常の周期性及び異常発生位置の再現性の特徴から搬送異常の原因を判定する。なお、どのような発生原因がある場合に搬送異常の発生にどのような特徴が現われるかについては、ユーザ等が予め対応付けを設定するようにしてもよいし、主な搬送異常発生原因とその特徴とを対応付けるデータ又はLUTが判定情報記憶部37等に記憶されており、異常判定部36はこれらのデータ又はLUTを参照することにより搬送異常の発生原因を判定するようになっていてもよい。
【0091】
具体的には、例えば外部振動に起因する搬送異常の場合には、例えば搬送速度20.0mm/s、防振部材3a,3b,3c,3dを介して搬送装置1が振動するメカ共振周波数20Hzとした場合に、異常発生位置の周期性の判定周期は1mmとなり、この半周期である0.5mmごとに+側の異常と−側の異常とが交互に発生するとの周期的な特徴がある。
このため、異常レベル±1以上の搬送異常が発生した場合に、異常判定部36は次の周期+0.5±0.1mm以内に逆方向の異常が発生するかを判断し、逆方向の異常が発生したときは異常カウントをカウントアップして、さらに次の周期+0.5±0.1mm以内に逆方向の異常が発生するかを判断する。
このようにして0.5mmごとに搬送異常の有無を判断した場合に、例えば図7に示すように、0.5mmごとに異常レベル±1以上の搬送異常が+側と−側とで交互に発生しており、その発生回数が所定の回数(例えば3回)を超える場合には、異常判定部36は、外部振動に起因する搬送異常が発生していると判断する。
なお、異常カウントがいくつ以上となれば搬送異常と判定するかは予め各異常発生原因ごとに設定されていてもよいし、ユーザ等が任意に設定できるようにしてもよい。
【0092】
また、ロータリエンコーダ20に起因する搬送異常の場合には、例えば、ロータリエンコーダ20の回転周期が50±2.5mmとした場合に、この回転周期50±2.5mm以内に繰返し搬送異常が発生するとの周期的な特徴がある。
このため、異常レベル±1以上の搬送異常が発生した場合に、異常判定部36は次の周期50±2.5mm以内に異常が発生するかを判断し、搬送異常が発生したときは異常カウントをカウントアップして、さらに次の周期50±2.5mm以内に再度異常が発生するかを判断する。
このようにして50±2.5mmごとに搬送異常の有無を判断した場合に、例えば図8(a)に示すように、50±2.5mmごとに異常レベル±1以上の搬送異常が発生しており、その発生回数が所定の回数(例えば4回)を超える場合には、異常判定部36は、ロータリエンコーダ36の異常に起因する搬送異常が発生していると判断する。
なお、図8(b)に示すように、復路についても同様に搬送異常の有無を判断し、異常が発生したときに異常カウントをカウントアップすることにより、周期性のある搬送異常の発生をより精度よく判定することができる。
【0093】
また、エンコーダとしてリニアエンコーダを用いた場合に、リニアエンコーダに起因する搬送異常の場合には、搬送の往路、復路とも同じ位置で搬送異常が発生するとの特徴がある。
このため、1回目の搬送の往路において異常レベル±1以上の搬送異常が発生した場合(図9(a)参照)に、異常判定部36は1回目の搬送の復路でも同様に異常が発生するかを判断し、搬送異常が発生したときは異常カウントをカウントアップして(図9(b)参照)、さらに2回目の搬送の往路において再度異常が発生するかを判断する。
このようにして、例えば図9(c)に示すように、1回目の往路、復路、及び2回目の往路において異常レベル±1以上の搬送異常が発生しており、その発生回数が所定の回数(例えば3回)を超える場合には、異常判定部36は、リニアエンコーダの異常に起因する搬送異常が発生していると判断する。
【0094】
次に、リニアモータ4のマグネット部5等にゴミ等の異物が付着したことによる搬送異常の場合であって、例えば、大きな金属ゴミ等、比較的大きな異物が原因である場合には、40±2mm程度の周期ごとに繰返し搬送異常が発生するとの周期的な特徴がある。
このため、異常レベル±1以上の搬送異常が発生した場合に、異常判定部36は次の周期40±2mm以内に異常が発生するかを判断し、搬送異常が発生したときは異常カウントをカウントアップして、さらに次の周期40±2mm以内に再度異常が発生するかを判断する。
このようにして40±2mmごとに搬送異常の有無を判断した場合に、例えば図10に示すように、40±2mmごとに異常レベル±1以上の搬送異常が発生しており、その発生回数が所定の回数(例えば3回)を超える場合には、異常判定部36は、リニアモータ4のマグネット部5に大きな金属ゴミ等、比較的大きな異物が付着したことに起因する搬送異常が発生していると判断する。
【0095】
また、例えば、リニアモータ4のマグネット部5等に小さなゴミ等、比較的小さな異物が付着したことによる搬送異常の場合には、搬送異常が連続的に発生するとの特徴がある。
このため、異常レベル±1以上の搬送異常が発生した場合に、異常判定部36は、所定の範囲(例えば1mm以内)に搬送異常が連続的に生じるかを判断する。
そして、例えば図11に示すように、所定の範囲(例えば1mm以内)において、異常レベル±1以上の搬送異常が所定の回数(例えば5回)以上発生している場合には、異常判定部36は、リニアモータ4のマグネット部5に小さい金属ゴミ等、比較的小さい異物が付着したことに起因する搬送異常が発生していると判断する。
【0096】
なお、例えばリニアモータ4のマグネット部5等にゴミ等の異物が付着したことによる搬送異常の場合、過去の搬送における往路、復路についても同様に搬送異常が発生していたかを判断し、異常が発生したときに異常カウントをカウントアップすることにより、再現性のある搬送異常であることを確認することができ、搬送異常の原因をより精度よく判定することができる。
【0097】
このようにして、異常判定部36が搬送異常の発生及び異常発生原因を判定した場合には、異常が発生している位置の情報、及び異常の程度(異常レベル)等の情報を判定情報記憶部37に記憶する。
【0098】
また、異常判定部36は搬送異常についての判定結果を制御部30に送るようになっている。制御部30は、異常判定部36により搬送異常が発生しているとの判定結果が送られると、表示部38を動作させて異常判定部36による判定結果を随時表示部38に表示表示させる。ユーザは表示部38に表示された内容を確認することにより、搬送異常を解消するための適切な措置を取ることができる。
【0099】
また、制御部30は、異常判定部36により搬送異常が発生しているとの判定結果が送られると、搬送装置1の空運転動作を続行するよう搬送制御部等を制御する。これにより、リニアモータ4の搬送状態は随時ロータリエンコーダ20によって検出され、検出結果演算部35により各検出結果に基づく速度誤差信号が生成される。各速度誤差信号は異常判定部36に送られ、異常判定部36は、リニアモータ4の往路、復路、及び2回目の搬送時における往路、復路等、複数回分の速度誤差信号を比較対照することにより、搬送異常の発生原因等をより精度よく判定することができる。
【0100】
以上、本実施形態によれば、ロータリエンコーダ20によって検出された検出結果に基づいて、異常判定部36が搬送装置1の搬送異常の発生の有無及び異常が発生している場合にはその異常発生原因を判定するので、搬送対象物を搬送する前に搬送装置1を試しに空運転する際や、搬送対象物を搬送中等に、早期に搬送異常の有無や搬送異常の原因が何であるかを特定することができる。
また、判定した搬送異常の有無や搬送異常の発生原因は表示部38に表示されるので、ユーザは表示部38を確認することで搬送異常の有無や搬送異常の発生原因を知ることができ、ユーザが発生原因に応じた対処を行うことにより、搬送異常を解消することができる。
【0101】
なお、本実施形態では、搬送状態検出手段であるロータリエンコーダ20によって検出される可動コイル7の位置信号のみに基づいて搬送異常の判定が行われたが、ここに例示した以外の検出手段によって検出された検出結果に基づいて搬送異常の判定を行ってもよい。
例えば、図12に示すように、搬送状態検出手段としてのロータリエンコーダ20の他に、駆動状態検出手段として、リニアモータ4に供給される電流値を検出する電流検出手段40を備えたり、リニアモータの動作状態を検出する動作状態検出手段として、リニアモータの磁束密度を検出する磁束密度検出手段41等を備えてもよい。
電流検出手段40を備えた場合にはモータに断線や短絡等の異常が発生している場合にこれを検出し、ゴミ等異物の付着による異常との判別をすることができる。また、磁束密度検出手段41としては、例えばマグネット部5の磁束密度を測定可能となるようにホール素子を設けたり、可動コイル7に圧電センサを設ける等が考えられる。このような磁束密度検出手段41を備えた場合には、マグネット部5の磁石に金属ゴミ等が吸着した場合に生じる磁束密度の乱れ等を検出して、リニアモータ4(特にマグネット部5)の異常に起因する搬送異常であるとの判断をすることができる。
搬送状態検出手段による検出結果に基づく搬送異常の判定に加えて、これら各種の駆動状態検出手段や動作状態検出手段によって検出された検出結果に基づく搬送異常の判定を行うことにより、より早期かつ精度よく搬送異常の発生、搬送異常の原因の判定を行うことができる。なお、駆動状態検出手段や動作状態検出手段はここに例示したものに限定されない。
【0102】
また、本実施形態では、搬送状態検出手段としてロータリエンコーダ20を用いることとしたが、これに限らず、リニアエンコーダや、レゾルバ等の他の搬送状態検出手段を用いることとしてもよい。また、可動コイル7及び搬送板8の搬送速度を求めることが可能な検出手段であれば、その態様は特に問わず、例えば、レーザ変位計等、可動コイル7及び搬送板8の位置変化を検出する搬送状態検出手段を用い、当該搬送状態検出手段から出力される検出信号の値を時間微分することで可動コイル7及び搬送板8の搬送速度を導出する態様としてもよい。また、可動コイル7及び搬送板8の加速度を検出する加速度センサを用い、当該加速度センサからの検出信号の値を積分することで可動コイル7及び搬送板8の搬送速度を導出する態様としてもよい。
【0103】
また、本実施形態においては、同じ位置で繰返し搬送異常が生じるか否かという、位置の周期性をみることにより搬送異常の周期性を判断するようにしたが、例えば、搬送速度と位置との周期性を時間の周期性に置き換えて、一定時間ごとに繰返し搬送異常が生じるか否かをみることにより搬送異常の周期性を判断するようにしてもよい。
【0104】
なお、本実施形態においては、検出結果演算部35により、ロータリエンコーダ20から送られたエンコーダ信号(リニアモータの位置信号)から搬送速度を算出するようにしたが、検出結果演算部35は、搬送装置1の目標値と搬送状態の検出結果(測定値)との誤差を検出し得るものであればよく、搬送速度を算出するものに限定されない。例えば、検出結果演算部35が位置信号を2回微分することによって加速度を算出してもよい。この場合には、加速度の値が測定値として判定情報記憶部37に記憶され、検出結果演算部35はこの測定値(加速度の値)と目標値(目標加速度)との誤差を演算して加速度誤差信号を生成する。また、ロータリエンコーダ20から送られたエンコーダ信号(リニアモータの位置信号)が、可動子である可動コイルの位置を表す測定値として、そのまま判定情報記憶部37に記憶され、検出結果演算部35はこの測定値(位置信号値)と目標値(目標位置)との誤差を演算して位置誤差信号を生成するようにしてもよい。
このように、検出結果演算部35によって加速度誤差信号や位置誤差信号が生成される場合には、異常判定部36は、これらの誤差信号の誤差範囲が所定値を超えるか否かを判断することにより搬送異常の発生を判定する。
【0105】
なお、本実施形態においては、検出結果演算部35により搬送速度(測定値)と搬送装置の目標速度(目標値)との誤差を演算するように構成したが、前記速度演算部31及び加算部32により、差分が算出されている場合には、この算出結果が搬送速度(測定値)と搬送装置の目標速度(目標値)との速度誤差信号として異常判定部36に送られるようにしてもよい。
【0106】
また、本実施形態においては、所定回数の搬送異常がカウントアップされた場合に搬送異常としたが、搬送時に異常が1個以上生じた場合には常に搬送異常としてもよい。
また、例えば異常レベル+2又は−2の異常が生じた場合のみ搬送異常として検出する等、一定のレベル以上の異常のみを搬送異常としてカウントアップする等、異常レベルの大小を考慮して判断を行うようにしてもよい。
また、例えば、異常レベル+2又は−2であれば「2」、異常レベル+1又は−1であれば「1」とし、発生した異常の異常レベルを合計したときに「5」以上であれば搬送異常として検出するとしたり、例えば、異常レベルの大小と、異常発生回数との積を求め、この値が一定以上の場合に搬送異常と判定するというように、異常発生の個数と異常レベルとの組み合わせにより搬送異常か否かを判断してもよい。
また、本実施形態においては、搬送異常の判定を行う場合に、異常が発生した回数をカウントアップして、所定の回数の異常が発生したか否かにより判断するようにしたが、搬送異常の判定を行う手法はこれに限定されない。
【0107】
また、搬送異常の周期性と再現性の判定手段として、例えば、判定情報記憶部37内に、現在の搬送時の検出結果及び過去の搬送時の検出結果について、所定の位置範囲(例えば、0.1mm間隔)でグラフ化し、当該グラフ上に異常発生位置及び発生した異常の強度等を記憶させて、搬送異常の判定を行う際には、0.1mm間隔内で発生した異常判定のレベルに応じた個数をカウントするようにしてもよい。
【0108】
また、例えば図13に示すように、周期性の位置範囲ごとに発生した搬送異常の異常レベルの最大値を保持するメモリマップを判定情報記憶部37等に記憶させておき、図13の表の横方向に異常の発生回数を加算して合計の異常数(図13の右端列参照)を求めるようにしてもよい。
これを図13に示す例で説明すると、例えば、4mmの位置において異常レベル2の異常が発生し(異常発生数1)、54mmの位置において異常レベル1の異常が発生し(異常発生数1)、104mmの位置において異常レベル2の異常が発生している(異常発生数1)。そこで、これら表の横方向に並んだ異常の発生回数を加算し合計の異常数3が求められる。
また、例えば、2mm,4mm,6mmの各位置において発生した異常の発生回数(図13においては1)と、図13の表の横方向においてこの範囲に対応する52mm,54mm,56mmの各位置において発生した異常の発生回数(図13においては1)及び102mm,104mm,106mmの各位置において発生した異常の発生回数(図13においては1)とを加算し合計の異常数(図13においては異常数3)を求める等、周期性を判断する位置にある程度の幅を持たせて、各位置範囲(幅)における異常発生の周期性を判断するようにしてもよい。
また、異常レベル(異常の強度)と異常の発生数とを併せて評価するようにしてもよい。例えば図13において、前述ように4mmの位置では異常レベル2の異常が発生し(異常発生数1)、54mmの位置では異常レベル1の異常が発生し(異常発生数1)、104mmの位置では異常レベル2の異常が発生している(異常発生数1)。そこで、これら表の横方向に並んだ異常の異常レベルとその発生回数を掛け合わせ、4mm,54mm,104mmの周期位置においては、異常5が発生していると評価することができる。
これらの手法によれば、搬送異常の発生の周期性を容易に判定することができる。
【0109】
また、例えば図14に示すように、位置範囲ごとに発生した搬送異常の異常レベルの最大値を保持するメモリマップを判定情報記憶部37等に記憶させておき、過去の搬送における往路、復路で発生した搬送異常の異常レベル及び搬送異常の発生回数をカウントするようにしてもよい。これにより、例えば、今回の往路、前回の往路及び復路の計3回以上が発生していれば搬送異常の発生に再現性があるとする等、搬送異常の発生に再現性があるか否かを容易に判定することができる。
【0110】
また、異常を検出し搬送異常の有無及び異常の発生原因を判定するための空運転動作は、搬送対象物を搬送する本搬送を行う前に事前に必ず行うようにしてもよいし、搬送装置1の電源投入直後にのみ事前の空運転動作を行うようにしてもよいし、所定の時間搬送を行わなかった場合にのみ次の搬送前に事前の空運転動作を行うようにしてもよい。
このように事前に空運転動作を行うことにより、搬送対象物を搬送する本搬送時に搬送異常による影響が生じるのを事前に防止することができ、搬送のやり直し等を防いで効率よく高精度の搬送を行うことができる。
【0111】
さらに、本実施形態では、搬送装置1の搬送手段としてシャフト型のリニアモータ4を用いた場合を説明したが、これに限らず、例えば対向して配置された磁石の間に巻線コイルが配置されたコ字状のリニアモータ等の非シャフト型のリニアモータや、プーリを回転させてベルトやワイヤ等により搬送対象物を直線搬送させる回転モータ、DCモータ等を用いることとしてもよい。
なお、搬送手段として回転モータを用いる場合には、搬送異常の原因がモータに起因するものかエンコーダに起因するものかを切り分けできるように、搬送手段である回転モータと検出手段であるロータリエンコーダとが同一の軸に取り付けられないように構成することが好ましく、さらに、回転モータとロータリエンコーダとの回転周期が異なるように、例えば回転軸のプーリ径が異なるように構成することが好ましい。
なお、搬送手段として例えば回転駆動するステッピングモータを使用する場合には駆動手段であるモータ駆動部としてステッピングモータ駆動回路を使用する。
【0112】
その他、本発明が上記実施の形態に限らず適宜変更可能であるのは勿論である。
【0113】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態として、搬送手段として第1の実施形態に示した搬送装置を備える画像読取装置について、図15及び図16を参照して説明する。なお、簡略化のため、前述の実施の形態と同一な構成については同一の符号を付して説明を省略し、第2の実施の形態に特徴的な部分のみを説明する。
【0114】
本実施形態において画像読取装置50は、記録媒体である輝尽性蛍光体シートから放射線画像情報を読み取る装置である。輝尽性蛍光体シートは、撮影時に被写体を透過した放射線が吸収され、そのエネルギーの一部が輝尽性蛍光体中に放射線画像の情報として蓄積されるものである。画像読取装置50は、図示しない筐体を備え、筐体の内部に第1の実施形態に示した搬送装置を備えている。
なお、輝尽性蛍光体シートは単体では剛性が無く、装置内での取り扱いが難しいため、輝尽性蛍光体シートを単体で扱うことは少なく、多くの場合は金属板や樹脂板などの支持体に貼付したり、カセッテと呼ばれる着脱自在のケースに収納してカセッテ内面に接着するなどして支持している。
本実施形態において以下の説明では、このように輝尽性蛍光体シートが上記支持体やカセッテに支持された構成を輝尽性蛍光体プレートと呼ぶこととする。また、この輝尽性蛍光体プレートは、その支持体側がラバーマグネット等で後述する固定板に取り付けられることにより支持されている。
【0115】
図15は、本実施形態における画像読取装置50の内部の要部構成を示す斜視図であり、図16は、図15に示す画像読取装置50の内部を上方から見た平面図である。
【0116】
図15及び図16に示すように、画像読取装置50は、輝尽性蛍光体プレート(記録媒体)51にレーザ光照射装置(図示しない)からのレーザ光を走査しながら照射して輝尽性蛍光体プレート51から発せられる輝尽発光光を集光し、光電変換させて画像情報を読み取る光学ユニット(読取部)52と、搬送対象物である光学ユニット52を搬送方向Aに水平に移動させる搬送手段としてマグネット部5と可動コイル7を備えて構成されるリニアモータを備える搬送装置53とを備えている。
【0117】
搬送装置53は、第1の実施形態で示した搬送装置とほぼ同様の構成のものである。搬送装置53は搬送装置53の各部を支持するほぼ矩形板状の装置架台2を備えており、装置架台2は、画像読取装置50の設置面に対してほぼ水平となるように配置されている。装置架台2には、輝尽性蛍光体プレート51を支持する固定板54が、輝尽性蛍光体プレート51を支持したときに輝尽性蛍光体プレート51のレーザ光照射面が装置架台2の上面に対してほぼ垂直となるように固定されている。
また、この固定板54に支持される輝尽性蛍光体プレート51に対向するように搬送対象物としての光学ユニット52が配置されている。光学ユニット52の装置架台2に対向する面には搬送板8が固定されている。搬送板8はリニアモータを構成する可動コイル7に固定されており、搬送板8は可動コイル7とともにリニアモータによって搬送方向Aに移動可能となっている。
【0118】
一方、光学ユニット52は、レーザ光L1を輝尽性蛍光体プレート51の移動方向と直交する方向に走査させながら輝尽性蛍光体プレート51に対して照射するレーザ光照射装置と、レーザ光照射装置により輝尽性蛍光体プレート51にレーザ光L1が照射されることで励起された輝尽発光光L2を導く導光板55と、導光板55により導かれた輝尽発光光L2を集光する集光管56と、集光管56により集光された輝尽発光光L2を電気信号に変換する光電変換器(光電子増倍管)57とを有している。
【0119】
なお、本実施形態における画像読取装置50には、図示しないが光学ユニット52により放射線エネルギーの読取処理がなされた後、輝尽性蛍光体プレート51に残留する放射線エネルギーを放出させるために輝尽性蛍光体プレート51に対して消去光を照射する消去装置が設けられている。
【0120】
なお、搬送装置53は第1の実施形態に示した搬送装置と同様の制御構成を備えている。また、その他の搬送装置53の構成は、第1の実施形態に示した搬送装置と同一であるため、同一箇所には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0121】
また、画像読取装置50は、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様の搬送制御部及び異常判定部等(いずれも図示せず)を備えており、高精度に速度等を制御して光学ユニット52を搬送するとともに、搬送異常が発生しているか否か及び発生している場合にはその原因を、判定するようになっている。また、画像読取装置50は、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様の表示部(図示せず)を備えており、搬送異常が発生していると判定した場合には、搬送異常の発生や、その発生原因等を表示部に表示させてユーザに報知するようになっている。
【0122】
次に、本実施形態における画像読取装置50の動作について説明する。
【0123】
画像読取装置50の電源が投入されたとき又は所定の期間ごとに、自動的に又はユーザの入力指示に従ってリニアモータが動作し、その搬送状態がロータリエンコーダ20によって検出されて、検出結果が速度演算部及び検出結果演算部に送られる。速度演算部は検出結果から搬送速度を演算して加算部に入力する。加算部は制御部から送られる目標速度(目標値)と速度演算部から送られた搬送速度(測定値)との差分を演算して搬送制御部に差分信号を出力する。搬送制御部は差分信号に基づいてトルク指令値を決定し、速度制御信号をモータ駆動部に出力する。モータ駆動部はこの速度制御信号に基づいてリニアモータに所定の駆動電流を供給する。これによりリニアモータが動作して搬送板8を支持したまま可動コイル7が所定の搬送方向Aに搬送される。
【0124】
他方、検出結果演算部は、ロータリエンコーダ20から送られた検出結果(可動コイル7及び搬送板8の位置信号)から搬送速度を演算し、この搬送速度(測定値)と目標速度(目標値)との誤差を求め、速度誤差信号を異常判定部に出力する。異常判定部は速度誤差信号の値が所定値を超えるか否かを判断し、これにより、搬送異常が発生しているか否か、発生していると判断される場合にはその発生原因を判定する。判定された結果は表示部に表示される。搬送異常の発生及びその原因が表示部に表示されたときは、ユーザは、例えばリニアモータに起因する搬送異常であればリニアモータ部分の清掃を行い、ロータリエンコーダ20に起因する搬送異常であればロータリエンコーダ20部分の清掃を行う等、表示された原因に応じて搬送異常を解消するための措置を講じる。
【0125】
搬送異常が解消されると、輝尽性蛍光体プレート51が画像読取装置50の内部に取り込まれて、固定板54に固定される。その後、搬送装置53の搬送制御部は、リニアモータを駆動させて光学ユニット52を支持する搬送板8が所定の搬送開始位置からガイドレール11に沿って水平方向に搬送させる。これにより、光学ユニット52が輝尽性蛍光体プレート51のレーザ照射面に対向する位置(以下、読取開始位置という)に搬送される。可動コイル7及び搬送板8の搬送位置は、ロータリエンコーダ20により検出され、この検出信号が速度演算部を介して速度信号として加算部に入力される。加算部は制御部から送られる目標速度(目標値)と速度演算部から送られた搬送速度(測定値)との差分を演算して搬送制御部に差分信号を出力する。搬送制御部は差分信号に基づいてトルク指令値を決定し、速度制御信号をモータ駆動部に出力する。モータ駆動部はこの速度制御信号に基づいてリニアモータに所定の駆動電流を供給する。これによりリニアモータが動作して可動コイル7が所定の搬送方向Aに搬送され、搬送板8に支持された光学ユニット52が搬送速度等を高精度に制御されながら搬送される。
【0126】
読取開始位置まで移動された光学ユニット52は、輝尽性蛍光体プレート51の水平方向に沿って一定の読取速度で搬送され、この間、レーザ光照射装置からレーザ光が輝尽性蛍光体プレート51に対して走査される。このときレーザ光は光学ユニット52の移動方向と直交する方向に走査させながら照射される。その結果、励起された輝尽発光光が導光板55により導かれて集光管56に集光され、光電変換器57によって電気信号に変換される。
【0127】
次いで、光学ユニット52が輝尽性蛍光体プレート51の一方の端部(以下、読取完了位置という)まで搬送されて読み取りが完了すると、搬送制御部により可動コイル7の搬送速度が読取速度よりも減速され、ガイドレール11上における所定の搬送停止位置に搬送板8がくるように可動コイル7を停止させる。
【0128】
その後、図示しない消去装置によって、輝尽性蛍光体プレート51に対して消去光を照射させ、これにより輝尽性蛍光体プレート51に残存する放射線画像を消去させる。そして、輝尽性蛍光体プレート51が画像読取装置50の外部へと搬送させる。
【0129】
以上、本実施形態によれば、搬送対象物である光学ユニット52を搬送中や、光学ユニット52を搬送する前(読み取り動作前)に搬送手段であるリニアモータを試しに空運転する際等に、搬送装置53の搬送異常を判定する異常判定手段を備えているので、画像が記録された輝尽性蛍光体プレート51等の記録媒体から画像を読み取る前、すなわち、輝尽性蛍光体プレート51を画像読取装置50内に引き込む前又は輝尽性蛍光体プレート51を引き込んだ後カセッテから中に収納されたシートを取り出す前に、空運転動作を行うことにより、読み取り動作前に搬送異常を検出することができる。
放射線画像情報を読み取る画像読取装置50においては、画像の記録された輝尽性蛍光体プレート51に励起光を照射して輝尽発光光を検出するため、微少な搬送むらがあっても画質に影響を受けやすいが、このように読み取り動作前に搬送異常を検出することができるため、搬送異常を生じたまま画像の読み取りが行われるのを防ぐことができ、画像読み取りの失敗をなくすことができるので、再度放射線画像を記録する(被曝する)事態を低減することができる。
【0130】
なお、本実施形態では、固定板54に保持された輝尽性蛍光体プレート51を読み取る光学ユニット52をリニアモータにより搬送することとしたが、輝尽性蛍光体プレート51(記録媒体)と光学ユニット52(読取手段)とが相対的に移動する構成であればよく、搬送する対象はこれに限られない。例えば、光学ユニット52を固定とし、固定板54をリニアモータにより搬送することで輝尽性蛍光体プレート51を読み取る態様としてもよい。また、他の搬送手段(リニアモータ)を更に備える等により、光学ユニット52及び固定板54を共に搬送する態様としてもよい。
また、画像読取装置は放射線画像読取装置に限定されず、例えば光学スキャナ等であってもよい。
【0131】
また、本実施形態では、異常を検出し搬送異常の有無及び異常の発生原因を判定するための空運転動作を画像読取装置50の電源が投入されたとき又は所定の期間ごとに行うようにしたが、空運転を行うタイミングはここに示したものに限定されない。
例えば、画像読み取りを行う前に事前(画像読取前)の空運転動作を必ず行うようにしてもよいし、画像読取装置50の電源投入直後にのみ事前の空運転動作を行うようにしてもよいし、所定の時間搬送を行わなかった場合にのみ次の搬送前(画像読取前)に事前の空運転動作を行うようにしてもよい。
このように事前に空運転動作を行うことにより、搬送異常を生じた状態のまま画像読み取りを行うことによる画像むらの発生等、画像読取動作の失敗をなくすことができる。このため、再度放射線画像を記録し直す事態(撮影対象者が再被曝する事態)を低減することができる。
また、搬送中(画像読み取り動作中)に搬送異常の判定を行う場合には、ユーザに再撮影を促すとともに、搬送異常が生じている状態のままで次に画像読み取り動作を行うのを防止することができ、搬送異常による画像読み取り動作の失敗を最小限に止めることができる。
【0132】
その他、本実施形態における画像読取装置50の細部構成および詳細動作に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0133】
[第3の実施の形態]
次に、第3の実施の形態として、前述した画像読取装置50と同様に、搬送手段として第1の実施形態に示した搬送装置とその制御手段を備える画像記録装置60について、図17を参照して説明する。なお、簡略化のため、前述の実施の形態と同一な構成については同一の符号を付して説明を省略し、第3の実施の形態に特徴的な部分のみを説明する。
【0134】
図17は、本発明に係る画像記録装置60の実施の一形態を示したものである。この画像記録装置60の内部には、複数の記録対象61を積層して収容する収容トレイ62が設けられている。この収容トレイ62の一端部上側には、画像を記録しようとする記録対象(記録媒体)61を一枚ずつ収容トレイ62から取り出す取出し装置63が設けられている。
【0135】
なお、記録対象61としては、例えば色材層を有する第1シートとベース層を有する第2シートとから形成され、レーザ光を照射することにより色材層とベース層との間で材料のアブレーションを発生させ、色材層を第2シートに転写することにより画像を形成可能な記録対象61が適用される。
【0136】
この収容トレイ62の下側には、記録対象61を支持する円筒状の支持ドラム64が回転自在に配設されている。この支持ドラム64は、図示しないドラム駆動機構によって回転駆動されるようになっている。また、支持ドラム64の周面には、記録対象61の前端部を全幅にわたって把持するグリッパ65a及び記録対象61の後端部を全幅にわたって把持するグリッパ65bが、支持ドラム64の軸方向に延在して設けられている。
【0137】
支持ドラム64の側方には、支持ドラム64に摺接して従動回動する従動ローラ66が、支持ドラム64に対して接離可能に設けられている。
【0138】
画像記録装置60の上部には、画像が記録された記録対象61を排出する排出トレイ67が設けられている。
【0139】
画像記録装置60の内部には、収容トレイ62から供給された記録対象61を支持ドラム64の周面上部へ搬送し、記録対象61が支持ドラム64の周面に沿って搬送された後に、支持ドラム64の周面上部から排出トレイ67へ排出させる搬送経路が設けられている。この搬送経路の所定位置には、搬送方向に記録対象61を搬送するための複数対の搬送ローラ68が設けられている。
【0140】
支持ドラム64の周面側方には、支持ドラム64に支持された記録対象61に対してレーザ光を照射するレーザ光照射装置69と、レーザ光照射装置69を搬送するための搬送装置70が設けられている。レーザ光照射装置69の下部には、搬送装置70は、マグネット部5及び可動コイル7を備えて構成されるリニアモータを備えており、このリニアモータの可動コイル7には搬送板8が固定されている。レーザ光照射装置69が固定された搬送板8は、リニアモータが動作することにより、可動コイル7とともに記録対象61の搬送方向と直交する方向(副走査方向)に往復搬送可能となっている。
【0141】
なお、搬送装置70は第1の実施形態に示した搬送装置と同様の制御構成を備えている。また、その他の搬送装置70の構成は、第1の実施形態に示した搬送装置と同一であるため、同一箇所には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0142】
また、画像記録装置60は、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様の搬送制御部及び異常判定部等(いずれも図示せず)を備えており、高精度に速度等を制御してレーザ光照射装置69を搬送するとともに、搬送異常が発生しているか否か及び発生している場合にはその原因を、判定するようになっている。また、画像記録装置60は、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様の表示部(図示せず)を備えており、搬送異常が発生していると判定した場合には、搬送異常の発生や、その発生原因等を表示部に表示させてユーザに報知するようになっている。
【0143】
支持ドラム64より搬送経路下流側には、レーザ光照射装置69により露光された記録対象61の第1シートと第2シートとを剥離する剥離装置81が設けられており、排出トレイ67の下方には、剥離装置81により第2シートと剥離された第1シートを巻き取って回収する回収ロール82が設けられている。また、剥離装置81により搬送経路下流側には、画像が形成された第2シートを排出トレイ67に排出させる排出ローラ83が設けられている。
【0144】
次に、本実施形態における画像記録装置60の動作について説明する。
【0145】
画像記録装置60の電源が投入されたとき又は所定の期間ごとに、自動的に又はユーザの入力指示に従ってリニアモータが動作し、その搬送状態がロータリエンコーダ20によって検出されて、検出結果が速度演算部及び検出結果演算部に送られる。速度演算部は検出結果から搬送速度を演算して加算部に入力する。加算部は制御部から送られる目標速度(目標値)と速度演算部から送られた搬送速度(測定値)との差分を演算して搬送制御部に差分信号を出力する。搬送制御部は差分信号に基づいてトルク指令値を決定し、速度制御信号をモータ駆動部に出力する。モータ駆動部はこの速度制御信号に基づいてリニアモータに所定の駆動電流を供給する。これによりリニアモータが動作して搬送板8を支持したまま可動コイルが所定の搬送方向に搬送される。
【0146】
他方、検出結果演算部は、ロータリエンコーダ20から送られた検出結果(可動コイル7及び搬送板8の位置信号)から搬送速度を演算し、この搬送速度(測定値)と目標速度(目標値)との誤差を求め、速度誤差信号を異常判定部に出力する。異常判定部は速度誤差信号の値が所定値を超えるか否かを判断し、これにより、搬送異常が発生しているか否か、発生していると判断される場合にはその発生原因を判定する。判定された結果は表示部に表示される。搬送異常の発生及びその原因が表示部に表示されたときは、ユーザは、例えばリニアモータに起因する搬送異常であればリニアモータ部分の清掃を行い、ロータリエンコーダ20に起因する搬送異常であればロータリエンコーダ20部分の清掃を行う等、表示された原因に応じて搬送異常を解消するための措置を講じる。
【0147】
搬送異常が解消され、画像記録装置60に画像情報が送られると、取出し装置63が作動して収容トレイ62に収容された最上位の記録対象61を取出し、搬送ローラ68が回転動作して、この取出された記録対象61を搬送させる。
【0148】
記録対象61が支持ドラム64の上部周面近傍まで到達したら、ドラム駆動機構により支持ドラム64が、記録対象61の前端部をグリッパ65aに把持した状態で、図8において時計方向に回転動作する。支持ドラム64の回転に従ってグリッパ65aが従動ローラ66の位置を通過すると、従動ローラ66が支持ドラム64に対して当接して、記録対象61を支持ドラム64の周面に保持させる。そして、支持ドラム64の回転に伴ってグリッパ65bが、記録対象61の後端部位置まで移動して、記録対象61の後端部を把持すると、従動ローラ66が支持ドラム64から離間する。
【0149】
その後、支持ドラム64が図8において時計方向と反対方向に回転動作し、支持ドラム64の回転に伴って記録対象61がレーザ光照射装置69の位置まで送られると、レーザ光照射装置69により画像情報に基づいて、記録対象61に対してレーザ光が照射される。このとき、レーザ光照射装置69は、可動コイル7がリニアモータの駆動により記録対象61の搬送方向と直交する方向に往復移動するのに伴って、記録対象61に対してレーザ光を走査させる。
【0150】
レーザ光照射装置69によるレーザ光の照射が完了すると、記録対象61を搬送ローラ68により搬送経路に沿って搬送させる。
【0151】
記録対象61は、剥離装置81の位置まで搬送されると、剥離装置81により第1シートと第2シートとに剥離される。そして、第1シートは回収ロール82に回収され、第2シートは、搬送ローラ68及び排出ローラ83により、排出トレイ67に排出される。
【0152】
画像記録中も随時搬送異常の有無が判断され、搬送異常が生じると、表示部にその旨及び搬送異常の発生原因を表示させて、搬送異常を解消する措置を講じるようユーザに促すようになっている。
【0153】
以上のように、画像記録装置60は、搬送対象物であるレーザ光照射装置69を搬送中(画像記録動作中)や、レーザ光照射装置69を搬送する前(画像記録動作前)に搬送手段であるリニアモータを試しに空運転する際等に、搬送装置70の搬送異常を判定する異常判定手段を備えているので、記録対象61に画像を記録(形成)する前に、空運転動作を行うことにより、画像記録動作前に搬送異常を検出することができる。これにより、搬送異常を生じたまま画像記録が行われるのを防ぐことができ、画像記録の失敗をなくすことができるので、記録対象61を無駄にすることがなく、また、再度画像記録動作をやり直す時間を省いて全体の処理時間を短縮することができる。
【0154】
なお、本実施形態では、レーザ光照射装置69と記録対象61とを相対的に搬送するように構成したが、レーザ光照射装置69と記録対象61のいずれか一方のみが搬送される構成としてもよい。また、両者を相対的に搬送する場合に、搬送手段(リニアモータ)を更に備える等により、レーザ光照射装置69と記録対象61のいずれもリニアモータで搬送するようにしてもよい。
【0155】
また、本実施形態はレーザ光照射装置69によって画像記録(画像形成)を行う構成のものとしたが、本実施の形態で説明した構成に限定されず、例えばインクジェットプリンタ等、他の手段によって画像を形成するものに搬送装置70を備える構成としてもよい。
【0156】
また、本実施形態では、異常を検出し搬送異常の有無及び異常の発生原因を判定するための空運転動作を画像記録装置60の電源が投入されたとき又は所定の期間ごとに行うようにしたが、空運転を行うタイミングはここに示したものに限定されない。
例えば、画像記録を行う前に事前の空運転動作を必ず行うようにしてもよいし、画像記録装置60の電源投入直後にのみ事前の空運転動作を行うようにしてもよいし、所定の時間搬送を行わなかった場合にのみ次の搬送前(画像記録前)に事前の空運転動作を行うようにしてもよい。
このように事前に空運転動作を行うことにより、搬送異常を生じた状態のまま画像記録を行うことによる画像むらの発生等、画像記録動作の失敗をなくすことができる。このため、再度画像記録をやり直す事態を低減することができる。
また、搬送中(画像記録動作中)に搬送異常の判定を行う場合には、ユーザに画像記録のやり直しを促すとともに、搬送異常が生じている状態のままで次に画像記録動作を行うのを防止することができ、搬送異常による画像記録動作の失敗を最小限に止めることができる。
【0157】
その他、本実施形態における画像記録装置60の細部構成および詳細動作に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0158】
【図1】第1の実施形態に係る搬送装置の斜視図である。
【図2】図1の搬送装置の内部構成を上方から見た平面図である。
【図3】図1の搬送装置の正面図である。
【図4】図1の搬送装置の側面図である。
【図5】図1の搬送装置の制御構成を示す要部ブロック図である。
【図6】速度誤差(搬送むら)の平均化処理を説明するためのグラフである。
【図7】外部振動による搬送異常の場合の異常の発生例を示した表である。
【図8】図8(a)及び(b)は、ロータリエンコーダの異常による搬送異常の場合の異常の発生例を示した表である。
【図9】図9(a)から(c)は、リニアエンコーダの異常による搬送異常の場合の異常の発生例を示した表である。
【図10】リニアモータによる搬送異常の場合の異常の発生例を示した表である。
【図11】リニアモータによる搬送異常の場合の異常の発生例を示した表である。
【図12】第1の実施形態の一変形例の制御構成を示す要部ブロック図である。
【図13】搬送異常の判定に用いるデータの一例を示した表である。
【図14】搬送異常の判定に用いるデータの一例を示した表である。
【図15】第2の実施形態に係る画像読取装置の斜視図である。
【図16】図15に示す画像読取装置の内部構成を上方から見た平面図である。
【図17】第3の実施形態に係る画像記録装置の側断面図である。
【符号の説明】
【0159】
1 搬送装置
4 リニアモータ
5 マグネット部
7 可動コイル
8 搬送板
17 ワイヤ
18 エンコーダユニット
20 ロータリエンコーダ
21 プーリ
30 制御部
31 速度演算部
32 加算部
33 搬送制御部
34 モータ駆動部
35 検出結果演算部
36 異常判定部
37 判定情報記憶部
38 表示部
40 電流検出手段
41 磁束密度検出手段
50 画像読取装置
53 搬送装置
60 画像記録装置
70 搬送装置
A 搬送方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送対象物を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段に対して駆動電流を供給する駆動手段と、
前記搬送手段の搬送状態を検出する搬送状態検出手段と、
前記搬送状態検出手段による検出結果に基づいて前記駆動手段をフィードバック制御する搬送制御手段と、
前記搬送状態検出手段による検出結果に基づいて搬送異常の判定を行う異常判定手段と、
前記異常判定手段による判定結果を出力する判定結果出力手段と、
を備えることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記駆動手段の駆動状態を検出する駆動状態検出手段をさらに備え、
前記異常判定手段は、前記搬送状態検出手段による検出結果と、前記駆動状態検出手段による検出結果と、に基づいて搬送異常の判定を行うことを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記搬送手段の動作状態を検出する動作状態検出手段をさらに備え、
前記異常判定手段は、前記搬送状態検出手段による検出結果と、前記動作状態検出手段による検出結果と、に基づいて搬送異常の判定を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記異常判定手段は、搬送異常の周期性を判定することにより、搬送異常の有無及び搬送異常の発生原因を判断することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記異常判定手段は、搬送異常の再現性を判定することにより、搬送異常の有無及び搬送異常の発生原因を判断することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記搬送手段は、複数の磁石を備える固定子と、電磁コイルを備え前記固定子に沿って移動可能に配設された可動子とを備えるリニアモータであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項7】
画像が記録された記録媒体と、
前記記録媒体に記録された画像を読み取る読取手段と、
前記記録媒体と前記読取手段とが相対的に移動するように前記記録媒体及び前記読取手段のうち少なくともいずれか一方を搬送する請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の搬送装置と、
を備えることを特徴とする画像読取装置。
【請求項8】
前記搬送装置は、画像の読み取り動作時以外に、搬送異常の判定を行うための搬送を行うことを特徴とする請求項7に記載の画像読取装置。
【請求項9】
画像を記録する記録対象と、
前記記録対象に画像を記録する記録手段と、
前記記録対象と前記記録手段とが相対的に移動するように前記記録対象及び前記記録手段のうち少なくともいずれか一方を搬送する請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の搬送装置と、
を備えることを特徴とする画像記録装置。
【請求項10】
前記搬送装置は、画像の記録動作時以外に、搬送異常の判定を行うための搬送を行うことを特徴とする請求項9に記載の画像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−326654(P2007−326654A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−157312(P2006−157312)
【出願日】平成18年6月6日(2006.6.6)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】